説明

回転ロータ

【課題】ロータの長手方向に螺旋状部と非螺旋状部とを形成した場合に、清掃体が溝から抜けることを防止することができる回転ロータを提供する。
【解決手段】回転ロータ10は、外周面の長手方向に1条または複数条の断面略Ω状で鍔部3を有する溝部2が形成されてあるとともに、溝部2は螺旋状部と非螺旋状部が形成されたロータ1と、一端が溝部2に装着される清掃体6とを有し、清掃体6を挿入した状態で、非螺旋状部の溝部2に形成された鍔部3の一方をかしめることによって、この鍔部3を部分的に溝部2の中心方向に突出させて抜け止め部7を形成し、開口部分の幅をY0からY1に狭めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃除機用床ノズルで使用される回転ロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転ロータとしては、ロータの全長が200mm前後のものが使用されており、溝部と、この溝部に装着されたブラシ用部材をロータの外周に沿って360度を超えて捩って螺旋状に形成したものがある(特許文献1)。さらに、実験値として、ロータの全長が360度を超えて捩った辺りから溝部の幅が狭くなる傾向が見られる。
また、同様の回転ロータとして、回転ロータを構成するロータにその外周部に開口する一条ないし複数条のブレード取付用の溝を長手方向の中心軸線にそって真直にして設けている金属製ロータの溝に対し、ブレードの一端をはめ合せて取付けるとともに、開口からブレードの突片部を外方へ放射状に突出させてブレードを組付けたものを、ロータをその長手方向の中心軸線の周りに捻りを加えてロータとともにブレードを−緒に螺旋状にしたものがある(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−254978号公報
【特許文献2】特開平6−327593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2の回転ロータは、ブラシ用部材又はブレードが溝から抜け出ないように、開口部を狭くした蟻溝状にしているが、360度以上捻ると、蟻溝状の開口部が狭くなるので、ロータを捻る前に、捻り角度に対応させて開口部の間隔を予め設定した寸法にするように成形する必要があった。したがって、ロータの長手方向に螺旋状に捻る部分と、捻らない部分を形成したい場合には、捻らない部分の開口部の間隔が広くなりすぎてブラシ用部材又はブレードがロータから抜けてしまうため、対策が必要とされていた。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、ロータの長手方向に螺旋状部と非螺旋状部とを形成した場合に、清掃体が溝から抜けることを防止することができる回転ロータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、掃除機用床ノズルの回転ロータの発明であって、掃除機用床ノズルに回転自在に設けられ外周面の長手方向に1条または複数条の断面略Ω状で鍔部を有する溝部が形成されてあるとともに、前記溝部は螺旋状部と非螺旋状部が形成されたロータと、一端が前記溝部に装着される清掃体とを有する回転ロータにおいて、前記鍔部に外力を加えて塑性変形させて、部分的に前記鍔部を前記溝部の中心方向に突出させた抜け止め部が形成されていることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明においては、鍔部に外力を加えて塑性変形させて、部分的に鍔部を溝部の中心方向に突出させた抜け止め部が形成されているので、溝部に装着された清掃体が溝部から抜けるのを防止することができ、且つロータの長手方向に螺旋状部と非螺旋状部とを形成することができる。また、抜け止めのために新たな部材を設ける必要がないので、部品点数を増やすことなく、コスト安に回転ロータを製造することができる。さらに、螺旋状部の捻り角度を360度以上に設定した場合でも非螺旋状部の溝から清掃体が抜けるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、本発明の回転ロータを構成するロータの正面図であり、図1(b)は側面図である。これらの図に示すようにロータ1は、その長手方向に4条の溝部2が形成されており、この溝部2は、断面略Ω状の鍔部3を有し、螺旋状部4と非螺旋状部5とが形成されている。したがって、溝部2の断面は、いちょう型をなしており、開口部分が内部よりも狭くなっている。このロータ1はアルミニウム等の金属で直線状に押出し成形されるか、或いは、緩い角度で捩り押出し成形された後、長手方向の略中央部を固定(チャッキング)した状態で、両端部を把持(チャッキング)して同方向に捩りを加えることで長手方向の略中央部を境に溝部2が互いに逆方向に捩られた状態に形成される。この時、螺旋状に捩られた部分を螺旋状部4、チャッキングした部分を非螺旋状部5と称する。尚、この図において溝部2は長手方向に4条形成されているが、これに限定されるものではなく、1条乃至複数条の溝部2を有するものであれば、本発明を適用することができる。また、螺旋状部4の捻り角度は適宜、自由に設定することができる。図1(a)においては、非螺旋状部5は直線状であるが、上記したように、緩い角度で捩り押出し成形されたロータを使用した場合には、非螺旋状部5は緩やかなカーブを描くことになる。
【0009】
図2は、本発明の回転ロータを構成する清掃体の一例を示す斜視図である。この清掃体6は、基部6bとこの基部6bに合成樹脂で作製された繊維をブラシ状に取り付けたブラシ片6aとで構成してある。基部6bは、長方形状の断面となるように成形されており、溝部2に嵌め込むことができる。なお、基部6bの形状は、本実施例の形状に限定されるものではなく、ロータ1の溝部2の開口幅より大きい幅を有した形状のものであればいかなる形状であっても構わない。
【0010】
図3は、本発明の回転ロータを構成する清掃体の他例を示す斜視図である。この清掃体16は、エラストマー等の軟質の合成樹脂にて押出し成形、或いは、射出成形にて、基部16bと、平板状に形成されたブレード片16aが一体に形成されている。
【0011】
図4は、本発明の回転ロータを示す正面図であり、図5(a)は、図4におけるA−A断面図、図5(b)は図4におけるB−B断面図である。これらの図に示すように、回転ロータ10は、図1で示したロータ1の溝部2に、図2又は図3で示した清掃体6、16を挿入した状態で、非螺旋状部5の溝部2に形成された鍔部3の一方をかしめることによって、この鍔部3を部分的に溝部2の中心方向に突出させて抜け止め部7を形成し、開口部分の幅をY0からY1に狭めている。これによって、溝部2から清掃体6又は16が抜けるのを防止することができるのである。図5(c)は、回転ロータ10の回転時の状態を示した、図4におけるA−A断面図である。回転ロータ10が矢印の方向に回転すると清掃体6のブラシ片6aが破線で表記した状態に撓む。この時、の基部6bがロータ10の外周方向に飛び出そうとする力が働くが、抜け止め部7と向かい合う鍔部3との間隔、即ち開口幅が基部6bの幅よりも小さくなっているので、清掃体6のブラシ片6aの側部が、回転方向の後側に設けられた抜け止め部7の先端に当たって抜け止めがなされる。尚、上記説明では、非螺旋状部5に抜け止め部7を形成する構成としているが、螺旋状部4及び非螺旋状部5に抜け止め部7を形成する構成としてもよい。
【0012】
図5(c)で回転ロータ10の回転時の状態を断面で説明したが、図6は、抜け止め部7が逆、即ち回転方向の前側に設けられた場合を示している。回転ロータ10が矢印の方向に回転すると清掃体6のブラシ片6aが破線で表記した状態に撓む。この時、回転方向前側の基部6bがロータ10の外周方向に飛び出そうとする力が働くが、抜け止め部7と向かい合う鍔部3との間隔、即ち開口幅が基部6bの幅よりも小さくなっているので、清掃体6の基部6bが、この抜け止め部7の内側に当たって抜け止めがなされる。このように、抜け止め部7は、回転ロータ10の回転方向に対して、前側、後側どちら側に設けても抜け止め効果を発揮するものである。
【0013】
また、回転ロータ10の製造方法としては、溝部2が真っ直ぐに形成された状態で、ロータ1に清掃体6又は16を挿入した後、中央の非螺旋状部5を固定した状態で、両端部分を捻って永久変形させる方法と、予め、螺旋状部4と非螺旋状部5とが形成されているロータ1の一方の端部の溝部2から清掃体6又は16を挿入して、回転ロータ10を作成する製造方法のどちらも採用することができる。
【0014】
図7は、他の実施例のロータ1の抜け止め部7の形成位置を示す正面図であり、最も効果的な抜け止め効果が得られる一例である。ロータ1の長手方向中央部の非螺旋状部5の中心に1箇所、この非螺旋状部5の両端即ち、非螺旋状部5と螺旋状部4の境目付近に各1箇所、計3箇所の抜け止め部7を設けた例である。更に、中央部の抜け止め部7と、両端の抜け止め部7は夫々逆、即ち、中央部の抜け止め部7が回転方向前側なら、両端の抜け止め部7は回転方向後側という配置になるように設けている。尚、抜け止め部7の設置位置は、使用状態、負荷、回転数等を考慮して適宜選択すればよい。
【0015】
尚、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の実施形態をとることができることは言うまでもない。例えば、上記説明では、鍔部3をかしめることによって、抜け止め部7を形成しているが、抜け止め部7を形成する方法は、これに限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。即ち、鍔部3に外力を加えて塑性変形させる方法であれば、本発明に含まれるものである。また、かしめ以外にも溝部2に別ピースを嵌めて溝部2の幅を狭くすることによって、抜け止め部を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の回転ロータは、掃除機用床ノズルに組み込まれて掃除機に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を構成するロータの正面図と側面図。
【図2】本発明を構成する清掃体の斜視図。
【図3】本発明を構成する清掃体の斜視図。
【図4】本発明の回転ロータを示す正面図。
【図5】図4のA−A断面図、B−B断面図及び、回転ロータ回転時のA−A断面図。
【図6】図4において抜け止め部を回転方向前側に設けた場合の断面図。
【図7】他の実施例のロータの抜け止め部の形成位置を示す正面図。
【符号の説明】
【0018】
1 ロータ
2 溝部
3 鍔部
4 螺旋状部
5 非螺旋状部
6、16 清掃体
6a ブラシ片
6b、16b 基部
7 抜け止め部
10 回転ロータ
16a ブレード片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃除機用床ノズルに回転自在に設けられ外周面の長手方向に1条または複数条の断面略Ω状で鍔部を有する溝部が形成されてあるとともに、前記溝部は螺旋状部と非螺旋状部が形成されたロータと、一端が前記溝部に装着される清掃体とを有する回転ロータにおいて、前記鍔部に外力を加えて塑性変形させて、部分的に前記鍔部を前記溝部の中心方向に突出させた抜け止め部が形成されていることを特徴とする掃除機用床ノズルの回転ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−89866(P2009−89866A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262772(P2007−262772)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】