説明

回転モータ用過回転防止装置

シリンダ(10)、前端壁(11)、圧縮空気導入開口(21)を備えた後端壁(12)、ロータ(13)、ロータ(13)と連動し遠心作用に応答する作動装置(18)、及び枢軸(C)に関連して傾斜可能であり、導入開口(21)を通過する空気流を制御するために開弁位置と閉弁位置との間で移動可能である弁蓋(20)を有する空気圧式回転モータ用過回転防止装置であって、前記枢軸(C)がロータの中心に関するコードに沿ってのび、前記作動装置(18)が、前記弁蓋(20)を閉弁方向に向かう径方向に動かすために前記弁蓋(20)とカム係合するカム面(25)を備えている。前記弁蓋(20)は、突起部(33,34)によって、導入開口(21)の周囲に配置された座面(32)上に支持されている。ワイヤースプリング(26)が、座面(32)に対して弁蓋(20)を保持し、かつ、付勢するように配置されている。前記突起部(33,34)は、弁蓋(20)が開弁位置から閉弁位置へ動かされる時に、弁蓋(20)が中心超え動作を実行するよう配置されており、それにより、ワイヤースプリング(26)の作用の下で、弁蓋(20)の双安定作用が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気導入通路を有するハウジングとロータとを備えた空気圧式回転モータ用の過回転防止装置に関し、該過回転防止装置は、ロータと共に回転し、かつ、遠心作用に応答する作動装置と、前記導入通路を通過する空気流を制御するためにハウジングに支持された弁要素とを有する。前記弁要素は、ロータ回転速度が所定の最大速度レベルを超えた時に、作動装置によって、開弁位置から閉弁位置へ変動することができる。
【背景技術】
【0002】
空気圧式回転モータ用の優れた過回転防止装置の開発に関しては多くの問題がある。過回転防止装置の信頼性は100%である必要があり、言い換えれば、長期間のモータ運転の間に、汚れや腐食等又は他の原因で動作しなくならない必要がある。過回転防止装置は、常に速度調整機を備えた回転モータに取り付けられているため、速度調整機が故障した場合にのみ解放される。このため、速度調整機が正確に動作しなくなり、過回転防止装置が作動しなければならなくなる前に、ある程度の期間があることが望ましい。その期間の間、過回転防止装置は、速度調整機が誤動作し始めた時に過回転を直ぐに防止できる状態で、継続的に単独で動作可能な状態にある必要がある。
【0003】
さらにまた、過回転防止装置は、望ましくは、モータの全体寸法を大きくしないコンパクトで簡単な設計であるべきである。過回転防止装置は、例えば、モータハウジング上への衝撃や他の外側からの影響により、意図せずに動作しないようにするべきである。好ましくは、過回転防止装置は、動作時に自己破壊せずに、リセットして再使用可能であるべきである。過回転防止装置が、破壊しない解放作用を備えていれば、工場から出荷する前に、起動して作動速度レベルのチェックを行い、そして、リセットすることができる。様々な部品の製造公差により、組み立て後の装置の作動速度レベルのバラツキが必然的に生じる。出荷前に非破壊機能試験を行うことができるようにすることによって、許容公差外の作用速度を持つ装置を除外して安全性を高めることが可能になる。
【0004】
米国特許第4,265,604号には、過回転防止装置を備えた空気圧式動力工具が開示されている。この過回転防止装置は、モータロータと連動するピン型作動手段と、前記作動手段によって押されて、開弁位置から閉弁位置へ傾かされるように配置された弁要素とを備えている。この装置には、少なくとも一つの深刻な欠点がある。即ち、この装置では、作動ピンが、非常に高速で弁要素を押すため、弁要素がその動作を達成する前に弁要素のエッジを破壊してしまう可能性が高い。弁要素が、その閉弁位置に向かうのに十分な強さで押されると、作動ピンによって与えられる衝撃が、弁要素を座面に対して非常に乱暴にたたきつけ、弁要素を破壊するか、又は、その開弁位置まで跳ね返らせてしまうという危険がある。この問題は、作動ピンが弁要素を、非常に高速に、即ち、作動手段の周速度で、接線方向に押すことによって生じる。この装置は、確実に、出荷前に、その機能に関する試験を行い、その後、完全な状態にリセットすることはできない。
【0005】
米国特許第5,297,573号には、過回転防止装置を備えた空気圧式動力工具が開示されており、その過回転防止装置の作動手段は、その外周の一部分によって作動ロッドに係合するように配置された回転リング型ディスクを備え、作動手段の回転運動が、カム作用を介して作動ロッドに伝達されるようにされている。これにより、作動ロッドは、過回転時に作動手段によって乱暴に押されることはなく、非常に優しく押される。しかし、この公知の装置は、かなり複雑な構造で、かつ、大きく、さらに、非常に特殊なモータハウジングを必要とする。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,265,604号
【特許文献2】米国特許第5,297,573号
【発明の開示】
【0007】
本発明の主目的は、設計上簡単な構造で、かつ、小さいだけでなく、解放時に破壊されることなく、かつ、出荷前に、高い信頼性を維持したまま機能試験を行い、リセットすることが可能な作動手段及び弁要素構造を有する空気圧式モータ用の過回転防止装置を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図示された過回転防止装置は、空気圧式ベーンモータに適用される。前記ベーンモータは、シリンダ10、前端壁11、後端壁12、端壁11及び12に回転可能にジャーナル軸受けされたロータ13、及び後端壁12に接続された圧縮空気導入管14を備えている。導入管14は、空気導入通路15を形成し、その後端部に供給開口16を備えている。開口16は、スピンドル19を介してロータ13に連結された従来のボール駆動式速度調整機17によって制御される。速度調整機17の細部については説明しないが、速度調整機17は、供給開口16を介してモータへ供給される圧縮空気を制御することによって、負荷が変わった時にモータの動きを所定の速度レベルに維持することを目的とするものである。
【0010】
過回転防止装置は、作動装置18を有する。作動装置18は、ロータ13に連結され、ロータ13と連動する速度調整機のスピンドル19上に支持されている。また、過回転防止装置は可動蓋部材20を備えている。この可動蓋部材20は、モータの後端壁12上に支持された弁要素を形成する。蓋部材20は、モータの回転速度が、速度調整機17によって通常与えられる所定の回転速度レベルを超えた時に作動装置18によって、開弁位置から閉弁位置に変動するように配置されている。蓋部材20は、その閉弁位置において、後端壁12の導入開口21を圧縮空気が通過することを防止する。
【0011】
作動装置18は、速度調整機19上に支持され、円板22を備えている。円板22には、スピンドル19が貫通する径方向孔23が設けられている。この孔23には、コイルスプリング24が取り付けられている。コイルスプリング24は、円板22をスピンドル19に対して通常の同心位置に付勢する。円板22の重心は、円板22の幾何学的中心からオフセットされているので、円板22の幾何学的中心は、高速回転時に、円板22の同心位置から離れようとする。特定の回転速度レベルの時に、円板22の遠心作用がスプリング24の付勢力を上回り、それにより、円板22は径方向に動く。円板22の外周はカム面25を形成しており、円板22が、その同心位置から離れた時に、カム面25が蓋部材20に接触し、蓋部材20を径方向に動かし、蓋部材20に閉弁動作を引き起こさせる。
【0012】
蓋部材20は枢軸Cを中心に傾斜角度を変えることができる。枢軸Cは、ロータ13の回転軸に対するコード(a chord)を形成する。蓋部材20の傾斜動作は、実質的に真っ直ぐなワイヤースプリング26によって維持される。ワイヤースプリング26の両端は、後端壁12の溝29,30で支えられ、二つのネジ27,28によって後端壁12に固定されている。後端壁12には、導入開口21を囲む平らな座面32が形成されている。蓋部材20は、その閉弁位置において、導入開口21を覆い、座面32と係合するよう配置されている。
【0013】
蓋部材20の両端部には突起部33,34が形成されており、これら突起部33,34により、蓋部材20の開弁位置及び閉弁位置が決められる(図3参照)。蓋部材20の開弁位置では、突起部33,34は、ワイヤースプリング26を蓋部材20の開弁方向に作用させる。閉弁方向に動いた時に、蓋部材20は中心越え動作(a over-centre movement)を行い、この中心越え動作において、突起部33,34は、ワイヤースプリング26の作用に抗して蓋部材20を持ち上げる。突起部33,34の中心上部を通過すると、スプリング26は蓋部材20を閉弁方向に動かすように作用する。突起部33,34により達成される前記中心越え動作によって、蓋部材20は双安定作用を得、通常のモータ動作の間、蓋部材20はその開弁位置に安全に保持され、作動装置18が作用した時に、蓋部材20はその閉弁位置に間違いなく動かされる。作動時に、蓋部材20は、導入開口21を通過する空気流における圧力降下によっても、その閉弁位置への動きを強いられるが、スプリング及び突起部の位置により、蓋部材20は、モータへの圧縮空気の供給が中断し、蓋部材20上に圧力降下が作用しなくなった後でも、その閉弁位置に維持される。
【0014】
本発明による過回転防止弁は、弁蓋部材20が径方向に移動可能であり、作動装置18が、比較的緩やかな力で、蓋部材20と係合し、かつ、蓋部材20を動かすためのカム面25を備えているという利点を有する。これにより、蓋部材20は、装置が作動している時に、不利な衝撃力にさらされることがなく、かつ、正確な動きと信頼性を持って、確実にリセットでき、かつ、再使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る過回転防止装置の斜視図である。
【図2a】図1に示した装置の長手方向断面図であり、装置が標準開放位置(normal open position)にある状態を示している。
【図2b】図2aと同じ断面図であり、装置が作動しているが、まだ閉鎖位置(closed position)にある状態を示している。
【図2c】図2aと同じ断面図であり、装置が閉鎖位置(closed position)にある状態を示している。
【図3】図1及び図2に示した装置の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(10)、圧縮空気導入開口(21)及びロータ(13)を備えた空気圧式回転モータ用の過回転防止装置であって、
ロータ(13)と共に回転し、遠心作用に応答する作動装置(18)と、
導入開口(21)を通過する空気流を制御するよう配置された弁要素(20)と
を備え、
ロータの回転速度が所定の最大速度レベルを超えた時に、開弁位置から閉弁位置への弁要素(20)の動作を引き起こすために、作動装置(18)に係合されるよう前記弁要素(20)が配置され、
前記弁要素(20)が、開弁位置と閉弁位置との間で枢軸(C)を中心に傾斜可能な蓋部材によって形成され、
前記枢軸(C)が、実質的に、ロータ(13)の中心に関するコードに沿って伸び、
作動装置(18)に、前記枢軸(C)を中心に前記蓋部材(20)を傾斜させるために前記蓋部材(20)にカム係合するカム面(25)が形成され、
前記導入開口(21)が、蓋部材(20)の閉弁位置において、蓋部材(20)が密閉係合するための平坦な座面(32)で囲まれ、
前記蓋部材(20)に、前記座面(32)上に載る少なくとも一つの突起部(33,34)が形成され、
開弁位置と閉弁位置との間の変動時に、蓋部材(20)が、一つ又は複数の突起部(33,34)による双安定な中心越え動作を実行するように、前記蓋部材(20)を前記座面(32)に向けて付勢し保持するようスプリング(26)が設けられている
ことを特徴とする空気圧式回転モータ用過回転防止装置。
【請求項2】
モータが、前端壁(11)と後端壁(12)とを備え、
前記蓋部材(20)及び圧縮空気導入開口(21)が後端壁(12)に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の過回転防止装置。
【請求項3】
前記スプリング(26)が、実質的に真っ直ぐなワイヤースプリングから成り、その両端が後端壁(12)に固定され、
該スプリング(26)が蓋部材(20)を傾斜可能に支持している
ことを特徴とする請求項2に記載の過回転防止装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−535638(P2007−535638A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510661(P2007−510661)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000632
【国際公開番号】WO2005/105370
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(502212604)アトラス・コプコ・ツールス・アクチボラグ (48)