説明

回転体

【課題】耐久性の向上を図ることが可能な回転体を提供する。
【解決手段】車輪14は、電気掃除機のヘッドの底面に回転可能に取り付けられ、ヘッドの移動にともなって床面に対して接触しながら回転する状態で使用される。そして、車輪14は、軸部材20と、該軸部材20の外周面を覆うように設けられた円筒状の発泡体層21とを備え、該発泡体層21の外周面には複数の繊維を静電植毛してなる円筒状の毛羽層22が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接触部に対して毛羽層が接触しながら回転する回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
このような回転体としては、例えば、電気掃除機のヘッドに回転可能に取り付けられて該ヘッドを移動させる際の車輪として使用されるものが知られている(例えば、特許文献1)。この特許文献1の回転体は円筒状のホイールの外周面に帯状のベロア材(毛羽層)を巻き付けた構成になっており、電気掃除機で床面(被接触部)を清掃する際にベロア材が床面に接触しながら該回転体が回転することで、床面を傷つけることなく静かにヘッドを移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−189939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の回転体は、円筒状のホイールの外周面に帯状のベロア材を巻き付けた構成であるため、該ベロア材の両端の突き合わせ部分にどうしても継ぎ目が形成されてしまう。このため、この継ぎ目からベロア材が捲れたり、長期間の使用にともなうベロア材のへたりによってクッション性が低下したりして、耐久性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、耐久性の向上を図ることが可能な回転体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、被接触部に対して接触しながら回転する状態で使用される回転体であって、軸部材と、該軸部材の外周面を覆うように設けられた筒状の発泡体層とを備え、前記発泡体層の外周面には複数の繊維を静電植毛してなる筒状の毛羽層が設けられていることを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、軸部材の外周面に継ぎ目が存在しない筒状の発泡体層が設けられているため、軸部材から発泡体層が捲れ難くなる。また、発泡体層がクッション性を有しているため、毛羽層がへたってもクッション性が失われることはない。したがって、耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記発泡体層の外周面における軸方向の両端部には、前記毛羽層が設けられていない非毛羽層領域が形成されていることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、発泡体層と毛羽層との接合部における軸方向の両端縁が、軸方向における発泡体層の両端縁よりも内側に位置するようになるので、回転体における軸方向の両側が物と擦れあっても、発泡体層から毛羽層を構成する各繊維が抜け落ちることを抑制することが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記発泡体層の外周面と前記毛羽層との間には、該発泡体層の外周面を平滑にする薄膜層が介在していることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、発泡体層の外周面が薄膜層によって平滑になるので、該発泡体層の外周面に静電植毛する各繊維の高さのばらつきを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性の向上を図ることが可能な回転体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の電気掃除機のヘッドを示す底面図。
【図2】図1の電気掃除機のヘッドの使用状態を示す側面図。
【図3】実施形態において、(a)は車輪の斜視図、(b)は(a)の正面図。
【図4】実施形態において、(a)は発泡体層の斜視図、(b)は発泡体層の外周面に静電植毛したときの状態を示す斜視図。
【図5】実施形態において、外周面に静電植毛がなされた発泡体層を軸部材に被せるときの状態を示す斜視図。
【図6】変更例の車輪を示す斜視図。
【図7】変更例の車輪を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の回転体を電気掃除機のヘッドに配設される車輪に具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
まず、車輪が配設される電気掃除機のヘッドの構成について説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、電気掃除機のヘッド11は、底面視略T字状をなしており、その底面11aにおける前寄りの位置には左右方向に長い矩形状の吸込口12が開口している。ヘッド11の底面11aにおいて、前端部及び後端部には左右一対の収容凹部13がそれぞれ形成されている。すなわち、ヘッド11の底面11aには、前後方向において吸込口12を挟んだ両側に収容凹部13が2つずつ設けられている。
【0016】
各収容凹部13内には回転体としての車輪14が左右方向に延びる軸線を中心に回転可能に支持された状態でそれぞれ収容されており、各車輪14の一部は各収容凹部13からそれぞれはみ出している。また、ヘッド11の後端部には接続パイプ15の一端側が該ヘッド11に対して回動可能に接続されるとともに、該接続パイプ15の他端側は電気掃除機の本体部(図示略)に接続されている。
【0017】
そして、電気掃除機の使用時には、被接触部としての床面F上における吸込口12付近の塵、埃、毛髪等の塵埃がエアとともに吸込口12及び接続パイプ15を介して電気掃除機の本体部(図示略)内へと吸い込まれるようになっている。
【0018】
次に、車輪14の構成について詳述する。
図3(a)、(b)に示すように、車輪14は、軸部材20と、該軸部材20の外側に形成された円筒状の発泡体層21と、該発泡体層21の外側に薄膜層25を介して形成された毛羽層22とを備えている。
【0019】
軸部材20は、丸棒状の軸部23と、該軸部23の中央部に配置されるとともに該軸部23における他の部分よりも径を大きくした拡径部24とを備えている。拡径部24の外周面上には該外周面全体を覆うように発泡体層21が設けられている。発泡体層21は、軸方向において、拡径部24と長さが同じになっている。
【0020】
発泡体層21の外周面全体は該外周面を平滑にする薄膜層25によって覆われており、該薄膜層25の外周面全体には複数の繊維を静電植毛してなる毛羽層22が設けられている。なお、本実施形態において、軸部材20及び発泡体層21は合成樹脂の中でも比較的軽量なABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)によって構成され、毛羽層22を構成する繊維には復元性及び耐摩耗性に優れたポリアミド繊維が採用されている。
【0021】
次に、車輪14の製造方法について説明する。
車輪14を製造する場合には、まず、押出成型法により円筒状の発泡体層21を成形する。このとき、発泡体層21の外周面上には薄膜層25が形成されるため、発泡体層21の外周面は薄膜層25によって平滑にされた状態になっている。続いて、図4(a)に示すように、成型した発泡体層21を所定の長さに切断した後、図4(b)に示すように、薄膜層25の外周面全体に接着剤を塗布して該外周面全体に所望の長さ(例えば、1mm)のポリアミド繊維を静電植毛して毛羽層22を形成する。
【0022】
続いて、射出成型法により軸部材20を成型する。このとき、軸部材20は、拡径部24の外径が発泡体層21の内径よりも若干大きくなるように成型される。続いて、軸部材20の拡径部24の外周面の数箇所に両面粘着テープを粘着する(あるいは、接着剤を塗布する)。そして、図5に示すように、発泡体層21を該発泡体層21の内径が拡径部24の外径よりも大きくなるまで弾性変形させた状態で拡径部24の外周面に被せる。すると、発泡体層21の弾性復元力により拡径部24の外周面に発泡体層21の内周面が密着した状態で粘着して固定されて車輪14が完成する。
【0023】
次に、車輪14の作用について説明する。
さて、電気掃除機によって床面Fの清掃を行う場合には、図2に示すように、まず、ヘッド11を床面F上に載せる。すると、ヘッド11に設けられた各車輪14が床面Fに当接する。この状態で電気掃除機を稼動させると、床面F上における吸込口12付近の塵、埃、毛髪等の塵埃がエアとともに吸込口12及び接続パイプ15を介して電気掃除機の本体部(図示略)内へと吸い込まれる。そして、床面F全体の清掃を行うべく、ヘッド11を該床面Fに沿って前後方向に移動させると、このヘッド11の移動に伴って各車輪14が床面F上を転動する。
【0024】
このとき、各車輪14の発泡体層21の十分なクッション性により、各車輪14が床面F上を転動する際に発生する音が効果的に抑制される。また、各車輪14の発泡体層21には継ぎ目がないため、発泡体層21に塵埃が詰まったり、軸部材20から発泡体層21が捲れたりすることもない。したがって、各車輪14は長期間の使用に耐えることができる。
【0025】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)車輪14において、軸部材20の拡径部24の外周面に継ぎ目が存在しない円筒状の発泡体層21が設けられているため、車輪14の使用時に軸部材20から発泡体層21が捲れることを抑制することができるとともに意匠性が低下することを抑制することができる。また、発泡体層21が十分なクッション性を有しているため、毛羽層22を構成している各繊維がへたってもクッション性が失われることはない。したがって、車輪14の耐久性の向上を図ることができる。
【0026】
(2)発泡体層21と毛羽層22との間には、該発泡体層21の外周面を平滑にする薄膜層25が介在している。このため、複数のセルによって凹凸が形成された発泡体層21の外周面を薄膜層25によって平滑にすることができるので、該発泡体層21の外周面に各繊維を静電植毛する際に、該各繊維の高さがばらつくことを抑えることができる。
【0027】
因みに、薄膜層25が存在しないと、セルによって凹凸が形成された状態の発泡体層21の外周面に接着剤を用いて各繊維を静電植毛しなければならないので、発泡体層21の外周面に接着剤が均一に塗布されなかったり、静電植毛した各繊維同士で高さにばらつきが生じたりしてしまうという問題がある。
【0028】
(3)車輪14は発泡体層21の外周面に各繊維を静電植毛してなる毛羽層22を設けた構成であるため、織物を織ったり編物を編んだりするという工程を介さずに、各繊維の色、長さ、太さ、材質を容易に変更することができる。
【0029】
(4)車輪14は、円柱状の拡径部24の外周面に円筒状の発泡体層21を粘着した構成であるため、発泡体層21の内径と軸部材20の拡径部24の外径とを適宜変更することで、クッション性を容易に調節することができる。
【0030】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・図6に示すように、車輪14において、発泡体層21の外周面における軸方向の両端部に毛羽層22が設けられていない非毛羽層領域30を形成するようにしてもよい。このようにすれば、発泡体層21と毛羽層22との接合部における軸方向の両端縁が、軸方向における発泡体層21の両端縁よりも内側に位置するようになる。このため、車輪14における軸方向の両側が物と擦れあっても、発泡体層21から毛羽層22を構成する各繊維が抜け落ちることを抑制することができる。すなわち、消耗の激しい車輪14における軸方向の両エッジ部分に各繊維を静電植毛しない非毛羽層領域30を形成することで、発泡体層21から毛羽層22を構成する各繊維が抜け落ちることを効果的に抑制することができる。
【0031】
・図7に示すように、車輪14において、軸部材20の拡径部24の外周面における軸方向の中央部に円環状の凹部31を形成し、該凹部31内に発泡体層21を配置するようにしてもよい。このようにすれば、発泡体層21及び毛羽層22における軸方向の両端部を凹部31の側壁によって保護することができる。この場合、発泡体層21の外周面と拡径部24の外周面との位置関係は、車輪14の用途によって適宜変更してもよい。
【0032】
・図7に示した車輪14において、凹部31の底面31aを粗面化してもよい。このようにすれば、軸部材20の拡径部24の外周面と発泡体層21の内周面との摩擦抵抗が大きくなるので、車輪14の転動時に発泡体層21が拡径部24対して周方向に滑動することを抑制することができる。
【0033】
・軸部材20において、軸部23と拡径部24とを別体に形成し、軸部23と拡径部24とを相対回転可能に構成してもよい。
・発泡体層21を構成する発泡体(フォーム材)のセルは連泡であっても単泡であってもよいが、クッション性の向上の観点から該セルを連泡にすることが好ましい。
【0034】
・2色成型によって軸部材20の外側に発泡体層21を一体に形成してもよい。この場合、軸部材20と発泡体層21とを強固に溶着するためには、軸部材20を構成する合成樹脂材料と発泡体層21を構成する合成樹脂材料とを同じにすることが好ましい。
【0035】
・車輪14は、電気掃除機のヘッド11に限らず、台車、机、椅子などのキャスターとして使用してもよい。
・軸部材20の拡径部24の外周面に、あらかじめフイルム状のホットメルト材を貼り合わせておき、その上から発泡体層21を被せ、しかる後に、このホットメルト材を熱処理により溶融してから冷却により固化させることで、軸部材20に発泡体層21を接合するようにしてもよい。このようにすれば、軸部材20と発泡体層21との粘着面(接合面)に触れることなく発泡体層21を軸部材20に被せることができるので、車輪14の製造時の作業性を向上させることができる。
【0036】
・発泡体層21(薄膜層25)の外周面に毛羽層22を静電植毛によって形成するタイミングは、軸部材20に発泡体層21を被せた後であってもよい。
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
【0037】
(イ)前記軸部材の中央部には該軸部材における他の部分よりも径を大きくした拡径部が配置されるとともに、該拡径部の外周面における軸方向の中央部には環状の凹部が形成され、
該凹部内に前記発泡体層が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の回転体。
【0038】
このようにすれば、発泡体層及び毛羽層における軸方向の両端部を凹部の側壁によって保護することができる。
(ロ)前記凹部の底面は粗面化されていることを特徴とする上記(イ)に記載の回転体。
【0039】
このようにすれば、軸部材と発泡体層との摩擦抵抗が大きくなるので、発泡体層が軸部材対して周方向に滑動することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
14…回転体としての車輪、20…軸部材、21…発泡体層、22…毛羽層、24…軸部材の拡径部、25…薄膜層、31…凹部、31a…凹部の底面、30…非毛羽層領域、F…被接触部としての床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接触部に対して接触しながら回転する状態で使用される回転体であって、
軸部材と、該軸部材の外周面を覆うように設けられた筒状の発泡体層とを備え、
前記発泡体層の外周面には複数の繊維を静電植毛してなる筒状の毛羽層が設けられていることを特徴とする回転体。
【請求項2】
前記発泡体層の外周面における軸方向の両端部には、前記毛羽層が設けられていない非毛羽層領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転体。
【請求項3】
前記発泡体層の外周面と前記毛羽層との間には、該発泡体層の外周面を平滑にする薄膜層が介在していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97994(P2011−97994A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253144(P2009−253144)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(596024426)槌屋ティスコ株式会社 (47)
【Fターム(参考)】