説明

回転式成膜装置

【課題】現状を超えて成膜基板を高速に回転しても、原料ガスの流れに乱流が発生することを抑制することが可能な回転式成膜装置を提供する。
【解決手段】回転式成膜装置1は、上面20Tに、成膜基板Wが載置される基板載置部21Wを含む、成膜基板Wよりも径の大きいサセプタ21を有する回転体20を備えた反応容器10と、回転体20に回転動力を供給する回転動力供給機構23と、
サセプタ21の上方からサセプタ21に載置された成膜基板Wに対して原料ガスGを供給する原料ガス供給機構とを備えている。サセプタ21において基板載置部21Wの外部領域の少なくとも一部はカバー部材30で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の成膜基板上にシリコンなどを気相成長する成膜装置として、基板を回転させながら成膜を行う回転式成膜装置がある。
【0003】
図面を参照して、従来の回転式成膜装置の構成について説明する。図3Aは従来の回転式成膜装置において、回転体上に成膜基板を載置した状態の上面図である。図3Bは従来の回転式成膜装置の要部断面図である。
図面上は、適宜実際のものとは異ならせて簡略化してある。
【0004】
従来の回転式成膜装置101は、原料ガスGが導入されるガス導入口110Gを有する反応容器110を備えている。反応容器110内には、上面120Tに、ウェーハ等の成膜基板Wが載置される基板載置部121Wを含む、成膜基板Wよりも径の大きいサセプタ121を有する回転体120が備えられている。
回転体120は回転体支持部122により支持されている。回転体支持部122はモータ等の回転体120に回転動力を供給する回転動力供給機構123により回転可能とされている。回転体120の側面120Sは、固定のカバー部材130で覆われている。
【0005】
回転体120の内部には、成膜時に成膜基板Wを所定の温度に加熱するためのヒータ140が収容されている。
【0006】
従来の回転式成膜装置においては、通常300〜900rpm程度の回転数で成膜基板Wを高速回転させることによって、原料ガスGの流れが層流となり、基板面内のガス濃度が均一となる。このことによって成長速度が基板面内で均一となり、安定した品質で成膜を実施できる。
【0007】
基板回転数が高くなる程、濃度境界層が薄くなり、成長速度が向上して、生産性が向上する。低コスト化のためには成膜基板Wを現状より高速に回転させたいが、現状(通常900rpm以下)を超えて基板回転数を上げると(例えば900〜5000rpm)、図3Bに原料ガスGの流れを模式的に示すように、特にサセプタの外周部上の成膜ガスGの流れが乱流になりやすく、成膜基板W上まで乱流の影響を受けて、膜厚等の面内均一性が低下する恐れがある。そのため、900rpm超の回転数に上げることが難しいのが現状である。
【0008】
サセプタ121上に成膜基板Wを載置するため、通常、成膜基板Wの径d2よりもサセプタ121の径d4が大きく設計される(d4≧d2)。
図3Bに示したサセプタ121上に載置された成膜基板Wに対して上方から原料ガスGを供給する方式では、成膜基板Wの加熱は下方から行う必要があり、比較的大きな径のヒータ140を必要とする。ヒータ140は回転体120の内部に収容され、かつ、回転体120と離間配置される必要がある。そのため、図3Bに示した回転体120にヒータ140が収容された構造では、ヒータ140を収容可能とするために、回転体120にヒータ140が収容されない構造に比して、回転体120の径、すなわちサセプタ121の径d4が大きくなる。
サセプタ121の径d4が大きい程、回転数を上げた時に乱流が起きやすくなる。
【0009】
図3Aは、サセプタ121上における原料ガスGの径方向の速度分布を模式的に示している。矢印vが速度の大きさを模式的に示している。
サセプタ121上においては、サセプタ121の回転に追随して、原料ガスGが回転移動する。このとき、サセプタ121上においては、中心側から外周側に向けて、原料ガスGの移動速度は大きくなる。したがって、サセプタ121の径d4が大きくなる程、サセプタ121の外周部上の原料ガスGの移動速度が増し、この部分での乱流が生じやすくなる。また、サセプタ121の径d4が大きくなる程、サセプタ121と反応容器110の肩部(サセプタ121の外周部の近傍部分)110Xとの間の速度差が大きくなり、乱流が生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-306896号公報
【特許文献2】特開2000-114184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1には、サセプタ(37)の側方にヒータ(38)が配され、サセプタ(37)の径が成膜基板(50)の径より小さいオゾンアッシング装置(30)が記載されている(図1)。
かかる構成では、サセプタの径が成膜基板の径よりも小さいため、高速回転を実施しても、サセプタ外周部における乱流の発生は起こりにくい。
しかしながら、ヒータが回転体の側方に位置されるため、基板の加熱温度にムラが生じやすい。
【0012】
特許文献2には、サセプタ保持台(13)の少なくとも一部を球面もしくは円錐形状に形成した気相成長装置が開示されている(請求項2、図1、図2)。
かかる構成では、サセプタの実質的な径を小さくして、サセプタ外周部における乱流の発生を抑制することができる。
しかしながら、サセプタの外周部が露出しているので、現状を超えて高速回転した場合には乱流を効果的に抑制するには限界がある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、現状を超えて成膜基板を高速に回転しても、原料ガスの流れに乱流が発生することを抑制することが可能な回転式成膜装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の回転式成膜装置は、
上面に、成膜基板が載置される基板載置部を含む、前記成膜基板よりも径の大きいサセプタを有する回転体を備えた反応容器と、
前記回転体に回転動力を供給する回転動力供給機構と、
前記サセプタの上方から前記サセプタに載置された前記成膜基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給機構とを備えた回転式成膜装置であって、
前記サセプタにおいて前記基板載置部の外部領域の少なくとも一部がカバー部材で覆われたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、現状を超えて成膜基板を高速に回転しても、原料ガスの流れに乱流が発生することを抑制することが可能な回転式成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明に係る一実施形態の回転式成膜装置において、回転体上に成膜基板を載置した状態の上面図である。
【図1B】本発明に係る一実施形態の回転式成膜装置の要部断面図である。
【図2A】設計変更例を示す図である。
【図2B】設計変更例を示す図である。
【図2C】設計変更例を示す図である。
【図3A】従来の回転式成膜装置において、回転体上に成膜基板を載置した状態の上面図である。
【図3B】従来の回転式成膜装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の回転式成膜装置の構成について説明する。図1Aは本実施形態の回転式成膜装置において、回転体上に成膜基板を載置した状態の上面図である。図1Bは本実施形態の回転式成膜装置の要部断面図である。
図面上は、適宜実際のものとは異ならせて簡略化してある。
【0018】
本実施形態の回転式成膜装置1は、原料ガスGが導入されるガス導入口10Gを有する反応容器10を備えている。反応容器10内には、上面20Tに、半導体ウェーハ等の成膜基板Wが載置される基板載置部21Wを含む、成膜基板Wよりも径の大きいサセプタ21を有する回転体20が備えられている。
回転体20は回転体支持部22により支持されている。回転体支持部22はモータ等の回転体20に回転動力を供給する回転動力供給機構23により回転可能とされている。
回転式成膜装置1には、原料ガスボンベ及びガス配管等からなる原料ガス供給機構(図示略)が備えられており、サセプタ21の上方からサセプタ21に載置された成膜基板Wに対して原料ガスGが供給されるようになっている。
【0019】
回転体20の内部には、成膜時に成膜基板Wを所定の温度に加熱するためのヒータ40が収容されている。本実施形態において、サセプタ21の径d4は成膜基板Wの径d2よりも大きい(d4>d2)。
【0020】
本実施形態において、サセプタ21において基板載置部21Wの外部領域の少なくとも一部がカバー部材30で覆われている。
図示する態様では、サセプタ21の外周部がカバー部材30で覆われている。さらに、カバー部材30は、サセプタ21上から回転体20の側面20S上に跨って形成されている。カバー部材30はさらに、回転体20の底面20B及び回転体支持部22に沿って形成されている。
すなわち、カバー部材30は、回転体20の上面20T側のサセプタカバー部30Tと、回転体20の側面20S側の側面カバー部30Sと、回転体20の底面20B側の底面カバー部30Bと、回転支持部カバー部30Rとを有している。
回転支持部カバー部30Rは、モータ等の回転動力供給機構33により回転可能とされており、これによってカバー部材30が回転可能とされている。
カバー部材30は回転不能な固定部材であっても構わない。
【0021】
本実施形態において、反応容器10において原料ガスGが導入されるガス導入口10Gの径をd1、成膜基板Wの径をd2、サセプタ21のカバー部材30で覆われていない領域の径をd3としたとき、d1≧d2、かつ、d3≧d2である。
【0022】
本実施形態では、サセプタ21において基板載置部21Wの外部領域の少なくとも一部がカバー部材30で覆われる構成としている。
本実施形態の構成では、サセプタ21の上方から供給される原料ガスGから見て、サセプタ21の露出径(サセプタ21の見かけの径)d3をサセプタ21の径d4より小さくすることができ、回転体20を現状を超えて高速回転した場合(例えば回転数900rpm超、例えば900〜5000rpm)にも、原料ガスGの流れに、乱流が生じることが抑制される。
特に本実施形態では、回転体20を現状を超えて高速回転した場合に従来構造では乱流が起きやすいサセプタ21の外周部をカバー部材30で覆うようにしている。かかる構成では、特に乱流抑制効果が効果的に得られる。
【0023】
図1Aは、サセプタ21上における原料ガスGの径方向の速度分布を模式的に示している。矢印vが速度の大きさを模式的に示している。
サセプタ21の露出部では、サセプタ21の回転に追随して、原料ガスGが回転移動する。このとき、サセプタ21の露出部では、中心側から外周側に向けて、原料ガスGの移動速度は大きくなる。
【0024】
カバー部材30が回転不能な場合、あるいは停止状態にある場合、サセプタカバー部30T上の原料ガスGの移動速度は0、若しくはそれに近いものとなり、サセプタ21の外周部における乱流の発生が抑制される。
ただし、カバー部材30が回転不能な場合、あるいは停止状態にある場合、サセプタ21上において、カバー部材30で覆われてない中央部とカバー部材30で覆われた外周部との境界及びその近傍において、原料ガスGの急激な速度変化が起こる可能性がある。
【0025】
したがって、カバー部材30は、回転体20と同一方向に回転体20より遅い回転速度で回転されることが好ましい。かかる構成では、サセプタ21上において、カバー部材30で覆われてない中央部とカバー部材30で覆われた外周部との境界及びその近傍において、原料ガスGの急激な速度変化が起こることが抑制され、かつ、サセプタカバー部30T上のガスGの移動速度をカバー部材30のない構造に比して相対的に遅くすることができ、サセプタ21の外周部における乱流の発生が抑制される。
図1Aでは、カバー部材30を回転体20と同一方向に回転体20より遅い回転速度で回転した場合について、サセプタカバー部30T上のガスGの移動速度を模式的に示してある。
【0026】
図2A及び図2Bに示すように、カバー部材30のサセプタカバー部30Tには、開口部30Hを設けてもよい。
開口部30Hの個数及びパターンは特に制限されない。
図2Aに示す例では、カバー部材30のサセプタカバー部30Tに内周側から外周側に延びる複数のスリット状の開口部30Hが設けられている。
図2Bに示す例では、カバー部材30のサセプタカバー部30Tにマトリクス状に複数の矩形状の開口部30Hが設けられている。
カバー部材30のサセプタカバー部30Tに開口部30Hを設ける態様においても、カバー部材30は回転されてもされなくてもよく、回転体20と同一方向に回転体20より遅い回転速度で回転されることが好ましい。
その他、カバー部材30のサセプタカバー部30Tを多孔質構造にしてもよい。
上記のような態様においても、サセプタ21の外周部の少なくとも一部がカバー部材30で覆われているので、外周部における乱流抑制効果が得られる。
【0027】
図2Cに示すように、サセプタ21の外周部の高さが内側から外側に向けて断面視直線状又は断面視曲線状に小さくなるように構成し、サセプタ21の外周部をその形状に沿ってカバー部材30で覆うようにしてもよい。
図2Cは、サセプタ21の外周部の高さが内側から外側に向けて断面視直線状に小さくなる構成について図示してある。
【0028】
「背景技術」の項で挙げた特許文献2のように、サセプタ21の外周部の高さが内側から外側に向けて断面視直線状又は断面視曲線状に小さくなるように構成するだけでも、回転体20の実質的な径をd4よりも小さいd3とすることができ、乱流抑制効果が得られる。しかしながら、特許文献2の構成ではサセプタの外周部が露出しているので、現状を超えて高速回転した場合には乱流を効果的に抑制するには限界がある。
サセプタ21の外周部の高さが内側から外側に向けて断面視直線状又は断面視曲線状に小さくなるように構成し、さらにサセプタ21の外周部をカバー部材30で覆うことで、現状を超えて高速回転した場合にも乱流を効果的に抑制することができる。
サセプタ21の外周部及びカバー部材30のサセプタカバー部30Tの傾斜角度θは特に制限なく、断面視直線状で高さが変化する場合、θ≧10°が好ましい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態によれば、現状を超えて成膜基板Wを高速に回転しても、原料ガスGの流れに乱流が発生することを抑制することが可能な回転式成膜装置1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の回転式成膜装置は、半導体ウェーハ等の成膜基板上にシリコンなどを気相成長する成膜装置として、好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 回転式成膜装置
10 反応容器
10G ガス導入口
20 回転体
20B 底面
20S 側面
20T 上面
21 サセプタ
21W 基板載置部
22 回転体支持部
23 回転体支持部
23 回転動力供給機構
30 カバー部材
30T サセプタカバー部
30S 側面カバー部
30B 底面カバー部
30R 回転支持部カバー部
30H 開口部
33 回転動力供給機構
40 ヒータ
G 原料ガス
W 成膜基板
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に、成膜基板が載置される基板載置部を含む、前記成膜基板よりも径の大きいサセプタを有する回転体を備えた反応容器と、
前記回転体に回転動力を供給する回転動力供給機構と、
前記サセプタの上方から前記サセプタに載置された前記成膜基板に対して原料ガスを供給する原料ガス供給機構とを備えた回転式成膜装置であって、
前記サセプタにおいて前記基板載置部の外部領域の少なくとも一部がカバー部材で覆われた回転式成膜装置。
【請求項2】
前記サセプタの外周部が前記カバー部材で覆われた請求項1に記載の回転式成膜装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記サセプタ上から前記回転体の側面上に跨って形成された請求項2に記載の回転式成膜装置。
【請求項4】
前記反応容器において前記原料ガスが導入されるガス導入口の径をd1、
前記成膜基板の径をd2、
前記サセプタの前記カバー部材で覆われていない領域の径をd3としたとき、
d1≧d2、かつ、d3≧d2である請求項2又は3に記載の回転式成膜装置。
【請求項5】
前記カバー部材は回転不能な部材である請求項1〜4のいずれかに記載の回転式成膜装置。
【請求項6】
前記カバー部材は回転可能な部材であり、前記回転体と同一方向に当該回転体より遅い回転速度で回転されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の回転式成膜装置。
【請求項7】
前記カバー部材が開口部を有する請求項1〜6のいずれかに記載の回転式成膜装置。
【請求項8】
前記回転体の内部にヒータが収容された請求項1〜7のいずれかに記載の回転式成膜装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2013−62376(P2013−62376A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199812(P2011−199812)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】