回転式測定セル

【課題】セル長を切り換えて変更することができ、試料水の性状に応じて正確な測定を行うことが可能な回転式測定セルを提供する。
【解決手段】周壁の一部に開口19が形成された筒体12の両端開口部がそれぞれ閉塞板14、16により閉塞され、両閉塞板の外面中央にそれぞれ回転軸18が固定されたセル本体10を具備する回転式測定セルにおいて、セル本体の上記回転軸の中心軸から等距離を隔てた複数箇所に、セル長が互いに異なる複数の光路38、40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セル本体内に導入した試料水に光を照射してその透過光を検出する水質分析計の測定セルに関し、さらに詳述すると、測定セル全体を回転させることにより、セル本体からの試料水の排水、セル本体内での試料水の撹拌を行う回転式測定セルに関する。本発明の回転式測定セルは、例えば、6価クロムモニタなどの水質分析計に使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、水質分析計である6価クロムモニタ(例えば、非特許文献1参照)の測定セルとして、測定セル全体を回転させることにより、セル本体からの試料水の排水、セル本体内での試料水の撹拌を行う回転式測定セルが使用されている(例えば、特許文献1参照)。このような回転式測定セルの1つとして、図3に示すものがある。本例は、前述した6価クロムモニタの回転式測定セルを示している。
【0003】
図3の回転式測定セルにおいて、100はセル本体を示す。このセル本体100は、円形の筒体102の両端開口部をそれぞれ光透過性材料からなる円形の閉塞板104で閉塞するとともに、両閉塞板104の外面中央にそれぞれ光透過性材料からなる円柱形の回転軸106を固定したものである。また、筒体102の周壁の一部には開口110が形成されているとともに、筒体102の内面の上記開口110に対向する箇所には平板状の撹拌板112が固定されている。上記セル本体100は、回転軸106にギヤを介して接続されたステッピングモータ(図示せず)によって適宜回転角度で回転するようになっている。
【0004】
図中114は入射側の回転軸106の外側方に配置された発光素子(LED)、116は出射側の回転軸106の外側方に配置された透過光受光素子(Photo Detector)、118は入射側の閉塞板104の外側方において発光素子114の近傍に配置された参照光受光素子(PhotoDetector)を示す。
【0005】
本例の6価クロムモニタは、下記(1)〜(6)の手順で測定を行う。本例の6価クロムモニタは、JIS K0102「工場排水試験法」に基づいたジフェニルカルバジド試薬による比色定量法を用いて試料水中の6価クロム濃度を測定するものである。
(1)開口110を真上に向けた状態で、開口110からセル本体100内に試料水を注入する。過剰の試料水は開口110からオーバーフローさせる。
(2)セル本体100を所定角度回転させて傾斜させ、試料水の一部を開口110から排出することにより、セル本体100内に所定量の試料水を採取する。その後、セル本体100を回転させて開口110を真上に向けた状態に戻す。
(3)開口110からセル本体100内の試料水に試薬(硫酸およびジフェニルカルバジド溶液)を添加する。
(4)セル本体100を正逆に回転させ、セル本体100に振り子運動を行わせることにより、試料水を撹拌する。なお、上記振り子運動は、セル本体100から試料水がこぼれない回転角度で行う。
(5)発光素子114からセル本体100内の試料水に光を照射し、その透過光を透過光受光素子116で検出する。この場合、発光素子114から照射された光は、入射側の回転軸106、試料水および出射側の回転軸106を順次通って透過光受光素子116に到達する。また、発光素子114からの直接光を参照光受光素子118で検出する。そして、透過光受光素子116および参照光受光素子118の信号に基づいて、ランバート・ベールの法則により試料水中の6価クロム濃度を演算し、表示する。
(6)測定終了後、セル本体100を回転させて開口110を真下に向けることにより、開口110からセル本体100内の試料水を排出する。なお、上記試料水の排出操作は、次の測定の直前に行ってもよい。
【0006】
上述した回転式測定セルは、電磁弁、撹拌用スターラが不要となり、セル構造が簡単になると同時に、電磁弁等のつまりによるトラブルを解消できるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平7−55491号公報
【0008】
【非特許文献1】東亜ディーケーケー株式会社の「6価クロムモニタ CRM−2C型」のカタログ(http://www.toadkk.co.jp/product/env/wq/crm.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示した回転式測定セルでは、両閉塞板の間の距離がセル長(光路長)に相当する。
【0010】
一方、水質分析計では、試料水中の測定対象物質の濃度が高濃度である場合はセル長が短く、低濃度である場合はセル長が長いことが、正確な測定を行うために好ましい。
【0011】
しかし、図3に示した回転式測定セルは、測定セルの回転軸内を光路とするため、セル長が単一であり、測定対象物質の濃度が広範囲である場合には、全ての試料水に対応することが難しい。例えば、前述した6価クロムモニタでは、6価クロム濃度1mg/L程度が測定の上限である。したがって、測定範囲を広げるためには、試料水中の測定対象物質濃度が高濃度であるときに試料水の希釈を行う機構を付加しなくてはならなかった。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、セル長を切り換えて変更することができ、試料水の性状に応じて正確な測定を行うことが可能な回転式測定セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、周壁の一部に開口が形成された筒体の両端開口部がそれぞれ閉塞板により閉塞され、前記両閉塞板の外面中央にそれぞれ回転軸が固定されたセル本体を具備し、前記回転軸を中心として前記セル本体が所定の回転角度で回転するとともに、一方の閉塞板の外側方からセル本体内の試料水に光を照射し、他方の閉塞板の外側方で試料水を透過した光を検出する回転式測定セルであって、前記セル本体の前記回転軸の中心軸から等距離を隔てた複数箇所に、セル長が互いに異なる複数の光路を設けたことを特徴とする回転式測定セルを提供する。
【0014】
本発明の回転式測定セルは、セル本体の回転軸の中心軸から等距離を隔てた複数箇所に、セル長が互いに異なる複数の光路を設けたので、1つの発光素子と1つの透過光受光素子をセル本体の両外側方に設置し、セル本体を所定角度回転させることにより、各光路を発光素子と透過光受光素子との間に配置することができ、したがってセル本体の回転によりセル長を切り換えて変更することが可能となる。
【0015】
本発明では、前述した複数の光路として、両閉塞板の間の距離をセル長とする第1光路と、両閉塞板の間の距離より短い距離をセル長とする第2光路とを設けることができる。これにより、第1光路を試料水中の測定対象物質濃度が低濃度であるときに使用し、第2光路を試料水中の測定対象物質濃度が高濃度であるときに使用することができ、したがって試料水の希釈を行う機構を付加することなく、高濃度の試料水を測定することが可能となる。
【0016】
また、本発明では、上記第1および第2光路に加え、セル長がゼロである第3光路をさらに設けることができる。これにより、第3光路を参照光検出用の光路とすることができ、したがって図3に示した発光素子近傍の参照光受光素子を省略して、コストの削減を図ることができる。
【0017】
この場合、第2光路のセル長は、第1光路のセル長の1/2〜1/20とすることができる。これにより、試料水の希釈を行う機構を付加することなく、2〜20倍の濃度まで測定範囲を拡大することができる。これは、2〜20倍の希釈機構を付加するのと等しい上、希釈による精度悪化がない。
【0018】
本発明において、上記第1光路は、両閉塞板を光透過性材料で形成することにより設けることができる。上記第2光路は、柱状の光透過性固体部材の一端を一方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定することにより設けることができる。上記第3光路は、柱状の光透過性固体部材の一端を一方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定し、他端を他方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定することにより設けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転式測定セルは、セル長を切り換えて変更することができるため、試料水の性状に応じて正確な測定を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る回転式測定セルの第1実施形態を示すもので、(a)は模式的概略斜視図、(b)は模式的概略側面図、(c)は模式的概略底面図である。
【図2】本発明に係る回転式測定セルの第2実施形態を示すもので、(a)は模式的概略斜視図、(b)は模式的概略側面図、(c)は模式的概略底面図である。
【図3】従来の回転式測定セルの一例を示すもので、(a)は模式的概略斜視図、(b)は模式的概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る回転式測定セルの第1実施形態を示すもので、(a)は模式的概略斜視図、(b)は模式的概略側面図、(c)は模式的概略底面図である。本例は、前述した6価クロムモニタの回転式測定セルを示している。
【0023】
図1の回転式測定セルにおいて、10はセル本体を示す。このセル本体10は、円形の筒体12の両端開口部をそれぞれ円形の光透過性材料からなる閉塞板14、16で閉塞するとともに、両閉塞板14、16の外面中央にそれぞれ円柱形の回転軸18、18を固定したものである。筒体12の材質は塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等であり、閉塞板14、16の材質は透明アクリル樹脂等である。回転軸18は、光透過性材料からなる必要はない。また、筒体12の周壁の一部には開口19が形成されている。なお、本例では、図3に示した撹拌板は設けられていない。上記セル本体10は、回転軸18にギヤを介して接続されたステッピングモータ(図示せず)によって適宜回転角度で回転するようになっている。
【0024】
本例では、両閉塞板14、16の所定箇所24、26間に、上記所定箇所24、26間の距離をセル長とする第1光路38を設けてある。なお、図1では、第1光路38の設定箇所を円で示しているが、両閉塞板14、16は全体が光透過性材料からなるため、実際には、第1光路38の設定箇所はどこでもよい。
【0025】
また、本例では、出射側の閉塞板16の、回転軸18の中心軸から上記第1光路38の設定箇所24、26と等距離隔てた箇所に、円形の透孔30が形成されている。そして、上記透孔30に、円柱状の測定光用光透過性固体部材34の一端が挿入・固定されている。測定光用光透過性固体部材34の材質は透明アクリル樹脂等である。図1では、入射側の閉塞板14の光が入射する位置に、符号32を付してある。なお、測定光用光透過性固体部材34は、入射側の閉塞板14に固定してもよい。
【0026】
本例の回転式測定セルは、上述した構成により、セル本体10に、入射側の閉塞板14、試料水36および出射側の閉塞板16を順次通るセル長が長い第1光路38(セル長=L)と、入射側の閉塞板14、試料水36および測定光用光透過性固体部材34を順次通るセル長が短い第2光路40(セル長=L/10)とが形成されている。
【0027】
図中42は入射側の閉塞板14の外側方に配置された発光素子(LED)、44は出射側の閉塞板16の外側方に配置された透過光受光素子(Photo Detector)を示す。また、図示していないが、図3と同様に、入射側の閉塞板14の外側方において発光素子42の近傍に参照光受光素子(PhotoDetector)が配置されている。
【0028】
本例の6価クロムモニタは、光路が異なること以外は、前述した(1)〜(6)と同様の手順で測定を行うものである。この場合、本例では、試料水中の6価クロム濃度が低濃度である場合はセル長が長い第1光路38に光を照射し、高濃度である場合はセル長が短い第2光路40に光を照射する。上記光路の選択は、セル本体10をステッピングモータの作動で所定角度回転させることにより行う。
【0029】
本例の回転式測定セルは、下記(a)〜(c)の利点を有する。
(a)本例では、セル本体を所定角度回転させることにより、セル長を切り換えて変更することができるため、試料水の性状に応じて正確な測定を行うことが可能である。具体的には、試料水の希釈を行う機構を付加することなく、10倍の6価クロム濃度まで測定範囲を拡大することができる。これは、10倍の希釈機構を付加するのと等しい上、希釈による精度悪化がない。
(b)本例では、ステッピングモータでセル本体を回転させるものであるが、図3に示した従来の回転セルもステッピングモータを用いた回転機構を有するため、新たな回転機構を付加することなく、光路の切り換えが可能である。
(c)セル本体を正逆に回転させ、セル本体に振り子運動を行わせたときに、測定光用光透過性固体部材が試料水の撹拌部材として機能するため、図3に示した撹拌板を省略することができ、コストの削減を図ることができる。
【0030】
[第2実施形態]
図2は、本発明に係る回転式測定セルの第2実施形態を示すもので、(a)は模式的概略斜視図、(b)は模式的概略側面図、(c)は模式的概略底面図である。本例は、前述した6価クロムモニタの回転式測定セルを示している。
【0031】
本例の回転式測定セルは、第1実施形態において、両閉塞板14、16の回転軸18の中心軸から透孔30と等距離隔てた箇所に、互いに対向する円形の透孔46、48をさらに形成し、入射側の閉塞板14の透孔46に、円柱状の参照光用光透過性固体部材50の一端を挿入・固定し、出射側の閉塞板16の透孔48に、上記参照光用光透過性固体部材50の他端を挿入・固定したものである。なお、透孔30、46、48の中心は、回転軸18の中心軸を中心とする円上に存在している。
【0032】
本例では、セル本体10の回転により、上記参照光用光透過性固体部材50内を参照光を検出するための第3光路52とすることができる。したがって、本例では、図3における発光素子近傍の参照光受光素子は設置されていない。
【0033】
本例の回転式測定セルは、上述した点以外は、第1実施形態の回転式測定セルと同じであるため、図2において、図1と同一構成の部分には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本例の6価クロムモニタは、光路が異なること以外は、前述した(1)〜(6)と同様の手順で測定を行うものであるが、本例における参照光の検出は、セル本体10の回転により光路を参照光用光透過性固体部材50内を通る第3光路52に切り換えることにより行う。
【0035】
本例の回転式測定セルは、第1実施形態の利点に加え、下記(d)の利点を有する。なお、本例では、参照光用光透過性固体部材も試料水の撹拌部材として機能する。
(d)参照光用光透過性固体部材内を光路とすることにより、透過光受光素子によって参照光を検出できるため、単独の参照光受光素子を省略して、コストの削減を図ることができる。
【0036】
なお、本発明の回転式測定セルは、上記例に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、例えば光路を4つ以上設けてもよく、光路に光学フィルタを配置することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10 セル本体
12 筒体
14、16 閉塞板
18 回転軸
19 開口
34 測定光用光透過性固体部材
36 試料水
38 第1光路
40 第2光路
42 発光素子
44 透過光受光素子
50 参照光用光透過性固体部材
52 第3光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁の一部に開口が形成された筒体の両端開口部がそれぞれ閉塞板により閉塞され、前記両閉塞板の外面中央にそれぞれ回転軸が固定されたセル本体を具備し、前記回転軸を中心として前記セル本体が所定の回転角度で回転するとともに、一方の閉塞板の外側方からセル本体内の試料水に光を照射し、他方の閉塞板の外側方で試料水を透過した光を検出する回転式測定セルであって、前記セル本体の前記回転軸の中心軸から等距離を隔てた複数箇所に、セル長が互いに異なる複数の光路を設けたことを特徴とする回転式測定セル。
【請求項2】
前記複数の光路として、両閉塞板の間の距離をセル長とする第1光路と、両閉塞板の間の距離より短い距離をセル長とする第2光路とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の回転式測定セル。
【請求項3】
セル長がゼロである第3光路をさらに設けたことを特徴とする請求項2に記載の回転式測定セル。
【請求項4】
前記第2光路のセル長は、前記第1光路のセル長の1/2〜1/20であることを特徴とする請求項2または3に記載の回転式測定セル。
【請求項5】
前記第1光路は、前記両閉塞板を光透過性材料で形成することにより設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の回転式測定セル。
【請求項6】
前記第2光路は、柱状の光透過性固体部材の一端を一方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定することにより設けたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の回転式測定セル。
【請求項7】
前記第3光路は、柱状の光透過性固体部材の一端を一方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定し、他端を他方の閉塞板に形成した透孔に挿入・固定することにより設けたことを特徴とする請求項3〜6に記載の回転式測定セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−104715(P2013−104715A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247292(P2011−247292)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】