説明

回転ブレード用の保持装置

【課題】一次保持装置が損傷した場合にブレードの解放(釈放)を防ぐのに役立てるためのフェイルセーフ機構をもたらす二次保持装置を提供する。
【解決手段】ブレード組立体310は、軸線周りに回動可能なハブ312と、翼部分と根元とを有する少なくとも1つのブレード314であって、その根元320が、通常使用時に根元とハブとの半径方向の分離を防止する一次保持装置を用いてハブに結合されているブレードと、根元部分とハブ部分とを有する二次保持装置であって、使用時に、その根元部分が保持空洞内でハブ部分の半径方向内側に置かれる二次保持装置とを備え、根元部分の少なくとも一部は、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するインターロックを介して、保持空洞322内へ進入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転するブレード(動翼)のための保持装置に関する。特に、本発明は、一次保持装置が損傷した場合にブレードの解放(釈放)を防ぐのに役立てるためのフェイルセーフ機構をもたらす二次保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転するブレード、例えば航空機エンジンのプロペラに保持装置を用いることが知られているが、これは、ブレードの取り付けられているハブから、それらのブレードが半径方向へ分離するのを防ぐのに役立てるためである。また、一次保持装置が損傷した場合にブレードとハブとの半径方向の分離を防ぐように作用する二次保持装置を用いることも知られている。
【0003】
そのような二次保持装置を利用する、ある1つの既知のプロペラ組立体が、図1に示されている。このプロペラ組立体10は、ハブ12とブレード14とを備えている。そのブレード14は、翼16と根元18とを有している。ブレード14は、矢印21で示す方向へ推力をもたらすように、軸受(図示せず)上でハブ12と共に軸線19周りに回転するように構成されている。ピッチ制御システムをもたらすよう、ブレードがその縦軸線周りに回動可能となるように軸受24が設けられている。プロペラ組立体10の製造時には、ハブ14の外側表面22にある開口20を通じて根元18がハブ14内へと挿入され、ハブ14と根元18のそれぞれの半径方向対向面26,28同士の間に軸受24が挿入される。軸受24は、ブレード14に求められる回転支持をもたらすと共に、使用中にブレード14とハブ12との半径方向の分離を防ぐように作用もする。このようにして、軸受24は、一次保持装置としての役目を果たすのである。
【0004】
図1に示す実施形態における二次保持装置は、溝路内へと差し込まれた円形ワイヤ32であり、その溝路は、ハブ12と根元18との互いに向かい合った表面における、互いに対応する溝同士から形成されている。軸受損傷の場合には、このワイヤによって、ブレード14とハブ12との半径方向の分離が防止される。
【0005】
二次保持装置としてワイヤ32を用いることは十分なものとはなり得るが、それは正確に据え付けられることに頼っており、この正確な据付けは、熟練したオペレータや過度に多くの時間を必要とするものである。更に、ワイヤ32は、ハブ12とブレード14のいずれの一体部分でもなく、これらの構成部品同士の間の相対的な動きにさらされる。この相対的な動きは、振動や摩耗の問題へとつながる可能性がある。このシステムに伴う更なる困難は、点検をより面倒なものとするワイヤの隠蔽された位置のせいで生じるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既知の先行技術に伴う問題の幾つかを克服しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、軸線周りに回動可能なハブと、翼部分と根元とを有する少なくとも1つのブレードであって、その根元が、通常使用時に根元とハブとの半径方向の分離を防止する一次保持装置を用いてハブに結合されているブレードと、根元部分とハブ部分とを有する二次保持装置であって、使用時に、その根元部分が保持空洞内でハブ部分の半径方向内側に置かれる二次保持装置とを備え、根元部分の少なくとも一部は、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するインターロックを介して、保持空洞内へ進入する、ブレード組立体を提供する。
【0008】
根元の一部を保持空洞内で保持されるように通過させるインターロックをもたらすことによって、保持装置を提供する単純で機械的に強固な手段が可能となる。
【0009】
インターロックは、通常使用時にハブ部分の一部と重なり合う保持開口を備えていてもよい。その開口は実質的に丸いものであってよい。例えば、開口は円形や楕円形であってもよい。開口は、外周縁部の中や上に、1つないし複数の切欠や突起を含んでいてもよい。それぞれの開口と根元部分の切欠や突起は、互いにインターロックをもたらすように対応していてもよい。インターロックは、1つないし複数の突起が通過することのできる通路を含んでいてもよい。通路は、根元部分またはハブ部分の中にあってよい。
【0010】
ブレードは縦軸線を有していてもよく、インターロックは、ブレードが当該インターロックを介して保持空洞内へと通過するのに、おおよそ当該ブレードの縦軸線周りに回動されることを当該ブレードに要求してもよい。
【0011】
通路は、保持開口の外周縁部における少なくとも1つのキー溝を含んでいてもよく、根元部分は、キー溝に対応した突起を含んでいてもよい。複数のキー溝および対応する突起があってもよい。それらのキー溝および突起は、互いに異なるアーチ形の長さで延びていてもよい。3つのキー溝があってもよい。キー溝のアーチ型の長さは、20から125度の間の範囲内にあってよい。
【0012】
通路は、互いに半径方向に隔てられた少なくとも2つの保持開口を含んでいてもよく、根元部分は、互いに半径方向に隔てられた少なくとも2つの突起を含んでいてもよい。
【0013】
互いに半径方向に隔てられた突起同士が、ブレードの縦軸線に対して軸線方向に一列に並べられていてもよい。
【0014】
使用時に突起とそれぞれの保持開口との間の分散された重なり合いをもたらすように、互いに半径方向に隔てられた突起同士が非軸対称となっていてもよい。
【0015】
保持開口は、根元部分のネジ部分に対応したネジ部分を備えていてもよい。
【0016】
通常使用時において、根元部分は保持空洞内に懸架されていてもよい。「懸架され」は、根元部分が、通常使用時には接触しないように保持開口から隔てられていることを意味するものと解してよい。
【0017】
インターロックは、当該ブレード組立体の回転軸線に対して一次保持装置の半径方向内側にあってもよい。インターロックは、一次保持装置の半径方向外側にあってもよい。
【0018】
一次保持構造は、軸受装置である。
【0019】
通常使用時における根元部分と保持開口との隔たりは、2.5mm未満であってよい。その隔たりは、1mmと3mmの値によって限られた範囲内にあってよい。
【0020】
当該ブレード組立体は、一旦、根元部分がインターロックを介して保持空洞内に進入してしまわなければ、一次保持装置を係合させることができないように構成されていてもよい。
【0021】
第2の態様において、本発明は、ブレード組立体を製造する方法であって、そのブレード組立体は、軸線周りに回動可能なハブと、翼部分と根元とを有する少なくとも1つのブレードであって、その根元が、通常使用時に根元とハブとの半径方向の分離を防止する一次保持装置を用いてハブに結合されているブレードと、根元部分とハブ部分とを有する二次保持装置であって、使用時に、その根元部分が保持空洞内でハブ部分の半径方向内側に置かれる二次保持装置とを備え、根元部分の少なくとも一部は、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するインターロックを介して、保持空洞内へ進入するものであり、根元部分をインターロックに対して向ける段階と、通常使用時に根元部分が保持空洞内に在るように、根元部分にインターロックを通過させる段階と、一次保持装置を係合させる段階とを備えた方法を提供する。
【0022】
根元部分にインターロックを通過させることは、ブレードのおおよその縦軸線周りに根元部分を回動させることを含んで成っていてもよい。
【0023】
根元部分を回動させることは、少なくとも1回の完全な回転に通じる連続的な回動を必要としてもよい。
【0024】
次の図面を助けとして、本発明の実施形態を以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】既知の二次保持装置を利用しているプロペラ組立体を示す図。
【図2】本発明が用いられ得る、既知のオープンロータガスタービンエンジンの断面図。
【図3】ブレード組立体の断面図。
【図4】他のブレード組立体の断面図。
【図5】保持開口の平面図。
【図6】他のハブ・根元組立体の斜視図。
【図7】更に他のハブ・根元組立体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2は、主軸線である回転軸線209を有した二軸・二重反転プロペラ・ガスタービンエンジン210を示している。このエンジン210は、コアエンジン211を備えている。そのコアエンジン211は、軸流方向へ直列に、吸気口212、中圧圧縮機214(IPC)、高圧圧縮機215(HPC)、燃焼装置216、高圧タービン217(HPT)、中圧タービン218(IPT)、出力タービン219(FPT)、およびコア排気ノズル220を有している。ナセル221が、コアエンジン211を概して取り囲むと共に、吸気口212およびノズル220、並びにコア排気ダクト222を画成している。エンジン210は、2つの反転式プロペラ(二重反転プロペラ)223,224をも備えている。それらのプロペラ223,224は、出力タービン219に取り付けられ、このタービン219によって駆動される。出力タービン219は、二重反転ブレード列225,226を備えている。
【0027】
ガスタービンエンジン210は、吸気口212へ進入する空気が、IPC214によって加速および圧縮されて、HPC215内へと差し向けられ、そこで更なる圧縮が行われるように、従来のやり方で作動する。HPC215から排気された圧縮空気は、燃焼装置216内へと差し向けられて、そこで燃料と混合され、その混合気が燃焼させられる。その結果として生じる高温の燃焼生成物は、それから通過しつつ膨張し、高圧、低圧および出力の各タービン217,218,219を駆動してから、ノズル220を通じて排気されて、幾らかの推進力をもたらす。高圧、低圧および出力の各タービン217,218,219は、それぞれ、適当な相互連結シャフトによって、高圧、中圧の各圧縮機215,214、およびプロペラ223,224を駆動する。
【0028】
図3は、本発明によるブレード組立体310の断面表現を示しており、これは図2に示すプロペラ223,224の何れか一方に対応している。ブレード組立体310は、ハブ312とブレード314とを含んでいる。
【0029】
ブレード314は、翼部分318と根元320とを含んでいる。これらの翼部分318と根元320とは、ブレード縦軸線に沿って置かれたシャフト321を介して、互いに同軸方向へ直列に連結されている。
【0030】
根元320は、ハブ312の保持空洞322内に置かれている。また根元320は、シャフト321から延びる軸線方向へ直列に、保持フランジ324、本体部分326、およびピッチ制御シャフト328を含んでいる。そのピッチ制御シャフト328は、ピッチ制御アクチュエータ(図示せず)に対して回動可能に連結されている。保持フランジ324の外周面は、この外周面の全体に渡って延びるネジ部分330を含んでいる。
【0031】
ハブ312は、半径方向内側壁332、側壁334、および半径方向外側壁336を含んでいる。その外側壁336は、ハブ312の外側に面した表面をもたらしている。
【0032】
根元320は、一次(primary)保持装置でハブ312に結合されている。当該実施形態において、その一次保持装置は、ハブ312と根元320の2つの(それぞれの)半径方向対向面340,342同士の間に設置された軸受装置344である。この軸受装置344は、ブレード314がその縦軸線周りに回動可能であるように、当該ブレード314に対する支持をもたらすように働く。軸受装置344はまた、エンジンの通常使用中に及ぼされる遠心力の下で、ブレードの根元320とハブ312の2つの構成部品同士の半径方向の分離を防止するように、ハブ312内でブレードの根元320を保持する。
【0033】
ハブの外側壁336は、円形の保持開口338を含んでいる。その保持開口338は、保持フランジ324のネジ付き外周面330に対応したネジ付き外周面を有している。これらの保持開口338と保持フランジ324との間のネジ構成は、インターロックの形態の二次(secondary)保持装置をもたらす。この二次保持装置は、根元320が通路を通じて保持空洞322内へと通過することを、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するやり方で可能とする。それ故、保持フランジ324と保持開口338とは、互いにネジ方式で係合することができる。それは、根元320が、保持空洞322の外側壁336を通してねじ込まれることによって、保持空洞322内へと進入するようなものである。一旦、保持空洞322内に入ると、直接的な半径方向の引き抜きは制限される。それは、ハブのネジ部330における内側表面の寸法と、保持フランジのネジ部における外側表面の寸法との間にもたらされる保持開口の部分的な重なりのせいである。
【0034】
この構成でもって、難なく組み立てることができて、熟練したオペレータを必要とせず、通常使用中には根元320とハブ312との間の如何なる接触も必要としない、単純かつ有効な二次保持装置が提供される。更に、一次装置が設置可能となる前に二次保持装置を設置することが必要である。それ故、二次保持装置の係合を省略することはできないのである。「二次(secondary)」は、他のものがありそうなときに一次(primary)保持装置に対する第二位(second)のものを意味すると解するべきではない、ということが理解されるであろう。「二次(secondary)」は、一次(primary)保持装置の故障後において、単独で、あるいは他の保持装置と併用されるようなものを意味するものと解されるべきである。
【0035】
図4は、代替的なブレード組立体410の実施形態を示している。このブレード組立体410においては、ハブ部分412および根元部分414が、主回転軸線(符号19、図1)に対して軸受装置416の半径方向内側に置かれている。先の実施形態のように、互いに係合するネジ部分同士で、ハブ部分412と根元部分414との間のインターロックがもたらされている。それは、根元部分414と部分的に重なり合う保持開口がハブ内に設けられるようなものである。図で見たときのハブ部分412の下側は、保持空洞418を画成している。通常使用時において、その保持空洞418内に根元部分414が懸架されている。この実施形態において、ハブ部分412および根元部分414の構造は、次のことを除いて同様である。すなわち、ハブ部分のネジ部の保持開口が、ハブの側壁上に設置されたフランジから機械加工されていることと、根元部分414が、根元本体部分420上に設置されたフランジの外側を機械加工したネジ部の形態となっている、ということを除いてである。
【0036】
保持フランジ324と開口338との間の相対的な動きに関連した問題を防止するように、それら2つの構成部品の寸法を、幾らかの隙間をもたらすように作ることができる、ということを当業者は正しく認識するであろう。但し、軸受損傷の直後に当該表面同士が接触するように、それらの表面同士を互いに比較的接近させておき、それにより当該2つの構成部品同士の間の衝撃を最小限にまで減少させることが好ましいであろう。更に言えば、一次保持装置の損傷中に根元部分が保持開口内で動くことを可能とするように、十分な間隔が許容されるのが好ましいかもしれない。それは、検出可能な振動が生じるようなものである。この振動は、その時に損傷の指標として用いられるかもしれない。典型的な最小隙間は、特定の構成に応じて、1〜3mmの範囲内にあるであろう。
【0037】
ネジ山の寸法や数は、部分的には、保持装置に求められる最大保持力によって決まることとなる、ということも正しく認識されるであろう。この最大保持力は今度は、具体的な用途、並びに、ブレード組立体やエンジン(ブレード組立体はこのエンジンの一部である)の構成および運転必要条件によって決まることとなる。それ故、説明した実施形態は多数のネジ山を含んでいるが、これは本質的なものではなく、もっと少ない数のネジ山を採用することのできる幾つかの用途が存在するであろう。更に言えば、根元フランジとハブ開口との外側表面範囲同士の間の重なり合い(即ち、ネジ山の深さ)、並びに、根元部分とハブ部分の材料および寸法が、生じ得る力(損傷の場合に当該構成部品に及ぼされ得る力)に耐えるのに十分である必要がある、ということが正しく認識されるであろう。
【0038】
図5、図6、および図7は、上述したネジ式のインターロックに代えてバイヨネット(差込)式のインターロックを用いた、もう1つの実施形態を示している。
【0039】
図5は、保持開口514のあるハブ510の平面図を示している。その保持開口514は、ハブ510の外側壁512における円形の穴の形態をなしている。保持開口514に保持フランジ520をもたらすよう、この保持開口514は、ハブ510の外側壁512の外周縁部518に、複数の円弧状カットアウト(切抜部)516aからcを含んでいる。所与の実施形態においては、3つのカットアウト516aからcが存在しており、各カットアウトがそれぞれ他の円弧とは異なる所与の角度a,b,cを定めている。
【0040】
図6は、複数のラグ(突片)620a,620b,621a,621bの形態の突起を持つ根元部分614を有した根元610を示している。それらのラグは、上述して更に図6に示すような、ハブ外側壁612のカットアウト616a,616bに対応している。図示の実施形態においては、互いに半径方向に隔てられた2組のラグ620a,621aおよび620b,621bと、互いに半径方向に隔てられた2つの対応する保持フランジ622a,622bとが存在しており、それらの保持フランジ622a,622b同士の間に溝路を形成している。カットアウト616a,616bと、ラグ620a,621aおよび620b,621bとは、ブレードの縦軸線に対して順次上方へ位置するように、軸線方向へ一列に並べられる。
【0041】
カットアウト616a,616bは、インターロック通路を画成する。このインターロック通路は、各突起が保持空洞624へ進入するための経路をもたらす。かくして、使用時には、ラグ620a,621aおよび620b,621bとカットアウト616a,616bとが一列に並べられた状態で、根元部分614を外側壁612内へと手動で誘導する。一旦、正しい深さまで挿入されたら、根元部分614とハブ部分611とは、互いに相対的に回動される。その回動は、上方のラグ621bおよび620bが、上下の保持フランジ622bによって画成された溝路内に置かれると共に、下方のラグ620aおよび621aが、下方の保持フランジ622aの下に置かれるようにしてなされる。このようにして、ラグ620a,620bおよび621a,621bが、ハブ部分611の保持空洞624内に置かれる。一旦、保持空洞624内に入れば、ブレードと根元部分を所望の角度まで回動させることができ、組立ての残り(これは、図示しない一次保持装置の挿入を含み得る)が受け入れられる。ブレードの翼部分は、図6には示されていないが、実際には存在するであろう、ということが正しく認識されることとなる。
【0042】
一般的に、カットアウトの数、位置、および長さは、一次保持装置が損傷した場合にそれらが受けるように設計された特定の荷重や、作動時に必要とされる回動範囲によって左右されることとなる。それ故、図5および図6に示す実施形態においては、互いに異なる寸法の複数のカットアウトが存在している。この構成によって、多くの要因によって決定されるような、力の特定の分布がもたらされるのである。
【0043】
第1の重大な要因は、通常の使用に対してブレードのピッチを調節するのに必要な回動範囲である。これは、典型的には、いわゆるフェザー位置からファイン位置までの間でブレードを動かせるように約90度の範囲となるであろうが、逆推力が必要な場合にはもっと大きな範囲を含んでいてもよい。第2の要因は、一次保持装置が損傷した場合にブレードに作用するであろう遠心力の大きさである。第3の要因は、損傷中にブレードが静止することになるであろう位置である。この位置は、ブレードの形状と質量分布によって大きく左右される。ブレードの形状と質量分布は、遠心回転モーメントと空力荷重を決定し、それ故に当該静止位置を決定するのである。この静止位置に影響し得る他の要因は、ブレードの回動を防ぐストッパなどの異質な特徴かもしれない。ストッパは、ハブ部分や根元部分上の適当な位置や、他の適用可能な位置から延びる、突起や柱の形態であってよい。
【0044】
図5に示す実施形態において、3つのカットアウト516aからcは、保持開口514の周りでおおよそ等距離の間隔を置かれ、それぞれ異なる角度範囲a、b、およびc(a=40度、b=30度、およびc=20度)を有している。様々に異なる範囲を有することによって、ラグやカットアウトが互いに等しい寸法にされている場合よりも、ラグと保持フランジとの間の重なり合いを大きくすることが可能となる。ラグと保持フランジとの間の係合荷重を、求められるように保持開口の外周の周りに分散させることができるのも有利である。図6に示すように、互いに半径方向に隔てられた複数のラグ620a,621aおよび620b,621bを有することによって、更なる係合を達成することができる。
【0045】
係合荷重を保持開口の外周の周りに分散させるのに有利である代替的な構成が、図7に示されている。ここでは、ブレードの縦軸線に対して、互いに軸線方向に隔てられたラグ720,721が、周方向へ一列に並べられてはいない。このようにして、二次保持装置は、損傷中の非対称な遠心荷重に対して備えるように根元部分の外周の周りに分散された係合を有することができるのである。この構成の組立ては、図6に示す組立てについて述べたのと同様である。但し、ラグ720,721とカットアウト716,718とが一列に並べられたときに根元部分714をハブ部分711内へと直接的に挿入することに代えて、一番目のラグを、保持フランジ622同士によって画成された溝路内へと挿入し、この溝路を通じて回動させてから、二番目の軸線方向内側のカットアウト718の組を通じて挿入するのである。
【0046】
ネジ式の実施形態の場合と同様、ラグの寸法は根本的には、一次保持装置の損傷中にそれらのラグが被るであろう力によって左右されることとなる。もっとも、それぞれのハブ部分や根元部分から延びる突起は、それらの根元部分とハブ部分との間で得られる係合面に応じて、おそらく数ミリメートル程度のものとなるであろう。
【0047】
上記の実施形態で説明したブレードは、オープンロータ・ガスタービンエンジン用のプロペラである。これは、例えばチタンから作られた従来の金属ブレードか、或いは複合材料ブレードであってもよく、両者の構造は当該技術において周知である。それぞれの場合において、根元およびハブは、当該技術において周知のチタン、スチール、およびアルミニウムから作ることができる。当業者によって正しく認識されることとなるように、二次保持構造は、適切な場所に機械加工によってネジを形成した状態で根元部分やハブ部分と一体的に形成されていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線周りに回動可能なハブと、
翼部分と根元とを有する少なくとも1つのブレードであって、その根元が、通常使用時に根元とハブとの半径方向の分離を防止する一次保持装置を用いてハブに結合されているブレードと、
根元部分とハブ部分とを有する二次保持装置であって、使用時に、その根元部分が保持空洞内でハブ部分の半径方向内側に置かれる二次保持装置と、
を備え、
根元部分の少なくとも一部は、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するインターロックを介して、保持空洞内へ進入する、ブレード組立体。
【請求項2】
インターロックは、通常使用時にハブ部分の一部と重なり合う保持開口を備えている、請求項1記載のブレード組立体。
【請求項3】
ブレードは縦軸線を有し、インターロックは、ブレードが保持空洞内へと通過するのに、おおよそ当該ブレードの縦軸線周りに回動されることを当該ブレードに要求する、請求項2記載のブレード組立体。
【請求項4】
根元部分は突起を含んでおり、インターロックは、当該突起が通過することのできる通路を含んでいる、請求項3記載のブレード組立体。
【請求項5】
通路は、保持開口の外周縁部における少なくとも1つのキー溝を含んでおり、根元部分は、キー溝に対応した突起を含んでいる、請求項4記載のブレード組立体。
【請求項6】
通路は、互いに半径方向に隔てられた少なくとも2つの保持開口を含んでおり、根元部分は、互いに半径方向に隔てられた少なくとも2つの突起を含んでいる、請求項5記載のブレード組立体。
【請求項7】
使用時に突起とそれぞれの保持開口との間の分散された重なり合いをもたらすように、互いに半径方向に隔てられた突起同士が非軸対称となっている、請求項6記載のブレード組立体。
【請求項8】
互いに半径方向に隔てられた突起同士が、ブレードの縦軸線に対して軸線方向に一列に並べられている、請求項6記載のブレード組立体。
【請求項9】
保持開口は、根元部分のネジ部分に対応したネジ部分を備えている、請求項2から4のいずれか一項に記載のブレード組立体。
【請求項10】
通常使用時において、根元部分は保持空洞内に懸架されている、前記請求項のうちいずれか一項に記載のブレード組立体。
【請求項11】
インターロックは、当該ブレード組立体の回転軸線に対して一次保持装置の半径方向内側にある、前記請求項のうちいずれか一項に記載のブレード組立体。
【請求項12】
インターロックは、一次保持装置の半径方向外側にある、請求項1から10のいずれか一項に記載のブレード組立体。
【請求項13】
一旦、根元部分がインターロックを介して保持空洞内に進入してしまわなければ、一次保持装置を係合させることができないように構成されている、前記請求項のうちいずれか一項に記載のブレード組立体。
【請求項14】
ブレード組立体を製造する方法であって、
そのブレード組立体は、軸線周りに回動可能なハブと、翼部分と根元とを有する少なくとも1つのブレードであって、その根元が、通常使用時に根元とハブとの半径方向の分離を防止する一次保持装置を用いてハブに結合されているブレードと、根元部分とハブ部分とを有する二次保持装置であって、使用時に、その根元部分が保持空洞内でハブ部分の半径方向内側に置かれる二次保持装置とを備え、根元部分の少なくとも一部は、一次保持装置が損傷した場合に根元とハブとの半径方向の分離を防止するインターロックを介して、保持空洞内へ進入するものであり、
根元部分をインターロックに対して向ける段階と、
通常使用時に根元部分が保持空洞内に在るように、根元部分にインターロックを通過させる段階と、
一次保持装置を係合させる段階と、
を備えた方法。
【請求項15】
根元部分にインターロックを通過させることは、ブレードのおおよその縦軸線周りに根元部分を回動させることを含んで成る、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2445(P2013−2445A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−134556(P2012−134556)
【出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(590005438)ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー (21)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY