回転体軸の軸伸び量測定装置
【課題】タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を非接触でかつ遠方での測定が可能であり、かつ装置の信頼性と安全性が高く高精度の測定が可能となる回転体軸の軸伸び量測定装置を提供する。
【解決手段】回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、放射線検出器の検出信号に基づいて回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、回転体軸1の軸長方向に沿って設けられ、回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源3と、回転体軸の半径方向に放射線源と離間して対向配置され、放射線を検出する放射線検出器5と、放射線源と放射線検出器との間に配置され、回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において放射線の放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材6とを備え、回転体軸の軸伸びに伴って放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、回転体軸の軸伸び量を測定する。
【解決手段】回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、放射線検出器の検出信号に基づいて回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、回転体軸1の軸長方向に沿って設けられ、回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源3と、回転体軸の半径方向に放射線源と離間して対向配置され、放射線を検出する放射線検出器5と、放射線源と放射線検出器との間に配置され、回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において放射線の放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材6とを備え、回転体軸の軸伸びに伴って放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、回転体軸の軸伸び量を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線源と放射線検出器を対向配置し、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、タービン等の回転体軸に放射性同位元素等の放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、放射線検出器の検出信号に基づいて振動や伸びを検出する装置が知られている(例えば特許文献1)。
しかし、特許文献1のように回転体軸の放射線源に対して放射線検出器を単に対向配置するだけでは、回転体軸に軸伸びが発生しても放射線検出器で検出される信号の変化が小さいため軸伸びの検出は困難であることが予想される。また、検出する放射線としてγ線のような電磁波の場合や、β線のように飛程が長い場合は、軸伸びの検出はさらに困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−303103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように従来の装置では、非接触で軸伸びの測定が可能であるが、放射線源と放射線検出器を近接配置する必要がある上、軸伸びが発生してもそれによる放射線検出器での線量率の変化が小さいため、軸伸びの定量的な測定を正確に行うことが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を非接触でかつ遠方での測定が可能であり、かつ装置の信頼性と安全性が向上され高精度の測定が可能となる回転体軸の軸伸び量測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、前記回転体軸の軸長方向に沿って設けられ、前記回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源と、前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、前記回転体軸の軸伸び量を測定するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の回転体軸の軸伸び量測定装置によれば、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を非接触でかつ遠方での測定が可能でなり、かつ装置の信頼性と安全性が向上され高精度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1における放射線源の設置状態を示す回転体軸の要部断面図及び正面図である。
【図3】実施の形態1における回転体軸に軸伸びが発生した場合の状態を示す概略説明図である。
【図4】実施の形態1における回転体軸の軸伸び量と線量率の関係を示す図である。
【図5】実施の形態1に用いる放射線検出器の一般的な特性を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2における放射線源の設置状態を示す回転体軸の要部断面図及び正面図である。
【図7】実施の形態2における回転体軸の軸伸び量と線量率の関係を示す図である。
【図8】実施の形態2における放射線源の他の設置状態を示す回転体軸の正面図である。
【図9】この発明の実施の形態3における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
【図10】実施の形態3における回転体軸の軸伸びに伴うγ線のエネルギースペクトルの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
図1において、タービンや発電機等の回転体軸1の軸端に、軸長方向に沿って複数個の埋込み穴2が等間隔に設けられ、これらの埋込み穴2に放射線源3としてそれぞれ同種類の放射性同位元素4が埋め込まれている。
一方、回転体軸1の半径方向(軸長方向に対し直角な方向)に放射線源3と離間して放射線源3からの放射線を検出するように固定保持された放射線検出器5が対向配置されている。
そして、放射線源3と放射線検出器5との間の所定位置に遮蔽部材6が固定保持され、回転体軸1の軸伸び量がゼロの状態において放射線検出器5への放射線の入射を遮蔽している。
【0010】
このような構成において、回転体軸1に軸伸びが発生した場合、図3に示すように遮蔽部材6で遮蔽されていた放射線源3からの放射線が放射線検出器5に入射し、回転体軸1の軸伸びに伴って、放射線検出器5によって検出される放射線の線量率が増加する。
この場合、放射線検出器5によって検出される放射線の線量率は、図4に示すように、回転体軸1に軸伸び量に伴って段階的に増加する。
このように回転体軸1に軸伸びが発生すると、それまでは遮蔽されていた放射線が放射線検出器5に到達するようになるので、放射線検出器5での線量率が増加するため、それによって軸伸び量が測定できる。
この結果、非接触かつ遠方での軸伸び量が測定できるので、装置の信頼性と安全性が向上する。
また、前述のように従来装置では軸伸びが発生してもそれによる検出器での線量率の変化が小さいため、軸伸びの定量的な測定が困難であるのに対し、この実施の形態1によれば、軸伸びが発生すると、軸伸び量がゼロの状態では遮蔽されていた放射線が放射線検出器5に到達するようになるので、軸伸びに対する線量率の変化が大きく、高精度の測定が可能となる。
【0011】
なお、この実施の形態1では、放射線源3として、放射性同位元素であるγ線またはβ線放出核種を用いることが可能あるが、γ線放出核種としては60Coよりも137Csのようにある程度の長い半減期を持つものが望ましい。
また、放射線検出器5としては、GM管、シンチレーション、半導体、電離箱等を用いることができる。これらの放射線検出器は、時定数やデッドタイム等を有し、入射する放射線がゼロからステップ状に変化すると、使用する放射線検出器の時定数に従って図5のように変化するが、回転体軸1がある一定量伸びるのに要する時間よりも、放射線検出器5の時定数は十分小さいと考えられるので、時定数によって検出精度が低下することはない。
【0012】
さらに、遮蔽部材6は、γ線またはβ線を遮蔽できるように高比重の物質(鉛等)とする。この遮蔽部材を放射線源3と放射線検出器5との間の所定位置に取り付けることで、回転体軸1の軸伸び量がゼロの状態において放射線検出器5で検出される線量率をゼロに近づけることが可能となり、図4に示すような所望の入出力特性を得ることができる。
このような遮蔽部材6が無いときは、軸伸び量がゼロのときでも放射線検出器5に入射する放射線が多くなり、検出精度が下がる可能性がある。
【0013】
次に、回転体軸1に対する放射線源3の設置のしかたについて説明する。
図2に示すように、回転体軸1の軸長方向に、放射線源3である放射性同位元素4を埋め込むために埋込み穴2を等間隔に設ける。
その埋込み穴2の中に放射性同位元素4(γ線またはβ線放出核種)を埋め込み、放射線が回転体軸1の軸長方向に対して垂直方向に出るように、埋込み穴の窓を適当に絞るか、または埋込み穴の深さを深くする。放射性同位元素4がγ線放出核種の場合は、放射性同位元素4が埋込み穴2から脱落しないように、埋込み穴2をエポキシ樹脂等の低比重の物質で塞ぐことができる。
この場合、適当な位置に遮蔽部材6を固定し、遮蔽部材6に重ならないように放射線検出器5を設置する。
【0014】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、放射線源3として、複数個の同種類の放射性同位元素4を回転体軸1の軸長方向に等間隔に設けた埋込み穴2に組み込む場合を示したが、図6に示すように、線状の放射性同位元素7を使用して、回転体軸1の軸長方向に溝8を加工し、その底に線状の放射性同位元素7を設置することができる。放射性同位元素7がγ線放出核種の場合は、放射性同位元素7が溝8から脱落しないように、溝8をエポキシ樹脂等の低比重の物質で塞ぐことができる。
この場合には、回転体軸1の軸伸び量に対して線量率は図7のように線形に増加する。
また、線状の放射性同位元素7として、線・円筒・四角柱など、縦長の形状に加工したものを用いることができる。
【0015】
なお、線状の放射性同位元素7を使用する場合には、図8に示すように、樹脂に粉状の放射性同位元素を混練したものを回転体軸1の軸表面に貼り付けるようにしても良いし、
溶剤に溶かした樹脂に粉状の放射性同位元素を添加・攪拌し、回転体軸1の軸表面に塗布・乾燥するようにしても良い。
【0016】
実施の形態3.
実施の形態1では、回転体軸1に軸伸びに伴う放射線検出器5での線量率の変化により軸伸び量を測定するようにしているが、放射線源3となる放射性同位元素として異なる核種を入れ、放射線検出器5においてエネルギースペクトルを分析して軸伸び量を測定しても良い。
この場合には、放射線検出器5として、エネルギースペクトルを分析できる放射線検出器を使用し、図9に示すように、回転体軸1の軸端に軸長方向に沿って等間隔に設けられた複数個の埋込み穴2に、異なるγ線放出核種である放射性同位元素9A〜9Gを設置する。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0017】
ここで、放射性同位元素9A〜9Gから放出されるγ線のエネルギーは、核種特有のものであり、核種が異なればγ線のエネルギーも異なる。
軸伸び量がゼロのときは、放射線検出器5に放射線が入射しないので図10(a)のようなエネルギースペクトルとなる。
軸伸びが発生して放射性同位元素9Aからの放射線が放射線検出器5に入射したときのエネルギースペクトル例は、図10(b)のようになり、以降、軸伸び量が増えるにつれて、図10(c)→(d)→(e)→(f)のようなエネルギースペクトルが得られる。このエネルギースペクトルをもとに軸伸び量の定量化が可能となる。
なお、図10(b)〜(f)において、A〜Eは放射性同位元素9A〜9Eによるエネルギースペクトルを示している。
【0018】
以上のようにこの実施の形態3によっても、実施の形態1と同様に、非接触かつ遠方での軸伸び量が測定できるので、装置の信頼性と安全性が向上する上、高精度の測定が可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1:回転体軸
2:埋込み穴
3:放射線源
4:放射性同位元素
5:放射線検出器
6:遮蔽部材
7:線状の放射性同位元素
8:溝
9A〜9G:異なるγ線放出核種である放射性同位元素
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線源と放射線検出器を対向配置し、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を測定する測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置として、タービン等の回転体軸に放射性同位元素等の放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、放射線検出器の検出信号に基づいて振動や伸びを検出する装置が知られている(例えば特許文献1)。
しかし、特許文献1のように回転体軸の放射線源に対して放射線検出器を単に対向配置するだけでは、回転体軸に軸伸びが発生しても放射線検出器で検出される信号の変化が小さいため軸伸びの検出は困難であることが予想される。また、検出する放射線としてγ線のような電磁波の場合や、β線のように飛程が長い場合は、軸伸びの検出はさらに困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−303103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように従来の装置では、非接触で軸伸びの測定が可能であるが、放射線源と放射線検出器を近接配置する必要がある上、軸伸びが発生してもそれによる放射線検出器での線量率の変化が小さいため、軸伸びの定量的な測定を正確に行うことが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を非接触でかつ遠方での測定が可能であり、かつ装置の信頼性と安全性が向上され高精度の測定が可能となる回転体軸の軸伸び量測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、前記回転体軸の軸長方向に沿って設けられ、前記回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源と、前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、前記回転体軸の軸伸び量を測定するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の回転体軸の軸伸び量測定装置によれば、タービンや発電機等の回転体軸の軸伸び量を非接触でかつ遠方での測定が可能でなり、かつ装置の信頼性と安全性が向上され高精度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1における放射線源の設置状態を示す回転体軸の要部断面図及び正面図である。
【図3】実施の形態1における回転体軸に軸伸びが発生した場合の状態を示す概略説明図である。
【図4】実施の形態1における回転体軸の軸伸び量と線量率の関係を示す図である。
【図5】実施の形態1に用いる放射線検出器の一般的な特性を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2における放射線源の設置状態を示す回転体軸の要部断面図及び正面図である。
【図7】実施の形態2における回転体軸の軸伸び量と線量率の関係を示す図である。
【図8】実施の形態2における放射線源の他の設置状態を示す回転体軸の正面図である。
【図9】この発明の実施の形態3における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
【図10】実施の形態3における回転体軸の軸伸びに伴うγ線のエネルギースペクトルの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における回転体軸の軸伸び量測定装置を示す概略構成図である。
図1において、タービンや発電機等の回転体軸1の軸端に、軸長方向に沿って複数個の埋込み穴2が等間隔に設けられ、これらの埋込み穴2に放射線源3としてそれぞれ同種類の放射性同位元素4が埋め込まれている。
一方、回転体軸1の半径方向(軸長方向に対し直角な方向)に放射線源3と離間して放射線源3からの放射線を検出するように固定保持された放射線検出器5が対向配置されている。
そして、放射線源3と放射線検出器5との間の所定位置に遮蔽部材6が固定保持され、回転体軸1の軸伸び量がゼロの状態において放射線検出器5への放射線の入射を遮蔽している。
【0010】
このような構成において、回転体軸1に軸伸びが発生した場合、図3に示すように遮蔽部材6で遮蔽されていた放射線源3からの放射線が放射線検出器5に入射し、回転体軸1の軸伸びに伴って、放射線検出器5によって検出される放射線の線量率が増加する。
この場合、放射線検出器5によって検出される放射線の線量率は、図4に示すように、回転体軸1に軸伸び量に伴って段階的に増加する。
このように回転体軸1に軸伸びが発生すると、それまでは遮蔽されていた放射線が放射線検出器5に到達するようになるので、放射線検出器5での線量率が増加するため、それによって軸伸び量が測定できる。
この結果、非接触かつ遠方での軸伸び量が測定できるので、装置の信頼性と安全性が向上する。
また、前述のように従来装置では軸伸びが発生してもそれによる検出器での線量率の変化が小さいため、軸伸びの定量的な測定が困難であるのに対し、この実施の形態1によれば、軸伸びが発生すると、軸伸び量がゼロの状態では遮蔽されていた放射線が放射線検出器5に到達するようになるので、軸伸びに対する線量率の変化が大きく、高精度の測定が可能となる。
【0011】
なお、この実施の形態1では、放射線源3として、放射性同位元素であるγ線またはβ線放出核種を用いることが可能あるが、γ線放出核種としては60Coよりも137Csのようにある程度の長い半減期を持つものが望ましい。
また、放射線検出器5としては、GM管、シンチレーション、半導体、電離箱等を用いることができる。これらの放射線検出器は、時定数やデッドタイム等を有し、入射する放射線がゼロからステップ状に変化すると、使用する放射線検出器の時定数に従って図5のように変化するが、回転体軸1がある一定量伸びるのに要する時間よりも、放射線検出器5の時定数は十分小さいと考えられるので、時定数によって検出精度が低下することはない。
【0012】
さらに、遮蔽部材6は、γ線またはβ線を遮蔽できるように高比重の物質(鉛等)とする。この遮蔽部材を放射線源3と放射線検出器5との間の所定位置に取り付けることで、回転体軸1の軸伸び量がゼロの状態において放射線検出器5で検出される線量率をゼロに近づけることが可能となり、図4に示すような所望の入出力特性を得ることができる。
このような遮蔽部材6が無いときは、軸伸び量がゼロのときでも放射線検出器5に入射する放射線が多くなり、検出精度が下がる可能性がある。
【0013】
次に、回転体軸1に対する放射線源3の設置のしかたについて説明する。
図2に示すように、回転体軸1の軸長方向に、放射線源3である放射性同位元素4を埋め込むために埋込み穴2を等間隔に設ける。
その埋込み穴2の中に放射性同位元素4(γ線またはβ線放出核種)を埋め込み、放射線が回転体軸1の軸長方向に対して垂直方向に出るように、埋込み穴の窓を適当に絞るか、または埋込み穴の深さを深くする。放射性同位元素4がγ線放出核種の場合は、放射性同位元素4が埋込み穴2から脱落しないように、埋込み穴2をエポキシ樹脂等の低比重の物質で塞ぐことができる。
この場合、適当な位置に遮蔽部材6を固定し、遮蔽部材6に重ならないように放射線検出器5を設置する。
【0014】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、放射線源3として、複数個の同種類の放射性同位元素4を回転体軸1の軸長方向に等間隔に設けた埋込み穴2に組み込む場合を示したが、図6に示すように、線状の放射性同位元素7を使用して、回転体軸1の軸長方向に溝8を加工し、その底に線状の放射性同位元素7を設置することができる。放射性同位元素7がγ線放出核種の場合は、放射性同位元素7が溝8から脱落しないように、溝8をエポキシ樹脂等の低比重の物質で塞ぐことができる。
この場合には、回転体軸1の軸伸び量に対して線量率は図7のように線形に増加する。
また、線状の放射性同位元素7として、線・円筒・四角柱など、縦長の形状に加工したものを用いることができる。
【0015】
なお、線状の放射性同位元素7を使用する場合には、図8に示すように、樹脂に粉状の放射性同位元素を混練したものを回転体軸1の軸表面に貼り付けるようにしても良いし、
溶剤に溶かした樹脂に粉状の放射性同位元素を添加・攪拌し、回転体軸1の軸表面に塗布・乾燥するようにしても良い。
【0016】
実施の形態3.
実施の形態1では、回転体軸1に軸伸びに伴う放射線検出器5での線量率の変化により軸伸び量を測定するようにしているが、放射線源3となる放射性同位元素として異なる核種を入れ、放射線検出器5においてエネルギースペクトルを分析して軸伸び量を測定しても良い。
この場合には、放射線検出器5として、エネルギースペクトルを分析できる放射線検出器を使用し、図9に示すように、回転体軸1の軸端に軸長方向に沿って等間隔に設けられた複数個の埋込み穴2に、異なるγ線放出核種である放射性同位元素9A〜9Gを設置する。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0017】
ここで、放射性同位元素9A〜9Gから放出されるγ線のエネルギーは、核種特有のものであり、核種が異なればγ線のエネルギーも異なる。
軸伸び量がゼロのときは、放射線検出器5に放射線が入射しないので図10(a)のようなエネルギースペクトルとなる。
軸伸びが発生して放射性同位元素9Aからの放射線が放射線検出器5に入射したときのエネルギースペクトル例は、図10(b)のようになり、以降、軸伸び量が増えるにつれて、図10(c)→(d)→(e)→(f)のようなエネルギースペクトルが得られる。このエネルギースペクトルをもとに軸伸び量の定量化が可能となる。
なお、図10(b)〜(f)において、A〜Eは放射性同位元素9A〜9Eによるエネルギースペクトルを示している。
【0018】
以上のようにこの実施の形態3によっても、実施の形態1と同様に、非接触かつ遠方での軸伸び量が測定できるので、装置の信頼性と安全性が向上する上、高精度の測定が可能となる。
【符号の説明】
【0019】
1:回転体軸
2:埋込み穴
3:放射線源
4:放射性同位元素
5:放射線検出器
6:遮蔽部材
7:線状の放射性同位元素
8:溝
9A〜9G:異なるγ線放出核種である放射性同位元素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、
前記回転体軸の軸長方向に沿って設けられ、前記回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源と、
前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、
前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、前記回転体軸の軸伸び量を測定する
ことを特徴とする回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項2】
上記放射線源は、放射性同位元素であることを特徴とする請求項1記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項3】
上記放射線源は、前記回転体軸内に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項4】
上記放射線源は、前記回転体軸の軸長方向に形成された複数個の埋込み穴に埋め込まれていることを特徴とする請求項3記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項5】
上記放射線源は、線状を有し、前記回転体軸の軸長方向に形成された溝に埋め込まれていることを特徴とする請求項3記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項6】
上記放射線源は、樹脂に粉状の放射性同位元素を混練したものを前記回転体軸の軸表面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項7】
上記放射線源は、溶剤に溶かした樹脂に粉状の放射性同位元素を添加・攪拌し、前記回転体軸の軸表面に塗布・乾燥されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項8】
回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、
前記回転体軸の軸長方向に沿って形成された複数個の穴に、異なるγ線のエネルギーを放出する複数個の放射性同位元素を配置され、前記回転体軸の半径方向にγ線を放射する放射線源と、
前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線源から入射した前記γ線のエネルギースペクトルを検出する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、
前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器に検出される前記γ線のエネルギースペクトルの変化により前記回転体軸の軸伸び量を測定する
ことを特徴とする回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項1】
回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、
前記回転体軸の軸長方向に沿って設けられ、前記回転体軸の半径方向に放射線を放射するように配置された放射線源と、
前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、
前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器で検出される放射線の線量率の変化に基づき、前記回転体軸の軸伸び量を測定する
ことを特徴とする回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項2】
上記放射線源は、放射性同位元素であることを特徴とする請求項1記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項3】
上記放射線源は、前記回転体軸内に埋め込まれていることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項4】
上記放射線源は、前記回転体軸の軸長方向に形成された複数個の埋込み穴に埋め込まれていることを特徴とする請求項3記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項5】
上記放射線源は、線状を有し、前記回転体軸の軸長方向に形成された溝に埋め込まれていることを特徴とする請求項3記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項6】
上記放射線源は、樹脂に粉状の放射性同位元素を混練したものを前記回転体軸の軸表面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項7】
上記放射線源は、溶剤に溶かした樹脂に粉状の放射性同位元素を添加・攪拌し、前記回転体軸の軸表面に塗布・乾燥されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の回転体軸の軸伸び量測定装置。
【請求項8】
回転体軸に放射線源を設けこれと放射線検出器を対向させて配置し、前記放射線検出器の検出信号に基づいて前記回転体軸の軸伸び量を測定する回転体軸の軸伸び量測定装置において、
前記回転体軸の軸長方向に沿って形成された複数個の穴に、異なるγ線のエネルギーを放出する複数個の放射性同位元素を配置され、前記回転体軸の半径方向にγ線を放射する放射線源と、
前記回転体軸の半径方向に前記放射線源と離間して対向配置され、前記放射線源から入射した前記γ線のエネルギースペクトルを検出する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置され、前記回転体軸の軸伸び量がゼロの状態において前記放射線の前記放射線検出器への入射を遮蔽する遮蔽部材とを備え、
前記回転体軸の軸伸びに伴って前記放射線検出器に検出される前記γ線のエネルギースペクトルの変化により前記回転体軸の軸伸び量を測定する
ことを特徴とする回転体軸の軸伸び量測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−257177(P2011−257177A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129840(P2010−129840)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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