説明

回転偏光フィルタを備えるカメラ

本発明は、カメラおよびその他の画像撮影機器に関する。より詳しくは、本発明は、画像撮影機器の動作中に反射光を減少させる偏光フィルタを備える画像撮影機器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに関する。より詳しくは、本発明は、カメラの動作中に反射光を減少させる偏光フィルタを備えるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
反射光の影響は長い間、プロおよび初心者の写真撮影者にとって一様に共通の問題となっている。撮影対象のシーンの中のさまざまな物体からの光には、その物体の色の光だけでなく、その物体から鏡面的に反射されるかもしれない光も含まれる。ある物体からの鏡面反射は光沢または艶とも呼ばれ、たとえば自動車を光沢仕上げとする等、物体の視覚的訴求力を高めることができるが、その一方で、物体の鏡面反射はまた、その物体の色の見かけの彩度、深度または輝度を低下させることによって、視覚的インパクトを低減させる可能性もある。
【0003】
よく知られていることとして、ある物体の表面から鏡面的に反射される光は、少なくとも部分的に偏光される可能性があり、すなわち、反射光の電場ベクトルが特定の方向を向く傾向がある。反射光が偏光されるレベルまでは、写真媒体と被写体との間に偏光フィルタを設置することによって反射光を取り除くことができる。偏光フィルタは一般に、線形または円形である。
【0004】
光は、特定の方向に進んでいるとき、電場ベクトルと磁場ベクトルとを有する。これらの場のベクトルは相互に、および伝播方向に対して直交している。偏光されていない光には、電場ベクトルの好ましい方位がなく、すなわち、その電場ベクトルは、伝播方向に対して直交している場合もあれば、伝播方向を中心としたどの方位角でもありうる。光が一定の方位または方位角の電場ベクトルを有している場合、その光は、直線偏光されていると定義される。直線偏光は一般に、光が平坦な面で反射されたときに本来的に起こる。直線偏光フィルタは、特定の方向の、すなわちフィルタの偏光軸に平行な電場ベクトルを有する光だけを通過させる。偏光フィルタに入射し、フィルタを通過する光の量は、光の電場ベクトルとフィルタの偏光軸との間の角度に依存する。偏光フィルタが表面反射による偏光を抑制するためには、偏光フィルタは、その偏光軸が反射光の電場ベクトルに直交するような方位でなければならない。それによって、線形フィルタは光の60%程度をフィルムに到達しないようにブロックすることができる。
【0005】
円偏光の考え方も、直線偏光のそれと同様である。円偏光は、相互に90度位相のずれた2つの直交する線形波の組み合わせである。そのため、円偏光フィルタは、線形偏光子に、偏光フィルタを通過する光の直線偏光を円偏光に変換する4分の1波長板を加えたものにすぎない。円偏光子は、一方向に回転するすべての光子をブロックし、その一方で、反対方向に回転する光子を通過させることができる。
【0006】
よく知られていることとして、偏光フィルタは、グレアを軽減し、そうすることによって、より大きな色対比を生じさせるのに有益であるが、これは、偏光フィルタが撮影対象のシーンについて正しい方位になるように回転された場合に限られる。このため、偏光フィルタは、カメラレンズの前にねじ留めされ、撮影者がフィルタを所望の角度に回転できるようになっている。フィルタの所望の回転角度はシーンによって異なることがあるため、撮影者は、フィルタの回転を調節しながら、フィルタの効果をカメラのビューファインダで観察しなければならない。デジタルカメラのディスプレイまたは電子ビューファインダを通じてシーンを見ているときには、フィルタの好ましい回転を特定することが難しい可能性があり、これは、電子ディスプレイの画像品質がその効果を見るには不十分であるかもしれず、また、ディスプレイがディスプレイの中の色を自動的に「補正」するかもしれないからである。
【0007】
偏光フィルタは写真から不要な反射またはグレアを減少させるのに有益であるが、偏光フィルタを使用せずにシーンの写真を撮影することが好ましいときもある。このような場合の一例が、反射がシーンの視覚的訴求力を高めるときである。別の例は、低照度の場合である。偏光フィルタは光を60%までブロックできるため、必要な露出時間が容認しがたい程度まで長くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−024818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カメラおよびその他の画像撮影機器に関する。より詳しくは、本発明は、カメラの動作中に反射光を低減させる偏光フィルタを備えるカメラに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの実施形態において、カメラの内部に、レンズと電子イメージセンサとの間に配置された偏光フィルタを備えるカメラが考案される。
【0011】
本発明の別の実施形態は、写真の色対比を改善するための偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、偏光フィルタを回転させるステップと、偏光フィルタの回転の関数として電子イメージセンサの出力から彩度をモニタするステップと、彩度が最も高い偏光フィルタの回転角度を特定するステップを含む方法に関する。
【0012】
本発明のまた別の実施形態では、写真の色対比を改善するための偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、ある回転角度を有する偏光フィルタを光が通過するようにするステップと、その回転角度の偏光フィルタを通過した光の検出に応答して、画素値を作るステップと、偏光フィルタの回転角度を感知するステップと、偏光フィルタの感知された回転角度に関連付けられる画素値から、偏光フィルタによる反射抑制の影響を受ける反射抑制メトリック値を計算するステップと、偏光フィルタの複数の感知された回転角度に関連付けられた反射抑制メトリック値を比較するステップと、複数の反射抑制メトリック値の比較結果に基づいて、偏光フィルタの好ましい回転角度を決定するステップを含む方法が考案される。
【0013】
本発明の他の実施形態は、写真の色対比を改善するための偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、偏光フィルタを回転させるステップと、偏光フィルタの回転の関数として電子イメージセンサの出力から明度をモニタするステップと、明度が最も低い偏光フィルタの回転角度を特定するステップを含む方法に関する。
【0014】
本発明のまた別の実施形態は、カメラ筐体に着脱可能に取り付けられるように構成された交換可能なレンズユニットに関する。交換可能なレンズユニットは、これらに限定されないが、レンズと、偏光フィルタと、偏光フィルタを回転させるアクチュエータと、偏光フィルタの回転角度を測定する回転角度センサを備える。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態は、合成画像を生成する方法に関する。偏光フィルタを、第一の決定された反射抑制メトリック値を有する第一の角度まで回転させて、1枚の画像を撮影する。偏光フィルタを、第二の決定された反射抑制メトリック値を有する別の第二の角度まで回転させて、もう1枚の画像を撮影する。その後、この第一と第二の撮影画像を使って合成画像が生成される。例にすぎないが、第一の角度は、反射抑制が最大の角度であり、第二の角度は、第一の角度プラス90度に等しい角度である。
【0016】
本発明の上記およびその他の態様、目的、特徴および利点は、好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明、図面および付属の特許請求の範囲を参照ことによって、さらに明確に理解、評価されるであろう。
【発明の効果】
【0017】
本発明には、画像の色対比を改善する、偏光フィルタの好ましい回転角度を決定するという利点がある。偏光フィルタは、イメージセンサに入る光をフィルタ処理するように設置でき、または偏光フィルタは、光の全部がイメージセンサに入るように設置することができる。たとえば、低照度のシーンでは、光の全部がイメージセンサに到達するようにフィルタを設置することができる。
【0018】
本発明の実施形態は、下記の図面を参照すると、さらによく理解できる。図面の要素は、必ずしも相互に関して正確な縮尺とは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の実施例の正面図である。
【図2a】第二の実施例の、偏光フィルタが光路から変位されている場合の正面図である。
【図2b】第二の実施例の、偏光フィルタが光路内に配置されている場合の正面図である。
【図3】偏光フィルタの好ましい回転角度を決定する方法の概略図である。
【図4】本発明の第三の実施例の正面図である。
【図5】本発明の第四の実施例の斜視図である。
【図6】図5に示される第四の実施例の背面図である。
【図7】合成画像を生成する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
よく知られていることとして、偏光フィルタは、グレアを低減させ、そうすることによって、より大きな色対比を生じさせるのに有益である。デジタルカメラのビューファインダからシーンを見ている場合は、フィルタの好ましい回転を特定しにくいことが多く、これは、電子ディスプレイの画像品質がその効果を見るには不十分であるかもしれず、また、ディスプレイがディスプレイの中の色を自動的に「補正」するかもしれないからである。その結果、撮影者は、偏光子を外して目に当て、適正な回転を見つけ、それからフィルタをその回転角度で取り付けなおす必要があると考えるかもしれない。このことから、多くの写真にとって偏光フィルタの使用が実用的ではない。
【0021】
本発明は、この問題を解決するために、画像撮影の前に、偏光フィルタを回転させながらカメラのイメージセンサの出力をモニタまたは解析する。この解析から、偏光フィルタの所望の回転を決定することができる。すると、フィルタを所望の角度まで回転させて、画像を撮影することができる。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、カメラまたは画像撮影機器の内部の、レンズとセンサとの間に配置される偏光フィルタを提供する。フィルタとセンサの2つの構成例を図1、図2aおよび図2bに示す。
【0023】
図1において、カメラ筐体1は少なくとも1つのレンズ5を有し、このレンズを通じて、光の焦点がイメージセンサ10に合わせられる。光が撮影されるシーンからレンズを通ってイメージセンサに至るまでに辿る経路は一般に、カメラの光路と呼ばれる。イメージセンサ10は、検出された光に応答して、画素値の形で出力信号を作る。これらの信号、すなわち画素値は、画像プロセッサ15によって操作または解析可能で、画像データがカメラメモリ20に保存される。画像プロセッサ15は、コントローラ25と通信してもよい。コントローラ25は、画像プロセッサからの信号を入力として利用することができ、それに基づいて、たとえば絞りやシャッタ時間等のカメラの各種の機能および、さらにはたとえばホワイトバランス等の画像プロセッサの各種の機能を制御する。
【0024】
カメラはまた、レンズ5とイメージセンサ10との間に配置されたフィルタディスク30を備える。フィルタディスク30は、偏光セクタ35とオープンセクタ40とを有する。偏光セクタ35は、偏光軸50を有する偏光フィルタである。フィルタディスク30は、コントローラ25の制御を受けて、回転アクチュエータ45によって回転軸42の周囲で回転させることができる。これによって、偏光フィルタの偏光軸を希望通りの方位にして、撮影対象のシーンにおける表面からの不要な偏光鏡面反射がイメージセンサ10に到達しないようにすることができる。偏光フィルタは180度の回転については変化がなく、すなわち、回転角度θと回転角度θ+180°とは機能的に同じである。その結果、偏光フィルタは、360°回転できるようにしなくても、360°回転されたように機能することができる。これによって、フィルタディスク30は、偏光フィルタを含まないオープンセクタ40を有することが可能となる。そして、オープンセクタ40をイメージセンサの前で回転させることができ、そうすることによって、偏光フィルタをカメラの光路から変位させることができる。この実施形態では、偏光フィルタを回転させるアクチュエータは、偏光フィルタをカメラの光路から変位させるためのアクチュエータとして機能することができる。オープンセクタ40は、好ましくは、偏光セクタ35の偏光フィルタと同じ屈折率の光学的に透明な材料を含む。すると、イメージセンサ上の光の焦点は、フィルタリングディスクがフィルタディスク30を回転させて、偏光セクタ35またはオープンセクタ40をカメラの光路内に移動させても、変化しない。回転角度センサ47は、フィルタディスクの回転角度48を感知し、回転角度情報を含む信号をコントローラ25に送信する。
【0025】
第二の実施形態が図2aと図2bとに示される。第一の実施形態と同様に、カメラ筐体1は、光の焦点をイメージセンサに合わせる少なくとも1つのレンズ5を有する。筐体はまた、画像プロセッサ15、メモリ20およびコントローラ25を備え、これらは第一の実施形態のものと同様の機能を実行する。この実施形態では、偏光フィルタ55がキャリッジ60の上に装着されている。回転アクチュエータ75は、コントローラ25からの信号に応答して、偏光フィルタを回転軸85の周囲で回転させることができる。図2aにおいて、キャリッジ60は偏光フィルタ55とともに、キャリッジアクチュエータ65によって、偏光フィルタがカメラの光路から変位されるように移動されており、それによってフィルタ処理されていない光の焦点がイメージセンサ10に合うようになっている。図2bでは、キャリッジ60は、偏光フィルタ55をイメージセンサ10の前に位置付けるように移動される。
【0026】
そのほかにも、偏光フィルタを、それがカメラの光路内にあるときに回転させ、また偏光フィルタを変位させるために、他のアクチュエータとのフィルタ構成を採用する実施形態も想定される。図2aと図2bは、偏光フィルタ55が取り付けられているキャリッジ60が直線キャリッジガイド70に沿って移動し、偏光フィルタ55をカメラの光路から出し入れするように示しているが、キャリッジ60に回転アームを設けて、偏光フィルタ55を揺動によって光路から出し入れするようにすることもできる。いくつかの実施形態において、偏光フィルタ55の回転角度80は、回転アクチュエータ75に送信される、フィルタを時計回りまたは反時計回りに回転させるためのアクチュエータパルスの数をカウントすることによって感知してもよい。あるいは、回転エンコーダを用いて偏光フィルタ55の回転角度80を測定してもよい。このような回転エンコーダは、回転アクチュエータ75に組み込んでもよく、あるいは回転アクチュエータ75から離すこともできる。
【0027】
一眼レフカメラおよび、撮影者が交換できるレンズユニットを備えるその他のカメラの場合、偏光フィルタ55は、カメラ筐体1かレンズユニット7の中に組み込んでもよく、または、図5に示されるように、レンズユニットと着脱可能であってもよい。偏光フィルタ55がレンズユニットに組み込まれているか、レンズユニットと着脱可能であるシステムの場合、レンズユニット7は偏光フィルタ55を回転させるためのアクチュエータ45を備えていてもよい。レンズユニット内のアクチュエータ45は、レンズユニット内にモータ(図示せず)を備えていてもよく、このモータには、レンズユニット上の対応する電気コンタクト(図示せず)と接触するカメラ筐体1の電気コンタクト57によって電源供給される。あるいは、アクチュエータは、レンズユニット内に、カメラ筐体内に配置されるモータ(図示せず)からのフィルタ回転力を伝達する機械的リンク機構またはその他の機械的連結手段を備えていてもよい。カメラ筐体1の中のモータからレンズユニット内の機械的リンク機構またはその他の機械的連結手段に力を伝えることのできるレバーアーム59が示されている。レンズユニットはまた、偏光フィルタ55の回転角度80を測定する回転角度センサ47を備えていてもよく、これはレンズユニットに組み込まれるか、それと着脱可能である。
【0028】
偏光フィルタ55がイメージセンサ10に当たる光を偏光するように設置されているとき、これは、おそらくオートフォーカス時と同時に回転させることができ、イメージセンサ10の出力がフィルタ回転の関数としてモニタされる。偏光フィルタが適正に回転されると、よりよい色対比が生じるため、画像プロセッサ15で行われる画像解析処理は、彩度が最も高くなる回転角度を特定するのに使用してもよい。偏光フィルタに関するこの回転角度が、画像の撮影に使用される。低照度のシーンでは、偏光フィルタ55は、光の全部がイメージセンサ10に到達できるように配置されることができる。
【0029】
画像撮影対象のシーンの中のグレアおよび反射の抑制を評価するために使用できる1つのメトリクスは、そのシーンの中の色の深度、輝度または彩度である。ある色の彩度の1つの評価値は、
【数1】

であり、式中、a*とb*は、その色のCIE L***座標である。彩度の値は、画像内の各画素について計算することができる。画像内の全画素の平均彩度は、画像全体に関する彩度の評価値として計算することができる。そのため、異なるフィルタ回転角度での平均彩度を使って、画像撮影に使用する所望の回転角度を決定できる。このような色の彩度の計算は有効であるが、その他のメトリクスを、ある画像内で認知される色の輝度の測定値として使用できる。たとえば、画像内の各画素のa*値とb*値との絶対値を決定することができる。これら2つのパラメータの絶対値の平均を合算して、その画像で認知される色の輝度の別のメトリクスとすることができる
【0030】
偏光フィルタ55の所望の回転はまた、フィルタ偏光軸90の回転角度の関数としての画像の明度を解析することによって決定してもよい。偏光フィルタを使って除去しようとしている反射は、画像の明度を高める。したがって、偏光フィルタの回転角度の関数としての全体的な画像の明度の評価値もまた、好ましいフィルタ回転を決定するための評価値として使用することができる。表面からの偏光グレアを軽減するための適正な偏光ベクトルは、高い彩度を有するだけでなく、CIE L***座標系の中の明度成分、L*が低い。
【0031】
前述のように、画像プロセッサによって行われる彩度測定と画像明度測定は個々に、撮影対象のシーンにおける反射抑制を検出するための有効なメトリクスとなりうる。画像プロセッサ15は、撮影対象のシーンにおける反射抑制の検出に、その他の画像処理アルゴリズムを使用することができる。このようなその他のアルゴリズムまたは反射抑制メトリクスには、偏光フィルタ55の最適な回転角度80を決定するための、色輝度または彩度の測定と画像明度の測定との組み合わせが含まれていてもよい。さらに、上記の例は各画素のL***色座標に基づくものであるが、それ以外の色座標系を用いて別のメトリクスを導き出してもよい。その他のアルゴリズムで、上記の例のように全画素を関わらせるのではなく、画像の画素の一部またはサンプリングにのみ基づく色輝度の値を導き出してもよい。
【0032】
偏光フィルタの好ましい回転角度を決定する方法が図3に示される。ステップS100で、イメージセンサに当たった光が偏光フィルタを通過する。偏光フィルタは、光軸の周囲の回転角度を有する。ステップS110で、イメージセンサは、イメージセンサに当たった光の検出に基づいて、画素値を作る。ステップS120で、偏光フィルタの回転角度を感知する。回転角度の感知は、各種の手段、たとえば回転エンコーダまたは、前述のようなアクチュエータのステップの計数等によって行ってもよい。ステップS130は、画素値に基づく反射抑制メトリック値の計算を行う。前述のように、彩度等の色の輝度に関するパラメータ、または、明度に関するパラメータ、または、このようなパラメータの組み合わせを、反射抑制のメトリクスとして使用してもよい。ステップS140で、複数の回転角度の値に関連付けられる反射抑制メトリック値を比較する。S150において、比較の中に、反射抑制メトリック値の極限値を特定するステップ、すなわち、偏光フィルタの複数の回転角度に関連付けられるこのような数値の集合の中から、最大値または最小値を特定するステップを含めてもよい。たとえば、反射抑制メトリック値が画像の明度の測定値である場合には、最小値を特定することが適当であろう。これに対して、彩度に基づく反射抑制メトリック値については、最大値を特定することを含む比較を行うことが適当であろう。偏光フィルタは、それによる反射抑制の量が最低または最小である角度から90°差のある回転角度において、最大量の反射抑制を行うということがわかっているため、反射抑制が最小となる角度の決定から、反射抑制が最大となる回転角度を決定することが可能である。反射抑制メトリック値の比較はまた、S160に示すように、これらの結果を関数にあてはめるステップを含んでいてもよい。曲線あてはめについては、最適な反射抑制メトリック値を有する所望の回転角度を計算できる。このような曲線あてはめ型の比較を採用することにより、好ましい角度の選択は、試験された角度の1つに限定されない。反射抑制メトリック値の比較は、S170で反射抑制の度合いが最も高い偏光フィルタの回転角度を決定するための手段となる。撮影対象となる幅広い種類のシーンについて、このようにして決定された回転角度によって最も満足できる写真が生成され、したがって、偏光フィルタの好ましい回転角度となるであろう。すると、コントローラ25は回転アクチュエータに適当な信号を送信して、画像撮影の前に偏光フィルタを好ましい回転角度まで回転させることができる。この方法はまた、ステップS180において、偏光フィルタによる反射抑制が有意な結果をもたらすか否かを判断するための試験を行うステップを含んでいてもよい。反射の有意な縮減が見られない場合、この方法では、S190のように、偏光フィルタを光路から変位させるべきであると判断してもよい。その代わりに、またはそれに加えて、この方法では、ステップ200に示されているように、画像内の照度が低いか否かを判断するために画素値を解析してもよい。低照度の場合も、S190において、偏光フィルタを光路から変位させるべきであると判断されることになるであろう。
【0033】
多くのカメラは、撮影者が基準露出値を中心としたいくつかの露出値で複数の画像を撮影する露出ブラケッティング機能を利用できるようになっている。この機能により、撮影者は後に写真を見直して、好ましい露出レベルを判断することができる。同様に、カメラは、上述の画像処理方法によって決定された回転角度を中心としたいくつかのフィルタ回転角度で複数の写真を撮影する、偏光ブラケッティング機能を提供することも可能であろう。
【0034】
別の実施形態では、図7に示される方法によって合成画像を生成することができる。S200とS210とで、カメラはあるシーンの2枚の画像を撮影し、このとき、1枚の画像は、偏光フィルタを第一の所定の反射抑制メトリック値を有する第一の角度まで回転させた状態で撮影され、もう一方の画像は、偏光フィルタを第二の所定の反射抑制メトリック値を有する第二の角度まで回転させた状態で撮影される。例にすぎないが、第一の角度は前述の画像処理方法を使って決定することができ、第二の角度は第一の角度と90°差のある回転角度に対応する。第一の画像は彩度が最も高く、反射光の量が最小であり、第二の画像は鏡面反射光のレベルが最も高く、彩度が最も低くなるであろう。次に、S220に示されるように、これらの2つの画像を使って合成画像を生成する。写真編集ソフトウェアを使って、2つの撮影された画像の混合比を思い通りにして合成画像を生成することができる。その結果、写真編集ソフトウェアの使用により、偏光フィルタを所望の角度に有効に回転させることができる。本発明によるその他の実施形態では、3枚以上の画像を撮影して合成画像を生成することもできる。これに加え、偏光フィルタの回転角度に別の角度値を使用することができる。
【0035】
他の実施形態において、等間隔の回転角度で2枚より多い多数の写真を撮影し、偏光軸回転の全範囲分をまとめる。これによって、写真編集の選択肢がはるかに多くなる。
【0036】
本明細書で紹介するアルゴリズムは一般に、偏光フィルタの好ましい回転を特定するためには有効であるはずであるが、場合によっては、撮影者がアルゴリズムから得られたフィルタ方位を無効にしたいと希望するかもしれない。したがって、カメラはフィルタ方位の手動制御機能を備えていてもよい。
【0037】
反射抑制メトリック値をモニタリングまたは評価しながら偏光フィルタを回転させるこの工程は、偏光フィルタを特定の回転角度まで回転させるステップと、これらの角度で停止させて、各回転ステップで光を感知し、反射抑制メトリック値を計算できるようにするステップを含んでいてもよい。その代わりに、偏光フィルタが回転している間に、上記のように停止させることなく、回転させながら反射抑制メトリック値を取得することができる。偏光フィルタの好ましい回転を決定する工程は、カメラが適正なフォーカスを決定するカメラのオートフォーカス機能に続いて実行することも、あるいはオートフォーカス機能と同時に実行することも可能である。
【0038】
上述の実施形態では、反射抑制メトリック値を取得する間に偏光フィルタを回転させるためにアクチュエータが使用される。反射抑制メトリック値の解析から好ましい回転角度が決定されたら、偏光フィルタはアクチュエータを使って所望の回転角度まで回転される。図4に示される別の実施形態においては、カメラまたはレンズユニットに、偏光フィルタ55を回転させるため、または偏光フィルタ55を光路から出し入れするためのアクチュエータは組み込まれておらず、これらの操作は撮影者によって手動で行われる。回転エンコーダ等の回転角度センサ95は、偏光フィルタ55の回転角度を、それが撮影者によって回転される間に感知するために使用される。交換可能なレンズユニット7を有するシステムでは、回転角度センサ95は、レンズユニットに組み込まれてもよく(図5)、またはレンズユニットが取り付けられるカメラ筐体1に組み込まれてもよい。反射抑制メトリック値は、撮影者が偏光フィルタ55を手動で回転させている間に、回転角度センサ95の出力と一緒に取得される。画像プロセッサ15による反射抑制メトリック値と回転角度センサ95の出力との解析を通じて、偏光フィルタ55のための好ましい回転角度を決定してもよい。図6に示されるように、カメラの出力100は、おそらくカメラのディスプレイ(たとえば、ディスプレイとして実装される出力100)またはカメラのビューファインダ105の中の機能によって撮影者にフィードバックされ、これによって撮影者は偏光フィルタ55を好ましい回転角度に回転させることができる。出力として利用できるディスプレイ機能の一例は、フィルタの現在の回転角度を示す針110と、これに伴う、好ましい偏光回転角度を示す第二の針115とであり、これは、針120を使って、推奨される露出レンジ125に対する露出レベルを示していた方法とほとんど同じである。その他多くのディスプレイ機能やその他の信号も、撮影者が反射抑制メトリック値から決定された好ましい回転角度まで偏光フィルタ55を回転させることができるように、フィルタ回転角度に関するフィードバックを撮影者に提供する出力100として使用できる。
【0039】
理解すべき点として、実施例は本発明を説明するためのものにすぎず、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態の数多くの変化形を考案できるであろう。したがって、そのような変化形のすべてを、以下の特許請求の範囲およびそれと均等のものの範囲の中に含めるものとする。本明細書では本発明の具体的な実施形態について説明したが、本願はこれらの実施形態に限定されないことに留意すべきである。特に、1つの実施形態に関して説明したいずれの特徴も、適合するのであれば、他の実施形態にも使用できる。また、別の実施形態の特徴は、適合するのであれば、相互に入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 カメラ筐体、5 レンズ、7 レンズユニット、10 イメージセンサ、15 画像プロセッサ、20 メモリ、25 コントローラ、30 フィルタディスク、35 偏光セクタ、40 オープンセクタ、42 回転軸、45 回転アクチュエータ、47 回転角度センサ、48 回転角度、50 偏光軸、55 偏光フィルタ、57 電気コンタクト、59 アーム、60 キャリッジ、65 キャリッジアクチュエータ、70 キャリッジガイド、75 回転アクチュエータ、80 回転角度、85 回転軸、90 偏光軸、95 回転角度センサ、100 出力、105 カメラビューファインダ、110 現在の回転角度を示す針、115 好ましい回転角度を示す針、120 露出レベルを示す針、125 推奨される露出レンジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ筐体と、レンズと、イメージセンサと、偏光軸を有する偏光フィルタと、前記偏光軸を回転させるアクチュエータと、を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタは前記レンズと前記イメージセンサとの間に配置されていることを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタを前記カメラの光路から変位させるためのアクチュエータをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項3に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタを光路から変位させるための前記アクチュエータは、前記偏光フィルタを回転させるアクチュエータを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1に記載のカメラであって、
前記カメラは、前記偏光フィルタの好ましい回転角度を特定するための画像解析処理ソフトウェアを実行させるプロセッサをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタの前記回転角度を決定する回転角度センサをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項6に記載のカメラであって、
前記回転角度を判定するセンサは回転エンコーダを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項8】
請求項1に記載のカメラであって、
前記レンズは交換可能なレンズユニットを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項9】
請求項8に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタの偏光軸を回転させるアクチュエータは、前記交換可能なレンズユニットに組み込まれていることを特徴とするカメラ。
【請求項10】
交換可能なレンズユニットであって、
請求項8に記載のカメラに使用される前記偏光フィルタの前記偏光軸を回転させるアクチュエータを含むことを特徴とする交換可能なレンズユニット。
【請求項11】
写真の色対比を改善するために、偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、
ある回転角度を有する偏光フィルタを光が通過するようにするステップと、
前記回転角度の前記偏光フィルタを通過した光の検出に応答して画素値を作るステップと、
前記偏光フィルタの前記回転角度を感知するステップと、
前記偏光フィルタの前記感知された回転角度に関連付けられる前記画素値から、前記偏光フィルタによる反射抑制に応じて変化する反射抑制メトリック値を計算するステップと、
前記偏光フィルタの複数の感知された回転角度に関連付けられる前記反射抑制メトリック値を比較するステップと、
前記偏光フィルタの好ましい回転角度を、前記複数の反射抑制メトリック値の前記比較に基づいて決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記回転角度は画像解析処理によって特定されることを特徴とする方法。
【請求項13】
写真の色対比を改善するために、偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、
偏光フィルタを回転させるステップと、
偏光フィルタの回転の関数として明度をモニタするステップと、
明度が最低の前記偏光フィルタの回転角度を特定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
写真の色対比を改善するために、偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する方法であって、
偏光フィルタを回転させるステップと、
偏光フィルタの回転の関数として彩度をモニタするステップと、
前記彩度が最大となる前記偏光フィルタの回転角度を特定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記偏光フィルタを回転させるステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記偏光フィルタを回転させるステップは、前記偏光フィルタをステップ式に回転させることを含み、前記彩度は前記ステップの各々でモニタされることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、
前記彩度は、前記偏光フィルタの回転中にモニタされることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、
前記反射抑制に応じて変化するメトリクスは彩度に関する測定値を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
前記反射抑制に応じて変化するメトリクスは明度に関する測定値を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、
前記偏光フィルタを回転させるステップは、前記カメラのオートフォーカス機能の実行と同時に行われることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項11に記載の方法であって、
画素値から反射抑制メトリック値を計算するステップは、前記画素値の一部からの反射抑制メトリック値を計算するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
カメラ筐体と、レンズと、イメージセンサと、偏光軸を有する偏光フィルタと、前記偏光フィルタの回転角度を感知するための回転角度センサと、を備えることを特徴とするカメラ。
【請求項23】
請求項22に記載のカメラであって、
前記カメラは、前記偏光フィルタの好ましい回転角度を特定する画像解析処理ソフトウェアを実行させるためのプロセッサをさらに備えることを特徴とするカメラ。
【請求項24】
請求項23に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタの前記回転角度を感知する前記回転角度センサは、回転エンコーダを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項25】
請求項22に記載のカメラであって、
前記レンズは交換可能なレンズユニットを含むことを特徴とするカメラ。
【請求項26】
請求項25に記載のカメラであって、
前記回転角度センサは、前記交換可能なレンズユニットに組み込まれることを特徴とするカメラ。
【請求項27】
請求項22に記載のカメラであって、
前記偏光フィルタの前記回転角度に関するフィードバックを提供する出力をさらに含むことを特徴とするカメラ。
【請求項28】
請求項27に記載のカメラであって、
フィードバックを提供する前記出力は、カメラディスプレイとカメラビューファインダの一方を含むことを特徴とするカメラ。
【請求項29】
カメラ筐体に着脱可能に連結できるように構成された交換可能なレンズユニットであって、
前記レンズユニットは、レンズと、偏光フィルタと、前記偏光フィルタを回転させるアクチュエータと、前記偏光フィルタの回転角度を測定する回転角度センサと、を備えることを特徴とする交換可能なレンズユニット。
【請求項30】
請求項29に記載の交換可能なレンズユニットであって、
前記偏光フィルタは、前記交換可能なレンズユニットに着脱可能に連結できる偏光フィルタを含むことを特徴とする交換可能なレンズユニット。
【請求項31】
画像撮影機器によって撮影された2枚またはそれ以上の画像を使って合成画像を形成する方法であって、
偏光フィルタを第一の角度まで回転させて第一の画像を撮影するステップであって、前記第一の角度は第一の決定された反射抑制メトリック値を有するようなステップと、
前記偏光フィルタを別の第二の角度まで回転させて第二の画像を撮影するステップであって、前記第二の角度は第二の決定された反射抑制メトリック値を有するようなステップと、
前記第一と第二の撮影画像を使って合成画像を生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
前記第一の角度は、反射抑制が最大となる第一の角度を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、
前記第二の角度は、前記第一の角度に90度を加算したものと等しい第二の角度を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−513607(P2012−513607A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542122(P2011−542122)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/006532
【国際公開番号】WO2010/074719
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】