説明

回転切削装置

【課題】環状カッタの着脱の信頼性を向上させた回転切削装置の提供。
【解決手段】環状カッタ10が挿入される保持空間71aを画成する挿入孔部71と、挿入孔部71に対して第一位置と第二位置とを採る操作スリーブ72と、挿入孔部71に対して操作スリーブ72を第一位置から第二位置に向かう方向に付勢するバネ73とを有し、挿入孔部71には、保持空間71aを画成する壁内外を連通し壁内外を移動可能なボール74うを備える連通孔71bが形成され、操作スリーブ72は、第一の位置で連通孔71bを遮ると共にボール74と接触してボール74の一部を保持空間71a内に突出させる第一面72Aと、第二の位置で連通孔71bを遮ると共にボール74と接触しボール74を環状カッタ10から離間可能にする第二面72Bとを有する回転切削装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転切削装置、例えばボール盤においては、特許文献1に示されるように、切削刃として環状カッタを用いる場合がある。この環状カッタを用いて被加工物である金属板に穿孔する場合には、作業性向上のため、環状カッタに切削油等の切削液を供給している。環状カッタに切削液を供給するには、環状カッタが装着されるスピンドルに、環状カッタの内部に連通する切削液通路を穿設し、この切削液通路内から環状カッタに切削液を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09―168908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環状カッタは、消耗品であるため、スピンドルに対して着脱可能に構成されている。また上述のように、スピンドルから環状カッタにかけて切削液通路を形成するため、スピンドルと環状カッタとの間にはシール部材が介在し、切削液通路内を流れる切削液がスピンドルと環状カッタとの間の継ぎ目から漏れることを抑制している。本発明は、切削刃とスピンドルとの間の継ぎ目からの切削液の漏洩を抑制して、着脱時における切削刃の着脱の信頼性を向上させた回転切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、出力部と、該出力部に回転駆動され切削刃が装着されるスピンドルと、該切削刃に切削液を供給する切削液供給部と、を備え、該スピンドルは、該切削刃を保持する保持部と、該出力部と該保持部との間に介在し、該切削液供給部から該保持部へと該切削液を供給する切削液通路が画成され該切削刃の切削方向に延びる通路画成部と、を有し、該保持部は、該切削液通路に連通し該切削刃の被保持部が挿入される保持空間が形成される挿入孔部と、該挿入孔部に対して第一の位置と第二の位置とを採る操作スリーブと、該挿入孔部に対して該操作スリーブを該第一の位置から該第二の位置に向かう方向に付勢する付勢部と、を有し、該挿入孔部には、該保持空間を画成する壁に該壁内外を連通する連通孔が形成されると共に、該変通孔内に配置されて該壁内外方向に移動可能な施錠部材が設けられ、該操作スリーブは、該第一の位置で該連通孔を遮ると共に該挿入孔部に近接した位置に配置される第一面と、該第二の位置で該連通孔を遮ると共に該挿入孔部から離間した位置に配置される第二面とを有し、該第一面は該第一の位置において該施錠部材と接触して該施錠部材の一部を該保持空間内に突出させて該被保持部を保持するように構成され、該第二面は該第二の位置において該施錠部材と接触し該施錠部材が該被保持部から離間可能に構成されている回転切削装置を提供する。
【0006】
このような構成によると、切削刃の着脱時は操作スリーブを操作することにより、施錠部材を介して切削刃を固定することができるので、切削刃の着脱時における信頼性を向上させることができる。
【0007】
上記構成の回転切削装置において該スピンドルには、該切削液通路内を移動可能なピン部と、環状に構成されて該スピンドルに密着接合されるシール部と、を備え、該ピン部は、該シール部の環状の開孔内に挿入されると共に、該切削方向に移動した状態で該シール部との隙間を形成する隙間形成部と、反切削方向に移動した状態で該シール部と密着する弁部と、を有することが好ましい。
【0008】
このような構成によると、シール部で切削液通路を確実にシールすることができると共に、ピン部により切削液が切削刃に供給される状態と供給されない状態とを選択的に採ることができる。
【0009】
また上記課題を解決するために本発明は、出力部と、該出力部に回転駆動され環状カッタが装着されるスピンドルと、該環状カッタに切削液を供給する切削液供給部と、を備え、該スピンドルは、該環状カッタを保持する保持部と、該出力部と該保持部との間に介在し、該切削液供給部から該保持部へと該切削液を供給する切削液通路が画成され該切削刃の切削方向に延びる通路画成部と、を備え、該保持部は、該切削液通路に連通し該環状カッタの被保持部が挿入される保持空間が形成される挿入孔部を有し、該保持空間内には、該挿入孔部と該環状カッタとの間に介在する環状のシール部が設けられ、該シール部は、該保持空間内面において該切削液通路開口周縁に密着すると共に該環状カッタに密着し、該切削液通路からの該切削液を該筒状カッタの筒内のみに導く回転切削装置を提供する。
【0010】
このような構成によると、環状カッタとスピンドルとの間の継ぎ目部分にシール部が配置されるため、切削液の漏洩を抑制することができ、環状カッタの着脱時における信頼性を向上することができる。
【0011】
上記構成の回転切削装置において、該切削液通路内には、該切削方向・反切削方向に移動可能であると共に、該シール部の開孔内に挿入されたピン部が設けられ、該ピン部は、該切削方向に移動した状態で該シール部との隙間を形成する隙間形成部と、反切削方向に移動した状態で該シール部と密着する弁部と、を有することが好ましい。
【0012】
このような構成によると、ピン部により切削液が切削刃に供給される状態と供給されない状態とを選択的に採ることができる。
【0013】
また該シール部は、該シール部の該切削方向側において該環状カッタと密着し、該シール部の該反切削方向側において該保持部と密着する位置に配置されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、切削方向において環状カッタとスピンドルとに挟まれるようにシール部が配置される。よって環状カッタで切削する際に環状カッタに作用する付勢力により、環状カッタとスピンドルとにシール部が押し付けられ、より確実にシール部で切削液をシールすることができる。
【0015】
また上記課題を解決するために、回転し、該第一の切削液通路が形成されるスピンドルと、該スピンドルに固定され、該第一の切削液通路と連通する第二の切削液通路が形成された切削刃と、該第一の切削液通路と該第二の切削液通路との内部に設けられるセンターピンと、を有し、該第一の切削液通路と該第一の切削液通路とに切削液を供給可能な回転切削装置であって、該センターピンには、少なくとも該第一の切削液通路が外気と連通することを抑制するための遮蔽部を備えている回転切削装置を提供する。
【0016】
上記構成の回転切削装置において、該遮蔽部は、該第一の切削液通路と該第二の切削液通路との両方が外気と連通することを抑制することが好ましい。
【0017】
これらのような構成によると、切削液通路から漏れる切削液の量を低減することができる。
【0018】
また該センターピンは、上下方向に移動可能であり、該切削刃は、該スピンドルの下側に配置され、該遮蔽部は、該スピンドルの下面と該切削刃の上面との間を遮蔽するように構成されることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、一の遮蔽部により、大地値の切削液通路と外気との間の連通、及びスピンドルと切削鳩の間の連通を遮蔽することができる。また切削方向である上下方向において環状カッタとスピンドルとに挟まれるように遮蔽部が配置される。よって環状カッタで切削する際に環状カッタに作用する付勢力により、環状カッタとスピンドルとに遮蔽部が押し付けられ、より確実に遮蔽部で切削液をの漏れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の回転切削装置によれば、着脱時における切削刃の着脱の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る回転切削装置の側面断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る回転切削装置のスピンドル周辺を表す側面部分断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る回転切削装置の保持部の構成を示す断面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図6のV−V線に沿った断面図。
【図6】本発明の実施の形態に係る回転切削装置の切削時におけるスピンドル周辺を表す側面部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による回転切削装置について図1乃至図6に基づき説明する。図1に示される回転切削装置であるボール盤1は、本体2と、電磁ベース3と、モータ4と、ギア機構5と、スピンドル部6と、送り機構部8と、から主に構成されており、被削物である金属板S上に設置され、後述の保持部7に装着されるホルソー10によって金属板Sに孔を形成することができる。
【0023】
本体2は、電磁ベース3を介して、金属板S上に載置されており、モータ4等が内蔵される枠体21から主に構成され、スピンドル部収容部22とを主に有している。以下の説明においては、金属板Sから本体2に向かう方向を上方向として上下方向を定義する。また上下方向と直交する方向であって本体2からスピンドル部6に向かう方向を前方向として前後方向を定義する。送りハンドル25は、枠体21の上部に配置されており、ボール盤1を操作及び持ち運びする際の把持部として機能している。また送りハンドル25の根元部分にはモータ4のON/OFFの制御を行う駆動源スイッチ21Aが設けられている。スピンドル部収容部22は、枠体21の前側に位置しており、スピンドル部6が内蔵されている。またスピンドル部収容部22の上には、スピンドル部6に供給される切削液である切削油が貯留されるタンク23が配置されている。タンク23には、スピンドル部6へ供給される切削油の流量を調整する調整弁23Aが設けられている。またスピンドル部収容部22には、調整弁23Aから下方に向けて垂下されスピンドル部6に切削油を供給する供給管24が設けられており、供給管24の切削油が吐出される開口部分はスピンドル部6内に位置している。また本体2には、送り機構部8を操作する送りハンドル25が回動可能に設けられ、ボール盤1を持ち運びする際の持ち手となる持ち運び用ハンドル26が上部に設けられていると共に、モータ4、電磁ベース3に電力を供給する電源ケーブルが接続されている。
【0024】
電磁ベース3は、枠体21の下方に位置して金属板S表面上に設置されており、内部に通電することにより磁力を発する電磁石を有している。よって電磁ベース3は、金属板Sに磁力により吸着することができ、ボール盤1を金属板S上に安定して載置することが可能になる。電磁ベース3の上部であって後方位置には、電磁ベース3の電磁石の起動・停止を行う電磁石スイッチ3Aが設けられている。
【0025】
モータ4は枠体21内に内蔵されており、回転力を出力する出力軸部41が前後方向を軸方向とするように配置されている。前述の駆動源スイッチ21Aにより、モータ4の回転が制御されている。
【0026】
ギア機構5は、スピンドル部6とモータ4との間に介在し、ピニオンギア51と、接続ギア部52と、リングギア53とから主に構成されている。ピニオンギア51は出力軸部41の前端部分に設けられており、出力軸部41と同軸一体回転している。接続ギア部52は、枠体21に軸支され前後方向を軸方向とする軸部52Aと、軸部52Aの後端側に配置されてピニオンギア51と噛合する平ギア52Bと、軸部52Aの前端側に配置されて平ギア52Bと同軸一体回転する傘歯ギア52Cとを有している。リングギア53は、スピンドル部6に設けられており、傘歯ギア52Cと噛合してモータ4の回転力をスピンドル部6へと伝達している。またリングギア53も傘歯状のギアであるため、傘歯ギア52Cと噛合することにより、その回転軸の方向を上下方向に変えている。
【0027】
図2に示されるように、スピンドル部6は、スピンドル部収容部22内に配置され、スピンドルケース61と、スピンドル62と、ピン部であるセンターピン63とから主に構成されている。スピンドルケース61は、上下方向を軸方向とする筒状に構成され、一対のベアリング61A、61Aを介してスピンドル部収容部22に回転可能に軸支されている。スピンドルケース61の外周には、前述のリングギア53が同軸一体回転するように設けられている。またスピンドルケース61の筒状の内周面には、上下方向に延びる複数のリブ61Aが設けられている。
【0028】
スピンドル62は、通路画成部である筒状部62Aから主に構成されている。筒状部62Aの外周部分には、上下方向に延びる複数のリブ62Bが設けられている。このリブ62Bがスピンドルケース61の複数のリブ61Aとスプライン係合するように筒状部62Aは、スピンドルケース61内に収容されている。筒状部62Aがスピンドルケース61とスプライン係合するため、スピンドル62は、スピンドルケース61に対して上下動可能であると共に回転不能に構成されており、スピンドルケース61と同軸一体回転する。筒状部62Aの内部には、切削液通路62a(第一の切削液通路)が形成され、切削液通路62a内には、供給管24の下端部分が挿入されている。筒状部62Aと供給管24との間には、切削液通路62aにおいて最上部となる位置に、シール62Cが介在しており、切削油の切削液通路62aからの漏れを防止している。
【0029】
またスピンドル62において、筒状部62Aの下端部分には、ホルソー10の後述の被保持部10Bを保持する保持部7が設けられている。保持部7は、挿入孔部71と、操作スリーブ72と、バネ73と、施錠部材であるボール74とから主に構成されている。挿入孔部71は、筒状部62Aと一体であって図3に示されるように上下方向と直交する断面が略円形になるように構成されており、図2に示されるように下側に向けて開口し被保持部10Bが挿入される保持空間71aを有している。保持空間71aは、保持空間71aを画成する上端面71B位置で切削液通路62aと連通している。よって切削液通路62aを介して、保持空間71a内に切削油を供給することが可能になる。挿入孔部71において、保持空間71aを画成する周壁には、図3に示されるように保持空間71a内外を貫通する連通孔71bが周方向に均等配置されて三箇所形成されており、その連通孔71b内にそれぞれボール74が挿入されている。また図2に示されるように保持空間71aには、上端面71Bと密着して切削液通路62aの開口周囲に配置される遮蔽部であるシール部材71Cが設けられている。
【0030】
操作スリーブ72は、図3に示されるように環状であって、その環状の内周面72A(第一面)の内径が挿入孔部71の外形より僅かに大きい程度に構成され挿入孔部71の外周に配置されている。操作スリーブ72の内周面72Aには、三箇所の連通孔71bに対応する位置にそれぞれ凹部72aが形成されており、それぞれの凹部72aには凹部を画成する底面72B(第二面)が規定されている。底面72Bは、凹部72a内に位置するため、連通孔71bからの距離が内周面72Aより離間した位置になる。
【0031】
図2に示される付勢部であるバネ73は、挿入孔部71と操作スリーブ72との間に介在しており、図3に示されるように連通孔71bの開口が内周面72Aと対峙した位置である第一の位置(連通孔71bの開口が凹部72aと対峙していない状態)で操作スリーブ72と挿入孔部71とのそれぞれに両端が接続されている。よって操作スリーブ72を挿入孔部71に対して回転するように操作し、連通孔71bの開口に凹部72aが対峙する第二の位置に回転させたとしても、バネ73の付勢力により操作スリーブ72は内周面72Aが連通孔71bの開口と対峙する第一の位置に戻ろうとする。
【0032】
ボール74は、それぞれの連通孔71bに配置されており、内周面72Aと当接した状態で一部が保持空間71a内に突出し、凹部72a内に配置されて底面72Bと当接した状態で、保持空間71aから離脱するように構成されている。
【0033】
図2に示されるセンターピン63は、棒状に構成され、上端がシール部材71Cを貫通して切削液通路62a内に上下動可能に挿入されている。センターピン63において最下端は、鋭角に尖っており、ボール盤1で金属板Sに穿孔する際の芯だしに用いられている。またセンターピン63において、シール部材71Cと嵌合する位置には、上下方向と直交する断面で円形を成しシール部材71Cと全周に亘って密着する弁部63A(図4)と、弁部63Aの下側に位置してシール部材71Cとの間に隙間を形成する隙間形成部63B(図5)とが規定されている。よってセンターピン63がシール部材71Cに対して下側から上側へと移動することにより、切削液通路62aと保持空間71aとの間を連通した状態にすることができる。またセンターピン63の上方に位置する切削液通路62a内にはバネ64が内蔵されており、バネ64によりセンターピン63が下方へと付勢されている。よってセンターピン63が上側へと付勢されていない状態では、弁部63Aがシール部材71Cと嵌合して切削液通路62aと保持空間71aとの間が遮断された状態に保たれる。またセンターピン63が下方へ付勢されることにより、図2に示されるようにセンターピン63の下端が、ホルソー10の後述の切削刃10Aより下方に位置することになる。
【0034】
送り機構部8は、主に支持部81から構成されている。支持部81は、ベアリング81Aを介して保持部7を支持しており、上下方向に延びる図示せぬラックが接続されている。図示せぬラックは、本体2に設けられた図示せぬピニオンに噛合しており、図示せぬピニオンは、送りハンドル25の操作に応じて回転するように構成されている。よって送りハンドル25を操作することにより、ピニオンが回転し、ピニオンが噛合するラックが支持部81と共に上下動する。上述のようにスピンドル62はスピンドルケース61に対して上下動可能であるため、支持部81の上下動に伴ってスピンドル62も上下動することができる。
【0035】
ボール盤1に装着されるホルソー10(スチールコア、環状カッタともいう)は、筒状の切削刃10Aと、切削刃10Aに接続される被保持部10Bとから構成されており、筒状の切削刃10Aによって金属板Sを円形に切り抜いて穿孔することができる。またホルソー10の中心軸位置には、被保持部10Bの反切削刃10A側に位置する端面10Cから切削刃10A内を貫通し、センターピン63が挿通される貫通孔10a(第二の切削液通路)が形成されている。この貫通孔10aの径は、センターピン63の外形より僅かに大きくなるように構成されている。また被保持部10Bの外周部分には、ボール74の一部を挿入可能な穿孔10bが複数のボール74の数と同数形成されている。
【0036】
上記構成のボール盤1にホルソー10を装着するには、操作スリーブ72を時計回り、若しくは反時計回りに回転させて凹部72aを連通孔71bの開口と対峙する第二の位置に配置する。凹部72aが連通孔71bの開口と対峙しているため、連通孔71b内のボール74は底面72Bに接触可能な位置まで凹部72a内に待避することができる。この状態で被保持部10Bを保持空間71a内であってシール部材71Cに突き当たる位置まで上側に向けて挿入し、その後に操作スリーブ72を元に戻すことにより、ボール74の一部が穿孔10b内に挿入される。操作スリーブ72を元に戻すことにより内周面72Aが連通孔71bの開口と対峙するため、ボール74は内周面72Aと接触して保持空間71aから離脱することができなくなる。よってボール74が穿孔10b内から離脱することが無く、保持空間71a内に被保持部10Bが保持されてホルソー10が保持部7に装着される。
【0037】
尚、ホルソー10を外す時は、装着時と同様に操作スリーブ72を回転操作してボール74を凹部72b内に移動可能にすることによって、容易に保持空間71aから被保持部10Bを離脱させることができる。即ち、操作スリーブの操作により、ボール74を介してホルソー10を固定することができるので、ホルソー10の着脱時における信頼性を向上させることができる。
【0038】
ホルソー10を装着した後に、電磁石スイッチ3AをONにして電磁ベース3を金属板Sに吸着させ、その後に駆動源スイッチ21AをONにしモータ4を駆動してホルソー10を回転させ、送りハンドル25を操作して送り機構部8を介して保持部7及びスピンドル62を押し下げ穿孔を開始する。送りハンドル25を操作する前では、センターピン63の弁部63Aがシール部材71Cと嵌合しており、切削液通路62aと保持空間71aとは連通していない。この時に、センターピン63が先ず金属板Sに当接し、その後に切削刃10Aが金属板Sに当接するため、図6に示されるようにセンターピン63は保持部7に対して上側に移動する。この移動に伴い、センターピン63のシール部材71Cと嵌合している箇所が、弁部63Aから隙間形成部63Bへと変わり、切削液通路62aと保持空間71aとが連通する。尚、保持空間71aにおいて切削液通路62aが連通する箇所である上端面71Bにはシール部材71Cが密着しており、またシール部F材71Cはホルソー10の端面10Cにも密着しているため、切削液通路62aを流れる切削油は、すべてホルソー10内の空間に導かれ、ホルソー10と挿入孔部71との継ぎ目部分から切削油が漏れることはない。
【0039】
ホルソー10による穿孔が終わった後、センターピン63は、バネ64の付勢力により自動的に下方へと移動する。この移動により、センターピン63のシール部材71Cと嵌合している箇所が、隙間形成部63Bから弁部63Aへと変わり、シール部材71Cとセンターピン63との間の隙間が消滅する。これにより、切削油が不要に流れ出ることが抑制される。このようなセンターピン63とシール部材71Cとの構成を採ることにより、シール部材71Cで切削液通路62aを確実にシールすることができると共に、センターピン63により切削油がホルソー10に供給される状態と供給されない状態とを選択的に採ることができる。
【0040】
またシール部材71Cは、切削方向となる上下方向においてホルソー10と挿入孔部71とに挟まれるように配置されている。よってホルソー10で穿孔する際にホルソー10に作用する付勢力により、ホルソー10と挿入孔部71とにシール部材71Cが押し付けられ、より確実にシール部材71Cで切削油をシールすることができる。
【0041】
本実施の形態では、弁部63Aと協働し、弁部63Aが嵌合することによって切削液通路62aを閉止するシール部材71Cを、スピンドル62の下面である上端面71Bとホルソー10の上面である端面10Cとの間に配置している。これに限らず、例えば貫通孔10a内の最下端位置に弁部63Aと協働するシール部材を設け、端面10Cと上端面71Bとの間にスピンドル62とホルソー10との間のみをシールするシール部材を設けてもよい。このような構成によると、第一の切削液通路である切削液通路62a及び第二の切削液通路である貫通孔10aの両方の切削液通路と外気との連通を弁部63Aと協働するシール部材によって抑制することができ、すべての切削液通路を外気から遮断することができるので、切削液の漏れ量を低減することができる。
【符号の説明】
【0042】
1・・ボール盤 2・・本体 3・・電磁ベース 3A・・電磁石スイッチ
4・・モータ 5・・ギア機構 6・・スピンドル部 7・・保持部 8・・送り機構部
10・・ホルソー 10A・・切削刃 10B・・被保持部 10C・・端面
10a・・貫通孔 10b・・穿孔 21・・枠体 21A・・駆動源スイッチ
22・・スピンドル部収容部 23・・タンク 23A・・調整弁 24・・供給管
25・・送りハンドル 26・・持ち運び用ハンドル 41・・出力軸部
51・・ピニオンギア 52・・接続ギア部 52A・・軸部 52B・・平ギア
52C・・傘歯ギア 53・・リングギア 61・・スピンドルケース
61A・・ベアリング 61A・・リブ 62・・スピンドル 62A・・筒状部
62B・・リブ 62C・・シール 62a・・切削液通路 63・・センターピン
63A・・弁部 63B・・隙間形成部 64・・バネ 71・・挿入孔部
71B・・上端面 71C・・シール部材 71a・・保持空間 71b・・連通孔
72・・操作スリーブ 72A・・内周面 72B・・底面 72a・・凹部
73・・バネ 74・・ボール 81・・支持部 81A・・ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力部と、
該出力部に回転駆動され切削刃が装着されるスピンドルと、
該切削刃に切削液を供給する切削液供給部と、を備え、
該スピンドルは、該切削刃を保持する保持部と、該出力部と該保持部との間に介在し、該切削液供給部から該保持部へと該切削液を供給する切削液通路が画成され該切削刃の切削方向に延びる通路画成部と、を有し、
該保持部は、該切削液通路に連通し該切削刃の被保持部が挿入される保持空間が形成される挿入孔部と、
該挿入孔部に対して第一の位置と第二の位置とを採る操作スリーブと、
該挿入孔部に対して該操作スリーブを該第一の位置から該第二の位置に向かう方向に付勢する付勢部と、を有し、
該挿入孔部には、該保持空間を画成する壁に該壁内外を連通する連通孔が形成されると共に、該連通孔内に配置されて該壁内外方向に移動可能な施錠部材が設けられ、
該操作スリーブは、該第一の位置で該連通孔を遮ると共に該挿入孔部に近接した位置に配置される第一面と、該第二の位置で該連通孔を遮ると共に該挿入孔部から離間した位置に配置される第二面とを有し、
該第一面は該第一の位置において該施錠部材と接触して該施錠部材の一部を該保持空間内に突出させて該被保持部を保持するように構成され、
該第二面は該第二の位置において該施錠部材と接触し該施錠部材が該被保持部から離間可能に構成されていることを特徴とする回転切削装置。
【請求項2】
該スピンドルには、該切削液通路内を移動可能なピン部と、環状に構成されて該スピンドルに密着接合されるシール部と、を備え、
該ピン部は、該シール部の環状の開孔内に挿入されると共に、該切削方向に移動した状態で該シール部との隙間を形成する隙間形成部と、反切削方向に移動した状態で該シール部と密着する弁部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の回転切削装置。
【請求項3】
出力部と、
該出力部に回転駆動され環状カッタが装着されるスピンドルと、
該環状カッタに切削液を供給する切削液供給部と、を備え、
該スピンドルは、該環状カッタを保持する保持部と、該出力部と該保持部との間に介在し、該切削液供給部から該保持部へと該切削液を供給する切削液通路が画成され該切削刃の切削方向に延びる通路画成部と、を有し、
該保持部は、該切削液通路に連通し該環状カッタの被保持部が挿入される保持空間が形成される挿入孔部を有し、
該保持空間内には、該挿入孔部と該環状カッタとの間に介在する環状のシール部が設けられ、
該シール部は、該保持空間内面において該切削液通路開口周縁に密着すると共に該環状カッタに密着し、該切削液通路からの該切削液を該筒状カッタの筒内のみに導くことを特徴とする回転切削装置。
【請求項4】
該切削液通路内には、該切削方向・反切削方向に移動可能であると共に、該シール部の開孔内に挿入されたピン部が設けられ、
該ピン部は、該切削方向に移動した状態で該シール部との隙間を形成する隙間形成部と、反切削方向に移動した状態で該シール部と密着する弁部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の回転切削装置。
【請求項5】
該シール部は、該シール部の該切削方向側において該環状カッタと密着し、該シール部の該反切削方向側において該保持部と密着する位置に配置されていることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の回転切削装置。
【請求項6】
回転し、該第一の切削液通路が形成されるスピンドルと、
該スピンドルに固定され、該第一の切削液通路と連通する第二の切削液通路が形成された切削刃と、
該第一の切削液通路と該第二の切削液通路との内部に設けられるセンターピンと、を有し、該第一の切削液通路と該第一の切削液通路とに切削液を供給可能な回転切削装置であって、
該センターピンと協働して、少なくとも該第一の切削液通路が外気と連通することを抑制する遮蔽部を備えていることを特徴とする回転切削装置。
【請求項7】
該遮蔽部は、該第一の切削液通路と該第二の切削液通路との両方が外気と連通することを抑制することを特徴とする請求項6に記載の回転切削装置。
【請求項8】
該センターピンは、上下方向に移動可能であり、
該切削刃は、該スピンドルの下側に配置され、
該遮蔽部材は、該スピンドルの下面と、該切削刃の上面との間を遮蔽するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の回転切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177803(P2011−177803A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41873(P2010−41873)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】