説明

回路装置、電子機器及びICカード

【課題】電磁誘導を用いた機器において短時間の受電期間でシステムの起動等を可能にする回路装置、電子機器及びICカード等の提供。
【解決手段】回路装置は、電磁誘導により電力を受電する受電部10からの電力を受けて、第1の電荷蓄積部C1に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部30と、受電部10からの電力を受けて、第2の電荷蓄積部C2に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部40と、第1、第2の電荷蓄積部C1、C2に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイス100に電源を供給する電源供給部50を含む。第2の電荷蓄積部C2は、第1の電荷蓄積部C1よりも電荷の蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部である。電源供給部50は、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、第2の電荷蓄積部C2の蓄積電荷に基づく電源をシステムデバイス100に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置、電子機器及びICカード等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁誘導を利用し、金属部分の接点がなくても電力伝送を可能にする無接点電力伝送(非接触電力伝送)が脚光を浴びている。この無接点電力伝送の適用例として、端末装置にかざすだけで電力を受電して情報を送受信できる非接触のICカードなどが提案されている。この非接触のICカードによれば、電子マネー、公共交通機関のプリペイカード、入出管理用IDカードなどの機能を持ったカードを実現することが可能になる。
【0003】
しかしながら、これまでの非接触のICカードでは、例えば電子マネーやプリペイカードの使用金額や残高等の種々の情報を表示する表示部が設けられていなかった。このため、ユーザーの利便性を今ひとつ向上することができなかった。
【0004】
一方、電子ペーパー等に好適な表示装置として、電気泳動方式のディスプレイであるEPD(Electrophoretic Display)が知られている。このEPDでは、表示情報を無電源状態で保持することができるため、低消費電力化等を図れるという利点がある。このようなEPDを用いた携帯型の情報表示機器の従来技術としては、例えば特許文献1に開示される技術がある。
【0005】
しかしながら、この従来技術の情報表示機器は、その適用例として、ICカードではなく、携帯型のモバイル機器を想定しており、蓄電部として、大容量の電気二重層キャパシター(EDLC)を用いている。このため、充電器からの電磁誘導による充電に時間がかかってしまい、受電時間が極めて短い非接触のICカードへの応用には適さないという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、電磁誘導を用いた機器において短時間の受電期間でシステムの起動等を可能にする回路装置、電子機器及びICカード等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電磁誘導により電力を受電する受電部からの電力を受けて、第1の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部と、前記受電部からの電力を受けて、第2の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部と、前記第1の電荷蓄積部、前記第2の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイスに対して電源を供給する電源供給部と、を含み、前記第2の電荷蓄積部は、前記第1の電荷蓄積部よりも電荷の蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部であり、前記電源供給部は、前記受電部による受電開始後のシステム起動時には、前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給する回路装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様では、第1の蓄積制御部により、受電部からの電力に基づく電荷が第1の電荷蓄積部に蓄積され、第2の蓄積制御部により、受電部からの電力に基づく電荷が第2の電荷蓄積部に蓄積される。そして第2の電荷蓄積部は、蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部となっており、受電開始後のシステム起動時には、第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源が、システムデバイスに供給される。このようにすれば、第1の電荷蓄積部の蓄積容量が大きい場合にも、システム起動用の第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイスに対して早期に供給できるようになる。従って、電磁誘導を用いた機器において短時間の受電期間でシステムの起動等を可能にする回路装置等の提供が可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記電源供給部は、前記受電部による受電終了後の期間においては、前記第1の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給してもよい。
【0011】
このようにすれば、受電部による受電終了後の期間においては、蓄積容量が大きな第1の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイスに対して供給できるようになる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記システムデバイスは、画像を表示する電気泳動表示部の表示制御処理を行い、前記第1の蓄積制御部は、前記電気泳動表示部の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、前記第1の電荷蓄積部に蓄積する制御を行ってもよい。
【0013】
このように、第1の電荷蓄積部に蓄積される電荷の量を、電気泳動表示部の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷に限定すれば、第1の電荷蓄積部の蓄積容量を無意味に大きくしなくても済むようになる。これにより、第1の電荷蓄積部への電荷蓄積を短時間で完了させることが可能になり、短い受電期間等が要求される場合にも、これに対応できるようになる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記電源供給部は、前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷により得られる電源電圧が、前記システムデバイスの動作下限電圧を超えた後に、前記システムデバイスに対して電源を供給してもよい。
【0015】
このようすれば、動作下限電圧以下の電源電圧がシステムデバイスに供給されて貫通電流発生等の不具合を、効果的に防止できるようになる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記電源供給部は、前記第1の電荷蓄積部の第1の蓄積ノードと接続ノードとの間に設けられ、前記第1の蓄積ノードから前記接続ノードへと向かう方向を順方向とする第1のダイオードと、前記第2の電荷蓄積部の第2の蓄積ノードと前記接続ノードとの間に設けられ、前記第2の蓄積ノードから前記接続ノードへと向かう方向を順方向とする第2のダイオードとを含み、前記電源供給部は、前記接続ノードの電圧に基づいて前記システムデバイスに対して電源を供給してもよい。
【0017】
このようにすれば、第1、第2のダイオードの整流機能を有効活用して、第1、第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源電圧を、システムデバイスに対して供給できるようになる。また、このように第1、第2のダイオードを用いれば、スイッチ動作用の制御信号を不要にできるため、システム起動前においてこのような制御信号の生成が困難な状況であっても、これに対応できるようになる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記電源供給部は、前記接続ノードと前記電源供給部の出力ノードとの間に設けられるスイッチ回路と、前記接続ノードの電圧の検出を行う電圧検出回路とを含み、前記スイッチ回路は、前記接続ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えたことが前記電圧検出回路により検出された場合に、オン状態になり、前記システムデバイスに対して電源を供給してもよい。
【0019】
このようにすれば、接続ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えてから、システムデバイスに対して電源が供給されるようになるため、貫通電流発生等の不具合を効果的に防止できるようになる。
【0020】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置と、前記システムデバイスとを含む電子機器に関係する。
【0021】
また本発明の他の態様では、前記システムデバイスは、画像を表示する電気泳動表示部の表示制御処理を行ってもよい。
【0022】
このように表示部として電気泳動表示部を用いれば、無電力状態で表示情報を保持することが可能になり、利便性の向上等を図れるようになる。
【0023】
また本発明の他の態様では、前記システムデバイスは、前記受電部の受電期間において前記第1の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源が供給されて、受電後の表示書き換え期間において、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行ってもよい。
【0024】
このようにすれば、例えば電気泳動表示部の表示書き換え処理に長時間を要する場合にも、第1の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源をシステムデバイスに供給して、電荷泳動表示部の表示書き換え処理を完了することが可能になる。
【0025】
また本発明の他の態様では、前記受電期間の長さをT1とし、前記表示書き換え期間の長さをT2とした場合に、T2>T1であってもよい。
【0026】
このようにすれば、受電期間の長さが短く、電気泳動表示部の表示書き換え処理に長時間を要する場合にも、これに対応して、電気泳動表示部の表示書き換え処理を完了することが可能になる。
【0027】
また本発明の他の態様では、前記システムデバイスは、前記受電期間において受信したデータに基づいて、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行ってよい。
【0028】
このようにすれば、例えば受電期間においてデータを受信して、その後の表示書き換え期間において、受信したデータに基づき電気泳動表示部の表示書き換え処理を実行できるようになる。
【0029】
また本発明の他の態様は、電磁誘導により電力を受電する受電部と、画像を表示する電気泳動表示部と、前記電気泳動表示部の表示制御処理を行うシステムデバイスと、前記受電部からの電力を受けて、前記システムデバイスに対して電源を供給する電源管理部と、を含み、前記システムデバイスは、前記受電部の受電期間において電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源が供給されて、受電後の表示書き換え期間において、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行い、前記受電期間の長さをT1とし、前記表示書き換え期間の長さをT2とした場合に、T2>T1であるICカードに関係する。
【0030】
本発明の他の態様では、ICカードは、受電部と電気泳動表示部とシステムデバイスと電源管理部を有する。そして受電期間において電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源が、システムデバイスに供給されて、電気泳動表示部の表示書き換え処理が行われるようになる。このとき、受電期間の長さをT1とし、前記表示書き換え期間の長さをT2とした場合に、T2>T1となっている。従って、受電期間の長さが短く、電気泳動表示部の表示書き換え処理に長時間を要する場合にも、これに対応して、電気泳動表示部の表示書き換え処理を完了することが可能になる。この結果、表示書き換え処理に長時間を要する電気泳動表示部をICカードに組み込むことが可能になり、利便性の向上等を図れるようになる。
【0031】
また本発明の他の態様では、前記電源管理部は、前記受電部からの電力を受けて、第1の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部と、前記受電部からの電力を受けて、第2の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部と、前記第1の電荷蓄積部、前記第2の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイスに対して電源を供給する電源供給部とを含み、前記第2の電荷蓄積部は、前記第1の電荷蓄積部よりも電荷の蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部であり、前記電源供給部は、前記受電部による受電開始後のシステム起動時には、前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給してもよい。
【0032】
このようにすれば、第1の電荷蓄積部の蓄積容量が大きい場合にも、システム起動用の第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイスに対して早期に供給できるようになる。従って、電磁誘導を用いて電力を受電できると共に、短時間の受電期間でシステムの起動等を可能にするICカードの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の回路装置の基本構成例。
【図2】本実施形態の回路装置を適用した電子機器の構成例。
【図3】電子機器の1つである非接触のICカードへの適用例。
【図4】図4(A)は比較例の手法の説明図であり、図4(B)は本実施形態の手法の説明図。
【図5】図5(A)、図5(B)は本実施形態の手法の説明図。
【図6】本実施形態の回路装置の詳細な第1の構成例。
【図7】図7(A)、図7(B)は第1の構成例の動作説明図。
【図8】本実施形態の回路装置の詳細な第2の構成例。
【図9】本実施形態の回路装置の詳細な第3の構成例。
【図10】システムデバイスの構成例。
【図11】図11(A)〜図11(C)は電気泳動方式の表示部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0035】
1.回路装置、電子機器の基本構成
図1に本実施形態の回路装置の基本的な構成例を示す。この回路装置は、第1の蓄積制御部30と第2の蓄積制御部40と電源供給部50を含む。なお回路装置の構成は図1の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0036】
受電部10は、電磁誘導により送電装置(相手側機器、端末装置、充電器)から電力を受電する。例えば、金属部分の接点がなくても電力伝送を可能にする無接点電力伝送(非接触電力伝送)により電力を受電する。
【0037】
第1の蓄積制御部30(第1の蓄積動作部)は、電磁誘導により電力を受電する受電部10からの電力を受けて、蓄電用のキャパシターC1(広義には第1の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御(動作)を行う。第2の蓄積制御部40(第2の蓄積動作部)は、受電部10からの電力を受けて、起動用のキャパシターC2(広義には第2の電荷蓄積部)に対して電荷を蓄積する制御(動作)を行う。
【0038】
具体的には、第1の蓄積制御部30は、受電部10からの電力の入力ノードNIと、第1の蓄積ノードNA1との間に設けられる。そして、蓄電用のメインのキャパシターC1を充電するための電流や電圧を制御して、キャパシターC1への充電制御を行う。
【0039】
例えばシステムデバイス100が、画像を表示する電気泳動表示部(EPD)の表示制御処理を行う場合を想定する。この場合には、第1の蓄積制御部30は、電気泳動表示部(不揮発性表示素子)の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、キャパシターC1に蓄積する制御を行う。このようにすることで、電磁誘電による受電後に、システムデバイス100の表示部を少なくとも1回だけ書き換えることが可能になる。これにより、例えばプリペイカードや電子マネーのICカードに適用した場合には、端末装置にICカードをかざした後に、使用金額や残高等をICカードの表示部に表示することが可能になる。
【0040】
ここで、少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷とは、例えば受電後に1画面分の画像の表示書き換えを行う場合には、1画面分の画像データを書き換えるのに必要な電荷である。或いは、受電後に1画面の一部分の画像の表示書き換えを行う場合には、その一部分の画像データを書き換えるのに必要な電荷である。これらの電荷の量は、設計や実測により予め知ることができる。従って、例えば第1の蓄積制御部30は、その電荷量の設計値や実測値におけるワーストケースデータに対応する電荷を、キャパシターC1に蓄積する制御を行えばよい。
【0041】
一方、第2の蓄積制御部40は、受電部10からの電力の入力ノードNIと、第2の蓄積ノードNA2との間に設けられる。そして、起動用のサブのキャパシターC2を充電するための電流や電圧を制御して、キャパシターC2への充電制御を行う。
【0042】
電源供給部50は、電磁誘導の電力による電源をシステムデバイス100に対して供給する。例えば電源供給部50は、キャパシターC1、C2(第1、第2の電荷蓄積部)に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイス100に対して電源を供給する。具体的には、蓄積ノードNA1、NA2の電圧に基づく電源電圧を、システムデバイス100への電源の出力ノードNQに対して出力する。
【0043】
この場合に電源供給部50は、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)の蓄積電荷により得られる電源電圧が、システムデバイス100の動作下限電圧を超えた後に、システムデバイス100に対して電源を供給することが望ましい。ここで、動作下限電圧は、システムデバイス100が正常な動作を行うことが保証されている電圧である。例えばシステムデバイス100がマイコンである場合には、マイコンの仕様などにより動作下限電圧が規定される。例えば動作下限電圧よりも低い電源電圧がシステムデバイス100に供給されると、システムデバイス100を構成するトランジスターに貫通電流が流れるなどの不具合が発生するおそれがある。この点、電源供給部50が、動作下限電圧を超えるまでシステムデバイス100に対して電源を供給しないようにすることで、このような不具合の発生を防止できる。
【0044】
システムデバイス100(電源供給対象デバイス)は、電磁誘導による電源の供給対象となるデバイスである。このシステムデバイス100は、例えば画像を表示する表示部の表示制御処理などを行う。このシステムデバイス100は、例えば表示コントローラー内蔵のマイコンなどにより実現できる。
【0045】
そして本実施形態では、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)は、蓄電用のキャパシターC1(第1の電荷蓄積部)よりも電荷の蓄積容量(キャパシタンス)が小さいシステム起動用の電荷蓄積部となっている。一例としては、蓄電用のキャパシターC1の容量は、数十μF〜数百μF(例えば100μF程度)であり、起動用のキャパシターC2の容量は、1μF以下(例えば0.1μF程度)である。この蓄電素子となるキャパシターC1等としては、スパーキャパシターなどのコンデンサーを使用できる。従って、蓄電素子を薄型に構成できるため、ICカード等にも容易に内蔵することが可能になる。
【0046】
キャパシターC1の一端は、第1の蓄積制御部30の出力ノードである蓄積ノードNA1に接続され、他端は例えばGNDノードに接続される。またキャパシターC2の一端は、第2の蓄積制御部40の出力ノードである蓄積ノードNA2に接続され、他端は例えばGNDノードに接続される。なお、電力の入力ノードNIには、電位安定化用のキャパシターCCの一端が接続されている。
【0047】
そして電源供給部50は、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、キャパシターC2(第2の電荷蓄積部)の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイス100に対して供給する。即ち、システム起動時には、システム起動用の小容量のキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源(ノードNA2の電圧に基づく電源電圧)を、システムデバイス100に対して供給する。
【0048】
一方、電源供給部50は、受電部10による受電終了後の期間においては、キャパシターC1(第1の電荷蓄積部)の蓄積電荷に基づく電源を、システムデバイス100に対して供給する。即ち、システムが起動してキャパシターが十分に充電された受電終了後の期間においては、蓄電用の大容量のキャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源(ノードNA1の電圧に基づく電源電圧)を、システムデバイス100に対して供給する。
【0049】
なお、受電終了後の期間にシステムデバイス100に供給される電源は、キャパシターC1、C2の両方の蓄積電荷に基づく電源であることが望ましい。また、キャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源は、受電期間のうちシステム起動時(受電期間の前半)にシステムデバイス100に供給されれば十分であり、例えば受電期間の後半において、キャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源がシステムデバイス100に供給されてもよい。
【0050】
以上の構成の本実施形態の回路装置では、受電部10による受電開始後に、起動用の小容量のキャパシターC2は短時間で充電されるため、システムデバイス100に対して迅速に電源電圧を供給してシステムを立ち上げることが可能になる。そして、その後に、キャパシターC2よりも大容量の蓄電用のキャパシターC1が充電され、受電期間終了後も、このキャパシターC1に充電された電荷に基づいて、システムデバイス100に電源を供給して動作させることが可能になる。
【0051】
例えば非接触のICカードに本実施形態の回路装置を適用する場合、短い時間で端末装置と通信を行い、蓄電する必要がある。ところが、蓄電されるキャパシターは大容量であり、その充電電圧の立ち上がりは遅く、システム(システムデバイス)のリセットが解除されずに、通信を開始できないという課題がある。
【0052】
この点、本実施形態では図1に示すように、蓄電用の大容量のキャパシターC1に加えて、起動用の小容量のキャパシターC2が設けられている。これにより、受電開始の直後は、このキャパシターC2の充電電圧でシステムデバイス100を動作させて通信等を行うことが可能になる。従って、蓄電用のキャパシターC1の容量に依存せずに、システムを立ち上げることができ、通信システムを早期に立ち上げて、蓄電及び通信時間を短くすることが可能になる。
【0053】
図2に本実施形態の回路装置を適用した電子機器の構成例を示す。図2の電子機器は、電磁誘導により電力を受電する受電部10と、本実施形態の回路装置90と、システムデバイス100と、表示部150(電気泳動表示部等)を含む。ここで回路装置90は、電源管理部20及び制御部70を有する。また電子機器は、ホストI/F18、2次コイルL2(受電コイル、2次インダクター)、キャパシターCB、キャパシターC1、C2等を含むことができる。2次コイルL2とキャパシターCBにより受電側の共振回路が構成される。
【0054】
なお、電子機器の構成は図2の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。また本実施形態が適用される電子機器としては、ICカード、電子棚札、ICタグ等の種々の機器を想定できる。
【0055】
受電部10は、送電装置200(端末装置、充電器、相手側機器)から送電される電力を電磁誘導により受電する。具体的には、送電側に設けられた1次コイルL1(送電コイル、1次インダクター)と、受電側に設けられた2次コイルL2を電磁的に結合させて電力伝送トランスを形成することで、非接触での電力伝送(無接点電力伝送)が実現される。この受電部10は、2次コイルL2の交流の誘起電圧を直流電圧に変換する。この変換は受電部10が有する整流回路などにより実現できる。
【0056】
なお、1次コイルL1、2次コイルL2としては、例えば平面コイルなどを採用できるが、本実施形態はこれに限定されず、1次コイルL1と2次コイルL2を電磁的に結合させて電力を伝送できるものであれば、その形状・構造等は問わない。
【0057】
ホストI/F(インターフェース)18は、相手側機器である送電装置200との通信のためのインターフェースである。なお、このデータ通信は、電磁誘導用の1次コイルL1、2次コイルL2を用いて実現してもよいし、通信用の別コイルを設けて実現してもよい。
【0058】
電源管理部20は、図1で説明した第1、第2の蓄積制御部30、40、電源供給部50を含む。この電源管理部20は、アナログ回路やデジタル回路により実現できる。
【0059】
制御部70は、本実施形態の回路装置90の種々の制御を行ったり、通信制御処理を行う。この制御部70は、ゲートアレイ回路などのデジタル回路等により実現できる。
【0060】
システムデバイス100は、電子機器のシステムとしての処理を実行するデバイスであり、例えばマイコン等により実現できる。このシステムデバイス100は、ホストI/F110、処理部120を含む。
【0061】
表示部150は、種々の画像を表示するためのものである。処理部120(プロセッサー)は、この表示部150の表示制御処理を行う。表示部150としては、例えば電気泳動表示部(以下、適宜、EPDと呼ぶ)などを採用することができ、処理部120は、このEPDの表示制御処理を行う。また処理部120は、システムの動作に必要な種々の制御処理を行う。
【0062】
表示部150の表示情報としては、通信による受信データの情報、センサー検出情報(圧力、温度、湿度等の情報)、ICカード内蔵のメモリーの固有情報・個人情報などが考えられる。
【0063】
ホストI/F110は、例えば制御部70を介して受電部10側のホストI/F18と通信接続される。これにより、システムデバイス100は、送電装置200との間でデータ通信を行うことが可能になる。
【0064】
図3は、電子機器がICカード190である場合の適用例である。ICカード190には、EPD等で実現される表示部150が設けられており、各種情報が表示可能になっている。またICカード190には、受電部10、回路装置90(IC)、キャパシターC1、C2等がその内部に実装されている。
【0065】
そしてユーザーが、端末装置202(送電装置)にICカード190をかざすと、ICカード190は端末装置202からの電力を電磁誘導により受電して動作し、端末装置202とデータ通信を行う。そして、通信結果に応じた数字、文字等の画像が表示部150に表示される。電子マネーやプリペイカードを例にとれば、使用金額や残高等が表示部150に表示される。また端末装置202の表示部210にも各種情報が表示される。
【0066】
そして不揮発表示素子であるEPDは、表示情報を無電源状態で保持できるため、図3のようなICカード190の表示部150として好適な表示装置である。
【0067】
ところが、EPDは、液晶表示装置に比べて、表示情報の書き換えに長時間(例えば1秒)を要するという問題点がある。このため、図3のように、端末装置202にICカード190をかざすというタッチ&ゴー(Touch&Go)の操作で、電力を受電して、EPDの表示書き換えを行うのは困難であるという課題がある。
【0068】
例えば図4(A)の比較例の手法では、電磁誘導による受電期間TRの長さT1を長くし、A1に示すように受電期間TRの前半において、端末装置202からのデータ受信を行う。そして、A2に示すように受電期間TRの後半の表示書き換え期間TCにおいて、EPDの表示書き換えを行っている。この場合、表示書き換え期間TCの長さT2は、受電期間TRの長さT1よりも短くなる。
【0069】
しかしながら、図4(A)の比較例の手法では、受電期間TRの長さT1が長くなってしまうため、図3のようなタッチ&ゴーの操作(例えば0.1秒程度の長さの操作)を実現できなくなってしまう。
【0070】
そこで本実施形態では、図4(B)に示すように、受電期間TRの長さT1を短くする。そしてA3に示すように受電期間TRの間に、端末装置202からのデータ受信を行い、A4に示すように、その後の表示書き換え期間TCにおいてEPDの表示書き換えを行う。この場合に、受電期間TRの長さをT1とし、表示書き換え期間TCの長さをT2とした場合に、T2>T1の関係が成り立つようにする。
【0071】
このように、受電期間TRの長さT1を短くすることで、図3のようなタッチ&ゴーの操作で、ICカード190が電力を受電して動作することが可能になる。また、表示書き換え期間TCの長さT2を長くすることで、表示部150としてEPDを利用した場合にも、表示情報の書き換えが可能になる。即ち、EPDは、液晶表示装置に比べて、表示情報の書き換えに長時間(1秒)を要するが、T2が長くなることで、少なくとも1回分のEPDの表示書き換えが可能になる。
【0072】
この場合に、受電期間TRの長さT1が短いと、EPDの表示書き換えに必要な十分な電荷を蓄積できないおそれがある。
【0073】
そこで図1、図2では、蓄電用のキャパシターC1として大容量のキャパシターを設けている。例えばキャパシターC1として、スパーキャパシターなどのコンデンサーを用いることで、EPDの表示書き換えに必要な十分な電荷を蓄積することができる。
【0074】
具体的には、第1の蓄積制御部30は、EPD(電気泳動表示部)の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、キャパシターC1(電荷蓄積部)に蓄積する制御を行う。
【0075】
そしてシステムデバイス100は、受電部10の受電期間TRにおいてキャパシターC1(電荷蓄積部)に蓄積された電荷に基づく電源が供給されて、受電後の表示書き換え期間TCにおいて、EPDの表示書き換え処理を行う。例えば受電期間TRにおいて端末装置202から受信したデータに基づいて、EPDの表示書き換え処理を行う。この場合に、上述のように、受電期間TRの長さT1と、表示書き換え期間TCの長さT2との間には、T2>T1の関係が成り立つ。
【0076】
即ち本実施形態では図4(B)に示すように、短い受電期間TRにおいて大容量の蓄電用のキャパシターC1に電荷を蓄積し、その後の長い表示書き換え期間TCにおいてEPDの表示情報の書き換え処理を行う。
【0077】
このようにすれば、タッチ&ゴーの操作が要求されるICカードに対して、表示情報を無電源状態で保持できるEPDを組み込むことが可能になり、EPDにより各種情報を表示可能なICカードを実現できるようになる。
【0078】
この場合に図4(B)に示すように受電期間TRを短くすると、その後の長い表示書き換え期間TCに亘って、システムデバイス100を動作させることが難しくなる。
【0079】
この点、本実施形態では、大容量の蓄電用のキャパシターC1を設けると共に、第1の蓄積制御部30での充電制御を工夫することで、短い受電期間TRであっても、長い表示書き換え期間TCに亘ってシステムデバイス100を動作させるのに必要な十分な電荷を蓄積することに成功している。特に、蓄電用のキャパシターC1に蓄積する電荷を、EPDの例えば1回分の表示書き換えに必要な電荷量に限定することで、受電期間TRを短くしても、長い表示書き換え期間TCに亘ってシステムデバイス100を動作させて、EPDの表示書き換えを行うことが可能になる。
【0080】
ところが、このように蓄電用のキャパシターC1を大容量にすると、システムデバイス100に供給される電源電圧が、なかなか立ち上がらずに、早期にシステムを起動できなくなってしまうという課題がある。
【0081】
そこで本実施形態では、蓄電用のキャパシターC1とは別に起動用のキャパシターC2を設けている。図5(A)のB1、B2に示すように、これらのキャパシターC1、C2は、受電部10からの出力電圧に基づいて、第1、第2の蓄積制御部30、40を介して充電される。
【0082】
そして図5(A)のB3に示すように、受電部10による受電開始後のシステム起動時には、起動用のキャパシターC2の蓄積電荷に基づく電源が、システムデバイス100に対して供給される。即ち、起動用のキャパシターC2の容量は小さいため、C2の電荷蓄積ノードNA2の電圧の立ち上がりは早く、この電圧がB3に示すように電源電圧としてシステムデバイス100に供給される。
【0083】
一方、図5(B)に示すように、受電部10による受電終了後の期間では、蓄電用のキャパシターC1の蓄積電荷に基づく電源が、システムデバイス100に対して供給される。即ち、蓄電用のキャパシターC1の容量は大きいため、C1の電荷蓄積ノードNA1の電圧の立ち上がりは遅い。しかしながら、受電開始後、時間が経過すると、この電圧は、システムデバイス100の動作下限電圧を上回るようになり、B4に示すように電源電圧としてシステムデバイス100に供給できるようになる。
【0084】
こうすることで、図4(B)のA5に示すように早期にシステム電源をオンにしてシステムデバイス100を動作させることが可能になる。これにより、A3に示すデータ受信処理を早期に完了させることが可能になり、タッチ&ゴーの操作を実現する短い受電期間にも対応できるようになる。
【0085】
即ち、タッチ&ゴーの操作を実現するためには、短い受電期間の間に、ICカード190と端末装置202との間のデータ受信を完了させる必要がある。ところが、大容量のキャパシターC1を用いることで電源電圧の立ち上がりが遅くなり、システムの立ち上がりも遅くなると、その分だけで、データ受信の開始が遅れてしまい、短い受電期間の間に、システムデバイス100がデータ受信処理を完了できなくなってしまう。
【0086】
この点、本実施形態では、小容量の起動用のキャパシターC2に基づく電源によりシステムデバイス100が早期に立ち上がって動作するため、短い受電期間であってもシステムデバイス100はデータ受信処理を完了することが可能になり、ICカード190のタッチ&ゴーの操作に対応できるようになる。以上のように本実施形態の電源供給手法は、EPDの表示部を備え、タッチ&ゴーの操作が要求される非接触のICカード等に好適な手法になる。
【0087】
2.回路装置の詳細な構成例
次に本実施形態の回路装置の詳細な構成例について説明する。図6は回路装置の詳細な第1の構成例である。
【0088】
図6では、図1、図2の第1の蓄積制御部30は、蓄電用レギュレーター32により実現され、第2の蓄積制御部40は、起動用レギュレーター42により実現される。
【0089】
そして蓄電用レギュレーター32は、受電部10を構成する整流回路12からの電圧VINを受けて、逆流防止用のダイオードI3を介して、電圧調整後の電圧VA1を、蓄積ノードNA1に出力する。例えば電圧調整により定電圧VA1を出力する。具体的には、例えば最大で15V程度の電圧が、レギュレーター32により例えば4.5V程度の定電圧VA1に降圧されて、蓄電用のキャパシターC1への電荷蓄積が行われる。
【0090】
また起動用のレギュレーター42は、整流回路12からの電圧VINを受けて、電圧調整後の電圧VA2を、蓄積ノードNA2に出力する。例えば電圧調整により定電圧VA2を出力する。具体的には、例えば最大で15V程度の電圧が、レギュレーター42により例えば4.5V程度の定電圧VA2に降圧されて、起動用のキャパシターC2への電荷蓄積が行われる。
【0091】
なお、第1、第2蓄積制御部30、40の構成は図6のような電圧調整を行うレギュレーター32、42には限定されず、例えば蓄積ノードNA1、NA2等の電圧をモニターして電流調整を行うような回路であってもよい。
【0092】
図6では、電源供給部50は、第1、第2のダイオードDI1、DI2を含む。ここでDI1は、蓄電用レギュレーター32(第1の電荷蓄積部30)の蓄積ノードNA1と接続ノードNCとの間に設けられ、蓄積ノードNA1から接続ノードNCへと向かう方向を順方向とするダイオードである。また、DI2は、起動用レギュレーター42(第2の電荷蓄積部40)の蓄積ノードNA2と接続ノードNCとの間に設けられ、蓄積ノードNA2から接続ノードNCへと向かう方向を順方向とするダイオードである。そして電源供給部50は、接続ノードNCの電圧に基づいてシステムデバイス100に対して電源を供給することになる。
【0093】
このようなダイオードDI1、DI2により電源供給部50を構成することで、接続ノードNCから蓄積ノードNA1、NA2への電流の逆流を防止できると共に、蓄積ノードNA1、NA2の電圧VA1、VA2を、電源電圧VCとして接続ノードNCに出力できるようになる。
【0094】
図7(A)は、図6の回路装置の動作を説明するための電圧波形図である。
【0095】
受電が開始して、受電部10からの電圧VINが供給されると、起動用のキャパシターC2の容量は小さいため、D1に示すように、キャパシターC2の蓄積ノードNA2の電圧VA2は早期に立ち上がる。そして、後に詳述するように、D2に示すようにシステムデバイス100の動作下限電圧に対応するしきい値電圧VTHを超えると、電圧VA2に対応する電圧が、電源電圧VCとしてシステムデバイス100に供給される。具体的には、ダイオードDI1の順方向電圧の分だけVA2から降下した電圧がVCとして供給される。
【0096】
一方、蓄電用のキャパシターC1の容量は大きいため、D3に示すように、キャパシターC1の蓄積ノードNA1の電圧VA1が徐々に立ち上がる。そして電圧VA1が立ち上がると、電圧VA1に対応する電圧が、電源電圧VCとしてシステムデバイス100に供給される。具体的には、ダイオードDI1の順方向電圧の分だけVA1から降下した電圧がVCとして供給される。
【0097】
受電開始後、受電期間が終了すると、キャパシターC1、C2の電荷が放電されるため、D4に示すように電源電圧VCは徐々に低下する。この場合に本実施形態では、キャパシターC1の容量は十分に大きいため、図4(B)のA4や図7(A)のD5に示すように、長い時間(例えば1秒)の表示書き換え期間を確保することが可能になる。
【0098】
なお図7(B)は、蓄積電流と放電電流の関係を示す図である。例えば受電期間においては、E1に示すようにキャパシターに電荷が蓄積される。またE2に示すように、システム起動等のためにキャパシターから電荷が放電される。そして表示書き換え期間では、E3に示すようにキャパシターから電荷が放電され、この放電された電荷に基づいて、システムデバイス100によるEPDの表示書き換え処理が行われることになる。
【0099】
なお、本実施形態の回路装置の構成は図6には限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図8に回路装置の詳細な第2の構成例を示す。
【0100】
図8の第2の構成例では、図6のダイオードDI1、DI2、DI3に代わって、スイッチ・トランジスター回路SW1、SW2、SW3が設けられている。
【0101】
図8の第2の構成例によれば、ダイオードの順方向電圧による電圧降下がないため、その分だけで電源供給効率を向上できるという利点がある。
【0102】
一方、図6の第1の構成例では、ダイオードDI1、DI2により電圧のスイッチ動作が実現されるため、スイッチ動作用の制御信号が不要であるという利点がある。例えばシステム起動前では、このような制御信号を生成することは困難な状況になるが、図6の第1の構成例によれば、このような状況にも対応できるようになる。
【0103】
図9に回路装置の詳細な第3の構成例を示す。図9では、電源供給部50が、更にスイッチ回路52と電圧検出回路54を含んでいる。
【0104】
ここでスイッチ回路52は、ダイオードDI1、DI2の接続ノードNCと、電源供給部50の出力ノードNQとの間に設けられる。また電圧検出回路54は、接続ノードNCの電圧VCを検出する。そしてスイッチ回路52は、接続ノードNCの電圧VCが所与のしきい値電圧VTHを超えたことが電圧検出回路50により検出された場合に、オン状態(導通状態)になり、システムデバイス100に対して電源を供給する。例えば、図7(A)のD2に示すようにしきい値電圧VTHを超えると、電圧検出回路54が信号SCTをアクティブにし、これによりスイッチ回路52がオン状態になり、電圧VCが電源電圧VQとしてシステムデバイス100に供給されるようになる。
【0105】
このようにすれば、例えばシステムデバイス100の動作下限電圧を超えた後に電源電圧VQをシステムデバイス100に対して供給するという電源制御が可能になる。これにより、システムデバイス100に動作下限電圧以下の電源電圧が供給されて、貫通電流等が発生し、動作が不安定になってしまうなどの事態を、効果的に防止することが可能になる。
【0106】
3.システムデバイス
次に、システムデバイス100の構成例について説明する。図10にシステムデバイス100の詳細な構成例を示す。システムデバイス100は、ホストI/F110、処理部120、レジスター部130、波形情報メモリー140、画像メモリー142、ワークメモリー144を含む。なおシステムデバイス100の構成は図10の構成には限定されず、その一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。例えばメモリー140、142、144は外付けのメモリーであってもよい。
【0107】
ホストI/F110は、ホストとなる相手側機器(送電装置、端末装置、充電器)との間で情報の送受信を行うためのインターフェースである。このホストI/F110は、図2に示すように制御部70を介して受電部10側のホストI/F18と接続される。これにより、送電装置200(相手側機器)との間での情報の送受信が可能になる。この情報の送受信は例えばコイルL1、L2を用いた振幅変調処理(周波数変調処理)や負荷変調処理により実現できる。
【0108】
処理部120は、表示部150の表示制御処理や、システムの各種の制御処理を行う。この処理部120は、例えばプロセッサーやゲートアレイ回路等により実現できる。
【0109】
処理部120により表示制御される表示部150は、表示パネル152(電気光学パネル)と、表示パネル152を駆動する回路であるドライバー回路154を有する。ドライバー回路154は、表示パネル152のデータ線(セグメント電極)や走査線(コモン電極)を駆動する。表示パネル152は、例えば電気泳動素子等の表示素子により実現される。
【0110】
レジスター部130は、制御レジスターやステータスレジスターなどの各種のレジスターを有する。このレジスター部130はSRAMなどのRAMやフリップフロップ回路などにより実現できる
波形情報メモリー140は、EPDを駆動するためのウエーブフォーム情報やインストラクションコード情報などを記憶する。この波形情報メモリー140は、例えばデータの書き換え・消去が可能な不揮発性メモリー(例えばフラッシュメモリー)などにより実現できる。
【0111】
画像メモリー142(VRAM)は、表示パネル152に表示される例えば1画面分の画像データを記憶する。ワークメモリー144は処理部120等のワーク領域となるメモリーである。これらの画像メモリー142、ワークメモリー144は、SRAMなどのRAMにより実現できる。
【0112】
図11(A)に表示パネル152の構成例を示す。この表示パネル152は、素子基板300と、対向基板310と、素子基板300と対向基板310との間に設けられた電気泳動層320を含む。この電気泳動層320(電気泳動シート)は、電気泳動物質を有する多数のマイクロカプセル322により構成される。このマイクロカプセル322は、例えば正に帯電した黒色の正帯電粒子(電気泳動物質)と、負に帯電した白色の負帯電粒子(電気泳動物質)を分散液中に分散させ、この分散液を微少なカプセルに封入することで実現される。
【0113】
素子基板300はガラスや透明樹脂により形成される。この素子基板300には、複数のデータ線(セグメント電極)や、複数の走査線(共通電極)や、各画素電極が各データ線と各走査線の交差位置に設けられる複数の画素電極が形成される。またTFT(薄膜トランジスター)等により形成される各スイッチ素子が各画素電極に接続される複数のスイッチ素子が設けられる。またデータ線を駆動するデータドライバーや、走査線を駆動する走査ドライバーが設けられる。
【0114】
対向基板310には、共通電極(透明電極)が形成され、この共通電極にはコモン電圧VCOM(対向電圧)が供給される。なお透明樹脂層に透明な導電材料で共通電極を形成し、この上に接着剤等を塗布して電気泳動層を接着することで、電気泳動シートを形成してもよい。
【0115】
図11(A)の表示パネル152では、画素電極と共通電極の間に電界が印加されると、マイクロカプセル322に封入された正帯電粒子(黒色)及び負帯電粒子(白色)には、その帯電の正負に応じた方向に静電気力が作用する。例えば画素電極の方が共通電極よりも高電位である画素電極上では、共通電極側に正帯電粒子(黒色)が移動するため、その画素は黒表示になる。
【0116】
次に、図10の波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報について説明する。ここではEPD(電気泳動表示部)のウェーブフォーム情報を例にとり説明する。
【0117】
例えば液晶表示装置においては、図11(B)のF1に示すように、画素の階調を第1の階調から第2の階調に変化させる場合には、データ線(ソース線)のデータ電圧も、第1の階調に対応するデータ電圧VG1から第2の階調に対応するデータ電圧VG2へと、1フレームの期間で変化する。
【0118】
一方、EPDにおいては、図11(C)のF2に示すように、画素の階調を第1の階調から第2の階調に変化させる場合に、データ線のデータ電圧は、複数フレームに亘って変化する。例えば白に近い第1の階調から黒に近い第2の階調に変化させる場合に、複数フレームに亘って白、黒の表示を繰り返して、画素の階調を最終的な第2の階調に変化させる。例えば図11(C)のウェーブフォームでは、初めの3フレームではデータ電圧はVAに設定され、次の3フレームでは−VAに設定されるというように、データ電圧が複数フレームに亘って変化する。なお、ウェーブフォームは、現在の表示状態での画素の階調と、次の表示状態での画素の階調との組み合わせに依っても異なった形になる。
【0119】
波形情報メモリー140は、図11(C)のF2に示すようなウェーブフォーム情報を記憶する。処理部120は、画像メモリー142に記憶される画像データ(各画素の階調データ)と、波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報に基づいて、各フレームでのEPDの駆動電圧を決定して、EPD(表示部150)の表示制御処理を行う。
【0120】
そして図11(B)のF1と図11(C)のF2を比較すれば明らかなように、EPDでは、液晶表示装置等に比べて表示情報の書き換えに長い時間を要する。このため図4(B)の表示書き換え期間TCの長さT2を長くする必要があるという課題がある。
【0121】
この点、本実施形態では前述したように、蓄電用の大容量のキャパシターC1を設け、EPDの少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、受電期間TRの間にキャパシターC1に蓄電する。
【0122】
また、起動用の小容量のキャパシターC2を設けることで、図4(B)のA5に示すように早期にシステムの電源がオンになる。これにより、図10の処理部120は、A3に示すように、ホストI/F110を介して、ホストである相手側機器(送電装置、端末装置)から、表示情報などのデータを受信する。
【0123】
そして処理部120は、受電後の表示書き換え期間TCにおいて、図4(B)のA4に示すようにEPDの表示書き換え処理を行う。即ち、ホストI/F110を介して受信され、画像メモリー142に書き込まれた表示情報と、波形情報メモリー140に記憶されるウェーブフォーム情報に基づいて、図11(C)のF2に示すようなウェーブフォームで、EPDの表示書き換え処理を行う。
【0124】
このようにすることで、表示書き換え期間が長いEPDであっても、短い受電期間TRで受電した電荷に基づいて、表示情報の書き換えを実行できるようになる。従って、例えば図3に示すようなタッチ&ゴーの操作が要求される非接触のICカードに対して、無電源状態で表示情報を保持できるEPDの表示部150を組み込むことが可能になり、これまでに無いタイプのICカードを実現することが可能になる。
【0125】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語(第1の電荷蓄積部、第2の電荷蓄積部等)と共に記載された用語(蓄電用キャパシター、起動用キャパシター等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、電子機器、ICカードの構成・動作や、電荷の蓄電手法、電源供給手法等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0126】
L1 1次コイル、L2 2次コイル、CA、CB、CC キャパシター、
C1 蓄電用キャパシター、C2 起動用キャパシター、
DI1、DI2、DI3 第1、第2、第3のダイオード、
SW1〜SW3 スイッチ・トランジスター回路、
10 受電部、12 整流回路、18 ホストI/F、20 電源管理部、
30 第1の蓄積制御部、32 蓄電用レギュレーター、
40 第2の蓄積制御部、42 起動用レギュレーター、50 電源供給部、
52 スイッチ回路、54 電圧検出回路、70 制御部、90 回路装置、
100 システムデバイス、110 ホストI/F、120 処理部、
130 レジスター部、140 波形情報メモリー、142 画像メモリー、
144 ワークメモリー、150 表示部、152 表示パネル、
154 ドライバー回路、190 ICカード、
200 送電装置、202 端末装置、210 表示部、300 素子基板、
310 対向基板、320 電気泳動層、322 マイクロカプセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により電力を受電する受電部からの電力を受けて、第1の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部と、
前記受電部からの電力を受けて、第2の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部と、
前記第1の電荷蓄積部、前記第2の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイスに対して電源を供給する電源供給部と、
を含み、
前記第2の電荷蓄積部は、前記第1の電荷蓄積部よりも電荷の蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部であり、
前記電源供給部は、
前記受電部による受電開始後のシステム起動時には、前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給することを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電源供給部は、
前記受電部による受電終了後の期間においては、前記第1の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給することを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記システムデバイスは、画像を表示する電気泳動表示部の表示制御処理を行い、
前記第1の蓄積制御部は、
前記電気泳動表示部の少なくとも1回分の表示書き換えに必要な電荷を、前記第1の電荷蓄積部に蓄積する制御を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記電源供給部は、
前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷により得られる電源電圧が、前記システムデバイスの動作下限電圧を超えた後に、前記システムデバイスに対して電源を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記電源供給部は、
前記第1の電荷蓄積部の第1の蓄積ノードと接続ノードとの間に設けられ、前記第1の蓄積ノードから前記接続ノードへと向かう方向を順方向とする第1のダイオードと、
前記第2の電荷蓄積部の第2の蓄積ノードと前記接続ノードとの間に設けられ、前記第2の蓄積ノードから前記接続ノードへと向かう方向を順方向とする第2のダイオードとを含み、
前記電源供給部は、
前記接続ノードの電圧に基づいて前記システムデバイスに対して電源を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記電源供給部は、
前記接続ノードと前記電源供給部の出力ノードとの間に設けられるスイッチ回路と、
前記接続ノードの電圧の検出を行う電圧検出回路とを含み、
前記スイッチ回路は、
前記接続ノードの電圧が所与のしきい値電圧を超えたことが前記電圧検出回路により検出された場合に、オン状態になり、前記システムデバイスに対して電源を供給することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の回路装置と、
前記システムデバイスとを含むことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7において、
前記システムデバイスは、
画像を表示する電気泳動表示部の表示制御処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項8において、
前記システムデバイスは、
前記受電部の受電期間において前記第1の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源が供給されて、受電後の表示書き換え期間において、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項9において、
前記受電期間の長さをT1とし、前記表示書き換え期間の長さをT2とした場合に、T2>T1であることを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記システムデバイスは、
前記受電期間において受信したデータに基づいて、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項12】
電磁誘導により電力を受電する受電部と、
画像を表示する電気泳動表示部と、
前記電気泳動表示部の表示制御処理を行うシステムデバイスと、
前記受電部からの電力を受けて、前記システムデバイスに対して電源を供給する電源管理部と、
を含み、
前記システムデバイスは、
前記受電部の受電期間において電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づく電源が供給されて、受電後の表示書き換え期間において、前記電気泳動表示部の表示書き換え処理を行い、
前記受電期間の長さをT1とし、前記表示書き換え期間の長さをT2とした場合に、T2>T1であることを特徴とするICカード。
【請求項13】
請求項12において、
前記電源管理部は、
前記受電部からの電力を受けて、第1の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第1の蓄積制御部と、
前記受電部からの電力を受けて、第2の電荷蓄積部に対して電荷を蓄積する制御を行う第2の蓄積制御部と、
前記第1の電荷蓄積部、前記第2の電荷蓄積部に蓄積された電荷に基づいて、システムデバイスに対して電源を供給する電源供給部とを含み、
前記第2の電荷蓄積部は、前記第1の電荷蓄積部よりも電荷の蓄積容量が小さいシステム起動用の電荷蓄積部であり、
前記電源供給部は、
前記受電部による受電開始後のシステム起動時には、前記第2の電荷蓄積部の蓄積電荷に基づく電源を、前記システムデバイスに対して供給することを特徴とするICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−54437(P2013−54437A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190648(P2011−190648)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】