説明

回路基板

【課題】 回路基板上において短絡の不良となった電子部品を自動的に絶縁させる機能を有する回路基板を提供する
【解決手段】 一対の外部端子を有してなる電子部品を実装するために、絶縁基体の表面に前記電子部品の前記一対の外部端子に対応する一対の金属箔からなる導体層が形成されている回路基板であって、前記一対の導体層が、300℃以上の温度にさらされたときに、接着力が低下する接着層を介して接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型の電子部品を実装するための回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル電子機器の発達に伴い、回路基板の高集積化が図られており、このため回路基板上に実装されるチップ型の電子部品は小型化が進み、一枚の回路基板上に実装されるチップ型の電子部品などの実装部品の部品点数も増加している。このため電子部品の集積度の増加に伴い実装された電子部品の故障率が増加する傾向にある。
【0003】
このような場合、出荷前の検査において電子部品の不具合を事前に発見し修正することができれば、製品の不良数を大きく低減することが可能になると思われる。
【0004】
このような課題に対し、例えば、セラミックコンデンサに予め切り込みを入れ、バイメタルを貼り付けるなどすることにより、実装した回路基板上において、短絡(ショート)により発熱しても機械的に破断されるようにした構造が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−38810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、セラミックコンデンサを加工するものであるため、生産数量の全個に対して加工を施すことは費用的に困難である。
【0007】
従って、本発明は、回路基板上において短絡にて不良となった電子部品を回路基板から自動的に絶縁させる機能を有する回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の回路基板は、一対の外部端子を有してなる電子部品を実装するために、絶縁基体の表面に前記電子部品の前記一対の外部端子に対応する一対の金属箔からなる導体層が形成されている回路基板であって、前記一対の導体層が、300℃以上の温度にさらされたときに、接着力が低下する接着層を介して接着されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記回路基板では、前記一対の導体層のうち一方のみに前記接着層を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実装された電子部品が回路基板上において短絡にて不良となった場合、その電子部品を自動的に回路基板から絶縁させる機能を有する回路基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子部品が実装された本発明の回路基板の一実施形態を示す平面模式図である。
【図2】図1のA−A線の断面図である。
【図3】電子部品が回路基板上において、短絡し、オープンとなった状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、電子部品が実装された本発明の回路基板の一実施形態を示す平面模式図である。図2は、図1のA−A線の断面図である。図3は、電子部品が回路基板上において、短絡し、オープンとなったときの状態を示す断面模式図である。
【0013】
本実施形態の回路基板は、図1、図2に示すように、絶縁基体1の表面に一対の導体層1A、1Bが形成されており、この一対の導体層1A、1Bは、例えば、積層セラミックコンデンサなどのチップ型の電子部品3に設けられた一対の外部端子3A、3Bがハンダまたは導電性接着剤などの接合材4を用いて接合できる構成となっている。図1、図2では、電子部品3を1個だけ実装した状態を示しているが、本実施形態の回路基板では、電子部品3を数百個にも及ぶ高密度実装の回路基板にも適用できるものである。
【0014】
ここで、本実施形態の回路基板を構成する絶縁基体1としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂およびエポキシ樹脂(FR−4)から選ばれる1種の有機材料を絶縁材料とする絶縁基体1が好適であり、また、導体層1A、1Bとしては銅、銀、金、白金およびパラジウムから選ばれる1種の金属箔が好適である。
【0015】
本実施形態の回路基板は、導体層1A、1Bの下層側である絶縁基体1との間に接着層5が設けられていることを特徴とするものであり、これにより回路基板上において電子機器が駆動中または電子部品の信頼性試験中に、電子部品3が短絡(ショート)した場合に、短絡した電子部品3を自動的にオープンにする機能を回路基板自体に持たせている。
【0016】
通常、回路基板の表面に形成された銅箔などの導体層1A、1Bは、絶縁基体1に接着される面をエッチングなどの工程を経て粗化し、その粗化面を絶縁基体1に熱圧着させることでアンカー効果を発揮させ、接合強度を高めて回路基板としての信頼性を確保しているが、本実施形態の回路基板では、熱圧着ではなく接着層5を用いて絶縁基体1と導体層1A、1Bとを接着している。そして、本実施形態の回路基板に用いる接着層5は300℃未満では十分な接着力を有するが、300℃以上では接着力が急激に低下するという特徴を有している。ここで、接着層としては、例えば、アムレコ社製のアムレコボンド526N等が好適である。このような接着剤は高温になると、分子が分解するようになることから接着力が低下する。
【0017】
図1および図2に示すように、回路基板上の電子部品3は、通常、ハンダ等の接合材によって回路基板の導体層1A、1Bに電気的および機械的に接続されており、通常の状態であれば電子部品3は高い絶縁性を有しているため直流電流が制御されている。
【0018】
ところが、電子部品3が内部構造の欠陥等に起因して短絡した状態になると過電流により発熱し、電子部品3自体が高温化し焼損するとともに、電子部品3だけではなく回路基板および周辺の他の電子部品が熱的な影響を受けることがある。
【0019】
このような場合でも、本実施形態の回路基板を用いると、回路基板や電子部品3の焼損を回避できる。
【0020】
すなわち、本実施形態の回路基板を用いた場合には、電子部品3が短絡し発熱しても、まず、導体層1A、1Bと電子部品3の外部端子3A、3Bを接合させているハンダなどの接合材が溶融し、続いて、電子部品3の発熱により、導体層1A,1Bと絶縁基体1との間に設けられた接着層5の接着力が低下することで、電子部品3の一方の外部端子3A
が他方の外部端子3Bのハンダの表面張力により導体層1A、1Bとともに絶縁基体1から浮き上がり(この現象をマンハッタン現象という(図3)。)、導体層1Aが断線状態となり、電気的にも機械的にも回路基板から遮断されオープン状態となる。
【0021】
その結果、回路基板上において電子部品3が短絡した状態となっても自動的にオープン状態になることで、回路基板や周辺の電子部品3の損傷を軽減できるとともに、不具合を有する電子部品3を取り除いた良品のみを製品として出荷することができる。
【0022】
また、短絡した電子部品はマンハッタン現象により立ち上がるので回路基板上において不良箇所の判別が容易となる。
【0023】
また、実装試験用の回路基板として用いると、過電流発生時に回路を遮断するリレー等の制御装置が必要なくなるため、回路基板に電子部品3を並列に接続にすれば、電源が一つあるだけで信頼性評価の試験をより簡便に実施できる。
【0024】
なお、本実施形態の回路基板においては、電子部品3のマンハッタン現象を起こしやすくするという点で、一対の導体層1A、1Bのうち一方のみが接着層5を有していることが望ましい。
【0025】
本実施形態の回路基板では、絶縁基体1と導体層1A、1Bとの接着力とハンダの表面張力との関係が重要である。現在の電子部品3の回路基板への実装は鉛フリーハンダが主流であるため、接着層5の接着力は最低でも245℃以下で低下することがあってはならない。一般的に鉛フリーハンダのリフロー温度は245〜260℃といわれているので、245℃以下で接着力が低下するとハンダのリフロー時にマンハッタン現象が発生するため実装が不可能である。このため接着層5の接着力の低下は300℃以上であることが望ましい。なお、高温側は一般的な耐熱性を持つ回路基板(ガラス・エポキシ(FR−4)基板等)の耐熱性から350℃以下が望ましい。また、チップ型の電子部品3のサイズについては、回路基板上でオープンになるためにはマンハッタン現象が起きなければならないことから、電子部品3の外部端子3A、3B間の長さが回路基板の厚み方向と同じ方向における電子部品3の厚みの2倍以下であることが望ましい。
【0026】
ここで、絶縁基体1と導体層1A、1bの間にある接着層5の検出方法は、300℃以上に回路基板を加熱することで導体層1A、1bが剥離することから、導体層1A、1bを剥離させた後に、その導体層1A、1Bの接着層5の付いた面に対してFT−IR等の光散乱測定を行うことにより接着層5の成分を同定することができる。また、常温において、導体層1A、1bを絶縁基体11に付けた状態でも回路基板の導体層1A、1b付近の断面に対して顕微ラマン測定を行うことにより成分の同定を行うことができる。
【0027】
次に、本実施形態の回路基板について具体的に試験した結果を示す。まず、回路基板として、絶縁基体1と導体層1A、1Bとの間に、アムレコ社製のアムレコボンド526Nを介在させて形成したガラス−エポキシ樹脂基板を用意した。この基板は導体層として平均厚みが35μmであり、接着層5側の片面が粗化されている銅箔を用いた。チップ型の電子部品としては、図1、2に示す構造の電子部品3として、21型(外部端子間の長さが2mm、積層方向の厚みが1mm、積層方向と垂直な方向の幅が1mm、誘電体層の平均厚み3μm)のセラミックコンデンサを準備した。このとき、100個中に3個だけ絶縁抵抗が低く適正な静電容量を示さないセラミックコンデンサを混入させておき、1つの回路基板上にこれら100個のセラミックコンデンサを共晶ハンダにより実装して高温負荷試験での電圧印加時にオープン状態になるか否かを確認した。このとき、負荷試験として、温度170℃、電圧30Vを印加する高温負荷試験を行った。その結果、絶縁基体1と導体層1A、1B間に接着層5を介在させた回路基板を用いた場合には、元々、絶縁抵
抗の低かった不良サンプルであるセラミックコンデンサは、試験中に短絡してしまい、マンハッタン現象を起こし、オープン状態(図3のように、一方の外部端子側が立ち上がった状態)になった。このため、他の正常なサンプルであるセラミックコンデンサおよび回路基板は焼損したところは見られず、セラミックコンデンサは正常な静電容量および誘電損失を示した。
【0028】
また、続いて、一対の導体層1A、1Bのうち一方のみが接着層5を有している回路基板を用いた試験も同様の条件で行ったが、この場合も同じように、不良サンプルはマンハッタン現象を起こし、オープン状態となり、それ以外のセラミックコンデンサおよび回路基板には焼損などは見られず、この場合もセラミックコンデンサは正常な静電容量および誘電損失を示した。
【0029】
これに対して、絶縁基体1と導体層1A、1Bとの間に接着層を設けず、銅箔をアンカー効果で接着させた構成のFR−4を回路基板として用いた場合には、短絡したサンプルであるセラミックコンデンサの周辺の回路基板も焼損を受け、また、周囲のセラミックコンデンサの一部に静電容量、誘電損失に異常が見られる結果となった。
【符号の説明】
【0030】
1・・・・・・・絶縁基体
1A、1B・・・導体層
3・・・・・・・電子部品
3A、3B・・・外部端子
5・・・・・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の外部端子を有してなる電子部品を実装するために、絶縁基体の表面に前記電子部品の前記一対の外部端子に対応する一対の金属箔からなる導体層が形成されている回路基板であって、
前記一対の導体層が、300℃以上の温度にさらされたときに、接着力が低下する接着層を介して接着されていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記一対の導体層のうち一方のみに前記接着層を有していることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142356(P2012−142356A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292570(P2010−292570)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】