説明

回路装置

【課題】ケース側端子がインサート成形されたケースと、このケースに取り付けられてケース側端子が半田付けされる回路基板とを備える回路装置において、ケース側端子に十分な柔軟性を持たせて、ポッティング樹脂の熱膨張によりケース側端子の半田接続部に生じる応力を十分に緩和する。
【解決手段】ケース側端子(例えばコイル端子10)は、基板5に対して略垂直に配置されて基板5のスルーホールに先端が挿入され半田付けされる第1直線状部10aと、基板5に対して略平行に配置される第2直線状部10cと、基板5に対して略垂直に配置される第3直線状部10bと、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、これら第1〜第3直線状部が全体としてコ字状を成す形状とされ、第3直線状部においてケース4に固着され、第1直線状部の全部と第2直線状部の一部がケース4に固着されずに自由状態とされた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形などによって端子を一体的に設けたケースと、このケースに取り付けられて前記端子が半田付けされる回路基板とを備える回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載用などの回路基板は、樹脂製のケースに対して回路基板を取り付けた後、ケース側に予め一体に設けられたケース側端子(コネクタ端子などであって、例えばインサート成形によって予めケースに一体に設けられる端子)と回路基板の半田接続を行って組み立てられる回路装置として設置されることがある。またこのような回路装置では、特に車載用の場合、ケース内に樹脂を充填して回路基板等を封止して保護するいわゆるポッティング(POTTING)が行われる。
このため、上記回路装置では、半田接続の際の端子の熱膨張に加えて、半田接続後に充填されるポッティング樹脂の熱膨張によって端子の半田接続部分に加わる応力の問題を考慮しなければならない。そのため従来では、上記応力によって半田にクラックが生じる等の不具合を防止するために、端子を接続する半田の強度を極端に高める必要があるという問題があった。
ところで、基板との半田接続の際の端子の熱膨張等に対処するための技術として、端子の途中に折り曲げ部やジグザグ状の弾性変形部を形成し、この折り曲げ部等で端子の変形を吸収するようにした端子の構造が特許文献1〜4に開示されている。特に特許文献3には、基板と信号端子の半田接続部分が熱膨張によって損傷するのを防止するため、信号端子と同様の態様で熱変形する支持端子によって基板を支持する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−348800号公報
【特許文献2】特開2003−208939号公報
【特許文献3】特開2007−234549号公報
【特許文献4】特開2007−305531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜4に見られるような従来技術では、ポッティング樹脂の熱膨張の問題は考慮されておらず、ポッティング樹脂の熱膨張によって端子の半田接続部に生じる応力を十分に緩和するには、端子の柔軟性が不十分であった。
そこで本発明は、インサート成形などによって端子を一体的に設けたケースと、このケースに取り付けられて前記端子が半田付けされる回路基板とを備える回路装置において、端子に十分な柔軟性を持たせることによって、ポッティング樹脂の熱膨張によって端子の半田接続部に生じる応力を十分に緩和し、半田強度を極端に高めることなく前記応力による前記半田接続部の損傷を防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、端子を一体的に設けたケースと、このケースに取り付けられて前記端子が半田付けされる回路基板とを備える回路装置であって、
前記端子は、前記回路基板に対して略垂直に配置されて前記回路基板の対応するスルーホールに先端が挿入され半田付けされる第1直線状部と、この第1直線状部に対して略直角で前記回路基板に対して略平行に配置される第2直線状部と、この第2直線状部に対して略直角で前記回路基板に対して略垂直に配置される第3直線状部と、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、これら第1直線状部、第2直線状部、及び第3直線状部が全体としてコ字状を成すように形成されたものであり、
前記端子は、前記第3直線状部或いは前記第3直線状部よりも基端側において前記ケースに固着され、少なくとも前記第1直線状部の全部と前記第2直線状部の一部が前記ケースに固着されずに自由状態とされていることを特徴とするものである。
【0006】
本願の回路装置では、少なくとも第2直線状部の撓みや捩れを伴って第1直線状部が各方向(特に回路基板に対して進退移動する方向)に大きく変位することが可能であり、さらに第1直線状部自体の撓みや捩れも可能である。このため、端子の半田接続部(即ち、第1直線状部の先端)が、ケースに対して各方向(特に基板に対して進退移動する方向)に十分変位することが可能である。このため、端子に十分な柔軟性を持たせることができ、これによって、ポッティング樹脂の熱膨張によって前記半田接続部に生じる応力を十分に緩和し、半田強度を極端に高めることなく前記応力による前記半田接続部の損傷を防止することが可能となる。
【0007】
また、本願の回路装置の好ましい態様は、前記回路基板に対向する前記ケースの内面に、前記第2直線状部がはまり込む凹部が形成されているものである。この場合、凹部の分だけ第1直線状部や第3直線状部の長さを長く設定して、端子の柔軟性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本願の回路装置によれば、端子に十分な柔軟性を持たせることができ、これによって、ポッティング樹脂の熱膨張によって前記半田接続部に生じる応力を十分に緩和し、半田強度を極端に高めることなく前記応力による前記半田接続部の損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アンテナ回路装置の斜視図である。
【図2】アンテナ回路装置の平面図である。
【図3】(a)はアンテナ回路装置のコイル端子の位置での側断面図、(b)はアンテナ回路装置(比較例)の同断面図である。
【図4】(a)はアンテナ回路装置のコネクタ端子の位置での側断面図、(b)はアンテナ回路装置(比較例)の同断面図である。
【図5】(a)〜(c)は端子構造の各例を示す図であり、(b)は端子構造の比較例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
本例は、本発明を車両におけるタイヤ空気圧監視システム(TPMS)のアンテナ回路装置1に適用した場合の例である。タイヤ空気圧監視システムは、車両のタイヤ内に設けた空気圧センサーを含むタイヤ側機器と車体側に設けたコントローラとの間の無線通信によって、現在のタイヤ空気圧のデータを前記コントローラで適宜受信し、このタイヤ空気圧のデータが異常であると警報を出力するなどの処理を前記コントローラが実行するものである。本例のアンテナ回路装置1は、上記コントローラ側のアンテナ回路を構成する装置であり、例えば車体におけるタイヤハウス内に取り付けられる。このため、アンテナ回路装置1が設けられた箇所は、車両走行時にタイヤが跳ね上げる水しぶきや小石や砂などの異物が飛散する環境にある。
図1は、本例のアンテナ回路装置1(上蓋を取り外した状態、以下同様)の上面側を斜めに見た斜視図である。図2は、アンテナ回路装置1の平面図(上面側から見た図)である。図3(a)は、アンテナ回路装置1の後述するコイル端子10の位置での側断面図である。図4(a)は、アンテナ回路装置1の後述するコネクタ端子8の位置での側断面図である。なお以下では、図2の紙面において、上方を前方、下方を後方、左方を左方、右方を右方という。また以下では、図2の紙面に直交する方向を上下方向とする。
【0011】
アンテナ回路装置1は、図1に示すように、上面が開口した箱型のケース本体部2を有し、このケース本体部2の後方の側面から後方に突出するようにコネクタ部3が一体に形成されたケース4と、ケース本体部2の上面を部分的に塞ぐようにコネクタ部3の突出方向(この場合、前後方向)に略平行な姿勢(即ち略水平な姿勢)で配置されてケース4に取り付けられる回路基板5と、ケース4に予め一体に設けられ、回路基板5がケースに取り付けられる際に、先端部が回路基板5の対応するスルーホール(符号省略)に挿入され、回路基板5の取り付け後に当該先端部が各スルーホールに半田付けされる複数のケース側端子と、アンテナ11とを備える。
この場合、ケース側端子(ケース4に予め一体に設けられる端子)としては、コネクタ端子6,7,8と、コイル端子9,10とがある。
【0012】
コネクタ端子8は、図4(a)に示すように、回路基板5に対して略垂直に配置されて回路基板5の対応するスルーホールに先端(この場合、上端)が挿入され半田付けされる第1直線状部8aと、この第1直線状部8aに対して略直角で回路基板5に対して略平行に配置される第2直線状部8cと、この第2直線状部8cに対して略直角で回路基板5に対して略垂直に配置される第3直線状部8bと、この第3直線状部8bに対して略直角で回路基板5に対して略平行に配置されてコネクタ部3内に伸びる第4直線状部8dと、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、第1直線状部8a、第2直線状部8c、及び第3直線状部8bが全体としてコ字状を成すように形成されたものである。このコネクタ端子8は、第4直線状部8dの部分がケース4のコネクタ部3に固着され、第1直線状部8a、第2直線状部8c、及び第3直線状部8bの全部がケース4に固着されずに自由状態とされている。なお説明を省略するが、他のコネクタ端子6,7も、コネクタ端子8と同じ構成であり、コネクタ端子8と並列に配設されている。図1において、符号6aはコネクタ端子6の第1直線状部であり、符号7aはコネクタ端子7の第1直線状部である。
【0013】
コイル端子10は、図3(a)に示すように、回路基板5に対して略垂直に配置されて回路基板5の対応するスルーホールに先端(この場合、上端)が挿入され半田付けされる第1直線状部10aと、この第1直線状部10aに対して略直角で回路基板5に対して略平行に配置される第2直線状部10cと、この第2直線状部10cに対して略直角で回路基板5に対して略垂直に配置される第3直線状部10bと、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、これら第1直線状部10a、第2直線状部10c、及び第3直線状部10bが全体としてコ字状を成すように形成されたものである。このコイル端子10は、第3直線状部10bと第2直線状部10cの一部がケース4の後述するコイル端子固着部2kに固着され、第1直線状部10aの全部と第2直線状部10cの残部(ケース本体部2の底面上に配置されている部分)がケース4に固着されずに自由状態とされている。なお説明を省略するが、コイル端子9もコイル端子10と同じ構成であり、コイル端子10と並列に配設されている。図1において、符号9aはコイル端子9の第1直線状部であり、符号9bはコイル端子9の第3直線状部である。
【0014】
ケース本体部2は、前側壁2a、後側壁2b、左側壁2c、及び右側壁2dによって四方を囲まれてなるもので、コネクタ部3は後側壁2bの比較的右側から後方に突出するように形成されている。なお、図において符号2e,2fで示すものは、ケース本体部2の側面に形成された取付片である。取付片2eは、前側壁2aの左右方向中央から前方に突出するように形成されたもので、上下に貫通する貫通孔2gを有する。また取付片2fは、後側壁2bの比較的左側から後方に突出するように形成されたもので、上下に貫通する貫通孔2hを有する。ケース4を含むアンテナ回路装置1の全体が、これらの貫通孔2g,2hに装着される係止具(図示省略)によって車体に取り付けられる。なお、このアンテナ回路装置1の取付状態においては、ケース本体部2の下面が車体(通常金属)に接合した状態となる。
【0015】
ケース本体部2の内部には、区画壁2jと、支持突起(図示省略)と、コイル端子固着部2kと、位置決め突起2mとが形成されている。区画壁2jは、ケース本体部2の内部を、アンテナ11が取り付けられる前側と、回路基板5が取り付けられる後側とに区画する壁である。支持突起は、ケース本体部2の底面から上方に突出する突起であって、上端が回路基板5の下面に当接して回路基板5を支持する突起であり、例えばケース本体部2の後部左右の隅の位置などに複数設けられている。位置決め突起2mは、支持突起とは異なる複数箇所(図1では2箇所)においてケース本体部2の底面から上方に突出する突起であって、上端部が回路基板5を貫通することによって、回路基板5を位置決めるものである。またコイル端子固着部2kは、コイル端子9,10の一部が内部に配置されて固着される部分である。例えばコイル端子10について説明すると、図3(a)に示すように、第2直線状部10cと第3直線状部10bの一部がこのコイル端子固着部2k内に配置されてこのコイル端子固着部2kに固着されている。
【0016】
なおアンテナ11は、電磁波を良好に放射するために、車体(金属)よりも離して配置する必要があり、そのためにケース本体部2の区画壁2jよりも前側の底面は、区画壁2jよりも後側の底面よりも高い位置に設けられており、装置1を車体に取り付けた状態では、アンテナ11と車体との間に十分な距離H(図3(a)に示す)が確保される構成となっている。
また、回路基板5の取り付け及びケース側端子との半田接続やアンテナ11の取り付けなどが終了した後、ケース本体部2内には、ポッティング樹脂がケース本体部2の最上面の高さまで充填されて封止される。またケース本体部2の上面側には、最終的に図示省略した上蓋が取り付けられ、この上蓋によってケース本体部2の上面側が覆われて、アンテナ11や回路基板5の周囲全体が覆われて保護される構成となっている。このようなポッティング樹脂による封止と、ケース本体部2と上蓋による被覆によって、アンテナ11や回路基板5などが、タイヤの回転によって飛散する水しぶきや異物、或いは車両走行時の車体の振動などから保護される。
【0017】
コネクタ部3は、後面が開口した断面四角形の筒状部分(コネクタの端子以外を構成する部分)であり、コネクタ端子6,7,8の第4直線状部(例えば第4直線状部8d、図4(a)に示す)が内部奥側に配置されて、コネクタ端子6,7,8の第4直線状部とともに外部接続用のコネクタ(装置1を電気的に外部に接続するためのコネクタの雌側)を構成する。なお、コネクタ端子6,7,8は、棒状の導電体を所定形状に成形してなるものであり、既述したように、第1〜第4直線状部よりなる。これらコネクタ端子6,7,8は、例えばインサート成形によってケース4のコネクタ部3に予め一体に設けられている。
【0018】
アンテナ11は、金属製の芯材12の中央部にコイル13を巻き付けたものである。芯材12は、この場合断面四角形の棒状部材であり、ケース本体部2内における区画壁2jよりも前側にはめ込まれ、例えば接着剤によってケース本体部2に固定される。コイル13を構成するコイル線の各端部は、コイル端子9,10の基端部(第3直線状部9b、10bの上端部)に絡げて接続してある。なお、コイル端子9,10は、棒状の導電体を全体としてコ字形に成形してなるものであり、既述したように、中央の第2直線状部(例えば第2直線状部10c)がケース本体部2の底面に沿って前後方向に配置され、両端部(第1直線状部9a,10aと第3直線状部9b,10b)がケース本体部2の底面から上方に伸びるように設けられたもので、例えばインサート成形によってケース本体部2に予め一体に設けられている。そして、これらコイル端子9,10の後方側の第1直線状部9a,10aの上端部は、回路基板5の対応するスルーホールに挿入されて回路基板5に接続され、前方側の第3直線状部9b,10bは、回路基板5とアンテナ11の間の位置(区画壁2jよりも後方位置)に配置されて既述したようにコイル13のコイル線の各端部に接続されている。なお、区画壁2jの中央部には、コイル13のコイル線を後方に導出するための切欠き2nが設けられている。
【0019】
回路基板5は、アンテナ11を駆動するための増幅回路などが形成された回路基板である。アンテナ11と前記増幅回路を離れた位置に配置すると、この間の接続配線がノイズの発生源となるため、アンテナ11と回路基板5は、近距離に配置する必要がある。この回路基板5には、前記増幅回路などを構成する抵抗などの回路部品(図示省略)が予め実装されている。この回路基板5は、平面形状が横長の長方形状のものであり、前述した位置決め突起2mに対応する位置に、位置決め突起2mがはまり込む貫通孔(符号省略)が形成されている。そして回路基板5は、その長辺側の一方の縁(後縁)がケース本体部2の後側壁2bに沿うように配置され、前述した支持突起が下面に当接し、前述した位置決め突起2mが対応する貫通孔にはまり込むとともに、前述したケース側端子の先端部6a,7a,8a,9a,10aが対応するスルーホールに挿入されることによってケース本体部2に対して位置決めされてケース4に対して取り付けられる。そしてこの取付作業(位置決め作業)の後、ケース側端子の先端部6a,7a,8a,9a,10aが各スルーホールに半田付けされることによって、回路基板5がケース4に対して固定されている。 なお本例の回路基板5は、このようにケース側端子の半田付けによってケース4に対して固定されているため、例えばネジ等によって回路基板5をケース4に別途固定する必要がないという利点がある。但しこのような構成であるため、仮にケース側端子に十分な柔軟性が無いと、例えばポッティング樹脂がその熱膨張により回路基板5を押し上げる力がケース側端子の半田接続部の応力を高めクラック等が生じる恐れがある。
【0020】
次に、以上のような構成のアンテナ回路装置1における、ケース側端子の構造とその背景技術について説明する。従来、この種のアンテナ回路装置は、ケース側端子(コネクタ端子6,7,8やコイル端子9,10)の構造が、図3(b)や図4(b)に示す比較例のような構成となっていた。即ち、コイル端子9,10については、図3(b)に示すように、第1直線状部9a,10aの部分もケース本体部2に形成されたコイル端子固着部2pに固着されていた。また、コネクタ端子6,7,8については、図4(b)に示すように、単純なL字形の形状となっており、ケースに固着されていない部分は僅かであった。このため、上記比較例の回路装置(図3(b)や図4(b))では、ケース側端子の柔軟性がほとんど無いか非常に少なく、半田接続後に充填されるポッティング樹脂の熱膨張により端子の半田接続部分に加わる応力によって半田にクラックが生じる等の不具合を防止するためには、半田の強度を極端に高める必要があるという問題があった。
なお、既述した特許文献1〜4のうち、特許文献1,2の構造は、単にL字形の折り曲げ部を端子に設ける構造であるため、図4(b)に示す構造と同様のものであり、上記問題を解決できない。また、特許文献3,4の思想は、全体として直線状の端子の途中に小さなジグザグ状の弾性変形部を形成するものであり、これを図3(b)のアンテナ回路装置に適用すると、例えば図5(d)に示す構造(第1直線状部10aの途中に弾性変形部10eが形成された構造)となる。このため、この特許文献3,4の思想を適用しても、上述したポッティング樹脂の熱膨張に耐え得るような端子の高い柔軟性は期待できない。また図5(d)のように、端子の直線状部10aの途中にジグザグ状の弾性変形部10eがある構造は、インサート成形の際の型抜きが不可能か困難であり、製作不可能であるか、或いは生産性が非常に悪くなるという短所がある。
【0021】
そこで、本例のアンテナ回路装置1では、次のような構成としている。
即ち、既述したように、各ケース側端子(コネクタ端子6,7,8とコイル端子9,10)は、回路基板5に対して略垂直に配置されて回路基板5の対応するスルーホールに先端が挿入され半田付けされる第1直線状部(例えば第1直線状部10a)と、この第1直線状部に対して略直角で回路基板5に対して略平行にケース本体部2の底面上に配置される第2直線状部(例えば第2直線状部10c)と、この第2直線状部に対して略直角で回路基板5に対して略垂直に配置される第3直線状部(例えば第3直線状部10b)と、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、これら第1直線状部、第2直線状部、及び第3直線状部が全体としてコ字状を成すように形成されたものであり、第3直線状部或いは第3直線状部よりも基端側においてケース4に固着され、少なくとも第1直線状部の全部と第2直線状部の一部がケース4に固着されずに自由状態とされている。また、アンテナ11とケース本体部2の下面(車体金属面)との間に距離Hが設けられていることによるケース本体部2の底部の空きスペースを利用して、図3や図4に示すように、各ケース側端子の上下寸法(第1直線状部や第3直線状部の長さ)を従来構造よりも格段に長くした。
【0022】
以上説明したアンテナ回路装置1では、各ケース側端子(コネクタ端子6,7,8とコイル端子9,10)の高い柔軟性、即ち回路基板5に半田接続される部分(第1直線状部の上端部)がケース4に対して大きく変位することが可能な性質、が十分得られる。というのは、例えばコイル端子10について説明すると、少なくとも第2直線状部10cの撓みや捩れを伴って第1直線状部10aが各方向(特に回路基板5に対して進退移動する方向、この場合上下方向)に大きく変位することが可能であり、さらに第1直線状部10a自体の撓みや捩れも可能である。このため、コイル端子10の半田接続部(即ち、第1直線状部10aの上端部)が、例えば図5(a)に鎖線や矢印で示す如く、ケース4に対して各方向(特に基板5に対して進退移動する上下方向)に十分変位することが可能である。このため、各ケース側端子に十分な柔軟性を持たせることができ、これによって、ポッティング樹脂の熱膨張によって半田接続部に生じる応力を十分に緩和し、半田強度を極端に高めることなく前記応力による半田接続部の損傷を防止することが可能となる。
なお本例の場合、コネクタ端子6,7,8については、第3直線状部よりもさらに基端側に設けられた第4直線状部においてコネクタ部3に固着され、第1〜第3直線状部の全体が固着されずに自由に変形可能である。このため、コネクタ端子6,7,8については、コイル端子9,10よりもさらに柔軟性が高く、上記応力を緩和する作用が著しい。
また発明者らが、図3(b)に示す従来構造と図3(a)に示す構造を比較する実験を行ったところ、端子の先端部(基板に半田接続される箇所)に同等の力を加えた場合の変位量が、図3(a)に示す構造の方が10倍近く多かった。
【0023】
なお、本発明は上述した実施例1の形態に限られず、各種の変形や応用があり得る。
例えば、実施例1では、タイヤ空気圧監視システム用のアンテナ回路装置を例示した。しかし、他のシステム(例えばスマートエントリーシステム)のアンテナ回路装置でもよいし、ケースに回路基板のみを取り付けた回路装置(アンテナの無い回路装置)でもよい。但し、前述したようなアンテナ11がある回路装置であるとケース底部に空きスペースがあるので、実施例1のように端子の上下寸法を大きくして端子の柔軟性をより高めることができる。
また、本発明の端子の第1直線状部と第3直線状部は、同じ長さである必要はなく、例えば一方が格段に短い態様でもよい。
【0024】
また図5(b)に示すように、回路基板5に対向するケースの内面(図5(b)の場合、ケース本体部2の底面)に、例えば第2直線状部10cがはまり込む凹部2qが形成された態様としてもよい。この場合、凹部2qの分だけ第1直線状部10aや第3直線状部10bの長さを長く設定して、端子の柔軟性をさらに向上させることができる。なお図5(b)の場合には、第3直線状部10bの下部全体が固着されているために、第3直線状部10bが下方に長くなっても端子10の柔軟性には無関係である。しかし、図4(a)に示すように第3直線状部8bも固着されていない態様の場合には、凹部2qのような凹部をケース底面に形成することで第3直線状部8bが下方により長くなると、その分だけ端子8の柔軟性が向上する。
またコイル端子9,10は、コネクタ端子6,7,8(図4(a)に示す)と同様の構成(例えばコイル端子10の場合、図5(c)に示すように第4直線状部10dを有する構成)とすることもできる。この場合、第4直線状部の端部にコイル13のコイル線を接続すればよい。
【符号の説明】
【0025】
1 アンテナ回路装置(回路装置)
2 ケース本体部
2k コイル端子固着部
3 コネクタ部
4 ケース
5 回路基板
6,7,8 コネクタ端子(端子)
8a 第1直線状部
8b 第3直線状部
8c 第2直線状部
9,10 コイル端子(端子)
10a 第1直線状部
10b 第3直線状部
10c 第2直線状部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を一体的に設けたケースと、このケースに取り付けられて前記端子が半田付けされる回路基板とを備える回路装置であって、
前記端子は、前記回路基板に対して略垂直に配置されて前記回路基板の対応するスルーホールに先端が挿入され半田付けされる第1直線状部と、この第1直線状部に対して略直角で前記回路基板に対して略平行に配置される第2直線状部と、この第2直線状部に対して略直角で前記回路基板に対して略垂直に配置される第3直線状部と、が先端側から基端側に向けて順次連続して設けられ、これら第1直線状部、第2直線状部、及び第3直線状部が全体としてコ字状を成すように形成されたものであり、
前記端子は、前記第3直線状部或いは前記第3直線状部よりも基端側において前記ケースに固着され、少なくとも前記第1直線状部の全部と前記第2直線状部の一部が前記ケースに固着されずに自由状態とされていることを特徴とする回路装置。
【請求項2】
前記回路基板に対向する前記ケースの内面には、前記第2直線状部がはまり込む凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−192148(P2010−192148A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32561(P2009−32561)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】