説明

回転トレイ及びそれを備える生化学自動分析装置

【課題】生化学自動分析装置に用いられる回転トレイにおいて、コンパクトな空間に多くの検体容器及び試薬ボトルをバランス良く収容できる構成を提供する。
【解決手段】回転トレイ24は、試薬ボトル保持部86と、検体容器保持部92と、を備える。試薬ボトル保持部86は、トレイの回転中心の周囲において周方向に複数配置される。試薬ボトル保持部86のそれぞれには、試薬ボトル4を差込可能なボトル差込口88が径方向に細長く形成される。検体容器保持部92は、前記回転中心の周囲において周方向に複数配置される。検体容器保持部92のそれぞれには、検体容器3を差込可能な容器差込口93が形成される。ボトル差込口88の径方向外側部分同士の間に容器差込口93が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応させてその結果を分析する生化学自動分析装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種の生化学自動分析装置を開示する。この特許文献1の自動化学分析装置は、反応容器が一列に配列されて搬送される反応ラインを備えている。また、特許文献1の自動化学分析装置は、反応容器にサンプルトレイからの試料を分注する試料サンプリング機構と、試料が注入された反応容器に試薬トレイからの試薬を分注する試薬注入機構と、を備えている。サンプルトレイは試薬トレイの外周に設置されるとともに、試薬トレイ及びサンプルトレイを一体的に保冷する保冷手段が備えられている。サンプルトレイは試薬トレイと同心円形で、試薬トレイを包含するように設けられている。特許文献1は、上記の構成により、同一の保冷手段でサンプルトレイ及び試薬トレイを保冷できるので、装置のコンパクト化、経済化が図れるとする。
【特許文献1】実開平6−74967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の構成は、サンプルトレイと試薬トレイを別々の円形テーブルに配置する構成に比べて、装置の小型化の効果が一定程度得られると考えられる。しかしながら、特許文献1のようにサンプルトレイ及び試薬トレイが同心円状に二重配置される場合、ターンテーブルが大径化し易く、小型の生化学自動分析装置に適用するのはやはり困難であった。
【0004】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、生化学自動分析装置に用いられる回転トレイにおいて、コンパクトな空間に多くの検体容器及び試薬ボトルをバランス良く収容でき、取扱いも容易な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0006】
本発明の第1の観点によれば、生化学自動分析装置に用いられる回転トレイにおいて以下の構成が提供される。即ち、この回転トレイは、試薬ボトル保持部と、検体容器保持部と、を備える。前記試薬ボトル保持部は、トレイの回転中心の周囲において周方向に複数配置される。前記試薬ボトル保持部のそれぞれには、試薬ボトルを差込可能なボトル差込口が径方向に細長く形成される。前記検体容器保持部は、前記回転中心の周囲において周方向に複数配置される。前記検体容器保持部のそれぞれには、検体容器を差込可能な容器差込口が形成される。前記ボトル差込口の径方向外側部分同士の間に前記容器差込口が配置されている。
【0007】
この構成により、試薬ボトルを放射状に配置したときの径方向外側部分のデッドスペースを有効に利用することで、多くの検体容器及び試薬ボトルをコンパクトなスペースにまとめて配置することができる。従って、生化学自動分析装置の小型化に貢献できる。また、検体容器と試薬ボトルが周方向に交互に並べて配置されるレイアウトとなるので、回転トレイを回転させるときのバランスを安定させ、生化学自動分析装置の動作を円滑にすることができる。
【0008】
前記の生化学自動分析装置用の回転トレイにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この生化学自動分析装置用の回転トレイは、第1トレイと、第2トレイと、を備える。前記第1トレイは、前記試薬ボトル保持部を有する。前記第2トレイは、前記検体容器保持部を有するとともに、前記第1トレイから取外し可能に構成されている。
【0009】
この構成により、装置内に第1トレイを残しつつ第2トレイだけを取り外して検体容器の交換等を行うことができるので、ユーザの作業負担を効果的に低減することができる。また、生化学自動分析装置においては一般に、試薬ボトルと比較して検体容器の方が交換の頻度が高いため、上記の構成とすることが特に好適である。
【0010】
前記の生化学自動分析装置用の回転トレイにおいては、前記第1トレイが備える取っ手を用いることで、前記第2トレイと結合した状態で前記第1トレイを持ち上げることが可能に構成されていることが好ましい。
【0011】
この構成により、回転トレイの一体性を保った状態での持ち運びが容易になるので、作業性の一層の向上を図ることができる。
【0012】
前記の生化学自動分析装置用の回転トレイにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第2トレイは、複数の前記検体容器保持部を連結する連結部を備える。前記連結部は、前記ボトル差込口に一部重なるようにして、前記第1トレイの上方に配置されている。
【0013】
この構成により、回転トレイの特に径方向での小型化が容易になる。また、試薬ボトルがボトル差込口から抜けるのを連結部で防止できるので、試薬ボトルを回転トレイに一層確実に保持することができる。一方、第2トレイを第1トレイから取り外すことでボトル差込口が開放されるので、試薬ボトルの交換も容易である。
【0014】
前記の生化学自動分析装置用の回転トレイにおいては、前記第1トレイに対して前記第2トレイが取り付けられる位相を規制する規制部を備えることが好ましい。
【0015】
この構成により、第1トレイと第2トレイの関係が一定となるように規制できるので、回転トレイ及び生化学自動分析装置の制御が複雑になることを防止できる。
【0016】
前記の生化学自動分析装置用の回転トレイにおいては、前記検体容器保持部及び前記試薬ボトル保持部の両方において、トレイの径方向外側を向く面に開口部が形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成により、回転トレイの外周面に対面するように配置した読取部によって、検体容器及び試薬ボトルの両方に付されている識別情報を一度に読み取ることができる。従って、構成及び制御の簡素化と読取時間の短縮を実現できる。
【0018】
本発明の第2の観点によれば、前記の回転トレイを備える生化学自動分析装置が提供される。
【0019】
これにより、小型で一度に多くの検体及び試薬を対象とした分析が可能であり、動作も円滑な生化学自動分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る回転トレイ24を備える生化学自動分析装置1の全体的な構成を示した模式平面図である。
【0021】
この図1に示すように、本実施形態の生化学自動分析装置1は本体11を備え、この本体11の内部には反応槽21及び検体試薬庫22が配置されている。
【0022】
本体11の正面には、タッチパネル式のディスプレイ(表示部、入力部)14が配置されている。このディスプレイ14は測定の進捗等を表示可能に構成されているほか、ユーザが前記ディスプレイ14のタッチパネルに触れることにより、測定条件の設定、測定の開始/中止の指示等、各種の操作を行うことができる。
【0023】
反応槽21は平面視で円形となるように構成されるとともに、反応容器としてのキュベット2を周方向に等間隔で並べて複数セットできるように構成されている。キュベット2は、透明な合成樹脂により、一端を開放させた細長い形状の容器に成形されている。また、このキュベット2は、使用後には廃棄されるいわゆるディスポーザブル式のキュベットとされている。反応槽21は、反応槽駆動部としての図略の駆動モータによって、所定時間毎に所定のピッチ角度ずつ間欠的に回転駆動される。
【0024】
検体試薬庫22には、円形の回転トレイ24が配置されている。この回転トレイ24には、検体を収容した検体容器3と、試薬を収容した試薬容器としての試薬ボトル4と、を周方向に交互に並べて複数セットできるように構成している。なお、回転トレイ24の構成の詳細は後述する。
【0025】
前記検体試薬庫22の上側は蓋カバー25によって覆われている。従って、ユーザは、装置が停止している状態で前記蓋カバー25を取り外すことで、検体容器3及び試薬ボトル4をセットしたり交換したりできるようになっている。また、前記検体試薬庫22には図略の保冷装置が備えられており、回転トレイ24にセットされた試薬及び検体を適切な温度に保持できるようになっている。
【0026】
前記回転トレイ24の外周面に対面するようにして、本体11の内部にはバーコードリーダ(読取部)28が配置されている。このバーコードリーダ28は、検体容器3及び試薬ボトル4に付されたバーコード(識別表示部)の内容を読み取ることで、セットされた検体容器3及び試薬ボトル4を識別できるようになっている。
【0027】
前記回転トレイ24は、検体試薬庫駆動部としての図略の駆動モータによって回転駆動される。この駆動モータにより回転トレイ24を適宜回転させて、複数の検体及び試薬の中から所望のものを後述の分注部41に供給できるようになっている。また、所望の検体容器3又は試薬ボトル4がバーコードリーダ28に対面するように駆動モータを制御することで、回転トレイ24の任意の位置にセットされている検体容器3及び試薬ボトル4のバーコードを読み取って識別できるようになっている。
【0028】
前記反応槽21の側部には測光部(吸光度測定部)31が備えられている。この測光部31は光源部32と受光部33とを備えている。光源部32は、反応槽21にセットされた状態のキュベット2が周方向で所定の場所(測光位置p)に位置しているときに、当該キュベット2に対して光(例えば、白色ハロゲン光)を照射する。受光部33は、キュベット2を通過した光を入射させ、その強度を測定する。また、光源部32は、特定の波長を透過させる図略のフィルタを複数備えており、このフィルタを図略の駆動モータにより切り換えることで、特定の波長の光に関する吸光度を測定できるようになっている。
【0029】
前記本体11は、検体試薬庫22の検体や試薬を吸引して反応槽21のキュベット2に所定量吐出するための分注部(検体分注部、試薬分注部)41を備えている。この分注部41は、上下方向に配置された旋回軸42と、この旋回軸42の上端に取り付けられた旋回アーム43と、この旋回アーム43の先端に下向き突出状に設けられるピペット44と、を備えている。
【0030】
前記旋回軸42には図示しない昇降機構及び旋回機構が備えられており、旋回アーム43及びピペット44を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面及び蓋カバー25の上面には、前記ピペット44の旋回に伴ってその先端が描く軌跡に沿うように、円弧溝26が形成されている。
【0031】
前記円弧溝26は平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(分注位置q)と、検体試薬庫22と、を接続するように形成されている。ピペット44の先端は、前記旋回機構によって、この円弧溝26の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で前記昇降機構を駆動することで、ピペット44の先端を検体容器3、試薬ボトル4、又はキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0032】
分注部41のピペット44には図示しない吸引吐出機構が連結されており、検体容器3の検体や試薬ボトル4の試薬を吸引し、反応槽21のキュベット2へ吐出する動作が可能になっている。前記円弧溝26の中途部にはピペット洗浄部61が備えられ、このピペット洗浄部61によって、ピペット44内の余分な検体や試薬を排出したり、ピペット44を洗浄したりできるようになっている。
【0033】
また、前記本体11は、キュベット2に分注された試薬や検体を撹拌するための撹拌部51を備えている。この撹拌部51は、上下方向に配置された旋回軸52と、この旋回軸52の上端に取り付けられた旋回アーム53と、この旋回アーム53の先端に下向き突出状に設けられる撹拌棒54と、を備えている。
【0034】
前記旋回軸52には図示しない昇降機構及び旋回機構が備えられており、旋回アーム53及び撹拌棒54を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面には、前記旋回アーム53の旋回に伴って撹拌棒54の先端が描く軌跡に沿うように、円弧溝27が形成されている。
【0035】
前記円弧溝27は、平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(撹拌位置r)と、反応槽21の側部に設けられた撹拌洗浄部62と、を接続するように設けられている。撹拌棒54の先端は、前記旋回機構によって、この円弧溝27の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で前記昇降機構を駆動することで、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0036】
撹拌部51の撹拌棒54には図示しない駆動モータが連結されており、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部に挿入した状態で撹拌棒54を回転駆動することで、キュベット2の内容物を撹拌できるようになっている。また、前記撹拌洗浄部62では、撹拌後に試薬等が付着した撹拌棒54を洗浄できるように構成されている。
【0037】
前記本体11の上面にはキュベットストッカ71が備えられている。このキュベットストッカ71は前記反応槽21のほぼ直上方の位置に配置されるとともに、空のキュベット2を立てた状態で多数並べてストックできるようになっている。また、前記反応槽21の近傍にはダストポッド74が備えられて、使用済のキュベット2を廃棄可能に構成されている。
【0038】
更に、前記本体11はキュベット搬送部75を備えている。このキュベット搬送部75は、キュベット2を挟んで保持することが可能なアーム機構76を備え、前記反応槽21、前記キュベットストッカ71及び前記ダストポッド74の間でキュベット2を搬送できるように構成されている。
【0039】
具体的には、前記キュベット搬送部75は、キュベットストッカ71上の空のキュベット2を1個掴んで取り出し、前記窓部72から反応槽21に差し込んでセットできるようになっている。またキュベット搬送部75は、反応槽21にセットされている使用済のキュベット2を掴んで前記窓部72を通じて取り出し、前記ダストポッド74に投下して廃棄できるようになっている。
【0040】
次に、前記検体試薬庫22に配置されている回転トレイ24について、図2から図5までを参照して詳細に説明する。図2は回転トレイ24の外観斜視図である。図3は試薬トレイ81から検体トレイ82を取り外した様子を示す斜視図である。図4は試薬トレイ81のボトル差込口88及び検体トレイ82の容器差込口93の配置関係を示す試薬トレイ81の平面図である。図5は試薬ボトル4の斜視図である。
【0041】
なお、以降の説明で単に「径方向」「周方向」という場合、平面視で円形に構成されている回転トレイ24の径方向及び周方向を意味する。
【0042】
図2に示すように、回転トレイ24は、下側の試薬トレイ(第1トレイ)81と、上側の検体トレイ(第2トレイ)82と、を備えている。検体トレイ82は試薬トレイ81に対し、図3に示すように取外し可能に構成されている。
【0043】
最初に試薬トレイ81を説明する。この試薬トレイ81は合成樹脂により構成されており、図2及び図3に示すように、トレイの回転中心に配置される円筒状の基部83を備えている。基部83の上面には、回転トレイ24の全体を持ち上げて本体11から取り外すための取っ手84が形成されている。
【0044】
図4は、試薬トレイ81の詳細を示す平面図である。この図4に示すように、基部83の周囲には試薬ボトル保持部86が等間隔で15個配置されている。この試薬ボトル保持部86は、平面視で、回転トレイ24の回転軸を中心として周方向に360°にわたって並べて配置されている。
【0045】
15個の前記試薬ボトル保持部86のそれぞれには、上方を開放させるボトル差込口88が形成されている。そして、このボトル差込口88に前記試薬ボトル4を上方から差し込むことにより、試薬ボトル保持部86に試薬ボトル4をセットできるようになっている。ただし、ボトル差込口88の形状及び配置をより良く示すために、図4では15個のうち一部の試薬ボトル4が取り外された状態が描かれている。
【0046】
試薬ボトル4の一例を図5に示す。この試薬ボトル4は、適宜の合成樹脂をブロー成形することにより構成されている。試薬ボトル4は容器本体48を備え、この容器本体48の上面には第1開口49及び第2開口50が形成されている。開口49,50のそれぞれには、前記分注部41のピペット44を差し込むことが可能になっている。
【0047】
試薬ボトル4の容器本体48は平面視で細長い形状に構成されるとともに、第1開口49は試薬ボトル4の一端に、第2開口50は試薬ボトル4の他端に、それぞれ配置されている。試薬ボトル4は、第2開口50側から第1開口49側に向かって平面視で幅を若干狭めていく形状となっている。
【0048】
図4に示すように、それぞれのボトル差込口88は回転トレイ24の径方向に細長く形成されている。周方向に並べられたボトル差込口88の径方向内側部分同士は、所定の厚みの仕切り壁を隔てて周方向で隣接するように配置される(ただし、この仕切り壁は省略されても良い)。一方、ボトル差込口88の径方向外側部分同士の間には、所定の大きさの隙間が形成されている。
【0049】
この構成で、前記試薬ボトル4は、その第1開口49側(容器本体48の幅が狭い側)が回転トレイ24の内周側に位置するように向けた状態で、ボトル差込口88に上方から差し込まれる。これにより、試薬ボトル4が、試薬トレイ81(回転トレイ24)の試薬ボトル保持部86にセットされる。
【0050】
ここで、前記試薬ボトル4は、本実施形態のものより大型の生化学自動分析装置において一般的に使用される汎用型のものである。このように、本実施形態の回転トレイ24では汎用の試薬ボトル4をセット可能とすることで、特別な形状の試薬ボトルを使用する必要がなくなり、ランニングコスト等の低減を実現している。
【0051】
ただし、このような汎用型の試薬ボトル4は、大型の装置で用いられる大径の円形トレイに当該試薬ボトル4を多数並べる場合に隙間なく配置できるように、幅が狭い側と広い側とで平面視での幅の変化量が小さく形成されている。従って、本実施形態のように1周で15個配置する程度の場合は、試薬ボトル4の一端側(幅が狭い側)をトレイ内周側で互いに隣接させて配置したとしても、トレイ外周側では、隣り合う試薬ボトル4の間(幅が広い側の間)に周方向の隙間が生じることになる。
【0052】
次に検体トレイ82を説明する。この検体トレイ82は合成樹脂により構成されており、図3等に示すように、リング状の連結部91を備えている。そして、この連結部91の周囲には、検体容器保持部92が等間隔で15個配置されている。この検体容器保持部92は、平面視で、前記回転トレイ24の回転軸を中心として周方向に360°にわたって並べて配置されている。
【0053】
15個の前記検体容器保持部92のそれぞれには、上方を開放させる容器差込口93が形成されている。そして、この容器差込口93に前記検体容器3を上方から差し込むことにより、検体容器保持部92に検体容器3をセットできるようになっている。
【0054】
この検体容器3は試験管に類似した形状に構成されており、縦方向に細長く形成されている。このように細長い検体容器3を安定して保持できるように、前記検体容器保持部92は前記連結部91の縁部から下方へ延びるように形成され、上下方向に細長い形状となっている。図2に示すように、検体容器保持部92の底部と前記試薬ボトル保持部86の底部はほぼ同じ高さに配置される一方、容器差込口93は前記ボトル差込口88よりも高い位置に配置されている。
【0055】
図3及び図4に示すように、前記試薬トレイ81の適宜位置には、上方に突出する支持体としての支持突起97が複数(本実施形態では、6つ)形成されている。それぞれの支持突起97は、互いに隣り合う試薬ボトル保持部86の間に配置されている。また、支持突起97は、試薬ボトル保持部86の2〜3個分の間隔をあけて、周方向に複数並べて配置されている。それぞれの支持突起97の上端には平坦な支持面が形成されており、試薬トレイ81に検体トレイ82を取り付けたときに当該支持面が前記検体トレイ82の下面(前記連結部91の下面)に接触するように構成されている。これにより、検体トレイ82の高さ(ひいては、検体容器3内の検体の液面高さ)を所定の位置に保持できるようになっている。
【0056】
また、6つある支持突起97のうち2つの支持突起97においては、その上端面の中央から上方に突出するように、連結体としてのピン89が形成されている。一方、検体トレイ82の前記連結部91には、前記ピン89に対応する位置に差込孔94が形成されている。この差込孔94にピン89を差し込むことで、図2に示すように、試薬トレイ81と検体トレイ82を連結することができる。この連結に伴い、前記検体容器保持部92の大部分は、並んで配置される試薬ボトル保持部86の間の隙間に差し込まれる。
【0057】
2つの前記ピン89(及び差込孔94)は非対称となる位置に配置されており、検体トレイ82が試薬トレイ81に対し一定の位置関係で取り付けられるように、当該検体トレイ82の取付位置を規制する。この意味で、前記ピン89及び差込孔94は、検体トレイ82を試薬トレイ81に対して位置決めするための規制部(位置決め部)であるということができる。
【0058】
以上のようにして試薬トレイ81に取り付けられた検体トレイ82において、前記検体容器保持部92の容器差込口93は、図4の鎖線で示すように、前記ボトル差込口88の径方向外側部分同士の間に配置されることになる。この結果、回転トレイ24の外周部では、トレイの回転中心の周囲(基部83の周囲)の360°の範囲にわたって、検体容器3及び試薬ボトル4の計30個が等間隔で配置されることになる。従って、本実施形態の回転トレイ24を使用することにより、小さなスペースを有効に活用して、多くの試薬ボトル4及び検体容器3を検体試薬庫22に収納することができる。
【0059】
また、検体トレイ82が試薬トレイ81に取り付けられた状態では、当該検体トレイ82の連結部91は、ボトル差込口88に一部重なるようにして試薬トレイ81の上方に配置される。これにより、試薬トレイ81及び検体トレイ82の上下2層構造が実現され、検体トレイ82を単独で取外し可能とするための構成をコンパクトに実現することができる。また、前記連結部91が試薬ボトル4の上側を覆うカバーのような機能を果たすことにもなるので、試薬ボトル4をより安定して回転トレイ24に保持させることができる。
【0060】
なお、前記連結部91は、ボトル差込口88に装着された試薬ボトル4の2つの開口49,50の間に配置されるので、開口49,50を連結部91が塞いで前記ピペット44の吸引に支障が生じることもない。また、連結部91はその中心部に貫通孔を有するリング状に形成されており、当該貫通孔を通じて試薬トレイ81の取っ手84が露出しているので、検体トレイ82を試薬トレイ81に取り付けた状態で取っ手84を容易に使用することができる。
【0061】
本実施形態では、取っ手84は回転トレイ24の中心に配置されており、当該取っ手84を使用することにより、回転トレイ24を傾くことなく(バランス良く)持ち上げることができる。ただし、取っ手を回転トレイ24の中心ではなく、前記基部83の周囲に設けても良い。例えば、隣り合う試薬ボトル保持部86の間に取っ手を配置するとともに、当該取っ手に対応する位置において検体トレイ82の連結部91に貫通孔を形成し、取っ手が前記貫通孔を通って上方に突出するように構成することもできる。
【0062】
前記連結部91の上面には、2つの第2取っ手95が形成されている。この第2取っ手95を用いることにより、図3のように検体トレイ82だけを持ち上げて生化学自動分析装置1の本体11から取り外すことができるので、検体容器3の交換等が容易になり、作業性が向上する。
【0063】
また、前記試薬トレイ81における試薬ボトル保持部86には、その径方向外側を向く面に、上下方向に細長いスリット(開口部)87が形成されている。このスリット87を通じて、試薬ボトル4に付されている前記バーコードを回転トレイ24の外周面側に露出させることができる。
【0064】
また、検体トレイ82における検体容器保持部92にも同様に、その径方向外側を向く面に、上下方向に細長いスリット(開口部)96が形成されている。このスリット96を通じて、検体容器3に付されている前記バーコードを回転トレイ24の外周面側に露出させることができる。
【0065】
次に、本実施形態の生化学自動分析装置1における検体容器3及び試薬ボトル4の識別制御について、図6を参照して説明する。図6は、検体容器3及び試薬ボトル4の識別のために実行される制御を示すフローチャートである。
【0066】
図6に示すフローは、生化学自動分析装置1が備える制御部によって、適宜のタイミングで実行されるものである。この制御部の詳細は図示しないが、演算部としてのCPU、記憶部としてのメモリ等を備えている。
【0067】
図6のフローが実行されると、生化学自動分析装置1が電源オンの直後であるか否かが調べられる(S101)。電源オンの直後であると判定された場合は、S104の処理に移る。
【0068】
S101の判断で電源オンの直後でないと判定された場合は、現在の生化学自動分析装置1の状態がスタンバイモードからの復帰直後であるか否かが調べられる(S102)。なお、スタンバイモードとは、電源はオン状態であるものの測定動作が長時間行われなかったため、省電力等のために測光部31を始めとした各部の駆動を停止しているモードである。スタンバイからの復帰直後であると判定された場合は、S104の処理に移る。
【0069】
S102の判断でスタンバイからの復帰直後でないと判定された場合は、検体の測定を開始する直前の状態か否かが調べられる(S103)。測定直前の状態であると判定された場合は、S104の処理に移る。測定直前の状態でないと判定された場合は、図6のフローを終了する。
【0070】
以上の処理により、生化学自動分析装置1の状態が、電源オンの直後であるか、スタンバイモードからの復帰直後であるか、検体の測定を開始する直前である場合には、S104以降のバーコード読取処理が行われることになる。
【0071】
次に、バーコード読取処理を説明する。制御部は最初に図略の駆動モータを制御して回転トレイ24を回転させながら(S104)、当該回転トレイ24が所定のピッチ角度だけ回転する毎にバーコードリーダ28を制御し、当該バーコードリーダ28に現在対面している検体容器3又は試薬ボトル4のバーコードを読み取らせる(S105)。なお、1ピッチとは、前述のように等間隔で計30個並べられている検体容器3及び試薬ボトル4のピッチ角度を意味し、30ピッチで1周分となる。
【0072】
次に、回転トレイ24が1周分回転したか否かが調べられ(S106)、1周未満と判定された場合にはS104に戻る。回転トレイ24が1周分回転したと判定された場合は、図6のフローを終了する。
【0073】
以上のS104〜S106の処理により、回転トレイ24を継続的に回転させながら、検体容器3、試薬ボトル4、検体容器3、試薬ボトル4、・・・というように交互にバーコードリーダ28の対面位置を通過させて、バーコードを順次読み取ることができる。この結果、検体容器3と試薬ボトル4を識別するためのバーコードリーダ28を共通化できる。また、回転トレイ24を1周させるだけで検体容器3及び試薬ボトル4の両方のバーコードを全て読み取ることができるので、構成と制御の簡素化及び読取時間の短縮を実現することができる。
【0074】
ただし、常に検体容器3及び試薬ボトル4の両方のバーコードを一度に読み取らせる必要はない。例えば、状況に応じて、交換頻度の高い検体容器3のバーコードのみを読み取らせることもでき、また、試薬ボトル4のみを交換した場合には当該試薬ボトル4のバーコードのみを読み取らせることもできる。更には、1ピッチずつ回転するごとに回転トレイ24を停止させ、その状態でバーコードリーダ28でバーコードを読み取るようにすることもできる。
【0075】
以上に示すように、本実施形態の生化学自動分析装置1が備える回転トレイ24は、試薬ボトル保持部86と、検体容器保持部92と、を備える。試薬ボトル保持部86は、トレイの回転中心の周囲において周方向に複数配置される。試薬ボトル保持部86のそれぞれには、試薬ボトル4を差込可能なボトル差込口88が径方向に細長く形成される。検体容器保持部92は、前記回転中心の周囲において周方向に複数配置される。検体容器保持部92のそれぞれには、検体容器3を差込可能な容器差込口93が形成される。そして、ボトル差込口88の径方向外側部分同士の間に容器差込口93が配置されている。
【0076】
これにより、試薬ボトル4を放射状に配置したときの径方向外側部分のデッドスペースを有効に利用することで、多くの検体容器3及び試薬ボトル4をコンパクトなスペースにまとめて配置することができる。従って、生化学自動分析装置1の小型化に貢献できる。また、検体容器3と試薬ボトル4が周方向に交互に並べて配置されるレイアウトとなるので、回転トレイ24を回転させるときのバランスを安定させ、生化学自動分析装置1の動作を円滑にすることができる。
【0077】
また、本実施形態の回転トレイ24は、試薬トレイ81と、検体トレイ82と、を備える。試薬トレイ81は、試薬ボトル保持部86を有する。検体トレイ82は、検体容器保持部92を有するとともに、試薬トレイ81から取外し可能に構成されている。
【0078】
これにより、生化学自動分析装置1内に試薬トレイ81を残しつつ検体トレイ82だけを取り外して検体容器3の交換等を行うことができるので、ユーザの作業負担を効果的に軽減することができる。特に本実施形態のような生化学自動分析装置1では、試薬ボトル4と比較して検体容器3の方が交換の頻度が高いため、上記のような構成とすることが好適である。
【0079】
また、本実施形態の回転トレイ24は、試薬トレイ81が備える取っ手84を用いることで、検体トレイ82と結合した状態で試薬トレイ81を持ち上げる(即ち、回転トレイ24全体を持ち上げる)ことが可能に構成されている。
【0080】
これにより、回転トレイ24の一体性を保った状態での持ち運びが容易になるので、作業性の一層の向上を図ることができる。
【0081】
また、本実施形態の回転トレイ24において、検体トレイ82は、複数の検体容器保持部92を連結する連結部91を備える。この連結部91は、ボトル差込口88に一部重なるようにして、試薬トレイ81の上方に配置されている。
【0082】
これにより、回転トレイ24の特に径方向での小型化が容易になる。また、試薬ボトル4がボトル差込口88から抜けるのを連結部91で防止できるので、試薬ボトル4を回転トレイ24に一層確実に保持することができる。一方、検体トレイ82を試薬トレイ81から取り外すことでボトル差込口88が開放されるので、試薬ボトル4の交換も容易である。
【0083】
また、本実施形態の回転トレイ24は、試薬トレイ81に対して検体トレイ82が取り付けられる位相を規制するピン89を備える。
【0084】
これにより、試薬トレイ81と検体トレイ82の関係が一定となるように規制できるので、回転トレイ24及び生化学自動分析装置1の制御が複雑になることを防止できる。
【0085】
また、本実施形態の回転トレイ24において、検体容器保持部92及び試薬ボトル保持部86の両方において、トレイの径方向外側を向く面にそれぞれスリット87,96が形成されている。
【0086】
これにより、回転トレイ24の外周面に対面するように配置したバーコードリーダ28によって、検体容器3及び試薬ボトル4の両方のバーコードを一度に読み取ることができる。従って、構成の簡素化と読取時間の短縮を実現できる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0088】
上記実施形態では、試薬ボトル保持部86(ボトル差込口88)の数を15個とし、検体容器保持部92(容器差込口93)の数についても15個としているが、これより少ない又は多い数の差込口を有する回転トレイに変更することができる。
【0089】
上記実施形態では、試薬トレイ81側にピン89が形成され、検体トレイ82側に差込孔94が形成されているが、検体トレイ82側にピンを備えて、試薬トレイ81側に形成された差込孔へ当該ピンを差し込む構成に変更することもできる。また、ピンと差込孔の数は2組に限らず、1組であっても良いし、3組以上であっても良い。
【0090】
検体容器3と試薬ボトル4とが周方向に1つずつ交互に配置される構成に代えて、例えば検体容器3、試薬ボトル4、試薬ボトル4、検体容器3、試薬ボトル4、試薬ボトル4、・・・というように、1つの検体容器3と複数の試薬ボトル4が周方向に交互に並べて配置される構成に変更することができる。また、周方向で隣り合う試薬ボトル4と試薬ボトル4の間に複数の検体容器3を配置する構成に変更することができる。
【0091】
上記実施形態では、ディスポーザブル式のいわゆる小型の分析装置により説明を行ったが、本発明はディスポーザブル式の分析装置への適用に限定されず大型の分析装置にも適用することができ、それにより小型化に貢献できることは言うまでもない。
【0092】
試薬ボトル4は、図3から図5までに示すような形状のボトルとすることに限定されず、例えば1つのボトルで複数の試薬を貯留可能な複合ボトルに変更したり、第1開口49を省略して1つの開口50のみを備えるボトルに変更したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転トレイを備える生化学自動分析装置の全体的な構成を示した模式平面図。
【図2】回転トレイの外観斜視図。
【図3】試薬トレイから検体トレイを取り外した様子を示す斜視図。
【図4】試薬トレイのボトル差込口及び検体トレイの容器差込口の配置関係を示す試薬トレイの平面図。
【図5】試薬ボトルの斜視図。
【図6】検体容器及び試薬ボトルの識別のために実行される制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0094】
1 生化学自動分析装置
3 検体容器
4 試薬ボトル
24 回転トレイ
81 試薬トレイ(第1トレイ)
82 検体トレイ(第2トレイ)
84 取っ手
86 試薬ボトル保持部
87 スリット(開口部)
88 ボトル差込口
89 ピン(規制部)
91 連結部
92 検体容器保持部
93 容器差込口
95 第2取っ手
96 スリット(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生化学自動分析装置用の回転トレイにおいて、
トレイの回転中心の周囲において周方向に複数配置され、それぞれに、試薬ボトルを差込可能なボトル差込口が径方向に細長く形成された試薬ボトル保持部と、
前記回転中心の周囲において周方向に複数配置され、それぞれに、検体容器を差込可能な容器差込口が形成された検体容器保持部と、
を備え、
前記ボトル差込口の径方向外側部分同士の間に前記容器差込口が配置されていることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の生化学自動分析装置用の回転トレイであって、
前記試薬ボトル保持部を有する第1トレイと、
前記検体容器保持部を有するとともに、前記第1トレイから取外し可能に構成されている第2トレイと、
を備えることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項3】
請求項2に記載の生化学自動分析装置用の回転トレイであって、
前記第1トレイが備える取っ手を用いることで、前記第2トレイと結合した状態で前記第1トレイを持ち上げることが可能に構成されていることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生化学自動分析装置用の回転トレイであって、
前記第2トレイは、複数の前記検体容器保持部を連結する連結部を備え、
前記連結部は、前記ボトル差込口に一部重なるようにして、前記第1トレイの上方に配置されていることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置用の回転トレイであって、
前記第1トレイに対して前記第2トレイが取り付けられる位相を規制する規制部を備えることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の生化学自動分析装置用の回転トレイであって、
前記検体容器保持部及び前記試薬ボトル保持部の両方において、トレイの径方向外側を向く面に開口部が形成されていることを特徴とする生化学自動分析装置用の回転トレイ。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の回転トレイを備えることを特徴とする生化学自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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