回転ゴム印
【課題】押印時の衝撃や操作ダイヤルに触れることで印字ベルトがずれ動くのを防止でき、これにより印字された文字列の乱れやかすれを一掃できるようにする。
【解決手段】印字ベルト9の外面に、一群の印面部29と突起30を交互に配置する。印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設ける。以て、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9の回動を規制する。
【解決手段】印字ベルト9の外面に、一群の印面部29と突起30を交互に配置する。印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設ける。以て、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9の回動を規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の印字ベルトを備えている日付印などの回転ゴム印に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の日付印の基本構造は特許文献1に公知である。そこでは、領収、受付、検査済、組織名などの文字列を印字する固定印字体と、年月日を印字する複数個の印字ベルトを印字要素にして構成してある。固定印字体は印面台の下面に固定される。この種の日付印においては、印面台を本体部から退避スライドした状態で、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更し、その後に印面台を使用位置へ戻して各印字ベルトの印面部を固定印字体の中央に露出させる。この状態で、スタンプ台のインクパッドに固定印字体および印字ベルトの印面部を押し付けてインクを付着させ紙面に転写する。
【0003】
上記のように、使用状態における印字ベルトの印面部は、印面台に設けた印字窓の開口面と交差するので、印字ベルトを回転操作して印面部の位置を変更することはできない。しかし、印字ベルトが回転規制してある訳ではないので、印字ベルトと印面台の間の隙間の範囲内で印字ベルトがずれ動くおそれがある。とくに、連続して押印作業を行うような状況では、予め印面部を直線列状に整列させていたとしても、繰り返し押印時の衝撃を受けることによって印字ベルトが徐々にずれ動き、あるいは操作ダイヤルに外力が加わることで印字ベルトがずれ動くことがある。いずれの場合にも印字した文字列が乱れ、場合によっては印字された文字の一部がかすれて判読不能となることもある。加えて、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更するとき、隣接する印面部の位置を直線状に整列させるのに手間取ることがある。とくに、年表示、月表示、日にち表示の全てを変更する場合には、印面部の整列に多くの手間が掛かりやすい。
【0004】
上記のような、隣接する印字ベルトにおける印面部の位置の乱れを防止することは、例えば特許文献2に公知である。そこでは、印字ベルトの外面に数字などを印字する印面部を一定ピッチおきに形成し、印字ベルトの内面の、印面部の形成位置から半ピッチだけずれた位置に、位置決め用の突起の一群を一定間隔おきに形成している。突起の間のベルト部の長さは、ブリッジの幅寸法と一致させてあり、これにより各印面部がブリッジの外面に位置する状態において、ブリッジの両側を隣接する突起で挟み込むようにしている。この突起は操作ダイヤルに設けた嵌合凹部と係合して、操作ダイヤルを回転操作するとき印字ベルトがスリップするのを防ぐスリップ防止機能も発揮できる。この種のベルト位置決め構造は特許文献3にも見受けられる。
【0005】
【特許文献1】実公昭64−4532号公報(第4頁7欄第25〜30行、第2図)
【特許文献2】特許第2905714号公報(段落番号0006、図1)
【特許文献3】実開昭57−57958号公報(第5頁第15〜20行、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の回転ゴム印によれば、連続して押印作業を行うような場合でも、位置決め突起をブリッジで受け止めて、印字ベルトが徐々にずれ動くのを防止できる。しかし、印字ベルトの内面に位置決め用の突起の一群を設けるので、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更するとき、突起がブリッジに乗り上がって印字ベルトに過大な張力が作用するのを避けられない。しかも、印字ベルトが操作ダイヤルに対してスリップしないので、印字ベルトに作用する張力が操作ダイヤルとブリッジとの間の直線部分に集中し、張力を分散することができない。そのため、印字ベルトが短期間で劣化しやすく耐久性に問題がある。印字ベルトの構造を強化することは不可能ではないが、その分だけ製造コストが嵩んでしまう。
【0007】
また、印字ベルトの基布の表面に印面部を成形し、さらに基布の裏面に位置決め用の突起を形成するので、従来の印字ベルトに比べてゴム成形の手間が倍増し、その分だけ印字ベルトの製造に要するコストが高く付く。当然、先のように劣化した印字ベルトを交換するときの費用も嵩むことになる。
【0008】
本発明の目的は、押印作業を連続して行うような過酷な使用条件下でも、押印時の衝撃や操作ダイヤルに触れることで印字ベルトがずれ動くのを防止でき、これにより印字された文字列の乱れやかすれを一掃して常に高度の印字品質を発揮できる回転ゴム印を提供することにある。本発明の目的は、印面部の位置を変更するときに印字ベルトに過剰な張力が作用するのを解消して印字ベルトの耐久性を保持でき、しかも、位置ずれ防止機能を備えているにもかかわらず印字ベルトをより低コストで提供できる回転ゴム印を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転ゴム印は、回転印字機構が組み込まれる本体部1と、本体部1の下部に配置される印面台2とを備えている。回転印字機構は、複数個の印字ベルト9と、各印字ベルト9の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル10と、複数個の印字ベルト9の下部内面を受け止めるブリッジ11とを含む。印面台2の下面には固定印字体19が配置されて、印面台2と固定印字体19とのそれぞれに印字ベルト9の印面部29を露出させる印字窓20・21が開口してある。印字ベルト9の外面には、一群の印面部29と突起30とが一定間隔おきに形成されて、印面部29と突起30とを交互に配置する。印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設ける。以て、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9を回動規制できることを特徴とする。
【0010】
印面台2を、印字窓20が開口されるホルダー部15と、ホルダー部15の上面に設けられるスライド枠16とで構成して、ホルダー部15の下面に固定印字体19を固定する。印面台2は、スライド枠16を本体部1に対して往復スライド可能に連結することにより、ホルダー部15が本体部1で受け止められる使用位置と、ホルダー部15が印字ベルト9の回転軌跡の外に退避する退避位置との間をスライド変位できる。以て、印面台2を退避位置から使用位置へ変位操作する過程で、偏寄している突起30をストッパー31で移動操作して隣接する印面部29を直線状に整列できる。
【0011】
ストッパー31は、印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成する。
【0012】
突起30は、印面部29と同じゴム材を素材にして印字ベルト9を横断する状態でリブ状に形成する。
【0013】
印面台2の座壁17の上面に、突起30を受け止めるストッパー31を配置する。ストッパー31は、前記座壁17で往復スライド自在に支持されるベース41と、ベースの一端に設けられて突起30に接当係合する係合体42と、印面台2の外面に配置されて、ベース41の他端に固定される操作ノブ43とを備えている。以て、操作ノブ43を印字ベルト9へ向かって接近移動した状態において、係合体42が突起30の外面に接当係合して印字ベルト9の回動を規制できるようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、回転印字機構が組み込まれる本体部1と、本体部1の下部に配置される印面台2とを備えている回転ゴム印において、回転印字機構を構成する印字ベルト9の外面に一群の印面部29と突起30とを一定間隔おきに形成して、印面部29と突起30とを交互に配置した。さらに印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設けて、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9を回動規制できるようにした。したがって、本発明の回転ゴム印によれば、押印作業を連続して行うような過酷な使用条件下でも、押印時の衝撃や、誤って操作ダイヤル10に触れるなどによって、印字ベルト9がずれ動くのをストッパー31の回動規制作用によって確実に防止し、複数の印面部29の整列状態を直線状に保持し続けることができる。その結果、印字された文字列の乱れやかすれを一掃して、常に高度の印字品質を発揮できる回転ゴム印を提供できる。
【0015】
また、印字ベルト9を回動規制するための突起30を一群の印面部29と共に印字ベルト9の外面に設けるので、印面部29を形成する過程で、同時に突起30を形成することができ、印字ベルトの内面側に突起を設ける必要があった従来の回動規制構造に比べて、印字ベルトをより低コストで提供できる。また、印字ベルト9の外面に印面部29と突起30を設けるので、ブリッジ11を乗り越えるときの回転抵抗が急激に増加するのを解消して印字ベルト9を円滑に回転操作でき、回動規制用の突起がブリッジに乗り上がって印字ベルトに過大な張力が作用するのを避けられなかった従来の回動規制構造に比べて、印字ベルト9の耐久性を向上し、長期使用時の信頼性を向上できる。
【0016】
印面台2が本体部1に対して往復スライドして、使用位置と退避位置とに位置変更できる回転ゴム印によれば、印面台2が退避位置から使用位置へ変位する動作を利用して、偏寄している突起30をストッパー31で操作して印面部29を直線状に整列できる。したがって、ユーザーは操作ダイヤル10で印面部29を大まかに位置決めした後は、特に意識する必要もなく印面台2を使用位置へ復帰操作するだけで、印面部29を簡便にしかも確実に整列でき、面倒な印面部29の位置揃え作業を省略して使い勝手を向上できる。
【0017】
ストッパー31が印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成してあると、使用状態において僅かに偏寄する突起30を、一対のストッパー31の協同作用によって位置矯正できる。詳しくは、印面部29が僅かに位置ずれして印面が傾いている状態では、位置ずれしている分だけストッパー31による各突起30の受け止め力に差が生じる。しかし、印面部29に繰り返し押印外力が作用する状態では、各ストッパー31による受け止め力が均衡する向きに印字ベルト9が移動する傾向があり、これにより印面部29の位置を矯正できるからである。また、突起30の位置寸法や突出寸法にばらつきがあったとしても、一対のストッパー31で両突起30の寸法のばらつきを吸収して、印面部29を実用上支障のない状態に位置決めできる利点もある。
【0018】
突起30が印面部29と同じゴム材を素材にして印字ベルト9を横断する状態でリブ状に形成してあると、印字ベルト9の全幅にわたって形成される突起30をストッパー31で受け止めて印面部29を位置決めできるので、その分だけ突起30の構造強度を向上できる。例えば、印面台2を使用位置にした状態のままで印字ベルト9が回転操作されるような場合には、ストッパー31で受け止められた突起30に大きな力が作用するので、ベースゴム層9bから剥落するおそれがある。しかし、上記のように、印字ベルト9の全幅にわたって突起30が形成してあると、突起30に作用するベルト張力を幅方向に分散して負担させることができるので、突起30が剥落するのを確実に防止できる。
【0019】
ストッパー31は、往復スライドできるベース41と、ベース41の一端に設けられる係合体42と、印面台2の外面においてベース41の他端に固定される操作ノブ43などで構成することができる。このように、印面台2とは別の独立部品として構成したストッパー31によれば、ユーザーが操作ノブ43をスライド操作して印字ベルト9の回動を規制する必要はあるものの、ストッパー31を座壁17の側に形成する場合に避けられない金型の制約がなく、突起30を受け止めるための構造をさらに好適化できる。突起30を受け止める係合体42の形状も自由に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例) 図1ないし図5は本発明に係る回転ゴム印を日付印に適用した実施例を示す。図2において、日付印は本体部1と、本体部1の下部に上下スライド可能に装着される印面台2と、本体部1に組み込まれる回転印字機構と、本体部1の上部に装着されるグリップ3などで構成する。本体部1は、門方に形成される内フレーム5と、内フレーム5の外面を覆う前後に二分割された外フレーム6と、外フレーム6の上端に外嵌装着される固定枠7とで構成する。内フレーム5はプラスチック成形品からなり、外フレーム6および固定枠7はステンレス板材を素材とするプレス成形品からなる。内フレーム5と固定枠7との間には高さ調整機構が設けられており、この調整機構を操作することにより内フレーム5を上下に調整移動させて、印字ベルト9の印面位置を調整できる。
【0021】
回転印字機構は、5個の印字ベルト9と、各印字ベルト9の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル10と、印字ベルト9の下部内面を受け止めるブリッジ11とで構成する。5個の印字ベルト9によって年号、月、日にちを印字でき、例えば図3においては、向かって左側2個の印字ベルト9で年号を、中央1個の印字ベルト9で月を、右側2個の印字ベルト9で日にちをそれぞれ印字する。
【0022】
操作ダイヤル10は、印字ベルト9が巻き掛けられる放射枠状のプーリー部10aと、プーリー部10aを回転操作する金属板製のダイヤル板10bとからなる(図2参照)。操作ダイヤル10は、各印字ベルト9に対応して設けられており、先の内フレーム5に固定したダイヤル軸12で個別回転可能に支持してある。印字ベルト9をプーリー部10aに巻き掛けた状態においては、放射状に延びるプーリー腕によって印字ベルト9が多角形状に支持される。ダイヤル板10bの前後周縁は、外フレーム6のスリット6aを介してフレーム外面に露出させてある。ブリッジ11は、ステンレス板材を素材とする断面コ字状のプレス成形品からなり、その開口面が上向きになる状態で内フレーム5の下端に係合装着されて、各印字ベルト9の内面を受け止め支持する。
【0023】
印面台2は、下側のホルダー部15と、ホルダー部15の上面に設けられる四角枠状のスライド枠16とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。ホルダー部15は、円形の座壁17と、座壁17の周縁から下向きに突設される規制脚18とで下向きに開口する皿状に形成してある。座壁17の下面に多孔質ゴムで形成した固定印字体19が接着固定してある。規制脚18の下端面は、固定印字体19の印字面より僅かに高い位置に位置させてあり、これにより押印時における固定印字体19の押し付け限界を規定することができる。印字ベルト9の印面部29を固定印字体19の下面側へ露出させるために、座壁17および固定印字体19の中央部分に印字窓20・21が開口してある。
【0024】
印面台2は本体部1に対して上下スライド可能に連結する。詳しくは、図1および図3に示すように、スライド枠16を外フレーム6の下部に外嵌装着し、スライド枠16と内外フレーム5・6の左右側壁にボルト23を挿通し、さらにボルト23にナット24をねじ込んで、印面台2を本体部1と連結する。内外フレーム5・6には、ボルト23の上下移動を許す上下に長いスライド溝25が形成してある。これにより、印面台2はスライド溝25の形成範囲内を上下に移動して、ホルダー部15の座壁17が本体部1で受け止められる使用位置(図2に示す状態)と、座壁17が印字ベルト9の回転軌跡の外に位置する退避位置(図4に示す状態)との間をスライド変位できる。
【0025】
印字ベルト9の外面には、一群の印面部29と突起30を交互に、しかも一定間隔おきに形成する。突起30は、隣接する印面部29の中央位置に断面台形状に形成してあり、印字ベルト9を幅方向へ横断する状態でリブ状に形成してある。突起30の突出寸法は、印面部29の突出寸法に比べて小さく設定してあり、後述するベースゴム層9bによって形成される台形部分の突出寸法と概ね同じ寸法に設定してある。
【0026】
このように、印面部29と突起30を備えた印字ベルト9は、ゴム成形工程と、切断工程と、接着工程を経て無端リング状に形成される。図5に示すようにゴム成形工程においては、基布9aの上面に通常のゴム材でベースゴム層9bを成形し、さらにベースゴム層9bの外面に多孔質ゴムで印面部29と突起30とを成形する。ベースゴム層9bによって、基布9aの外面に薄いベース層が形成され、さらに印面部29の形成箇所に対応して台形部分が膨出形成される。得られたマット状のブランクB1を印面部列に沿って切断することにより、印面部29と突起30とを交互に備えた帯状のブランクB2が得られる。この帯状ブランクB2の端部どうしを接着固定することにより、無端リング状の印字ベルト9が得られる。各印面部29には、1桁(または2桁)のアラビア数字が鏡文字として形成してある。
【0027】
上記のように、印字ベルト9の外面に一群の印面部29と突起30を形成すると、印面部29を成形する過程で同時に突起30を形成できるので、位置決め突起を備えた従来の印字ベルトに比べてゴム成形の手間を省略でき、その分だけ印字ベルト9の製造に要するコストを削減できる。また、既存の成形用金型に追加工を施すことにより、突起30を成形することができるので、その点でも印字ベルト9の製造コストを削減できる。
【0028】
図2において高さ調整機構は、内フレーム5の上端壁に固定されるねじ軸34と、固定枠7の上面においてねじ軸34にねじ込まれるナット35と、ナット35を回転操作する調整リング36とで構成する。ねじ軸34の上端にはグリップ3がねじ込まれて、その下端面が調整リング36を回転不能に押圧している。グリップ3を緩み側へ回転操作して調整リング36から分離した後、調整リング36を介してナット35を回転操作することにより、内フレーム5および印字ベルト9を上下方向へ調整移動できる。
【0029】
連続して押印作業を行うような過酷な使用条件下においても、印字ベルト9がずれ動くのを確実に防止するために、印字ベルト9の外面に一群の突起30を設け、さらにホルダー部15側の印字窓20の前後の開口周縁壁に、突起30を受け止めるストッパー31を対向状に形成している。前後のストッパー31は、印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面として形成してある。図1に示すように、印面部29の内面がブリッジ11で適正に受け止められた状態では、印面部29に隣接する前後の突起30の突端隅部をストッパー31で受け止めて、印字ベルト9が前方または後方へずれ動くのを規制できる。
【0030】
先の高さ調整機構で印字ベルト9の上下位置を調整すると、突起30とストッパー31との相対位置も同時に変化する。しかし高さ調整機構による調整量は、印面のにじみやかすれを調整する程度でごく微量でしかない。したがって、印字ベルト9の上下位置を調整したとしても、突起30が位置調整量に応じて弾性変形するか、突起30とストッパー31との間に位置調整量に応じた僅かな隙間が形成されるかのいずれかでしかなく、突起30とストッパー31とによるずれ動き規制効果が大きく損なわれることはない。
【0031】
印字ベルト9を回転操作して印字内容を変更する場合には、図4に示すように印面台2を退避位置までスライド操作して、その座壁17を印字ベルト9の回転軌跡の外に位置させる。この状態で各操作ダイヤル10を回転することにより、印字すべき数字が形成してある印面部29をブリッジ11の外面に位置させることができる。このように、印面部29の位置を変更する場合には、ブリッジ11で受け止められる各印面部29の列が前後に乱れることがある。先の突起30とストッパー31は、このような印面部29の列の乱れを矯正して直線状に整列させることにも役立つ。
【0032】
印面部29の列が乱れた状態では、前後いずれかの突起30が、適正な位置よりブリッジ11の下端面側へ近接し偏寄している。そのため、印面台2を退避位置から使用位置へ戻すと、偏寄している突起30にストッパー31が先当たりして、突起30および印字ベルト9を移動させる。したがって、印面台2を使用位置へ完全に復帰させた状態では、前後の突起30のそれぞれをストッパー31で受け止めて、各印面部29を直線状に整列できる。このときの突起30は、突端の一部が弾性変形した状態でストッパー31で受け止められている。
【0033】
なお、印面部29の位置ずれ量が一定値を越えるような場合、例えば印面部29の内面がブリッジ11の前後縁から大きくはみ出るような状態では、偏寄した突起30がストッパー31を乗り越えて印字窓20の内部へ入り込むので、先のような位置矯正を行うことはできない。つまり、突起30およびストッパー31による位置矯正機能は、ユーザーが操作ダイヤル10で印面部29を大まかに位置決めした後の、印面部列の乱れを整列できる位置矯正に限られる。
【0034】
以上のように構成した日付印によれば、連続して押印作業を行うような過酷な使用条件下において、印字ベルトがずれ動くのを突起30とストッパー31の協同作用によって防止できるので、押印時の衝撃や、誤って操作ダイヤル10に触れることで印字ベルト9がずれ動くのを防止し、印字された文字列の乱れやかすれを一掃できる。また、日付の変更などの位置変更に伴って印面部29の列に乱れが生じていたとしても、ストッパー31で突起30を移動操作して各印面部29を整列させることができる。
【0035】
図6はストッパー31の別実施例を示す。そこでは、ストッパー31をL字状の凹みで形成して、台形状に形成した突起30の斜辺部分と上辺部分とをストッパー31で受け止められるようにした。このように、突起30の隣接辺部をL字状のストッパー31で受け止めると、印字ベルト9が前後に揺れ動くことをも規制できるので、印字された文字列の乱れやかすれをさらに確実に防止できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0036】
上記の実施例では、ストッパー31を印面台2の座壁17に形成したがその必要はなく、図7に示すように独立した部品として構成することができる。その場合には、座壁17に設けたガイド枠40で往復スライド自在に支持されるベース41と、ベース41の印字ベルト9側の端部に設けられて突起30と接当係合する係合体42と、印面台2の外面に配置されて、ベース41の他端に固定される操作ノブ43などでストッパー31を構成する。符号44は、ベース41と操作ノブ43を分離不能に固定するロックピースである。
【0037】
上記のストッパー31によれば、操作ノブ43を印字ベルト9へ向かって押し込み操作することにより、係合体42を突起30と印面部29との間の凹部に接当係合させて、印字ベルト9の回動を規制できる。また、操作ノブ43を抜き出し操作することにより、係合体42を想像線で示す係合待機位置に保持することができる。この実施例では、印字ベルト9の一側に限ってストッパー31を設けたが、必要があればストッパー31を前後一対設けて、ブリッジ11に隣接する前後一対の突起30を同時にロック保持してもよい。
【0038】
上記の実施例以外に、ストッパー31はテーパー面やL字状の凹みで形成する以外に、突起や突状で形成することができる。必要があれば、印面部29とは異なる成形材、例えばベースゴム層9bと同じゴム材や、プラスチックなどの印面部29より硬い素材で形成することができる。突起30は一文字リブ状に形成する必要はなく、ベルト表面においてV字状、あるいは部分円弧状などに形成することができる。その場合には、突起30の両端部分をストッパー31で受け止めて、印字ベルト9の回動を規制することになる。突起30は断面台形である必要はなく、断面半円状、あるいは断面三角形状などに形成することができる。
【0039】
印面台2は本体部1に対して、使用位置と退避位置とにスライド変位可能に連結する必要はなく、例えば、印面台2は本体部1に着脱可能に装着してあってもよい。その場合には、本体部1から取り外した印面台2を再装着することにより、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9の回動を規制することができる。本発明の回転ゴム印は日付印以外に、製造ロットや、数値コード化された製造条件を印字する回転ゴム印に適用することができる。突起30を利用して、その表面に印字ベルト9の回転方向を意味する矢印と、矢印方向に回転したときに現われる数字、あるいは文字を設けることができる。その場合には、突起30の表面に表示された数字を読み取ることで印面部29の変更を間違いなく行うことができ、見にくい印面部29の鏡文字を判読する煩わしさを一掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】印字ベルトの回動規制構造を示す縦断側面図である。
【図2】日付印の縦断側面図である。
【図3】日付印の縦断正面図である。
【図4】印面台を退避移動させた状態の縦断側面図である。
【図5】印字ベルトの製造例を示す斜視図である。
【図6】ストッパーの別実施例を示す縦断側面図である。
【図7】ストッパーのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 本体部
2 印面台
9 印字ベルト
10 操作ダイヤル
11 ブリッジ
15 ホルダー部
16 スライド枠
19 固定印字体
20・21 印字窓
29 印字ベルトの印面部
30 突起
31 ストッパー
41 ベース
42 係合体
43 操作ノブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の印字ベルトを備えている日付印などの回転ゴム印に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の日付印の基本構造は特許文献1に公知である。そこでは、領収、受付、検査済、組織名などの文字列を印字する固定印字体と、年月日を印字する複数個の印字ベルトを印字要素にして構成してある。固定印字体は印面台の下面に固定される。この種の日付印においては、印面台を本体部から退避スライドした状態で、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更し、その後に印面台を使用位置へ戻して各印字ベルトの印面部を固定印字体の中央に露出させる。この状態で、スタンプ台のインクパッドに固定印字体および印字ベルトの印面部を押し付けてインクを付着させ紙面に転写する。
【0003】
上記のように、使用状態における印字ベルトの印面部は、印面台に設けた印字窓の開口面と交差するので、印字ベルトを回転操作して印面部の位置を変更することはできない。しかし、印字ベルトが回転規制してある訳ではないので、印字ベルトと印面台の間の隙間の範囲内で印字ベルトがずれ動くおそれがある。とくに、連続して押印作業を行うような状況では、予め印面部を直線列状に整列させていたとしても、繰り返し押印時の衝撃を受けることによって印字ベルトが徐々にずれ動き、あるいは操作ダイヤルに外力が加わることで印字ベルトがずれ動くことがある。いずれの場合にも印字した文字列が乱れ、場合によっては印字された文字の一部がかすれて判読不能となることもある。加えて、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更するとき、隣接する印面部の位置を直線状に整列させるのに手間取ることがある。とくに、年表示、月表示、日にち表示の全てを変更する場合には、印面部の整列に多くの手間が掛かりやすい。
【0004】
上記のような、隣接する印字ベルトにおける印面部の位置の乱れを防止することは、例えば特許文献2に公知である。そこでは、印字ベルトの外面に数字などを印字する印面部を一定ピッチおきに形成し、印字ベルトの内面の、印面部の形成位置から半ピッチだけずれた位置に、位置決め用の突起の一群を一定間隔おきに形成している。突起の間のベルト部の長さは、ブリッジの幅寸法と一致させてあり、これにより各印面部がブリッジの外面に位置する状態において、ブリッジの両側を隣接する突起で挟み込むようにしている。この突起は操作ダイヤルに設けた嵌合凹部と係合して、操作ダイヤルを回転操作するとき印字ベルトがスリップするのを防ぐスリップ防止機能も発揮できる。この種のベルト位置決め構造は特許文献3にも見受けられる。
【0005】
【特許文献1】実公昭64−4532号公報(第4頁7欄第25〜30行、第2図)
【特許文献2】特許第2905714号公報(段落番号0006、図1)
【特許文献3】実開昭57−57958号公報(第5頁第15〜20行、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の回転ゴム印によれば、連続して押印作業を行うような場合でも、位置決め突起をブリッジで受け止めて、印字ベルトが徐々にずれ動くのを防止できる。しかし、印字ベルトの内面に位置決め用の突起の一群を設けるので、印字ベルトを回転操作して印字内容を変更するとき、突起がブリッジに乗り上がって印字ベルトに過大な張力が作用するのを避けられない。しかも、印字ベルトが操作ダイヤルに対してスリップしないので、印字ベルトに作用する張力が操作ダイヤルとブリッジとの間の直線部分に集中し、張力を分散することができない。そのため、印字ベルトが短期間で劣化しやすく耐久性に問題がある。印字ベルトの構造を強化することは不可能ではないが、その分だけ製造コストが嵩んでしまう。
【0007】
また、印字ベルトの基布の表面に印面部を成形し、さらに基布の裏面に位置決め用の突起を形成するので、従来の印字ベルトに比べてゴム成形の手間が倍増し、その分だけ印字ベルトの製造に要するコストが高く付く。当然、先のように劣化した印字ベルトを交換するときの費用も嵩むことになる。
【0008】
本発明の目的は、押印作業を連続して行うような過酷な使用条件下でも、押印時の衝撃や操作ダイヤルに触れることで印字ベルトがずれ動くのを防止でき、これにより印字された文字列の乱れやかすれを一掃して常に高度の印字品質を発揮できる回転ゴム印を提供することにある。本発明の目的は、印面部の位置を変更するときに印字ベルトに過剰な張力が作用するのを解消して印字ベルトの耐久性を保持でき、しかも、位置ずれ防止機能を備えているにもかかわらず印字ベルトをより低コストで提供できる回転ゴム印を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の回転ゴム印は、回転印字機構が組み込まれる本体部1と、本体部1の下部に配置される印面台2とを備えている。回転印字機構は、複数個の印字ベルト9と、各印字ベルト9の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル10と、複数個の印字ベルト9の下部内面を受け止めるブリッジ11とを含む。印面台2の下面には固定印字体19が配置されて、印面台2と固定印字体19とのそれぞれに印字ベルト9の印面部29を露出させる印字窓20・21が開口してある。印字ベルト9の外面には、一群の印面部29と突起30とが一定間隔おきに形成されて、印面部29と突起30とを交互に配置する。印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設ける。以て、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9を回動規制できることを特徴とする。
【0010】
印面台2を、印字窓20が開口されるホルダー部15と、ホルダー部15の上面に設けられるスライド枠16とで構成して、ホルダー部15の下面に固定印字体19を固定する。印面台2は、スライド枠16を本体部1に対して往復スライド可能に連結することにより、ホルダー部15が本体部1で受け止められる使用位置と、ホルダー部15が印字ベルト9の回転軌跡の外に退避する退避位置との間をスライド変位できる。以て、印面台2を退避位置から使用位置へ変位操作する過程で、偏寄している突起30をストッパー31で移動操作して隣接する印面部29を直線状に整列できる。
【0011】
ストッパー31は、印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成する。
【0012】
突起30は、印面部29と同じゴム材を素材にして印字ベルト9を横断する状態でリブ状に形成する。
【0013】
印面台2の座壁17の上面に、突起30を受け止めるストッパー31を配置する。ストッパー31は、前記座壁17で往復スライド自在に支持されるベース41と、ベースの一端に設けられて突起30に接当係合する係合体42と、印面台2の外面に配置されて、ベース41の他端に固定される操作ノブ43とを備えている。以て、操作ノブ43を印字ベルト9へ向かって接近移動した状態において、係合体42が突起30の外面に接当係合して印字ベルト9の回動を規制できるようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、回転印字機構が組み込まれる本体部1と、本体部1の下部に配置される印面台2とを備えている回転ゴム印において、回転印字機構を構成する印字ベルト9の外面に一群の印面部29と突起30とを一定間隔おきに形成して、印面部29と突起30とを交互に配置した。さらに印面台2側の印字窓20の開口縁に、突起30を受け止めるストッパー31を設けて、各印字ベルト9の印面部29が印字窓20・21から印字面側へ露出する使用状態において、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9を回動規制できるようにした。したがって、本発明の回転ゴム印によれば、押印作業を連続して行うような過酷な使用条件下でも、押印時の衝撃や、誤って操作ダイヤル10に触れるなどによって、印字ベルト9がずれ動くのをストッパー31の回動規制作用によって確実に防止し、複数の印面部29の整列状態を直線状に保持し続けることができる。その結果、印字された文字列の乱れやかすれを一掃して、常に高度の印字品質を発揮できる回転ゴム印を提供できる。
【0015】
また、印字ベルト9を回動規制するための突起30を一群の印面部29と共に印字ベルト9の外面に設けるので、印面部29を形成する過程で、同時に突起30を形成することができ、印字ベルトの内面側に突起を設ける必要があった従来の回動規制構造に比べて、印字ベルトをより低コストで提供できる。また、印字ベルト9の外面に印面部29と突起30を設けるので、ブリッジ11を乗り越えるときの回転抵抗が急激に増加するのを解消して印字ベルト9を円滑に回転操作でき、回動規制用の突起がブリッジに乗り上がって印字ベルトに過大な張力が作用するのを避けられなかった従来の回動規制構造に比べて、印字ベルト9の耐久性を向上し、長期使用時の信頼性を向上できる。
【0016】
印面台2が本体部1に対して往復スライドして、使用位置と退避位置とに位置変更できる回転ゴム印によれば、印面台2が退避位置から使用位置へ変位する動作を利用して、偏寄している突起30をストッパー31で操作して印面部29を直線状に整列できる。したがって、ユーザーは操作ダイヤル10で印面部29を大まかに位置決めした後は、特に意識する必要もなく印面台2を使用位置へ復帰操作するだけで、印面部29を簡便にしかも確実に整列でき、面倒な印面部29の位置揃え作業を省略して使い勝手を向上できる。
【0017】
ストッパー31が印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成してあると、使用状態において僅かに偏寄する突起30を、一対のストッパー31の協同作用によって位置矯正できる。詳しくは、印面部29が僅かに位置ずれして印面が傾いている状態では、位置ずれしている分だけストッパー31による各突起30の受け止め力に差が生じる。しかし、印面部29に繰り返し押印外力が作用する状態では、各ストッパー31による受け止め力が均衡する向きに印字ベルト9が移動する傾向があり、これにより印面部29の位置を矯正できるからである。また、突起30の位置寸法や突出寸法にばらつきがあったとしても、一対のストッパー31で両突起30の寸法のばらつきを吸収して、印面部29を実用上支障のない状態に位置決めできる利点もある。
【0018】
突起30が印面部29と同じゴム材を素材にして印字ベルト9を横断する状態でリブ状に形成してあると、印字ベルト9の全幅にわたって形成される突起30をストッパー31で受け止めて印面部29を位置決めできるので、その分だけ突起30の構造強度を向上できる。例えば、印面台2を使用位置にした状態のままで印字ベルト9が回転操作されるような場合には、ストッパー31で受け止められた突起30に大きな力が作用するので、ベースゴム層9bから剥落するおそれがある。しかし、上記のように、印字ベルト9の全幅にわたって突起30が形成してあると、突起30に作用するベルト張力を幅方向に分散して負担させることができるので、突起30が剥落するのを確実に防止できる。
【0019】
ストッパー31は、往復スライドできるベース41と、ベース41の一端に設けられる係合体42と、印面台2の外面においてベース41の他端に固定される操作ノブ43などで構成することができる。このように、印面台2とは別の独立部品として構成したストッパー31によれば、ユーザーが操作ノブ43をスライド操作して印字ベルト9の回動を規制する必要はあるものの、ストッパー31を座壁17の側に形成する場合に避けられない金型の制約がなく、突起30を受け止めるための構造をさらに好適化できる。突起30を受け止める係合体42の形状も自由に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例) 図1ないし図5は本発明に係る回転ゴム印を日付印に適用した実施例を示す。図2において、日付印は本体部1と、本体部1の下部に上下スライド可能に装着される印面台2と、本体部1に組み込まれる回転印字機構と、本体部1の上部に装着されるグリップ3などで構成する。本体部1は、門方に形成される内フレーム5と、内フレーム5の外面を覆う前後に二分割された外フレーム6と、外フレーム6の上端に外嵌装着される固定枠7とで構成する。内フレーム5はプラスチック成形品からなり、外フレーム6および固定枠7はステンレス板材を素材とするプレス成形品からなる。内フレーム5と固定枠7との間には高さ調整機構が設けられており、この調整機構を操作することにより内フレーム5を上下に調整移動させて、印字ベルト9の印面位置を調整できる。
【0021】
回転印字機構は、5個の印字ベルト9と、各印字ベルト9の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル10と、印字ベルト9の下部内面を受け止めるブリッジ11とで構成する。5個の印字ベルト9によって年号、月、日にちを印字でき、例えば図3においては、向かって左側2個の印字ベルト9で年号を、中央1個の印字ベルト9で月を、右側2個の印字ベルト9で日にちをそれぞれ印字する。
【0022】
操作ダイヤル10は、印字ベルト9が巻き掛けられる放射枠状のプーリー部10aと、プーリー部10aを回転操作する金属板製のダイヤル板10bとからなる(図2参照)。操作ダイヤル10は、各印字ベルト9に対応して設けられており、先の内フレーム5に固定したダイヤル軸12で個別回転可能に支持してある。印字ベルト9をプーリー部10aに巻き掛けた状態においては、放射状に延びるプーリー腕によって印字ベルト9が多角形状に支持される。ダイヤル板10bの前後周縁は、外フレーム6のスリット6aを介してフレーム外面に露出させてある。ブリッジ11は、ステンレス板材を素材とする断面コ字状のプレス成形品からなり、その開口面が上向きになる状態で内フレーム5の下端に係合装着されて、各印字ベルト9の内面を受け止め支持する。
【0023】
印面台2は、下側のホルダー部15と、ホルダー部15の上面に設けられる四角枠状のスライド枠16とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。ホルダー部15は、円形の座壁17と、座壁17の周縁から下向きに突設される規制脚18とで下向きに開口する皿状に形成してある。座壁17の下面に多孔質ゴムで形成した固定印字体19が接着固定してある。規制脚18の下端面は、固定印字体19の印字面より僅かに高い位置に位置させてあり、これにより押印時における固定印字体19の押し付け限界を規定することができる。印字ベルト9の印面部29を固定印字体19の下面側へ露出させるために、座壁17および固定印字体19の中央部分に印字窓20・21が開口してある。
【0024】
印面台2は本体部1に対して上下スライド可能に連結する。詳しくは、図1および図3に示すように、スライド枠16を外フレーム6の下部に外嵌装着し、スライド枠16と内外フレーム5・6の左右側壁にボルト23を挿通し、さらにボルト23にナット24をねじ込んで、印面台2を本体部1と連結する。内外フレーム5・6には、ボルト23の上下移動を許す上下に長いスライド溝25が形成してある。これにより、印面台2はスライド溝25の形成範囲内を上下に移動して、ホルダー部15の座壁17が本体部1で受け止められる使用位置(図2に示す状態)と、座壁17が印字ベルト9の回転軌跡の外に位置する退避位置(図4に示す状態)との間をスライド変位できる。
【0025】
印字ベルト9の外面には、一群の印面部29と突起30を交互に、しかも一定間隔おきに形成する。突起30は、隣接する印面部29の中央位置に断面台形状に形成してあり、印字ベルト9を幅方向へ横断する状態でリブ状に形成してある。突起30の突出寸法は、印面部29の突出寸法に比べて小さく設定してあり、後述するベースゴム層9bによって形成される台形部分の突出寸法と概ね同じ寸法に設定してある。
【0026】
このように、印面部29と突起30を備えた印字ベルト9は、ゴム成形工程と、切断工程と、接着工程を経て無端リング状に形成される。図5に示すようにゴム成形工程においては、基布9aの上面に通常のゴム材でベースゴム層9bを成形し、さらにベースゴム層9bの外面に多孔質ゴムで印面部29と突起30とを成形する。ベースゴム層9bによって、基布9aの外面に薄いベース層が形成され、さらに印面部29の形成箇所に対応して台形部分が膨出形成される。得られたマット状のブランクB1を印面部列に沿って切断することにより、印面部29と突起30とを交互に備えた帯状のブランクB2が得られる。この帯状ブランクB2の端部どうしを接着固定することにより、無端リング状の印字ベルト9が得られる。各印面部29には、1桁(または2桁)のアラビア数字が鏡文字として形成してある。
【0027】
上記のように、印字ベルト9の外面に一群の印面部29と突起30を形成すると、印面部29を成形する過程で同時に突起30を形成できるので、位置決め突起を備えた従来の印字ベルトに比べてゴム成形の手間を省略でき、その分だけ印字ベルト9の製造に要するコストを削減できる。また、既存の成形用金型に追加工を施すことにより、突起30を成形することができるので、その点でも印字ベルト9の製造コストを削減できる。
【0028】
図2において高さ調整機構は、内フレーム5の上端壁に固定されるねじ軸34と、固定枠7の上面においてねじ軸34にねじ込まれるナット35と、ナット35を回転操作する調整リング36とで構成する。ねじ軸34の上端にはグリップ3がねじ込まれて、その下端面が調整リング36を回転不能に押圧している。グリップ3を緩み側へ回転操作して調整リング36から分離した後、調整リング36を介してナット35を回転操作することにより、内フレーム5および印字ベルト9を上下方向へ調整移動できる。
【0029】
連続して押印作業を行うような過酷な使用条件下においても、印字ベルト9がずれ動くのを確実に防止するために、印字ベルト9の外面に一群の突起30を設け、さらにホルダー部15側の印字窓20の前後の開口周縁壁に、突起30を受け止めるストッパー31を対向状に形成している。前後のストッパー31は、印字窓20の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面として形成してある。図1に示すように、印面部29の内面がブリッジ11で適正に受け止められた状態では、印面部29に隣接する前後の突起30の突端隅部をストッパー31で受け止めて、印字ベルト9が前方または後方へずれ動くのを規制できる。
【0030】
先の高さ調整機構で印字ベルト9の上下位置を調整すると、突起30とストッパー31との相対位置も同時に変化する。しかし高さ調整機構による調整量は、印面のにじみやかすれを調整する程度でごく微量でしかない。したがって、印字ベルト9の上下位置を調整したとしても、突起30が位置調整量に応じて弾性変形するか、突起30とストッパー31との間に位置調整量に応じた僅かな隙間が形成されるかのいずれかでしかなく、突起30とストッパー31とによるずれ動き規制効果が大きく損なわれることはない。
【0031】
印字ベルト9を回転操作して印字内容を変更する場合には、図4に示すように印面台2を退避位置までスライド操作して、その座壁17を印字ベルト9の回転軌跡の外に位置させる。この状態で各操作ダイヤル10を回転することにより、印字すべき数字が形成してある印面部29をブリッジ11の外面に位置させることができる。このように、印面部29の位置を変更する場合には、ブリッジ11で受け止められる各印面部29の列が前後に乱れることがある。先の突起30とストッパー31は、このような印面部29の列の乱れを矯正して直線状に整列させることにも役立つ。
【0032】
印面部29の列が乱れた状態では、前後いずれかの突起30が、適正な位置よりブリッジ11の下端面側へ近接し偏寄している。そのため、印面台2を退避位置から使用位置へ戻すと、偏寄している突起30にストッパー31が先当たりして、突起30および印字ベルト9を移動させる。したがって、印面台2を使用位置へ完全に復帰させた状態では、前後の突起30のそれぞれをストッパー31で受け止めて、各印面部29を直線状に整列できる。このときの突起30は、突端の一部が弾性変形した状態でストッパー31で受け止められている。
【0033】
なお、印面部29の位置ずれ量が一定値を越えるような場合、例えば印面部29の内面がブリッジ11の前後縁から大きくはみ出るような状態では、偏寄した突起30がストッパー31を乗り越えて印字窓20の内部へ入り込むので、先のような位置矯正を行うことはできない。つまり、突起30およびストッパー31による位置矯正機能は、ユーザーが操作ダイヤル10で印面部29を大まかに位置決めした後の、印面部列の乱れを整列できる位置矯正に限られる。
【0034】
以上のように構成した日付印によれば、連続して押印作業を行うような過酷な使用条件下において、印字ベルトがずれ動くのを突起30とストッパー31の協同作用によって防止できるので、押印時の衝撃や、誤って操作ダイヤル10に触れることで印字ベルト9がずれ動くのを防止し、印字された文字列の乱れやかすれを一掃できる。また、日付の変更などの位置変更に伴って印面部29の列に乱れが生じていたとしても、ストッパー31で突起30を移動操作して各印面部29を整列させることができる。
【0035】
図6はストッパー31の別実施例を示す。そこでは、ストッパー31をL字状の凹みで形成して、台形状に形成した突起30の斜辺部分と上辺部分とをストッパー31で受け止められるようにした。このように、突起30の隣接辺部をL字状のストッパー31で受け止めると、印字ベルト9が前後に揺れ動くことをも規制できるので、印字された文字列の乱れやかすれをさらに確実に防止できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0036】
上記の実施例では、ストッパー31を印面台2の座壁17に形成したがその必要はなく、図7に示すように独立した部品として構成することができる。その場合には、座壁17に設けたガイド枠40で往復スライド自在に支持されるベース41と、ベース41の印字ベルト9側の端部に設けられて突起30と接当係合する係合体42と、印面台2の外面に配置されて、ベース41の他端に固定される操作ノブ43などでストッパー31を構成する。符号44は、ベース41と操作ノブ43を分離不能に固定するロックピースである。
【0037】
上記のストッパー31によれば、操作ノブ43を印字ベルト9へ向かって押し込み操作することにより、係合体42を突起30と印面部29との間の凹部に接当係合させて、印字ベルト9の回動を規制できる。また、操作ノブ43を抜き出し操作することにより、係合体42を想像線で示す係合待機位置に保持することができる。この実施例では、印字ベルト9の一側に限ってストッパー31を設けたが、必要があればストッパー31を前後一対設けて、ブリッジ11に隣接する前後一対の突起30を同時にロック保持してもよい。
【0038】
上記の実施例以外に、ストッパー31はテーパー面やL字状の凹みで形成する以外に、突起や突状で形成することができる。必要があれば、印面部29とは異なる成形材、例えばベースゴム層9bと同じゴム材や、プラスチックなどの印面部29より硬い素材で形成することができる。突起30は一文字リブ状に形成する必要はなく、ベルト表面においてV字状、あるいは部分円弧状などに形成することができる。その場合には、突起30の両端部分をストッパー31で受け止めて、印字ベルト9の回動を規制することになる。突起30は断面台形である必要はなく、断面半円状、あるいは断面三角形状などに形成することができる。
【0039】
印面台2は本体部1に対して、使用位置と退避位置とにスライド変位可能に連結する必要はなく、例えば、印面台2は本体部1に着脱可能に装着してあってもよい。その場合には、本体部1から取り外した印面台2を再装着することにより、突起30をストッパー31で受け止めて印字ベルト9の回動を規制することができる。本発明の回転ゴム印は日付印以外に、製造ロットや、数値コード化された製造条件を印字する回転ゴム印に適用することができる。突起30を利用して、その表面に印字ベルト9の回転方向を意味する矢印と、矢印方向に回転したときに現われる数字、あるいは文字を設けることができる。その場合には、突起30の表面に表示された数字を読み取ることで印面部29の変更を間違いなく行うことができ、見にくい印面部29の鏡文字を判読する煩わしさを一掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】印字ベルトの回動規制構造を示す縦断側面図である。
【図2】日付印の縦断側面図である。
【図3】日付印の縦断正面図である。
【図4】印面台を退避移動させた状態の縦断側面図である。
【図5】印字ベルトの製造例を示す斜視図である。
【図6】ストッパーの別実施例を示す縦断側面図である。
【図7】ストッパーのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 本体部
2 印面台
9 印字ベルト
10 操作ダイヤル
11 ブリッジ
15 ホルダー部
16 スライド枠
19 固定印字体
20・21 印字窓
29 印字ベルトの印面部
30 突起
31 ストッパー
41 ベース
42 係合体
43 操作ノブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転印字機構が組み込まれる本体部(1)と、本体部(1)の下部に配置される印面台(2)とを備えており、
回転印字機構は、複数個の印字ベルト(9)と、各印字ベルト(9)の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル(10)と、複数個の印字ベルト(9)の下部内面を受け止めるブリッジ(11)とを含み、
印面台(2)の下面には固定印字体(19)が配置されて、印面台(2)と固定印字体(19)とのそれぞれに印字ベルト(9)の印面部(29)を露出させる印字窓(20・21)が開口されており、
印字ベルト(9)の外面に、一群の印面部(29)と突起(30)とが一定間隔おきに形成されて、印面部(29)と突起(30)とが交互に配置されており、
印面台(2)側の印字窓(20)の開口縁に、突起(30)を受け止めるストッパー(31)が設けられており、
各印字ベルト(9)の印面部(29)が印字窓(20・21)から印字面側へ露出する使用状態において、突起(30)をストッパー(31)で受け止めて印字ベルト(9)を回動規制できることを特徴とする回転ゴム印。
【請求項2】
印面台(2)が、印字窓(20)が開口されるホルダー部(15)と、ホルダー部(15)の上面に設けられるスライド枠(16)とで構成されて、ホルダー部(15)の下面に固定印字体(19)が固定されており、
印面台(2)は、スライド枠(16)が本体部(1)に対して往復スライド可能に連結されて、ホルダー部(15)が本体部(1)で受け止められる使用位置と、ホルダー部(15)が印字ベルト(9)の回転軌跡の外に退避する退避位置との間をスライド変位でき、
印面台(2)を退避位置から使用位置へ変位操作する過程で、偏寄している突起(30)をストッパー(31)で移動操作して隣接する印面部(29)を直線状に整列できる請求項1記載の回転ゴム印。
【請求項3】
ストッパー(31)が、印字窓(20)の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成してある請求項1または2記載の回転ゴム印。
【請求項4】
突起(30)が、印面部(29)と同じゴム材を素材にして印字ベルト(9)を横断する状態でリブ状に形成してある請求項3記載の回転ゴム印。
【請求項5】
印面台(2)の座壁(17)の上面に、突起(30)を受け止めるストッパー(31)が配置されており、
ストッパー(31)は、前記座壁(17)で往復スライド自在に支持されるベース(41)と、ベースの一端に設けられて突起(30)に接当係合する係合体(42)と、印面台(2)の外面に配置されて、ベース(41)の他端に固定される操作ノブ(43)とを備えており、
操作ノブ(43)を印字ベルト(9)へ向かって接近移動した状態において、係合体(42)が突起(30)の外面に接当係合して印字ベルト(9)の回動を規制できる請求項1記載の回転ゴム印。
【請求項1】
回転印字機構が組み込まれる本体部(1)と、本体部(1)の下部に配置される印面台(2)とを備えており、
回転印字機構は、複数個の印字ベルト(9)と、各印字ベルト(9)の上半側が巻き掛けられる操作ダイヤル(10)と、複数個の印字ベルト(9)の下部内面を受け止めるブリッジ(11)とを含み、
印面台(2)の下面には固定印字体(19)が配置されて、印面台(2)と固定印字体(19)とのそれぞれに印字ベルト(9)の印面部(29)を露出させる印字窓(20・21)が開口されており、
印字ベルト(9)の外面に、一群の印面部(29)と突起(30)とが一定間隔おきに形成されて、印面部(29)と突起(30)とが交互に配置されており、
印面台(2)側の印字窓(20)の開口縁に、突起(30)を受け止めるストッパー(31)が設けられており、
各印字ベルト(9)の印面部(29)が印字窓(20・21)から印字面側へ露出する使用状態において、突起(30)をストッパー(31)で受け止めて印字ベルト(9)を回動規制できることを特徴とする回転ゴム印。
【請求項2】
印面台(2)が、印字窓(20)が開口されるホルダー部(15)と、ホルダー部(15)の上面に設けられるスライド枠(16)とで構成されて、ホルダー部(15)の下面に固定印字体(19)が固定されており、
印面台(2)は、スライド枠(16)が本体部(1)に対して往復スライド可能に連結されて、ホルダー部(15)が本体部(1)で受け止められる使用位置と、ホルダー部(15)が印字ベルト(9)の回転軌跡の外に退避する退避位置との間をスライド変位でき、
印面台(2)を退避位置から使用位置へ変位操作する過程で、偏寄している突起(30)をストッパー(31)で移動操作して隣接する印面部(29)を直線状に整列できる請求項1記載の回転ゴム印。
【請求項3】
ストッパー(31)が、印字窓(20)の上開口縁の側から下開口縁の側へ向かって下り傾斜するテーパー面で形成してある請求項1または2記載の回転ゴム印。
【請求項4】
突起(30)が、印面部(29)と同じゴム材を素材にして印字ベルト(9)を横断する状態でリブ状に形成してある請求項3記載の回転ゴム印。
【請求項5】
印面台(2)の座壁(17)の上面に、突起(30)を受け止めるストッパー(31)が配置されており、
ストッパー(31)は、前記座壁(17)で往復スライド自在に支持されるベース(41)と、ベースの一端に設けられて突起(30)に接当係合する係合体(42)と、印面台(2)の外面に配置されて、ベース(41)の他端に固定される操作ノブ(43)とを備えており、
操作ノブ(43)を印字ベルト(9)へ向かって接近移動した状態において、係合体(42)が突起(30)の外面に接当係合して印字ベルト(9)の回動を規制できる請求項1記載の回転ゴム印。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−125997(P2009−125997A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301366(P2007−301366)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)
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