説明

回路基板用電気コネクタ

【課題】反嵌合方向の力による部材間の位置ずれが生じず、基板に接続されたコネクタの固定部の破損や変形を防止できる構造を備えたコネクタを提供する。
【解決手段】本体2の接触子支持部24と端部22との間に、装着方向D2の反対方向に延び、かつ係着部材5の凸部55に当接するように構成された肩部25が形成される。本体2に対して係着部材5を装着方向D2に沿って移動させると、係着部材5の凸部55と本体2の肩部25とが互いに当接した状態となる。肩部25と凸55との係合により、係着部材5の本体2に対する位置ずれが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板用電気コネクタに関し、特に、それ自体の本体と連結相手の他の電気部品とを相互に係着して、それ自体の接触子と他の電気部品の導体部分との接触を維持するための係着部材を備えた回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルと回路基板、回路基板同士等、一般に複数の導体を有する独立した部材同士を電気的に接続するための一対のコネクタを備えた電気コネクタにおいて、相互に連結される一対のコネクタのそれぞれに両コネクタ同士を脱着可能に係着するための係着手段を配備したコネクタ装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、あるタイプの電気コネクタに関し、「各ロックブロック10は上記導電性シェル4の両端に設けた取付座片5に一体に組付けられる取付座部10aと、この取付座部10aから一体に突設された相手側コネクタ19との係合手段となる第1係合子10bと、同取付座部10aから一体に突設された配線基板21への固定手段となる第2係合子10cとを具備する」と記載されている。
【0004】
また特許文献2には、他のタイプの電気コネクタに関し、「本体24は、プラスチック等の絶縁性を有する材料からなり、回路基板(図示せず)に載置される表面30と連結相手の他の電気部品に対向する表面32とを略平行配置して備える」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−192813号公報
【特許文献2】特開平7−335333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコネクタでは、コネクタ本体1の挿入孔2に嵌合している相手側コネクタを該挿入孔から抜き出す際に加わる反嵌合方向の力によって、ロックブロック10がコネクタ本体1に対して反嵌合方向に位置ずれを起こし、両者間でがたつきが生じる虞がある。また上記位置ずれによって、配線基板21への固定手段となるロックブロック10の第2係合子10cに応力が作用し、第2係合子10cの破損や変形が生じる虞がある。
【0007】
そこで本発明は、反嵌合方向の力による部材間の位置ずれが生じず、基板に接続されたコネクタの固定部の破損や変形を防止できる構造を備えたコネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は一実施形態において、電気伝導性の電磁シールド部材と、少なくとも一部が前記電磁シールド部材に覆われた絶縁性の本体と、前記本体に列状に支持された複数の電気伝導性の接触子と、前記本体の長手方向の両端部に配置され、前記電磁シールド部材に電気的に接続されるとともに、基板に導通接続されるように構成された係着部材と、を有する回路基板用電気コネクタであって、前記係着部材は、前記本体の長手方向端部に係着する係着部と、前記係着部から延びるアーム部と、前記アーム部の延在方向に略垂直に前記アーム部の先端から延びる掛止部と、前記係着部から、前記係着部材の前記本体に対する装着方向に延びる凸部とを有し、前記本体は、前記係着部材が前記本体に装着されたときに前記係着部材の前記凸部に当接する肩部を有する、回路基板用電気コネクタを提供する。
【0009】
本発明は他の実施形態において、電気伝導性の電磁シールド部材と、絶縁性材料からなり、少なくとも一部が前記電磁シールド部材に覆われた本体と、前記本体に列状に支持された複数の電気伝導性の接触子と、前記本体の長手方向の両端部に取り付けられ、前記電磁シールド部材に電気的に接続されるとともに、基板に導通接続されるように構成された係着部材と、を有する回路基板用電気コネクタの製造方法であって、前記係着部材を、前記コネクタへの他の電気部品の嵌合方向と略垂直な装着方向に移動させながら、前記本体の長手方向端部に前記係着部材の係着部を係着させ、さらに前記係着部から前記係着部材の前記本体に対する装着方向に延びる凸部を、前記本体に形成された肩部に係合させる工程と、前記電磁シールド部材を前記本体に対して前記嵌合方向に取り付ける工程と、を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る回路基板用電気コネクタによれば、係着部材の本体への装着を、コネクタ嵌合方向ではなく、嵌合方向から略垂直な方向に行い、かつ本体の肩部と係合部材の凸部とを係合させることにより、本体に対する係着部材の位置ずれが防止され、係着部材の固定部の変形や破損が防止される。
【0011】
本発明では、係着部材は本体に対してコネクタ嵌合方向とは略垂直の方向に装着されるので、低い圧入力又は無力で係着部材を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の例示的実施形態に係る回路基板用電気コネクタの斜視図である。
【図2】図1のコネクタの係着部材近傍を拡大した分解斜視図である。
【図3】コネクタの係着部材の一構成例を示す斜視図である。
【図4】コネクタの係着部材を図3とは異なる方向からみた斜視図である。
【図5】係着部材をコネクタ本体に取り付ける前の状態を示す斜視図である。
【図6】係着部材をコネクタ本体に取り付けた後の状態を示す斜視図である。
【図7】係着部材をコネクタ本体に取り付けた後の状態を、図6とは異なる方向からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の例示的実施形態に係る回路基板用電気コネクタ(以降、コネクタと略称する)1を示す斜視図であり、図2はコネクタ1の係着部材近傍を拡大した分解斜視図である。コネクタ1は、絶縁性樹脂等の絶縁性材料からなり、図示しない他の電気部品が嵌合可能な嵌合開口部21を有する本体2と、本体2の少なくとも一部を被覆する金属等の電気伝導性材料からなる電磁シールド部材3と、金属等の電気伝導性材料からなり、本体2に列状に支持された複数の接触子4とを有する。接触子4の各々は、その一端41(後述する図7参照)において図示しない回路基板上の導体に例えば半田付けによって電気的に接続され、かつ他端42において、本体2の開口部21に嵌合される他の電気部品の導体部分に電気的に接続されるように構成されている。また本体2の長手方向両端部には、コネクタ1と上記他の電気部品との接続状態を維持するとともに、電磁シールド部材3を接地された回路基板に電気的に接続する機能を備えた係着部材5が配設される。
【0014】
図3は、係着部材5の一構成例を示す部品図であり、図4は係着部材5を図3とは異なる方向からみた部品図である。係着部材5は、本体2の長手方向端部22(図2)に係着する係着部51と、係着部51から延びるアーム部52と、アーム部52の延在方向に略垂直にアーム部52の先端から延びる掛止部53と、係着部51から突出する固定部54とを備える。例示的実施形態では係着部材5は、板金加工又はダイカストによって製造可能な実質一体の部材として成形される。図示した実施形態では、2つの係着部材5が本体2の長手方向両端部に1つずつ配置され、各々が1つのアーム部52とアーム部52の末端に形成された2つの掛止部53とを備える。
【0015】
係着部材5の係着部51は、コネクタ本体2への装着方向D2にみたときに略コの字又はU字形を呈する形状を有し、より具体的にはコの字又はU字を形成する部分のうち互いに対向する2つの対向部分511、512と、対向部分511、512が接続されるベース部分513とを有する。対向部分512、513は、本体2の略直方体形状の端部22を部分的に囲繞して保持できるように構成される。但し、係着部51を端部22に係着させるために大きな力で圧入させる必要はなく、低圧入力での装着が可能である。或いは、係着部51と端部22とはいわゆるすきま嵌めの関係であってもよく、その場合は実質無力で両者を係着させることができる。なお図示した実施形態では、アーム部52は係着部51のベース部分513から延び、固定部54は対向部分512の先端から延びる。
【0016】
図1、図2に示すように、係着部材5のアーム部52は、本体2の端部22に取り付けられたときに本体2の嵌合口側表面23から略垂直に突出するように構成され、また掛止部53はアーム部52の先端からコネクタの長手方向外側へ延び、上記他の電気部品に係合できるように構成されている。係着部51から突出する固定部54は、コネクタ1が図示しない回路基板に実装されたときに、該回路基板に形成され接地されるスルーホールに半田付け等により電気的に接続されるように構成されている。一方係着部材5は、図1のように組み立てられた状態では、電磁シールド部材3と当接又は電気的に接続される。従って電磁シールド部材3は電気的に接地されることになり、外部ノイズ等に対するシールド効果を有することができる。電磁シールド部材は、コネクタ1の内部を外部ノイズ等から電磁気的に遮蔽する機能を備える。
【0017】
係着部51のベース部分513には、雌ねじ514が形成され、さらに組立時に雌ねじ514に対応する電磁シールド部材3の部位には貫通孔34が形成され、さらに組立時に雌ねじ514に対応する本体2の端部22の部位にも貫通孔221が形成される(図2参照)。これにより、コネクタ1に嵌合する図示しない他のコネクタの脱落防止用ねじ、或いはコネクタ1を図示しない回路基板に固定するための固定用ねじを使用することができる。
【0018】
図3、図4に示すように、係着部材5はさらに、係着部51から装着方向D2に延びる凸部又は段差部55を有する。係着部材5の装着方向D2は、コネクタ2の長手方向に沿い、コネクタ1への他の電気部品の嵌合方向(図1のD1)と略垂直である。凸部55は、装着方向D2に延びるものであれば係着部51のどの部位に設けられてもよいが、図3、図4に示すように、一方の対向部分(図示例では511)の先端から延びてもよい。また例示的実施形態では、対向部分511、512の嵌合方向D1に沿う長さは、本体2の端部22のD1方向厚さに基づいて決定される。さらに本体2の端部22の厚さは、本体2に要求される強度等に基づいて決定される。
【0019】
図3、図4に示す例示的実施形態では、係着部材5はさらに、係着部51の対向部分512(凸部55が設けられていない対向部分)から装着方向D2に延びる凸部又は段差部57を有する。凸部57は、装着方向D2に延びるものであれば係着部51の対向部分512のどの部位に設けられてもよいが、嵌合方向D1について凸部55と同位置(ベース部分513から同距離)に設けられる。このようにすれば、コネクタに反嵌合方向の力が作用したときに2つの凸部に均等に力が作用し、より好適に該力を支持できる。
【0020】
次に、コネクタ1の組立(製造)方法について図5を参照しつつ説明する。図2、図5に示すように、本体2の端部22は、接触子4を支持する接触子支持部24の長手方向両端に形成されている。先ず係着部材5を、係着部51が端部22を囲繞するように、嵌合方向D1に略垂直な装着方向D2に沿って本体2の端部22に向けて移動させていく。ここで図2、図5に示すように、接触子支持部24と端部22との間には、装着方向D2の反対方向に延び、かつ係着部材5の凸部55に当接するように構成された肩部25が形成されている。従って係着部材5を装着方向D2に沿って移動させていくと、図6に示すように、係着部材5の凸部55と本体2の肩部25とが互いに当接した状態となる。係着部材5の装着方向D2への移動においては、通常の圧入に要求される大きな力は必要ない。
【0021】
ここで、肩部25は、係着部材5に作用する反嵌合方向(D1の反対方向)の力の少なくとも一部を支持できるように構成される。具体的には、凸部55と肩部25との境界面61は、嵌合方向D1に対して略垂直の角度をなす。従って、コネクタ1に嵌合している他の電子部品をコネクタ1から引き抜く際には、本体2に反嵌合方向の力が作用し、それに伴い係着部材5の固定部54にも反嵌合方向の力が作用することになるが、係合着部材5に作用する力は上記肩部25にて受けられ、コネクタ全体に分散されることができる。一般に、電子部品をコネクタから引き抜く際には100〜200Nの力がコネクタにかかることがあり、従来のコネクタではその力によって本体に相当する部材と係着部材に相当する部材とが位置ずれを起こす場合がある。しかし本願発明では、上記凸部と肩部との係合によって反嵌合方向の力による本体2と係着部材5との位置ずれを阻止でき、また基板に固定されている係着部材5の固定部54に大きな力がかかることもなく、固定部54の破損や変形が防止される。
【0022】
例示的実施形態では本体2の肩部25は、その製作の容易性等から、本体2の厚さ方向端部に形成される。この場合、上述のように係着部材の凸部55を対向部分511の先端に設けておけば、係着部51は端部22をその厚さ方向全体にわたって囲繞することができ、より安定した係着状態が得られる。
【0023】
また係着部材5の凸部は1つでもよいが、図3、図4に示したように、さらに凸部57を有してもよい。この場合、本体2側にも凸部57に当接する肩部又は段差部26が形成され、凸部57と肩部26との境界面62は、嵌合方向D1に対して略垂直の角度をなす。このような構成により、肩部26は上述の肩部25と同様の作用効果を得、すなわちより大きな反嵌合方向の力を受けて、該力をコネクタ全体に分散させることができるようになる。
【0024】
係着部材5の装着後、電磁シールド部材3を本体2に対して嵌合方向に押し込んで取り付け、図1に示したようなコネクタ1の組立てが完了する。なお図2に示すように、本体2の上部に突起27を形成し、一方該突起27に対応する電磁シールド部材3の部位に該突起に係合する係合孔31を形成しておくことにより、電磁シールド部材3の脱落を防止できる。
【0025】
また、電磁シールド部材3は、係着部材5の反装着方向への脱落を防止するように構成された脱落防止部を有してもよい。図示例では、該脱落防止部は、電磁シールド部材の長手方向端部から係着部材5の装着方向D2に略垂直に延びるタブ状部材32である。タブ状部材32は、電磁シールド部材3が本体2に取り付けられたときに係着部材5の反装着方向側の部位に近接又は当接し、係着部材5の脱落を防止する機能を果たす。さらに、タブ状部材32に係合孔33を形成し、さらに該係合孔33に対応する本体2の端部22の部位に該係合孔33に係合する突起221を形成しておけば、電磁シールド部材3の脱落をより確実に防止できる。
【0026】
なお図2及び図6に示すように本体2は、係着部材5が取り付けられたときにアーム部52の側部521に近接又は当接するように形成された庇状部28(図示例では2つ)を有してもよい。このようにすれば、係着部材5が装着方向D2に平行な軸線を中心として本体2に対して回転することを防止できる。
【0027】
なお上述の実施形態では、係着部材5の固定部54を、図示しない基板に対してスルーホール形式で実装されるものとして図示説明したが、固定部54の形状を変更して表面実装形式とすることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 電気コネクタ
2 本体
21 嵌合開口部
22 端部
25、26 肩部
3 電磁シールド部材
32 タブ状部材
4 接触子
5 係着部材
51 係着部
52 アーム部
53 掛止部
54 固定部
55、57 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性の電磁シールド部材と、
少なくとも一部が前記電磁シールド部材に覆われた絶縁性の本体と、
前記本体に列状に支持された複数の電気伝導性の接触子と、
前記本体の長手方向の両端部に配置され、前記電磁シールド部材に電気的に接続されるとともに、基板に導通接続されるように構成された係着部材と、を有する回路基板用電気コネクタであって、
前記係着部材は、前記本体の長手方向端部に係着する係着部と、前記係着部から延びるアーム部と、前記アーム部の延在方向に略垂直に前記アーム部の先端から延びる掛止部と、前記係着部から、前記係着部材の前記本体に対する装着方向に延びる凸部とを有し、
前記本体は、前記係着部材が前記本体に装着されたときに前記係着部材の前記凸部に当接する肩部を有する、回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
前記係着部材の前記装着方向は、前記コネクタへの他の電気部品の嵌合方向と略垂直である、請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
前記係着部材は、前記係着部から突出して基板に固定される固定部を有する、請求項1又は2に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項4】
前記凸部と前記肩部との境界面は、前記嵌合方向に対して略垂直の角度をなす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項5】
前記電磁シールド部材は、前記装着方向と反対方向への前記係着部材の脱落を防止するように脱落防止部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項6】
前記脱落防止部は、前記電磁シールド部材の長手方向端部から前記装着方向に略垂直に延びるタブ状部材である、請求項5に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項7】
電気伝導性の電磁シールド部材と、
絶縁性材料からなり、少なくとも一部が前記電磁シールド部材に覆われた本体と、
前記本体に列状に支持された複数の電気伝導性の接触子と、
前記本体の長手方向の両端部に取り付けられ、前記電磁シールド部材に電気的に接続されるとともに、基板に導通接続されるように構成された係着部材と、
を有する回路基板用電気コネクタの製造方法であって、
前記係着部材を、前記コネクタへの他の電気部品の嵌合方向と略垂直な装着方向に移動させながら、前記本体の長手方向端部に前記係着部材の係着部を係着させ、さらに前記係着部から前記係着部材の前記本体に対する装着方向に延びる凸部を、前記本体に形成された肩部に係合させる工程と、
前記電磁シールド部材を前記本体に対して前記嵌合方向に取り付ける工程と、を有する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−22976(P2012−22976A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161782(P2010−161782)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】