説明

回転ドラム式濃縮システム

【課題】凝集混和槽で形成されていたフロックを回転ドラムの内部で形成できるようにしてフロック破壊を抑制し、かつ回転ドラム内部を効率的に利用できるようにした回転ドラム式濃縮システムを提供する。
【解決手段】回転ドラム式濃縮システムは、処理対象物を回転ドラムへ供給するための供給ラインと、凝集剤を投入するための投入ラインと、処理対象物に凝集剤を分散する攪拌部と、凝集剤が分散された処理対象物を投入する投入部と、ろ過処理可能な複数の開口部を有する円筒状の前記回転ドラムと当該回転ドラムを回転させるための駆動部とを有し、投入部から投入された処理対象物を回転ドラムを回転させながら濃縮して濃縮物と水分とに分離する濃縮装置とを備え、回転ドラム内部に、投入部から投入された処理対象物のフロック成長可能なフロック成長用スペース部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物を回転ドラムへ供給するための供給ラインと、前記供給ラインに凝集剤を投入するための投入ラインと、前記供給ラインの途中に設置され、前記処理対象物に前記凝集剤を分散する攪拌部と、前記供給ラインから回転ドラムへ、前記凝集剤が分散された前記処理対象物を投入する投入部と、ろ過処理可能な複数の開口部を有する円筒状の前記回転ドラムと当該回転ドラムを回転させるための駆動部とを有し、前記投入部から投入された前記処理対象物を前記回転ドラムを回転させながら濃縮して濃縮物と水分とに分離する濃縮装置と、前記濃縮装置で分離された水分を回収するろ液回収部と、前記濃縮装置で濃縮された濃縮物を回収する濃縮物回収部とを備えた回転ドラム式濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から汚泥等を濃縮する方法として凝集混和槽を使用した特許文献1が知られている。汚泥を濃縮する場合、この凝集混和槽において汚泥と凝集剤を均一に混合する必要がある。そして、濃縮しやすい汚泥フロック(凝集作用で生成された大きな粒子で浮遊質の集合体)を形成するには、凝集混和槽内で急速攪拌と緩速攪拌を行う必要があり、特許文献1のような複雑な構造が必要であり、改善が望まれている。また、汚泥の処理量が増加すると、凝集混和槽を大きくする必要があり、攪拌機による攪拌ではフロックが不均一になりやすい。また、凝集混和槽において、凝集混和槽の容量に合わせた攪拌機動力が必要である。また、凝集混和槽から濃縮装置に処理対象物(フロック形成済み)を投入したときに、フロックが一部破壊され凝集性能が低下することが懸念される。
【0003】
また、特許文献2のような回転ドラム型濃縮機が知られている。汚泥フロックが形成された処理対象物を回転ドラム型濃縮機に投入して濃縮汚泥を得ることができる。しかしながら、回転ドラム型濃縮機では、一部のスペース(回転ドラムの周面のスクリーン部)しか、ろ過作用に寄与しておらず、ドラム内部の空間は特になにも機能していないものであった。汚泥の濃縮処理量を多くしたい場合には、それに応じて回転ドラムのサイズを大きくすることになるため、結果的に回転ドラム内の未使用空間も増大していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4623431号
【特許文献1】特開2007−330920号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、凝集混和槽で形成されていたフロックを回転ドラムの内部で形成できるようにしてフロック破壊を抑制し、かつ回転ドラム内部を効率的に利用できるようにした回転ドラム式濃縮システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、回転ドラム式濃縮システムであって、
処理対象物を回転ドラムへ供給するための供給ラインと、
前記供給ラインに凝集剤を投入するための投入ラインと、
前記供給ラインの途中に設置され、前記処理対象物に前記凝集剤を分散する攪拌部と、
前記供給ラインから回転ドラムへ、前記凝集剤が分散された前記処理対象物を投入する投入部と、
ろ過処理可能な複数の開口部を有する円筒状の前記回転ドラムと当該回転ドラムを回転させるための駆動部とを有し、前記投入部から投入された前記処理対象物を前記回転ドラムを回転させながら濃縮して濃縮物と水分とに分離する濃縮装置と、
前記濃縮装置で分離された水分を回収するろ液回収部と、
前記濃縮装置で濃縮された濃縮物を回収する濃縮物回収部と、を備え、
前記回転ドラム内部に、前記投入部から投入された前記処理対象物のフロック成長可能なフロック成長用スペース部を形成したことを特徴とする。
【0007】
この構成によって、処理対象物と凝集剤とを供給ライン上の攪拌部で分散し(急速攪拌して分散)し、次いで、回転ドラム内部のフロック成長用スペース部で、処理対象物のフロックを緩やかに形成し成長させる。すなわち、フロック成長用スペース部で、緩速攪拌作用を実現し、均一なフロックを得ることができる。処理対象物は、フロック成長後に濃縮作用をする回転ドラムの周面に形成された開口部(スクリーン部)に直接送られるため、フロックが破壊されることなく、濃縮物と水分とを効果的に分離できる。よって、フロックを回転ドラムの内部で成長できるようにしてフロック破壊を抑制して、高いSS(固形物)回収率と高濃度の濃縮汚泥が得られる。さらに、回転ドラム内部を効率的に利用できるため、システム全体の設置スペースを従来よりも小さくできる。
【0008】
上記発明において、攪拌部は、機械的攪拌(例えば、ラインミキサ)、配管内構造物(例えば、スタティックミキサ)、水流攪拌(例えば、配管の組み合わせ構造による攪拌)を採用できる。この場合、凝集混和槽が不要であるため、設置に要するスペースやコストを削減できる。また、凝集混和槽が不要であれば、従来の凝集混和槽から濃縮機に至る配管スペースも削除できる。
【0009】
また、攪拌部として、従来よりも縮小した凝集混和槽を採用することができる。凝集混和槽では、処理対象物に凝集剤を急速攪拌で均一分散のみ行い、処理対象物(凝集剤分散の処理対象物)を回転ドラムへ投入し、回転ドラム内で緩速攪拌に相当する作用をしてフロックを成長させることができる。
【0010】
また、上記発明の一実施形態として、前記フロック成長用スペース部が、
前記投入部から投入された前記処理対象物を移動しながら当該処理対象物のフロックを形成させるための移動ラインと、
前記移動ラインから前記回転ドラムの前記開口部が形成されている周面に、フロック形成された前記処理対象物を供給するためのフロック供給部とを有する。
【0011】
この構成では、処理対象物が移動ラインを移動する過程でフロックが形成され、フロック供給部から直接回転ドラムの濃縮作用部(開口部が形成された周面のスクリーン部)へ供給可能になっている。
【0012】
また、上記発明の一実施形態として、前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物の移動方向を変更する変更点を1つあるいは1つ以上設けてある。
【0013】
この構成では、移動ライン上に移動方向を変更する変更点を1つあるいは1つ以上設けてあることで、移動ラインの全長、移動ラインのサイズ、移動ライン中の衝突箇所を調整できるため、処理対象物の種類に応じたフロック成長を調整することが可能になる。例えば、移動ラインに折り返し箇所を設けることで移動距離を2倍に設定できる。また、処理対象物の種類に応じて、移動ラインの全長が可変になるように変更点を設けることが好ましい。
【0014】
また、上記発明の一実施形態として、前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物を衝突させるための衝突壁部を1つあるいは1つ以上設けてある。
【0015】
この構成では、移動ラインに処理対象物が衝突する衝突壁をあえて設置することで、フロックの成長を促すことができる。処理対象物の種類に応じて衝突壁の大きさ、設置箇所、設置個数、衝突角度を可変にできるように構成する(例えば、取替え容易に着脱自在にする、取付角度を変更可能にする)ことが好ましい。
【0016】
また、上記発明の一実施形態として、前記濃縮装置は、
前記回転ドラムをその軸周りに回転可能に支持する装置本体フレームと、前記回転ドラムの前記開口部が形成されている内周面に沿って設置され、前記処理対象物が投入された位置から前記回転ドラムの出口側へ搬送可能なスパイラル式搬送部と、を有し、
前記フロック成長用スペース部は、回転可能に前記装置本体フレームあるいは前記回転ドラムに取り付けられている、あるいは、回転しないように前記装置本体フレームに固定されている。
【0017】
この構成では、フロック成長用スペース部が装置本体に対し回転可能に構成されている場合には、処理対象物の種類に応じて、回転させながら移動ラインである例えば、配管内面と衝突させることでフロックを成長させることができる。フロック成長スペース部の回転と回転ドラムとの回転とが同期していても良いが、処理対象物の種類に応じて、フロック成長に適したフロック成長スペース部の回転速度となるように、かつ固液分離である濃縮処理に適した回転ドラムの回転速度となるようにそれぞれの回転速度を制御部で制御することが好ましい。制御部は、回転速度を制御するのみでなく、回転と非回転のタイミングも制御できる。回転駆動部は回転ドラムの回転駆動部と同じものでもよく、別に設けられていて良い。同じ場合は、ギア等の伝達機構によって回転数をそれぞれ制御できるようにしてあってもよい。回転する場合のフロック成長用スペース部は、円筒状や断面多角形の柱状が好ましい。
【0018】
また、上記実施形態において、前記フロック成長用スペース部が回転可能に取り付けられている場合に、当該フロック成長用スペース部を回転するための回転駆動部と、前記回転ドラムの回転数と同じまたは異なるように前記フロック成長用スペース部の回転を制御する回転制御部と、を有し、
前記フロック成長用スペース部の一方側を前記投入部に対して回転可能に取り付け、かつ前記フロック供給部を当該フロック成長用スペース部のその他方側に設けた構成が好ましい。
【0019】
また、フロック成長用スペース部が予め回転しないようになっている場合には、移動ラインを円筒状あるいは断面多角形状の配管形状に形成してもよいが、箱状、半円筒状の形状でもあってもよい。
【0020】
また、上記発明の一実施形態として、前記移動ラインが、前記回転ドラムの周面のうち、前記投入部側の前記開口部が形成されていない周面に設けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成では、回転ドラムの周面の一部を利用してフロックを成長させるため、あらたに、配管等を回転ドラム内に設置してフロック成長用スペース部を設けなくてもよい。
【0022】
また、上記実施形態として、前記フロック供給部が、前記開口部が形成された回転ドラム周面と前記移動ラインを形成する周面との境界に形成された仕切壁で構成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成では、フロックの成長を十分に行わせるために、仕切壁を設けてあり、開口部が設けられた周面(スクリーン部)へ直ぐに移動できないようにして、フロック成長用スペース部での滞留時間を増加させている。処理対象物の種類や性状に応じて仕切壁の高さが可変になるように構成されていることが好ましい。
【0024】
また、前記仕切壁の一部にスリットが形成されている形態がある。仕切壁のスリットからのみスクリーン部へフロック成長した処理対象物が移動できるようにして、フロック成長を好適に行わせている。このスリットの開口面積が可変に構成されていることが好ましい。処理対象物の種類や性状に応じてスリットの数、開口面積を変えることが好ましいからである。
【0025】
また、上記構成において、前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物を衝突させるための衝突壁部を1つあるいは1つ以上設けてある。これによって、フロックと回転ドラムのともまわりを防止し、かつ衝突壁に衝突することでフロックの成長を促進できるようにしている。処理対象物の種類に応じて衝突壁の大きさ、設置箇所、設置個数、衝突角度を可変にできるように構成する(例えば、取替え容易に着脱自在にする、取付角度を変更可能にする)ことが好ましい。
【0026】
また、上記構成において、前記回転ドラムを前記処理対象物投入方向に向かって径小に窄ませてあることが好ましい。また、前記投入部が前記回転ドラム周面に対しスロープ状に傾斜してあることが好ましい。いずれも、回転ドラムの入口側(投入部側)で生成したフロックの破壊を防止することができる。例えば、投入部から処理対象物が次々と送られてくるときに、回転ドラムの投入口にフロック形成されたものが滞留していると、投入された処理対象物の落下によってフロックが破壊されてしまう。上記構成によれば、このような状況を好適に防止できる。
【0027】
また、上記発明の一実施形態として、前記フロック成長用スペース部の前記移動ラインの距離が可変に構成されていることが好ましい。処理対象物の種類に応じて移動ラインの全長を変更することで、フロックの成長を効果的に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】実施形態1の回転ドラム式濃縮システムを説明するための図。
【図1B】実施形態1の濃縮装置を説明するための図。
【図1C】実施形態1の濃縮装置を説明するための図。
【図2A】実施形態1のフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図2B】実施形態2のフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図2C】実施形態3のフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図3A】実施形態4の濃縮装置およびフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図3B】実施形態5の濃縮装置およびフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図3C】実施形態6の濃縮装置およびフロック成長用スペース部の詳細を説明するための図。
【図4】実施形態7の濃縮装置およびフロック成長用スペース部を説明するための図。
【図5】実施形態8の濃縮装置およびフロック成長用スペース部を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本実施形態の回転ドラム式濃縮システムを図面を参照しながら説明する。処理対象物として汚泥を例にして説明する。回転ドラム式濃縮システム1は、汚泥2を回転ドラム51へ供給するための供給配管10(供給ラインに相当する)と、供給配管10に凝集剤3を投入するための投入用配管11(投入インに相当する)と、供給配管10の途中に設置され、汚泥2に凝集剤3を分散するための水流攪拌部13(攪拌部に相当する)と、供給配管11から回転ドラム51へ、凝集剤3が分散された汚泥2を投入する汚泥投入口14(投入部に相当する)と、ろ過処理可能な複数の開口部を有する円筒状の回転ドラム51と回転ドラム51を回転させるための駆動部とを有し、汚泥投入口14から投入された汚泥2(凝集剤3が分散済み)を回転ドラム51を回転させながら濃縮して濃縮物と水分とに分離する濃縮装置50と、濃縮装置50で分離された水分を回収するろ液回収部61と、濃縮装置50で濃縮された濃縮物を回収する濃縮物回収部62とを備える。濃縮装置50は、回転ドラム51をその軸周りに回転可能に支持する装置本体フレーム(52、53)と、回転ドラム51の開口部が形成されている内周面(ドラムスクリーン51a)に沿って設置され、汚泥が投入された位置から回転ドラム51の濃縮物が排出される出口側(濃縮汚泥排出口62a)へ搬送可能なスパイラル式搬送部58とを有している。
【0030】
図1Bを用いて濃縮装置50について詳細に説明する。図1Bは、濃縮装置50の左側面内部構造を示し、図1Cは正面構造を示す。濃縮装置50は、図1B,1Cに示すように、土台フレーム53に載置・固定されて、ケーシング52の内部に、周面に形成されたドラムスクリーン51aを有する回転ドラム51が回転可能に配置された回転ドラム型の濃縮装置である。
【0031】
濃縮装置50は、遠心濃縮機に比べて、回転速度が遅くて済むため、消費電力は少なく、騒音・振動も少なく、しかもスペースも小さくて済む。回転ドラム51本体は、略円筒状をしており、その外周面はウエッジワイヤーが多数配列されたドラムスクリーン51aが形成されて、ウエッジワイヤー間に多数の間隙(開口部に相当する)が形成された状態になっており、汚泥の液体部分が下方に排出可能に構成されている。通常、汚泥の濃縮処理をする場合、回転ドラム51での目幅(ウエッジワイヤー間の間隙)は、0.1〜0.5mm程度が好ましい。
【0032】
回転ドラム51は、回転ドラム51本体を支持するため前後左右に設けられた回転支持部55を、プーリー(図示略)等の伝達手段を用いて回転させるドラム用電動機M1により回転駆動される(回転支持部、電動機等が駆動部に相当する)。
【0033】
汚泥2は、ドラムスクリーン51aの長手方向一端側に形成された汚泥投入口14から投入されるようになっており、投入された汚泥中の水分など液体部分は、回転ドラム51本体の下流側の下方のろ液回収部61に落下し、排出口61aから排出され、濃縮された固体部分は下流側の濃縮汚泥排出口62aから搬出されて濃縮物回収部62に回収される。濃縮物回収部62は、例えば可搬性のコンテナーや貯留タンク等で構成できる。
【0034】
ケーシング52の内側上部には、洗浄水ノズル57がケーシング52の長手(軸)方向にわたり複数個設けられていて、ドラムスクリーン51aに対して目詰まりを防止すべく洗浄水を噴射するようになっている。もっとも、洗浄水ノズル57を複数配置する代りに、1個のノズルをケーシング52の長手方向に走行させるようにしてもよい。
【0035】
略円筒状をした回転ドラム51本体の内周面側には、略円筒状をしたスパイラル58(スパイラル式搬送部に相当する)が同心円状に配置されており、回転ドラム51本体が回転するのに対して、スパイラル58は回転することなく固定されており、これによって、汚泥が下流へ搬送させる。
【0036】
更に、回転ドラム51本体の外周面側には、その外周面を洗浄可能な回転ブラシ59が設けられていてもよい。この回転ブラシ59は、その先端が、回転するドラム本体の外周面と接触し、ウエッジワイヤー間に付着した毛髪や繊維などのし渣、スクリーンかすその他の汚れを機械的に除去可能になっている。ブラシ59は、金属製、樹脂製その他で構成されており、軸(図示略)周りに回転可能に遊嵌されていてもよいし、固定軸に取り付けられていてもよく、更にはその固定軸を電動機により回転駆動可能になっていてもよい。
【0037】
また、濃縮装置50のドラムスクリーン51a(ドラム本体の周面)は、その全周にわたり、多数の間隙が形成されているが、この間隙は、ドラム本体の上流側から下流側に向けて間隙が一定であってもよく、下流(または濃縮汚泥排出口)に行くに従って段階的に粗くなっていてもよい。
【0038】
そして、フロック成長用スペース部70が、回転ドラム51内部に設けられており、汚泥投入口14から投入された汚泥2(凝集剤3が分散済み)のフロック成長を行っている。このフロック成長用スペース部70が、緩速攪拌部の作用を兼ねている。
【0039】
フロック成長用スペース部70における滞留時間は、処理対象物の種類や凝集剤の種類、投入量にもよるが、例えば10〜120秒の範囲内になるように設定し、好ましくは30〜100秒の範囲である。滞留時間が短いとフロックの成長が不十分であり、滞留時間が長いとスペース容積の問題、フロックの破壊が懸念されるため好ましくない。
【0040】
<実施形態1>
図2Aは、フロック成長用スペース部70の一例を上から見た図である。フロック成長用スペース部70は、箱状であり、一方端が汚泥投入口14と、その他方端が支持装置73によってケーシング52と取り付けられている。そして、箱状スペースの長手方向に仕切部71aが設けられて、汚泥の移動がUターンするような移動ライン71を形成している。この移動ライン71に沿って、汚泥投入口14から投入された汚泥2(凝集剤3が分散済み)が移動しながらフロックが形成し成長していく。フロックが成長した汚泥2は、フロック供給部78から回転ドラム51のドラムスクリーン51aに供給される。
【0041】
この移動ライン71のUターン部分71bが移動方向を変更する変更点に相当する。図2では変更点が一つであったが、複数の変更点を構成していてもよい。また、移動ライン71は、Uターン状に限定されず、L字状ライン、S字状ライン、移動ラインの幅が拡縮するような形状ライン、円を描くような形状ライン、これらの組み合わせのラインであってもよい。移動ラインの形状、全長距離は、処理対象部の種類や性状に応じて設定することが好ましい。
【0042】
<実施形態2>
次に別例の移動ライン71について図2Bを用いて説明する。移動ライン71に沿って、衝突壁71cが下流方向に左右交互に設置されており、汚泥投入口14から投入された汚泥2がこの衝突壁71cに衝突することで、フロックが除々に成長していく。衝突壁71cによって、汚泥2の移動方向が変更されており、ここでも変更点71aが存在している。実施形態1と異なり、フロック供給部78が、移動方向下流側に設置されている。このため、濃縮汚泥排出口62aは、図1のような回転ドラム51の右側でなく、回転ドラム51の左側に設けられる。
【0043】
また、実施形態2の別例として、衝突壁71cが形成されていない構成も可能であり、また、フロック供給部78、78’が2個設置されていてもよく、いずれか一方に設置してあってもよい。また、衝突壁71cの個数やサイズ、形状は、処理対象部の種類や性状に応じて設定し、着脱可能に取り付けられるように構成しておくことが好ましい。
【0044】
<実施形態3>
次に別例の移動ライン71について図2Cを用いて説明する。円筒状のフロック成長用スペース部70が回転可能に取り付けられている。汚泥投入口14がそれよりも大径の汚泥入口配管72の内部に挿入されて回転可能に構成されている。また、支持装置73がフロック成長用スペース部70を回転するための回転駆動部80(モータおよび伝達機構で構成される)に取り付けられている。回転ドラム51を回転駆動するためのドラム用電動機M1と回転駆動部80のそれぞれを制御する回転制御部81(情報処理装置で構成される)が設置される。
【0045】
回転制御部81は、処理対象物の種類、性状に応じて、それぞれの回転数を制御する。例えば、入力された回転速度あるいは予め設定された回転速度に基づいて回転制御部81がそれぞれの回転数を制御することができる。フロック成長用スペース部70の回転速度は、回転速度が速すぎるとフロックの成長がし難いことから、例えば1〜30回転/分(rpm)の範囲内で設定することが好ましい。
【0046】
円筒状下部に移動ライン71が形成されており、汚泥がともまわりするのを防止するためにスパイラルや羽等が回転せずに設置されていてもよい。フロック供給部78が、移動方向下流側に楕円状開口部として円筒状壁面に形成されている。このため、実施形態2と同様に、濃縮汚泥排出口62aは、図1のような回転ドラム51の右側でなく、回転ドラム51の左側に設けられる。
【0047】
<実施形態4>
次に、フロック成長用スペース部を回転ドラム51の周面に設けた構成について説明する。図3Aに示す断面模式図の回転ドラム51は、汚泥投入口14側の回転ドラム周面51cにはスクリーンが形成されておらず、ドラムスクリーン51aの部分がその下流側に設けられている。ドラムスクリーン51aが形成されていない回転ドラム51の周面51cがフロック成長用スペース部70として機能している。移動ライン71が回転ドラム51の周面のうち、汚泥投入口14側から、ドラム内周に沿って設けられた仕切壁74までの間に形成され、この間で汚泥2が移動しながら除々にフロックが成長する。フロックが成長した汚泥2は、この仕切壁74を飛び越えてドラムスクリーン51a側に移動する。この仕切壁74がフロック供給部の機能を兼ねている。
【0048】
回転ドラム51の回転速度は、回転速度が速すぎるとフロックの成長がし難いことから、例えば1〜30回転/分(rpm)の範囲内で設定することが好ましい。例えば、入力されたあるいは予め設定されていた回転速度に基づいて回転制御部81がドラム用電動機M1を制御する。また、フロック成長用スペース部70における滞留時間は、処理対象物の種類や凝集剤の種類、投入量にもよるが、例えば10〜120秒の範囲内になるように設定し、好ましくは30〜100秒の範囲である。滞留時間が短いとフロックの成長が不十分であり、滞留時間が長いとスペース容積の問題、フロックの破壊が懸念されるため好ましくない。
【0049】
上記仕切壁74の高さは、処理対象物の種類、性状、フロック成長の程度(フロックの出来具合)によって、高さを変更できるように構成されていてもよい。また、仕切壁74が移動可能であって、かつドラムスクリーン51a面を周内面から覆うようにして、移動ライン71の距離を可変に構成してもよい。
【0050】
<実施形態5>
図3Bは、別例の仕切壁75である。仕切璧75はフロック成長用スペース部70である周面部分51cとドラムスクリーン51a部分との境界をドラム中心まで塞ぐようにし、一部のスリット75aから、フロック成長した汚泥2をドラムスクリーン51aのろ過部分へ移動可能にしている。フロック成長用スペース部70の移動ライン71の距離が短い場合でも、これによって、汚泥の滞留時間が長くなり、フロックの成長がし易くなるようにしている。スリット75aのサイズ、形状、個数は、特に限定されないが、形状として、周面に向かって広がる扇状であってもよい。スリット75aのサイズが、可変になるように構成されていてもよい。
【0051】
<実施形態6>
図3Cは、フロック成長用スペース部70である回転ドラム51の周面部分51cに複数の邪魔板76を設けた構成である。この邪魔板76によって、フロックが回転ドラム51の回転によってともまわりすることを防止し、汚泥が衝突することでフロックの成長が促進される。邪魔板76のサイズ、形状、個数は、特に限定されないが、処理対象物の種類や性状に応じて、それらが可変に構成されていることが好ましい。また、図3Cにおいて、仕切壁74が設けられていないが、仕切璧74が設けられていてもよい。
【0052】
<実施形態7>
図4は、回転ドラム51の断面形状の別例を示す図である。回転ドラム51の汚泥投入口14側の周面形状51bが、汚泥投入口14の方向に向かって径小に窄ませた形状である。これによって、汚泥投入口14近傍で成長したフロックを下流に移動させて、新たに投入される汚泥の落下衝撃によってフロックが破壊されることを防止することができる。
【0053】
<実施形態8>
図5は、汚泥投入口14の先端形状141の別例を示す図である。汚泥投入口14の先端形状141が、回転ドラム51のスクリーンが形成されていない周面部分51cに対しスロープ状に傾斜している。これによって、新たに投入される汚泥2の落下速度(落下エネルギー)を低減させることができ、汚泥投入口14近傍で成長したフロックが新たに投入される汚泥の落下衝撃によって破壊されることを防止することができる。上記図4の構成をこの実施形態に組み合わせれば、さらに効果的である。また、図3B,3Cの実施形態のそれぞれにこの実施形態を適用することができる。
【0054】
<他の実施形態>
水流攪拌部13の替わりに凝集混和槽を用いても良く、この場合、急速攪拌作用のみでよいため、従来のものよりもコンパクトな槽を用いることができ、攪拌動力も低減することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 回転ドラム式濃縮システム
2 汚泥
3 凝集剤
11 供給用配管
12 投入用配管
13 水流攪拌部
14 汚泥投入口
50 濃縮装置
51 回転ドラム
51a ドラムスクリーン
52 ケーシング
53 土台フレーム
70 フロック成長用スペース部
71 移動ライン
78 フロック供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を回転ドラムへ供給するための供給ラインと、
前記供給ラインに凝集剤を投入するための投入ラインと、
前記供給ラインの途中に設置され、前記処理対象物に前記凝集剤を分散する攪拌部と、
前記供給ラインから回転ドラムへ、前記凝集剤が分散された前記処理対象物を投入する投入部と、
ろ過処理可能な複数の開口部を有する円筒状の前記回転ドラムと当該回転ドラムを回転させるための駆動部とを有し、前記投入部から投入された前記処理対象物を前記回転ドラムを回転させながら濃縮して濃縮物と水分とに分離する濃縮装置と、
前記濃縮装置で分離された水分を回収するろ液回収部と、
前記濃縮装置で濃縮された濃縮物を回収する濃縮物回収部と、を備え、
前記回転ドラム内部に、前記投入部から投入された前記処理対象物のフロック成長可能なフロック成長用スペース部を形成したことを特徴とする、回転ドラム式濃縮システム。
【請求項2】
前記フロック成長用スペース部が、
前記投入部から投入された前記処理対象物を移動しながら当該処理対象物のフロックを形成させるための移動ラインと、
前記移動ラインから前記回転ドラムの前記開口部が形成されている周面に、フロック形成された前記処理対象物を供給するためのフロック供給部と、を有する請求項1に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項3】
前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物の移動方向を変更する変更点を1つあるいは1つ以上設けてある、請求項2に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項4】
前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物を衝突させるための衝突壁部を1つあるいは1つ以上設けてある、請求項2または3に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項5】
前記濃縮装置は、
前記回転ドラムをその軸周りに回転可能に支持する装置本体フレームと、前記回転ドラムの前記開口部が形成されている内周面に沿って設置され、前記処理対象物が投入された位置から前記回転ドラムの出口側へ搬送可能なスパイラル式搬送部と、を有し、
前記フロック成長用スペース部は、回転可能に前記装置本体フレームあるいは前記回転ドラムに取り付けられている、あるいは、回転しないように前記装置本体フレームに固定されている、請求項1または2に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項6】
前記フロック成長用スペース部が回転可能に取り付けられている場合に、当該フロック成長用スペース部を回転するための回転駆動部と、前記回転ドラムの回転数と同じまたは異なるように前記フロック成長用スペース部の回転を制御する回転制御部と、を有し、
前記フロック成長用スペース部の一方側を前記投入部に対して回転可能に取り付け、かつ前記フロック供給部を当該フロック成長用スペース部のその他方側に設けた、請求項5に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項7】
前記移動ラインが、前記回転ドラムの周面のうち、前記投入部側の前記開口部が形成されていない周面に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項8】
前記フロック供給部が、前記開口部が形成された回転ドラム周面と前記移動ラインを形成する周面との境界に形成された仕切壁で構成されている、請求項7に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項9】
前記仕切壁の一部にスリットが形成されている、請求項8に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項10】
前記移動ラインに、前記投入部から投入された前記処理対象物を衝突させるための衝突壁部を1つあるいは1つ以上設けてある、請求項7〜9のいずれか1項に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項11】
前記回転ドラムを前記処理対象物投入方向に向かって径小に窄ませてある、請求項7〜10のいずれか1項に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項12】
前記投入部が前記回転ドラム周面に対しスロープ状に傾斜してある、請求項7〜11のいずれか1項に記載の回転ドラム式濃縮システム。
【請求項13】
前記フロック成長用スペース部の前記移動ラインの距離が可変に構成されている、請求項2〜12のいずれか1項に記載の回転ドラム式濃縮システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−71043(P2013−71043A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210904(P2011−210904)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】