説明

回転型混練装置

【課題】耐久性が向上した回転型混練装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
上下方向に延びる回転軸22の下部に回転羽根58を設けて回転軸22の上部側が駆動側となるように構成された回転型混練装置において、前記回転軸22の中間部において、接触型シール82を配置するとともに、前記接触型シール82と前記回転羽根58との間に形成される空気溜まり64に空気を供給するための空気供給通路66を形成し、前記接触型シール82と前記回転羽根58との間の前記回転軸22上に、遠心羽根65を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体と液体とを混合するための回転型混練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転式混合装置は、インペラーを有する駆動軸とケーシングとの間には、液体の漏れを防止するためのメカニカルシールを備えていた。
このような回転式混合装置としては、例えば、特許文献1に記載された回転式粉砕、混合、乳化装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−537912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この特許文献1に記載された回転式粉砕、混合、乳化装置では、メカニカルシールに粉粒状の固体物質を含む液体が接触する構造となっており、メカニカルシールに液体が接触と、その固体物質によりメカニカルシールの摩耗が促進されてメカニカルシールの耐久性が低下し、頻繁にメンテナンスを必要とした。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、装置の耐久性が向上した回転型混練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決するために、本発明の回転型混練装置は、次の構成を有している。
(1)上下方向に延びる回転軸の下部に回転羽根を設けて回転軸の上部側が駆動側となるように構成された回転型混練装置において、前記回転軸の中間部において接触型シールを配置するとともに、前記接触型シールと前記回転羽根との間に形成される気体溜まりに気体を供給するための気体供給通路を形成し、前記接触型シールと前記回転羽根との間の前記回転軸上に、遠心羽根を設けたことを特徴とする。
(2)(1)に記載する回転型混練装置において、前記遠心羽根は、円盤状のホイール部と、そのホイール部片面上を放射線方向に延びる羽根部とから構成され、前記羽根部が前記接触型シールに対向するようにして前記遠心羽根が前記回転軸上に固定されていることを特徴とする。
(3)(1)又は(2)に記載する回転型混練装置において、前記回転軸の回転を停止の際に前記気体供給通路を介して前記気体溜まりに気体を供給することを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載する回転型混練装置において、前記気体溜まりは、前記回転羽根を囲むハウジングと前記回転軸との間に区画形成されるとともに、前記気体供給通路は、前記ハウジングに形成され、さらに前記気体供給通路よりも下方位置の前記ハウジング内に前記遠心羽根を配置したことを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載する回転型混練装置において、液体を収容可能なタンクを備え、前記回転羽根と前記タンクは、略同じ高さになるように設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成を有する本発明の回転型混練装置の作用・効果について説明する。
(1)上下方向に延びる回転軸の下部に回転羽根を設けて回転軸の上部側が駆動側となるように構成された回転型混練装置において、前記回転軸の中間部において接触型シールを配置するとともに、前記接触型シールと前記回転羽根との間に形成される気体溜まりに気体を供給するための気体供給通路を形成し、前記接触型シールと前記回転羽根との間の前記回転軸上に、遠心羽根を設けたので、接触型シールの耐久性が向上するなど優れた作用効果を奏する。
【0008】
(2)(1)に記載する回転型混練装置において、前記遠心羽根は、円盤状のホイール部と、そのホイール部片面上を放射線方向に延びる羽根部とから構成され、前記羽根部が前記接触型シールに対向するようにして前記遠心羽根が前記回転軸上に固定されているので、前記回転軸の回転に伴って前記回転羽根側から上昇してきた液体は、前記遠心羽根により飛ばされて前記接触型シールと接触することがなく、接触型シールの耐久性が向上させることができ、それに伴って、メンテナンス回数を減らして管理費用を低減することができる。
(3)(1)又は(2)に記載する回転型混練装置において、前記回転軸の回転を停止の際に前記気体供給通路を介して前記気体溜まりに気体を供給するので、液体が接触型シールに接触することを防止することができ、したがって、簡単な構造で接触型シールの耐久性を向上させることができ、それに伴って、メンテナンス回数を減らして管理費用を低減することができる。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載する回転型混練装置において、前記気体溜まりは、前記回転羽根を囲むハウジングと前記回転軸との間に区画形成されるとともに、前記気体供給通路は、前記ハウジングに形成され、さらに前記気体供給通路よりも下方位置の前記ハウジング内に前記遠心羽根を配置したので、液体が接触型シールに接触することを防止することができ、したがって、簡単な構造で接触型シールの耐久性を向上させることができ、それに伴って、メンテナンス回数を減らして管理費用を低減することができる。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載する回転型混練装置において、液体を収容可能なタンクを備え、前記回転羽根と前記タンクは、略同じ高さになるように設置されているので、例えば、補助のポンプなどを必要とせず、装置全体の構造を簡素化でき、安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る粉体吸引型混練装置を概略的に示す図である。
【図2】実施形態1に係る混練装置、接触型シール装置およびベアリングユニットの断面図である。
【図3】内側回転羽根を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明に係る回転型混練装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る回転型混練装置を実施する粉体吸引型混練装置は、例えば、リチウムイオン二次電池の正極ペーストや負極ペーストを製作する際に用いられるものである。
なお、以下の実施例において図は、適宜簡略化或いは変形誇張されて描画されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも実施例と同一ではない。
【0011】
図1は、実施形態1に係る粉体吸引型混練装置を概略的に示す図である。
図1において、粉体吸引型混練装置10は、床に設置されたフレーム12を有し、そのフレーム12には、混練装置14、混練される粉体を収容可能な粉体用ホッパー16、前記混練装置14を駆動するためのモーター18が支持されている。
また、前記混練装置14には、接触型シール装置70を介してベアリングユニット20が固定されており、前記混練装置14の回転軸22は、このベアリングユニット20により回転可能に支持されている。前記回転軸22の上端は、ベルト24を介して前記モーター18に連結されており、したがって、前記モーター18によって回転軸22の上部側は回転駆動される。
【0012】
前記粉体用ホッパー16は、粉体供給パイプ26によって混練装置14と接続されており、また、前記粉体供給パイプ26には、バルブ26Aが設けられている。
床に設置されたタンク28は、溶媒や混練されたペーストを収容可能であり、供給パイプ30および帰還パイプ32を介して前記混練装置14に接続されている。なお、溶媒が本発明の液体に相当する。
図1に示す2点鎖線は、タンク28に収容される溶媒の上限液面ULを示し、前記混練装置14、前記接触型シール装置70および前記ベアリングユニット20は、上限液面ULよりも下方に位置する。つまり、前記タンク28と少なくとも前記混練装置14は、略同じ高さになるように設置されている。このように構成することにより、前記タンク28に溶媒を投入すると、液圧により溶媒が自動的に前記供給パイプ30を介して前記混練装置14に供給される。仮に、混練装置が上限液面ULよりも上方に配置されていると、タンク28に溶媒を混練装置に供給するための補助ポンプを必要とするが、本実施例の場合には、そのような補助ポンプを必要とせず、粉体吸引型混練装置10全体の構成が簡単となり、装置を安価に提供できる。
【0013】
図2は、実施形態1に係る混練装置14、接触型シール装置70およびベアリングユニット20の断面図である。
図2において、前記混練装置14のハウジング34は、前記回転軸22が上下に貫通する貫通孔38を有し、また、その下部には下方向けて開口する凹部40が形成されており、前記貫通孔38の下端は、その凹部40と連通している。また、前記ハウジング34には、粉体供給パイプ26から供給される粉体を、前記貫通孔38を介して前記凹部40に案内する粉体供給通路42が形成されており、その開放端には、粉体供給パイプ26が接続されている。さらに、前記ハウジング34の側面には、前記凹部40と連通する吐出口44が形成されており、その開放端には、前記帰還パイプ32が接続されている。
前記ハウジング34の凹部40の下方開口部は、蓋体46がネジ46Aによって固定されており、したがって、凹部40の下方開口部は、前記蓋体46により閉鎖される。前記蓋体46の中央には、吸入口48が形成されており、その吸入口48には、前記供給パイプ30が接続されている。前記ハウジング34と前記蓋体46との間の気密は、Oリング46Bにより確保されている。
【0014】
前記ハウジング34の凹部40内には、略円筒形状をなす固定羽根50がネジ50Aにより固定されており、その固定羽根50には、その内面側と外面側とを連通する複数の透孔50Bが形成されている。
前記回転軸22の下端には、内側回転羽根52がネジ52Aにより固定されており、そのホイール部52Eの外周部上下面には、図3に示すように、間隔をおいて複数の羽根部52Bが突設されている。また、前記内側回転羽根52の各羽根部52B部分において、貫通孔52Dが形成されている。
前記羽根部52Bの下端面には、略リング状をなすホイール部を有する外側回転羽根54がネジ54Aにより固定されており、そのホイール部の外周部上面からは、前記羽根部52Bと同じピッチで外側羽根部54Bが突設されている。
したがって、前記内側回転羽根52の羽根部52Bと外側回転羽根54のホイール部および前記外側羽根部54Bとにより上方に開放するスリット部56が区画形成され、そのスリット内には、前記固定羽根50が位置する。つまり、前記内側回転羽根52と前記外側羽根部54Bとに挟まれて固定羽根50が位置する構成となる。また、前記内側回転羽根52と前記外側回転羽根54とにより回転羽根58が構成され、したがって、前記凹部40は、回転羽根58により前記内側回転羽根52の前記ホイール部52E上部側の粉体室60と前記ホイール部52E下部側の液体室62に区画形成される。さらに、前記貫通孔52Dは、その下端は、羽根部52Bの内周側で、且つ内側回転羽根52のホイール部52Eの下面側、つまり液体室62側に開口し、また、その上端は、羽根部52Bの外周側で、且つ内側回転羽根52のホイール部52Eの上面側、つまり粉体室60の底部と同じ位置で開口している。
【0015】
前記ハウジング34には、前記貫通孔38の内壁と前記回転軸22の外周面との間に空気溜まり64が区画形成され、また、その空気溜まり64と連通する空気供給通路66が形成されている。また、前記空気供給通路66の下側において前記空気溜まり64の一部が膨径されて遠心羽根室64Aが形成されている。前記遠心羽根室64A内に位置するようにして前記回転軸22上には、遠心羽根65が固定されている。前記遠心羽根65は、円盤状のホイール部65Aと、そのホイール部65A片面上を放射線方向に延びる羽根部65Bとから構成され、前記羽根部65Bが後述する接触型シール82に対向するようにして前記回転軸22上に固定さている。なお、空気溜まり64が本発明の気体溜まりに相当し、また、空気供給通路66が本発明の気体供給通路に相当する。
前記空気供給通路66には、エアータンクなどの空気供給源(図示せず)と接続されたバルブ68Aを有する空気供給パイプ68が接続されている。前記空気供給源から供給される空気の空気圧は、大気圧よりも若干高めの圧力である。
さらに、前記ハウジング34には、前記凹部40と連通する空気抜き通路69が形成され、その外側開放端部は、ネジ蓋69Aにより常には閉鎖されている。
【0016】
前記粉体用ホッパー16に収容される粉体としては、正極ペーストの場合には、正極活物質、正極導電材および分散剤などである。また、負極ペーストの場合には、負極活物質、負極導電材および分散剤などである。
また、前記タンク28に収容される溶媒としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。なお、溶媒がこの発明の液体に相当する。
【0017】
前記接触型シール装置70は、前記回転軸22が貫通する貫通孔74を有するシールハウジング72を有し、また、その貫通孔74の内壁と前記回転軸22の外周面との間には、油溜まり76が区画形成されている。さらに、前記シールハウジング72には、前記油溜まり76と連通する冷却油供給通路78および冷却油排出通路80が形成されており、それぞれ接続パイプ83を介して冷却油供給源(図示せず)に接続されている。前記油溜まり76は、その上下端において前記シールハウジング72と前記回転軸22との間に設けられた接触型シール82によって閉鎖されている。したがって、上下の接触型シール82は、前記冷却油供給通路78、前記冷却油排出通路80および接続パイプ83を介して冷却油供給源から油溜まり76に供給/循環される冷却油により冷却されるように構成されている。
なお、前記シールハウジング72は、ネジ70Aによって、前記ハウジング34の上端に固定されている。また、前記油溜まり76が空間に相当し、また、前記冷却油供給通路78および冷却油排出通路80が冷却用通路に相当し、さらに、前記冷却油が冷却媒体に相当する。
【0018】
前記ベアリングユニット20は、前記回転軸22が貫通する貫通孔86を有するベアリングハウジング84を有し、そのベアリングハウジング84の上下端には、前記回転軸22を回転可能に支持するベアリング88を有する。前記ベアリングハウジング84は、ネジ84Aにより前記シールハウジング72の上端に固定されている。前記回転軸22上にはリング状の金具90が固定されており、その金具90と前記ベアリング88との間にはスペーサ92が配置されており、それによって前記回転軸22の上下方向の位置が保持される。
【0019】
以上のように構成されたものにおいて、その動作を以下に説明する。
まず、粉体供給パイプ26のバルブ26Aは閉じた状態にあり、また、空気供給パイプ68のバルブ68Aは閉じた状態にある。さらに、ネジ蓋69Aは外された状態にあり、前記空気抜き通路69(凹部40)は、開放された状態にある。
また、油溜まり76には、冷却油供給源(図示せず)から接続パイプ83および冷却油供給通路78を介して冷却油が供給され、また、油溜まり76に供給された冷却油は、冷却油排出通路80および接続パイプ83を介して冷却油供給源(図示せず)戻る。このようにして油溜まり76には、常に冷却油が循環している。これにより、接触型シール82における発熱が冷却され、接触型シール82の寿命を延ばすことができる。
【0020】
このような状態において、まず、粉体用ホッパー16に粉体を必要な量だけ収容すると共に、タンク28に溶媒を必要な量だけ収容する。すると、タンク28内の溶媒は、供給パイプ30を介して混練装置14の凹部40内にも供給され、頃合いを見計らって、ネジ蓋69Aにより空気抜き通路69を閉鎖する。この状態では、空気溜まり64には空気が存在するので、凹部40内に供給された溶媒が空気溜まり64内を上昇して溶媒が接触型シール82に接触することがない。したがって、接触型シール82に溶媒が接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。
【0021】
この状態でモーター18を回転駆動すると共に、供給パイプ30のバブル30Aを開放すると、ベルト24を介して回転軸22が回転駆動される。すると、回転軸22に固定された回転羽根58および遠心羽根65が高速で回転する。回転羽根58が高速で回転すると、内側回転羽根52の羽根部52Bの作用により、液体室62が負圧となる。供給パイプ30および吸入口48を介してタンク28から溶媒が液体室62に吸引され、さらに、羽根部52Bの間、スリット部56、固定羽根50の透孔50B、および外側回転羽根54の外側羽根部54Bを通って吐出口44から排出され、さらに、帰還パイプ32を介してタンク28に帰還する。
【0022】
溶媒が固定羽根50の透孔50Bを通過する際、流路が透孔50Bにより絞られてそこの部分での溶媒の流速が上がり、その結果、スリット部56および粉体室60が負圧となって粉体用ホッパー16に収容された粉体が粉体供給パイプ26、バルブ26Aおよび粉体供給通路42を介して粉体室60に吸引される。粉体室60に吸引された粉体は、回転する回転羽根58と固定羽根50との間でせん断されると共に吸入口48から供給された溶媒と混練されて吐出口44から排出される。
【0023】
この際、粉体室60に吸引された粉体は、回転羽根58と固定羽根50との間でせん断される前に液体室62から複数の貫通孔52D介して流入する溶媒によって十分湿潤され、そしてその後に回転羽根58と固定羽根50との間でせん断されるため、粉体によって回転羽根58と固定羽根50とが摩滅させられることがなく、装置の耐久性が向上する。
特に、リチウムイオン二次電池の正極ペーストの正極活物質の場合には、硬度が高く硬いため、回転羽根58と固定羽根50とが摩滅しやすいが、本実施例の場合そのようなことがない。
また、リチウムイオン二次電池の負極ペーストの負極活物質の場合には、比較的軟らかく、回転羽根58と固定羽根50とにより粉砕されやすいが、本実施例の場合そのようなことがない。
また、粉体室60に吸引された粉体は、複数の貫通孔52D介して流入する溶媒と液体室62から内側回転羽根52の羽根部52B間を通って流入する溶媒とによって全体的に十分に湿潤されて吐出口44されるため、従来のような中心部の粉体が湿潤され難いといった問題も発生しにくい。
【0024】
さらに、混練作業中、スリット部56において生ずる負圧により、粉体や溶媒が接触型シール82に接触することがない。したがって、接触型シール82に溶媒や粉体が接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。また万一、混練作業中、粉体や溶媒が回転軸22に沿って空気溜まり64内を上昇してきたとしても、高速に回転する遠心羽根65のホイール部65Aにより円周方向に押しやられたり、また、ホイール部65Aの接触型シール82側に位置する羽根部65Bにより発生する気流によって回転羽根58側に押し戻されたりし、その結果、それ以上の上昇は阻止される。したがって、接触型シール82に溶媒や粉体が接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。
【0025】
吐出口44から吐出される溶媒によって湿潤された粉体は、ペーストとして帰還パイプ32を介してタンク28に帰還する。
粉体用ホッパー16に収容した粉体が粉体室60に吸引され全て混練されることにより、混練作業が終了し、混練されたペーストは、タンク28に収容される。
この際、複数の貫通孔52Dを介して流入して粉体をあらかじめ湿潤させるための溶媒は、タンク28に収容された溶媒が使用されるため、あらかじめ粉体を湿潤させるために必要な溶媒の容量などを管理する必要がなく、装置全体が簡単な構造となる。
【0026】
供給パイプ30のバブル30Aを閉じ、その後、空気供給パイプ68のバルブ68Aを開けて、空気供給源(図示せず)から空気供給パイプ68、バルブ68Aおよび空気供給通路66を介して空気溜まり64に空気を供給しつつモーター18を停止させる。これにより、混練作業中に負圧となっていた空気溜まり64は、大気圧もしくはそれよりもやや高い圧力に保持され、したがって、混練されたペーストが空気溜まり64内を上昇して接触型シール82に接触することがない。したがって、接触型シール82にペーストが接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。
【0027】
以上詳述したように本実施例においては、混練作業中、スリット部56において生ずる負圧により、粉体や溶媒が接触型シール82に接触することがない。したがって、接触型シール82に溶媒や粉体が接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。また万一、混練作業中、粉体や溶媒が回転軸22に沿って空気溜まり64内を上昇してきたとしても、高速に回転する遠心羽根65のホイール部65Aにより円周方向に押しやられたり、また、ホイール部65Aの接触型シール82側に位置する羽根部65Bにより発生する気流によって回転羽根58側に押し戻されたりし、その結果、それ以上の上昇は阻止される。したがって、混練作業中に、接触型シール82に溶媒や粉体が接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。
また、混練作業の終了時に、供給パイプ30のバブル30Aを閉じ、その後、空気供給パイプ68のバルブ68Aを開けて、空気供給源(図示せず)から空気供給パイプ68、バルブ68Aおよび空気供給通路66を介して空気溜まり64に空気を供給しつつモーター18を停止させるようにしたため、混練作業中に負圧となっていた空気溜まり64は、大気圧もしくはそれよりもやや高い圧力に保持され、それにより、混練されたペーストが空気溜まり64内を上昇して接触型シール82に接触することがない。したがって、接触型シール82にペーストが接触して接触型シール82の寿命を短くすることがない。また、混練開始前や混練中も空気溜まり64によって、媒体や粉体が接触型シール82に接触することがない。したがって、混練作業の終了から次回の混練作業が開始されるまでの間、接触型シール82にペーストが接触して接触型シール82の寿命を縮めることがなく、装置のメンテナンス作業の回数が低減でき、メンテナンスコストを低減できる。
【0028】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、上述の実施例においては、空気溜まりに空気を供給したが、空気に限定されることはなく、窒素などの気体でも差し支えない。
また、上述の実施例においては、油溜まり76に冷却油を供給して接触型シール82を冷却するように構成したが、冷却油に限定されることはなく、接触型シール82が冷却できれば、液体や気体を問わず何でも差し支えない。
また、上述の実施例の接触型シール82としては、メカニカルシール、オイルシール等の色々な接触型のシールを用いることができる。
さらに、上述の実施例においては、混練装置14のハウジング34、接触型シール装置70のシールハウジング72およびベアリングユニット20のベアリングハウジング84は、別体で構成されていたが、それらを一体で構成しても差し支えない。
【符号の説明】
【0029】
10・・・粉体吸引型混練装置
14・・・混練装置
58・・・回転羽根
50・・・固定羽根
56・・・スリット部
60・・・粉体室
62・・・液体室
64・・・空気溜まり
65・・・遠心羽根
66・・・空気供給通路
70・・・接触型シール装置
82・・・接触型シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる回転軸の下部に回転羽根を設けて回転軸の上部側が駆動側となるように構成された回転型混練装置において、
前記回転軸の中間部において接触型シールを配置するとともに、前記接触型シールと前記回転羽根との間に形成される気体溜まりに気体を供給するための気体供給通路を形成し、
前記接触型シールと前記回転羽根との間の前記回転軸上に、遠心羽根を設けた
ことを特徴とする回転型混練装置。
【請求項2】
請求項1に記載する回転型混練装置において、
前記遠心羽根は、円盤状のホイール部と、そのホイール部片面上を放射線方向に延びる羽根部とから構成され、前記羽根部が前記接触型シールに対向するようにして前記遠心羽根が前記回転軸上に固定されていることを特徴とする回転型混練装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する回転型混練装置において、
前記回転軸の回転を停止の際に前記気体供給通路を介して前記気体溜まりに気体を供給することを特徴とする回転型混練装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する回転型混練装置において、
前記気体溜まりは、前記回転羽根を囲むハウジングと前記回転軸との間に区画形成されるとともに、前記気体供給通路は、前記ハウジングに形成され、
さらに前記気体供給通路よりも下方位置の前記ハウジング内に前記遠心羽根を配置したことを特徴とする回転型混練装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する回転型混練装置において、液体を収容可能なタンクを備え、前記回転羽根と前記タンクは、略同じ高さになるように設置されていることを特徴とする回転型混練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111488(P2013−111488A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256819(P2011−256819)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】