説明

回転式カッティングマット

【課題】 構造が簡単で低コストで製造できるとともに、マット上面が平坦でカッティングラインを歪めることもない回転式カッティングマットを提供する。
【解決手段】
相対回転可能なベース板20と回転マット30とから構成される回転式カッティングマット。回転マット30は、裏面から突出する軸部材31をベース板20の開口21に嵌入させた状態で、ベース板20上に回転可能に載置される。ベース板20と回転マット30は、リベット等の連結部材で連結されているのではなく、単に、回転マット30がベース板20上に回転可能に載置されているだけである。したがって、リベット頭部がマット表面に露出するのを防ぐために、回転マットを積層構造として当該積層構造中にリベット頭部を埋め込むといった複雑な製造工程は不要となる。また、埋め込まれたリベット頭部によってマット表面が盛り上がるということも起こらない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターナイフで紙や布等の裁断を行う場合に土台として使用するカッティングマットに関する。さらに詳しくは、マット面が回転することで、カッティング作業の効率アップを図ることができる回転式カッティングマットに関する。
【背景技術】
【0002】
マット面が回転するカッティングマットとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
特許文献1に開示された回転式カッティングマットは、基板3とマット回転体2とをリベット8を用いて相対回転可能に連結して構成される。基板3は、その裏面が滑り難い粗面とされていて、作業机の上に置かれた場合に不用意に滑動することが防止される。そのような基板3上で、マット回転体2が回転する。すなわち、作業者は、マット回転体2の上に、切断対象である紙や布等を置いて、カッティング作業を行う。
したがって、カッティング方向に応じてマット回転体2を適宜回転させることで、作業者は、自己の体を移動させなくても、常に作業し易い姿勢でカッティング作業を行うことができる。このように、回転式カッティングマットによれば、カッティング作業の効率を高めることができる。
【0003】
【特許文献1】登録実用新案公報第3022789号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記回転式カッティングマットにおいては、基板3とマット回転体2がリベット8を用いて連結されているため、次のような問題が生じる。
【0005】
(1)まず、マット回転体2は、その上面に切断対象である紙や布等が直接置かれるので、連結用リベット8の頭部が当該上面に露出してはならない。頭部が露出すると、その部分はカッティングマットとして利用できなくなるからである。そのため、マット回転体2を多層構造として、当該層構造中にリベット頭部が埋め込まれている。これが原因で、マットの構造が複雑となり、部品点数および作業工数の増大し、コストアップにつながる。
(2)また、マット回転体2の積層構造中にリベット頭部が埋め込まれるため、マット上面が当該箇所において僅かに盛り上がってしまう。つまり、マット上面が平坦に維持されないため、その部分においてカッティングラインが歪みやすくなる。
【0006】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明は、構造が簡単で低コストで製造できるとともに、マット上面が平坦でカッティングラインを歪めることもない回転式カッティングマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段、および発明の効果】
【0007】
本発明の回転式カッティングマットは、相対回転可能な「ベース板」と「回転マット」とから構成される。
回転マットは、裏面から突出する軸部材を備える。一方、ベース板は、回転マットの軸部材を回転可能に受け入れる受入部を備える。そして、回転マットは、上記軸部材をベース板の受入部に嵌入させた状態で、ベース板上に載置される。
上記構成を備えた本発明の回転式カッティングマットにおいては、ベース板と回転マットは、連結されてはおらず、単に、回転マットがベース板上に回転可能に載置されているだけである。したがって、両者を連結するリベット等の連結部材は必要ない。その結果、リベット頭部がマット表面に露出するのを防ぐために、回転マットを積層構造として当該積層構造中にリベット頭部を埋め込むといった複雑な製造工程は不要となり、部品点数も削減される。つまり、簡単に低コストで製造できる。
また、そのように埋め込まれたリベットが存在しないので、マット表面が盛り上がることがなく平坦性が維持され、カッティングラインを歪めてしまうこともない。
【0008】
本発明の回転式カッティングマットにおいては、回転マット裏面の上記軸部材は、回転マットの表裏両面に選択的に面接着で固定できることが好ましい。これは、例えば両面テープ等を利用して実現することができる。
このような構成を採用した場合には、回転マットの表面をカッティング作業に使用するという本来の用途に加えて、裏面を有効活用できる。
裏面は、表面と同様にカッティング用の作業台として使用してもよいし、粘土細工等の他の用途に利用してもよい。前者の場合には、回転マットの表裏両面を同一の材質で構成することが好ましく、後者の場合には、回転マットの裏面は表面とは異なる材質で構成されることが好ましい。ただし、本発明において具体的にどのような材質を採用するかは、適宜自由に選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る回転式カッティングマット10を示す斜視図である。
【0010】
回転式カッティングマット10は、相対回転可能なベース板20と回転マット30とで構成される。図2は、ベース板20と回転マット30とを分離状態で示している。図2において、ベース板20はその上面20aを、回転マット30はその裏面30bを、それぞれ示している。
【0011】
ベース板20は、その中央に円形開口21を有しており、回転マット30は、その裏面30bに円柱状の軸部材31を有している。図2中に矢印で示すように、回転マット30は、軸部材31を円形開口21内に嵌入させて、ベース板20上に置かれる。
このように、ベース板20と回転マット30とは、リベット等を用いて連結されているのではなく、単にベース板20上に回転マット30を載せているだけである。
円形開口21および軸部材31は直径がほぼ等しく構成されていて、軸部材31は円形開口21内でスムーズに回転することが可能である。したがって、回転マット30は、ベース板20上でスムーズに回転する。
【0012】
回転マット30をベース板20上で回転させるためには、軸部材31は必ずしも図示したような円柱状である必要はなく、円に内接する多角形形状の柱であってもよい。また、細いピンを複数、円形に並べたものであってもよい。
一方、ベース板20側に受入部として形成される開口21は、円形であることが必要である。ただし、ベース板20を貫通する開口21でなくても、図3のベース板20’のように、受入部として、有底の円形凹部21'を採用してもよい。
【0013】
軸部材31は、回転マット30の裏面に取外し不能に固着されていてもよいが、両面テープ等を利用して着脱可能に構成されていてもよい。すなわち、図4に示したように、別部材である円柱状の軸部材31(これは上述したように、円柱状である必要はない)は、両面テープを用いて、回転マット30の表面30aおよび裏面30bのいずれかに選択的に面接着できる。
このように構成すれば、回転マット30の表面30aおよび裏面30bの両方を利用することが可能となる。
【0014】
その場合、回転マット30の裏表両面をカッティング作業に利用することとしてもよいし、表面はカッティング作業用で裏面は粘土細工用という具合に、用途を変えてもよい。また、両面をカッティング作業に利用する場合には、マット面に描くパターンを表裏で異なるようにすることもできる。
回転マットの両面を利用できるように構成すれば、種々の利益を享受できる。すなわち、両面を異なる用途に利用する場合には、1つの回転式カッティングマットの多用途化を図れるというメリットがあり、一方、両面を共にカッティングマットとして使用する場合には、カッティングマットとしての寿命を長くできるというメリットがある。
【0015】
図5は、ベース板20と回転マット30とを組み合わせた状態における鉛直方向断面図を示している。回転マット30の裏面30bに固定した軸部材31がベース板20の開口21内に嵌入している。
図5に示した例では、回転マット30は三層構造である。回転マット30の表面を構成する最上層30aは、カッティング作業の土台として適した軟質塩化ビニルで構成されている。回転マット30の裏面を構成する最下層30bもまた、カッティング作業の土台として適した軟質塩化ビニルで構成されている。中間層30cは、硬質塩化ビニルで構成されていて、これは、回転マット30に対して適当な強度を与えるための芯材としての機能を有する。
【0016】
図5における回転マット30の層構造は、回転マット30の表裏両面をカッティング作業に利用する場合のものを示している。すなわち、軸部材31は、裏面30bに両面テープで着脱可能に面接着されており、例えば、表面30aを使い古した場合には、軸部材31を表面30aに付け替えることで、裏面30bを使用することができる。
【0017】
このように回転マット30の表裏両面を共にカッティング作業に利用する場合には、当該両面を同一材料で構成することが好ましい。一方、回転マット30の裏面30bを粘土細工等の他の用途に利用する場合には、当該裏面30bをそれぞれの用途に適した適宜の材質で構成することが好ましい。
ただし、本発明において、回転マット30その他の構成要素の材質は、特定のものに限定されるものではなく、適宜選択することが可能である。例えば、上記塩化ビニルに代えて、オレフィン系エラストマー樹脂を使用してもよい。なお、心材としての中間層30cは省略することも可能である。したがって、回転マット30の表裏両面を共にカッティング作業に利用する場合、回転マット30を単層構造とすることができる。
【0018】
いずれの場合にも、本発明の回転式カッティングマットにおいては、リベットを使用しないことから、リベット頭部を層構造中に埋め込む必要はない。したがって、低コストで簡単に製造できる。また、埋め込まれたリベット頭部が原因となって、マット表面が盛り上がってしまうこともない。
【0019】
図1および図2に示した例では、四角形のベース板20および回転マット30は、それぞれコーナ部に貫通孔25および35を備える。回転マット30の貫通孔35は、作業者がここに指を当てて回転マット30に回転動作を与える係合部として利用できる。ただし、そのような係合部としての機能を達成するためには、貫通孔である必要はなく、凹部や凸部であってもよく、またラバーを配置したり、粗面処理を施したりしてもよい。
【0020】
ただし、回転マット30側の係合部を貫通孔35として形成した場合には、ベース板20側にも貫通孔25を設けることで吊下用孔として利用できるというメリットがある。
すなわち、ベース板20側の貫通孔25は、ベース板20および回転マット30を整合させたときに、回転マット30側の貫通孔35と重なる位置に形成されている。つまり、2つの貫通孔25、35が重なって、全体を貫通する1つの貫通孔が形成される。この貫通孔にフックを通す等して、不使用時には、回転式カッティングマット10を吊り下げておくことができる。
【0021】
なお、係合部または貫通孔は、ベース板20および回転マット30に対して、それぞれ1箇所ずつ設けてもよいし、複数箇所に設けてもよい。
【0022】
なお、図示の例では、ベース板20および回転マット30を四角形に描いているが、必ずしも四角形である必要はなく、例えば円形、その他の任意の形状を採用できる。その場合、回転マットに回転動作を与えるための係合部、または吊下用の貫通孔は、ベース板および回転マットの外周縁近傍の位置に設ける。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転式カッティングマットの斜視図。
【図2】図1の回転式カッティングマットを構成するベース板と回転マットとを分離状態で示す斜視図。
【図3】ベース板の変形例を示す斜視図。
【図4】着脱可能に構成された軸部材を示す斜視図。
【図5】図1の回転式カッティングマットの鉛直方向断面図。
【符号の説明】
【0024】
10 回転式カッティングマット
20 ベース板
21 開口
25 貫通孔
30 回転マット
31 軸部材
35 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能なベース板(20)と回転マット(30)とから構成される回転式カッティングマットであって、
回転マット(30)は、裏面から突出する軸部材(31)を備え、
ベース板(20)は、回転マットの軸部材(31)を回転可能に受け入れる受入部(21)を備え、
回転マット(30)は、上記軸部材(31)をベース板の受入部(21)に嵌入させた状態で、ベース板(20)上に載置されていることを特徴とする、回転式カッティングマット。
【請求項2】
上記軸部材(31)は、回転マットの表裏両面に選択的に面接着で固定できるよう着脱可能に構成されたことを特徴とする、請求項1記載の回転式カッティングマット。
【請求項3】
回転マット(30)の表裏両面が同一の材質で構成されたことを特徴とする、請求項2記載の回転式カッティングマット。
【請求項4】
回転マット(30)の裏面が別の用途に使用できるよう、表面とは異なる材質で構成されたことを特徴とする、請求項2記載の回転式カッティングマット。
【請求項5】
上記回転マット(30)の外周縁近傍位置に、指先で回転動作を与えるための係合部(35)が形成されたことを特徴とする、請求項1記載の回転式カッティングマット。
【請求項6】
上記係合部(35)は貫通孔であり、当該貫通孔と整合するベース板(20)上の位置に別の貫通孔(25)が形成されたことを特徴とする、請求項5記載の回転式カッティングマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−82198(P2006−82198A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271195(P2004−271195)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(390024132)オルファ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】