説明

回転式拘束ライナー

一般に寛骨臼シェル(60)、および寛骨臼ライナー(10)を有する人工股関節のための寛骨臼構成組立体。寛骨臼ライナーはカップ部(11)、および少なくとも一つの拘束部(14)を有する。カップ部は半球形、またはドーム形であり、大腿骨の構成要素(50)の大腿骨頭部(52)を受容する半球形空洞部(18)を形成する。拘束部はカップ部の空洞部内の大腿骨頭部を固定するための伸長部を有してもよい。ライナーは更に、拘束部間に切り欠き部(19)を有してもよい。寛骨臼ライナーは寛骨臼シェル内で回転可能であり、大腿骨頭部(52)の衝突、不全脱臼、または大腿骨頭部の脱臼のおそれなく大腿骨の構成要素に最適な可動域を提供する。拘束部は寛骨臼シェル内で寛骨臼ライナーが回転を引き起こす傾斜面を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節の拘束ライナーに関し、より詳細には、人工股関節の回転式拘束ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
寛骨臼人工器官は、通常、寛骨臼シェルと寛骨臼ライナーの二つの別の構成要素から構成される。シェルは半球形で、患者自身の寛骨臼内に形成される空洞部の中に取り付けられ、埋め込まれる。ライナーはシェル内の空洞部に結合されるように半球形である。低摩擦のベアリング面がライナー内の球状空洞部に沿って形成され、股関節の大腿骨球部のための関節表面を提供する。
【0003】
シェルは、生体適合性金属または、合金で作られ、ライナーは超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)のようなポリマーで作られていてもよい。材料や形状にかかわらず、これら二つの構成要素は、通常ライナーがシェル内部に取り付けられ、シェルがライナーの外面を包むことで互いに固定されている。シェルがいったん患者自身の寛骨臼に埋め込まれ、ライナーがシェル内に組み込まれると、ライナーが大腿骨球部を受容する準備が整う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人工股関節においては、患者の身体に埋め込まれた後で、衝突、不全脱臼、更には脱臼をも生じる可能性がある。例えば、股関節の球状の大腿骨球部が寛骨臼構成要素から脱臼してしまうこともある。脚部への外傷や、脚部の異常なひねりなど、この脱臼の原因はさまざまである。時には、人工股関節の脱臼治療のために追加の手術が必要となることもある。
【0005】
衝突や不全脱臼が生じる可能性があるため、大腿骨球部が寛骨臼の構成要素から不全脱臼や脱臼するのを抑制する寛骨臼ライナーを有するのが望ましい。いくつかの設計においては、ライナーは半球形以上、すなわち、ライナーが大腿骨球部の半分以上をライナーの球状形空洞の中に包み込み、拘束するよう構成されている。時には、寛骨臼ライナーの空洞内に大腿骨球部を固定するための固定リングが用いられる。
【0006】
従来の拘束ライナーは、人工股関節に更なる安定性を提供するが、大腿骨の構成要素の大腿骨頸部が半球形以上に伸長した拘束ライナーの伸長部分に衝突するため、本質的には人工股関節の可動域を狭めている。
【0007】
拘束ライナーの利点、すなわち、衝撃、不全脱臼、および脱臼を削減する利点を保持しながら可動域を広げるために開発された解決手段は、例えば、二カ所の切り欠き部を備えるなど、ライナーの伸長部分から材料を取り除くことである。切り欠き部が二つの拘束部を実質的にライナーから伸長させるため、拘束ライナーを有する利点を保持しながら、切り欠き部により大腿骨の構成要素は非固定装置に類似した可動域を動くことができる。しかし、大腿骨の構成要素が切り欠き領域部内で移動する場合のみ、可動域はそのような状態にまで改善される。それゆえに、ライナーの半径方向の配置、すなわち、「クロッキング(clocking)」が重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、人工股関節のための拘束ライナーを提供し、より詳細には、人工股関節用、回転式拘束ライナーを提供する。一実施形態において、回転式拘束ライナーは、患者自身の臼蓋窩の骨の空洞に挿入される寛骨臼人工関節を形成する、寛骨臼シェルに回転可能に結合するようにされている。
【0009】
ある実施形態において本発明は、シェルと、シェル内部に回転可能に受容可能な、垂直縦軸および、半球軸の第1の側に実質的に配置された基部を有する半球軸を形成するライナーと、基部から突出し、半球軸の第2の側に実質的に配置された少なくとも一つの拘束要素であって、各拘束要素は少なくとも一の傾斜面を有する拘束要素と、頸部および、頭部を有する人工器官であって、頭部はライナー内に受容可能で、それゆえに頸部および、少なくとも一つの傾斜面間の接触がシェル内におけるライナーの縦軸周りの回転運動を促進する人工器官と、を有する人工関節組立体を提供する。一実施形態において、シェルは寛骨臼シェルを有し、人工器官は人工大腿骨を有し、頸部は大腿骨頸部を有し、および頭部は大腿骨頭部を有する。一実施形態において、基部はシェルの少なくとも一部分と係合する軸方向の移動抑制要素を有し、それにより軸方向の移動抑制要素は、ライナーが縦軸に沿ってシェルに対して軸方向に相対運動するのを防止する。一実施形態において、軸方向の移動抑制要素は、ライナーの外表面に形成された突起部を有し、突起部は、シェルの内表面に形成された溝部と係合する。一実施形態において、各拘束要素は異なるピッチの複数の傾斜面を有する。一実施形態において、少なくとも一つの拘束要素は、ライナー内で大腿骨頭部を軸方向に拘束するための大腿骨頭部とのスナップ式の係合を形成する。
【0010】
別の実施形態において本発明は、寛骨臼シェルを有し大腿骨頭部および、大腿骨頸部を有する大腿骨の構成要素と、寛骨臼シェル内に回転可能に受容可能で、垂直縦軸および、半球軸の第1の側に実質的に配置される基部を有する半球軸を形成するライナーと、基部から突出し、半球軸の第2の側に実質的に配置される拘束要素であって、各拘束要素は少なくともひとつの傾斜面を有する拘束要素と、を有する人工股関節組立体と共に使用する寛骨臼カップ部を提供する。一実施形態において、基部は寛骨臼シェルの少なくとも一部分と係合する軸方向の移動抑制要素を有し、それにより軸方向の移動抑制要素は、ライナーが縦軸に沿って寛骨臼シェルに対して軸方向に相対運動するのを防止する。一実施形態において、軸方向の移動抑制要素は、ライナーの外表面に形成された突起部を有し、突起部は、寛骨臼シェルの内表面に形成された溝部と係合する。一実施形態において、各拘束要素は異なるピッチの複数の傾斜面を有する。一実施形態において、少なくともひとつの拘束要素は、ライナー内で大腿骨の頭部を軸方向に拘束するための大腿骨頭部とのスナップ式の係合を形成する。
【0011】
更に別の実施形態において本発明は、寛骨臼シェルを有し大腿骨頭部および、大腿骨頸部を有する大腿骨の構成要素と、寛骨臼シェル内に回転可能に受容可能な、垂直縦軸および、半球軸の第1の側に実質的に配置される基部を有する半球軸を形成するライナーと、ライナー内に大腿骨頭部を拘束する手段であって、寛骨臼シェル内の大腿骨頸部と接触するライナーが、縦軸の周りを回転するのを促進する手段を有する拘束手段と、を有する人工股関節組立体と共に使用する寛骨臼カップを提供する。一実施形態において、カップ部は、ライナーと寛骨臼シェル間の縦軸に沿った軸方向の平行移動を防止するための手段を有する。一実施形態において、防止手段はライナーの外表面上に形成された突起部、および寛骨臼シェルの内表面上に形成された溝部を有し、突起部は溝部に係合する。一実施形態において、拘束手段は、基部から突出し、半球軸の第2の側に実質配置される少なくとも一つの拘束要素を有する。一実施形態において、促進手段は少なくとも一つの傾斜面を有する。一実施形態において、促進手段は、異なるピッチの複数の傾斜面を有する。一実施形態において、拘束手段は大腿骨頭部とのスナップ式の係合を形成する。
【0012】
更に別の実施形態において、本発明は、シェルおよび、シェル内に回転可能に受容可能なライナーを有する人工器官を受容する人工関節組立体を提供する。
【0013】
本発明の上述した特徴、他の特徴、目的、およびそれらを達成する手段は、添付の図面と併せて、本発明の以下の実施形態の記載を参照することにより、より明白となり、発明自体がより理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に説明する実施形態は、後述の詳細な説明で開示された正確な構造に本発明を特定、または限定するものではない。むしろ、本実施形態は、他の当業者が理解する際に使用できるように選択、説明されたものである。
【0015】
図1には、カップ部11、および一対の拘束部14を有する回転式拘束ライナー10の一例が示されている。後述のように、ライナー10は、大腿骨頭、および大腿骨頸部を有する大腿骨人工関節を更に有する人工股関節組立体の寛骨臼シェル60(図8A参照のこと)内に受容される。大腿骨人工関節の大腿骨頭部はライナー10の内部に配置される。カップ部11は一般的に、外表面13、および内表面12を有する一部分球状、またはドーム形の本体を有する。内表面12は、大腿骨の構成要素50(図7参照のこと)の大腿骨頭部、または球部52(図7参照のこと)を受容する一部分球形、または半球形の空洞部18を形成する。内表面12は、大腿骨頭部52と関節を成すようにされた滑らかな関節壁、または面を伴う凹形をしている。外表面13は、寛骨臼シェル60(図8Aおよび、図9参照のこと)の内表面61と係合するようにされた面を伴う半球形、またはドーム形である。環状枠15が基部16に沿ってカップ部11の外周を囲んで延びている。基部16は、カップ部11の空洞部18への入り口または、開口部を提供する環状プラットフォーム、またはリング状の面17を伴う遠位端部を有する。二つの伸長部、または拘束部14が面17から外向きに延びている。部分14は互いに向かい合って配置されるのが望ましい。拘束部14は、それぞれカップ部11から延びる部分14の端部に位置するA、B、Cおよび、D域を有する。
【0016】
図1および、図7で示されるように、拘束部14はそれぞれ内壁21および、外壁22を有する。21、および22の両壁は、カップ部11の周囲の周りに延びて、すなわち、環状枠15の一部分の周りに延びている。内壁21は、球状の輪郭を有する滑らかな面を有し、中心縦軸20方向に弓形になっている。同様に、外壁22は、滑らかな面を有し、中心縦軸20方向に弓形になっている。
【0017】
図1および、図2を参照すると、各拘束部14の外壁22はB域から、A域および、C域を通り、D域まで延びている。B域および、D域は、通常、各拘束部14の両側の面のE域に向かって傾斜しており、通常E域からA域、およびC域それぞれに至るまでの幅は徐々に細くなっている。A域および、C域は、通常、B域および、D域それぞれに向かって傾斜しており、B域および、D域それぞれから頂部23へ向かってわずかに幅が徐々に細くなっている。ある実施形態において、これらの域の傾斜は、緩やかで一定であり、互いに左右対称であり、すなわちB域、およびD域は同一の傾斜を有し、A域、およびC域は同一の傾斜を有する。ある実施形態では、B域、およびD域は、A域、およびC域よりも急な傾斜、またはこう配を有する。別の実施形態においては、A域、およびC域は、B域、およびD域よりも急な傾斜、またはこう配を有する。A域、B域、C域および、D域は、後述のようにライナー10が中心縦軸20の周りを回転するのを効果的に促すように角度のついた、または傾斜した面を有する。E域は実質的には平らで、拘束部14の間の環状枠15の外周の回りに配置されている。大腿骨頸部51(図7参照のこと)がE域内に配置される際には、大腿骨頸部51は拘束部14に衝突しない。
【0018】
典型的な実施形態において、拘束部14は互いに向かい合っており、相似形であり、同じ大きさである。あるいは、拘束部品14は、例えば、一方の拘束部14がもう一方よりも大きいなど、異なる大きさで形成されてもよい。あるいは、更に別の実施形態において、拘束部14は、例えば、一方の拘束部14は図1で示すような一般的な形で、もう一方の拘束部14は長方形、または、三角形などの一般的な形をしているなど、形が類似していなくてもよい。
【0019】
図1および、図2で示されているように、拘束部14は面17の全周囲に延びてはいない。それどころか、2箇所の隙間、または切り欠き19が拘束部14の間に形成されている。切り欠き19は、中心横軸25を挟んで互いに向かい合っている。
【0020】
図7を参照すると、カップ部11は球状である。半球軸30はカップ部11の半球線に近接する。カップ部11の基部16は通常、半球軸30の第1の側に配置される。拘束部14はカップ部11から突出し、大腿骨の構成要素50の大腿骨頭部52を拘束して保持するために半球軸30の第2の側に配置される。拘束部14の内壁21は、面17(図1参照のこと)より下で、半球軸30より下の連続した球状の伸長部を有する一部分球状の面を形成する。
【0021】
空洞部18に大腿骨頭部52を挿入する際に、大腿骨頭部52の外表面53がカップ部11の内表面12と滑らかに関節結合を成すように、拘束部14は、それらの間に大腿骨頭部52の直径が通過できる通路を提供するように中心縦軸20から半径方向外側に曲がる。大腿骨頭部52がいったん空洞部18内に配置されると、拘束部14は弾性的に曲がり元の位置に戻り、空洞部18内に大腿骨頭部52を拘束する。このようにして、大腿骨頭部52は、カップ部11の空洞部18内にしっかりと拘束して保持される。
【0022】
カップ部11の空洞部18から大腿骨頭部52を取り外す際に、拘束部14は、中心縦軸20から半径方向外側に曲がり、それらの間を大腿骨頭部52の直径が通過できる通路を提供する。大腿骨頭部52がいったん取り外されると、拘束部14は弾性的に曲がり元の位置に戻る。
【0023】
ライナー10は、例えば、高度に架橋された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、チタニウム、クロム・コバルト合金、またはステンレススチールなど異なる生体適合性素材で作ることができる。典型的な一実施形態において、上述の方法で空洞部18内に大腿骨頸部52をスナップ式に拘束するために、ライナー10は拘束部14に弾性的な柔軟性を与える材料から作られている。ライナー10は、ライナー10が中心縦軸20の周りを寛骨臼シェル60と相対的に回転することを可能とするシェル/ライナーインターフェイス部40をも有する。
【0024】
図8Aおよび、図8Bで示されているように、後述のようにライナー10は軸方向の移動抑制要素を有する。ある実施形態において、軸方向の移動抑制要素は、カップ部11の周囲に延びる突起部43である。図8A、図8Bおよび、図9で表されているように、寛骨臼シェル60は、内表面61、外表面62、空洞部63および、円周端部64を有する。溝部42は、内表面61内、寛骨臼シェル60の円周端部64の近くに配置される。図8Bで最もよく表されているように、ある実施形態において、突起部43は、後述のように、寛骨臼シェル60内にライナー10を挿入する際に機能する傾斜面44を有する。
【0025】
寛骨臼シェル60にライナー10を挿入するために、端部64がライナー10からわずかに離れるように、円周端部64を半径方向外側にわずかに変形させるのに充分な力で、ライナー10は寛骨臼シェル60の空洞部63に押し込まれる。突起部43が寛骨臼シェル60の溝部42とかみ合うまでライナー10は空洞部63に押し込まれる。ある典型的な実施形態において、突起部43が溝部42に係合すると、寛骨臼シェル60の内表面61は、ライナー10のカップ部11の外表面13と接する。ある実施形態において、突起部43は、寛骨臼シェル60の空洞部63にライナー10の挿入の初期段階を容易にする傾斜面44を有する。傾斜面44は、突起部43の空洞部63への徐々の導入をもたらし、円周端部64が半径方向外側へ広がる変形プロセスを容易にする。その他の実施形態において、突起部43は、ライナー10を寛骨臼シェル60の空洞部63へ挿入するのを容易にするようないかなる形状でもよい。突起部43が溝部42に係合することで、ライナー10が中心縦軸20に対して寛骨臼シェル60内を回転することを可能にし、同時に中心縦軸20に沿って寛骨臼シェル60とライナー10の間の相対的な軸方向の平行移動を防止することができる。
【0026】
ライナー10と寛骨臼シェル60間における起こりうる磨耗を削減するために、架橋されたポリエチレンベアリングが溝部42に挿入されてもよい、または、金属同士のインターフェイス(metal on metal interface)が使用されてもよい。あるいは、軸方向の移動抑制要素は固定リングであって、溝部42が円周端部64まで続いて、ライナー、および寛骨臼シェルの両方を軸方向に固定し、架橋されたポリエチレン、または金属で形成されたベアリング面を提供するため固定リングが溝部42に挿入された後にライナー10が寛骨臼シェル60に挿入されてもよい。軸方向の移動抑制要素の別の代わりの実施形態において、シェル/ライナーインターフェイス部40は、その開示を参照することにより本願明細書に組み込まれる米国特許第5,383,938号公報に詳細に記述されている、ライナー、および寛骨臼シェルを軸方向に固定するCリング構造を採用してもよい。
【0027】
別の代わりの実施形態において、シェル/ライナーインターフェイス部40は、寛骨臼シェルが一連の半径方向内側へ向いた突起部を有し、ライナーが協働する一連の半径方向外側へ向いた突起部を有する差込ロック構造(非表示)を有してもよい。シェルの突起部はその間に、寛骨臼シェルへライナーを挿入するのに対応する切り込み部を有する。ライナーが寛骨臼シェルの空洞部の内部にいったん挿入されたら、ライナーを回転させる。そのような回転により、ライナーは中心縦軸20に沿って軸方向にずれないように固定される。典型的な実施形態において、寛骨臼シェル、およびライナーの突起部は、ライナーの突起部が寛骨臼シェルの切り込み部と一致し、ライナーおよび、寛骨臼シェル間の中心縦軸20に沿った軸方向の平行移動を生じさせる可能性を最小限にするように選択されるべきである。
【0028】
インターフェイス部40は、ライナー10、および寛骨臼シェル60が中心縦軸20に沿って軸方向に平行移動するのを防止するが、それと同時に、ライナー10、および寛骨臼シェル60が中心縦軸20の周りを回転、平行移動するのを可能とするいかなる構造で構成されてもよい。
【0029】
作動中は、図3で示されるように、大腿骨頸部51がB域に作用した場合、すなわち大腿骨頸部51が略矢印Gまたは、Hの方向へ動いた場合、寛骨臼シェル60に対するライナー10の中心縦軸20周りの回転は、略矢印AAの方向となり、大腿骨頸部51をE域で静止させる。ライナー10の回転は、B域に形成された傾斜面によって引き起こされる。大腿骨頸部51がB域内の拘束部14に衝突すると、大腿骨頸部51が拘束部14に衝突しないE域で大腿骨頸部51が静止するために、傾斜面は、ライナー10を寛骨臼シェル60内で時計回り(ライナー10の下部に向かって時計回り)に回転させ、拘束部14は、大腿骨頸部51から離される。
【0030】
同様に、図4で表されるように、大腿骨頸部51がA域に衝突した場合、すなわち、大腿骨頸部51が略矢印Iの方向へ動いた場合、寛骨臼シェル60に対するライナー10の中心縦軸20周りの回転は、略矢印AAの方向となり、大腿骨頸部51をE域で静止させる。ライナー10の回転は、A域に形成された傾斜面によって引き起こされる。大腿骨頸部51がA域内の拘束部14に衝突すると、大腿骨頸部51がB域に衝突するために、傾斜面は、ライナー10を寛骨臼シェル60内で時計回りに回転させ、拘束部14は、大腿骨頸部51から離される。大腿骨頸部51がいったんB域に衝突すると、図3に関する上述したような働きにより、大腿骨頸部51は、大腿骨頸部51が拘束部14に衝突しないE域で静止する。あるいは、A域の傾斜面は、B域における中間的な衝突なしに大腿骨頸部51がE域で静止するまでライナー10を回転させるのに十分でもよい。
【0031】
図5で示されるように、大腿骨頸部51がD域に作用した場合、すなわち、大腿骨頸部51が略矢印Jまたは、Kの方向へ動いた場合、寛骨臼シェル60に対するライナー10の中心縦軸20周りの回転は、略矢印BBの方向となり、大腿骨頸部51をE域で静止させる。ライナー10の回転は、D域に形成された傾斜面によって引き起こされる。大腿骨頸部51がD域内の拘束部14に衝突すると、大腿骨頸部51が拘束部14に衝突しないE域で大腿骨頸部51が静止するために、傾斜面は、ライナー10を寛骨臼シェル60内で反時計回りに回転させ、拘束部14は、大腿骨頸部51から離される。
【0032】
同様に、図6で示されるように、大腿骨頸部51がC域に作用した場合、すなわち、大腿骨頸部51が略矢印L方向へ動いた場合、寛骨臼シェル60に対するライナー10の中心縦軸20周りの回転は、略矢印BBの方向となり、大腿骨頸部51をE域で静止させる。ライナー10の回転は、C域に形成された傾斜面によって引き起こされる。大腿骨頸部51がC域内の拘束部14に衝突すると、大腿骨頸部51がD域に衝突するために、傾斜面は、ライナー10を寛骨臼シェル60内で反時計回りに回転させ、拘束部14は、大腿骨頸部51から離される。大腿骨頸部51がいったんD域に衝突すると、図5に関する上述したような働きにより、大腿骨頸部51は、大腿骨頸部51が拘束部14に衝突しないE域で静止する。あるいは、C域の傾斜面は、D域における中間的な衝突なしに大腿骨頸部51がE域で静止するまでライナー10を回転させるのに十分でもよい。
【0033】
上述のようなA域および、C域における衝突は、一般にシェル60と大腿骨の構成要素50間の極端な配置を必要とする。例えば、A域および、C域への衝突は、人が脚を組む時または、座わっている状態から立ち上がったときに生じる。また、A域、およびC域への作用は、人が横たわり、上になった方の脚を4の字に曲げている寝転んだ姿勢、すなわち、人が左側面を下にして横たわっている場合は、右脚を4の字に曲げて、このように、股関節を曲げて内側に回転させている状態のときの時にもまた発生する。極端な配置は、拘束部14、及び大腿骨の構成要素50それぞれの開始位置によって決まる。
【0034】
別の実施形態において、A域、およびB域は単一の傾斜面でもよく、C域、およびD域は、上述のように大腿骨頸部51の衝突による同様の運動を促進する単一の傾斜面でもよい。
【0035】
人工股関節組立体に関して上述したが、本発明は人工肩関節組立体においても同様の方法で使用可能である。
【0036】
典型的な設計を有する本発明を説明したが、本発明は開示の精神と範囲内で更に修正されることができる。ゆえに本出願は、一般的原理を用いた本発明のいかなる変更、用途または、改変を含むものである。更に本出願は、本発明が関連する従来の既知の方法または慣行を伴うような本発明の開示からの逸脱を含むものである。
【0037】
対応する参照記号は、各種図面の対応する部分を示す。図面は本発明の実施形態を示すが、図面は必ずしも一定の縮尺比ではなく、ある特徴は、本発明を詳細に示し説明するために誇張されている。ここに提示された例示は本発明の実施形態を示すものであり、そのような例示は本発明の範囲をいかなる方法でも限定するものと解釈するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の典型的な回転式拘束ライナーの斜視図である。
【図2】図1に示すライナーの底面図である。
【図3】図1に示すライナーの側面図および、寛骨臼シェルの一部が大腿骨頸部によってライナーの拘束部のB域に衝突しているのを更に示す。
【図4】図1に示すライナーの側面図および、寛骨臼シェルの一部が大腿骨頸部によってライナーの拘束部のA域に衝突しているのを更に示す。
【図5】図1に示すライナーの側面図および、寛骨臼シェルの一部が大腿骨頸部によってライナーの拘束部のD域に衝突しているのを更に示す。
【図6】図1に示すライナーの側面図および、寛骨臼シェルの一部が大腿骨頸部によってライナーの拘束部のC域に衝突しているのを更に示す。
【図7】ライナーの拘束部によりライナーに固定された大腿骨頸部を更に示す、図1に示すライナーの線7−7に沿った断面図である。
【図8】寛骨臼シェルと係合するライナーを更に示す別のライナーの断面図である。
【図8B】図8Aに示すライナーとシェルの一部分の拡大断面図である。
【図9】図8Aに示す寛骨臼シェルの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工器官(50)を受容するための人工関節組立体であって、前記関節組立体は、シェル(60)と、前記シェル内に配置されたライナー(10)と、を有し、
前記ライナーは、前記シェル内で回転可能であるが、同時に該シェル内で軸方向に拘束されることを特徴とする、人工関節組立体。
【請求項2】
前記ライナーが垂直縦軸(20)と半球軸(30)と、を形成することを特徴とする、請求項1に記載の人工関節組立体。
【請求項3】
前記ライナーが、前記半球軸の第1の側に実質的に配置される基部(11)と、前記基部より突出し、前記半球軸の第2の側に実質的に配置される少なくとも一つの拘束要素(14)と、を有することを特徴とする、請求項2に記載の人工関節組立体。
【請求項4】
前記拘束要素の各々が少なくとも一つの傾斜面を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工関節組立体。
【請求項5】
前記人工器官が、頸部(51)と、頭部(52)とを有し、
前記頭部は前記ライナー内に受容可能で、それにより前記頸部と前記少なくとも一つの傾斜面間との接触が、前記シェル内で前記縦軸周りの前記ライナーの回転運動を促進することを特徴とする、請求項4に記載の人工関節組立体。
【請求項6】
前記シェルが寛骨臼シェルを有し、前記人工器官が人工大腿骨を有し、前記頸部が大腿骨頸部を有し、前記頭部が大腿骨頭部を有することを特徴とする、請求項5に記載の人工関節組立体。
【請求項7】
前記少なくとも一つの拘束要素が、前記頭部を前記ライナー内で軸方向に拘束するように前記頭部とのスナップ式の係合を形成することを特徴とする、請求項5に記載の人工関節組立体。
【請求項8】
前記基部が、前記シェルの少なくとも一部分(42)と係合する軸方向の移動抑制要素(43)を有し、それにより前記軸方向の移動抑制要素が、前記縦軸に沿って前記シェルに対する前記ライナーの軸方向の相対移動を防止することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の人工関節組立体。
【請求項9】
前記軸方向の移動抑制要素が、前記ライナーの外面上に形成される突起部(43)を有し、前記突起部が前記シェルの内面上に形成される溝部(42)と係合することを特徴とする、請求項8に記載の人工関節組立体。
【請求項10】
前記拘束要素の各々が複数の異なるピッチの傾斜面を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の人工関節組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−514614(P2009−514614A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539161(P2008−539161)
【出願日】平成18年11月3日(2006.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/060504
【国際公開番号】WO2007/056678
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508041208)ジンマー テクノロジー,インコーポレイティド (10)
【Fターム(参考)】