説明

回転型電気部品

【課題】操作者が良好な操作感を得ることができる回転型電気部品を提供すること。
【解決手段】回転型電気部品(1)は、中空状のハウジング(5)に回転可能かつ軸線方向へ移動可能に保持された中空状の操作軸(8)と、操作軸(8)の回転動作を検出する回転検出手段と、を備え、ハウジング(5)の底壁部に対向して配置された基部(401)と、操作軸(8)の中空部に位置する駆動部(402)と、基部(401)および駆動部(402)を連結する互いに離間した複数の連結部(403)と、を有する駆動部材(4)を設け、基部(401)が操作軸(8)の軸線方向への押圧操作に伴って押圧されることにより、駆動部(402)が当該駆動部(402)と対向配置されたプッシュスイッチを駆動可能とする構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧操作用のプッシュスイッチを駆動可能な回転型電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチ付き回転型電気部品は、回転可能かつ軸線方向へ往復動可能な操作軸を中央部に組み込むことにより、操作軸の回転操作に伴って回転検出手段(エンコーダや可変抵抗器)において操作軸の回転情報を検出し、軸線方向への押圧操作に伴ってプッシュスイッチを押圧駆動するよう構成されている。また、このような回転型電気部品において、中空状の軸受け部を有するハウジングを構成部材として用いることにより、軸受け部の内周側に照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することを可能として、電子部品の実装自由度を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−112975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の回転型電気部品では、押圧操作時に操作軸が傾いた状態で押し込まれても確実にプッシュスイッチを押圧駆動できるよう、複数のプッシュスイッチを略等間隔に配設する構成としていたため、押圧操作時にこれらのプッシュスイッチにおけるメタルコンタクト反転のタイミングが同期せず、クリック感触が重複し良好な操作感が得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、操作者が良好な操作感を得ることができる回転型電気部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転型電気部品は、中空状のハウジングに回転可能かつ軸線方向へ移動可能に保持された中空状の操作軸と、前記操作軸の回転動作を検出する回転検出手段と、を備えた回転型電気部品において、前記ハウジングの底壁部に対向して配置された基部と、前記操作軸の中空部に位置する駆動部と、前記基部および前記駆動部を連結する互いに離間した複数の連結部と、を有する駆動部材を設け、前記基部が前記操作軸の軸線方向への押圧操作に伴って押圧されることにより、前記駆動部が当該駆動部と対向配置されたプッシュスイッチを駆動可能とすることを特徴とする。
【0007】
この回転型電気部品によれば、駆動部材における駆動部と対向してプッシュスイッチが1つだけ配置されているため、押圧操作の際にクリック感触が重複することなく、操作者が良好な操作感を得ることが可能となる。また、駆動部材における基部および駆動部を連結する複数の連結部は互いに離間しているため、中空状のハウジングにおける内周側に駆動部材を設けたとしても、回転型電気部品が実装されるプリント基板における連結部間に対応する位置に、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を保つことが可能となる。なお、駆動部材は、操作軸の軸線方向に対して全体が移動せず、片持ち梁状に基部の一端部のみが移動する構成も含まれる。
【0008】
また、上記回転型電気部品において、前記基部は環状をなし、前記操作軸の軸線方向に移動可能であることが考えられる。この場合には、基部が環状をなしていることから、駆動部材の強度を高めることができるとともに、駆動部材全体をバランス良く操作軸の軸線方向に対して移動させることができるため、駆動部材の長寿命化を図ることが可能となる。
【0009】
さらに、上記回転型電気部品において、前記基部に、前記操作軸の軸線方向へ突出する複数の凸部を設け、前記凸部が前記操作軸の押圧操作に伴って押圧されることが考えられる。この場合には、駆動部材における基部に設けられた凸部が操作軸の押圧操作に伴って押圧されるため、回転する操作軸と基部との摺接面積を減らすことができ、回転トルクへの影響を低減させることが可能となる。
【0010】
さらに、上記回転型電気部品において、前記凸部が、前記連結部に対応した位置に設けられていることが考えられる。この場合には、操作軸の押圧操作に伴って凸部が押圧された際に、凸部から駆動部へ押圧力を確実に伝達することが可能となる。
【0011】
また、上記回転型電気部品において、前記プッシュスイッチは、前記ハウジングの前記底壁部の下部に配置されるとともに、固定接点を有する接点ケースと、前記固定接点に対向配置された可動接点と、から構成され、前記接点ケースは、前記ハウジングに積層されるとともに前記駆動部材の前記基部が配置される外周部と、前記駆動部に対応して設けられ前記固定接点が配置される接点保持部と、前記外周部および前記接点保持部を連結する互いに離間した複数の第2連結部と、を有することが好ましい。この場合には、接点ケースと可動接点とから構成されるプッシュスイッチを回転型電気部品に内蔵することができるので、回転型電気部品の取り扱いを容易にすることが可能となる。
【0012】
さらに、上記回転型電気部品において、前記固定接点と導通するリード端子が前記第2連結部に埋設されており、前記リード端子の一部が前記接点ケースの外部に導出していることが考えられる。この場合には、接点ケースにおける第2連結部にリード端子が埋設されているため、第2連結部の強度を向上することが可能となる。また、回転型電気部品におけるスペース効率を向上することが可能となる。
【0013】
さらに、上記回転型電気部品において、前記接点ケースは、前記ハウジングに設けられた取付部材の脚部で保持されていることが考えられる。この場合には、接点ケースを、ハウジングに精度よく位置決めして保持することが可能となる。
【0014】
また、上記回転型電気部品において、前記駆動部の先端に、弾性部材を設けることが好ましい。この場合には、初期状態の回転型電気部品において、駆動部の先端に設けられた弾性部材がプッシュスイッチに荷重を加えてプッシュスイッチに与圧を掛けることができ、実装時のがたつきを防止することが可能となる。
【0015】
さらに、上記回転型電気部品において、前記基部は、前記ハウジングの底面側に設けられた収納部に、付勢部材により前記押圧操作の方向へ付勢された状態で配置されていることが考えられる。この場合には、基部を付勢する付勢部材によって、プッシュスイッチに所望の大きさの与圧を加えることが可能となる。これにより、実装時のがたつきを効果的に防止することが可能となる。
【0016】
さらに、上記回転型電気部品において、前記基部は、前記ハウジングの底面側に設けられた収納部に配置されているとともに、前記ハウジングに設けられた取付部材の脚部で保持されていることが考えられる。この場合には、部品点数を増やすことなく、駆動部材の脱落を防止することが可能となる。
【0017】
さらに、上記回転型電気部品において、前記プッシュスイッチは、前記ハウジングが搭載されるプリント基板に実装されることが考えられる。この場合には、プッシュスイッチは回転型電気部品とは別部材となるため、プッシュスイッチを変更することにより、感触違いや作動力違いなどのバラエティ対応を容易にすることが可能となる。
【0018】
さらに、上記回転型電気部品において、前記連結部は、アーチ状であることが考えられる。この場合には、連結部が高い剛性を有する形状であるため、操作軸の押圧操作により荷重が加わっても変形しにくく、駆動部材の長寿命化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、操作者が良好な操作感を得ることができる回転型電気部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態に係る回転型電気部品を前方から見たときの分解斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る回転型電気部品を後方から見たときの分解斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の正面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の断面図である。
【図6】第2の実施の形態に係る回転型電気部品を前方から見たときの分解斜視図である。
【図7】第2の実施の形態に係る回転型電気部品を後方から見たときの分解斜視図である。
【図8】第2の実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の斜視図である。
【図9】第2の実施の形態に係る回転型電気部品を組み立てた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る回転型電気部品は、例えば、パーソナルオーディオのスイッチ等に好適なスイッチ装置として利用可能である。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る回転型電気部品1を前方から見たときの分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を後方から見たときの分解斜視図である。なお、以下においては、説明の便宜上、図1に示す左下方側を「回転型電気部品1の前方側」と呼び、図1に示す右上方側を「回転型電気部品1の後方側」と呼ぶものとする。また、図1、図2に示す上下方向を「回転型電気部品1の上下方向」と呼ぶものとする。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る回転型電気部品1は、接点ケース2と、プッシュスイッチを構成する中央固定接点207、外部固定接点208および可動接点3と、プッシュスイッチを押圧駆動する駆動部材4と、中空状の軸受け部502を有するハウジング5と、操作軸8にスプライン結合する回転体6と、回転体6の後方面に取り付けられた一対の摺動子片7と、軸受け部502の外周部に回転可能に保持される操作軸8と、一対のローラ10を保持して回転体6に弾接させる板ばね9と、ハウジング5および接点ケース2を抱持する取付部材11と、を含んで構成される。
【0024】
接点ケース2は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して円環形状を有する外周部201と、外周部の周囲を囲む前方側に突出する側壁部202と、外周部201の中心に設けられた円形状の接点保持部203と、外周部201および接点保持部203を連結する直線状の連結部204と、から構成される。外周部201および側壁部202は、収容凹部205を形成している。側壁部202の外周側には、後述する取付部材11の保持脚片112と係合する複数本(本実施の形態において4本)の係合溝202aが設けられている。また、接点ケース2の後方側の面には、係合溝202aに係合した保持脚片112の保持片112aが係合する複数個(本実施の形態において4つ)の係合部202bが設けられている(図2参照)。連結部204は、接点保持部203の周方向に略等間隔に複数本(本実施の形態において4本)形成されている。外周部201の前方側内周において、2本の連結部204に挟まれた中間位置には、それぞれ前方側に突出する凸部206が形成されている。
【0025】
また、接点保持部203の前方側には、導電性を有する金属板からなる中央固定接点207および外部固定接点208が配設されている。これらの中央固定接点207または外部固定接点208から導出してリード端子209が設けられている。リード端子209の上端部には、後方側に延出する外部接続部209aが設けられている。リード端子209は、接点ケース2の外周部201および連結部204に埋設され、中央固定接点207、外部固定接点208のみが接点保持部203の前面から露出する。連結部204にリード端子209が埋設されることにより、連結部204の強度を向上することが可能となる。また、回転型電気部品1におけるスペース効率を向上することが可能となる。なお、図1、図2においては、説明の便宜上、埋設される前の状態の中央固定接点207、外部固定接点208およびリード端子209について示している。
【0026】
接点保持部203には、可動接点3が、中央固定接点207および外部固定接点208に対向して配置される。可動接点3は、円形状のメタルコンタクト301と、円環形状のシール302と、から構成される。メタルコンタクト301は、導電性を有する金属薄板からなり、その中央がわずかに前方側にふくらんだドーム形状を有している。メタルコンタクト301の外径は、接点保持部203の外径よりも小さく形成されている。メタルコンタクト301は、周縁部を外部固定接点208に接触した状態で配設されるとともに、その中央部を中央固定接点207に対向させた状態で配設される。そして、後述する操作軸8に対する押圧操作に応じて弾性を有するメタルコンタクト301が反転し、中央固定接点207と接触するように構成されている。また、操作軸8が押圧操作から解放されると、メタルコンタクト301は弾性復帰して元の状態に戻る。シール302は、その外径が接点保持部203の外径よりもわずかに小さく形成され、その内径がメタルコンタクト301の中央部の外径と略同径に形成されている。シール302は、メタルコンタクト301の周縁部と接点保持部203の一部を覆うように配設される。このような可動接点3と、中央固定接点207および外部固定接点208とで、回転型電気部品1におけるプッシュスイッチが構成される。
【0027】
駆動部材4は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して環状をなしている。駆動部材4は、円周の一部を構成する弧形状を有し互いに分離している基部401と、基部401の中心に設けられた略円盤状の駆動部402と、基部401および駆動部402を連結する前方側に凸なアーチ状の連結部403と、から構成される。駆動部材4は、後方側の面を接点ケース2の外周部201に対向させた状態で、収容凹部205内に配置される。連結部403は、駆動部402の周方向に略等間隔に複数本(本実施の形態において4本)形成されている。基部401の前方側内周において、連結部403に対応する位置には、それぞれ前方側に突出する凸部404が形成されている。また、基部401の前方側内周において、2本の連結部403に挟まれた中間位置には、それぞれ係合部405が形成されている。この係合部405は、接点ケース2における凸部206に設けられた孔部とスナップ係合する。この構成により、駆動部材4は操作軸8の回転操作に伴って回転しないよう、回転規制される。一方、係合部405は、凸部206の孔部と前後方向にクリアランスを有した状態でスナップ係合しているため、そのクリアランスの範囲内で駆動部材4は前後方向への移動が許容されている。また、駆動部402の後方側中心には、後方側に突出する押圧部406が形成されている(図2参照)。
【0028】
ハウジング5は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、中央に前後方向に貫通した中空状の貫通孔501が設けられている。貫通孔501の前方側の外面側は略円筒形状の軸受け部502を構成する一方、貫通孔501の後方側の外面側には有底状で前方側が開口された環状の収納部503が設けられている。収納部503の外周壁部には、後述する取付部材11の保持脚片112と係合する複数本(本実施の形態において4本)の係合溝503aが設けられている。係合溝503aの後方側には、径方向外側に突出する爪部503bが設けられている。爪部503bは、後述する保持脚片112のスナップ孔112bとスナップ係合する。貫通孔501の周囲には、駆動部材4の凸部404が挿通される挿通孔504が形成されている。また、ハウジング5の後方側であって、貫通孔501の周囲には、後方側に突出する係止片505が形成されている(図2参照)。係止片505は、それぞれ挿通孔504に隣接して設けられている。係止片505には、その中央位置の前方側に、矩形状の溝部505aが形成され、後方側に、溝部505aより幅広の矩形状の溝部505bが形成されている。この溝部505aには、駆動部材4の連結部403がはめ込まれ、溝部505bには、接点ケース2の連結部204がはめ込まれる。収納部503の内底面には、導電性の金属板からなる導電パターン506が埋設されている。また、ハウジング5の後方側には、この導電パターン506から導出された外部端子506aが延出している(図2参照)。
【0029】
回転体6は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して円環形状を有している。回転体6には、中央に大径の開口部601が形成されている。回転体6は、後方側の面をハウジング5における収納部503の表面に対向させた状態で、収納部503に配置される。回転体6の開口部601の内周面には、複数本(本実施の形態において4本)の係合溝602と、複数本(本実施の形態において4本)の凹部603が設けられている。この係合溝602は、後述する操作軸8のガイド片804と係合し、凹部603は、操作軸8の係合片805と係合する。これらの係合により、回転体6は、操作軸8とスプライン結合するように構成されている。すなわち、回転体6は、操作軸8と一体的に回転するとともに、操作軸8の軸線方向の移動を許容する構成となっている。また、回転体6の前方側の面には、後述する板ばね9に保持されたローラ10が弾接することにより、回転体6が回転する際のクリック感触を生起させる複数の凹凸部からなるクリックカム604が形成されている。
【0030】
また、回転体6の後端部には、導電性の金属薄板からなる複数個(本実施の形態において2つ)の摺動子片7が固着されている。この摺動子片7は、それぞれ複数個の接片701を有している。接片701は、後方側に折り曲げられており、後述するように回転体6がハウジング5の収納部503に収納された状態において、その先端部が導電パターン506と接触する。なお、本実施の形態に係る回転型電気部品1においては、回転体6、摺動子片7および導電パターン506とで回転検出手段が構成されている。
【0031】
操作軸8は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、中空状の略円筒形状を有している。操作軸8は、基台部801と、この前端側に基台部801より細径の軸部802と、を有している。また、基台部801および軸部802の中央には、前後に貫通した中空状の挿通孔803が設けられている。この挿通孔803は、ハウジング5における軸受け部502の外周部に回転可能に保持される。軸部802の外周面には、基台部801から前方側に軸部802の前端部付近まで延在する複数本(本実施の形態において4本)のガイド片804が設けられている。これらのガイド片804は、回転体6の係合溝602と係合し、装着時における回転体6をガイドする。また、軸部802の外周面には、基台部801からわずかに前方側に延在する複数個(本実施の形態において4つ)の係合片805が設けられている。これらの係合片805は、回転体6の凹部603と係合し、操作軸8の回転を回転体6に伝達する。さらに、係合片805の前方側には、一定距離を挟んで複数個(本実施の形態において4つ)の爪部806が設けられている。これらの爪部806は、操作軸8に取り付けられる図示しない操作つまみなどの開口部と係合し、操作つまみなどを保持するものである。
【0032】
板ばね9は、弾性を有する金属板(例えば、ステンレスやリン青銅など)で形成され、概して円環形状を有している。板ばね9は、その後方側の面が回転体6のクリックカム604に対応する位置に配設される。板ばね9には、中央に中空状の挿通孔901が設けられている。挿通孔901は、操作軸8における軸部802よりわずかに大径に設けられている。また、板ばね9における所定位置には、一対のローラ保持部902が設けられている。ローラ保持部902は、ローラ10が有するシャフト101を回転可能に保持することで、ローラ10を回転可能に保持する。また、板ばね9における一対のローラ保持部902の中間位置には、一対の取付部903が設けられている。この取付部903は、取付部材11に固定される。
【0033】
取付部材11は、金属板に打ち抜き加工および折り曲げ加工を施して形成される。取付部材11は、円環形状の上板部111と、この上板部111から後方側に向けて直角に延出する複数本(本実施の形態において4本)の保持脚片112と、同じく上板部111から後方側に向けて直角に延出する複数本(本実施の形態において6本)の係合脚片113と、から構成される。また、取付部材11には、中央に中空状の挿通孔114が設けられている。挿通孔114は、操作軸8における軸部802よりわずかに大径に設けられている。保持脚片112は、組み立てられる際に後方側の先端部が径方向内側に折り曲げられる保持片112aと、略矩形状にくり抜かれて形成されたスナップ孔112bと、を有している。
【0034】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態について説明する。図3は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態の斜視図である。図4は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態の正面図である。図5は、本実施の形態に係る回転型電気部品1を組み立てた状態の断面図である。なお、図3から図5においては、操作軸8に操作を受けていない初期状態の回転型電気部品1について示している。
【0035】
図3に示すように、このような構成の回転型電気部品1を組み立てると、接点ケース2の前方側にハウジング5が重ね合わされ、これらの接点ケース2およびハウジング5に操作軸8を収容した状態でハウジング5の前方側から取付部材11が取り付けられる。この場合において、接点ケース2の収容凹部205には、駆動部材4が収容されている。一方、ハウジング5の収納部503には、回転体6および板ばね9が収容されている。操作軸8の軸部802は、取付部材11の挿通孔114から前方側に向けて露出した状態となっている。取付部材11の保持脚片112は、ハウジング5の係合溝503aおよび接点ケース2の係合溝202aと係合し、スナップ孔112bと爪部503bとがスナップ係合している。この構成により、接点ケース2を、ハウジング5に精度よく位置決めして保持することが可能となる。
【0036】
図4に示すように、軸受け部502に包囲された内方空間(貫通孔501)には、接点ケース2、可動接点3および駆動部材4が位置している。この場合において、接点ケース2の連結部204と駆動部材4の連結部403とは重なっている。また、接点保持部203と駆動部402とは、可動接点3を介して重なっている。このように、駆動部材4における複数の連結部403または接点ケース2における複数の連結部204は互いに離間しているため、ハウジング5における中空状の軸受け部502の内周側に接点ケース2や駆動部材4を設けたとしても、回転型電気部品1が実装されるプリント基板の連結部403(連結部204)間に対応する位置に、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。
【0037】
図5においては、駆動部材4における連結部403に沿って切断した場合の断面図を示している。また、図5においては、同図に示す右方側が回転型電気部品1の後方側に対応し、同図に示す左方側が回転型電気部品1の前方側に対応する。
【0038】
図5に示すように、ハウジング5は、接点ケース2における収容凹部205の開口部を閉じるように接点ケース2に重ねられている。そして、この収容凹部205に駆動部材4が配設されている。駆動部材4の後方側(図5に示す右方側)には、押圧部406に対向して可動接点3が配置されており、この可動接点3の付勢力により駆動部材4が前方側(図5に示す左方側)に付勢されている。この場合において、駆動部材4の凸部404は、ハウジング5における挿通孔504に挿通され、その前端部が操作軸8における基台部801の後方側の面と当接している。この駆動部材4において凸部404のみが操作軸8と当接するという構成により、操作軸8に対する回転操作時において、回転する操作軸8と駆動部材4における基部401との摺接面積を減らすことができ、回転トルクへの影響を低減させることが可能となる。また、基部401の前方側の面は、ハウジング5の後方側の壁部(底壁部)と当接しており、このハウジング5の底壁部が駆動部材4の受け部材を構成している。すなわち、可動接点3によって前方側に付勢された駆動部材4の動き(操作軸8の軸線方向の動き)が、ハウジング5の底壁部からなる受け部材によって規制(制限)されている。
【0039】
また、連結部403の径方向外側端部は、ハウジング5における係止片505に形成された溝部505aに係合している。一方、接点ケース2における連結部204の径方向外側端部は、係止片505に形成された溝部505bに係合している。この構成により、連結部403および連結部204が重なるよう位置付けて配置することが可能となる。また、連結部403は前方側に凸なアーチ状であるため、ストロークのためのクリアランスを確保することができる。さらに、高い剛性を有する形状であるため、操作軸8の押圧操作に伴って加わる荷重によって変形しにくく、駆動部材4の長寿命化を図ることが可能となる。
【0040】
取付部材11は、ハウジング5における収納部503の開口部を閉じるように前方側からハウジング5に取り付けられる。この場合において、取付部材11の保持脚片112は、ハウジング5の係合溝503aおよび接点ケース2の係合溝202aに沿って取り付けられ、保持片112aが接点ケース2の後方側の面に形成された係合部202bと係合し、スナップ孔112bと爪部503bとがスナップ係合している。このような構成により、取付部材11は、ハウジング5および接点ケース2を抱持している。
【0041】
収納部503には回転体6が配設されている。回転体6は、後方側から操作軸8の基台部801を収容可能な形状を有しており、この基台部801に接触した状態あるいは当接可能に近接した状態で保持される。そして、回転体6の開口部601における内周面のうち係合溝602または凹部603が形成されていない部分と、基台部801の前方側の面とが当接することで、操作軸8の前方側への移動が制限されている。このとき、回転体6の後方側の面は、導電パターン506と対向配置されており、回転体6の後方側の面に固着された摺動子片7の接片701がこの導電パターン506に接触するように構成されている。そして、このように配設された回転体6の前方側に、ローラ10を保持した板ばね9が取り付けられる。この場合において、ローラ10は、その外周面を回転体6のクリックカム604に接触させた状態で板ばね9に保持されている。なお、板ばね9は、一対の取付部903が取付部材11の対向する2本の係合脚片113に位置決めされるとともに、ローラ保持部902を変位可能な状態で、取付部材11に固定されている。
【0042】
このように構成された回転型電気部品1は、操作軸8に装着された図示しない操作つまみに対して回転操作および押圧操作が行われ、回転操作時には操作軸8が操作つまみと一体的に回転し、押圧操作時には操作軸8が操作つまみと一体的に軸線方向後方へ押し込まれる。
【0043】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品1の動作について説明する。操作者が操作つまみを介して操作軸8を回転操作すると、操作軸8にスプライン結合された回転体6が操作軸8とともに回転する。このとき、回転体6に固着された摺動子片7の接片701が、ハウジング5における導電パターン506を摺動することにより、回転方向および回転角度に則した所望の検出信号が外部端子506aから出力される。この場合において、回転体6が回転すると、クリックカム604に接触した状態で保持されているローラ10がクリックカム604に対して係脱してクリック感触が生起されるため、操作者は回転操作に伴う操作感を得ることが可能となる。
【0044】
一方、操作者が操作つまみを介して操作軸8を軸線方向に押圧操作すると、操作軸8の後方側への移動に伴って駆動部材4も後方側に移動する。この場合には、駆動部材4における凸部404が、操作軸8における基台部801の後方側の面に押圧される。凸部404は各連結部403に対応した位置に設けられているため、凸部404から駆動部402へ押圧力を確実に伝達することが可能となる。また、駆動部材4全体をバランス良く操作軸8の軸線方向に対して移動させることができるため、駆動部材4の一部のみに負荷がかかることがなくなり、駆動部材4の長寿命化を図ることが可能となる。また、駆動部402全体でプッシュスイッチを押圧することができるため、プッシュスイッチを確実に駆動させることが可能となる。
【0045】
駆動部材4が後方側に移動すると、押圧部406により可動接点3におけるメタルコンタクト301が押圧される。そして、一定位置以上にメタルコンタクト301が押圧されると、これが反転し、メタルコンタクト301の後方側の中央部が中央固定接点207と接触する。これにより、メタルコンタクト301と中央固定接点207および外部固定接点208とが導通状態となり、外部接続部209aからオン信号が出力される。そして、操作軸8に対する押圧操作が解除されると、メタルコンタクト301の弾性復帰力により駆動部材4が前方側へ付勢され、メタルコンタクト301を介した中央固定接点207と外部固定接点208との導通状態が解除される。これにより、外部接続部209aからオフ信号が出力される。この場合において、メタルコンタクト301が反転または復帰するとクリック感触が生起されるため、操作者は押圧操作に伴う操作感を得ることが可能となる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態に係る回転型電気部品1においては、駆動部材4における駆動部402と対向して、可動接点3と、中央固定接点207および外部固定接点208とで構成されるプッシュスイッチが1つだけ配置されているため、押圧操作の際にクリック感触が重複することなく、操作者が良好な操作感を得ることが可能となる。また、駆動部材4における複数の連結部403は互いに離間しているため、中空状のハウジング5における軸受け部502の内周側に駆動部材4を設けたとしても、回転型電気部品1が実装されるプリント基板における連結部403間に対応する位置に、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。
【0047】
また、プッシュスイッチを回転型電気部品1に内蔵することができるので、回転型電気部品1の取り扱いを容易にすることが可能となる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る回転型電気部品20は、ハウジングの構成、駆動部材の構成およびプッシュスイッチの構成が異なる点で第1の実施の形態に係る回転型電気部品1と相違する。以下、第2の実施の形態に係る回転型電気部品20の構成について、第1の実施の形態に係る回転型電気部品1との相違点を中心に説明する。なお、第2の実施の形態に係る回転型電気部品20において、第1の実施の形態に係る回転型電気部品1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図6は、本発明の一実施の形態に係る回転型電気部品20を前方から見たときの分解斜視図である。図7は、本実施の形態に係る回転型電気部品20を後方から見たときの分解斜視図である。図6に示すように、本実施の形態に係る回転型電気部品20は、プッシュスイッチを押圧駆動する駆動部材12および弾性部材13と、ハウジングを構成する第1ケース14および第2ケース15と、操作軸8にスプライン結合する回転体6と、回転体6の後方面に取り付けられた一対の摺動子片7と、軸受け部142の外周部に回転可能に保持される操作軸8と、一対のローラ10を保持して回転体6に弾接させる板ばね9と、第1ケース14および第2ケース15を抱持する取付部材11と、を含んで構成される。
【0050】
駆動部材12は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、概して環状をなしている。駆動部材12は、概して円環形状を有する基部121と、基部121の中心に設けられた略円柱状の駆動部122と、基部121および駆動部122を連結する前方側に凸なアーチ状の連結部123と、から構成される。連結部123は、駆動部122の周方向に略等間隔に複数本(本実施の形態において4本)形成されている。このように、駆動部材12における複数の連結部123は互いに離間しているため、後述する第1ケース14における中空状の軸受け部142の内周側に駆動部材12を設けたとしても、回転型電気部品20が実装されるプリント基板16の連結部123間に対応する位置に、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。基部121の前方側内周において、連結部123に対応する位置には、それぞれ前方側に突出する凸部124が形成されている。基部121の外周には、径方向外側に突出する凸部125および径方向内側に凹形状の係合部126が形成されている。凸部125は、第1ケース14における径方向外側に凹形状の係合部146と軸線方向に移動可能な状態でスナップ係合する。また、係合部126は、第1ケース14における径方向内側に凸形状の係合部147と軸線方向に移動可能に係合する。この構成により、駆動部材12は、操作軸8の回転操作に伴って回転しないよう、回転規制されるとともに、操作軸8の回転軸線方向への移動は許容される。一方、駆動部122の後方側には、弾性部材13をはめ込むための略円柱状の凹部127および凹部127の中心に位置する略円柱状の押圧部128が形成されている(図7参照)。押圧部128は、駆動部122の後端部より後方に突出している。
【0051】
弾性部材13は、例えば弾性ゴムで形成され、概して円柱形状をしている。弾性部材13には前面側に開口部を有する孔131が設けられている。弾性部材13は、駆動部材12に設けられた凹部127にはめ込まれるため、その外径は凹部127の内径と略同径に構成されている。また、孔131の内径は、押圧部128の外径と略同径に構成されている。弾性部材13の後端部には、略平面円形状の押圧部132が設けられている(図7参照)。
【0052】
第1ケース14は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、中央に前後方向に貫通した中空状の貫通孔141が設けられている。貫通孔141の前方側の外側面は略円筒形状の軸受け部142を構成する一方、貫通孔141の後方側の外側面には後方側が開口された環状の収納部143が設けられている。収納部143の外周壁部には、取付部材11の保持脚片112と係合する複数本(本実施の形態において4本)の係合溝143aが設けられている。貫通孔141の周囲には、駆動部材12の凸部124が挿通される挿通孔144が形成されている。また、第1ケース14の後方側であって、貫通孔141の周囲には、後方側に突出する係止片145が形成されている(図7参照)。係止片145は、それぞれ挿通孔144に隣接して設けられている。係止片145の後端部は、収納部143の側壁部後端部よりさらに後方に突出している。係止片145には、その中央位置に矩形状の溝部145aが形成されている。この溝部145aには、駆動部材12の連結部123がはめ込まれる。また、収納部143の外側内壁には、中央位置に溝部が形成された略U字形状の係合部146が形成されている。係合部146は、駆動部材12における凸部125とスナップ係合するほか、その後端部が取付部材11における保持脚片112の保持片112aと係合する。また、収納部143の外側内壁から径方向内側に向かって延出し、その内側先端部に後方側に突出する凸部が設けられた係合部147が形成されている。係合部147は、駆動部材12における係合部126と係合する。
【0053】
第2ケース15は、合成樹脂などの絶縁体で形成され、第1ケース14における収納部143と略同一の外径を有する。第2ケース15は、第1ケース14の前方側に重ね合わされた状態で配設される。第2ケース15は、中空状の略円筒状に形成され、中央に挿通孔151を有する。この挿通孔151の内径は、第1ケース14における軸受け部142の外径と略同径に構成されている。また、挿通孔151の外側に、有底状で前方側が開口された環状の収納部152が設けられている。収納部152の外周壁部には、取付部材11の保持脚片112と係合する複数本(本実施の形態において4本)の係合溝152aが設けられている。係合溝152aの後方側には、径方向外側に突出する爪部152bが設けられている。爪部152bは、保持脚片112のスナップ孔112bとスナップ係合する。また、収納部152の内底面には、導電性の金属板からなる導電パターン153が埋設されている。また、第2ケース15の後方側には、この導電パターン153から導出された外部端子153aが延出している。
【0054】
このような構成の回転型電気部品20は、第1ケース14および第2ケース15から構成されるハウジングが搭載されるプリント基板16に実装されたプッシュスイッチ17を押圧駆動する。プリント基板16には、回転型電気部品20における外部端子153aや係合脚片113を挿通するための複数個の挿通孔161が形成されている。
【0055】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品20を組み立てた状態について説明する。図8は、本実施の形態に係る回転型電気部品20を組み立てた状態の斜視図である。図9は、本実施の形態に係る回転型電気部品20を組み立てた状態の断面図である。なお、図8、図9においては、操作軸8に操作を受けていない初期状態の回転型電気部品20がプリント基板16に実装された状態について示している。
【0056】
図8に示すように、このような構成の回転型電気部品20を組み立てると、第1ケース14の前面側に第2ケース15が重ね合わされ、第1ケース14および第2ケース15で構成されるハウジングに操作軸8を収容した状態で第2ケース15の前面側から取付部材11が取り付けられる。この場合において、第1ケース14の収納部143には、弾性部材13を取り付けた駆動部材12が収容されている。一方、第2ケース15の収納部152には、回転体6および板ばね9が収容されている。操作軸8の軸部802は、取付部材11の挿通孔114から前方側に向けて露出した状態となっている。取付部材11の保持脚片112は、第2ケース15の係合溝152aおよび第1ケース14の係合溝143aと係合し、スナップ孔112bと爪部152bとがスナップ係合している。また、係合脚片113は、プリント基板16に形成された挿通孔161に挿通され、プリント基板16の後方面から突出した状態となっている。
【0057】
図9においては、駆動部材12における連結部123に沿って切断した場合の断面図を示している。また、図9においては、同図に示す右方側が回転型電気部品20の後方側に対応し、同図に示す左方側が回転型電気部品20の前方側に対応する。
【0058】
図9に示すように、回転型電気部品20は、第1ケース14の後方側に突出する係止片145の後端部がプリント基板16に当接する状態で搭載される。これにより、押圧操作に伴って駆動部材12が操作軸8の軸線方向に往復動するためのクリアランスが確保される。第1ケース14における収納部143には、弾性部材13が取り付けられた駆動部材12が配設されている。駆動部材12の後方側(図9に示す右方側)には、押圧部132に対向してプリント基板16に実装されたプッシュスイッチ17が配置されている。これにより、押圧部132がプッシュスイッチ17に荷重を加えてプッシュスイッチ17に与圧を掛けることができ、実装時のがたつきを防止することが可能となる。
【0059】
前方側(図9に示す左方側)に突出する駆動部材12の凸部124は、第1ケース14における挿通孔144に挿通され、その前端部が操作軸8における基台部801の後方側の面と当接している。この駆動部材12において凸部124のみが操作軸8と当接するという構成により、操作軸8に対する回転操作時において、回転する操作軸8と駆動部材12における基部121との摺接面積を減らすことができ、回転トルクへの影響を低減させることが可能となる。また、基部121の径方向外側(図9に示す上下方向)に突出する凸部125は、係合部146の溝部にスナップ係合され、その前方側の面が収納部143の後方側の底部(ハウジングの底壁部)と当接している。この底壁部は、駆動部材12の受け部材を構成している。すなわち、駆動部材12の前方側への動き(操作軸8の軸線方向の動き)は、底壁部からなる受け部材によって規制(制限)されている。また、連結部123の径方向外側端部は、第1ケース14における係止片145に形成された溝部145aに係合している。連結部123は前方側に凸なアーチ状であるため、ストロークのためのクリアランスを確保することができる。さらに、高い剛性を有する形状であるため、操作軸8の押圧操作に伴って加わる荷重によって変形しにくく、駆動部材12の長寿命化を図ることが可能となる。
【0060】
取付部材11は、第2ケース15における収納部152の開口部を閉じるように前方側からハウジングに取り付けられる。この場合において、取付部材11の保持脚片112は、第2ケース15の係合溝152aおよび第1ケース14の係合溝143aに沿って取り付けられている。このとき、保持片112aは、第1ケース14の係合部146の後端部と係合する。すなわち、駆動部材12の後方側への動きは、保持片112aによって規制されている。この構成により、部品点数を増やすことなく、駆動部材12の脱落を防止することが可能となる。また、保持脚片112に形成されたスナップ孔112bは、爪部152bとスナップ係合している。このような構成により、取付部材11は、第1ケース14および第2ケース15からなるハウジング全体を抱持している。
【0061】
収納部152には回転体6が配設されている。回転体6は、後方側から操作軸8の基台部801を収容可能な形状を有しており、この基台部801に接触した状態あるいは当接可能に近接した状態で保持される。そして、回転体6の開口部601における内周面のうち係合溝602または凹部603が形成されていない部分と、基台部801の前方側の面とが当接することで、操作軸8の前方側への移動が制限されている。このとき、回転体6の後方側の面は、導電パターン153と対向配置されており、回転体6の後方側の面に固着された摺動子片7の接片701がこの導電パターン153に接触するように構成されている。そして、このように配設された回転体6の前方側に、ローラ10を保持した板ばね9が取り付けられる。この場合において、ローラ10は、その外周面を回転体6のクリックカム604に接触させた状態で板ばね9に保持されている。なお、板ばね9は、一対の取付部903が取付部材11の対向する2本の係合脚片113に位置決めされるとともに、ローラ保持部902を変位可能な状態で、取付部材11に固定されている。また、板ばね9は、駆動部材12における基部121を、回転体6および操作軸8における基台部801を介して押圧操作方向へ付勢している。この場合には、板ばね9によって、駆動部122の先端に取り付けられた弾性部材13がプッシュスイッチ17に加える荷重を調整することができ、プッシュスイッチ17に所望の荷重を加えることが可能となる。これにより、実装時のがたつきを効果的に防止することが可能となる。
【0062】
このように構成された回転型電気部品20は、操作軸8に装着された図示しない操作つまみに対して回転操作および押圧操作が行われ、回転操作時には操作軸8が操作つまみと一体的に回転し、押圧操作時には操作軸8が操作つまみと一体的に軸線方向後方へ押し込まれる。
【0063】
続いて、本実施の形態に係る回転型電気部品20の動作について説明する。操作者が操作つまみを介して操作軸8を回転操作すると、操作軸8にスプライン結合された回転体6が操作軸8とともに回転する。このとき、回転体6に固着された摺動子片7の接片701が、第2ケース15における導電パターン153を摺動することにより、回転方向および回転角度に則した所望の検出信号が外部端子153aから出力される。この場合において、回転体6が回転すると、クリックカム604に接触した状態で保持されているローラ10がクリックカム604に対して係脱してクリック感触が生起されるため、操作者は回転操作に伴う操作感を得ることが可能となる。
【0064】
一方、操作者が操作つまみを介して操作軸8を軸線方向へ押圧操作すると、操作軸8の後方側への移動に伴って駆動部材12も後方側に移動する。この場合には、駆動部材12における凸部124が、操作軸8における基台部801の後方側の面に押圧される。凸部124は各連結部123に対応した位置に設けられているため、凸部124から駆動部122への押圧力を確実に伝達することが可能となる。また、駆動部材12全体をバランス良く操作軸8の軸線方向に対して移動させることができるため、駆動部材12の一部のみに負荷がかかることがなくなり、駆動部材12の長寿命化を図ることが可能となる。また、駆動部122全体でプッシュスイッチ17を押圧することができるため、プッシュスイッチ17を確実に駆動させることが可能となる。
【0065】
駆動部材12が後方側に移動すると、押圧部132によりプッシュスイッチ17が押圧されてオン状態となる。そして、操作軸8に対する押圧操作が解除されると、プッシュスイッチ17の復帰力により駆動部材12が前方側へ付勢され、プッシュスイッチ17のオン状態が解除される。この場合において、プッシュスイッチ17を押圧または復帰するとクリック感触が生起されるため、操作者は押圧操作に伴う操作感を得ることが可能となる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る回転型電気部品20においては、駆動部材12における駆動部122と対向して、プッシュスイッチ17が1つだけ配置されているため、押圧操作の際にクリック感触が重複することなく、操作者が良好な操作感を得ることが可能となる。また、駆動部材12における複数の連結部123は互いに離間しているため、中空状の第1ケース14における軸受け部142の内周側に駆動部材12を設けたとしても、回転型電気部品20が実装されるプリント基板16における連結部123間に対応する位置に、照光用の発光ダイオードや他の電子部品を配置することができ、電子部品の実装自由度を向上することが可能となる。
【0067】
また、プッシュスイッチ17は回転型電気部品20とは別部材となるため、プッシュスイッチ17を変更することにより、感触違いや作動力違いなどのバラエティ対応を容易にすることが可能となる。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0069】
例えば、第1の実施の形態においては、駆動部材4における基部401が円周の一部を構成する弧形状を有し互いに分離している構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、駆動部材4における基部401は、円周部全体、すなわち概して円環形状を有する構成であってもよい。同様に、第2の実施の形態においては、駆動部材12における基部121が円周部全体、すなわち概して円環形状を有する構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、駆動部材12における基部121は、円周の一部を構成する弧形状を有し互いに分離している構成であってもよい。
【0070】
また、第2の実施の形態においては、ハウジングが別部材である第1ケース14および第2ケース15から構成される構成について説明しているが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、ハウジングは、第1ケース14および第2ケース15が一体化した構成であってもよい。
【0071】
また、第2の実施の形態においては、駆動部材12の駆動部122に弾性部材13を取り付けた構成について説明しているが、この構成に限定されず、弾性部材13を用いずに駆動部材12の押圧部128がプッシュスイッチ17を直接押圧する構成であってもよい。また、押圧部128あるいは押圧部132とプッシュスイッチ17とのガタツキを抑えるための板ばね等からなる付勢部材を、第1ケース14(ハウジング)の収納部143に設けて、この付勢部材により、駆動部材12の基部121が押圧操作方向へ付勢されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 回転型電気部品
2 接点ケース
201 外周部
202 側壁部
202a 係合溝
202b 係合部
203 接点保持部
204 連結部(第2連結部)
205 収容凹部
206 凸部
207 中央固定接点
208 外部固定接点
209 リード端子
209a 外部接続部
3 可動接点
301 メタルコンタクト
302 シール
4 駆動部材
401 基部
402 駆動部
403 連結部
404 凸部
405 係合部
406 押圧部
5 ハウジング
501 貫通孔
502 軸受け部
503 収納部
503a 係合溝
503b 爪部
504 挿通孔
505 係止片
505a,505b 溝部
506 導電パターン
506a 外部端子
6 回転体
601 開口部
602 係合溝
603 凹部
604 クリックカム
7 摺動子片
701 接片
8 操作軸
801 基台部
802 軸部
803 挿通孔
804 ガイド片
805 係合片
806 爪部
9 板ばね
901 挿通孔
902 ローラ保持部
903 取付部
10 ローラ
101 シャフト
11 取付部材
111 上板部
112 保持脚片
112a 保持片
112b スナップ孔
113 係合脚片
114 挿通孔
20 回転型電気部品
12 駆動部材
121 基部
122 駆動部
123 連結部
124,125 凸部
126 係合部
127 凹部
128 押圧部
13 弾性部材
131 孔
132 押圧部
14 第1ケース
141 貫通孔
142 軸受け部
143 収納部
143a 係合溝
144 挿通孔
145 係止片
145a 溝部
146,147 係合部
15 第2ケース
151 挿通孔
152 収納部
152a 係合溝
152b 爪部
153 導電パターン
153a 外部端子
16 プリント基板
161 挿通孔
17 プッシュスイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のハウジングに回転可能かつ軸線方向へ移動可能に保持された中空状の操作軸と、前記操作軸の回転動作を検出する回転検出手段と、を備えた回転型電気部品において、
前記ハウジングの底壁部に対向して配置された基部と、前記操作軸の中空部に位置する駆動部と、前記基部および前記駆動部を連結する互いに離間した複数の連結部と、を有する駆動部材を設け、前記基部が前記操作軸の軸線方向への押圧操作に伴って押圧されることにより、前記駆動部が当該駆動部と対向配置されたプッシュスイッチを駆動可能とすることを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
前記基部は環状をなし、前記操作軸の軸線方向に移動可能であることを特徴とする請求項1記載の回転型電気部品。
【請求項3】
前記基部に、前記操作軸の軸線方向へ突出する複数の凸部を設け、前記凸部が前記操作軸の押圧操作に伴って押圧されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回転型電気部品。
【請求項4】
前記凸部が、前記連結部に対応した位置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の回転型電気部品。
【請求項5】
前記プッシュスイッチは、前記ハウジングの前記底壁部の下部に配置されるとともに、固定接点を有する接点ケースと、前記固定接点に対向配置された可動接点と、から構成され、前記接点ケースは、前記ハウジングに積層されるとともに前記駆動部材の前記基部が配置される外周部と、前記駆動部に対応して設けられ前記固定接点が配置される接点保持部と、前記外周部および前記接点保持部を連結する互いに離間した複数の第2連結部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項6】
前記固定接点と導通するリード端子が前記第2連結部に埋設されており、前記リード端子の一部が前記接点ケースの外部に導出していることを特徴とする請求項5記載の回転型電気部品。
【請求項7】
前記接点ケースは、前記ハウジングに設けられた取付部材の脚部で保持されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の回転型電気部品。
【請求項8】
前記駆動部の先端に、弾性部材を設けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項9】
前記基部は、前記ハウジングの底面側に設けられた収納部に、付勢部材により前記押圧操作の方向へ付勢された状態で配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4、請求項8のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項10】
前記基部は、前記ハウジングの底面側に設けられた収納部に配置されているとともに、前記ハウジングに設けられた取付部材の脚部で保持されていることを特徴とする請求項1から請求項4、請求項8のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項11】
前記プッシュスイッチは、前記ハウジングが搭載されるプリント基板に実装されることを特徴とする請求項1から請求項4、請求項8、請求項9、請求項10のいずれかに記載の回転型電気部品。
【請求項12】
前記連結部は、アーチ状であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−37828(P2013−37828A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171555(P2011−171555)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】