説明

回転体およびこの回転体を保護するガード

【課題】ブレードの先端部に発生する翼端渦等の渦流れを有効に利用して、流体の回り込み性に優れた回転体を提供する。
【解決手段】回転体10の各ブレード30は、回転方向後側となる後縁部32の根元部分を、ブレード30の先端部36へ指向するよう形成した後縁根元部32aと、翼弦方向の形状が、回転方向前側から後側に向かうにつれて、ハブ20から離間するよう傾斜形成されると共に、厚み方向の形状が、流体の送出面から吸込面に向かうにつれてハブ20から離間するよう曲線的に傾斜形成された先端部36とを有している。回転時に、各ブレード30における回転方向後側に発生する渦流と、先端部36に発生する翼端渦と、先端部36の吸込面に発生する前縁渦とを集約的に合成して合併渦を形成することで、送出した流体を旋回流と合併渦との2重渦流れとするよう構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扇風機、送風機、攪拌機、ポンプ等の各種装置に組み込まれ、回転させることで、流体を回転軸線に沿って送出し得る回転体およびこの回転体を保護するガードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
扇風機等の各種装置に組み込まれ、モータやエンジン等の駆動手段によって回転させることで、回転軸線に沿って流体を送出する手段として、プロペラファンや羽根車などと呼ばれる回転体が使用されている。このような回転体は、比較的大きな流体送出量を要して、かつ送出圧力として低圧用途の装置に採用され、扇風機の他にも、換気扇、軸流送風機、空気攪拌機、車両等のラジエターおよび冷却塔等に配設され、空気等の気体を所定方向へ送出したり、気体を対象物に吹きかけることで、攪拌や冷却等の所定の仕事をするよう構成されている。また、回転体で送出する対象物としては、空気等の気体に限らず、水等の液体も含み、これら液体を移送する軸流ポンプにも採用されている。
【0003】
図17または図18に例示するように、扇風機100に一般的に使用される回転体102は、モータ(駆動手段)Mに接続される円筒形のハブ104と、このハブ104から半径方向に延出する複数のうちわ状ブレード106とから基本的に構成され、各ブレード106が回転面(回転体102を回転した際に、ブレード106の描く軌跡面)に対して、回転体102における回転方向前側から後側に向かうにつれて、吸込面(扇風機100の後側)から送出面(扇風機100の前側)へ傾けて(この角度のことをピッチ角θと云う)配設されている。すなわち、前記モータMを駆動して前記回転体102の回転させると、各ブレード106に風(相対風)が当たり、このブレード106の吸込面では圧力が下がり、その反対側の送出面では圧力が高くなる。この結果、前記ブレード106の送出面と吸込面との間に圧力差が生ずると、ブレード106の回りに空気の循環流が生じると共に、ブレード106が吸込面側(圧力の低い方)に押され(この力を推力と云う)、その反作用で送出面側から空気が回転軸線に沿って送出されることになる。そして、前記扇風機100に用いられる回転体102では、低い回転数であっても空気の送出量を稼ぐため、各ブレード106の表面積が大きくなるよううちわ状に形成されると共に、回転体102を支える支持台108等をある程度重くすることで、回転体102にかかる推力を打ち消している。
【0004】
一方、同様に回転体を備えるヘリコプタ等の航空機の翼においては、この翼に揚力(推力)を効率よく発生させることを主眼において翼(ブレード)の形状が設定されている。従って、揚力が発生している翼では、前述した扇風機100における回転体102のブレード106と同様に、その上面(吸込面)の圧力は低くなり、下面(送出面)の圧力は高くなっている。すなわち、空気等の流体は圧力の高い所から低い所へ流れる性質があることから、前記翼における回転方向の後側では下面から上面へ巻き込むような空気の流れが生じると共に、揚力の反作用として反対方向(下側)に空気の流れ(ダウンウォッシュ)が作り出されている。このように、扇風機100において回転体102を回転させることで送風する仕組みは、航空機の翼に揚力が生じて、ダウンウォッシュが発生する仕組みと基本的に略同一である。
【0005】
ところで、前述したブレード106の断面形状の如く平板状であっても、回転面に対して所定のピッチ角θを設けた状態でハブ104に配設することで、空気流が回転軸線に沿って発生するものの、この送出面では空気の流れがせき止められて正圧になる一方、吸込面では空気の流れが前端部分で剥離してしまうため充分に負圧とすることができず、全体として空気送出量が低減してしまう難点がある。そこで、扇風機に使用する回転体として、航空機の翼の設計に用いられている翼理論を応用することで、空力特性を考慮したものが提案されている(特許文献1参照)。図19に示すように、特許文献1のプロペラファン110では、羽根112として前縁部から翼弦長の約3割の位置に向かって次第に肉厚が厚くなり、その後後縁部に向かって次第に肉厚が薄くなる、所謂エアロフォイル形状(翼形状)とすることで、空力特性の向上が図られている。
【特許文献1】特開2000−220598号公報
【0006】
また前記翼の翼端部(先端部)は、上面(吸込面)と下面(送出面)との状態が近在している部分であるので、翼端渦と呼ばれる強い渦が形成される。例えば、航空機が通過した後に残留した翼端渦は、ウェイクタービュランスとして後続機に重大な悪影響を与える。しかも航空機において、翼端渦の発生は、揚力の損失に繋がるから、翼端にウイングレットを設ける等の措置を講じることで、翼端渦の発生を抑制または回避するよう構成される。同様に、扇風機においても、回転体のブレードに生じた翼端渦は推力の損失に繋がり、ひいてはその反作用として送出される空気量が低減してしまうから、翼端渦の抑制が図られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の扇風機では、回転体から送出される空気流について、翼端渦が生じ難くなるよう設定されているので、空気流が障害物の後に回り込む、所謂回り込み性が低い点が指摘される。すなわち、送出される空気流の回り込み性が低いため、障害物が多い場所では空気の送出量を多くする必要があり、消費エネルギーの増加に繋がってしまう難点がある。また、扇風機の回転体として、航空機の翼理論をそのまま応用しても、翼は揚力の発生を主眼において形成され、翼端渦等の渦流の発生を抑制するよう形成されているから、送出される空気流の回り込み性を向上させることはできない。
【0008】
しかも前記扇風機100において、回転体102は鋼線を網状等に組合わせたガード114を配設することで、その回転領域を保護するようになっている(図18参照)。このガード114は、外形がなるべく大きくならないように回転体102のブレード106に近接して配置されている。従って、このブレード106の先端部に生じた翼端渦が、ガード114に阻害される、所謂地面効果の影響を受けるから、翼端渦が壊されたり、または得られる翼端渦が弱くなって、送出される空気流の回り込み性の向上が阻まれてしまう。
【0009】
すなわちこの発明は、従来の技術に係る回転体およびこの回転体を保護するガードに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、各ブレードの先端部に発生する翼端渦等の渦流れを有効に利用することで、流体の回り込み性を向上し得る回転体およびこの回転体を保護するガードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る回転体は、
ハブと、このハブの周面から半径方向に延出すると共に、該ハブの周方向に所定間隔で配設した略矩形状のブレードとからなり、前記ハブを駆動手段により周方向へ回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流として送出し得る回転体において、
前記各ブレードは、
回転方向の後側となる後縁部の根元部分を、ブレードの先端部へ指向するよう形成した後縁根元部と、
翼弦方向の形状が、回転方向の前側から後側に向かうにつれて、前記ハブから離間するよう傾斜形成されると共に、厚み方向の形状が、流体の送出面から吸込面に向かうにつれてハブから離間するよう曲線的に傾斜形成された先端部とを有し、
その回転時に、各ブレードにおける回転方向の後側に発生する渦流と、先端部に発生する翼端渦と、先端部の吸込面における回転方向の前側に発生する前縁渦とを集約的に合成して合併渦を形成することで、送出した流体を旋回流と合併渦との2重渦流れとするよう構成したことを特徴とする。
【0011】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の別の発明に係る回転体は、
ハブと、このハブの周面から半径方向に延出すると共に、該ハブの周方向に所定間隔で配設したブレードとからなり、前記ハブを駆動手段により回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流として送出し得る回転体において、
前記各ブレードを、回転方向の前側から後側へ向かうにつれて、前記ハブから離間する斜辺を有する略三角形状に形成し、
その回転時に送出した流体を、各ブレードの回転方向の前側に発生する前縁渦と、旋回流との2重渦流れとするよう構成したことを特徴とする。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の更に別の発明に係るガードは、
請求項1または請求項2に記載した回転体の回転に伴って送出される流体の通過を許容すると共に、該回転体の回転領域を保護するガードであって、
各ブレードの先端部における合併渦または前縁渦の顕著な領域では、この合併渦または前縁渦に干渉しない距離だけ該ブレードから離間するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1に係る回転体によれば、ブレードの先端部へ指向する後縁根元部を形成することで、この後縁根元部から渦流を先端部へ向けて送出させることができる。また、先端部における翼弦方向の形状を、回転方向の前側から後側に向かうにつれて、ハブから離間するよう傾斜形成することで、先端部の吸込面の負圧が進行して、吸込面と送出面との圧力差が大きくなることから、翼端渦を強くすることができ、かつ先端部の吸込面における回転方向前側から強い前縁渦が得られる。更に、先端部における厚み方向の形状を、流体の送出面から吸込面に向かうにつれてハブから離間するよう曲線的に傾斜形成することで、より翼端渦を強くすることができる。そして回転時に、各ブレードにおける回転方向の後側に発生する渦流と、先端部に発生する翼端渦と、先端部の吸込面における回転方向の前側に発生する前縁渦とを集約的に合成して合併渦を形成することで、送出した流体を旋回流と合併渦との2重渦流れとするよう構成したから、送出される流体の指向性および回り込み性を向上することができる。
【0014】
また、本願の請求項2に係る回転体によれば、その回転時に送出した流体を、各ブレードの回転方向の前側に発生する前縁渦と、旋回流との2重渦流れとするよう構成したから、送出される流体の指向性および回り込み性を向上することができる。
【0015】
更に、請求項3に係る回転体によれば、各ブレードの断面形状を、回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴状に形成することで、ブレードの空力特性を高め、空気送出量を増大させることができる。請求項4に係る回転体によれば、各ブレードについて、その断面形状が回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴形状とすると共に、その後縁部に亘って送出面側へ向けて延出するフラップ部を形成することで、ブレードの空力特性をより高め、送出空気量を増大させることができる。請求項5に係る発明によれば、各ブレードにおける回転方向の前側となる前縁部の根元部分に、先端部に指向して張出し形成されたストレイク部を備えているから、推力が生じ難い根元部分であっても前縁渦を生じさせることで、送出面と吸込面との間の圧力差を大きくし得るので、送出空気量を増大し得ると共に、前縁渦を翼端渦と合併させて、これらの合併渦と旋回流との2重渦流れを好適に創出し得る。請求項6に係る発明によれば、各ブレードにおける吸込面および送出面に、この吸込面および送出面の中途からハブに向かうにつれて張出したフィレット部を夫々備えているから、回転に際してブレードの根元部分における乱流の発生を抑制すると共に、空気の流れを円滑にすることができる。
【0016】
請求項7に係る発明によれば、各ブレードの吸込面に、回転方向の前側から後側に向かうにつれてハブから離間するよう傾斜配置した複数のボルテックスジェネレータを備えているから、後縁部から発生する渦流とボルテックスジェネレータにより形成された渦流とを合併させて強い渦流を形成することができる。請求項8に係る発明によれば、各ブレードに、吸込面に開口する複数の吹出し孔と、中空のハブにおいて開口する吸込み孔とを備える空洞部を内部画成し、その回転時に吸込み孔から取込んだ流体について空洞部を介して吹出し孔から放出するよう構成することで、ブレードにおける剥離が生じ易い後縁部近傍に沿って空気流を積極的に作り出せるから、高推力が得られて、この反作用として送出される空気量を向上させることができる。また、空気流により失速を抑制できるから、迎え角を大きく設定し得るので、送出面と吸込面との圧力差が大きくなり、合併渦または前縁渦を増強し得る。請求項9に係る発明によれば、ブレードにおける先端部の迎え角は、本体部の迎え角より大きく設定することで、先端部における吸込面に生じる前縁渦を強くすることができ、前縁渦による推力向上作用を利用して空気送出量の増加も望める。
【0017】
更にまた、本願の請求項10に係るガードによれば、合併渦または前縁渦に干渉しない距離だけブレードから離間するよう構成することで、合併渦または前縁渦を増強するようにした回転体から送出される2重渦流れの形成をガードが阻害せず、送出される2重渦流れによる有用な効果を享受し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る回転体およびこの回転体を保護するガードにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、図17〜図19に示した扇風機の構成要素と同一の要素については、同一の符号を使用して詳細な説明は省略する。
【0019】
図1に概念的に示すように、扇風機等の各種装置に組み込まれるプロペラファンの如き回転体10を回転させることで、航空機の翼の如く、吸込面側(図中右側)に向けて回転体10のブレード30を押す力(ここでは推力と云い、航空機の翼にかかる揚力と同義)が働いている場合、この反作用として送出面側(図中左側)へ流体が渦巻きながら流れる旋回流Dが生じている。また、回転により推力が発生しているブレード30では、その吸込面の圧力は低くなり、送出面の圧力は高くなっている。すなわち、空気等の流体は圧力の高い所から低い所へ流れる性質があることから、前記ブレード30における回転方向後側では正圧面から負圧面へ巻き込むような空気の流れ(渦流V)が生じ、特にブレード30の先端部36では、吸込面と送出面との状態が近在している部分であるので、翼端渦Yと呼ばれる強い渦が形成される。このように、前記回転体10が回転した際に、この回転体10の送出面側には、概念的に螺旋状に旋回している旋回流Dを軸として翼端渦Yが渦巻くような2重渦流れ(ダブルボルテックス)が多少なりとも形成される。
【0020】
そこで発明者は、このような回転体について、航空機の翼理論を応用してブレードの高推力化を図ることで、その反作用として送出される流体の送出量を向上し得ると共に、ブレードの先端部に発生する翼端渦を増強し、かつ後縁部(回転方向後側の縁部)に発生する渦流と翼端渦とを合併させた合併渦を形成し、従来では抑制の対象となっていた翼端渦等を積極的に利用することで、ダブルボルテックスを好適に作り出して、送出される流体の回り込み性を向上させ得ることを知見したものである。ここで、前記合併渦とは、ブレードにおける回転方向の後側に発生する渦流と、先端部に発生する翼端渦と、後述する先端部をデルタ形状としたブレードの吸込面において、回転方向の前側に発生する前縁渦とを集約的に合成した渦流れを指し、回転体の回転に伴って旋回流を軸として合併渦が渦巻くダブルブルテックスを形成している。なお、本発明に係る回転体とは、流体を回転軸線に沿って送出する、または流体を送出することで、流体により攪拌や冷却等の所定の仕事を行なわせる装置に利用される流体送出手段であって、空気等の気体を送出する扇風機、換気扇、軸流送風機等のうち、扇風機のプロペラファンとしての利用が好適例として挙げられるが、これに限定されず、気体以外に水等の液体を回転軸線に沿って送出する軸流ポンプに内蔵されるものであってもよい。
【実施例1】
【0021】
図2〜図5に示すように、実施例1に係る回転体10は、モータ(駆動手段)Mに連結するハブ20と、このハブ20の周面から半径方向に延出すると共に、該ハブ20の周方向に所定間隔で設置した複数(実施例では4枚)のブレード30とから基本的に構成されている。なお、実施例1では、この回転体10を一般的な扇風機に組み込んだ場合(図13参照)について説明し、この回転体10を回転した際に、空気の送出される側を送出面(扇風機の前面)と云い、その反対側を吸込面(扇風機の後面)と云う。
【0022】
前記ハブ20は、送出面側の端面が閉塞すると共に、吸込面側の端面が開放した中空の円筒体であって、回転体10を回転するモータMの回転軸M1が嵌挿可能な孔部分である嵌合部22を内部中心に備えている(図3参照)。すなわち、前記ハブ20をモータMの回転軸M1に取付けた際に、回転体10の回転軸線と回転軸M1の軸線とは同一直線上に位置して、回転軸M1の回転に伴ってハブ20は周方向へ回転するようになっている。
【0023】
前記各ブレード30は、平面視において略三角形状の先端部36と、略矩形状の本体部35とを備えた板状体であって、その長辺を前記ハブ20の半径方向外方に沿って延出した状態で配設されている(図2参照)。各ブレード30は、回転軸線と直交する回転面に対して翼弦(ブレード30の前縁部(回転方向前側の縁部)34と後縁部(回転方向後側の縁部)32とを結んだ線)が交差するようにハブ20の外周面に配置され、回転面と翼弦との間に所定のピッチ角θを付した傾斜姿勢となっている(図4〜図6参照)。すなわち、前記各ブレード30は、回転方向前側から後側に向かうにつれて吸込面側から送出面側へ傾斜するよう配設され、回転に際して送出面側から離間する方向に捻り込むようになっている。また、前記各ブレード30は、先端部36を除く本体部35の略矩形部分がその長辺に沿って捻った形状とされ、前記ピッチ角θはブレード30の先端から根元(ハブ20側)に向かうにつれて次第に大きくなる、所謂捻り下げるように形成されている。例えば、前記ブレード30の先端部36と本体部35との接続部分では、ピッチ角θは10°程度に設定され(図4(a)参照)、根元部分では20°程度に設定される(図4(b)参照)。前記ブレード30の先端部36は、本体部35とは別途迎え角α(ピッチ角θ)が設定され、本体部35における先端部36近傍(本体部35における先端部36との接続部分付近)の迎え角αより大きくなるように設定され、例えば15°程度に設定される(図5参照)。なお、前記先端部36と本体部35とは、一体的に形成された連続した板状体であって、先端部36と本体部35との接続部分における迎え角αの移り変わりは、曲線的に滑らかな形状で接続されている。
【0024】
また、各ブレード30のピッチ角θは、このブレード30に対する気流の流れ(相対風)と翼弦との間に所要の迎え角αを確保し得るように設定される。ここで、図6に示すように、前記相対風の向きは、ブレード30の回転方向後側に渦流Vおよび翼端渦Yが発生する関係上、送出面側に誘導速度v1が生じるから、回転面より吸込面側に若干傾いている。すなわち、ブレード30に対して回転軸線に沿って生じていた推力ΔTは、回転方向後側に傾斜するために減少し(ΔL)、これは翼端渦Yの発生が推力を減少させ、その反作用として送出される空気量が減少することを示している。実施例1に係る回転体10では、翼端渦Y等を増強させることを目的としているため、推力ΔLの傾斜はより大きなものとなるものの、必要以上に推力を傾斜させると迎え角αが減少することとなり、その結果ブレード30の送出面および吸込面の圧力差が小さくなって翼端渦Y等が弱くなってしまう不都合がある。また、一般に迎え角αを大きくすると、推力はそれに比例して増加し、空気送出量も増大するが、ある迎え角α以上になると急激に推力が減少(失速する)する。そこで、翼端渦Y等の生成による誘導速度等を勘案して、効率的にダブルボルテックスが得られるよう前記迎え角α(ピッチ角θ)が設定される。ここで失速とは、ブレード30の表面を流れる空気流が当該表面から剥離する結果、推力を生じなくなる状態を指し、このとき空気送出量が極端に低下してしまう。
【0025】
前記ブレード30における翼弦方向の断面形状は、回転方向前側から後側に向かうにつれて、その厚みが薄くなる略涙滴型の翼形状(エアロフォイル形状)に形成されている(図4参照)。すなわち各ブレード30の断面形状は、送出面および吸込面の何れも膨らんだ流線形状とされると共に、平板状でなく全体的に比較的厚く設定した空力学的に有利な形状とされている。また、前記ブレード30の各面は、前縁部34側に偏倚した部位が頂部となるように設定され、翼弦方向の断面において頂部部分が一番厚くなっている。ここで、翼形状をしたブレード30とは、航空機の翼に用いられている翼理論に基づいて設計された断面形状を指す。なお、前記ブレード30を翼形状とすることで空気送出量が増大して高推力となるから、材料の選択等によりブレード30が推力に負けない充分な剛性を確保し得るよう構成される。
【0026】
前記各ブレード30の後縁部32は、先端部36近傍がハブ20に対して略垂直に形成されると共に、根元部分がブレード30の先端部36側から根元(ハブ20)側に向かうにつれて回転方向後側へ向けて延出した後縁根元部32aを備えている(図2または図3参照)。前記後縁根元部32aは、前記ブレード30の後縁部32における中途部分から張出して前記ハブ20の外周面20aに接続し、その端縁は滑らかに反曲線を描くよう形成されている。すなわち、前記ブレード30の後縁部32のうち、該ブレード30の回転方向後側の根元部分に形成した後縁根元部32aは、航空機分野で云うオージー翼形状の如く形成され、その端縁がブレード30の先端部36側に指向して傾けられることで、回転体10の回転に伴って後縁根元部に生じる渦流Vが、先端部36側へ向けて形成される(図8参照)。なお、前記後縁根元部32aは、その端縁を反曲線状に形成する態様だけでなく、端縁から渦流Vが先端部36側に指向して発生する態様であれば特に限定されず、例えば端縁を直線的に傾斜形成してもよい。
【0027】
前記ブレード30の先端部36は、翼弦方向の形状が回転方向前側から後側に向かうにつれてハブ20から離間するよう傾斜形成されている。すなわち、前記ブレード30の先端における平面形状は、前縁部34より後縁部32が突出した三角形となっている(図2または図3参照)。すなわち、前記ブレード30は、先端部36が部分的に航空分野で云うデルタ翼形状となっている。そして、前記ブレード30におけるの先端部36の迎え角αを、比較的大きな角度(例えば15°以上)に設定することで、三角形とした先端部36の吸込面において負圧が増して、前縁部34近傍が逆圧力勾配となり、境界層の剥離が引き起こされる。また、ブレード30の送出面は圧力が高く、吸込面は低いから、これが剥離した空気の流れを巻き込んで前縁渦Zと呼ばれる強い渦流れを作り、回転方向後側に流れて端部から放出される。ここで、比較的迎え角αを大きく設定すると、剥離した領域が内側に広がり、その結果として前縁の全てに沿って剥離を起こし、端部から連続的に前縁渦Zが放出される。このように、ブレード30の先端部36には翼端渦Yに加えて、吸込面側に前縁渦Zを発生され、これらを合成することで、得られる合併渦Xが増強される(図8参照)。
【0028】
また前記ブレード30の先端部36は、その厚み方向の形状が送出面から吸込面に向かうにつれてハブ20から離間するよう曲線的に傾斜形成されている(図7参照)。すなわち、前記ブレード30の先端部36は、送出面側の稜角を曲線的に面取りした如き形状となっており、このような曲面処理をすることで、先端部36において回転体10の回転に伴って正圧となるブレード30の送出面から負圧となる吸込面への空気の流れの回り込みを円滑にし得る。
【0029】
前記各ブレード30の前縁部34は、先端部36近傍がハブ20に対して略垂直に形成されると共に、根元部分がブレード30の先端部36側から根元(ハブ20)側に向かうにつれて回転方向前側へ延出したストレイク部34aを備えている(図2または図3参照)。前記ストレイク部34aは、前記ブレード30の前縁部34における中途部分から張出して、前記ハブ20の外周面20aに接続し、その端縁は滑らかな反曲線を描くよう形成されている。前記ストレイク部34aでは、前述した三角形状の先端部36と同様に、吸込面側に前縁渦Zが引き起こされ、この前縁渦Zが吸込面を通過することで、ブレード30を吸込面側に引張るよう作用している。このように、実施例1の回転体10において、各ブレード30は後縁部32に張出した後縁根元部32aを備えると共に、前縁部34にストレイク部34aが張出し形成されているから、該ブレード30は先端部近傍では翼弦寸法が略同一に設定されているものの、中途部分より根元部分に向かうにつれ翼弦寸法が次第に長くなるように形成されている。
【0030】
前記ブレード30の根元部分には、送出面および吸込面の夫々にフィレット部38,38が形成されている。前記各フィレット部38は、前記ブレード30の各面における根元近傍からハブ20に向かうにつれて張出すように形成され、その面は滑らかに反曲線を描くよう形成されている。前記フィレット部38は、ブレード30とハブ20とがなす隅角部に張出し形成して、この隅角部を滑らかな曲線形状とすることで、その回転時にハブ20の外周面20aにおける空気流と、ブレード30の根元付近における空気流との空力干渉から生じる有害な渦流の発生を防止するよう機能している。すなわち前記ブレード30は、厚さ方向においても、中途部分より根元部分に向かうにつれて厚みが次第に増していくよう形成されている。
【0031】
図7に示すように、前記ブレード30は、その内部に長辺に沿って空洞部40が画成され、この空洞部40に連通してブレード30の吸込面側に開口する複数の吹出し孔42が穿設されている。前記複数の吹出し孔42は、前記ブレード30の長辺に沿って所定間隔で配置されると共に、翼弦方向の中心から後縁部32側に偏倚した位置に開口している(図3参照)。また、前記ブレード30の接続部にあたるハブ20の外周面20aには、 前記空洞部40に連通して中空のハブ内部に開放する吸込み孔26が開設されている。そして、前記回転体10の回転に際し、各ブレード30の吹出し孔42から空洞部40内の空気が吹出すと共に、ハブ20に開設された吸込み孔26から空洞部40へ空気が取込まれるようになっている。なお、前記吸込み孔26にコンプレッサー等の空気供給手段を接続し、空洞部40に空気を供給することで、前記吹出し孔42から空気を強制的に吹出させるよう構成してもよい。
【0032】
各ブレード30の吸込面には、複数のボルテックスジェネレータ44が配設され、ブレード30の回転方向の後側に積極的に渦を作り出すようになっている(図3参照)。前記各ボルテックスジェネレータ44は、例えば略矩形の小片であって、各ブレード30の吸込面に回転方向に対して斜交するよう立設され、このボルテックスジェネレータ44によって作られる渦は、先端部36に発生する翼端渦Yと回転方向が同じになるように設定される。すなわち、前記複数のボルテックスジェネレータ44は、回転方向の前側から後側に向かうにつれてハブ20から離間するように、相対する空気の流れに対して傾斜させた状態でブレード30の吸込面に配置されている。また、前記複数のボルテックスジェネレータ44は、ブレード30の延出方向における略中央部からハブ20近傍に亘って、所定間隔離間して並列に配置されると共に、翼弦方向における前縁部34側に偏倚した位置に延在している。なお、前記ボルテックスジェネレータ44の翼弦方向の位置は、ブレード30の断面厚さが一番厚くなる部分近傍に設置するのが好適である。
【0033】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1に係る回転体の作用について説明する。図13に示すように、前記回転体10は、モータMの回転軸M1に対してハブ20に設けた嵌合部22を外挿して取付けられ、モータMの回転駆動に伴って所定方向に回転することで、モータMと反対側(送出面側)へ回転軸線に沿って空気が送出されて旋回流Dが形成される。ここで前記回転体10は、複数のブレード30を有することで、より多くの渦流V、翼端渦Yおよび前縁渦Zを発生させることが可能であると共に、これら複数のブレード30がハブ20の周方向に一定間隔で配設されているから、バランスよく回転させることができる。
【0034】
ここで先ず、空気送出量を増大させるために各ブレード30に施された略涙滴状断面および捻り下げの作用について説明する。前記各ブレード30は、その断面形状を航空機の翼理論を応用した略涙滴形状とすることで、効率的に推力が得られ、この推力の反作用として送出される空気量を増大させることができる。前述したように、ブレードの断面形状が平板状であっても空気の流れに対しピッチ角θを設けることで空気を回転軸線に沿って送出し得るものの、吸込面で空気の流れが前縁部で剥がれてしまうため、翼形状と比較して全体として空気送出効率が悪い。これに対し、実施例1のブレード30では、断面を略涙滴形状とすることで、ピッチ角θを設けても送出面において空気の流れが剥離し難くなり、送出面と吸込面との間の圧力差を大きくすることができるから、推力を増大させて空気送出量を向上させることができる。しかも、ブレード30の送出面および吸込面の何れもが、所謂流線形状となっているため、空気の流れに対する抗力が小さくなり、モータMに対する負担を軽減し得ると共に騒音を低減し得る効果を奏する。また、前記ブレード30の厚みが大きくなる程、送出面と吸込面との間の圧力差が大きくなるから、扇風機で使用されるような比較的低速回転であっても、空気送出量を増加させることができる。
【0035】
前記回転体10の空気送出量は、誘導速度(回転体10の回転面を通過した空気の流速増加分)がブレード30の長辺に亘って均一である場合が最も大きくなる。例えば、長辺に沿ってフラットな捻りのないブレードをある迎え角αでハブに取付けた場合、このブレードに対する空気の流入速度は、このブレードにおけるハブ側(根元側)になる程遅くなる。このようなブレードでは、ハブの近傍において、ブレードの送出面と吸込面との間の圧力差が小さくなり、回転方向の後側に生じる渦流Vが弱まってしまう。これに対し、実施例1のブレード30の本体部35(先端部36を除く部分)は、先端部36から根元に向かうにつれてピッチ角θが大きくなるよう捻った形状とすることで、渦流Vが弱くなるハブ20の近傍部分になる程、ピッチ角θが大きくなるから、送出面と吸込面との圧力差を大きくすることができ、ブレード30の長辺に沿う方向において、回転方向後側に形成される渦流Vの強さを略均一にし得るから、空気送出量を向上させることができる。また、迎え角αを大きく設定する程、空気送出量および渦流Vを増大させることができるが、相対風の速度との関係で過大に設定すると失速してしまう。しかし、実施例1のブレード30は捻り下げをすることで、このブレード30の長辺における部位によって異なる相対風の速度を勘案して迎え角αが設定してあるから、失速を防止してブレード30全体として空気送出効率を向上させることができる。前記ブレード30の先端部36は、本体部35において捻り下げるように設定した迎え角αとは別に比較的大きな迎え角αになっている。すなわち、三角形状にした先端部36において、前縁渦Zの発生は迎え角αが大きくなるほど顕著になり、得られるダブルボルテックスを増強することができる。
【0036】
次いで、各ブレード30の回転方向後側に渦流Vを好適に作り出すと共に、これらの渦流V同士または翼端渦Yに合併させ、好適にダブルボルテックスを発生させるため、ブレード30に施された手段である、後縁根元部32a、先端部36の形状、ストレイク部34a,フィレット部38,38、ボルテックスジェネレータ44および吹出し孔42等の作用について夫々説明する。前記ブレード30の後縁部32におけるハブ20との接続部分に張出し形成された後縁根元部32aは、ブレード30の先端部36に向けて指向して形成されているから、回転に伴って後縁根元部32aに形成される渦流Vは、翼端渦Yの発生している先端部36に向けて形成される(図8参照)。すなわち、翼端渦Yと後縁根元部32aから生じた渦流Vとを積極的に合併させることで、強い合併渦Xを形成して、送出される空気流のダブルボルテックス状態を好適に作り出すことができる。
【0037】
前記ブレード30において、先端部36の翼弦方向の端縁を、回転方向前側から後側へ向かうにつれてハブ20から離間する方向へ傾斜形成することで、この先端部36は送出面(吸込面)側から見たときに、端縁を斜辺とする三角形状となり、該先端部36をデルタ翼の如き形状とすることができる。このように先端部36を回転方向前側から後側に向かうにつれ翼幅が大きくなる三角形状とすることで、回転に伴ってこの先端部36における吸込面側の前縁から前縁渦Zを発生させることができる(図8参照)。前縁渦Zの中は低圧となるため、先端部36における吸込面の負圧状態がより進行し、先端部36の吸込面と送出面との間の圧力差が大きくなるから、強い翼端渦Yを形成し得ると共に、前縁渦Zと翼端渦Yとを合併させることで、得られる合併渦Xをより増強し得る。この前縁渦Zが吸込面を通過することで、ブレード30を吸込面側に引張るよう作用するから、推力も向上して空気送出量の増加も望める。また前述した如く、前記ブレード30の迎え角αおよび厚みを大きく設定することで、ブレード30の送出面および吸込面の圧力差が大きくなる傾向にあるが、これらを過大に設定することで、失速(推力が得られないこと、すなわちその反作用である空気の送出量が低減する)または余分な空気抵抗が生じてモータMへの負荷に繋がる事態となる。すなわち、前記ブレード30全体として、送出面と吸込面と間の圧力差を増大させることは限界があるものの、実施例1の回転体10では、先端部36を三角形状として、この先端部36でのみ部分的に圧力差を増大させることで、ブレード30全体としては失速等を回避しつつ翼端渦Yを増強することができる。
【0038】
前記ブレード30において、先端部36の厚さ方向の端縁を、送出面から吸込面へ向かうにつれてハブ20から離間するよう傾斜する曲面形状とすることで、翼端渦Yを発生し易くすることができる。なぜなら翼端渦Yは、回転に伴って正圧になる送出面から負圧となる吸込面側に向けて、先端部36の開放端縁を回り込むような形で空気の流れが生じることで発生する。そして、ブレード30における送出面側の開放端縁に稜角が存在すると、この稜角が空気の流れを阻害して翼端渦Yが弱くなってしまう。しかし、実施例1のブレード30は、送出面側の開放端縁における稜角部分を面取りした如き、滑らかな形状としてあるから、送出面から吸込面への空気の回り込み性が向上され、より強い翼端渦Yを形成し得る。しかも実施例1では、前記ブレード30の厚みが比較的厚くなるよう設定されているから、先端部36における送出面側の開放端縁を曲面とする意義は大きい。
【0039】
前記ブレード30は、その前縁部34の根元部分に回転方向前側へ張出すストレイク部34aを形成することで、このブレード30の根元部分の平面形状が、回転方向前側から後側に向かうにつれてハブ20から離間する斜辺を有する略三角形状とすることができる。すなわち、前記ブレード30の根元部分においても、ストレイク部34aの吸込面側における前縁から、前述した平面三角形状の先端部36から生じる前縁渦Zと同様な前縁渦Zを発生させることができる。従って、ブレード30において先端部36と比較して推力が生じ難い根元部分であっても前縁渦Zを生じさせることで、送出面と吸込面との間の圧力差を大きくし得るから、送出する空気量を増大し得ると共に、前縁渦Zを翼端渦Yと合併させて合併渦Xを形成し、ダブルボルテックスを好適に創出し得る。
【0040】
一般的に、ブレード30等の物体の周りに生じている空気の流れは、傍に他の物体、例えばハブ20を配置することで干渉抵抗を受けてしまう弊害がある。そこで、前記ブレード30とハブ20との接合部にフィレット部38,38を形成し、両者を滑らかに接続することで、干渉抵抗を抑制し、ブレード30の根元部分における乱流の発生を抑制すると共に、空気の流れを円滑にすることができる。
【0041】
実施例1の回転体10では、ハブ20に対して各ブレード30を失速が起こらない最大限の迎え角αで配設している。このため、この回転体10を扇風機に使用した場合、首振り運転等に際し、失速する虞れがある。特に、ブレード30の根元近傍では、相対的な空気の流入速度が先端部36と比較して遅いため、失速が起こり易い傾向にある。ここで、ブレード30の吸込面に設置され、空気の流れに対して斜交しているボルテックスジェネレータ44では、空気が当たる面(ブレード30の先端部36に臨む面)には高圧域が形成される一方、その裏面(ハブ20に臨む面)には低圧域が形成され、高圧域から低圧域へ向けて空気が流れて渦が発生する。前記ボルテックスジェネレータ44は、渦を発生させることでブレード30の吸込面上を流れる空気の剥離を抑制する作用があるから失速を防止して、送出空気を安定して得られる。そして、このような渦については、同じ方向に回転している渦同士が合併していく性質があるから、複数のボルテックスジェネレータ44によって、翼端渦Yと同じ回転方向の細い渦を大量に作ることで、より多くの渦と翼端渦Yとを合併させて、空気流中に強い合併渦Xを形成させる作用もある(図8参照)。このように、各ブレード30の吸込面において、特に失速が起こり易い根元近傍に複数のボルテックスジェネレータ44を設けることで、後縁部32から発生する渦流Vが弱い場合、ボルテックスジェネレータ44により形成された渦流Vを合併させて強い合併渦Xを形成することができる。
【0042】
前記回転体10は回転に際し、各ブレード30の吸込面が負圧になることで、この吸込面に開口する複数の吹出し孔42から吸込面に沿って空洞部40の空気が放出される。このとき吹出し孔42からの空気の吹出しに伴って、空洞部40にはハブ20に開口する吸込み孔26から空気が取込まれ、各吹出し孔42から空気が連続して吹出される。すなわち、ブレード30における翼弦方向の寸法が大きくなると、後縁部近傍で空気流が剥離する虞れがあるが、ブレード30における剥離が生じ易い後縁部近傍に沿って空気流を積極的に作り出すことで高推力が得られ、この反作用として送出される空気量を向上させることができる。また、空気流により失速を抑制できるから、迎え角を大きく設定し得るので、送出面と吸込面との圧力差が大きくなり、合併渦または前縁渦を増強し得る。
【0043】
このように、実施例1の回転体10は、回転方向後側に渦流Vを積極的に形成すると共に、この渦流Vと、先端部36に生じる翼端渦Yと、先端部36の吸込面における回転方向前側に発生する前縁渦Zとを集約的に合成することで、強い渦流れである合併渦Xが形成されるから、送出される空気流を複合的な2重螺旋流れであるダブルボルテックスとすることができる。送出される空気流をダブルボルテックスとすることで、渦の性質(渦度の保存則)より渦を巻き続ける性質を持つので、直線的な空気の流れと比較して、渦の状態が長く維持される。すなわち、ダブルボルテックスは指向性を持ち空気流を遠い距離まで到達させることができるから、送出した空気に指向性を持たせて周囲への拡散を防いで目標物周辺に集中的に供給することが可能である。またダブルボルテックスは、目標物の側面および背面側にまで空気が到達する回り込み性に優れているから、効率よく目標物を冷却等することができる。従って、ダブルボルテックスとして送出された空気流は、回り込み性に優れていることにより、冷却等の所要の仕事をするにしても、従来の回転体から生じるおおよそ直線的な空気流と比較して効率がよく、同一の仕事に要する消費エネルギーを低減させることができる。更にダブルボルテックスは、渦巻き状に流れていく過程で多くの周辺空気の流れを誘起し得るので、好適な攪拌効果も示す。
【0044】
実施例の回転体10は、ブレード30に、後縁根元部32a、先端部36の形状、ストレイク部34a,フィレット部38,38、ボルテックスジェネレータ44および吹出し孔42等を設けることで、送出面と吸込面との間の圧力差を増大させ、回転方向後側に翼端渦Yおよび渦流Vを積極的に形成し得るものの、これら翼端渦Y等の積極的な発生は推力を低下させて送出される空気量を低減する弊害がある。しかし、前記ブレード30の断面形状を空力学的に優れた翼形状とすると共に、このブレード30の長辺方向に沿って捻り下げして、長辺の各部位において最適な迎え角αとしてあるので、翼端渦Y等の発生による空気送出量の低下を補償し得るから、空気送出量全体としては従来の回転体と比較して増加することになる。しかも、前記ブレード30の先端部36を所謂デルタ翼形状とすることで、前縁渦Zを吸込面側に発生させ、この前縁渦Zが吸込面を通過することで、ブレード30を吸込面側に引張るよう作用するから、推力も向上して空気送出量の増加も望める。
【0045】
前記回転体10は、ダブルボルテックスの創出に際し、特別な装置を必要とせず、高い汎用性を有するから、既存の扇風機等の装置であってもファンを実施例1の回転体10と取替えるだけで、送出する空気流をダブルボルテックスとすることができる。
【0046】
(実施例1の変更例)
実施例1の回転体10では、ブレード30の断面形状が略涙滴状となるよう形成したが、これに限定されず、ブレードの送出面と吸込面との間に圧力差を生じ、翼端渦Y等を好適に発生し得る形状であればよい。図9は、実施例1の変更例に係る回転体11の要部を示す断面図であって、基本的な構成は実施例1の回転体10と同一であるので、異なる部分のみ説明する。変更例に係る回転体11のブレード31は、回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴形状を基本形態とし、その後縁部32の長辺に亘って送出面側へ向けて延出するフラップ部32bが一体的に形成されている。前記フラップ部32bの送出面は、翼弦から所定角度(下げ角度と云う)βだけ突出して、下げ角度βは10〜20°程度に設定される。また、前記ブレード31の吸込面は、前縁部34からフラップ部32bに亘って滑らかな流線形状に形成され、境界層の剥離が生じ難い形状に形成されている。そして、前記フラップ部32bの回転方向後側となる端縁についても、吸込面と送出面とを滑らかに接続する曲面となっている。
【0047】
このように、前記ブレード31の後縁部32にフラップ部32bを設けることで、迎え角αが大きくなり、吸込面と送出面との間の圧力差をより大きくして、渦流Vおよび送出空気量を増大させることができる。ここで、前記下げ角度βが10°より小さいと、充分な推力向上効果が得られず、これに対し、20°を超えて過大に設定されると、推力向上効果以上に空気の抗力が大きくなる弊害が生じる。なお、前記ブレード31の後縁部32にフラップ部32bを設けることで、翼弦方向の寸法が延長してフラップ部32bの吸込面側において境界層の剥離を生じ易くなるから、回転に際して、内部に画成した空洞部40から吹出し孔42を介して吸込面側に空気を供給する構成と組合わせると有効である。
【実施例2】
【0048】
図10〜図12は、実施例2に係る回転体12を示すものであって、基本的な構成は実施例1で説明した回転体10と同様であるから、同一の部材は同一の符号を付し、異なる部分のみ説明する。実施例1の回転体10では、ブレード30として略矩形翼形状のものを採用したが、実施例2の回転体12では、夫々のブレード33の平面形状が全体として三角形となる所謂デルタ翼形状とされている。前記回転体12は、円筒形のハブ20と、このハブ20の周面に所定間隔で配設された複数(実施例2では4枚)のブレード33とから構成され、三角形状のブレード33の斜辺が、回転方向前側から後側に向かうにつれてハブ20から離間するよう形成されている。また、各ブレード33は、所要のピッチ角θを付した状態でハブ20の外周面20aに夫々配設されている。なお、前記回転体12には、実施例1で説明した略涙滴状の断面形状、捻り下げ、後縁根元部32a、ストレイク部34a、フィレット部38および空気の吹出し孔42等の構成も適用することができる。
【0049】
このように、ブレード33を回転方向前側から後側に向かうにつれ翼幅が大きくなる三角形状とすることで、回転に伴ってこの先端部36における吸込面側の前縁から前縁渦Zを発生させることができる(図12参照)。すなわち、送出する流体を、各ブレード33の回転方向の前側に発生する前縁渦Zと、旋回流Dとの2重渦流れとするよう構成される。先端部36のみ三角形状とした実施例1の回転体10と比較して、ブレード全体を三角形状とすることで、ブレード33の全体に亘って前縁渦Zを得ることができるから、この前縁渦Zを積極的に利用することで、空気送出量の増加を図り得る。なお、ハブ20を円筒形ではなく、ブレード33の配設数に合わせた多角形としてもよい。
【0050】
(ガード)
次に、実施例1、実施例1の変更例または実施例2で説明した回転体10,11,12を保護するガードについて、図13〜図15を参照して説明する。なお、一般的な扇風機に実施例1の回転体10を適用した場合に、この回転体10の回転領域を保護するガード70について説明する。
【0051】
実施例1の回転体10の如く、翼端渦Yを積極的に増強させて合併渦Xとして利用するものでは、図17に示すような従来のガード114では、ブレード106とガード114とが近接して配設されているため、該ブレード106の先端部に折角生じた合併渦Xが、ガード114による所謂地面効果により抑制されてしまう弊害がある。そこで、実施例のガード70は、前記回転体10における合併渦X(実施例2に適用する場合は、前縁渦Z)の顕著な領域(渦領域と云う)YRからガード70を所要距離離間して配設することで、合併渦Xを壊さないように構成されている。図13に示すように、前記ガード70は、回転体10の送出面側を覆う前ガード72と、吸込面側を覆う後ガード76との2つの部材から構成され、これら両ガード72,76は、おおよそ対象な形状となっている。前記前ガード72は、回転に際しブレード30のなす軌跡より大きく設定した無端リング状のフランジ部72aと、このフランジ部72aに内方に配設された複数の保護部材74とから構成されている(図14参照)。前記前ガード72の中央部には、椀を伏せた如き形状のスピナーSが配設され、この前ガード72を扇風機に配設した際に、前記回転体10のハブ20に相対すると共に、ハブ20の送出面に近接して配置される。また、前記スピナーSは、そのハブ20に相対する端面が、ハブ20の直径と略同一寸法に設定されると共に、ハブ20から離間するにつれて流線的に窄んでいく卵形となっている。
【0052】
前記複数の保護部材74は、例えば金属製の線材であって、前記フランジ部72aおよびスピナーSを結んで所定間隔で放射状に配設され、回転体10からの空気の送出を許容すると共に、ブレード30の回転領域に使用者の指等が入らないよう保護している。また各保護部材74は、前記フランジ部72aの近傍部位を前側に突出するよう湾曲形成した延出部74aと、ブレード30と略平行に延在する平坦部74bとを備えている。前記延出部74aは、前ガード72を扇風機に組付けた際に、ブレード30の先端部近傍の渦領域YRに相対し、該先端部36からブレード幅Wの30%程度の寸法だけ離間するように設定される。前記フランジ部72aには、左右の縁部における上方に若干偏倚した部位に表示灯L,Lが夫々設けられ、これらの表示灯L,Lは、互いに異なる色で発光するよう構成されて視認性の向上が図られている。
【0053】
前記後ガード76は、前ガード72とスピナーSを除く基本構成は同様であって、リング状のフランジ部76aと、このフランジ部76aの内方に所定間隔離間させて放射状に配設した複数の保護部材78とから構成されている(図15参照)。また各保護部材78は、前記フランジ部76aの近傍部位を後側に突出するよう湾曲形成した延出部78aと、ブレード30と略平行に延在する平坦部78bとを備えている。前記延出部78aは、後ガード76を扇風機に組付けた際に、ブレード30の先端部近傍の渦領域YRに相対し、該先端部36からブレード幅Wの30%程度の寸法だけ離間するように設定される。そして、後ガード76の孔部80に貫通させた回転軸M1に回転体10を取付けると共に、後ガード76のフランジ部76aに対し、前ガード72のフランジ部72aを整合させて互いに組付けることで、両ガード72,76が回転体10を挟んだ状態となっている。このとき、両ガード72,76の延出部74a,78aによって囲まれる空間(保護空間)は、少なくともブレード30の先端部36を中心としてブレード幅Wの30%程度離間するよう設定され、渦領域YRにおいて両延出部74a,78aがブレード30から充分離間し、合併渦Xに干渉しないようになっている。なお、ブレード30の先端部36を中心としてブレード幅の1/2程度を、保護空間として画成するよう前記両延出部74a,78aを設定するとより好ましい。
【0054】
前記ガード70は、ブレード30の先端部36を中心としてブレード幅の30%程度の領域からガード70を構成する保護部材74,78を退避するよう延出部74a,78aを設けたから、保護部材74,78と合併渦Xを構成する翼端渦Y、渦流Vおよび前縁渦Zとが干渉することでこの合併渦Xが弱まることを回避し、合併渦Xを利用した回転体10から送出されるダブルボルテックスによる前述した有用な効果を享受し得る。また、前記ハブ20の送出面に近接してスピナーSを設けることで、このスピナーSの流線形の外表面を空気流が円滑に流れるから、回転体10より送出された空気流の乱れを抑制し得ると共に、ハブ20近傍の空気流のよどみに起因するダブルボルテックスを阻害する渦流の発生を回避し得る。しかも、ハブ20近傍の弱い空気流も円滑に送出方向へ導くから、他の渦流と合併させてダブルボルテックス状態を好適に創出し得る。このように、合併渦Xの保護空間を考慮したガード70は、比較的大型化してしまうので、該ガード70に表示灯L,Lを設けることで、視認性を向上させて接触の防止を図っている。ここで、各表示灯Lを左右の縁部における上方に若干偏倚した部位に夫々設けてあるから、転倒した際に表示灯Lの破損を回避し得る。なお、前記保護部材74,78は、線材を放射状に配設する態様に限らず、回転体10から送出される空気の流通または回転体10への空気の流通を妨げない構成であれば、金網状やその他の構成であってもよい。前記表示灯Lについても、前ガード72でなく後ガード76に取付ける態様や双方の取付ける態様の何れも採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る回転体は、一般的な扇風機のファンとして使用するだけでなく、回転体に生ずる合併渦Xに向けて水(液体)を噴出することで、好適に作り出される低温空気を利用した冷風扇やその他の空気冷却装置等にも応用できる。図16は、空調機器の室外機に配設される顕熱抑制装置60を示す概略図であって、この顕熱抑制装置60のファンとして実施例1の回転体10を利用した例である。前記顕熱抑制装置60は、モータMにより回転される回転体10と、この回転体10の送出面側に位置する所要長のブーム62と、このブーム62に沿って設置された複数のノズル64と、このノズル64から液体を噴出させるための液体供給手段66とからなり、回転体10の回転につれて、ブレード30の先端部36に生ずる合併渦Xへ向けて各ノズル64より液体を噴出供給し、液体を空気中に噴出して液滴をなし、この液滴を空気に接触させることで、該液滴の気化に伴い低温空気を形成するようになっている。この低温空気を室外機の熱交換部に供給することで、室外機から大気に放出される顕熱を抑制し得る環境保全効果を奏する。空気送出手段として、ダブルボルテックスを好適に創出し得る回転体10を使用することで、冷却効率を向上させて省エネルギー化を図り得る利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】回転体を回転した際に生じる空気の流れを示す概略図である。
【図2】本発明の好適な実施例1に係る回転体を示す正面(送出面側)図である。
【図3】実施例1の回転体を示す背面(吸込面側)図である。
【図4】実施例1の回転体を示す断面図であって、(a)は図2のA−A線断面を示し、(b)は図2のB−B線断面を示す。
【図5】図2のC−C線断面図である。
【図6】実施例1の回転体の要部を示す断面図である。
【図7】実施例1の回転体において、ブレードの長辺の沿って切断した断面図である。
【図8】実施例1の回転体を部分的に示す正面(送出面側)図であって、回転時にブレードから生じる渦流れを示す概略図である。
【図9】実施例1の変更例の回転体であって、その要部を示す断面図である。
【図10】実施例2の回転体を示す正面(送出面側)図である。
【図11】図10のE−E線断面図である。
【図12】実施例2の回転体を部分的に示す正面(送出面側)図であって、回転時にブレードから生じる渦流れを示す概略図である。
【図13】実施例1の回転体を保護するガードを示す側断面図である。
【図14】実施例1の回転体を保護するガードの前ガード示す概略斜視図である。
【図15】実施例1の回転体を保護するガードの後ガード示す概略斜視図である。
【図16】本発明の回転体を利用した顕熱抑制装置を示す概略図である。
【図17】従来の回転体を示す正面(送出面側)図である。
【図18】従来の回転体を備える扇風機を示す側面図である。
【図19】従来の別の回転体を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 回転体,11 回転体,12 回転体,20 ハブ,26 吸込み孔,30 ブレード
31 ブレード,32 後縁部,32a 後縁根元部,32b フラップ部,
33 ブレード,34 前縁部,34a ストレイク部,35 本体部,36 先端部,
38 フィレット部,40 空洞部,42 吹出し孔,44 ボルテックスジェネレータ,
M モータ(駆動手段),V 渦流,X 合併渦,Y 翼端渦,Z 前縁渦,
YR 渦領域(領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ(20)と、このハブ(20)の周面から半径方向に延出すると共に、該ハブ(20)の周方向に所定間隔で配設した略矩形状のブレード(30,31)とからなり、前記ハブ(20)を駆動手段(M)により周方向へ回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流(D)として送出し得る回転体において、
前記各ブレード(30,31)は、
回転方向の後側となる後縁部(32)の根元部分を、ブレード(30,31)の先端部(36)へ指向するよう形成した後縁根元部(32a)と、
翼弦方向の形状が、回転方向の前側から後側に向かうにつれて、前記ハブ(20)から離間するよう傾斜形成されると共に、厚み方向の形状が、流体の送出面から吸込面に向かうにつれてハブ(20)から離間するよう曲線的に傾斜形成された先端部(36)とを有し、
その回転時に、各ブレード(30,31)における回転方向の後側に発生する渦流(V)と、先端部(36)に発生する翼端渦(Y)と、先端部(36)の吸込面における回転方向の前側に発生する前縁渦(Z)とを集約的に合成して合併渦(X)を形成することで、送出した流体を旋回流(D)と合併渦(X)との2重渦流れとするよう構成した
ことを特徴とする回転体。
【請求項2】
ハブ(20)と、このハブ(20)の周面から半径方向に延出すると共に、該ハブ(20)の周方向に所定間隔で配設したブレード(33)とからなり、前記ハブ(20)を駆動手段(M)により回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流(D)として送出し得る回転体において、
前記各ブレード(33)を、回転方向の前側から後側へ向かうにつれて、前記ハブ(20)から離間する斜辺を有する略三角形状に形成し、
その回転時に送出した流体を、各ブレード(33)の回転方向の前側に発生する前縁渦(Z)と、旋回流(D)との2重渦流れとするよう構成した
ことを特徴とする回転体。
【請求項3】
前記各ブレード(30,33)の断面形状は、回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴状に形成される請求項1または2記載の回転体。
【請求項4】
前記各ブレード(31)は、その断面形状が回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴形状とされると共に、その後縁部(32)に亘って送出面側へ向けて延出するフラップ部(32b)が形成される請求項1または2記載の回転体。
【請求項5】
前記各ブレード(30)は、回転方向の前側となる前縁部(34)の根元部分に、先端部(36)に指向して張出し形成されたストレイク部(34a)を備える請求項1または2記載の回転体。
【請求項6】
前記各ブレード(30)は、吸込面および送出面の中途から前記ハブ(20)に向かうにつれて張出したフィレット部(38,38)を夫々備える請求項1または2記載の回転体。
【請求項7】
前記各ブレード(30)の吸込面には、回転方向の前側から後側に向かうにつれてハブ(20)から離間するよう傾斜配置した複数のボルテックスジェネレータ(44)を備える請求項1または2記載の回転体。
【請求項8】
前記各ブレード(30,31)には、吸込面に開口する複数の吹出し孔(42)と、中空のハブ(20)において開口する吸込み孔(26)とを備える空洞部(40)が内部画成され、その回転時に前記吸込み孔(26)から取込んだ流体を前記空洞部(40)を介して吹出し孔(42)から放出するようにした請求項1または2記載の回転体。
【請求項9】
前記ブレード(30,31)における先端部(36)の迎え角(α)は、本体部(35)の迎え角(α)より大きく設定される請求項1記載の回転体。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載した回転体(10,11,12)の回転に伴って送出される流体の通過を許容すると共に、該回転体(10,11,12)の回転領域を保護するガードであって、
各ブレード(30,31,33)の先端部(36)における合併渦(X)または前縁渦(Z)の顕著な領域(YR)では、この合併渦(X)または前縁渦(Z)に干渉しない距離だけ該ブレード(30,31,33)から離間するよう構成した
ことを特徴とするガード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ(20)と、このハブ(20)の周面から半径方向に延出すると共に、該ハブ(20)の周方向に所定間隔で配設したブレード(30,31)とからなり、前記ハブ(20)を駆動手段(M)により周方向へ回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流(D)として送出し得る回転体において、
前記各ブレード(30,31)は、
略矩形翼形状に形成されて、その長手方向一方の根元が前記ハブ(20)に配設される本体部(35)と、
前記本体部(35)における長手方向他方の先端に一体的に形成され、該本体部(35)から離間する端縁が、回転方向の前側から後側に向かうにつれて、前記ハブ(20)から離間するよう傾斜すると共に、回転方向の後側となる後縁部(32)がハブ(20)に対して略垂直に形成されたデルタ翼形状をなす先端部(36)を有し、
前記本体部(35)の後縁部(32)における根元部分に、前記先端部(36)側からハブ(20)側に向かうにつれて回転方向後側へ向けて延出してハブ(20)の外周面に接続するように形成されて、先端部(36)へ指向する後縁根元部(32a)が形成され、
転時に、前記後縁根元部(32a)における回転方向の後側に発生する渦流(V)と、先端部(36)に発生する翼端渦(Y)と、先端部(36)の吸込面における回転方向の前側に発生する前縁渦(Z)とを集約的に合成して合併渦(X)を形成することで、送出した流体を旋回流(D)と合併渦(X)との2重渦流れとするよう構成した
ことを特徴とする回転体。
【請求項2】
ハブ(20)と、このハブ(20)の周面から半径方向に延出すると共に、該ハブ(20)の周方向に所定間隔で配設したブレード(33)とからなり、前記ハブ(20)を駆動手段(M)により回転させることで、回転軸線に沿って流体を旋回流(D)として送出し得る回転体において、
前記各ブレード(33)は、その平面形状を全体として、回転方向の前側となる前縁が回転方向の前側から後側へ向かうにつれて前記ハブ(20)から離間する斜辺をなすデルタ翼形状に形成され
その回転時に送出した流体を、各ブレード(33)の回転方向の前側に発生する前縁渦(Z)と、旋回流(D)との2重渦流れとするよう構成した
ことを特徴とする回転体。
【請求項3】
前記各ブレード(30,33)の断面形状は、回転方向の前側から後側に向かうにつれて細くなる略涙滴状に形成される請求項1または2記載の回転体。
【請求項4】
前記各ブレード(31)、その後縁部(32)に亘って送出面側へ向けて延出するフラップ部(32b)が形成される請求項記載の回転体。
【請求項5】
前記各ブレード(30)は、回転方向の前側となる前縁部(34)の根元部分に、先端部(36)に指向して張出し形成されたストレイク部(34a)を備える請求項1〜4の何れかに記載の回転体。
【請求項6】
前記各ブレード(30)は、吸込面および送出面の中途から前記ハブ(20)に向かうにつれて張出したフィレット部(38,38)を夫々備える請求項1〜5の何れかに記載の回転体。
【請求項7】
前記各ブレード(30)の吸込面には、回転方向の前側から後側に向かうにつれてハブ(20)から離間するよう傾斜配置した複数のボルテックスジェネレータ(44)が設けられる請求項1〜6の何れかに記載の回転体。
【請求項8】
前記各ブレード(30,31)には、吸込面に開口する複数の吹出し孔(42)と、中空のハブ(20)において開口する吸込み孔(26)とを備える空洞部(40)が内部画成され、その回転時に前記吸込み孔(26)から取込んだ流体を前記空洞部(40)を介して吹出し孔(42)から放出するようにした請求項1〜7の何れかに記載の回転体。
【請求項9】
前記ブレード(30,31)における先端部(36)の迎え角(α)は、本体部(35)の迎え角(α)より大きく設定される請求項1記載の回転体。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載した回転体(10,11,12)の回転に伴って送出される流体の通過を許容すると共に、該回転体(10,11,12)の回転領域を保護するガードであって、
各ブレード(30,31,33)の先端部(36)を中心として、ブレード幅(W)の30%〜50%の寸法だけブレード(30,31,33)から離間するよう設定することで、該ブレード(30,31,33)における合併渦(X)または前縁渦(Z)の顕著な領域(YR)において、合併渦(X)または前縁渦(Z)に干渉しないよした
ことを特徴とするガード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−104988(P2006−104988A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290767(P2004−290767)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(505022275)株式会社地球大気航空 (2)
【Fターム(参考)】