説明

回転ダンパ

【課題】 使用時に任意に抵抗力を変化させることができる回転ダンパを提供する。
【解決手段】 粘性流体が封入された液室10を有するダンパハウジング2と、液室内に回転可能に支持されたロータ3とを備えた回転ダンパ1、100であって、ロータは、液室に回転可能に受容されたロータ軸25及びロータ軸の外周面に突設されたベーン26とを備え、ベーンにロータ軸の回転方向に貫通する少なくとも1つの開口部59が形成された第1ロータ21と、第1ロータと共に回転可能に設けられると共に、第1ロータに対して変位可能に設けられ、変位することによって開口部が形成する粘性流体の液路を変化させる第2ロータ22と、第2ロータの第1ロータに対する位置を変化させる操作部材23とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体が封入されたハウジング内にロータを回転可能に支持し、ロータの回転に対して粘性流体の流動抵抗を作用させるようにした回転ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
粘性流体が封入された液室を有する円筒状のハウジングと、ハウジングに回転可能に支持されたロータとを有し、粘性流体の抵抗によってロータの回転を減衰するようにした回転ダンパが公知となっている。ロータは、一端が液室内に受容される一方、他端がハウジングの外部に突出したロータ軸と、ロータ軸の液室内に位置する部分の外周面から径方向外方に突出したベーン(ロータ翼)とを備えている(例えば、特許文献1)。ロータ軸の他端(外端)は、回転を減衰すべき回転部材(ギヤ等)に連結される。ロータが回転する際には、ベーンとハウジング内壁との間に形成される通路を粘性流体が通過し、このときの粘性流体の流動抵抗がロータに回転抵抗として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−247583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような回転ダンパが発生する抵抗力は、ハウジングやロータの形状や相対位置等によって定まる。そのため、ハウジング及びロータを組み合わせて回転ダンパを完成した後の使用時に、回転ダンパを分解することなく、抵抗力を任意に変化させることができなかった。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、使用時に任意に抵抗力を変化させることができる回転ダンパを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、粘性流体が封入された液室(10)を有するダンパハウジング(2)と、前記液室内に回転可能に支持されたロータ(3)とを備えた回転ダンパ(1、100)であって、前記ロータは、前記液室に回転可能に受容されたロータ軸(25)及び前記ロータ軸の外周面に突設されたベーン(26)とを備え、前記ベーンに前記ロータ軸の回転方向に貫通する少なくとも1つの開口部(59)が形成された第1ロータ(21)と、前記第1ロータと共に回転可能に設けられると共に、前記第1ロータに対して変位可能に設けられ、変位することによって前記開口部が形成する前記粘性流体の液路を変化させる第2ロータ(22)と、前記第2ロータの前記第1ロータに対する位置を変化させる操作部材(23)とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、操作部材を操作することによって第2ロータの第1ロータに対する相対位置を変化させ、第1ロータの開口部が形成する液路を変化させることができるため、回転ダンパを分解することなく、使用時に任意に回転ダンパが発生する抵抗力を変化させることができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記ロータ軸は、前記ダンパハウジングから突出した外端(32)を有し、前記ロータ軸及び前記ベーンには前記ロータ軸の前記外端から前記ベーンの内部に到り、前記開口部に連通した内部空間(58)が形成され、前記第2ロータは、前記ロータ軸の軸線方向に変位可能に前記内部空間に収容され、前記操作部材は前記ロータ軸の外端に設けられ、前記第2ロータを前記ロータ軸の軸線方向に変位させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、操作部材がダンパハウジングの外部に配置され、操作が容易になる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記第2ロータは、付勢部材(24)によって前記ロータ軸の前記外端側へと付勢され、前記操作部材は、前記ロータ軸の前記外端に結合され、前記第2ロータを前記ロータ軸の前記内端側へと押圧することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、操作部材によって第2ロータのロータ軸の軸線方向における押し込み長さを変化させることで、第2ロータの第1ロータに対する相対位置を変化させることができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記第2ロータには、前記ロータ軸の回転方向に貫通するオリフィス(82)が複数形成され、前記第2ロータが前記第1ロータに対して前記ロータ軸の軸線方向に変位することによって、前記開口部内に配置された前記オリフィスの断面積の総和が変化することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第2ロータが第1ロータに対して相対移動し、開口部内に存在するオリフィスの断面積の総和を変化させることによって、回転ダンパが発生する抵抗力を変化させることができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記オリフィスは、異なる形状又は異なる断面積のオリフィスを含むことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、回転ダンパが発生する抵抗力を様々な大きさに設定することができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記操作部材が、前記第1ロータに対して回転不能に結合されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、操作部材に回転を減衰すべき回転部材を結合することができる。すなわち、操作部材を入力軸とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成によれば、使用時に任意に抵抗力を調整することができる回転ダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る回転ダンパの分解斜視図
【図2】第1実施形態に係る回転ダンパを操作部材を分離して示す断面図
【図3】図2のIII−III断面図
【図4】第1実施形態に係る回転ダンパの第1形態を示す断面図
【図5】第1実施形態に係る回転ダンパの第2形態を示す断面図
【図6】第1実施形態に係る回転ダンパの第3形態を示す断面図
【図7】第2実施形態に係る回転ダンパの第2ロータを示す斜視図
【図8】第2実施形態に係る回転ダンパの第1形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1及び2に示すように、第1実施形態に係る回転ダンパ1は、円筒形状のハウジング2と、ハウジング2内に一部が受容されたロータ3とを備えている。ハウジング2及びロータ3の軸線は、それぞれ同軸上に配置されており、回転ダンパ1の回転軸となる軸線Aと一致する。以下、軸線Aに沿った方向を軸線方向という。
【0022】
ハウジング2は、円筒状の側周壁6の軸線方向における一端が底板7によって閉塞される一方、他端が開口した有底円筒形状のハウジングベース8と、ハウジングベース8の開口端を閉塞する円板状のハウジング蓋9とから構成されている。ハウジングベース8及びハウジング蓋9は例えば樹脂から形成されている。ハウジングベース8の側周壁6の開口端には、軸線方向に突出した嵌合凸部12が全周にわたって延設されており、ハウジング蓋9の周縁部には嵌合凸部12が嵌合可能な嵌合溝13が円環状に凹設されている。ハウジングベース8とハウジング蓋9とは、嵌合凸部12が嵌合溝13に嵌合した状態で、振動溶着によって互いに接合される。これにより、ハウジング2の内部に液室10が画成される。ハウジングベース8とハウジング蓋9との結合は、振動溶着に限らず、接着剤を使用する等、公知の手法を代替してもよい。なお、ハウジングベース8とハウジング蓋9との接合は、後述するロータ3を内部に受容し、シリコーンオイル等の粘性流体が充填された後に行われる。
【0023】
ハウジングベース8の底板7の外面には、軸線方向に突出するキー14が直径方向に延設されている(図2参照)。キー14は、回転ダンパ1が組み込まれる扉等の装置に対して軸線A回りに回転不能にハウジングベース8を結合する。なお、キー14に代えて、ボルト締結に使用されるフランジを底板7の周縁部に突設してもよい。
【0024】
ロータ3は、第1ロータ(アウタロータ)21と、第2ロータ(インナ部材)22と、操作部材23と、圧縮コイルばね24とを有している。第1ロータ21、第2ロータ22及び操作部材23は、例えば樹脂から形成されている。第1ロータ21は、両端が開口した円筒状のロータ軸25と、ロータ軸25の外周面からロータ軸25の径方向外方へと突設された2つのベーン26とを有している。
【0025】
ロータ軸25の一端は、ハウジングベース8の底板7の中央部に形成された断面円形状の有底孔である軸受孔27に軸線A回りに回転可能に嵌合している。ロータ軸25の他端は、ハウジング蓋9の中央部に形成された断面円形状の貫通孔である軸受孔28に軸線A回りに回転可能に支持され、その先端はハウジング蓋9の外方に突出している。ロータ軸25のハウジング2内に位置する端部を内端31とし、ハウジング2から突出した端部を外端32とする。なお、他の実施形態では、ロータ軸25はハウジング蓋9の外方に突出していなくてもよい。この場合には、ハウジング蓋9の外方から軸受孔28を通過してロータ軸25にアクセスできるようになっていればよい。ロータ軸25には、内端31から外端32へと貫通する断面円形状の内孔33が形成されている。
【0026】
ロータ軸25の外端32には、端面から軸線A方向に沿って内端31側へと延在する第1係合溝34、第2係合溝35及び第3係合溝36が形成されている。各係合溝34〜36は、ロータ軸25の外周面と内孔33とを連通するように径方向に延在している。各係合溝34〜36は、隣り合う係合溝34〜36と軸線Aを中心として45°変位した回転位置に形成されている。各係合溝34〜36の軸線A方向における深さは、第1係合溝34<第2係合溝35<第3係合溝36となっている。第1係合溝34と軸線Aを挟んで対向する内孔33の内面には第1係合孔37が形成されている。第1係合孔37は、第1係合溝34の底部よりも内端31側に変位した位置に形成されている。同様に、第2係合溝35及び第3係合溝36と軸線Aを挟んで対向する内孔33の内面には第2係合孔38及び第3係合孔39が形成されている。
【0027】
ロータ軸25の外端32の外周面には、Oリング41が嵌め付けられる。ハウジング蓋9の軸受孔28の内端側は拡径されてOリング収容部42を形成している。Oリング41は、ロータ軸25の外端32に嵌め付けられた状態で、ハウジング蓋9のOリング収容部42内に配置され、外端32とOリング収容部42との隙間をシールする。
【0028】
2つのベーン26は、軸線Aを中心とした180°回転位置に形成されている。なお、他の実施形態ではベーン26は1つ、又は3つ以上であってもよい。各ベーン26は、ロータ軸25の外面に突設され、ロータ3の一の回転方向を向く正面壁51と、正面壁51と空隙を介してロータ軸25の外面に突設され、ロータ3の一の回転方向と相反する他の回転方向を向く背面壁52と、正面壁51と背面壁52の軸線Aの径方向における外縁同士を連続する側壁53と、正面壁51、背面壁52、側壁53のロータ軸25の外端32側の縁部を連続する上壁54とを備え、ロータ軸25の内端31側に開口する空孔56を有する箱形に形成されている(図2及び3参照)。空孔56とロータ軸25の内孔33とは、連通路57によって連続している(図2及び3参照)。連通路57は、軸線A方向に沿って延在し、一端はロータ軸25の内端31に達している。ロータ軸25の内孔33と、ベーン26の空孔56と、連通路57とを合わせて、第1ロータ21の内部空間58という。
【0029】
正面壁51及び背面壁52には、ロータ3(第1ロータ21)の軸線A回りの回転方向(以下、単にロータ3の回転方向という)に貫通する断面四角形の開口部59が、それぞれ1つ以上(本実施形態では、3つずつ)適所に形成されている。図3に示すように、正面壁51に形成された開口部59と、背面壁52に形成された開口部59とは、ロータ3の回転方向において互いに対向している。
【0030】
第2ロータ22は、円柱状の軸部61と、軸部61の外周面から突設された複数の遮蔽板62とを有している。本実施形態では、遮蔽板62は、軸部61から互いに相反する径方向に突設された一対が、軸線方向において所定の間隔をおいて3対配置されている。軸部61は内孔33に軸線A方向に変位可能に嵌合し、遮蔽板62は空孔56及び連通路57内に配置される。すなわち、第2ロータ22は、第1ロータ21の内部空間58内に、軸線A方向に変位可能に収容される。第2ロータ22の内部空間58内への配置は、第2ロータ22を内端31側から第1ロータ21の内部空間58に挿入することによって行われる。
【0031】
図2に示すように、ロータ3がハウジング2に収容された状態では、第2ロータ22との軸部61と、ハウジングベース8の軸受孔27の底部との間には圧縮コイルばね24が介装され、第2ロータ22は第1ロータ21内を外端32側に付勢されている。
【0032】
操作部材23は、第1ロータ21の内孔33に外端32側に嵌合可能な円筒形状の脚部71と、脚部71の一端に設けられた脚部71よりも外形が大きい頭部72とを有している。脚部71の外面には頭部72から軸線A方向に沿って延在する位置決め凸部73が突設されている。脚部71の側部であって、位置決め凸部73と軸線Aを挟み相反する位置には、コ字状のスリットによって切り出された弾性爪74が形成されている。弾性爪74は、撓むことによって脚部71の径方向に出没可能であり、径方向外方に突出するとともに、頭部72側を向く逆止面を有している。
【0033】
頭部72の端部は、角部が切除されてキーを形成している。これにより、頭部72は、回転を減衰すべきギヤ等の回転部材に回転不能に結合可能となっている。なお、キーに代えて、ボルト締結や接着等によって頭部72を回転部材に回転不能に結合してもよい。脚部71の外周面には周方向に延在するOリング溝75が凹設されており、Oリング溝75には、Oリング76が嵌め付けられている。
【0034】
操作部材23は、脚部71を内孔33の外端32側に挿入し、位置決め凸部73を第1〜第3係合溝34〜36のいずれかに嵌合し、弾性爪74を対応する第1〜第3係合孔37〜39に係合させることによって第1ロータ21に結合される。このとき、脚部71は、第2ロータ22を押圧し、圧縮コイルばね24の付勢力に抗して第2ロータ22を軸線A方向において内端31側に変位させる。位置決め凸部73を第1〜第3係合溝34〜36のいずれに嵌合させるかによって操作部材23の内孔33への挿入深さが定まり、第2ロータ22の第1ロータ21に対する相対位置が定まる。また、Oリング76は、脚部71の外周面と内孔33の内周面との間をシールする。
【0035】
次に、図4〜6を参照して、本実施形態に係る回転ダンパ1の効果を説明する。図4に示す状態は、図示しないが、操作部材23の位置決め凸部73の一部が第1係合溝34に嵌合し、弾性爪74が第1係合孔37に係合した第1形態を示している。第1形態では、位置決め凸部73が第1嵌合溝34の底部に突き当たることによって、操作部材23の脚部71の内孔33に対する挿入深さが定まり、弾性爪74が第1係合孔37に係合することによって、操作部材23の第1ロータ21に対する相対位置を固定している。すなわち、操作部材23の内孔33からの抜け出しを規制している。第1形態では、操作部材23が圧縮コイルばね24の付勢力に抗して第2ロータ22を押圧し、遮蔽板62が開口部59を閉塞する位置に配置されている。この状態では、操作部材23の頭部72に軸線A回りの回転力が入力され、ロータ3がハウジング2に対して軸線A回りに回転する際に、粘性流体はベーン26の径方向における外端とハウジングベース8の側周壁6の内面との間に形成される通路を通過する。このときの粘性流体の流動抵抗によって、回転ダンパ1はロータ3の回転に対して抵抗力を発生する。なお、開口部59は遮蔽板62によって閉塞されているため、粘性流体は開口部59を通過して流れることはできない。
【0036】
図5に示す状態は、図示しないが、操作部材23の位置決め凸部73の一部が第2係合溝35に嵌合し、弾性爪74が第2係合孔38に係合した第2形態を示している。第2係合溝35は第1係合溝34に比べて軸線A方向に深いため、操作部材23の脚部71の内孔33に対する挿入深さは、第1形態に比べて深くなる。そのため、図5に示すように、第2形態における第2ロータ22の第1ロータ21に対する位置は、第1形態の場合よりも内端31側に変位し、遮蔽板62は開口部59の下半部だけを閉塞した状態となり、ベーン26に開口部59及び空孔56による液路が形成される。この状態では、ロータ3がハウジング2に対して軸線A回りに回転する際に、粘性流体はベーン26の径方向における外端とハウジングベース8の側周壁6の内面との間に形成される通路を通過すると共に、開口部59による液路を通過する。そのため、回転ダンパ1が発生する抵抗力は、第2形態の方が第1形態よりも小さくなる。
【0037】
図6に示す状態は、操作部材23の位置決め凸部73の一部が第3係合溝36に嵌合し、弾性爪74が第3係合孔39に係合した第3形態を示している。第3係合溝36は第2係合溝35に比べて軸線A方向に深いため、第3形態における操作部材23の脚部71の内孔33に対する挿入深さは、第2形態に比べて深くなる。そのため、図6に示すように、第3形態における第2ロータ22の第1ロータ21に対する位置は、第2形態の場合よりも内端31側に変位し、遮蔽板62は開口部59を開放した状態(ロータ3の回転方向から見て遮蔽板62と開口部59とが重ならない状態)となる。すなわち、第3形態では、開口部59が形成する液路の断面積が第2形態よりも大きくなる。この状態では、ロータ3がハウジング2に対して軸線A回りに回転する際に、粘性流体は開口部59によって形成される液路を第2形態よりも通過しやすくなるため、回転ダンパ1が発生する抵抗力は、第3形態の方が第2形態よりも小さくなる。
【0038】
以上に説明したように、本実施形態に係る回転ダンパ1は、操作部材23の位置決め凸部73が嵌合する係合溝34〜36を選択することによって、第2ロータ22の第1ロータ21に対する相対位置を変化させ、ベーン26に形成される液路の流路断面積を変化させ、発生する抵抗力を変化させることができる。回転ダンパ1では、係合溝34〜36を3つ設けたことによって、3段階で抵抗力を変化可能にしたが、深さの異なる係合溝を更に設けることによって、より大きな範囲で、或いはより多くの可変段階をもって抵抗力を変化させることができる。
【0039】
次に第2実施形態に係る回転ダンパ100について説明する。回転ダンパ100では、第2ロータ22の遮蔽板81と、ベーン26に形成される開口部84の形状が第1実施形態の回転ダンパ1と異なる。
【0040】
図7に示すように、回転ダンパ100の遮蔽板81は、板状に形成され、軸部61に2つ設けられている。各遮蔽板81は、一の径方向に沿って軸部61から互いに相反する方向に突出し、軸部61の軸線方向に沿って延在している。遮蔽板81は、軸部61と共に第1ロータ21の内部空間58内に挿入され、開口部59を閉塞する。
【0041】
遮蔽板81の適所には、遮蔽板81を厚み方向に貫通する同形のオリフィス82が1つ以上形成されている。本実施形態では、オリフィス82の断面は円形であるが、他の実施形態では多角形や楕円形等、様々な形状を適用してよい。また、オリフィス82は長さ方向において径や形状を変化させてもよいし、絞りを設けてもよい。
【0042】
図8に示すように、ベーン26の正面壁51及び背面壁52に貫通するように形成された開口部84は、第1実施形態の開口部59に比べて、軸線A方向において幅が狭く形成されている。
【0043】
以上のように構成した回転ダンパ100では、操作部材23の位置決め凸部73の一部が第1係合溝34に嵌合した第1形態において、1つの開口部84内に3つのオリフィス82が配置される。位置決め凸部73の一部が第2係合溝35に嵌合した第2形態においては、1つの開口部84内に2つのオリフィス82が配置され、位置決め凸部73の一部が第3係合溝36に嵌合した第3形態においては、1つの開口部84内に1つのオリフィス82が配置される。すなわち、操作部材23を操作し、第2ロータ22を第1ロータ21に対して軸線A方向に変位させることによって、1つの開口部84内に配置されるオリフィス82の数が変化する。オリフィス82の数が変化すると、1つの開口部84内に配置されるオリフィス82の断面積の総和が変化し、開口部84及びオリフィス82によって形成される粘性流体の流路の大きさが変化して回転ダンパ100が生じる抵抗力が変化する。
【0044】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、操作部材23の位置決め凸部73に係合する係合溝34〜36を3つ設けて脚部71の挿入深さを3段階に変更可能としたが、係合溝34〜36を連続したカム面にすることによって、脚部71の挿入深さを連続的に変更可能にしてもよい。また、遮蔽板62や開口部59の形状は、様々な形状を適用し得る。
【符号の説明】
【0045】
1、100…回転ダンパ、2…ハウジング、3…ロータ、8…ハウジングベース、9…ハウジング蓋、10…液室、21…第1ロータ、22…第2ロータ、23…操作部材、24…圧縮コイルばね(付勢部材)、25…ロータ軸、26…ベーン、31…内端、32…外端、33…内孔、34〜36…係合溝、37〜39…係合孔、51…正面壁、52…背面壁、53…側壁、54…上壁、56…空孔、57…連通路、58…内部空間、59、84…開口部、61…軸部、62、81…遮蔽板、71…脚部、73…位置決め凸部、74…弾性爪、82…オリフィス、A…軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体が封入された液室を有するダンパハウジングと、前記液室内に回転可能に支持されたロータとを備えた回転ダンパであって、
前記ロータは、
前記液室に回転可能に受容されたロータ軸及び前記ロータ軸の外周面に突設されたベーンとを備え、前記ベーンに前記ロータ軸の回転方向に貫通する少なくとも1つの開口部が形成された第1ロータと、
前記第1ロータと共に回転可能に設けられると共に、前記第1ロータに対して変位可能に設けられ、変位することによって前記開口部が形成する前記粘性流体の液路を変化させる第2ロータと、
前記第2ロータの前記第1ロータに対する位置を変化させる操作部材と
を有することを特徴とする回転ダンパ。
【請求項2】
前記ロータ軸は、前記ダンパハウジングから突出した外端を有し、
前記ロータ軸及び前記ベーンには前記ロータ軸の前記外端から前記ベーンの内部に到り、前記開口部に連通した内部空間が形成され、
前記第2ロータは、前記ロータ軸の軸線方向に変位可能に前記内部空間に収容され、
前記操作部材は前記ロータ軸の外端に設けられ、前記第2ロータを前記ロータ軸の軸線方向に変位させることを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ。
【請求項3】
前記第2ロータは、付勢部材によって前記ロータ軸の前記外端側へと付勢され、
前記操作部材は、前記ロータ軸の前記外端に結合され、前記第2ロータを前記ロータ軸の前記内端側へと押圧することを特徴とする請求項2に記載の回転ダンパ。
【請求項4】
前記第2ロータには、前記ロータ軸の回転方向に貫通するオリフィスが複数形成され、
前記第2ロータが前記第1ロータに対して前記ロータ軸の軸線方向に変位することによって、前記開口部内に露呈する前記オリフィスの断面積の総和が変化することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の回転ダンパ。
【請求項5】
前記オリフィスは、異なる形状又は異なる断面積のオリフィスを含むことを特徴とする請求項4に記載の回転ダンパ。
【請求項6】
前記操作部材が、前記第1ロータに対して回転不能に結合されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の回転ダンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate