説明

回路接続用接着剤

【課題】電子部品と回路基板を、回路接続用接着剤を介して接続する際に、電子部品の突起電極と回路基板の配線電極の接続信頼性を向上することができる回路接続用接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、および尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、シランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤2を介して、電子部品3の突起電極5と、回路基板1の配線電極4が接続されている。そして、回路接続用接着剤2に含有されるシランカップリング剤は、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、回路等を設けた基板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための回路接続用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の回路接続用接着剤が広く使用されている。例えば、ICチップ等の電子部品とフレキシブル配線板(FPC)、電子部品とITO電極回路が形成されたガラス基板等の回路基板の接合に使用されている。
【0003】
この回路接続用接着剤は、絶縁性の樹脂組成物中に導電性粒子を分散させたフィルム状またはペースト状の接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、例えば、電子部品の表面に形成された突起電極(または、バンプ)と、回路基板の表面に形成されたITO電極等の配線電極の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する突起電極と配線電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。そして、回路接続用接着剤においては、当該回路接続用接着剤の厚み方向に相対峙する電極間の抵抗(導通抵抗)を低くするという導通性能と、回路接続用接着剤の面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。
【0004】
ここで、ガラス基板等の回路基板においては、その表面の凹凸が少ないため、接着剤を介して電子部品と回路基板とを接続する際に、所謂アンカー効果が殆ど見込めず、回路基板と熱硬化性樹脂との密着性が乏しくなるという問題がある。
【0005】
そこで、回路基板と熱硬化性樹脂との界面接着力を向上すべく、接着剤にカップリング剤を添加する方法が一般的に行われている。より具体的には、例えば、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂を主成分とし、シランカップリング剤と硬化剤を有するエポキシ系絶縁性接着剤や、さらに、金属被覆樹脂粒子を有するエポキシ系異方導電性接着剤を介して、電子部品と回路基板とを接続する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−306927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の回路接続用接着剤においては、電子部品の表面に形成された金属製の突起電極(例えば、金メッキバンプ)や、回路基板の表面に形成された金属製の配線電極(例えば、ITO電極)と、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との接着力が低いため、回路接続用接着剤と、配線電極、および突起電極の接着界面における、これらの電極の剥離が生じ易い。また、回路基板と熱硬化性樹脂との十分な接着力を得るためには、シランカップリング剤を多量に添加する必要があるため、耐湿性低下や耐熱性低下等の熱硬化性樹脂の物性に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、回路基板と電子部品との接続信頼性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、電子部品と回路基板を、回路接続用接着剤を介して接続する際に、電子部品の突起電極と回路基板の配線電極の接続信頼性を向上することができる回路接続用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、および尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、シランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤において、シランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、および尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、シランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、電子部品の突起電極を回路基板の配線電極に接続する際に、シランカップリング剤のメルカプト基と、金属製の突起電極(例えば、金メッキバンプ)、および金属性の配線電極(例えば、ITO電極)の表面が反応し、配線電極、および突起電極の表面とカップリング剤の間で強固な化学結合が生じることになる。従って、回路基板と電子部品を、回路接続用接着剤を介して接続する際に、回路接続用接着剤の熱硬化性樹脂と、金属製の配線電極、および突起電極を強固に結びつけることが可能になり、回路接続用接着剤の熱硬化性樹脂と、金属製の配線電極、および突起電極の接着力を向上させることができる。その結果、回路接続用接着剤と、配線電極、および突起電極の接着界面における、配線電極、および突起電極の剥離を防止できるとともに、熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を防止することが可能になる。また、回路基板と電子部品を、回路接続用接着剤を介して接続する際の、回路基板と電子部品との接続信頼性を向上させることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回路接続用接着剤であって、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量が、回路接続用接着剤に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする。
【0011】
同構成によれば、配線電極、および突起電極の表面と、メルカプト基を有するカップリング剤の間における強固な化学結合を効果的に発揮することができるとともに、回路接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を効果的に防止することが可能になる。
【0012】
なお、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2に記載の回路接続用接着剤であって、シランカップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤を更に含むことが好ましい。これは、エポキシ基は、回路接続用接着剤中の樹脂成分と反応することにより、高分子のネットワークに取り込まれるため、回路接続用接着剤の樹脂成分とガラス基板等の回路基板をより強固に結びつけることができるからである。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回路接続用接着剤であって、メルカプト基を有するシランカップリング剤とエポキシ基を有するシランカップリング剤を含むシランカップリング剤の総配合量が、回路接続用接着剤に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする。
【0014】
同構成によれば、回路接続用接着剤に含有されるシランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤の他に、エポキシ基を有するシランカップリング剤等を含む場合においても、配線電極、および突起電極の表面と、メルカプト基を有するカップリング剤の間における強固な化学結合を効果的に発揮することができるとともに、回路接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を効果的に防止することが可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回路接続用接着剤であって、前記導電性粒子のアスペクト比が5以上であることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、回路接続用接着剤が、接触確率の高い導電性粒子を含有するため、導電性粒子の配合量を増やすことなく、配線電極と突起電極を導電接続することが可能になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の回路接続用接着剤であって、フィルム形状を有することを特徴とする。同構成によれば、回路接続用接着剤の取り扱いが容易になるとともに、例えば、回路接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、電子部品の突起電極を回路基板の配線電極に接続する際の作業性が向上する。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の回路接続用接着剤であって、導電性粒子の長径方向を、フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする。同構成によれば、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極−突起電極間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回路基板と電子部品を、回路接続用接着剤を介して接続する際に、回路基板と電子部品との接続信頼性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る回路接続用接着剤により、電子部品を実装した回路基板を示す断面図である。本実施形態の回路接続用接着剤を用いたICチップ等の電子部品の実装方法としては、例えば、フリップチップ方式が採用され、熱硬化性樹脂を主成分とする回路接続用接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、当該熱硬化性樹脂を硬化させ、電子部品の突起電極を回路基板の配線電極に接続する。
【0021】
より具体的には、図1に示すように、ガラス基板等の回路基板1上に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とし、シランカップリング剤と、導電性粒子を含有する導電性の回路接続用接着剤2を載置し、当該回路接続用接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、回路基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、回路接続用接着剤2を回路基板1上に仮接着する。なお、回路接続用接着剤2は、ペースト状で使用することができるが、フィルム形状を有する回路接続用接着剤2も好適に使用できる。次いで、電子部品3を下向き(フェースダウン)にした状態で、回路基板1の表面に形成された配線電極4と、電子部品3の表面に形成された突起電極5との位置合わせをしながら、電子部品3を回路接続用接着剤2上に載置することにより、回路基板1と電子部品3との間に回路接続用接着剤2を介在させる。次いで、回路接続用接着剤2を所定の硬化温度に加熱した状態で、電子部品3を介して、当該回路接続用接着剤2を回路基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、回路接続用接着剤2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、回路接続用接着剤2は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、当該回路接続用接着剤2は、上述の硬化温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した回路接続用接着剤2の硬化時間が経過すると、回路接続用接着剤2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、導電性の回路接続用接着剤2を介して、配線電極4と突起電極5を接続し、電子部品3を回路基板1上に実装する。
【0022】
また、本発明の配線電極4としては、例えば、回路基板1上に形成された金属製のITO電極が使用される。また、突起電極5としては、例えば、電子部品3上にバリアメタル(不図示)を形成するとともに、当該バリアメタル上に、所定の開口パターンを有するフォトレジスト(不図示)を形成し、当該フォトレジストをマスクとして、金をメッキ(例えば、電解メッキ)することにより形成される金属製の金メッキバンプが使用される。
【0023】
ここで、本実施形態においては、回路接続用接着剤2に含有されるシランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含有する点に特徴がある。このようなメルカプト基を有するシランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤2を使用することにより、回路接続用接着剤2を介して、加熱加圧処理を行うことにより、当該熱硬化性樹脂を硬化させ、電子部品3の突起電極5を回路基板1の配線電極4に接続する際に、シランカップリング剤のメルカプト基と、金属製の突起電極5、および金属性の配線電極4の表面が反応し、配線電極4、および突起電極5の表面とカップリング剤の間で強固な化学結合が生じることになる。従って、回路基板1と電子部品3を、回路接続用接着剤2を介して接続する際に、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂と、金属製の配線電極4、および突起電極5を強固に結びつけることが可能になり、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂と、金属製の配線電極4、および突起電極5の接着力を向上させることができる。
【0024】
なお、上述のシランカップリング剤の他、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられるが、これらのカップリング剤のうち、シランカップリング剤は金属元素を含まず、マイグレーションを起こす可能性が低いため、本実施形態においては、シランカップリング剤が好適に使用される。
【0025】
また、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量は、回路接続用接着剤2に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましい。これは、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量が、0.1重量%より小さい場合は、配線電極4、および突起電極5の表面とカップリング剤の間における化学結合が十分に発揮されず、5重量%より大きい場合は、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性が十分に発揮されないためである。
【0026】
また、メルカプト基を有するシランカップリング剤と、メルカプト基の以外の有機官能基を有するシランカップリング剤を併用する構成としても良い。上述のメルカプト基以外の、シランカップリング剤に含まれる有機官能基としては、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、シアノ基等が挙げられるが、これらのメルカプト基の以外の官能基のうち、エポキシ基、アミノ基が特に好ましい。これらの有機官能基は、回路接続用接着剤2中の樹脂成分と反応することにより、高分子のネットワークに取り込まれるため、回路接続用接着剤2の樹脂成分とガラス基板等の回路基板1をより強固に結びつけることができるからである。
【0027】
また、回路接続用接着剤2に含有されるシランカップリング剤の配合量は、回路接続用接着剤2に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。このような構成により、回路接続用接着剤2に含有されるシランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤の他に、エポキシ基を有するシランカップリング剤等を含む場合においても、配線電極、および突起電極の表面と、メルカプト基を有するカップリング剤の間における強固な化学結合を効果的に発揮することができるとともに、回路接続用接着剤の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を効果的に防止することが可能になる。
【0028】
本発明に使用される回路接続用接着剤2としては、従来、回路基板1と電子部品3の接続に使用されてきた、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に導電性粒子が分散されたものが使用できる。例えば、エポキシ樹脂に、銅、銀あるいは黒鉛等の導電性粒子の粉末が分散されたものが挙げられる。ここで、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。このうち、特に、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用することにより、回路接続用接着剤2のフィルム形成性、耐熱性、および接着力を向上させることが可能になる。また、回路接続用接着剤2は、上述の熱硬化性樹脂のうち、少なくとも1種を主成分としていれば良い。
【0029】
なお、使用するエポキシ樹脂は、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型、F型、S型、AD型、またはビスフェノールA型とビスフェノールF型との共重合型のエポキシ樹脂や、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0030】
また、エポキシ樹脂の分子量は、回路接続用接着剤2に要求される性能を考慮して、適宜選択することができる。高分子量のエポキシ樹脂を使用すると、フィルム形成性が高く、また、接続温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、後述の導電性粒子の配向を乱すことなく接続できる効果がある。一方、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上するとともに、樹脂の凝集力が高まるため、接着力が高くなるという効果が得られる。従って、分子量が15000以上の高分子量エポキシ樹脂と分子量が2000以下の低分子量エポキシ樹脂とを組み合わせて使用することにより、性能のバランスが取れるため、好ましい。なお、高分子量エポキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂の配合量は、適宜、選択することができる。
【0031】
また、本発明に使用される回路接続用接着剤2として、潜在性硬化剤を含有する接着剤が使用できる。この潜在性硬化剤は、低温での貯蔵安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤である。この潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0032】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0033】
また、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、長期保存性と速硬化性という矛盾した特性の両立を図ることができるため、好ましい。従って、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が、特に好ましい。
【0034】
また、回路接続用接着剤2として、図2に示すように、導電性粒子6を含む異方導電性接着剤も使用することができる。より具体的には、当該異方導電性接着剤として、例えば、上述のエポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂を主成分とし、当該樹脂中に、微細な粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図3に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0035】
また、この異方導電性接着剤において、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム状の異方導電性接着剤を形成する時点で、異方導電性接着剤の厚み方向にかけた磁場の中を通過させることにより、フィルム状の異方導電性接着剤の厚み方向(磁場方向であって、図2の矢印Xの方向)に配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、フィルム状の異方導電性接着剤の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図2の矢印Yの方向)における高い導電抵抗によって隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、異方導電性接着剤の厚み方向Xにおける低い導電抵抗によって多数の配線電極4−突起電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0036】
また、本発明に使用される金属微粒子は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらのうち2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0037】
また、導電性粒子6のアスペクト比が5以上であることが好ましい。このような導電性粒子6を使用することにより、回路接続用接着剤2として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が高くなる。従って、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、配線電極4と突起電極5を導電接続することが可能になる。
【0038】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0039】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、および尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子を含有し、かつ、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤2を使用する構成としている。従って、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂と、金属製の配線電極4、および突起電極5の接着力を向上させることができるため、回路接続用接着剤2と、配線電極4、および突起電極5の接着界面における、配線電極4、および突起電極5の剥離を防止できるとともに、熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を防止することが可能になる。また、回路基板1と電子部品3を、回路接続用接着剤2を介して接続する際の、回路基板1と電子部品3との接続信頼性を向上させることが可能になる。
【0040】
(2)本実施形態においては、メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量を、回路接続用接着剤2に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上5重量%以下としている。従って、上述の、配線電極4、および突起電極5の表面と、メルカプト基を有するカップリング剤の間における強固な化学結合を効果的に発揮することができる。また、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を効果的に防止することができる。
【0041】
(3)本実施形態においては、シランカップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤を更に含む構成としている。従って、回路接続用接着剤2の樹脂成分と回路基板1をより強固に結びつけることが可能になる。
【0042】
(4)本実施形態においては、メルカプト基を有するシランカップリング剤とエポキシ基を有するシランカップリング剤を含むシランカップリング剤の総配合量を、回路接続用接着剤2に含有される熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上10重量%以下としている。従って、回路接続用接着剤2に含有されるシランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤の他に、エポキシ基を有するシランカップリング剤等を含む場合においても、配線電極4、および突起電極5の表面と、メルカプト基を有するカップリング剤の間における強固な化学結合を効果的に発揮することができる。また、回路接続用接着剤2の熱硬化性樹脂の耐湿性や耐熱性の低下を効果的に防止することが可能になる。
【0043】
(5)本実施形態においては、回路接続用接着剤2が、アスペクト比が5以上である導電性粒子6を含有する構成としている。従って、回路接続用接着剤2が、接触確率の高い導電性粒子6を含有するため、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、配線電極4と突起電極5を導電接続することが可能になる。
【0044】
(6)本実施形態においては、フィルム形状を有する回路接続用接着剤2を使用する構成としている。従って、回路接続用接着剤2の取り扱いが容易になるとともに、回路接続用接着剤2により、配線電極4と突起電極5を接続する際の作業性が向上する。
【0045】
(7)本実施形態においては、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させて使用する構成としている。従って、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の配線電極4−突起電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・導電性粒子6の短径Rが1μm以下のものを使用する構成としても良い。このような導電性粒子6を使用することにより、回路接続用接着剤2として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が更に高くなるため、更に少ない導電性粒子6の配合量で、配線電極4と突起電極5を導電接続することが可能になる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0048】
(実施例1)
(接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの分布が1μmから8μm、短径Rの分布が0.1μmから0.4μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。樹脂としては、フェノキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕、ナフタレン型のエポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D〕、メルカプト基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM803〕と、マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕とを重量比で30/15/15/2/38の割合で配合した。
【0049】
これらの樹脂および硬化剤をγ−ブチロラクトンに溶解後、三本ロールによる混練を行い、樹脂濃度が60重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.5体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、65℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ25μmのフィルム形状の異方導電性をもつ回路接続用接着剤を作製した。
【0050】
(抵抗評価)
幅15μm、長さ100μm、高さ16μmの金メッキバンプが15μm間隔で726個配列されたICチップと、幅20μm、長さ100μm、高さ0.3μmのITO電極が、10μm間隔で726個形成されたガラス基板とを用意した。そして、このICチップとガラス基板の間に作製した接着剤を挟み、180℃に加熱しながら、1バンプあたり20gfの圧力で30秒間加圧して接着させ、ICチップとガラス基板の接合体を得た。次いで、この接合体の726個の電極のうち、ITO電極、接着剤、および金バンプを介して接続された連続する32個の電極の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を32で除することにより、1電極あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0051】
(耐熱・耐湿評価)
また、耐熱・耐湿試験として、上記のICチップとガラス基板の接合体を、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に200時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2)
フェノキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕、ナフタレン型のエポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D〕、メルカプト基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM803〕、およびマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕の重量比を、30/15/15/5/35に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性接着剤を作製し、ICチップとガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、抵抗評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
フェノキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕、ナフタレン型のエポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D〕、メルカプト基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM803〕、およびマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕の重量比を、30/15/15/0.2/39.8に変更したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性接着剤を作製し、ICチップとガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、抵抗評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0054】
(実施例4)
樹脂として、フェノキシ樹脂〔ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1256〕、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕、ナフタレン型のエポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D〕、メルカプト基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM803〕、エポキシ基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM403〕、およびマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3941〕とを重量比で30/15/15/2/2/36の割合で配合したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性接着剤を作製し、また、ICチップとガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、抵抗評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
メルカプト基含有シランカップリング剤〔信越シリコーン(株)製、商品名KBM803〕を使用しなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、異方導電性接着剤を作製し、ICチップとガラス基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、抵抗評価、および耐熱・耐湿評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1に示すように、実施例1〜4、および比較例1のいずれの場合においても、初期接続抵抗に殆ど差がなかった。しかし、温度を85℃、湿度を85%に設定した恒温恒湿槽中に200時間放置した後は、実施例1〜4のいずれの場合においても、比較例1に比し、接続抵抗が小さいことが判る。これは、実施例1〜4においては、メルカプト基を有するシランカップリング剤が含有されているため、シランカップリング剤のメルカプト基と、配線電極、および突起電極の表面が反応し、配線電極、および突起電極の表面とカップリング剤の間で強固な化学結合が生じため、回路接続用接着剤の樹脂成分と、配線電極、および突起電極の接着力が向上したためであると考えられる。また、特に、実施例4においては、エポキシ基を有するシランカップリング剤を更に含有しているため、回路接続用接着剤の樹脂成分とガラス基板をより強固に結びつけたためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の活用例としては、電極、回路等を設けた基板や電子部品等を接着し、かつ電気的に接続するための回路接続用接着剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る回路接続用接着剤により、電子部品を実装した回路基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回路接続用接着剤として、導電性粒子を含有する異方導電性接着剤を使用し、異方導電性接着剤を介して、電子部品を回路基板に実装した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る回路接続用接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1…回路基板、2…回路接続用接着剤、3…電子部品、4…配線電極、5…突起電極、6…導電性粒子、X…フィルム形状を有する回路接続用接着剤の厚み方向、Y…フィルム形状を有する回路接続用接着剤の面方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、および尿素樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂を主成分とし、導電性粒子と、シランカップリング剤を含有する回路接続用接着剤において、
前記シランカップリング剤が、メルカプト基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする回路接続用接着剤。
【請求項2】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤の配合量が、前記回路接続用接着剤に含有される前記熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の回路接続用接着剤。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有するシランカップリング剤を更に含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路接続用接着剤。
【請求項4】
前記メルカプト基を有するシランカップリング剤と前記エポキシ基を有するシランカップリング剤を含む前記シランカップリング剤の総配合量が、前記回路接続用接着剤に含有される前記熱硬化性樹脂の合計重量の0.1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の回路接続用接着剤。
【請求項5】
前記導電性粒子のアスペクト比が5以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回路接続用接着剤。
【請求項6】
フィルム形状を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の回路接続用接着剤。
【請求項7】
前記導電性粒子の長径方向を、前記フィルム形状を有する接着剤の厚み方向に配向させたことを特徴とする請求項6に記載の回路接続用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−317563(P2007−317563A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147218(P2006−147218)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】