説明

回路板の形成方法

【目的】半導体チップの直接実装などに用いられる基板には低膨張の基板が必要であるが、樹脂層が低膨張でも回路形成に用いる金属が低膨張でなければその効果は減少する。このため、低膨張の金属を回路形成に用いる。
【構成】低膨張の樹脂層を用いた回路板において、低膨張の金属を回路導体として用いることを特徴とする回路形成方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低膨張の回路板の形成方法に関する。とくにLCCCや半導体チップなどを基板に直接搭載する際、高い信頼性を得ることのできる回路板を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、低膨張の回路板としては、アラミド繊維等の、負の膨張係数をもつ繊維を補強材として、回路を形成する方法、低膨張の金属板、とくにインバーと呼ばれる36アロイ(鉄・ニッケル合金)や42アロイを回路のコア(芯)材として使用する方法などがある。
【0003】アラミド繊維等を補強材として使用する方法は、樹脂層の線膨張係数を数ppm/℃とすることができるため、低膨張を必要とするLCCCの実装やチップオンボードなどに用いられてきた。しかし、このようにして形成された樹脂層は、それ自体弾性係数が小さいため、銅箔が内層に配置され、しかも残銅率が高い多層板においては、内層の銅箔の高い膨張によって相殺され、多層板全体の膨張係数が大きくなるという欠点がある。
【0004】一方、インバーを用いた低膨張基板は、コア(芯)材に厚いインバーを配置することによって膨張を低下させている。この場合の樹脂層としては、ガラス/エポキシやアラミド/エポキシが使用されているが、いずれにおいてもインバーの重量が大きいという欠点があった。なお、この場合には、インバーにはスルーホールをつなぐ目的で穴明けが行われているが回路形成は行われない。
【0005】
【発明の目的】本発明の目的は、軽量で信頼性の高い低膨張多層板を提供することにある。
【0006】
【発明の構成】本発明は、低膨張の樹脂層を用いた回路板において、低膨張の金属を回路導体として用いることを特徴とする回路形成方法である。
【0007】本発明において、『低膨張』とは、好ましくは10ppm/℃以下の線膨張係数をいう。すなわち、樹脂層および/または回路導体は、10ppm/℃以下の線膨張係数をもつことが好ましい。
【0008】本発明において、低膨張の回路導体として用いられる金属は、42アロイ(鉄・ニッケル合金)または36アロイ(同)が好ましい。
【0009】これらの低膨張金属は、その両面に銅をめっきまたは圧着したのち、樹脂層と積層される。銅の厚みは1ないし20μmが好ましい。
【0010】銅めっきされた低膨張金属は、表面粗化処理を施され、またはブラックオキサイドあるいはブラウンオキサイドと呼ばれる酸化処理を施される。ブラックオキサイド処理は通常、亜塩素酸ナトリウムが使用され、ブラウンオキサイド処理はプラックオキサイドの軽い処理ののち硫酸が処理される。
【0011】片面または両面の回路を形成するには、表面粗化処理を施された該銅めっき低膨張金属をプリプレグとともに積層し、銅張積層板としたのち表面の金属をエッチングすることが好ましい。
【0012】多層回路板を形成するためには、表面粗化した該銅めっき低膨張金属を両面に使用した積層板を成形したのち、回路形成後表面をブラックオキサイドまたはプラウンオキサイド処理を行ったのちこれをコア材としてプリプレグ、表面銅箔とともに積層して多層回路を形成することが望ましい。
【0013】低膨張金属のエッチングには、塩化第二鉄、過硫酸アンモン、塩化第二銅、クロム酸・硫酸、過酸化水素と硫酸、水酸化ナトリウムなどが好適に用いられる。
【0014】本発明の効果は、樹脂層の線膨張係数(温度膨張係数)が10ppm/℃以下であることが好ましい。このような樹脂層の例として、補強材にアラミド繊維、ガラス繊維、石英繊維、ポリエステル繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリアリレート繊維、ポリスルフォン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルイミド繊維などを使用し、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアノエステル樹脂、ポリシロキサン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いた各種の複合系が好適である。また、これらのマトリックス樹脂や補強繊維にシリカ、アルミナ、ベリリア、炭化珪素、ジルコニアなどの充填材をブレンドすることも熱伝導性や寸法安定性などを向上させる目的で好適である。
【0015】本発明において、アラミド(芳香族ポリアミド)とは、下記反復単位(I)式および/または(II)式からなるものである。
【0016】
【化1】


【0017】
【化2】


上記式中、Ar1 ,Ar2 ,Ar3 は置換されたもしくは置換されない芳香環であって、下記の基から選ばれる。
【0018】
【化3】


ただし、Xは下記の2価の基などである。
【0019】
【化4】


Ar1 ,Ar2 ,Ar3 の芳香環への置換基として炭素原子数1〜3のアルキル基,ハロゲン原子,フェニル基などがある。上記反復単位(I)式の芳香族ポリアミドのうちAr1 の15〜30モル%が
【0020】
【化5】


および/または
【0021】
【化6】


であり、残りが
【0022】
【化7】


および/または
【0023】
【化8】


および/または
【0024】
【化9】


【0025】である直線あるいは平行軸結合の芳香族残基(ただし芳香族環に直接結合している水素原子の一部がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基で置換されていてもよい)で構成される共重合物を十分に延伸して高度に分子配向させた高モジュラス全芳香族ポリアミド共重合体繊維が特に良好である。
【0026】本発明の補強材に用いる繊維の単糸繊維は0.1〜10デニール、好ましくは0.3〜5デニールである。0.1デニール未満では製糸技術上困難な点が多い(断糸,毛羽の発生など)。一方、10デニールを越えると機械的物性の点で実用的でなくなる。
【0027】芳香族ポリアミド繊維は種々の形態をとることができる。例えば、織物、長繊維不織布、短繊維不織布、紙などのシート形態としての基材であってもよく、また単に樹脂中に分散されてなる短繊維形態としての基材であってもよい。不織布や紙などの形態において繊維は短繊維あるいはフィブリル状パルプのいずれの形態でもよくまたこれらの任意の組合せからなる混合物であってもよい。
【0028】短繊維の場合、繊維長は1〜60mmが好ましく、さらには2〜50mmが好ましい。繊維長が1mm未満の場合、得られる不織布や紙の機械的物性が低下し、また繊維長が60mmを越えると得られる不織布や紙中における短繊維の分布状態が不良となりやはり機械的物性が低下する。短繊維を機械的剪断力によりフィブリル化させたパルプは製糸困難な繊度の短繊維まで得ることができ、とくに紙では短繊維の分布状態をより向上させ地合を改良することができる。総じて樹脂の含浸性が良好で均一な地合、性能の得られる形態は紙である。
【0029】線膨張係数が小さい限り、上記の補強材なしに樹脂または充填材を含む樹脂のみで低膨張を達成できれば、補強材は必ずしも必要でなくなる。
【0030】
【発明の効果】本発明により、低膨張基板の線膨張係数を一層小さくすることができ、これによりLCCCやベアチップの実装信頼性を向上させることができる。さらに一般に低膨張基板に発生するそり・ねじれを減少させることができる。
【0031】さらに内層コアに本発明の回路形成方法が使用されたときは、チップなどから発生する熱を放散させるためにも有効である。
【0032】
【実施例1】ビスフェノールAとホルムアルデヒドとの重縮合のグリシジルエーテル化物(エポキシ当量208)80重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量187)20重量部およびテトラブロモビスフェノールA30重量部をジメチルイミダゾール0.03重量部の存在下で反応させてエポキシ当量342、ブロム含有量23重量%のエポキシ樹脂a―1を得た。次にビスフェノールAとホルムアルデヒドとの重縮合物である硬化剤b―1を得た。エポキシ樹脂a―156重量部、ブロム化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470、ブロム含有量48部重量%)20重量部、硬化剤b―1 24重量部とを配合し、これに2―エチル―4―メチルイミダゾール0.04重量部からなるエポキシ樹脂組成物にメチルエチルケトン/エチレングリコールモノメチルエーテル混合溶剤(混合重量比1/1)を加えて不揮発分60重量%、ブロム含量22.5重量%(固形分対比)のワニスを調整する。
【0033】芳香族ポリアミド繊維(「テクノーラ」帝人(株)製、1.5デニール、3mm長)および水系エポキシ樹脂バインダからなる芳香族ポリアミド繊維紙(坪量58g/m2 、厚み0.16mm)に上述のワニスを含浸し100℃で3分間乾燥しエポキシ樹脂組成物含有量が60重量%のプリプレグを得た。なお、このプリプレグのみで積層した樹脂板の線膨張係数(熱力学分析機、TMAで測定)は6.0ppm/℃であった。
【0034】一方、36アロイの圧延板(厚み20μm)の両面に電解めっきにより厚み8μmの銅をめっきし、低膨張金属箔(線膨張係数8ppm/℃)を得た。この金属箔に通常の黒化処理(亜塩素酸ナトリウムによる処理)を行い、『処理箔』を得た。
【0035】プリプレグ2枚の両側に前記処理箔を各1枚積層し、最高温度175℃、最高圧力40kg/cm2 で45分間熱プレスし、コア材を得た。
【0036】コア材の処理箔を塩化第二鉄水溶液(80℃)でエッチング加工(残留面積60%)したのちプリプレグ各1枚をコア材の外層に、さらに再外層には『処理箔』を積層し、同様に最高温度175℃、最高圧力40kg/cm2 で45分間熱プレスしたのち外層の『処理箔』を同様に塩化第二鉄水溶液でエッチング加工し、厚み0.45mm、4層の多層板を得た。
【0037】得られた多層板に10mm□のベア・チップ(信頼性評価用)を搭載し(はんだバンプの高さは50μm)、MIL試験条件(−65℃←→125℃)で熱衝撃試験を行った。
【0038】耐久回数は、表1に示すように、1,500回であった。
【0039】アラミド繊維紙の代わりにガラス織物(重量125g/m2)を用いた以外は実施例1と同様に試験を行った。この場合の樹脂板の線膨張係数は15ppm/℃出会った。耐久回数は表1に示すように、1,150回であった。
【0040】
【比較例】『低膨張金属箔』の代わりに銅箔を用いた以外は実施例1,2と同様に試験を行った。耐久回数は、基材にアラミド紙を用いた場合は560回、ガラス織物を用いた場合は430回であった。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】低膨張の樹脂層を用いた回路板において、低膨張の金属を回路導体として用いることを特徴とする回路形成方法。
【請求項2】低膨張の金属の両面に銅をめっきまたは圧着した請求項1の回路形成方法。
【請求項3】めっきまたは圧着した銅の表面を粗化処理または酸化処理した請求項2の回路形成方法。
【請求項4】低膨張の金属の線膨張係数が10ppm/℃以下である請求項1の回路形成方法。
【請求項5】低膨張の金属として、36アロイまたは42アロイを用いた請求項4の回路形成方法。
【請求項6】低膨張の樹脂層の線膨張係数が10ppm/℃以下である請求項1の回路形成方法。
【請求項7】低膨張の樹脂層の補強材として、アラミド繊維を用いた請求項6の回路形成方法。