説明

回転体用無線通信システム

【課題】回転体の全位置で安定した無線通信を行うことが可能な回転体用無線通信システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の回転体無線通信システム100は、ICタグ20に備えたタグアンテナ23のループ状の電路23Aを、帯状をなしたタグ本体21の両端部間に亘って延ばして固定した構造とし、そのタグ本体21がロータ60の外周面をほぼ1周するように巻き付けて、ロータ60の周方向におけるタグアンテナ23の両端部23B,23Bの間隔が、リーダ・ライタ10に備えたリーダアンテナ11からの無線波を受け得る受波領域R1の幅より小さくなるようにした。これにより、ロータ60の回転位置に拘わらず、リーダアンテナ11とタグアンテナ23との間で無線通信を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体と、回転体を回転可能に支持する支持部との間で無線通信を行うための回転体用無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の回転体用無線通信システムとしては、回転体(例えば、インホイールモータのロータ)の内周面に備えた回転側アンテナと、支持部(例えば、車両本体)に備えた固定側アンテナとの間で無線通信を行って、回転体に備えたセンサの検出データを無線送信するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304251号公報(段落[0049]〜[0054]、[0071]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の回転体用無線通信システムでは、回転体の位置によっては、回転側アンテナの位置が固定側アンテナからの無線波の受波領域から外れて、無線通信ができなくなることがあった。即ち、従来の回転体用無線通信システムでは、回転体の全位置で安定した無線通信を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、回転体の全位置で安定した無線通信を行うことが可能な回転体用無線通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る回転体用無線通信システム(100)は、回転体(60)を回転可能に支持する支持部(80)に固定されて回転体(60)の内周面又は外周面に対向した固定側アンテナ(11)を有した固定側無線回路(10)と、回転体(60)に固定されたセンサ(40)と、固定側アンテナ(11)と対向する回転体(60)の内周面又は外周面に固定された回転側アンテナ(23)を有し、固定側アンテナ(11)からの無線波を受波して生成した電力で作動して、センサ(40)の検出データを無線送信する回転側無線回路(20)とからなる回転体用無線通信システム(100)において、回転側アンテナ(23)は、ループ状の電路(23A)をタグ(21)の両端部間に亘って延ばして固定した構造をなし、その回転側アンテナ(23)を回転体(60)の外周面の半周以上に巻き付けて、回転体(60)の周方向における回転側アンテナ(23)の両端部(23B,23B)の間隔を、固定側アンテナ(11)からの無線波を受け得る受波領域(R1)の幅より小さくしたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の回転体用無線通信システム(100)において、回転体(60)は、回転機(50)のロータ(60)であって、センサ(40)は、ロータ(60)に備えた磁石(63)に直に固定されて温度又は磁束強度を検出するところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の回転体用無線通信システム(100)において、回転機(50)は、車両の駆動源に使用されるインホイールモータ(50)であって、ロータ(60)は、インホイールモータ(50)のステータ(51)の外側に配置された円筒状をなすと共に、外周面に非磁性体金属の保護カバー(64)を備え、センサ(40)は、保護カバー(64)の内側で磁石(63)に固定され、回転側アンテナ(23)は、保護カバー(64)の外周面に固定され、保護カバー(64)に貫通形成された配線孔(68)を通してセンサ(40)と回転側アンテナ(23)とが接続されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の回転体用無線通信システム(100)において、タグ(21)のうちループ状の電路(23A)より保護カバー(64)側には、回転側アンテナ(23)のループ状の電路(23A)を貫通する固定側アンテナ(11)からの電磁界の磁路の一部を形成するための磁性体シート(25)を備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の回転体用無線通信システム(100)において、タグ(21)に固定され、ループ状の電路(23A)に共振磁界によって結合される共振器(45)を、回転側アンテナ(23)に設けたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明に係る回転体用無線通信システム(100)は、回転体(60)を回転可能に支持する支持部に固定されて回転体(60)の内周面又は外周面に対向した固定側アンテナ(11)を有した固定側無線回路(10)と、固定側アンテナ(11)と対向する回転体(60)の内周面又は外周面に固定された回転側タグアンテナ(23,123,323)を有した回転側無線回路(20)とからなる回転体用無線通信システム(100)において、回転側タグアンテナ(23,123,323)を回転体(60)の内周面又は外周面の半周以上に巻き付けて、回転体(60)の全位置で固定側無線回路(10)と回転側無線回路(20)との間で無線通信可能としたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1の発明]
請求項1の発明に係る回転体用無線通信システム(100)によれば、回転側無線回路(20)に備えた回転側アンテナ(23)は、ループ状の電路(23A)をタグ(21)の両端部間に亘って延ばして固定した構造をなしている。そして、このタグ(21)を回転体(60)の内周面又は外周面の半周以上に巻き付けて、回転体(60)の周方向における回転側アンテナ(23)の両端部(23B,23B)の間隔が、固定側アンテナ(11)からの無線波を受け得る受波領域(R1)の幅より小さくなるように構成されている。これにより、回転体(60)の位置に拘わらず、固定側アンテナ(11)と回転側アンテナ(23)との間で安定して無線通信を行うことができる。即ち、回転体(60)の全位置で受信性能を向上させることができる。そして、回転体(60)が回転している最中に任意のタイミングで無線通信を行って、センサ(40)による検出データを固定側無線回路(10)に取得することが可能になる。
【0013】
[請求項2の発明]
回転機(50)を高負荷状態で運転すると、磁石(63)の温度上昇とこれに伴う磁束強度の低下が急激に起きることがある。このため、磁石(63)の回りの部品は高温ではないが、磁石(63)は高温になっている事態が生じうる。本発明によれば、センサ(40)をロータ(60)に備えた磁石(63)に直に固定してあるので、温度や磁束強度が急激に変化した場合でも、高いレスポンスでこれら温度や磁束強度を検出することができる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、車両の駆動源としてのインホイールモータ(50)のロータ(60)と、車両本体との間で安定した無線通信が可能になると共に、ロータ(60)の温度又は磁束強度を高いレスポンスで検出して車両本体側に送信することができる。
【0015】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、タグ(21)のうちループ状の電路(23A)より保護カバー(64)側に配置された磁性体シート(25)が、回転側アンテナ(23)のループ状の電路(23A)を貫通した磁路の一部を形成するから、非磁性体金属の保護カバー(64)の外周面に回転側アンテナ(23)を設けた場合でも、固定側アンテナ(11)からの無線波を確実に受波することができる。
【0016】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、ループ状の電路(23A)に共振磁界によって結合される共振器(45)を備えたので、固定側無線回路(10)との間の無線波の送受信に係る電力効率が向上する。
【0017】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、回転体(60)の全位置で固定側無線回路(10)と回転側無線回路(20)との間を無線通信可能とすることができる。即ち、回転体(60)の全位置で安定した無線通信が可能になる。そして、回転体(60)が回転している最中に任意のタイミングで無線通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る回転体用無線通信システムを備えたモータ内蔵駆動輪の側断面図
【図2】ロータの平面図
【図3】回転体用無線通信システムのブロック図
【図4】ロータの斜視図
【図5】ロータの部分拡大図
【図6】第2実施形態に係るICタグを備えたロータの斜視図
【図7】第3実施形態に係るICタグを備えたロータの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、電気自動車に備えられたモータ内蔵駆動輪90が示されている。モータ内蔵駆動輪90は、電気自動車の車両本体80に支持されており、車輪70と、その内側に配置されたアウターロータ型のインホイールモータ50とから構成されている。車輪70は、タイヤ71とタイヤホイール72とから構成され、タイヤホイール72は、タイヤ71が装着されたリム73とリム73の内周縁から張り出したディスク74とから構成されている。
【0020】
インホイールモータ50は、円筒形のステータ51とそのステータ51の外側に配置された円筒形のロータ60とを備えている。
【0021】
ステータ51は、車両本体80のうち車輪70に向かって延びた筒形構造の車輪支持部81に固定されている。ステータ51は、珪素鋼板で構成された円筒形のステータコア52とステータコア52に巻回されたステータコイル53とから構成されている。
【0022】
図2に示すように、ロータ60は、円筒形のロータ本体69とそのロータ本体69に埋め込まれた複数の永久磁石63,63とから構成されている。また、ロータ本体69は、積層鋼板によって構成されたロータヨーク61と、その外側に嵌合した非磁性金属(例えば、アルミニウム製)の保護カバー64とから構成されている。
【0023】
永久磁石63,63は、ロータ60の周方向に沿って環状に並べて埋設されている。具体的には、ロータヨーク61には、周方向に沿って複数の磁石埋込孔62,62が形成されており、それら各磁石埋込孔62,62に板状の永久磁石63,63がそれぞれ挿入されている。
【0024】
図1に示すように、ロータ60の軸方向の両端面には、エンドプレート65A,65Bが固定されており、それらエンドプレート65A,65Bに、永久磁石63,63の長手方向の両端面が突き当てられている。
【0025】
両エンドプレート65A,65Bのうち、タイヤホイール72側のエンドプレート65Aは、タイヤホイール72のディスク74に固定されている。これにより、ロータ60とタイヤホイール72(車輪70)とが一体回転可能となっている。
【0026】
車両本体80側のエンドプレート65Bは、車輪支持部81の外側にベアリング76を介して支持されている。また、タイヤホイール72側のエンドプレート65Aの中心部からは車両本体80に向かって出力軸66が起立しており、その出力軸66がステータコア52及び車輪支持部81の内側を通って延びている。この出力軸66の外周面と車輪支持部81の内周面との間にはベアリング67が嵌合されている。これらベアリング67,76により、ロータ60がステータ51の外側で回転可能となっている。なお、出力軸66の車両本体80側には図示しないブレーキディスクが備えられている。
【0027】
さて、上述したインホイールモータ50のロータ60には、ICタグ20(本発明の「回転側無線回路」に相当する)及びセンサ40が取り付けられており、モータ内蔵駆動輪90を支持した電気自動車の車両本体80には、ICタグ20との間で無線通信を行うリーダ・ライタ10(本発明の「固定側無線回路」に相当する)が取り付けられている。これらICタグ20とリーダ・ライタ10とセンサ40とで、本発明に係る回転体用無線通信システム100が構成されている。
【0028】
図3に示すように、リーダ・ライタ10は、リーダアンテナ11(本発明の「固定側アンテナ」に相当する)と送受波部12と制御部13とを備えている。制御部13は、通常、データ送信命令を含めた信号を送受波部12により無線波にしてリーダアンテナ11から出力する。そして、これに応答してICタグ20が出力した無線波を受波し、その無線波に含まれる情報を取得する。このときICタグ20は、動作に必要な電力を電磁誘導によって無線波から得る。また、リーダ・ライタ10は、電気自動車に備えた上位装置16(例えば、ECU)との間でも有線又は無線による通信を行う。
【0029】
リーダ・ライタ10は、送受波部12及び制御部13をケースに内蔵した本体部15(図1参照)の外側にリーダアンテナ11を露出させて備えており、本体部15が車両本体80(本発明の「支持部」に相当する)に固定されている。また、リーダアンテナ11は、ループ状に導線を巻いた、所謂、「ループアンテナ」であり、タイヤホイール72のリム73の内周面とロータ60の外周面との間の環状隙間に配置されている。そして、図4に示すように、リーダアンテナ11のループ状の導線で囲まれたループ面が、ロータ60の外周面と対向するように配置されている。
【0030】
図3に示すように、ICタグ20にはセンサ40が接続されている。本実施形態のセンサ40は、例えば、サーミスタ、測温抵抗体等の温度センサであり、図5に示すように、ロータ60に備えた任意の永久磁石63に対して直に固定されている。
【0031】
これに対し、ICタグ20は、図4に示すようにロータ60の外周面に固定されている。ICタグ20(詳細には、後述するICチップ22)とセンサ40との間は、図5に示すように配線41によって接続されている。ロータ60には、保護カバー64を貫通してさらに磁石埋込孔62まで延びた配線孔68が形成されており、この配線孔68に配線41が通されている。
【0032】
図4に示すように、ICタグ20は、ICチップ22とタグアンテナ23(本発明の「回転側アンテナ」に相当する)とを備えている。図3に示すように、ICチップ22は、メモリ26、制御部27、送受波部28及び整流部29を備えている。
【0033】
メモリ26は、例えば、不揮発性メモリ(EEPROM)であって、センサ40による検出データ(温度データ)を記憶する。
【0034】
整流部29は、リーダ・ライタ10から受けた無線波の交流磁界によりタグアンテナ23に電磁誘導された交流電圧を直流電圧に変換して制御部27に付与する。これにより制御部27が作動して所定のプログラムを実行し、タグアンテナ23が受波した無線波に含まれる情報を送受波部28を通して取得する。このとき取得した情報にデータ送信命令が含まれていた場合、制御部27は、メモリ26からセンサ40による検出データ(温度データ)を読み込む。そして、検出データを含む情報が送受波部28により無線波にされて、タグアンテナ23から出力される。
【0035】
ICチップ22及びタグアンテナ23は、タグ本体21に固定されている。タグ本体21は、図4に示すように、ロータ60の周長と略同一長の帯状をなしている。タグ本体21は、可撓性を有するベースシート24と磁性体シート25とを重ねた構成となっており、ICチップ22とタグアンテナ23は、ベースシート24上に設けられている(図5参照)。
【0036】
タグアンテナ23は、ベースシート24の表面に、例えば、導電性インクによって印刷されている。タグアンテナ23は、所定の巻数(本実施形態では、1回巻き)の矩形又は長円形のループ状をなしており、ループ状の電路23Aが、タグ本体21の両端部間に亘って延ばして固定されている。そして、タグ本体21は、ロータ60の外周面をほぼ1周するように巻き付けられており、タグアンテナ23の両端部23B,23Bが周方向で近接配置されている。
【0037】
より詳細には、図4に示すように、タグアンテナ23の電路23Aは、ICチップ22から周方向の両側に向かって離れるように延び、ICチップ22から約180度離れた位置で折り返して互いに接近するように延びている。そして、電路23Aの折り返し部であるタグアンテナ23の両端部23B,23Bの間隔が、リーダアンテナ11からの無線波を受け得る受波領域R1の幅よりも小さくなっている(図2参照)。
【0038】
ここで、ベースシート24のうちICチップ22及びタグアンテナ23を配置した面にカバーシートを重ねてこれらを保護した構造とするとより好ましい。
【0039】
タグ本体21のうち磁性体シート25は、高透磁率と電気絶縁性とを有する薄膜状の磁性材料が樹脂製フィルムで保護された構成となっている。ICタグ20をロータ60の外周面に巻き付けた状態で磁性体シート25は、タグアンテナ23が印刷されたベースシート24よりもロータ60側に配置される。即ち、ロータ60の外周面とタグアンテナ23との間に磁性体シート25が配置される。
【0040】
磁性体シート25は、リーダアンテナ11からの無線波により発生したループ状の電路23Aを貫通する磁路の一部を形成すると共に、金属面で構成されたロータ60の外周面近傍における渦電流の発生を防止する。これにより、非磁性金属(本実施形態では、アルミニウム)で構成されたロータ60の外周面にタグアンテナ23を配置しても、タグアンテナ23とリーダアンテナ11との間で確実に無線波を送受波することができる。
【0041】
以上が、本実施形態の構成であって、以下、本実施形態の動作を説明する。電気自動車のスタートスイッチをオンすると、上位装置16が起動し、所定の周期でリーダ・ライタ10にデータ要求指令を出力する。すると、リーダ・ライタ10は、データ送信命令を含む情報を送受波部12により無線波にして(搬送波に載せて)リーダアンテナ11から出力する。この無線波は、ロータ60の外周面のうち、リーダアンテナ11との対向部分及びその近傍部分である受波領域R1に達する。
【0042】
ロータ60の外周面に備えられたICタグ20は、リーダ・ライタ10から出力された無線波をタグアンテナ23で受波する。また、リーダアンテナ11からの無線波の交流磁界によりタグアンテナ23に電磁誘導された交流電圧を、整流部29によって直流電圧に変換して制御部27に付与する。これにより制御部27が作動すると共に、タグアンテナ23で受波した無線波に含まれる情報を送受波部28を通して制御部27が取得する。
【0043】
このとき取得した情報に「データ送信命令」が含まれていた場合には、制御部27は、メモリ26からセンサ40による検出データ(温度データ)を読み込んで、その検出データを含む情報を送受波部28に出力する。送受波部28は、検出データを含む情報を無線波にして(搬送波に載せて)タグアンテナ23から出力する。なお、検出データを含む情報にICタグ20のIDデータを含めてもよい。
【0044】
ICタグ20から出力された無線波は、リーダ・ライタ10のリーダアンテナ11で受波される。そして、送受波部12が無線波に含まれる情報を解読し、その情報を制御部13が取得する。さらに制御部13は、取得した情報を上位装置16へと出力する。
【0045】
上位装置16は、ICタグ20から取得した温度データが正常か否かを判定する。そして、異常と判定した場合、即ち、永久磁石63の温度が設定温度よりも高温となった場合には、温度上昇の抑制又は冷却のための指令(例えば、電流制限や強制冷却の指令)を出力する。
【0046】
このように、本実施形態の回転体用無線通信システム100によれば、ICタグ20に備えられたタグアンテナ23が、ロータ60の外周面のほぼ全周に亘って設けられている。これにより、リーダアンテナ11からの無線波の磁束は、ロータ60の位置に拘わらず、タグアンテナ23のループ状の電路23Aを貫通するから、リーダアンテナ11とタグアンテナ23との間で無線波を送受信することができる。即ち、インホイールモータ50のロータ60と車両本体80との間において、ロータ60の全位置で安定した無線通信が可能になる。そして、ロータ60が回転している最中に任意のタイミングで無線通信を行って永久磁石63の温度をリーダ・ライタ10で読み取ることが可能になる。
【0047】
また、本実施形態によれば、ロータ60の永久磁石63にセンサ40を直に固定したから、インホイールモータ50を高負荷状態で駆動したことで永久磁石63の温度が急激に上昇した場合でも、高いレスポンスで永久磁石63の温度を検出することができる。これにより、永久磁石63の異常発熱及びこれに伴う磁束強度の低下を防ぐことができる。
【0048】
[第2実施形態]
この第2実施形態は、図6に示されており、ループ状の電路23Aに共振磁界によって結合される共振器45,45をタグアンテナ23に設けた点が、上記第1実施形態とは異なる。共振器45,45は、コイルとコンデンサとで構成されており、タグ本体21に固定されている。共振器45,45は、ループ状の電路23Aの内側領域で、ロータ60の外周面の周方向に等間隔に並べて複数配置されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態によれば、上記第1実施形態と同等の効果を奏すると共に、リーダ・ライタ10との間の無線波の送受信に係る電力効率が向上する。
【0049】
[第3実施形態]
この第3実施形態は、図7に示されており、ロータ60に備えたタグアンテナの構成が上記第1実施形態とは異なる。即ち、本実施形態のタグアンテナ323は、ICタグ20の送受波部28に接続された矩形ループ状の第1のアンテナ素子323Aと、矩形ループ状のコイルとコンデンサとで構成された複数の第2のアンテナ素子323B,323Bとから構成されており、第1と第2のアンテナ素子323A,323Bが、ロータ60の外周面のほぼ全周に亘って一列に並べて配置されている。そして、第1及び第2のアンテナ素子323A,323Bは、リーダアンテナ11からの交流磁界を受けてリーダアンテナ11と誘導結合すると共に、隣り合ったアンテナ素子323A,323Bが連鎖的に誘導結合するようになっている。なお、隣り合った各アンテナ素子323A,323Bは、できるだけ近づけて配置するか、一部が重なるように配置することが好ましい。その他の構成は、上記第1実施形態と同一である。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同等の効果を奏する。
【0050】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0051】
(1)上記実施形態では、本発明に係る「回転体」の一例として、回転機(モータ)のロータ60を例示したが、ロータ60以外の回転体、例えば、車両のタイヤ、タイヤホイール等を「回転体」として本発明の回転体用無線通信システム100を適用してもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、本発明に係る「回転機」の一例として、車両の駆動源に使用されるインホイールモータ50を例示したが、インホイールモータ50以外の車両用モータ、産業用モータ、家電用モータ等に、本発明の回転体用無線通信システム100を適用してもよい。また、発電機に本発明の回転体用無線通信システムを適用してもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、本発明に係る「回転機」の一例として、アウターロータ型の回転機(モータ)を例示したが、インナーロータ型の回転機(モータ)に本発明の回転体用無線通信システム100を適用してもよい。この場合には、ロータを筒形構造にしてその内周面にICタグ20を固定し、リーダアンテナ11をロータの内周面と対向するように配置すればよい。
【0054】
(4)上記実施形態において、センサ40はロータ60の永久磁石63の表面に固定されていたが、センサ40を永久磁石63に埋め込んでもよい。また、センサ40をロータヨーク61に埋め込んだり、ロータ60の外周面に固定してもよい。
【0055】
(5)上記実施形態では、ロータ60に固定したセンサ40が、永久磁石63の温度を検出する温度センサであったが、磁束強度を検出する磁気センサ(ホール素子、磁気インピーダンス素子等)でもよい。また、ロータ60以外の回転体に対しては、加速度センサ、圧力センサ、振動センサ、歪みセンサ等を固定してもよい。
【0056】
(6)上記実施形態では、リーダ・ライタ10からの無線波を受波して電力を生成する「パッシブ型」のICタグ20を例示したが、ICタグ20は、生成した電力を充電するための蓄電部を備えた構成(所謂、「セミパッシブ型」のICタグ)としてもよい。
【0057】
(7)上記実施形態において、リーダアンテナ11は、ロータ60の外周面とタイヤホイール72のリム73の内周面との間に配置されていたが、リーダアンテナ11と、その近傍のリム73を含む金属部分との間に、高透磁率でかつ電気絶縁性の磁性体シートを配置してもよい。このようにすれば、磁性体シートをリーダアンテナ11を貫通する磁路の一部にすると共に、リーダアンテナ11の近傍の金属による渦電流の発生を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 リーダ・ライタ(固定側無線回路)
11 リーダアンテナ(固定側アンテナ)
20 ICタグ(回転側無線回路)
21 タグ本体(タグ)
22 ICチップ
23 タグアンテナ(回転側アンテナ、回転側タグアンテナ)
23A 電路
25 磁性体シート
40 センサ
45 共振器
50 インホイールモータ
51 ステータ
60 ロータ
63 永久磁石(磁石)
64 保護カバー
68 配線孔
80 車両本体(支持部)
90 モータ内蔵駆動輪
100 回転体用無線通信システム
160 回転体
R1 受波領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体(60)を回転可能に支持する支持部(80)に固定されて前記回転体(60)の内周面又は外周面に対向した固定側アンテナ(11)を有した固定側無線回路(10)と、
前記回転体(60)に固定されたセンサ(40)と、
前記固定側アンテナ(11)と対向する前記回転体(60)の内周面又は外周面に固定された回転側アンテナ(23)を有し、前記固定側アンテナ(11)からの無線波を受波して生成した電力で作動して、前記センサ(40)の検出データを無線送信する回転側無線回路(20)とからなる回転体用無線通信システム(100)において、
前記回転側アンテナ(23)は、ループ状の電路(23A)をタグ(21)の両端部間に亘って延ばして固定した構造をなし、その回転側アンテナ(23)を前記回転体(60)の外周面の半周以上に巻き付けて、前記回転体(60)の周方向における前記回転側アンテナ(23)の両端部(23B,23B)の間隔を、前記固定側アンテナ(11)からの無線波を受け得る受波領域(R1)の幅より小さくしたことを特徴とする回転体用無線通信システム(100)。
【請求項2】
前記回転体(60)は、回転機(50)のロータ(60)であって、前記センサ(40)は、前記ロータ(60)に備えた磁石(63)に直に固定されて温度又は磁束強度を検出することを特徴とする請求項1に記載の回転体用無線通信システム(100)。
【請求項3】
前記回転機(50)は、車両の駆動源に使用されるインホイールモータ(50)であって、前記ロータ(60)は、前記インホイールモータ(50)のステータ(51)の外側に配置された円筒状をなすと共に、外周面に非磁性体金属の保護カバー(64)を備え、
前記センサ(40)は、前記保護カバー(64)の内側で前記磁石(63)に固定され、
前記回転側アンテナ(23)は、前記保護カバー(64)の外周面に固定され、
前記保護カバー(64)に貫通形成された配線孔(68)を通して前記センサ(40)と前記回転側アンテナ(23)とが接続されていることを特徴とする請求項2に記載の回転体用無線通信システム(100)。
【請求項4】
前記タグ(21)のうち前記ループ状の電路(23A)より前記保護カバー(64)側には、前記回転側アンテナ(23)の前記ループ状の電路(23A)を貫通する前記固定側アンテナ(11)からの電磁界の磁路の一部を形成するための磁性体シート(25)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の回転体用無線通信システム(100)。
【請求項5】
前記タグ(21)に固定され、前記ループ状の電路(23A)に共振磁界によって前記結合される共振器(45)を、前記回転側アンテナ(23)に設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の回転体用無線通信システム(100)。
【請求項6】
回転体(60)を回転可能に支持する支持部に固定されて前記回転体(60)の内周面又は外周面に対向した固定側アンテナ(11)を有した固定側無線回路(10)と、
前記固定側アンテナ(11)と対向する前記回転体(60)の内周面又は外周面に固定された回転側タグアンテナ(23,123,323)を有した回転側無線回路(20)とからなる回転体用無線通信システム(100)において、
前記回転側タグアンテナ(23,123,323)を前記回転体(60)の内周面又は外周面の半周以上に巻き付けて、前記回転体(60)の全位置で前記固定側無線回路(10)と前記回転側無線回路(20)との間で無線通信可能としたことを特徴とする回転体用無線通信システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−34140(P2013−34140A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169792(P2011−169792)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】