説明

回転式噴霧装置、及び該回転式噴霧装置を使用することによって被覆製品を噴霧する方法

この被覆製品を噴霧するための回転装置は、端部(12)を有し被覆製品の噴流を形成することができる噴霧部材(1)と、噴霧部材(1)を回転駆動する手段と、固定された本体(2)であって、回転軸線(X)を取り囲む第1の輪郭(C)上に配置され第1の方向に第1の空気噴流を噴射することが意図された第1のオリフィス、回転軸線(X)を取り囲む第2の輪郭(C)上に配置され第2の方向に第2の空気噴流を噴射することが意図された第2のオリフィスを含む本体(2)とを備える。各第1の方向及び各第2の方向のそれぞれの方向付け、並びに各第1のオリフィス及び各第2のオリフィスのそれぞれの位置によって、互いに関連する第1の空気噴流と第2の空気噴流の交差からそれぞれが得られる混合噴流(J46)が形成され、交差領域は端部(12)の上流に存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆製品のための回転式噴霧装置に関する。また、本発明は、該回転式噴霧装置を使用することによって被覆製品を噴霧する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式噴霧装置を使用する従来の噴霧器は、プライマー、下塗、及び/又はラッカーを自動車の車体など塗装すべき物体に塗布するために使用される。被覆製品を噴霧するための回転式噴霧装置は、圧縮空気タービンなど回転駆動手段の作用を受けて高速で回転する噴霧部材を備える。
【0003】
こうした噴霧部材は、一般に、回転対称のカップの形状を有し、被覆製品の噴流を形成することができる少なくとも1つの噴霧端を備える。回転式噴霧装置は、回転駆動手段及び噴霧部材に被覆製品を供給する手段を収容する固定本体も備える。
【0004】
回転部材の端部によって噴霧される被覆製品の噴流は、カップの回転速度及び被覆製品の流量などのパラメータによって概ね円錐形状を有する。この製品の噴流の形状を制御するため、一般に、従来技術の回転式噴霧装置には幾つかの第1のオリフィスが設けられる。第1のオリフィスは、噴霧装置の本体内に形成され、カップの対称軸に中心をおく円に配置され、カップの外周に位置する。第1のオリフィスは、製品の噴流を形状付ける空気を共に形成する第1の空気の噴流を噴射するものであり、この成形空気はときに「シュラウド空気」として知られている。
【0005】
日本国特許公開第8071455号には、製品の噴流を形状付けるための第1の空気の噴流の噴射が意図された第1のオリフィスが設けられた回転式噴霧装置が記載されている。各第1の空気の噴流は、カップの回転軸線に対して、軸線方向成分、及び正放線方向又は周方向の成分を有する第1の方向に傾斜される。したがって、第1の空気の噴流は、カップ及び被覆製品の噴流の外側周辺の渦巻空気流を生成する。「渦」と呼ばれることが多いこの渦巻空気流を使用して、特にその流量が調整される場合に、端部によって噴霧される製品の噴流を所望の用途に適するように形状付けることができる。
【0006】
日本国特許公開第8071455号の図6で示した回転式噴霧装置の本体には、第1のオリフィスと同じ円上、及びそれからオフセットされたカップの外周に同様に配置された幾つかの第2のオリフィスも設けられる。こうした第2のオリフィスの1つから噴射される各第2の空気の噴流は、軸線方向成分及び径方向成分を有する第2の方向に回転軸線に対して傾斜される。こうした成分は、空気流をカップの周囲に噴射して、カップの高速回転によってカップの下流に生じる減圧部を減少させるように決定される。
【0007】
したがって、第2の空気の噴流は、塗布された塗料の均一なフィルムを生成するものである。この目的を達成するには、第2の空気の噴流が、カップに面してカップの下流に位置する減圧ゾーンに直接到達しなければならない。したがって、各第2の空気の噴流の方向は、第2の空気の噴流のカップの後面への衝突が全て回避されるように決定される。
【0008】
しかし、こうした第2の空気の流れは、被覆製品の噴流の形状の悪化を回避するために精密な調整が必要である。さらに、このように傾斜した第2の空気の噴流は、製品の噴流の形状の調整に使用することができず、又はその結果、塗装される物体上に噴霧される滴が衝突する領域の調整に使用することもできない。
【0009】
また、こうした回転式噴霧装置は、比較的高速のシュラウド空気及び渦巻空気速度を発生させ、塗装される物体への被覆製品の塗布を質的にも量的にも悪化させる危険性が伴う。
【0010】
一方で質的には、こうした回転式噴霧装置を使用して塗装した物体では、衝突のプロファイルが一様でなく、一般にあまり強固でないことが多い衝突が示される。回転式噴霧装置からの被覆製品の衝突の強固さは、シュラウド空気流量など設定パラメータの関数としての回転式噴霧装置と塗装される物体の相対運動の方向に対して垂直方向に考えた中央又は上方の付着厚さゾーンの幅を示す曲線の一様性に実質的に対応する。
【0011】
他方で量的には、こうした回転式噴霧装置の付着効率は比較的限られている。付着効率は、転写効率としても知られており、回転式噴霧装置を使用して噴霧される被覆製品の量に対する塗装される物体上に付着する被覆製品の量の比である。
【0012】
日本国特許公開第8084941号には、それぞれ第1の空気の噴流及び第2の空気の噴流を噴射するための第1のオリフィス及び第2のオリフィスが設けられた回転式噴霧装置が記載されている。第1の空気の噴流及び第2の空気の噴流は、それぞれ平行又は広がる方向に方向付けられ、隣接する噴流の間で周辺の少量の交差が行われる。したがって、こうした回転式噴霧装置も上記の欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】日本国特許公開第8071455号
【特許文献2】日本国特許公開第8084941号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特に、本発明は、比較的高い付着効率、及び被覆製品と塗装される物体の間の優れた衝撃の堅牢性を獲得することができるようにする被覆製品回転式噴霧装置の提案によって、こうした欠点に対処することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため、本発明の一主題は、
−少なくとも1つの概ね円形の端部を有し、被覆製品の噴流を形成することができる被覆製品噴霧部材と、
−噴霧部材を回転駆動する手段と、
−固定された本体であって、
−噴霧部材の回転軸線を取り囲む第1の輪郭上に配置された第1のオリフィスであって、各第1のオリフィスが第1の方向に第1の空気噴流を噴射することが意図された第1のオリフィス、及び
−噴霧部材の回転軸線を取り囲む第2の輪郭上に配置された第2のオリフィスであって、各第2のオリフィスが第2の方向に第2の空気噴流を噴射することが意図された第2のオリフィスを含む本体とを備える被覆製品のための回転式噴霧装置である。
【0016】
各第1の方向及び各第2の方向のそれぞれの方向付け、並びに各第1のオリフィス及び各第2のオリフィスのそれぞれの位置によって、互いに関連する少なくとも1つの第1の空気噴流と少なくとも1つの第2の空気噴流の交差からそれぞれが得られる混合噴流が形成され、交差領域は端部の上流に存在する。
【0017】
分離又は任意の技術的に許容される組み合わせで考慮される、他の有利であるが任意選択の本発明の特徴によれば、
−各第1の方向と噴霧部材は分離されており、各第2の方向は噴霧部材に対する割線である
−各第2の方向は回転軸線を含む平面内に延び、第2の方向は回転軸線上に存在する頂点に向かって概ね集束する
−各第1のオリフィス及び関連する第2のオリフィスは0mmから10mm、好ましくは1mmに等しい距離だけ分離される
−第1のオリフィス及び第2のオリフィスはそれぞれ第1の輪郭及び第2の輪郭上に位置付けられて、2つの隣接する混合噴流が部分的に混合されるようにする
−全ての第1の方向及び全ての第2の方向はそれぞれ回転軸線に対して対称である
−回転軸線に沿って考慮される第1の輪郭と端部の間の距離は5mmから30mmであり、回転軸線に沿って考慮される第2の輪郭と端部の間の距離は5mmから30mmである
−第1の輪郭及び第2の輪郭はそれぞれ円状である
−第1の輪郭及び第2の輪郭は共通平面内に配置され、共通平面は回転軸線に対して垂直である
−第1の輪郭及び第2の輪郭は固定本体の下流部分内及びカップの回転軸線の周りに延びる概ね切頭円錐面上に配置される
−第1の輪郭及び第2の輪郭は回転軸線上に中心をおく円に一致し、端部の直径と円の直径の比は0.65から1であり、好ましくは0.95に等しい
−本体は、20から60の第1のオリフィス及び20から60の第2のオリフィスを含み、第1のオリフィス及び第2のオリフィスは円形であり、第1のオリフィスが第2のオリフィスと交互になるように第1のオリフィスが円上に配置され、第1のオリフィスの直径及び第2のオリフィスの直径は0.4mmから1.2mmであり、好ましくは両方とも0.8mmに等しい
−第1の方向と関連する第2の方向は交点で交わり、回転軸線に沿った共通平面と交点の間の距離は、共通平面内で考慮される第1のオリフィス又は第2のオリフィスの最長寸法(6)の0.5倍から30倍、好ましくは1倍から2倍である
−各混合噴流は、端部によって切頭された概ね楕円状の端部の平面内の断面を有し、楕円の長軸は、20°から70°、好ましくは35°から55°の角度だけ端部に対する局所的接線方向に対して傾斜される
−第1の方向は、端部からの径方向の距離0mmから25mm、好ましくは0mmを通過し、第2の方向は、端部からの軸線方向の距離0mmから25mm、好ましくは3.5mmで噴霧部材と交わる。
【0018】
さらに、本発明の他の主題は、全空気流量が100Nl/分から1000Nl/分、好ましくは300Nl/分から800Nl/分であり、第1の空気噴流からの流量の25%から75%、好ましくは33%、及び第2の空気噴流からの流量の75%から25%、好ましくは67%を含む、上記の回転式噴霧装置を実施する、被覆製品の噴霧方法である。
【0019】
また、本発明の他の主題は、上記の少なくとも1つの回転式噴霧装置を備える、被覆製品を噴霧するための設備である。
【0020】
添付の図面を参照して、単に非限定的な例として与えられる以下の記載から本発明を明瞭に理解することができ、本発明の利点もさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による回転式噴霧装置の一部が除去された斜視図である。
【図2】図1の噴霧装置の一部を示す、図1の角度とは異なる角度からの拡大した斜視図である。
【図3】特に本発明の一特徴を示す、図2と同様であるが、縮小した図である。
【図4】特に本発明の一特徴を示す図3と同様の図である。
【図5】図4の詳細VIを示す図である。
【図6】図5の矢印VIから見た正面図である。
【図7】本発明の動作を示す図4と同様の図である。
【図8】図7の詳細VIIIを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、以下でカップと呼ぶ噴霧部材1を備える被覆製品を噴霧するための回転式噴霧装置Pを示している。カップ1は本体2内に部分的に収容される。カップ1は、カップ1が図で示していない駆動手段によって軸Xの周りで高速で回転駆動される噴霧位置にあるところが示されている。したがって、軸Xはカップ1の回転軸線を構成する。本体2は固定される。すなわち軸Xの周りで回転しない。本体2を、複数軸のロボットアームなど図で示していない支持部に取り付けることができる。
【0023】
方向制御弁3が、カップ1の上流部分に固定されて、被覆製品を送り、分配する。負荷下、すなわち製品を噴霧する場合のカップ1の回転速度は、30000rpmから70000rpmである。
【0024】
カップ1は、軸Xの周りで回転対称である。カップ1は分配面11を有し、分配面11上で被覆製品が遠心力の影響を受けて噴霧端12に到達するまで広がり、噴霧端12で細かい滴に霧化される。滴の集合は、図で示していないが、製品の噴流を形成し、この噴流はカップ1を出て、図で示していないが、塗装すべき物体に向かって進み、その物体に衝突する。カップ1の外側後面13、すなわち対称軸Xに面しない表面は、本体2に面する。
【0025】
本体2は、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6を有する。第1のオリフィス4は軸Xを取り囲む第1の輪郭C上に配置される。同様に、第2のオリフィス6は軸Xを取り囲む第2の輪郭C上に配置される。第1の輪郭C及び第2の輪郭Cは共通の平面P46内に配置される。共通平面P46は軸Xに対して垂直である。平面P46は本体2の下流部分に存在する。本体2は軸Xの周りで回転対称であるため、共通平面P46は第1の輪郭C及び第2の輪郭Cを含む平坦な環状を表す。
【0026】
用語「上流」及び「下流」は、図1の右に位置する回転式噴霧装置Pのベースから図1の左に位置する端部12まで製品の流れる方向を指す。
【0027】
図1から8の例では、第1の輪郭C及び第2の輪郭Cはそれぞれ軸Xに中心をおく円形を有する。さらに、第1の輪郭Cと形状Cは円Cに一致し、したがって円Cは軸Xに中心があり、円C上に第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6が配置される。したがって、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6は本体2の一部として存在する。
【0028】
端部12は、概ね、軸Xに中心をおく直径D12の円状である。端部12で霧化する滴の大きさの制御を向上させるための切欠が分配面11と端部12の間に作製され、その一部が図2に参照番号14で示されている。端部12は、円Cから、したがって第1の輪郭C又は第2の輪郭(C)から軸線方向の距離Lに存在し、この図ではこの距離は10mmである。実際は、距離Lは5mmから30mmでもよい。距離Lはカップ1が本体2を超えて突き出る範囲を示す。形容詞「軸線方向の」は距離を表し、又はより全般的には、軸Xの方向に走る実体を表す。
【0029】
この図では、直径が50mmに等しいカップ1についての円Cの直径Dは52.6mmである。実際は、こうしたカップの直径Dは50mmから77mmでもよい。端部12の直径D12と円Cの直径Dの比は0.95に等しい。実際は、この比は0.65から1でもよい。
【0030】
第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6は、それぞれ第1の方向X及び第2の方向Xに関して図1及び8で示した、第1の空気噴流J及び第2の空気噴流Jを噴射するものである。「第1の方向」は第1の噴流Jが噴射される方向を示す。「第2の方向」は第2の空気噴流Jが噴射される方向を示す。
【0031】
図2から5で示すように、各第1の空気の噴流Jは、軸Xに対して第1の方向Xに傾斜される。各第1の方向Xは軸X及び共通平面P46に対して斜めに延びる。換言すれば、各第1の方向Xは、原点が対応する第1のオリフィス4と一致するカーテシアン基準系の3方向、すなわち、軸Xの方向、径方向、及び、いわゆる周方向又は接線方向である正放線方向にゼロでない成分を有する。各第1の方向Xとカップ1は分離されており、すなわち、それぞれ第1の空気噴流Jは端部12が位置する領域を自由に横切ることができる。
【0032】
換言すれば、第1の空気噴流Jはカップ1の外側後面13に衝突しない。第1の噴流Jは共に、被覆製品の噴流の形状に影響を与えることができる「渦巻空気」として知られている旋回空気流を生成する。各第1の方向Xは、対応する第1の空気噴流Jが端部12からの径方向距離r5mmに流れるようになされる。実際は、距離rはゼロではなく25mm未満である。距離rは特に軸線方向距離Lに依存する。
【0033】
各第2の空気噴流Jは、軸Xに対して第2の方向Xに傾斜される。第2の方向Xは、軸Xに対して斜めに延びる。図2で見ることができるように、対応する第2の空気噴流Jがカップ1の外側後面13に衝突するようになされる。したがって、各第2の方向Xはカップ1を画定する表面への割線であり、端部12から軸線方向距離L1363.5mmでカップ1と「交差する」。実際は、L136は0mmから25mmでもよい。
【0034】
さらに、各第2の方向Xは軸Xを含む平面(経線面)内に延びる。第2の方向Xは軸X上に位置する頂点Sに向かって集束する。換言すれば、第2の方向Xは回転軸線Xに対して横方向である。したがって、各第2の方向Xは、頂点Sが軸Xの一部である円錐の母線に例えることができる。第2のオリフィス6に中心をおくカーテシアン基準系、軸X、径方向及び正放線方向によって形成される軸には、この基準系の原点を形成する第2のオリフィス6に対応する第2の方向Xについてゼロ正放線成分がある。
【0035】
実際は、第2の方向Xは完全に集束せず、軸X付近の狭い領域に合流してもよい。図で示していない代替形態では、第2の方向Xは別々でもよく、すなわち図1から8の例の第1の方向Xと同様に、合流も集束も示さなくてもよい。
【0036】
図3で示すように、全ての第1の空気噴流Jの第1の方向X、及び全ての第2の空気噴流Jの第2の方向Xは、それぞれ軸Xに対して対称である。しかし、第1及び第2の方向の他の方向付け、特に非対称の方向付けも可能である。
【0037】
第1のオリフィス4は第2のオリフィス6と交互になるように円C上に配置される。図1から8で示すように、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6は円C上に均等に分配される。すなわち、図6で分かるように、2つの連続した第1のオリフィス4又は2つの連続した第2のオリフィス6は、9°に等しい同じ角度Bによって分離される。実際は、この角度Bは6°から18°でもよい。
【0038】
さらに、図6で分かるように、互いに隣接する第1のオリフィス4と第2のオリフィス6は6.7°に等しい角度A、すなわち、たとえば、2つの連続する第1のオリフィス4を分離させる角度Bの半分によって分離される。実際は、第1のオリフィス4と第2のオリフィス6の角度分離Aは3°から12°でもよい。
【0039】
第1のオリフィス4及び隣接する第2のオリフィス6は1mmに等しい距離c46だけ分離される。実際は、距離c46は0mmから10mmでもよい。後で記載するように、こうした距離c46よって、第1の噴流Jと第2の噴流Jを組み合わせることができるようになる。
【0040】
第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6の数及び分配は、製品の噴流の形状の制御の所望の正確さ及び衝撃面の所望の均一性によって決定される。したがって、オリフィス4及び6の数が多くなるに従って衝撃面がより均一になる。本体2は、概ね40の第1のオリフィス4及び概ね40の第2のオリフィス6を含む。実際は、本体2は20から60の第1のオリフィス4及び20から60の第2のオリフィス6を含むことができる。別法として、異なる数の第1のオリフィス及び第2のオリフィスを設けることもできる。
【0041】
第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6は、図6で分かるように、それぞれ0.8mmに等しい直径d及びdを有する。実際は、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6の直径d及びdは0.4mmから1.2mmでもよい。実際は、直径dとdは互いに異なるものでもよい。
【0042】
こうした寸法は、それぞれ6バール及び6バールの圧力を加えた場合に、第1の空気噴流J及び第2の空気噴流J、並びにそれぞれ200Nl/分(分当たりのノルマルリットル)及び400Nl/分に等しい流量を噴射することができるようにするものである。図2及び3で示すように、各第1の空気噴流J及び第2の空気噴流Jは半分の角度約10°の比較的小さい渦の円錐形に噴射される。
【0043】
第1J及び第2Jの方向は、この図では、それぞれ本体2内に画定された第1のチャネル40及び第2のチャネル60の方向によって決定される。第1の方向X及び第2の方向Xは、それぞれ第1のチャネル40及び第2のチャネル60の軸の方向に対応する。図1から8の例では、チャネル40及び60は真直ぐであり、それぞれ第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6に開放される。チャネル40及び60は上流で、以下に記載する2つの独立した圧縮空気供給源に連結されて、噴流J及びJを形成する。
【0044】
図1で示すように、第1のチャネル40及び第2のチャネル60は、本体2の外側シュラウドを画定するカップ20を拡張する外側ジャケット22を通る直線を走る。チャネル40及び60は、孔あけ作業を使用して適切な角度に作製される。第1のチャネル40は、上流で、それらに共通の第1室に連結され、第1室自体は図で示していない圧縮空気源に連結される。同様に、第2のチャネル60はそれらに共通の第2室に連結され、第2室は、図で示していないが、第1のチャネル40に供給する源とは独立した圧縮空気源に連結される。
【0045】
第1及び第2室は、この図では、外側ジャケット22と内側ジャケット24の間に形成され、Oリングシールによって分離される。形容詞「内側の」は本明細書では回転軸線Xに近い物体を示し、形容詞「外側の」は回転軸線Xから離れた物体を示す。ジャケット22及び24は軸Xの周りで回転対称である。
【0046】
別法として、第1のチャネル40及び/又は第2のチャネル60を外側ジャケット22と内側ジャケット24の間に形成される間隙によって画定することもできる。この間隙は、この場合、内側ジャケット24と外側ジャケット22の対向する表面の1つ及び/又は他方に切欠を機械加工することによって生成することができる。
【0047】
第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6の幾何形状によって、それぞれ第1の空気噴流Jと第2の空気噴流Jの交差から得られる混合噴流J46が形成される。より具体的には、図5から8で示すように、それぞれ各第1の方向X及び各第2の方向Xの特に軸Xに対する方向、及びそれぞれ各第1のオリフィス4及び各第2のオリフィス6の位置によって、混合噴流J46が形成される。それらは、混合噴流J46の形成を目的として決定される。
【0048】
さらに、第1の空気噴流J及び関連する第2の空気噴流Jについて、図5で分かるように、交差領域R46が端部12の上流に存在するように、上記の方向及び位置が決定される。交差領域R46は、第1の空気噴流Jの噴流が関連する第2の空気噴流Jの噴流と衝突する体積に対応し、したがって、混合噴流J46が生成される。
【0049】
換言すれば、第1の空気噴流Jと関連する第2の空気噴流Jは互いに逸れたり組み合わされたりして混合噴流J46になる。本出願では、用語「組み合わせた」は、第1の空気の噴流と第2の空気の噴流が相互作用し、かなり合流することを指す。図7及び8で示すように、各混合噴流J46は、交差領域R46から端部12の下流まで広がる概ね円錐形状である。
【0050】
第1の方向Xと関連する第2の方向Xは、好ましくは交差領域R46の一部である交点46で合う。したがって、互いに対応する第1の空気噴流と第2の空気噴流の交差又は相互作用は最大である。各組み合わせた空気噴流の流量は、それを生成した第1の空気噴流と第2の空気噴流の流量の合計に概ね相当する。それによって、付着効率及び塗装される物体上への被覆製品の強固な衝突を最適化することができる。
【0051】
交点46は、第1のオリフィス4又は第2のオリフィス6の共通平面P46からの最長寸法の1から2倍の軸線方向距離L46に存在する。この最長寸法は共通平面P46内にあると考えられる。この特別な例では、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6が全て同じ直径を有するため、直径dでもdでもかまわない。実際は、交点46と共通平面P46の間の軸線方向の距離L46はこの最長寸法の0.5倍から30倍である。
【0052】
こうした軸線方向の距離L46は、第1の空気噴流Jと第2の空気噴流Jの流れの比較的均一な合流を得ることができるようにし、したがって、端部12及びその下流での混合噴流J46の不均一さが制限される。
【0053】
図6で示すように、各混合噴流J46は端部12の平面内に端部12によって切頭された概ね楕円E46の形状の断面を有する。合流した噴流又は混合噴流J46の流れは、実際は、カップ1の外側後面13によって逸らされる。楕円E46の長軸X46は端部12の局所的接線の方向T12に対して角度A46だけ傾斜する。角度A46もそれぞれ各第1の方向X及び各第2の方向Xの方向によって、かつそれぞれ各第1のオリフィス4及び各第2のオリフィス6の位置によって決定される。
【0054】
この例では、角度A46は50°に等しい。実際は、角度A46は20°から70°、好ましくは35°から55°でもよい。この楕円E46の傾斜、及び、したがって、混合噴流J46は、図7及び8と併せて以下に記載するように、端部12の周囲を流れる混合噴流J46の流れ中の空気の速度が均一になるようにすることができる。
【0055】
図7及び8で示すように、第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6は、それぞれ第1の輪郭C及び第2の輪郭C上に、すなわちこの例では円C上に位置付けられて、2つの隣接する混合噴流J46が部分的に混合されるようになされる。したがって、端部12に対する接線によって画定される方向T12で考えると、1つの混合噴流J46の各横方向の領域が、隣接する混合噴流J46の横方向の領域と混合される。混合体積F46は図8に作成したそれらの断面で示されている。
【0056】
こうした混合により、周方向T12の速度プロファイルを考える他に、径方向R12の速度プロファイルを考えた場合に、端部12の周囲の空気速度の比較的良好な均一さを確保することができる。
【0057】
換言すれば、それぞれ第1のオリフィス4及び第2のオリフィス6の位置、並びに、それぞれ第1の方向X及び第2の方向Xにより、カップ1の周囲全体の空気速度の等方場を確保することができる。その結果、混合噴流J46の併置によって形成されるエンベロープ内の同一表面積であるが任意の位置の2つのエレメンタリーセクション(elementary section)を通過する空気の流量を実質的に同じにすることができる。したがって、端部12によって霧化された全ての滴が均一かつ一定の空気力を受ける。
【0058】
その効果として、第1に、塗装される物体上への被覆製品の衝突にかなりの強固さが与えられ、第2に、被覆製品が塗装される物体上に転写又は付着される付着効率又は転写効率がかなり向上される。特に、均一かつ一定の空気力により、塗装される物体上に付着されない一般に「スプレーしぶき」として知られている被覆製品の量を減少させることができる。
【0059】
判明しているように、様々な試験条件下で、付着効率を約10%上げることができる。したがって、付着効率が、従来技術の回転式噴霧装置についての約75%から本発明による回転式噴霧装置についての約87%に上がる。本発明による被覆製品を噴霧する、本発明による回転式噴霧装置を備える設備では、噴霧される被覆製品に関して、かつ再処理すべき廃棄製品に関して、こうした付着効率により、かなりの節約が示される。
【0060】
回転式噴霧装置Pを、本発明による被覆製品を噴霧する方法を使用して実施することができる。有利には、第1の空気噴流Jの流量及び第2の空気噴流Jの流量はそれぞれ全空気流量の33%及び67%を示し、100Nl/分から1000Nl/分、好ましくは300Nl/分から800Nl/分でもよい。実際は、第1の空気噴流Jの流量は全空気流量の25%から75%を示すことができ、第2の空気噴流Jの流量はこれを補足するために全空気流量の75%から25%を示すことができる。
【0061】
こうした動作条件、及び、特に、第1の空気噴流J及び第2の空気噴流Jからのこうした流量の分配により、塗装される物体上への付着効率及び被覆製品の衝突の強固さを最適化することができる。
【0062】
図で示していない代替形態によれば、第1及び第2の輪郭を2つの別の平面内に位置付けることもできる。具体的には、第1及び第2の輪郭を、固定本体の下流部分及びカップの回転軸線の周りに延びる概ね切頭円錐面上の2つの別の平面内に位置付けることができる。より全般的には、第1及び/又は第2の輪郭は平面でなくてもよい。
【0063】
図で示していない他の代替形態によれば、回転式噴霧装置の固定本体は、第1及び第2の空気噴流と異なる方向の空気噴流を噴射することが意図された追加のオリフィスを含むことができる。さらに、固定本体は1及び第2のオリフィスと異なる位置付けの追加のオリフィスを含むことができる。こうした追加のオリフィスは混合噴流を生成するように構成する必要はなく、他の機能を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 カップ
2 本体
3 方向制御弁
4 第1のオリフィス
6 第2のオリフィス
11 分配面
12 端部
13 外側後面
14 切欠
20 カップ
22 外側ジャケット
24 内側ジャケット
40 第1のチャネル
46 交点
60 第2のチャネル
A 角度
46 角度
B 角度
第1の輪郭
第2の輪郭
46 距離
12 直径
直径
直径
第1の空気噴流
第2の空気噴流
46 混合噴流
軸線方向距離
46 軸線方向距離
136 距離
P 回転式噴霧装置
46 共通平面
径方向の距離
46 交差領域
頂点
12 局所的接線の方向
回転軸線
第1の方向
第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆製品のための回転式噴霧装置(P)であって、
少なくとも1つの略円状の端部(12)を有していると共に、前記被覆製品の噴流を形成可能な前記被覆製品を噴霧するための噴霧部材(1)と、
前記噴霧部材(1)を回転駆動させるための手段と、
−前記噴霧部材(1)の回転軸線(X)を囲んでいる第1の輪郭(C)上に配置された第1のオリフィス(4)であって、前記第1のオリフィス(4)それぞれが第1の方向(X)において第1の空気噴流(J)を噴射するように構成されている、前記第1のオリフィス(4)と、
−前記噴霧部材(1)の前記回転軸線(X)を囲んでいる第2の輪郭(C)上に配置された第2のオリフィス(6)であって、前記第2のオリフィス(6)それぞれが第2の方向(X)において第2の空気噴流(J)を噴射するように構成されている、第2のオリフィス(6)と、
を備えている固定式本体(2)と、
を備えている前記回転式噴霧装置(P)において、
互いに関連する少なくとも1つの前記第1の空気噴流(J)と少なくとも1つの前記第2の空気噴流(J)とが交差することによって、混合噴流(J46)それぞれが形成されるように、前記第1の方向(X)それぞれと前記第2の方向(X)それぞれとが方向付けられ、且つ、前記第1のオリフィス(4)それぞれと前記第2のオリフィス(6)それぞれとが配置されており、
交差領域(R46)が、前記端部(12)の上流に存在することを特徴とする回転式噴霧装置(P)。
【請求項2】
前記第1の方向(X)それぞれと前記噴霧部材(1)とが分離されており、
前記第2の方向(X)それぞれが、前記噴霧部材(1)に対する割線であることを特徴とする請求項1に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項3】
前記第2の方向(X)それぞれが、前記回転軸線(X)を含む平面内において延在しており、
前記第2の方向(X)が、前記回転軸線(X)上に存在する頂点(S)に向かって概略的に集束していることを特徴とする請求項2に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項4】
前記第1のオリフィス(4)それぞれと関連する前記第2のオリフィス(6)とが、0mm〜10mm、好ましくは1mmとされる距離(c46)で離間していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項5】
前記第1のオリフィス(4)及び前記第2のオリフィス(6)それぞれが、2つの隣接する混合噴流(J46、J46)が部分的に混合されるように、前記第1の輪郭(C)及び前記第2の輪郭(C)上に配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項6】
前記第1の方向(X)のうちすべての方向と前記第2の方向(X)のうちすべての方向とがそれぞれ、前記回転軸線(X)に関して対称とされることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項7】
前記第1の輪郭(C)と前記端部(12)との間の距離(L)が、前記回転軸線(X)に沿って5mm〜30mmとされ、
前記第2の輪郭(C)と前記端部(12)との間の距離(L)が、前記回転軸線(X)に沿って5mm〜30mmとされることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項8】
前記第1の輪郭(C)と前記第2の輪郭(C)とがそれぞれ、円状とされることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項9】
前記第1の輪郭(C)と前記第2の輪郭(C)とが、共通平面(P46)内に配置されており、
前記共通平面(P46)が、前記回転軸線(X)に対して垂直であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項10】
前記第1の輪郭と前記第2の輪郭とが、前記固定式本体の下流部分内に且つカップの前記回転軸線を中心として延在している切頭円錐面上に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項11】
前記第1の輪郭(C)と前記第2の輪郭(C)とが、前記回転軸線(X)上に中心が配置された円(C)において一致しており、
前記端部(12)の直径(D12)と前記円(C)の直径(D)との比が、0.65〜1とされ、好ましくは0.95とされることを特徴とする請求項8又は9に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項12】
前記固定式本体(2)が、20個〜60個の第1のオリフィス(4)と20個〜60個の第2のオリフィス(6)とを備えており、
前記第1のオリフィス(4)と前記第2のオリフィス(6)とが、円状であり、
前記第1のオリフィス(4)が、前記第1のオリフィス(4)が前記第2のオリフィス(6)と交互になるように前記円(C)上に配置されており、
前記第1のオリフィス(4)の直径(d)と前記第2のオリフィス(6)の直径(d)とが、0.4mm〜1.2mmとされ、好ましくは共に0.8mmとされることを特徴とする請求項11に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項13】
前記第1の方向(X)と関連する第2の方向(X)とが、交点(46)で交差しており、
前記共通平面(P46)と前記交点(46)との間における、前記回転軸線(X)に沿った距離が、前記第1のオリフィス(4)又は第2のオリフィス(6)の、前記共通平面(P46)内おける最長寸法(d、d)の0.5倍〜30倍、好ましくは1倍〜2倍とされることを特徴とする請求項9に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項14】
前記混合噴流(J46)それぞれが、前記端部(12)の平面内において、前記端部(12)によって切頭された略楕円(E46)の形状をした断面を有しており、
前記楕円(E46)の長軸(X46)が、前記端部(12)に対して局所的に接する方向(T12)に対して、20°〜70°、好ましくは35°〜55°の角度(A46)で傾斜していることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項15】
前記第1の方向(X)が、前記端部(12)からの径方向における距離(r)が0mm〜25mm、好ましくは0mmの地点を通過しており、
前記第2の方向(X)が、前記端部(12)からの軸線方向における距離(L136)が0mm〜25mm、好ましくは3.5mmの地点において、前記噴霧部材(1)と交差していることを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)。
【請求項16】
被覆製品を噴霧するための方法であって、
全空気流量が100Nl/分から1000Nl/分、好ましくは300Nl/分から800Nl/分であり、前記全空気流量のうち前記第1の空気噴流(J)からの流量が25%〜75%、好ましくは33%であり、且つ、前記全空気流量のうち前記第2の空気噴流(J)からの流量が75%〜25%、好ましくは67%である状態において、請求項1〜15のいずれか一項に記載の回転式噴霧装置(P)を実施することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−504040(P2012−504040A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528410(P2011−528410)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051859
【国際公開番号】WO2010/037972
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511080247)サム・テクノロジー (7)
【Fターム(参考)】