説明

回転式ドラムフィルタ

【課題】 細かい粒径の固体分が凝集してフロックを形成している有機性汚泥や凝集沈殿物を含んでいる被処理水であっても、これらを効率的に除去する。
【解決手段】 フロックを濾過するドラム本体100、110と、ドラム本体100、110に付着したフロックを洗浄する洗浄装置42、52とを備える。ドラム本体100、110は、水平方向の回転軸101、111を有する筒状枠体102、112と、当該筒状枠体102、112の外周面に取り付けた濾過部材103、113とを有し、その下半部を処理水槽内に貯留した被処理水に浸漬した状態で回転させながら、被処理水を当該ドラム本体100、110の外面側から内部へ流入させてフロックを濾過する。洗浄装置42、52は、ドラム本体100、110へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材103、113に付着したフロックを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式ドラムフィルタに関するものであり、例えば、濁水処理装置において、前段に配置された沈降槽等で除去しきれなかったフロックを濾過して、清浄水を生成するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工事現場で発生する濁水は、多くの現場で貯め置く環境が許されない状況にあることから、工事の支障とならないように、工事敷地内から適宜放流することを強いられる。その際、当然のことながら放流先の水質環境に悪影響を及ぼさないように、水質基準を満足するための処理を行う必要がある。特に、放流先が河川、湖沼、海域である場合には、放流水の水質には厳しい水質基準が適用されるのが一般的である。また、食品処理施設や一般廃棄物処理施設等においても汚濁水が発生し、この汚濁水を適切に処理する必要がある。
【0003】
従来の濁水処理技術では、無機系凝集材と高分子凝集材を単独又は併用して濁水中の土粒子を凝集させた後、要求される単位時間あたりの処理量と同等の貯留容積を有する沈殿池又はシックナーを用いて、凝集した土粒子群を重力によって自然沈降させる方法が採用されている。さらに、シックナーで除去しきれなかったフロックを濾過するために、回転式ドラムフィルタを用いた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この回転式ドラムフィルタは、ドラム状に組み立てたウェッジワイヤを横置きして、これを回転させることで、濁水中の固体分を分離する固液分離法に関する技術である。このような回転式ドラムフィルタを用いた固液分離法には、ドラムの内側から濁水を供給して、固体分をドラムの内部で捕捉する方法と、ドラムの外側から濁水を供給して、固体分をドラムの外側で捕捉する方法とがある。また、回転式ドラムフィルタを用いた固液分離装置には、ドラムを回転させることにより、分離された固体分を回収する機構と、ドラムを水洗浄する機構と、液体分を排出する機構とが設けられており、濁水を連続して固液分離することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−319740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の回転式ドラムフィルタは、ドラムの内側から濁水を供給する場合であっても、ドラムの外側から濁水を供給する場合であっても、濾過材であるスクリーンに濁水を通過させて、固体分をスクリーン上に残留させることで固液分離を行っている。
【0007】
このため、スクリーン上に残留する固体分には、種々の理由により、強いせん断力が働く。スクリーン上に残留する固体分に対して強いせん断力が働く理由の一つとして、濁水は、重力の影響を受けるため、被処理水量を減じても、スクリーンを通過する際の速度が速くなるためである。また、他の理由として、処理対象が仮に純水であったとしても、水には粘性があるため、固体分をスクリーンの内側に引っ張る強い力が発生するためである。
【0008】
このように、従来の回転式ドラムフィルタでは、スクリーン上に残留する固体分に対して強いせん断力が作用するため、粒径が大きく堅い固形分である砂、石、ビニール、繊維等の夾雑物については、高い分離精度を確保することが可能であるが、細かい粒径の固体分が凝集してフロックを形成している有機性汚泥や凝集沈殿物の処理には不向きであるという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、細かい粒径の固体分が凝集してフロックを形成している有機性汚泥や凝集沈殿物を含んでいる被処理水であっても、これらを効率的に除去することが可能な回転式ドラムフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転式ドラムフィルタは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の回転式ドラムフィルタは、被処理水中に浮遊するフロックを濾過するための回転式ドラムフィルタであって、フロックを濾過するドラム本体と、ドラム本体に付着したフロックを洗浄する洗浄装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
ドラム本体は、水平方向の回転軸を有する筒状枠体と、当該筒状枠体の外周面に取り付けた濾過部材とを有し、その下半部を処理水槽(固液分離槽)内に貯留した被処理水に浸漬した状態で回転させながら、被処理水を当該ドラム本体の外面側から内部へ流入させてフロックを濾過するための装置である。また、洗浄装置は、ドラム本体へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材に付着したフロックを洗浄するための装置である。
【0012】
上述した構成を備えた回転式ドラムフィルタにおいて、ドラム本体は、被処理水の流下方向に沿って直列して複数設けた構成とすることが可能であり、この場合には、下流側のドラム本体に取り付けた濾過部材の目の粗さを、その上流側のドラム本体に取り付けた濾過部材よりも細かくすることが好ましい。
【0013】
また、上述した構成を備えた回転式ドラムフィルタにおいて、ドラム本体に設けた濾過部材は、ドラム本体に対して着脱可能であることが好ましい。
【0014】
また、上述した構成を備えた回転式ドラムフィルタにおいて、洗浄装置は、ドラム本体の内面側から、被処理水中に浸漬していないドラム本体の上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材に付着したフロックを洗浄する構成とすることが可能である。
【0015】
また、上述した構成を備えた回転式ドラムフィルタにおいて、ドラム本体の上部に、洗浄装置により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための洗浄水回収部材を備えた構成とすることが好ましい。
【0016】
このような構成からなる回転式ドラムフィルタでは、ドラム本体の外周面に取り付けた金網等の濾過部材を用いて、沈降槽等で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して、環境基準等に適合した放流水を生成する。この際、洗浄装置により、ドラム本体へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材に付着したフロックを洗浄して、フロックによる目詰まりを防止する。
【0017】
また、上流側から下流側に向かって設置した複数のドラム本体により、それぞれ被処理水中に浮遊するフロックを濾過することが可能である。この際、上流側のドラム本体で濾過できなかったフロックを、さらに目の粗さが細かい濾過部材を取り付けた下流側のドラム本体により濾過して、被処理水の清澄度を向上させる。
【0018】
さらに、洗浄水回収部材により、洗浄装置により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出することにより、洗浄により除去されたフロックが処理後の放流水へ再流入するのを防止する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転式ドラムフィルタによれば、金網等の濾過部材により、沈降性の悪いフロックを濾過することにより、清澄な放流水を得ることができる。この際、濾過部材をドラム本体の外周面に取り付け、濾過部材の下部を被処理水に浸漬すると共に、濾過部材の上部を空気中に突出させてドラム本体を回転させることにより、ドラム本体の外周面の全体にわたって効率よくフロックを濾過することができる。
【0020】
また、被処理水の流下方向に沿って、複数のドラム本体を直列して設けると共に、下流側のドラム本体に取り付けた濾過部材の目の粗さを、その上流側のドラム本体に取り付けた濾過部材よりも細かく設定した構成の場合には、上流側のドラム本体で濾過しきれなかった細かなフロックを、下流側のドラム本体で濾過することができるので、さらに処理後の水質を向上させることができる。
【0021】
また、ドラム本体に対して濾過部材を着脱可能な構成とすることにより、処理目的に応じて適切な目の粗さの濾過部材を使用することができる。さらに、濾過部材が目詰まりしたり、破損したりした場合にも、容易にメンテナンスを行うことができる。
【0022】
また、濾過部材に対して洗浄水又はエアーを噴出することにより、濾過部材に捕捉されたフロックを吹き飛ばして濾過部材の目詰まりを防止し、さらに効率よくフロックを濾過することができる。この際、洗浄水又はエアーの噴出は、ドラム本体の内面側から、被処理水中に浸漬していないドラム本体の上半部へ向かって行う構成とすると、処理後の水質を向上させることができる。さらに、気中でドラム本体の内側から外側に向けて洗浄を行うことで、濾過部材の洗浄効果を高めることができる。
【0023】
また、洗浄後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための洗浄水回収部材を備えた構成とした場合には、洗浄により破壊されたフロックが、濾過部材により濾過した後の放流水中に混入することを極力防止して、さらに処理後の水質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタの構成を示す断面模式図。
【図2】本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタを設置した固液分離槽の構成を示す正面模式図。
【図3】本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタを設置した固液分離槽の構成を示す上面模式図。
【図4】本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタを適用した濁水処理装置の外観を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の回転式ドラムフィルタの実施形態を説明する。図1〜図4は、本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタを示すもので、図1は回転式ドラムフィルタの構成を示す断面模式図、図2は回転式ドラムフィルタを設置した固液分離槽の構成を示す正面模式図、図3は回転式ドラムフィルタを設置した固液分離槽の構成を示す上面模式図、図4は回転式ドラムフィルタを適用した濁水処理装置の外観を示す斜視図である。
【0026】
<回転式ドラムフィルタの概要>
本発明の実施形態に係る回転式ドラムフィルタは、例えば、工事現場等で発生する濁水を清浄化して、放流先の水質基準を満足した処理水を生成するための濁水処理装置に適用する装置である。この濁水処理装置は、図4に示すように、被処理水(濁水)中に凝集材を投入する凝集材投入装置70と、凝集材が投入された被処理水(濁水)を攪拌してフロックを生成する第1攪拌槽10と、フロックの成長を促進させる第2攪拌槽20と、被処理水(濁水)中に存在するフロックを沈殿させて除去する沈降槽30と、フロックを濾過分離して放流水を生成する回転式ドラムフィルタを有する2つの固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)とを備えている。また、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)で処理済の放流水を一時貯留するための放流槽60を備えた構成としてもよい。
【0027】
<固液分離槽>
回転式ドラムフィルタは、図1〜図3に示すように、フロックを濾過するドラム本体100、110と、ドラム本体100、110に付着したフロックを洗浄する洗浄装置42、52とを備えており、本実施形態では、2つの固液分離槽40、50内に、それぞれドラム本体100、110が設置されている。この固液分離槽40、50は、沈降槽30で除去できなかったフロックを濾過することにより分離して放流水を生成するための処理水槽である。本実施形態では、被処理水の流下方向に沿って直列して設けた第1固液分離槽40と第2固液分離槽50の2つの槽を備えており、各槽内にはそれぞれドラム本体100、110を配置し、下流側(第2固液分離槽50)のドラム本体110に取り付けた濾過部材113は、上流側(第1固液分離槽40)のドラム本体100に取り付けた濾過部材103よりも目の粗さ(目開き)が細かくなっている。また、沈降槽30と第1固液分離槽40と間には、潜り堰44が設けられている。
【0028】
第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の底部は、図2に示すように、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状又は円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口41、51がそれぞれ設けられている。なお、図示しないが、フロック排出口41、51には開閉装置(蛇口)が設けられており、常時は、開閉装置によりフロック排出口41、51が閉じた状態とされている。そして、第1固液分離槽40又は第2固液分離槽50の底部に所定量のフロックが溜まると、開閉装置によりフロック排出口41、51を開き、第1固液分離槽40又は第2固液分離槽50からフロックを排出する。また、フロック排出口41、51を常時半開き状態として、フロックを少しずつ排出しながら濁水処理を行ってもよい。排出したフロックは、産業廃棄物として処理してもよいが、脱水処理を施した後、緑化基盤や埋め戻し材料に有効利用することができる。
【0029】
第1固液分離槽40には、図2に示すように、ドラム本体100の下方に位置するように邪魔板43が設けられており、第2固液分離槽50には、ドラム本体110の下方に位置するように整流板53が設けられている。邪魔板43及び整流板53により、被処理水中に乱流が発生することを防止して、各固液分離槽40、50の内部におけるフロックの沈降を促進する。なお、第1固液分離槽40の邪魔板43は、被処理水の流下方向の上流側が下流側よりも低くなるように、斜めに設置することが好ましい。このように、第1固液分離槽40において邪魔板43を斜めに設置することにより、邪魔板43上に流れてきたフロックは、傾斜下端へ向かって滑り落ちるので、邪魔板43上にフロックが滞留することを防止できる。本実施形態では、第2固液分離槽50でフロックを分離した後の被処理水が放流槽60に一時貯留された後、放流水として放流される。
【0030】
なお、放流槽60の底部は、図2に示すように、下方へ向かって縮径しながら突出する角錐状又は円錐状となっており、最下端部には、フロックを排出するためのフロック排出口61が設けられている。このフロック排出口61には、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50と同様に開閉装置が設けられており、排出したフロックは、脱水処理を施した後、緑化基盤や埋め戻し材料等に有効利用することができる。
【0031】
<ドラム本体>
ドラム本体100、110は、図1及び図2に示すように、水平方向の回転軸101、111を有する筒状枠体102、112と、当該筒状枠体102、112の外周面に着脱可能に取り付けた濾過部材103、113とを備えている。また、図示しないが、回転軸101、111には、それぞれモータの駆動軸が連結されている。そして、ドラム本体100、110の下半部を被処理水中に浸漬して回転させながら、沈降槽30から流出した被処理水をドラム本体100、110の外部から内部へ流入させてフロックを濾過するようになっている。また、第1固液分離槽40に設置したドラム本体100は、第2固液分離槽50に設置したドラム本体110よりも高い位置に設置されており、第1固液分離槽40と第2固液分離槽50の水頭差により、被処理水が上流側から下流側へ向かって流れるようになっている。なお、図1において、符号Fはフロックを示すものである。
【0032】
本実施形態の濾過部材103、113は、沈降性の悪いフロックを濾し採るために、例えば150〜350Mesh等の金網を用いており、筒状枠体102、112に対して、着脱することができるようになっている。また、第1固液分離槽40に設けたドラム本体100の金網と、第2固液分離槽50に設けたドラム本体110の金網とを比較すると、第1固液分離槽40に設けたドラム本体100で濾し採ることができなかった細かなフロックを、第2固液分離槽50に設けたドラム本体110で濾し採るために、第2固液分離槽50に設けたドラム本体110の金網の方が目の粗さ(目開き)が細かくなっている。
【0033】
なお、本実施形態では2つの固液分離槽(第1固液分離槽40、第2固液分離槽50)を設け、各固液分離槽(第1固液分離槽40、第2固液分離槽50)にそれぞれ1つずつドラム本体100、110を設けているが、固液分離槽及びドラム本体の数はそれぞれ1つに限られず、被処理水の性状や流量等に応じて、適宜増減することができる。例えば、沈降槽30で十分にフロックが分離され、被処理水中のSSが少ない場合には、1つの固液分離槽を設けるだけでよいし、沈降槽30から流入する被処理水中のSSが多い場合には、3つあるいは4つ以上の固液分離槽を設けてもよい。また、1つの固液分離槽内に、2つ以上のドラム本体を設けてもよい。この場合にも、下流側のドラム本体に取り付けた濾過部材は、上流側のドラム本体に取り付けた濾過部材よりも目の粗さを細かくすることが好ましい。また、本実施形態では、洗浄の容易さや耐久性等の観点から濾過部材として金網を用いているが、濾過部材は金網に限定されるものではなく、濾布等を用いてもよい。
【0034】
<洗浄装置>
洗浄装置42、52は、図1に示すように、ドラム本体100、110の内面側から、被処理水中に浸漬していないドラム本体100、110の上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出して濾過部材103、113を洗浄するための装置である。なお、図示しないが、洗浄装置42、52には、水又はエアーを供給するためのポンプが接続されている。また、水を噴出して洗浄を行う場合には、濁度が処理目標となるSS以下であり、pHが中性域もしくは被処理水と同等のpHであれば、濁水処理装置で処理後の水、水道水、清水等、どのような水を用いてもよいが、放流水の量を増やさないという点で、濁水処理装置で処理後の水を用いることが好ましい。また、エアーを噴出して洗浄を行う場合には、ドラム本体100、110内に洗浄用圧縮空気が滞留して濾過障害を生じないように、ドラム本体100、110にエアー抜き機構を設けることが好ましい。
【0035】
なお、濁水処理を行っている間は、ドラム本体100、110の回転を継続することが好ましい。これは、濾過部材103、113にフロックが付着して濾過障害が発生することを極力防止して、洗浄処理の頻度を少なくするためである。また、ドラム本体100、110の回転を継続することにより、空気中に露出した濾過部材103、113にフロックが固着することがなくなり、洗浄を容易に行うことができる。
【0036】
洗浄装置42、52による洗浄は、濁水処理を行っている間、常時行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。また、洗浄水による洗浄及びエアーによる洗浄を併用してもよい。さらに、図1に示すように、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内に水位センサ91を設け、水位センサ91が所定の水位を超えたことを検知した場合に、制御装置90の制御により、洗浄装置42、52を動作させる構成とすることができる。すなわち、濾過部材103、113が目詰まりすると、ドラム本体100、110内に流れ込む被処理水の量が減少するため、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内の水位が上昇する。したがって、固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)内の水位を検知して、濾過部材103、113の洗浄を行うことにより、濾過部材103、113が目詰まりして固液分離槽(第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50)から被処理水があふれ出すことを防止できる。また、間欠洗浄を行った場合には、洗浄水量を減らすことができるので、攪拌槽等に返送する洗浄水量を縮減することができると共に、電気代を削減して、処理コストを低減することができる。
【0037】
水位センサ91は、どのような構成であってもよいが、例えば、水位の遷移により上下動するフロートとフロートの上下動に伴いオンオフするスイッチや、三極の電極(マイナス、マイナス、プラス)を備えた三極センサ等を用いることができる。また、制御装置90は、どのような構成であってもよいが、例えば、所定の水位を超えたことを水位センサ91が検知すると、その検知信号を受信して洗浄装置42、52に駆動電力を供給するスイッチ機構を用いることができる。
【0038】
本実施形態の洗浄装置42、52は、洗浄後のフロックを含む洗浄水を、再び被処理水中に混入させないため、ドラム本体100、110の内面側から、被処理水中に浸漬していないドラム本体100、110の上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出するようになっているが、フロックの状態や被処理水の処理量等、処理現場の状況に応じて、ドラム本体100、110の外面側から内面側へ向かって洗浄水又はエアーを噴出する構成としてもよい。
【0039】
<洗浄水回収部材>
第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上部には、図1に示すように、洗浄装置42、52により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための洗浄水回収部材80が設けられている。洗浄水回収部材80は、洗浄装置42、52によりドラム本体100、110を洗浄した際に、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上方へ向かって吹き飛ばされたフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための部材からなる。
【0040】
本実施形態の洗浄水回収部材80は、図1に示すように、吹き上げられたフロックを含む洗浄水を受け止めるための屋根板81と、屋根板81により受け止めたフロックを含む洗浄水を排出するための排出樋82を備えている。屋根板81は、フロックを含む洗浄水を排出樋82へ向かって導くために、一端部から他端部に向かって下り傾斜しており、屋根板81の傾斜下端側に位置するように排出樋82が配置されている。また、排出樋82は、フロックを含む洗浄水を流下させるために、一端部から他端部に向かって下り傾斜している。排出樋82で回収したフロックは、第1攪拌槽10又は原水槽(図示せず)に返送して再処理を行う。
【0041】
図3及び図4に示すように、第1固液分離槽40のドラム本体100で濾過された被処理水は、槽外に設けた連通管45により第2固液分離槽50へ導かれ、第2固液分離槽50のドラム本体110で濾過された被処理水は、槽外に設けた連通管55により放流槽60へ導かれ、清浄水として放流される。
【0042】
本実施形態では、第1固液分離槽40及び第2固液分離槽50の上部に、共通の洗浄水回収部材80を設けているが、各固液分離槽毎に洗浄水回収部材80を設けてもよい。また、回収したフロックを含む洗浄水の状態に応じて、屋根板81を省略し、排出樋82のみを設けてもよい。洗浄水回収部材80で回収したフロックを含む洗浄水は、第1攪拌槽10又は原水槽(図示せず)に返送して再処理を行う。この洗浄水回収部材80を設けることにより、吹き飛ばされたフロックが、再び被処理水中に混入するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 第1攪拌槽
20 第2攪拌槽
30 沈降槽
40 第1固液分離槽
50 第2固液分離槽
41、51、61 フロック排出口
42、52 洗浄装置
43 邪魔板
44 潜り堰
45、55 連通管
53 整流板
60 放流槽
70 凝集材投入装置
80 洗浄水回収部材
81 屋根板
82 排出樋
90 制御装置
91 水位センサ
100、110 ドラム本体
101、111 回転軸
102、112 筒状枠体
103、113 濾過部材
F フロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浮遊するフロックを濾過するための回転式ドラムフィルタであって、
フロックを濾過するドラム本体と、ドラム本体に付着したフロックを洗浄する洗浄装置と、を備え、
前記ドラム本体は、水平方向の回転軸を有する筒状枠体と、当該筒状枠体の外周面に取り付けた濾過部材とを有し、その下半部を処理水槽内に貯留した被処理水に浸漬した状態で回転させながら、被処理水を当該ドラム本体の外面側から内部へ流入させてフロックを濾過し、
前記洗浄装置は、前記ドラム本体へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、前記濾過部材に付着したフロックを洗浄する、
ことを特徴とする回転式ドラムフィルタ。
【請求項2】
前記ドラム本体は、被処理水の流下方向に沿って直列して複数設けられており、下流側のドラム本体に取り付けた濾過部材の目の粗さは、その上流側のドラム本体に取り付けた濾過部材よりも細かいことを特徴とする請求項1に記載の回転式ドラムフィルタ。
【請求項3】
前記濾過部材は、前記筒状枠体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式ドラムフィルタ。
【請求項4】
前記洗浄装置は、前記ドラム本体の内面側から、被処理水中に浸漬していない前記ドラム本体の上半部へ向かって洗浄水又はエアーを噴出することにより、前記濾過部材に付着したフロックを洗浄することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転式ドラムフィルタ。
【請求項5】
前記ドラム本体の上部に、前記洗浄装置により洗浄した後のフロックを含む洗浄水を受け止めて排出するための洗浄水回収部材を備えたことを特徴とする請求項4に記載の回転式ドラムフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−148205(P2012−148205A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6507(P2011−6507)
【出願日】平成23年1月15日(2011.1.15)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(510317302)新日本工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】