説明

回路接続材料、回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法

【課題】回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1及び第2の回路電極を対向させた状態で電気的に接続するための回路接続材料であって、含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含み、含フッ素有機化合物がシリコーン構造を有し、当該接着剤成分が、その全体量に対して含ケイ素化合物をケイ素原子換算で0.10質量%以下含有する回路接続材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料、回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶ディスプレイなどの分野で電子部品を固定したり、回路接続を行ったりするために各種の接着材料が使用されている。これらの用途では、ますます高密度化、高精細化が進み、接着剤にも高い接着力や信頼性が求められている。
【0003】
特に、液晶ディスプレイとTCPとの接続、FPCとTCPとの接続、又はFPCとプリント配線板との接続には接着剤中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤が回路接続材料として使用されている。また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドに代えて、半導体シリコンチップをフェイスダウンで基板に直接実装する、いわゆるフリップチップ実装が行われており、ここでも異方導電性接着剤の適用が開始されている。
【0004】
さらに、近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、従来のエポキシ樹脂系を用いた回路接続材料の接続条件では、配線の脱落、剥離、位置ずれが生じるなどの問題点があった。
【0005】
また、生産効率向上のために接続時間の短縮化が望まれており、10秒以下で接続できる回路接続材料が求められている。そこで、低温速硬化性に優れ、かつ、可使時間を有する電気・電子用の回路接続材料が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/44067号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/015505号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記回路接続材料は、接続する回路部材の材質により接着強度が異なる。特に、回路基板がポリエチレンテレフタレート、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂又はガラスである場合や、回路部材表面がシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂又はアクリル樹脂でコーティングされていたり、これらの樹脂が回路部材表面に付着していたりする場合、接着強度が低下する傾向にある。一方、分子内にケイ素を有する含ケイ素化合物を回路接続材料に含有させると、ガラスとの接着性が向上することは知られている。しかしながら、含ケイ素化合物を含有したフィルム状の回路接続材料を支持基材上に設けた接着シートとして使用する場合、支持基材との粘着力が経時的に増加する。その結果、回路接続材料の支持基材からの転写性が低下しやすくなる。そこで、回路部材の材質によらず接着性に優れ、かつ、転写性の経時変化の抑制された回路接続材料が望まれている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1及び第2の回路電極を対向させた状態で電気的に接続するための回路接続材料であって、含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含み、当該接着剤成分が、その全体量に対して含ケイ素化合物をケイ素原子換算で0.10質量%以下含有する回路接続材料を提供する。
【0010】
また、本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1及び第2の回路電極を対向させた状態で電気的に接続するための回路接続材料であって、含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含み、当該接着剤成分が含ケイ素化合物を含有しない回路接続材料を提供する。
【0011】
これらの本発明の回路接続材料は、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れるものとなる。このような効果が奏される要因は現在のところ詳細には明らかにされていないが、本発明者らは以下のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。
【0012】
上述したように、含ケイ素化合物がガラスとの接着性を向上させることは知られている。しかしながら、支持基材上に形成したフィルム状回路接続材料が含ケイ素化合物を含有する場合、経時的に支持基材との粘着性も増加する。その結果、回路接続材料が支持基材から転写し難くなり、支持基材からの剥離性が低下する。一方、フッ素原子は電気陰性度が高く、多くの元素と安定な化合物を作ることが知られている。また、含フッ素有機化合物は、回路接続材料中に含有される他の成分との相溶性及び分散性に優れる。よって、接着剤成分に含フッ素有機化合物を含む回路接続材料は、接着剤成分が均一に溶解又は分散した状態にある。その結果、本発明の回路接続材料は、様々な材質の被着体に対して適度な接着性を有していると考えられる。さらに、含フッ素有機化合物は、一般にその表面エネルギーが高いことが知られている。これを主因として本発明の回路接続材料は、適度な剥離性を有していると考えられる。
【0013】
すなわち、本発明に係る回路接続材料が、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れるのは、回路接続材料中のケイ素含有量を0.1質量%以下に制限し、接着剤成分として含フッ素有機化合物を含有することを主因としているものと推測している。
【0014】
上記回路接続材料において、含フッ素有機化合物がシリコーン構造を有することが好ましい。これにより、回路基板がガラスである場合又回路部材表面がシリコーン樹脂でコーティングされている場合の接着性がより一層向上するという効果を奏する。
【0015】
本発明の回路接続材料において、接着剤成分はラジカル重合開始剤を更に含有し、含フッ素有機化合物はラジカル重合性の含フッ素有機化合物を含有することが好ましい。このような回路接続材料は、回路部材の材質によらず接着性により一層優れ、転写性の経時変化がさらに抑制され転写性にさらに優れるものとなる。
【0016】
さらに、本発明の回路接続材料において、含フッ素有機化合物が含フッ素ポリイミド樹脂を含有することが好ましい。このような回路接続材料は、より一層有効かつ確実に接着性及び転写性に優れるものとなる。
【0017】
本発明の回路接続材料において、接着剤成分はリン酸エステル型(メタ)アクリレートを更に含有することが好ましい。これにより、各種回路部材との接着強度に優れるという本発明の効果を一層有効に発揮することができる。
【0018】
また、本発明の回路接続材料において、接着剤成分はエポキシ樹脂硬化剤を更に含有し、含フッ素有機化合物は含フッ素エポキシ樹脂を含有することが好ましい。このような回路接続材料は、回路部材の材質によらずより一層良好な接着強度を示し、転写性の経時変化がさらに抑制され転写性にさらに優れるものとなる。
【0019】
また、含フッ素有機化合物の重量平均分子量は、5000以上であることが好ましい。これにより、回路接続材料は硬化時の応力緩和性に優れるため、接着性及び転写性により一層優れるものとなる。
【0020】
本発明の回路接続材料において、含フッ素有機化合物が有機溶剤に可溶であることが好ましい。含フッ素有機化合物が有機溶剤に溶解することにより、有機溶剤中に単に分散するよりも、接着性及び転写性により一層優れた回路接続材料が得られる。
【0021】
さらに、含フッ素有機化合物は、芳香族基及び/又は脂環式基を有することが好ましい。これにより、各種回路部材との接着強度に優れ、転写性の経時変化が抑制され転写性に優れるという本発明の効果を一層有効に発揮することができると共に、回路接続材料の耐熱性を向上することができる。
【0022】
含フッ素有機化合物のガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましい。このような含フッ素有機化合物を含有することで、本発明の回路接続材料は取り扱いが容易となり、接着性及び転写性により一層優れるものとなる。
【0023】
本発明の回路接続材料は、導電性粒子を更に含むことが好ましい。これにより、回路接続材料はそれ自体導電性を容易に有することができる。そのため、この回路接続材料は、回路電極や半導体等の電気工業や電子工業の分野において導電性接着剤として用いることができるようになる。更に、この場合、回路接続材料が導電性を有するため、硬化後の接続抵抗をより低くすることが可能となる。
【0024】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成され、第2の回路電極が第1の回路電極と対向配置されるように配置された第2の回路部材と、第1の回路基板と第2の回路基板との間に設けられ、第1及び第2の回路電極が電気的に接続されるように第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する回路接続部とを備えた回路部材の接続構造であって、回路接続部が、上述の回路接続材料の硬化物によって形成されている回路部材の接続構造を提供する。
【0025】
このような回路部材の接続構造は、回路接続部が接着性及び転写性に十分に優れる本発明の回路接続材料の硬化物によって形成されているため、同一回路部材上で隣り合う回路電極間の絶縁性を維持しつつ、対向する回路電極間の抵抗値を低減させることができる。
【0026】
本発明の回路部材の接続構造において、第1及び第2の回路電極のうち少なくとも一方は、その表面が金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料からなることが好ましい。このような回路部材の接続構造では、同一回路部材上で隣り合う回路電極間の絶縁性を維持しつつ、対向する回路電極間の抵抗値をより一層低減させることができる。
【0027】
また、本発明の回路部材の接続構造において、第1及び第2の回路基板のうち少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む材料からなる基板であることが好ましい。上記本発明の回路接続材料は、硬化して回路接続部を形成したときに、これら特定の材料で構成された基板との間でより高い接着強度を発現することができる。
【0028】
さらに、上記回路部材の接続構造において、第1及び第2の回路部材のうち少なくとも一方と上述の回路接続部との間に、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む層が形成されていることが好ましい。これにより、上記層が形成されていないものに比べて、回路部材と回路接続部との接着強度がより一層向上する。
【0029】
本発明は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1の回路電極及び第2の回路電極が対向配置されるように配置し、第1の回路部材と第2の回路部材との間に上述の回路接続材料を介在させてなる積層体を、その積層方向に加圧しながら加熱して、第1及び第2の回路電極が電気的に接続されるように第1の回路部材と第2の回路部材とを接続する工程を備える回路部材の接続構造の製造方法を提供する。
【0030】
この製造方法によると、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる本発明の回路接続材料を用いている。そのため、隣り合う回路電極間の絶縁性を維持しつつ、対向する回路電極間の抵抗値が十分に低減された回路部材の接続構造を製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明に係る回路部材の接続構造の製造方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」及びそれに対応する「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0034】
(回路接続材料)
本発明の回路接続材料は、第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、第1及び第2の回路電極を対向させた状態で電気的に接続するための回路接続材料であって、含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含み、当該接着剤成分が、その全体量に対して含ケイ素化合物をケイ素原子換算で0.10質量%以下含有する。
【0035】
接着剤成分は、少なくとも含フッ素有機化合物を含有する。本発明に用いられる含フッ素有機化合物としては、分子中にフッ素を有する化合物であればよく、公知のものであってもよい。具体的には、例えば、ラジカル重合性の含フッ素有機化合物、含フッ素ポリビニルブチラール樹脂、含フッ素ポリビニルホルマール樹脂、含フッ素ポリイミド樹脂、含フッ素ポリアミド樹脂、含フッ素ポリアミドイミド樹脂、含フッ素ポリエステル樹脂、含フッ素フェノール樹脂、含フッ素エポキシ樹脂、含フッ素フェノキシ樹脂、含フッ素ポリウレタン樹脂、含フッ素ポリエステルウレタン樹脂、含フッ素ポリアリレート樹脂、含フッ素スチレン樹脂、含フッ素シリコーン樹脂、含フッ素アクリルゴム、含フッ素ニトリルゴム、含フッ素NBR、含フッ素SBSが挙げられる。これらは単独又は2種類以上を混合して用いられる。回路接続材料がこれらの含フッ素有機化合物を接着剤成分として含有すると、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる。これらの中でも、ラジカル重合性の含フッ素有機化合物、含フッ素ポリイミド樹脂又は含フッ素エポキシ樹脂が特に好ましい。また、含フッ素有機化合物は、上述の各含フッ素樹脂をラジカル重合性の官能基で変性したものであってもよい。これにより、回路接続材料の硬化物は、その耐熱性が更に向上する。
【0036】
本発明に係るラジカル重合性の含フッ素有機化合物としては、ラジカル重合可能な官能基を有するものであり、例えば、含フッ素(メタ)アクリル酸化合物、含フッ素マレイミド化合物又は含フッ素スチレン誘導体が好適に用いられる。これらのラジカル重合性の含フッ素有機化合物は、重合性モノマー及び重合性オリゴマーのいずれであってもよく、重合性モノマーと重合性オリゴマーとを併用することも可能である。重合性オリゴマーは一般に高粘度であるため、重合性オリゴマーを用いる場合、低粘度の重合性多官能(メタ)アクリレート等の重合性モノマーを併用して粘度調整することが好ましい。
【0037】
ラジカル重合性の含フッ素有機化合物は、フッ素を含有しないラジカル重合性化合物と併用することも可能である。
【0038】
含フッ素(メタ)アクリル酸化合物は、(メタ)アクリル酸化合物にフッ素原子を導入したものである。(メタ)アクリル酸化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等の光重合性オリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート及び2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、並びにグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
含フッ素(メタ)アクリル酸化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。回路接続材料の硬化収縮を抑制し、柔軟性を与えるためにはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合するのが好ましい。
【0040】
含フッ素マレイミド化合物は、マレイミド化合物にフッ素原子を導入したものである。マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を2個以上含有するものが好ましい。その具体例としては、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−s−ブチル−4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、1,1−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス〔1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン〕及び2,2−ビス〔4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0041】
含フッ素マレイミド化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0042】
本発明の回路接続材料は、含フッ素有機化合物としてラジカル重合性の含フッ素有機化合物を含有する場合、ラジカル重合開始剤を更に含有すると好適である。ラジカル重合性化合物は、一旦ラジカル重合反応を開始すると、連鎖反応が進行し、強固な硬化が可能となるが、最初にラジカルを発生させることが比較的困難である。そのため、本発明では、回路接続材料中に、ラジカルを比較的容易に生成可能なラジカル重合開始剤を含有させることが好ましい。
【0043】
本発明に係るラジカル重合開始剤としては、従来知られている過酸化化合物(有機過酸化物)、アゾ化合物又は光開始剤のような、加熱及び光照射のうち少なくともいずれか一方の処理により分解して遊離ラジカルを発生する化合物が用いられる。
【0044】
有機過酸化物及びアゾ化合物は、主として加熱により遊離ラジカルを発生する。これらの化合物をラジカル重合開始剤として用いる場合、有機過酸化物及び/又はアゾ化合物から1種又は2種以上を、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選択する。
【0045】
有機過酸化物としては、高い反応性と長いポットライフを両立する観点から、10時間半減期温度が40℃以上、かつ、1分間半減期温度が180℃以下である有機過酸化物が好ましく、10時間半減期温度が60℃以上、かつ、1分間半減期温度が170℃以下である有機過酸化物がより好ましい。また、有機過酸化物は、回路部材の回路電極(接続端子)の腐食を防止するために、塩素イオンや有機酸の含有量が5000質量ppm以下であることが好ましい。さらに、有機過酸化物は、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。
【0046】
有機過酸化物としては、具体的には、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上の有機過酸化物が好適である。これらの中では、保存時の高い保存安定性と使用時の高い反応性を両立する観点から、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上の有機過酸化物がより好ましい。さらには、より高い反応性が得られる点で、有機過酸化物が、パーオキシエステル及び/又はパーオキシケタールであることが更に好ましい。
【0047】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びビス(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート及びビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサヒドロテレフタレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0051】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0052】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド及びトリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0054】
これらの有機過酸化物を用いる場合、さらに分解促進剤、抑制剤等を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機過酸化物はポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものであると、可使時間が延長されるために好ましい。
【0055】
また、アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)及び1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0056】
一方、光開始剤は、上述の有機過酸化物及びアゾ化合物を除くものであれば特に限定されない。その具体例としては、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタール、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン類及びその誘導体、チオキサントン類及びビスイミダゾール類が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
上記光開始剤に、必要に応じてアミン化合物、イオウ化合物、リン化合物等の増感剤を任意の割合で添加してもよい。光開始剤をラジカル重合開始剤として用いる場合、光照射するために用いられる光源の波長や目的とする回路接続材料の硬化特性に応じて好適な光開始剤を選択する。
【0058】
増感剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ピペリジンのような脂環式アミン、o−トリルチオ尿素、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩、N,N’−ジメチル−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジエチル−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジ(β−シアノエチル)−p−アミノベンゾニトリル、N,N’−ジ(β−クロロエチル)−p−アミノベンゾニトリル及びトリ−n−ブチルホスフィンが挙げられる。
【0059】
さらに、増感剤として、プロピオフェノン、アセトフェノン、キサントン、4−メチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレン、トリフェニレン、ビフェニル、チオキサントン、アントラキノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、フェナントレン、ナフタレン、4−フェニルアセトフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、1−ヨードナフタレン、2−ヨードナフタレン、アセナフテン、2−ナフトニトリル、1−ナフトニトリル、クリセン、ベンジル、フルオランテン、ピレン、1,2−ベンゾアントラセン、アクリジン、アントラセン、ペリレン、テトラセン、2−メトキシナフタレン等の非色素系増感剤、チオニン、メチレンブルー、ルミフラビン、リボフラビン、ルミクロム、クマリン、ソラレン、8−メトキシソラレン、6−メチルクマリン、5−メトキシソラレン、5−ヒドロキシソラレン、クマリルピロン、アクリジンオレンジ、アクリフラビン、プロフラビン、フルオレセイン、エオシンY、エオシンB、エリトロシン、ローズベンガル等の色素系増感剤を用いることができる。
【0060】
上述の増感剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
ラジカル重合開始剤の配合割合は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜設定できる。例えば、接続時間を10秒以下とした場合、十分な反応率を得るために、ラジカル重合開始剤の配合割合は、接着剤成分の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の配合割合が0.1質量部未満であると、反応率が低下するため、回路接続材料が硬化し難くなる傾向にある。ラジカル重合開始剤の配合割合が30質量部を超えると、回路接続材料の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、回路接続材料のポットライフが短くなったりする傾向にある。ただし、本発明の目的を達成する観点から、接着剤成分がシリルパーオキサイドを含む場合、その含有割合は接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.10質量%以下である。
【0062】
本発明に係る含フッ素ポリイミド樹脂は、例えば、含フッ素テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物、テトラカルボン酸二無水物及び含フッ素ジアミン化合物、又は、含フッ素テトラカルボン酸二無水物及び含フッ素ジアミン化合物を公知の方法で縮合反応させて得ることができる。
【0063】
例えば、有機溶媒中で、フッ素原子を有していてもよいテトラカルボン酸二無水物とフッ素原子を有していてもよいジアミン化合物とを等モル又はほぼ等モル用いて(各物質の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃でこれらの物質を付加反応させる。上記有機溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール等が挙げられる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。このポリアミド酸の分子量は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって調整できる。
【0064】
上記ポリイミド樹脂は、上述の反応生成物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環する方法としては、120〜250℃で加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法とが挙げられる。熱閉環法の場合、脱水反応で生じる水を系外に排除しながら脱水閉環することが好ましい。この際、ベンゼン、トルエン、キシレン等を用いて水を共沸除去してもよい。化学閉環法の場合、脱水剤として無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸の酸無水物、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物等を用いることが好ましい。この際、必要に応じて、ピリジン、イソキノリン、トリメチルアミン、アミノピリジン、イミダゾール等の閉環触媒を用いてもよい。脱水剤又は閉環触媒は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対し、それぞれ1〜8モルの範囲で使用することが好ましい。
【0065】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物)、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0066】
含フッ素テトラカルボン酸二無水物としては、上述のテトラカルボン酸二無水物の水素原子をフッ素原子に置換したものが挙げられる。より具体的には、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(別名「4,4’−ヘキサフルオロプロピリデン酸二無水物」)、2,2,−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0067】
ジアミン化合物としては、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、下記一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、サンテクノケミカル(株)製、商品名:ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2001,EDR−148等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【化1】


ここで、式(1)中、L及びLは、それぞれ独立に、炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜20、特に好ましくは1〜10の1価の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよい。mは1以上の整数を示す。
【0068】
含フッ素ジアミン化合物としては、上述のジアミン化合物の水素原子をフッ素原子に置換したものが挙げられる。より具体的には、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0069】
上述の含フッ素テトラカルボン酸二無水物及び含フッ素ジアミン化合物は、上述したフッ素を有しないテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物と組み合わせて用いられてもよい。
【0070】
含フッ素ポリイミド樹脂は、フッ素を有するため溶解性及び相溶性に優れ、ガラス、金属など無機物に対する接着性が高く、イミド構造を有するため耐熱性にも優れる。また、塩素、水酸基、カルボキシル基により変性された含フッ素ポリイミド樹脂は、相溶性、接着性の観点からより好ましい。
【0071】
本発明に係る含フッ素エポキシ樹脂は、1分子内に2個以上のグリシジル基を有するものであると好ましい。含フッ素エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂中の水素原子をフッ素原子に置換したものである。エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、F又はADから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及び脂環式型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0072】
含フッ素エポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、含フッ素エポキシ樹脂は、上記フッ素を含有しないエポキシ樹脂と併用することも可能である。
【0073】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)及び加水分解性塩素等を300質量ppm以下に低減した高純度品であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0074】
また、本発明の回路接続材料は、含フッ素エポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂硬化剤を更に含有することが好ましい。本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤は、より長いポットライフを得る観点から、潜在性硬化剤であることが好ましい。潜在性硬化剤としては、例えば、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられる。また、可使時間を延長する観点から、これらの硬化剤がポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものであると好ましい。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。エポキシ樹脂硬化剤を用いる場合、分解促進剤、抑制剤等を併用してもよい。
【0075】
エポキシ樹脂硬化剤の配合割合は、十分な反応率を得るために接着剤成分100質量部に対して、0.1〜60質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の配合割合が0.1質量部未満では、反応率が低下して接着強度が低下したり、接続抵抗が大きくなったりする傾向がある。エポキシ樹脂硬化剤の配合割合が60質量部を超えると、回路接続材料の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、回路接続材料のポットライフが短くなったりする傾向にある。
【0076】
また、含フッ素有機化合物の重量平均分子量は、硬化時の応力緩和性に優れ、接着性がより一層向上する観点から、5000〜1000000が好ましく、20000〜200000がより好ましい。含フッ素有機化合物の重量平均分子量が5000未満では、後述するフィルムとして使用する場合にフィルム形成性が不十分となる傾向があり、重量平均分子量が1000000を超えると、他の成分との相溶性が劣る傾向がある。
【0077】
なお、本明細書における重量平均分子量は、表1に示す条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)分析により測定し、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することにより求められる。ここで、GPC条件1は含フッ素ポリイミド樹脂の重量平均分子量を測定するときの条件であり、GPC条件2は含フッ素ポリイミド樹脂以外の含フッ素有機化合物の重量平均分子量を測定するときの条件である。
【0078】
【表1】

【0079】
また、取り扱いの容易性及び回路接続材料の耐熱性を向上させる観点から、含フッ素有機化合物のガラス転移温度は、50℃以上であることが好ましい。含フッ素有機化合物のガラス転移温度の上限値は特に限定されない。
【0080】
さらに、回路接続材料の耐熱性を向上させる観点から、含フッ素有機化合物は、芳香族基及び/又は脂環式基を有することが好ましい。芳香族基としては例えば、フェニル基、フェニレン基が挙げられ、脂環式基としては例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0081】
また、含フッ素有機化合物は、有機溶剤に可溶であることが好ましい。含フッ素有機化合物が有機溶剤中に単に分散しただけの回路接続材料では、保存時に層分離を起こすことがある。その場合、回路接続材料中に含まれる接着剤成分の組成の偏りが生じ、得られる回路接続材料は回路部材への接着性及び転写性の低下を引き起こし易くなる。一方、含フッ素有機化合物が有機溶媒に可溶であれば、溶液状態で放置しても層分離が起こり難く、回路接続材料中に含まれる接着剤成分の組成の偏りが生じ難くなる。そのため、得られる回路接続材料は回路部材への接着性及び転写性が優れるもとのとなる。ここで、有機溶剤に可溶であるとは、含フッ素有機化合物が、有機溶剤に対し、25℃で1質量%以上溶解することを意味する。含フッ素有機化合物が有機溶剤に10質量%以上溶解することが好ましい。
【0082】
有機溶剤としては、一般に回路接続材料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0083】
このように、メチルエチルケトンのような比較的低沸点の有機溶剤にも可溶であることから、回路接続材料が有機溶剤を含有する場合の溶剤選択の幅が広がり、接着剤成分が局在化し難い回路接続材料を作製することができる。そのため、得られる回路接続材料は回路部材への接着性及び転写性により一層優れるものとなる。
【0084】
本発明の回路接続材料において、接着剤成分は、その全体量に対して含ケイ素化合物をケイ素原子換算で0.10質量%以下含有する。含ケイ素化合物は、上述の含フッ素有機化合物とは別に接着剤成分に含まれるものであってもよく、あるいは、上述の含フッ素有機化合物の分子内にケイ素原子を有するものであってもよい。すなわち、本発明に係る接着剤成分は、含フッ素有機化合物と、それとは異なる含ケイ素化合物とを含有していてもよく、あるいは、含ケイ素化合物として、ケイ素原子を分子内に有する含フッ素有機化合物のみを含有していてもよい。
【0085】
含ケイ素化合物が上記含フッ素有機化合物の分子内にケイ素原子を有するものである場合、回路基板であるガラス又シリコーン樹脂でコーティングされている回路部材表面との接着性をより一層向上させる観点から、上述の含フッ素有機化合物にシリコーン構造を導入したもの、すなわちシリコーン構造を有する含フッ素有機化合物であることが好ましい。このような含ケイ素化合物としては、例えば、ラジカル重合性の含フッ素有機化合物、含フッ素ポリイミド樹脂及び含フッ素エポキシ樹脂をそれぞれシリコーン変性した化合物が挙げられる。より具体的には、含フッ素テトラカルボン酸二無水物及び上記一般式(1)で表されるジアミノポリシロキサンを公知の方法で縮合反応して得られる含フッ素ポリイミド樹脂が挙げられる。
【0086】
含ケイ素化合物の含有量が、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.10質量%を超えると、回路部材への接着性が向上するものの、経時的に支持基材に対する粘着性が増加する結果、転写性の低下を引き起こす傾向がある。そのため、接着剤成分が含ケイ素化合物を含有しないことがより好ましい。
【0087】
同様の観点から、接着剤成分が含フッ素ポリイミド樹脂を含む場合、含フッ素ポリイミド樹脂中の含ケイ素化合物の含有量は、ケイ素原子換算で1質量%以下が好ましい。
【0088】
本発明の回路接続材料において、接着性を向上する目的で、接着剤成分はリン酸エステル型(メタ)アクリレートを更に含有することが好ましい。接着剤成分がリン酸エステル型(メタ)アクリレートを含有することにより、回路接続材料は、特に金属等の無機材料との接着強度が向上する。リン酸エステル型(メタ)アクリレートとしては、特に制限なく公知のものを使用することができる。その具体例としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】


ここで、nは1〜3の整数を示す。
【0089】
一般に、リン酸エステル型(メタ)アクリレートは、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物として得られる。リン酸エステル型(メタ)アクリレートとして、具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0090】
接着剤成分には、上述のもの以外に、使用目的に応じて別の材料が添加されてもよい。例えば、接着剤成分には、カップリング剤、密着性向上剤、レベリング剤等の接着助剤が適宜添加されてもよい。これにより、更に良好な接着性や取扱い性を付与することができるようになる。
【0091】
カップリング剤としては、接着性の向上の点からケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が好ましく使用できる。具体的には、アクリル基を有するシランカップリング剤として、(3−メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3−アクリロキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アミノ基を有するシランカップリング剤として、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ケチミンを有するシランカップリング剤として、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。また、エポキシ基を有するシランカップリング剤として、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0092】
カップリング剤の配合割合は、回路接続材料中のその他の配合物の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましい。カップリング剤の配合割合が0.1質量部未満の場合、実質的な添加効果が得られない傾向がある。またカップリング剤の配合割合が20質量部を超える場合、支持基材上へ回路接続材料からなる接着層を形成した際の接着層のフィルム形成性が低下し、膜厚強度が低下する傾向がある。ただし、本発明の目的を有効に達成する観点から、カップリング剤はシランカップリング剤などのケイ素を含有するものではないことが好ましい。カップリング剤がシランカップリング剤である場合、その配合割合は、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.1質量%以下である。
【0093】
接着剤成分は、本発明の目的を達成する観点から、回路接続材料中に、0よりも大きく100質量%以下の範囲で含まれている必要がある。
【0094】
本発明の回路接続材料は、導電性粒子を含有しなくても、接続時に相対向する回路電極同士又の直接接触により接続が得られる。ただし、回路接続材料が導電性粒子を含有すると、より安定した回路電極間の接続が得られるので好ましい。
【0095】
本発明において必要に応じて含まれる導電性粒子は、電気的接続を得ることができる導電性を有するものであれば特に制限されない。導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu及びはんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、導電性粒子は、核となる粒子を1層又は2層以上の層で被覆し、その最外層が導電性を有するものであってもよい。この場合、より優れたポットライフを得る観点から、最外層が、Ni、Cuなどの遷移金属よりも、Au、Ag及び/又は白金族金属などの貴金属を主成分とすることが好ましく、これらの貴金属の少なくとも1種以上からなることがより好ましい。これらの貴金属の中では、Auが最も好ましい。
【0096】
導電性粒子は、核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものであってもよい。また、導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を主成分とする絶縁性粒子を核とし、この核の表面に上記金属又はカーボンを主成分とする層で被覆したものであってもよい。
【0097】
導電性粒子が、絶縁性粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、絶縁性粒子がプラスチックを主成分とするものであり、最外層が貴金属を主成分とするものであると好ましい。これにより、回路接続材料中の導電性粒子が加熱及び加圧に対して良好に変形することができる。しかも、回路等の接続時に、導電性粒子の回路電極や接続端子との接触面積が増加する。そのため、回路接続材料の接続信頼性を更に向上させることができる。同様の観点から、導電性粒子が、上記加熱により溶融する金属を主成分として含む粒子であると好ましい。
【0098】
導電性粒子が、絶縁性粒子である核を導電層で被覆してなるものである場合、一層良好な導電性を得るために、導電層の厚みは100Å(10nm)以上であると好ましい。また、導電性粒子が、核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を、更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものである場合、最外層となる上記貴金属を主成分とする層の厚みは300Å(30nm)以上であると好ましい。この厚みが300Åを下回ると、最外層が破断しやすくなる。その結果、露出した遷移金属が接着剤成分と接触し、遷移金属による酸化還元作用により遊離ラジカルが発生しやすくなるため、ポットライフが容易に低下する傾向にある。一方、上記導電層の厚みが厚くなるとそれらの効果が飽和してくるので、その厚みを1μm以下にするのが好ましい。
【0099】
回路接続材料が導電性粒子を含有する場合、導電性粒子の配合割合は、特に制限を受けないが、接着剤成分100体積部に対して0.1〜30体積部であることが好ましく、0.1〜10体積部であることがより好ましい。この値が、0.1体積部未満であると良好な導電性が得られ難くなる傾向にあり、30体積部を超えると回路等の短絡が起こりやすくなる傾向がある。なお、導電性粒子の配合割合(体積部)は、23℃における回路接続材料を硬化させる前の各成分の体積に基づいて決定される。各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算する方法や、その成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたメスシリンダー等の容器にその成分を投入し、増加した体積から算出する方法によって求めることができる。また、回路接続材料を2層以上に分割し、ラジカル重合開始剤又はエポキシ樹脂硬化剤を含有する層と導電粒子を含有する層とに分割した場合、ポットライフの向上が得られる。
【0100】
本発明に係る回路接続材料はゴムを含有してもよい。これにより、応力の緩和及び接着性の向上が可能となる。さらには、この回路接続材料には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。更に回路接続材料には、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を配合してもよい。
【0101】
回路接続材料は、充填材(フィラー)を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材としては、絶縁性を有するものであって、その最大径が導電性粒子の平均粒径未満であれば使用できる。充填材の配合割合は、接着剤成分100体積部に対して、5〜60体積部であることが好ましい。充填材の配合割合が60体積部を超えると、信頼性向上の効果が飽和する傾向にあり、5体積部未満では充填材の添加効果が小さくなる傾向にある。
【0102】
本発明の回路接続材料は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。常温で固体の場合には、加熱してペースト化する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、回路接続材料と反応せず、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限はないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましく、例えば、上述の有機溶剤が挙げられる。沸点が50℃未満であると、室温で容易に溶剤が揮発してしまい後述するフィルムを作製するときの作業性が悪化する傾向にある。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後において十分な接着強度が得られない傾向にある。溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0103】
また、本発明の回路接続材料は、フィルム状にしてから用いることも可能である。このフィルム状回路接続材料は、回路接続材料に溶剤等を加えた混合液を、支持基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合液を含浸させて支持基材上に載置し、溶剤等を除去することによって得ることができる。このように回路接続材料をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0104】
用いられる支持基材としては、シート状又はフィルム状のものが好ましい。また、支持基材は2層以上を積層した形状のものでもよい。支持基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、配向ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム及びポリイミドフィルムが挙げられる。それらの中でも、寸法精度の向上とコスト低減の点からPETフィルムが好ましい。
【0105】
上述の回路接続材料は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の回路接続材料としても使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料の他、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料としても使用することができる。
【0106】
(回路部材の接続構造)
図1は、本発明に係る回路部材の接続構造一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す回路部材の接続構造1は相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部10が設けられている。
【0107】
第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、第1の回路基板21の主面21a上に形成された第1の回路電極22とを有する。第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成された第2の回路電極32とを有する。第1の回路基板21の主面21a上、及び/又は第2の回路基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。つまり、絶縁層は、第1の回路部材20及び第2の回路部材30のうち少なくとも一方と回路接続部10との間に形成される。
【0108】
第1及び第2の回路基板21,31としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、TCP、FPC、COFに体表されるポリイミド基材、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の有機物、これらの無機物や有機物を複合化した材料からなる基板が挙げられる。回路接続部10との接着強度を更に高める観点から、第1及び第2の回路基板のうち少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む材料からなる基板であることが好ましい。
【0109】
また、絶縁層が形成されている場合、絶縁層はシリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む層であることが好ましい。これにより、上記層が形成されていないものに比べて、第1の回路基板21及び/又は第2の回路基板31と回路接続部10との接着強度がより一層向上する。
【0110】
第1の回路電極22及び第2の回路電極32のうち少なくとも一方は、その表面が金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料からなることが好ましい。これにより、同一回路部材20又は30上で隣り合う回路電極22又は32同士の間で絶縁性を維持しつつ、対向する回路電極22及び33間の抵抗値をより一層低減させることができる。
【0111】
第1及び第2の回路部材20,30の具体例としては、液晶ディスプレイに用いられている、ITO等で回路電極が形成されたガラス基板又はプラスチック基板や、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらは必要に応じて組み合わせて使用される。
【0112】
回路接続部10は、導電性粒子を含有する上記回路接続材料の硬化物から形成されている。回路接続部10は、絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電性粒子7とから構成される。回路接続部10中の導電性粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21a,31a同士間にも配置されている。回路部材の接続構造1においては、導電性粒子7が第1及び第2の回路電極22,32の双方に直接接触している。これにより、第1及び第2の回路電極22,32が、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1及び第2の回路電極22,32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。なお、回路接続部10が導電性粒子7を含有していない場合には、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが直接接触することで、電気的に接続される。
【0113】
回路接続部10は、後述するように上記回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20及び第2の回路部材30に対する回路接続部10の接着力が十分に高い。
【0114】
(回路部材の接続構造の接続方法)
図2は、本発明に係る回路部材の接続方法の一実施形態を概略断面図により示す工程図である。
【0115】
本実施形態では、まず、上述した第1の回路部材20と、フィルム状回路接続材料40を用意する。フィルム状回路接続材料40は、含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分5及び導電性粒子7を含む。
【0116】
なお、導電性粒子7を含まない回路接続材料を用いることもできる。この場合、回路接続材料はNCP(Non−Conductive Paste)と呼ばれることもある。一方、導電性粒子7を含む回路接続材料は、ACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0117】
回路接続材料40の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。回路接続材料40の厚さが5μm未満では、第1及び第2の回路電極22,32間に回路接続材料40が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、第1及び第2の回路電極22,32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0118】
次に、フィルム状回路接続材料40を第1の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。そして、フィルム状回路接続材料40を、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料40を第1の回路部材20に仮接続する(図2(b))。
【0119】
このときの圧力は回路部材に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1〜30MPaとすることが好ましい。また、加熱しながら加圧してもよく、加熱温度は回路接続材料40が実質的に硬化しない温度とする。加熱温度は一般的には50〜190℃にするのが好ましい。これらの加熱及び加圧は0.5〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0120】
次いで、図2(c)に示すように、第2の回路部材30を、第2の回路電極32を第1の回路部材20の側に向けるようにしてフィルム状回路接続材料40上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持基材(図示せず)上に密着して設けられている場合には、支持基材を剥離してから第2の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。そして、回路接続材料40を加熱しながら、図2(c)の矢印A及びB方向に全体を加圧する。また、フィルム状回路接続材料40は、本発明の回路接続材料からなることから、支持基材上に設けられたまま放置しても、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れ、かつ、十分に高い回路部材との接着性を有している。
【0121】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、回路接続材料、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。例えば、回路接続材料がラジカル重合性化合物を含有する場合の加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。
【0122】
フィルム状回路接続材料40の加熱により、第1の回路電極22と第2の回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態でフィルム状回路接続材料40が硬化して、第1の回路部材20と第2の回路部材30とが回路接続部10を介して強固に接続される。
【0123】
フィルム状回路接続材料40の硬化により回路接続部10が形成されて、図1に示すような回路部材の接続構造1が得られる。なお、接続の条件は、使用する用途、回路接続材料、回路部材によって適宜選択される。
【0124】
本実施形態によれば、得られる回路部材の接続構造1において、導電性粒子7を対向する第1及び第2の回路電極22,32の双方に接触させることが可能となり、第1及び第2の回路電極22,32間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、回路接続部10が上記回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1及び第2の回路部材20又は30に対する回路接続部10の接着力が十分に高いものとなる。
【0125】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0126】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0127】
(導電性粒子の作製)
ポリスチレン粒子の表面上に、厚み0.2μmのニッケルからなる層を設け、更にこのニッケルからなる層の表面上に、厚み0.04μmの金からなる層を設けた。こうして平均粒径10μmの導電性粒子を得た。
【0128】
(ポリエステルウレタン樹脂の調製)
ジガルボン酸としてテレフタル酸と、ジオールとしてプロピレングリコールとの反応によりポリエステルポリオールを得た。このポリエステルポリオールをメチルエチルケトン(MEK)に溶解して溶液を得た。得られた溶液を、撹拌機、温度計、コンデンサー及び真空発生装置と窒素ガス導入管を具備したヒーター付きステンレススチール製オートクレーブに投入した。次いで、上記オートクレーブに、イソシアネートにとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを所定量投入し、触媒としてジブチル錫ラウレートをポリエステルポリオール100質量部に対して0.02質量部となる量投入し、75℃で10時間反応させた後、40℃まで冷却した。さらに、ピペラジンを加えて30分反応させることにより鎖延長した後、トリエチルアミンで中和させた。
【0129】
上記反応後の溶液を純水に滴下すると、溶剤及び触媒が水に溶解するとともに、ポリエステルウレタン樹脂が析出した。そして、析出したポリエステルウレタン樹脂を真空乾燥機で乾燥した。ポリエステルウレタン樹脂の重量分子量をGPC分析によって測定したところ、27000であった。なお、上記ポリエステルウレタン樹脂を調製する際、テレフタル酸/プロピレングリコール/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの配合モル比は、1.0/1.3/0.25であった。
【0130】
(ウレタンアクリレートの調整)
重量平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400質量部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート131質量部、触媒としてのジブチル錫ジラウレート0.5質量部及び重合禁止剤としてのハイドロキノンモノメチルエーテル1.0質量部を、50℃に加熱しながら攪拌して混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート222質量部を滴下し、更に攪拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を進行させた。イソシアネート基の反応率が99%以上になったことを確認後、温度を下げて、ウレタンアクリレートを得た。
【0131】
(合成例1)
ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1000mLのセパラブルフラスコを用意した。そこにジアミン化合物としてポリオキシプロピレンジアミン15.0mmol及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン105.0mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)287gを加え、室温で30分間撹拌した。次いで、水と共沸可能な芳香族炭化水素系有機溶剤としてトルエン180g、テトラカルボン酸二無水物として4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物114.0mmolを加え、50℃まで昇温して、その温度で1時間攪拌した後、さらに160℃まで昇温して3時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の流出が見られなくなっていることを確認したら、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、180℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去し、ポリイミド樹脂のNMP溶液を得た。
【0132】
上記ポリイミド樹脂のNMP溶液をメタノール中に投入し、析出物を回収後、粉砕、乾燥して含ケイ素化合物を含有しない含フッ素ポリイミド樹脂1を得た。得られたポリイミド樹脂1の重量平均分子量は112000であった。上記ポリイミド樹脂1をMEKに40質量%となるように溶解した。
【0133】
(合成例2)
ジアミン化合物をビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン17.8mmol及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン124.7mmol、テトラカルボン酸二無水物を4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物135.4mmolに変更し、NMPの添加量を275g、トルエンの添加量を175gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、含フッ素ポリイミド樹脂2を得た。含フッ素ポリイミド樹脂2中のケイ素含有量は0.8質量%であり、得られた含フッ素ポリイミド樹脂2の重量平均分子量は56000であった。上記ポリイミド樹脂2をMEKに40質量%となるように溶解した。
【0134】
(合成例3)
ジアミン化合物をビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン41.3mmol及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン123.8mmol、テトラカルボン酸二無水物を4,4’−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物156.8mmolに変更し、NMPの添加量を306g、トルエンの添加量を200gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、含フッ素ポリイミド樹脂3を得た。含フッ素ポリイミド樹脂3中のケイ素含有量は1.6質量%であり、得られた含フッ素ポリイミド樹脂3の重量平均分子量は74000であった。上記ポリイミド樹脂3をMEKに40質量%となるように溶解した。
【0135】
(合成例4)
ジアミン化合物をビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン7.8mmol及びポリオキシプロピレンジアミン134.7mmol、テトラカルボン酸二無水物を4,4’−プロピリデンビスフタル酸二無水物135.4mmolに変更し、NMPの添加量を275g、トルエンの添加量を175gに変更した以外は、合成例1と同様の操作を行い、非含フッ素ポリイミド樹脂4を得た。非含フッ素ポリイミド樹脂4中のケイ素含有量は1.0質量%であり、得られた非含フッ素ポリイミド樹脂4の重量平均分子量は98000であった。上記ポリイミド樹脂4はMEKに溶解しなかった。
【0136】
表2に上記各ポリイミド樹脂の原料及び物性をまとめて示す。
【表2】

【0137】
(実施例1)
含フッ素ポリイミド樹脂1のMEK溶液25質量部(含フッ素ポリイミド樹脂1を10質量部含有)、上記ポリエステルウレタン樹脂40質量部、上記ウレタンアクリレート49質量部、リン酸エステル型アクリレートとしてジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート1質量部、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネート5質量部を配合した。得られた溶液に上述の導電性粒子を含フッ素ポリイミド樹脂1、ポリエステルウレタン樹脂、ウレタンアクリレート、リン酸エステル型アクリレート及びt−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネートからなる接着剤成分100体積部に対して3体積部配合分散させて、回路接続材料を得た。次いで、得られた回路接続材料を厚み80μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布して塗膜を得た。次に、その塗膜を70℃で10分間熱風乾燥することにより、厚さが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。この回路接続材料における含ケイ素化合物の含有割合は、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0質量%であった。
【0138】
(実施例2)
含フッ素ポリイミド樹脂1に代えて含フッ素ポリイミド樹脂2を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。この回路接続材料における含ケイ素化合物の含有割合は、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.08質量%であった。
【0139】
(比較例1)
上記ポリエステルウレタン樹脂50質量部、上記ウレタンアクリレート49質量部、上記リン酸エステル型アクリレート1質量部、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノネート5質量部を配合した。ここへ導電性粒子を配合分散させて、回路接続材料を得た。回路接続材料中の導電性粒子は、回路接続材料の全体量に対して3質量%であった。次いで、得られた回路接続材料を厚み80μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布して塗膜を得た。次に、その塗膜を70℃で10分間熱風乾燥することにより、厚さが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。
【0140】
(比較例2)
含フッ素ポリイミド樹脂1に代えて含フッ素ポリイミド樹脂3を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルム状回路接続材料を得た。この回路接続材料における含ケイ素化合物の含有割合は、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.15質量%であった。
【0141】
(比較例3)
含フッ素ポリイミド樹脂1に代えて非含フッ素ポリイミド樹脂4を用い、回路接続材料を作製しようしたが、MEKに溶解しないため、回路接続材料を作製することができなかった。この回路接続材料における含ケイ素化合物の含有割合は、接着剤成分の全体量に対してケイ素原子換算で0.10質量%であった。
【0142】
<回路部材の接続構造の作製>
ライン幅50μm、ピッチ100μm及び厚み18μmの銅回路配線500本を、ポリイミドフィルムA(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」、厚み75μm)上に、接着剤層を介して形成した3層フレキシブル基板1(FPC基板1)を準備した。また、ライン幅50μm、ピッチ100μm及び厚み8μmの銅回路配線500本をポリイミドフィルムB(宇部興産社製、商品名「ユーピレックス」、厚み25μm)上に直接形成した2層フレキシブル基板2(FPC基板2)を準備した。さらに、ライン幅50μm、ピッチ100μm及び厚み0.4μmのクロム回路配線500本をガラス(コーニング社製、商品名「#1737」)上に直接形成したガラス基板を準備した。
【0143】
次いで、上記各FPC基板とガラス基板との間に上述のようにして得られたフィルム状回路接続材料を配置した。そして、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、160℃、3MPaの条件下、それらの積層方向に10秒間の加熱及び加圧を行った。こうして、幅2mmにわたりFPC基板とガラス基板とを回路接続材料の硬化物により電気的に接続した回路部材の接続構造を作製した。
【0144】
<剥離力の測定>
上記回路部材の接続構造の作製において、あらかじめガラス基板上に、フィルム状回路接続材料の接着面を貼り合わせた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱及び加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離して、FPC基板と接続した。その際、PETフィルムのフィルム状回路接続材料からの剥離力をJIS−Z0237に準じて90℃剥離法で測定した。剥離力の測定装置としてテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃、東洋ボールドウィン社製)を使用した。また、得られたフィルム状回路接続材料を真空包装材に収容し、40℃で5日間放置した後、上記と同様にして回路部材の接続構造を作製し、PETフィルム剥離時の剥離力を測定した。結果を表3に示す。
【0145】
<接着強度の測定>
得られた回路部材の接続構造における回路間の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し評価した。ここで、接着強度の測定装置としてテンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃、東洋ボールドウィン社製)を使用した。結果を表3に示す。
【0146】
【表3】

【0147】
実施例1、2及び比較例1、2で得られたフィルム状回路接続材料は、初期において、いずれも6N/cm以上と実用上問題ない範囲の接着強度を示した。しかしながら、実施例1で得られたフィルム状回路接続材料は含フッ素ポリイミド樹脂を含有するため、実施例1及び比較例よりも接着強度が高い値を示した。また、実施例2で得られたフィルム状回路接続材料はポリイミド樹脂がフッ素原子に加えて更にシリコーン構造を有しているため、比較例よりも高い接着強度を示した。一方、比較例2で得られたフィルム状回路接続材料は、ケイ素含有量が多かったため、40℃で5日間放置後、経時変化していまい、PETフィルムを剥離することができなかった。
【0148】
<接続外観の観察>
得られた回路部材の接続構造を85℃、相対湿度85%RHの高温高湿試験装置内に250時間放置し、耐湿試験を行った。接着直後と耐湿試験後の外観をガラス基板側から顕微鏡で観察した。回路接続部と回路間スペース界面との間で剥離が生じた場合、回路間の絶縁性が大幅に低下するためNGと判定した。また、得られたフィルム状回路接続材料を真空包装材に収容し、40℃で5日間放置した後、上記と同様にして回路部材の接続構造を作製し、同様に外観を観察した。結果を表4に示す。
【0149】
【表4】

【0150】
実施例1及び2で得られたフィルム状回路接続材料を用いた場合、耐湿試験前後で剥離の発生はなく良好な外観を有していた。一方、比較例1で得られたフィルム状回路接続材料を用いた場合は、回路接続部とガラス基板との接着力が弱いため、耐湿試験後に剥離が発生した。
【0151】
実施例1及び2で得られたフィルム状回路接続材料は、上記評価の全てにおいて良好な特性を示した。一方、比較例1で得られたフィルム状回路接続材料は、含フッ素ポリイミド樹脂を含有していないため、耐湿試験後に回路接続部とガラス基板界面に剥離気泡が発生した。また、比較例2で得られたフィルム状回路接続材料も、初期特性は良好であった。しかしながら、このケイ素含有量が0.10質量%を超えるため、40℃で5日間処理後、PETフィルムとの粘着力が大きくなり、回路接続材料からPETフィルムを剥離することができなくなり、接続体の作製が不可能となった。さらに、比較例3では、合成例4で作製したポリイミド樹脂4がフッ素を含有しないため溶解性に劣り、回路接続材料を作製することができなかった。
【0152】
本発明の効果は、被着体に対する接着剤成分の濡れ性の向上が主要因であり、フッ素の導入により被着体に対する接着剤成分の濡れ性が飛躍的に向上したためと考えられる。したがって、フッ素含有ポリイミドだけでなく、他の含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含む回路接続材料においても、同様の効果が得られると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明によれば、回路部材の材質によらず十分に良好な接着強度を示し、かつ、転写性の経時変化が抑制され転写性に十分優れる回路接続材料、これを用いた回路部材の接続構造及び回路部材の接続構造の製造方法を提供できる。
【符号の説明】
【0154】
1…回路部材の回路接続構造、5…接着剤成分、7…導電性粒子、10…回路接続部、11…絶縁層、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、21a…第1の回路基板主面、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、31a…第2の回路基板主面、32…第2の回路電極、40…フィルム状回路接続材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材とを、前記第1及び前記第2の回路電極を対向させた状態で電気的に接続するための回路接続材料であって、
含フッ素有機化合物を含有する接着剤成分を含み、
前記含フッ素有機化合物がシリコーン構造を有し、
当該接着剤成分が、その全体量に対して含ケイ素化合物をケイ素原子換算で0.10質量%以下含有する回路接続材料。
【請求項2】
前記接着剤成分はラジカル重合開始剤を更に含有し、前記含フッ素有機化合物はラジカル重合性の含フッ素有機化合物を含有する、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項3】
前記含フッ素有機化合物は含フッ素ポリイミド樹脂を含有する、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記接着剤成分はエポキシ樹脂硬化剤を更に含有し、前記含フッ素有機化合物は含フッ素エポキシ樹脂を含有する、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記含フッ素有機化合物の重量平均分子量が5000以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
前記含フッ素有機化合物が有機溶剤に可溶である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項7】
前記含フッ素有機化合物が、芳香族基及び/又は脂環式基を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項8】
前記含フッ素有機化合物のガラス転移温度が50℃以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項9】
導電性粒子を更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項10】
フィルム状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項11】
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、
第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成され、前記第2の回路電極が前記第1の回路電極と対向配置されるように配置された第2の回路部材と、
前記第1の回路基板と前記第2の回路基板との間に設けられ、前記第1及び前記第2の回路電極が電気的に接続されるように前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを接続する回路接続部と、
を備えた回路部材の接続構造であって、
前記回路接続部が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料の硬化物である回路部材の接続構造。
【請求項12】
前記第1及び前記第2の回路電極のうち少なくとも一方は、その表面が金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料からなる、請求項11記載の回路部材の接続構造。
【請求項13】
前記第1及び前記第2の回路基板のうち少なくとも一方は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む材料からなる基板である、請求項11又は12に記載の回路部材の接続構造。
【請求項14】
前記第1及び前記第2の回路部材のうち少なくとも一方と前記回路接続部との間に、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む層が形成されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載の回路部材の接続構造。
【請求項15】
第1の回路基板の主面上に第1の回路電極が形成された第1の回路部材と、第2の回路基板の主面上に第2の回路電極が形成された第2の回路部材と、を、第1の回路電極及び第2の回路電極が対向配置されるように配置し、前記第1の回路部材と前記第2の回路部材との間に請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路接続材料を介在させてなる積層体を、その積層方向に加圧しながら加熱して、前記第1及び前記第2の回路電極が電気的に接続されるように前記第1の回路部材と前記第2の回路部材とを接続する工程を備える回路部材の接続構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−33495(P2012−33495A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173158(P2011−173158)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2008−530900(P2008−530900)の分割
【原出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】