説明

回路装置における鳴動抑制方法、および鳴動抑制機能を備えた回路装置

【課題】周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象に起因する鳴動を、セラミックコンデンサーの実装構造を変更することなく、効果的に抑制する。
【解決手段】可聴周波数範囲に対応する1周期24に充電期間24cと放電期間24dとが設けられて、周期的に充放電されるセラミックコンデンサー16を含む回路装置11において、前記セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための方法であって、前記充電期間終了時点Teにおける前記セラミックコンデンサーの端子間電圧が前記放電期間で所定電圧値v2まで降下した場合、次の充電期間まで当該所定電圧値を維持するように前記セラミックコンデンサーを充電する回路装置における鳴動抑制方法としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、当該コンデンサーの充放電に伴う圧電現象に起因する鳴動を抑制するための方法に関する。また、その鳴動を抑制する機能を備えた回路装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
周知のごとくセラミックコンデンサーは、充放電に伴う圧電現象により振動する。図7にその振動原理を示した。ここに示したセラミックコンデンサー1は、表面実装型であり、箱型の外形をなし、その箱の左右両端に端子2を備えている。そして、セラミックコンデンサー1が実装される基板3には、端子2と接続されるパッド4が形成されており、端子2とパッド4とを半田付けなどによって接続することで、セラミックコンデンサー1が基板3上に実装される。
【0003】
そして、セラミックコンデンサー1が周期的に充放電されると、セラミックコンデンサー1が圧電現象により上下方向に振動する(矢印5)。セラミックコンデンサー1は基板3上に固定されているので、その上下の振動5が基板3を左右に伸縮させる力6となり、その結果、基板3が周期的に撓む。このとき、充放電の周期が可聴周波数範囲にあるとセラミックコンデンサー1の振動が基板3を鳴動させる。基板3と共振すればその鳴動による音量はさらに大きくなる。もちろん、セラミックコンデンサー1自体が鳴動する場合もある。なお、可聴周波数範囲は、個人差もあるが、一般的には20Hz〜20KHz程度である。
【0004】
図8と図9に、上述したセラミックコンデンサー1の振動に伴う鳴動を抑制するための方法について、その従来例を示した。図8に示した鳴動抑制方法では、セラミックコンデンサー1の端子2を基板3から浮かせて実装し、セラミックコンデンサー1における振動が直接基板3に伝達されないようにしている。また、基板3から浮かせるための部材(リードピン、半田バンプなど)7によって、振動を吸収させている。また、図9に示した方法では、基板3を挟んで上下対象に同じセラミックコンデンサー(1a,1b)を実装することで振動を相殺させている。なお、上記従来の鳴動抑制方法については、以下の特許文献に記載されている。
【特許文献1】特開2000−235931号公報
【特許文献2】特開2000−232030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8に示した従来例では、セラミックコンデンサーを基板から浮かせて実装しているため、直接表面に実装するより実装強度が低下する。そのため、その強度を確保するための品質管理や信頼性試験が必要となり、その品質管理や信頼性試験のための設備コストが掛かる。また、その管理や試験に要する時間や人件費により製造コストが増加する。図9に示した従来例では、片面実装基板は適用外であり、多種多様な実装基板やその基板を含む回路装置などに対応させることができない。なお、当然のことながら、セラミックコンデンサーの実装構造によって鳴動を抑制する方法では、セラミックコンデンサー自体の鳴動を抑制することが極めて難しい。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、その目的は、周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象に起因する鳴動を、セラミックコンデンサーの実装構造を変更することなく、効果的に抑制することにある。また、そのセラミックコンデンサーの振動に起因する鳴動を抑制する機能を備えた回路装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、可聴周波数範囲に対応する1周期に充電期間と放電期間とが設けられて、周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、前記セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための方法であって、前記充電期間終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧が前記放電期間で所定電圧値まで降下した場合、次の充電期間まで当該所定電圧値を維持するように前記セラミックコンデンサーを充電する回路装置における鳴動抑制方法としている。
【0008】
また、前記回路装置は、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力端に接続された表示素子を含み、当該表示素子は、前記1周期の間における前記充電期間と放電期間の割合を可変制御することで、1周期中の所定時間だけ表示状態となって階調表示を行い、前記放電期間中に維持される電圧値は、前記表示素子が表示状態となる閾値電圧未満である回路装置における鳴動抑制方法としてもよい。
【0009】
本発明は回路装置にも及んでおり、当該回路装置に係る本発明は、可聴周波数範囲に対応する1周期を充電期間と放電期間に区分し、前記充電期間中に充電制御信号を出力する主充電制御回路に接続された回路装置であって、
充電回路と、当該充電回路が出力する充電信号により充電されるセラミックコンデンサーと、当該セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための鳴動抑制回路とを含み、
前記鳴動抑制回路は、サンプルホールド回路と、比較信号出力回路と、電圧比較回路と、副充電制御回路と、信号混合回路とを含み、
前記サンプルホールド回路は、前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力端側と、前記主充電制御回路にて生成されて前記充電周期中に出力される充電期間指示信号の出力端とに接続され、前記充電周期の終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧値v1を次の充電周期の開始時点まで保持し、当該保持した値v1の信号を出力し、
前記比較信号回路は、前記電圧値v1の信号を入力し、当該電圧値v1の所定割合の電圧値v2の比較信号を出力し、
前記電圧比較回路は、前記電圧値v2の比較信号と前記放電期間中のセラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧値v3とを比較し、v2>v3である場合に充電指示信号を出力し、
前記副充電制御回路は、前記電圧比較回路の出力端に接続されて、前記充電指示信号の入力期間中に副充電制御信号を出力し、
信号混合回路は、前記主充電制御回路と前記副充電制御回路のそれぞれの出力端からの信号を入力し、前記1周期の間に入力される前記主充電制御信号と前記副充電制御信号を出力する。
【0010】
前記充電回路は、前記信号混合回路の出力端に接続されて、前記主充電制御信号または前記副充電制御信号から前記セラミックコンデンサーを充電するための充電信号を生成して出力する鳴動抑制機能を備えた回路装置としている。
【0011】
また、上記回路装置は、デジタル回路で構成してもよく、当該デジタル回路で構成された回路装置に係る発明は、可聴周波数範囲に対応する1周期を充電期間と放電期間に区分し、前記充電期間中に充電制御信号を出力する主充電制御手段に接続された回路装置であって、
充電手段と、当該充電手段が出力する充電信号により充電されるセラミックコンデンサーと、当該セラミックコンデンサーに接続されてこれを充電する充電手段と、前記セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための鳴動抑制手段とを含み、
前記鳴動抑制手段は、サンプルホールド手段と、比較信号出力手段と、電圧比較手段と、副充電制御手段と、信号混合手段とを含み、
前記サンプルホールド手段は、前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力端側と、前記充電回路にて生成されて前記充電周期中に出力される充電期間指示信号の出力端とに接続され、前記充電周期の終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧をA/D変換してデジタルデータにした電圧値v1を次の充電周期の開始時点まで記憶し、
前記比較信号出力手段は、前記電圧値v1の所定割合となる電圧値v2を計算してその計算した電圧値v2のデータを記憶し、
前記電圧比較手段は、前記放電期間中の前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力側電圧をA/D変換してデジタルデータにした電圧値v3と、前記電圧値v2とを比較し、v2>v3である場合に充電指示データを出力し、
前記副充電制御手段は、前記電圧比較手段の出力端に接続されて、前記充電指示データの入力期間中に副充電制御信号を出力し、
信号混合手段は、前記主充電制御手段と前記副充電制御手段のそれぞれの出力端からの信号を入力し、前記1周期の間に入力される前記主充電制御信号と前記副充電制御信号を出力する。
【0012】
前記充電手段は、前記信号混合回路の出力端に接続されて、前記主充電制御信号または前記副充電制御信号から前記セラミックコンデンサーを充電するための充電信号を生成して出力する鳴動抑制機能を備えた回路装置としている。
【0013】
上記いずれかの回路装置において、前記v1と前記v3は、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧をレベルシフトして所定電圧分電圧降下された電圧値であればより好ましい。
【0014】
さらに、上記いずれかの回路装置において、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力端に接続された表示素子を含み、当該表示素子は、前記1周期の間における前記充電期間と放電期間の割合が可変制御されることで、1周期中の所定時間だけ表示状態にされて階調表示を行い、前記充電回路が前記副充電制御信号に基づいて前記セラミックコンデンサーを充電した際、当該セラミックコンデンサーの端子間電圧は、前記表示素子が表示状態となる閾値電圧より小さい鳴動抑制機能を備えた回路装置としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、コンデンサーの実装構造を変更することなく、セラミックコンデンサーの振動に起因する鳴動を効果的に抑制することができる。そのため、実装構造の変更に伴うコストアップを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
===充電回路の構成例===
図1は、セラミックコンデンサーを周期的に充放電させるための回路の一例である。この回路10は、調光制御可能なLED点灯回路10であり、その基本構成部分は、セラミックコンデンサー16の充電回路11である。そして、この例における充電回路11は、コイル12を用いた典型的な昇圧回路の構成を備えている。この充電回路11において、電界効果型トランジスタ(FET)13は、ゲート13g側の入力端s1に印加される主充電制御回路20からの駆動信号に従って高速でオン/オフし、このFET13のドレイン13d側にはコイル12の一端が接続されている。コイル12の他端は所定電圧の電源14に接続されている。また、FET13のドレイン13dには、ダイオード15のアノード15aが接続されている。そのダイオード15のカソード15c側には充電対象となるセラミックコンデンサー16の一端s2が接続されており、他端側は接地されている。すなわち、ダイオード15とセラミックコンデンサー16の接続点s2が当該セラミックコンデンサー16の端子間電圧の出力端となる。そして、LED17は、この出力端s2に接続されて、ここに出力されるセラミックコンデンサー16の端子間電圧が所定の電圧(点灯閾値)以上となったときに点灯する。
【0017】
上記点灯回路10では、時間階調方式によってLED17を調光制御する。すなわち、人が点滅を視認できない程度の周波数(例えば30Hz以上)に相当する周期(以下、点滅周期)の間に点灯閾値以上の電圧を印加する期間と点灯閾値未満の電圧を印加する期間とを設け、その各期間の時間割合を可変制御することで、LED17の明るさを調整する。主充電制御回路20は、その調光制御をするための信号(主駆動信号)を生成し、この主駆動信号によってFET13を駆動する。充電回路11は、主駆動信号に応じてFET13が出力する信号によって点滅周期中の所定期間だけ昇圧してセラミックコンデンサー16を充電させ、点滅周期の残りの期間は昇圧せずにセラミックコンデンサー16を放電させる。それによって、点滅周期の1周期分の間に、セラミックコンデンサー16の端子間電圧がLED17の点灯閾値以上となる点灯期間とその後の閾値未満となる消灯期間とに区分される。
【0018】
===主充電制御回路===
図2に主充電制御回路20が出力するFET13の駆動信号と、この駆動信号を生成するための信号の波形(A)〜(C)に示した。また、(D)に、FET13の駆動信号とセラミックコンデンサー16における端子間電圧との関係を示した。これら(A)〜(D)では、横軸を時間、縦軸を電圧として信号波形を示した。(A)は、FET13の駆動信号21を示しており、周期的に高周波信号22が階調に応じた期間24cだけ出力されるような波形となっている。1周期24の間にセラミックコンデンサー16を充電する充電期間24cと放電させる放電期間24dとが設けられている。充電回路11は、充電期間24c中にこの高周波信号(主充電制御信号)22から電源14の電圧を昇圧した信号(充電信号)を生成し、この充電信号によりセラミックコンデンサー16を充電する。
【0019】
(B)(C)に、上記のFETの駆動信号(以下、主駆動信号)21を生成するための信号波形を示した。主駆動信号21は、(B)に示した主充電制御信号22と、(C)に示したパルス状の信号23とのAND信号である。このパルス状信号(充電期間指示信号)23は、1周期の間にHとLが所定の時間割合となる信号であり、主充電制御回路20は、例えば、充電期間となる充電期間指示信号23のパルス幅24cを可変制御する回路などを備えることで、充電期間24cと放電期間24dの時間割合を可変設定することができる。
【0020】
(D)は、主駆動信号21とセラミックコンデンサー16の端子間電圧の信号波形25との関係を示しており、セラミックコンデンサー16は、充電期間24c中に充電回路11により充電されて端子間電圧を増加させ、充電期間24cの終了時点で最大値v1となり、その後、放電期間24d中に放電して徐々に端子間電圧を減少させていく。この充放電の周期を繰り返す。なお、LED17における点灯期間と消灯期間は、1周期分の端子間電圧波形26において、点灯閾値v4以上となっている期間27aと閾値以下27bとなっている期間に相当する。
【0021】
===コンデンサーに起因する鳴動===
上述したように周期的に充放電されるセラミックコンデンサー16は、圧電現象により振動する。そして、図2(D)に基づいて説明すると、振動による鳴動は、上記駆動信号21の1周期24が可聴周波数範囲に対応し、すなわち、1周期24の時間の逆数が可聴周波数範囲内であり、端子間電圧の変動幅vcが振動を起こさせるほど大きい場合である。なお、セラミックコンデンサー16に起因する鳴動が問題となるのは、本実施例のLED17の点灯回路10では、例えば、LED17が液晶ディスプレイのバックライトや照明などに使用される場合などが考えられる。このような場合では、LED17を調光しようとして、充電期間24cの時間を可変させた場合、ある明度のときに、不要な音がディスプレイや照明器具から発生することになる。
【0022】
===鳴動抑制回路===
本発明は、周期的に充放電されるセラミックコンデンサー16に起因する鳴動をそのコンデンサー16の実装構造ではなく、電気的な信号によって制御することに特徴がある。図3は本発明の鳴動抑制機能を備えた回路装置の要部である、鳴動抑制回路100の構成例を示している。当該鳴動抑制回路100は、機能別に、サンプルホールド回路30と、比較信号出力回路40と、電圧比較回路50と、副充電制御回路60と、信号混合回路70の各回路構成を備えている。なお、この図3では、主充電制御回路20の概略構成と、図1に示した充電回路11との接続点(s1、s2)も併せて示した。
【0023】
<サンプルホールド回路>
図3に示したサンプルホールド回路30は、典型的な回路構成であり、セラミックコンデンサー16の端子間電圧を保持するタイミング毎にオン/オフするアナログスイッチ31と、電圧フォロワ32、および電圧を保持するためのコンデンサー(ホールドコンデンサ)33を含んで構成されている。アナログスイッチ31は、その出力端s3にホールドコンデンサー33が接続され、入力端s4にセラミックコンデンサー16の端子間電圧の出力端s2が接続されている。そして、主充電制御回路20において、主駆動信号21を生成する過程で生成される充電期間指示信号23の出力s5をトリガとして動作し、充電期間指示信号23の立ち下がりでスイッチ31を切断する。すなわち、充電期間24c中のセラミックコンデンサー16の端子間電圧によってホールドコンデンサー33が充電されることになる。オペアンプ34の出力s6を負帰還させてなる電圧フォロワ32のプラス側入力s7にはホールドコンデンサー33の端子間電圧が入力され、充電期間24cの終了時点におけるホールドコンデンサー33の端子間電圧が次の充電期間24cの開始時点まで電圧フォロワ32から出力され続けられる。すなわち、当該充電期間24cにおけるセラミックコンデンサー16の端子間電圧において、図2に示した最大電圧v1が保持される。
【0024】
<比較信号出力回路>
比較信号出力回路40は、サンプルホールド回路30により保持された充電電圧v1を2つの抵抗41と42で抵抗分割する回路であり、v1が抵抗41によって電圧(以下、v2)に電圧降下され、このv2を比較電圧として出力としている。
【0025】
<電圧比較回路>
電圧比較回路50は、コンパレータ51からなり、上記比較電圧v2と、セラミックコンデンサー16の端子間電圧(以下、v3)とを比較し、v2>v3となっている期間中にH信号(副充電指示信号)を出力する。
【0026】
<副充電制御回路>
副充電制御回路60は、2端子のAND回路61を主体にして構成され、電圧比較回路50の出力端s8からの副充電指示信号を入力するとともに、FET13を駆動するための高周波信号(副充電制御信号)を発振器62から入力する。それによって、発振器62からの副充電制御信号が、副充電指示信号を入力している期間だけ出力される。なお、主充電制御回路20において高周波信号である主充電制御信号22を発生させるための発振器が副充電制御回路60の発振器62であってもよい。すなわち、主充電制御信号22と副充電制御信号は同じでもよい。
【0027】
<信号混合回路>
信号混合回路70は、OR回路71により構成され、前記主充電制御装置20からの主駆動信号21と、副充電制御回路60におけるAND出力である間欠的な副充電制御信号(副駆動信号)とを個別に入力する。信号混合回路70の出力端s9は、充電回路11におけるFET13の駆動信号入力端s1に接続され、充電回路11では、OR回路71に入力された信号が混合された信号をFET13の駆動信号として入力する。図4に信号混合回路70の入力信号と出力信号を示した。(A)(B)(C)にそれぞれ、主駆動信号、副駆動信号、およびこれらの信号の合成信号を示した。1周期24の間に、主駆動信号21と副駆動信号72が入力される。そして、その出力信号73は、充電周期24cにおいては主充電制御信号22が出力され、放電期間24dにおいては副充電指示信号74が間欠的に出力される波形となっている。
【0028】
===鳴動抑制動作===
図5に信号混合回路70からの出力信号74とセラミックコンデンサー16の端子間電圧との関係を示した。また、鳴動抑制機能がない充電回路11におけるセラミックコンデンサー16の端子間電圧25も併せて示した。充電期間24cの終了時点Teでピーク値v1となった端子間電圧v3の値が放電期間24d中に徐々に減少しその電圧値v3が閾値v2より小さくなると副充充電制御信号73が充電回路11に入力される。それによって、セラミックコンデンサー16が一時充電されv3が閾値v2を超え、副充電制御信号73の出力が停止する。そして、セラミックコンデンサー16がまた放電されて端子間電圧v3が再度減少し、また一時充電される。このような充放電動作を次の充電期間24cの開始時点Tsまで繰り返す。それによって、セラミックコンデンサー16の端子間電圧v3は、ほぼ閾値v2に維持される。
【0029】
なお、セラミックコンデンサー16の振動に起因する鳴動を抑制するためには、比較信号出力回40の2つの抵抗(41,42)を適宜に選択し、セラミックコンデンサー16の振動が鳴動を発生させない程度の振幅となるようにv1とv2の差Δvを調整すればよい。また、図1に示したLED17の点灯回路10に図3の鳴動抑制回路を付加する場合には、鳴動抑制時のセラミックコンデンサー16の端子間電圧をLED17の点灯閾値電圧v4より小さくすることが必要となる。すなわち、図5に示したように、充電回路11が副駆動信号に基づいてセラミックコンデンサー16を一時的に充電した際の端子間電圧の最大値v5が点灯閾値v4より小さいことが必要となる。それによって、LED17を所望の明るさに調光制御したうえで、セラミックコンデンサー16の振動に起因する鳴動も抑制することができる。
【0030】
このように、上記鳴動抑制機能を備えた回路装置では、実装構造に頼らずにセラミックコンデンサー16の振動に起因する鳴動を効果的に抑制することができる。そのため、実装構造の変更に伴う製造設備の変更や新たな信頼性試験が不要であり、コストアップを防止することができる。また、セラミックコンデンサー16の振動による鳴動が発生している既存の回路装置に本実施例の鳴動抑制回路100を付加するだけで、鳴動を抑制することができる。したがって、既存の回路装置を有効活用することも期待できる。
【0031】
===デジタル回路による構成===
図3に示した鳴動抑制回路100は、アナログ回路による構成であったが、デジタル回路で構成することも可能である。その鳴動抑制回路100をデジタル回路によって構成した鳴動抑制部の機能ブロック構成を図6に例示した。図3に示した鳴動抑制回路100を構成する各回路(30,40,50,60,70)に対応して、鳴動抑制部100bは、サンプルホールド部130、比較信号出力部140、電圧比較部150、副充電制御部160、信号混合部170を備えている。サンプルホールド部130では、サンプルホールド回路30と同様のアナログ回路からなるv1保持部131によって電圧v1を保持し、そのv1をv1データ生成部132によりA/D変換して数値化する。そして、レジスタなどによって構成されるv1記憶部133がそのv1の値を記憶する。なお、v1データ生成部132は、v1保持部131からの出力を随時A/D変換し、v1の値を随時更新する。そして、v1記憶部はv1が更新されればその都度v1の値を書き換える。
【0032】
比較信号出力部140は、所定の係数を記憶し、v1記憶部133に記憶されているv1の値にその係数を乗算するなどしてv1に対して所定の割合の値v2を生成し、そのv2を記憶する。また、v1が更新されるごとにv2も更新する。電圧比較部150は、v3データ生成部151にてセラミックコンデンサー16の端子間電圧v3をリアルタイムでA/D変換して数値化し、比較部にてv2とv3を比較し、v2>v3であれば、例えば、バイナリデータの「1」に相当する所定電圧値のH信号を副充電指示信号として出力する。
【0033】
副充電制御部160と信号混合部170は、図3に示した副充電制御回路60と信号混合回路70と同様のものであり、副充電制御部160は、副充電指示信号を入力したときに発振器161からの副充電制御信号を出力し、信号混合部170は、この副充電制御信号と主充電制御信号の混合信号を充電回路11におけるFET13の駆動信号として出力する。
【0034】
===端子間電圧のレベルシフトについて===
本実施例では、セラミックコンデンサー16の充電回路11は、昇圧回路であり、セラミックコンデンサー16の端子間電圧は図3や図6に示した回路構成に用いられる素子の定格電圧を超えてしまう可能性もある。そのため、端子間電圧を周知のレベルシフタにより、例えば、端子間電圧の最大値が回路素子の最大定格電圧程度になるように所定電圧分降下させることが望ましい。そして、そのレベルシフトされた電圧を鳴動抑制回路100や鳴動抑制部100bに入力させるのである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】典型的な充電回路の構成を含むLED点灯回路の回路図である。
【図2】上記充電回路を構成するトランジスタの駆動信号と、上記充電回路にて充電されるセラミックコンデンサーの充電電圧波形との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例における回路装置を構成する鳴動抑制回路の回路図である。
【図4】上記鳴動抑制回路にて生成される信号の波形を示す図である。
【図5】上記鳴動抑制回路にて生成される信号とセラミックコンデンサーの充電電圧波形との関係を示す図である。
【図6】上記鳴動抑制回路をデジタル回路で構成した場合の機能ブロック図である。
【図7】充放電するセラミックコンデンサーの振動に起因する鳴動の原理を示す図である。
【図8】セラミックコンデンサーの振動に起因する鳴動を抑制するための従来の方法を示す図である。
【図9】上記従来の方法のその他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1、16 セラミックコンデンサー
3 基板
11 充電回路
13 電界効果型トランジスタ
20 主充電制御回路
21 主駆動信号
22 主充電制御信号
23 充電期間指示信号
30 サンプルホールド回路
40 比較電圧出力回路
50 電圧比較回路
60 副充電制御回路
70 信号混合回路
72 副駆動信号
73 主充電制御信号と副充電指示信号をと混合した信号
74 副充電制御信号
100 鳴動抑制回路
100b 鳴動抑制部
130 サンプルホールド部
140 比較信号出力部
150 電圧比較部
160 副充電制御部
170 信号混合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可聴周波数範囲に対応する1周期に充電期間と放電期間とが設けられて、周期的に充放電されるセラミックコンデンサーを含む回路装置において、前記セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための方法であって、
前記充電期間終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧が前記放電期間で所定電圧値まで降下した場合、次の充電期間まで当該所定電圧値を維持するように前記セラミックコンデンサーを充電する
ことを特徴とする回路装置における鳴動抑制方法。
【請求項2】
請求項1において、前記回路装置は、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力端に接続された表示素子を含み、当該表示素子は、前記1周期の間における前記充電期間と放電期間の割合を可変制御することで、1周期中の所定時間だけ表示状態となって階調表示を行い、前記放電期間中に維持される電圧値は、前記表示素子が表示状態となる閾値電圧未満であることを特徴とする回路装置における鳴動抑制方法。
【請求項3】
可聴周波数範囲に対応する1周期を充電期間と放電期間に区分し、前記充電期間中に主充電制御信号を出力する主充電制御回路に接続された回路装置であって、
充電回路と、当該充電回路が出力する充電信号により充電されるセラミックコンデンサーと、当該セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための鳴動抑制回路とを含み、
前記鳴動抑制回路は、サンプルホールド回路と、比較信号出力回路と、電圧比較回路と、副充電制御回路と、信号混合回路とを含み、
前記サンプルホールド回路は、前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力端側と、前記主充電制御回路にて生成されて前記充電周期中に出力される充電期間指示信号の出力端とに接続され、前記充電周期の終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧値v1を次の充電周期の開始時点まで保持し、当該保持した値v1の信号を出力し、
前記比較信号回路は、前記電圧値v1の信号を入力し、当該電圧値v1の所定割合の電圧値v2の比較信号を出力し、
前記電圧比較回路は、前記電圧値v2の比較信号と前記放電期間中のセラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧値v3とを比較し、v2>v3である場合に充電指示信号を出力し、
前記副充電制御回路は、前記電圧比較回路の出力端に接続されて、前記充電指示信号の入力期間中に副充電制御信号を出力し、
信号混合回路は、前記主充電制御回路と前記副充電制御回路のそれぞれの出力端からの信号を入力し、前記1周期の間に入力される前記主充電制御信号と前記副充電制御信号を出力する。
前記充電回路は、前記信号混合回路の出力端に接続されて、前記主充電制御信号または前記副充電制御信号から前記セラミックコンデンサーを充電するための充電信号を生成して出力する
ことを特徴とする鳴動抑制機能を備えた回路装置。
【請求項4】
可聴周波数範囲に対応する1周期を充電期間と放電期間に区分し、前記充電期間中に充電制御信号を出力する主充電制御手段に接続された回路装置であって、
充電手段と、当該充電手段が出力する充電信号により充電されるセラミックコンデンサーと、当該セラミックコンデンサーに接続されてこれを充電する充電手段と、前記セラミックコンデンサーの充放電に伴う圧電現象によって発生する鳴動を抑制するための鳴動抑制手段とを含み、
前記鳴動抑制手段は、サンプルホールド手段と、比較信号出力手段と、電圧比較手段と、副充電制御手段と、信号混合手段とを含み、
前記サンプルホールド手段は、前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力端側と、前記充電回路にて生成されて前記充電周期中に出力される充電期間指示信号の出力端とに接続され、前記充電周期の終了時点における前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力側電圧をA/D変換してデジタルデータにした電圧値v1を次の充電周期の開始時点まで記憶し、
前記比較信号出力手段は、前記電圧値v1の所定割合となる電圧値v2を計算してその計算した電圧値v2のデータを記憶し、
前記電圧比較手段は、前記放電期間中の前記セラミックコンデンサーにおける端子間電圧の出力側電圧をA/D変換してデジタルデータにした電圧値v3と、前記電圧値v2とを比較し、v2>v3である場合に充電指示データを出力し、
前記副充電制御手段は、前記電圧比較手段の出力端に接続されて、前記充電指示データの入力期間中に副充電制御信号を出力し、
信号混合手段は、前記主充電制御手段と前記副充電制御手段のそれぞれの出力端からの信号を入力し、前記1周期の間に入力される前記主充電制御信号と前記副充電制御信号を出力する。
前記充電手段は、前記信号混合回路の出力端に接続されて、前記主充電制御信号または前記副充電制御信号から前記セラミックコンデンサーを充電するための充電信号を生成して出力する
ことを特徴とする鳴動抑制機能を備えた回路装置。
【請求項5】
請求項3または4において、前記v1と前記v3は、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧をレベルシフトして所定電圧分電圧降下された電圧値であることを特徴とする鳴動抑制機能を備えた回路装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかにおいて、前記セラミックコンデンサーの端子間電圧の出力端に接続された表示素子を含み、当該表示素子は、前記1周期の間における前記充電期間と放電期間の割合が可変制御されることで、1周期中の所定時間だけ表示状態にされて階調表示を行い、前記充電回路が前記副充電制御信号に基づいて前記セラミックコンデンサーを充電した際、当該セラミックコンデンサーの端子間電圧は、前記表示素子が表示状態となる閾値電圧より小さいことを特徴とする鳴動抑制機能を備えた回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−135623(P2010−135623A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311148(P2008−311148)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(508128244)FDKモジュールシステムテクノロジー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】