説明

回転式膝蓋骨ドリルガイド

【課題】膝蓋骨ドリルガイドを提供する。
【解決手段】膝蓋骨ドリルガイドは、骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられた基部を有する。外形形成された関節面を有するトライアル部分が基部の上に配される。基部及びトライアル部分は整列したドリルガイド穴を有する。基部及びトライアル部分を骨グリップ要素上で一緒に回転させることにより膝蓋骨表面に対するドリルガイド穴の位置を最適化することが可能であり、これにより、膝蓋骨上の膝蓋骨インプラントコンポーネントの取り付けペグの位置を最適化することで膝蓋骨インプラントコンポーネントの向きを最適化することができる。基部及び骨グリップ要素は一体としてもよく、これによりアセンブリ全体が、骨グリップ要素の長手方向の中心軸を中心として膝蓋骨上で回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、発明の名称が「Rotatable Patella Drill Guide」(回転式膝蓋骨ドリルガイド)である2011年9月28日出願の米国仮特許出願第61/540040号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全容を本明細書に援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は一般的には成形外科用器具に関し、より詳細には膝蓋骨ドリルガイドに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の一生の間において、例えば疾患又は外傷の結果として患者に関節置換術を行う必要が生じうる。関節置換術ではプロテーゼが使用される場合があり、これを患者の骨の一つ以上に移植する。膝蓋骨置換術の場合では、成形外科用プロテーゼが患者の膝蓋骨内に移植される。具体的には、人工膝蓋骨インプラントコンポーネントを、その後面が膝の伸展及び屈曲の際に大腿骨コンポーネントと関節するように患者の天然膝蓋骨に固定する。
【0004】
天然膝蓋骨の関節面の人工膝蓋骨による置換を容易にするため、整形外科医は、例えば、ノコギリ、ドリル、ミル、又はリーマーなどの各種の整形外科用器具を使用して膝蓋骨の後面を切除してから、人工膝蓋骨を固定するために切除面を整える。
【0005】
一般的な人工膝蓋骨の固定要素としては、膝蓋骨にドリル又はリーマーにより穿孔された相補的な凹部又は穴に受容されるように骨側(前)面から延出した1以上のペグがある。
【0006】
米国特許第5,593,450号におけるように一部の人工膝蓋骨インプラントでは、関節面はドーム状である。他の方式の人工膝蓋骨インプラントでは、関節面は人工大腿骨インプラントコンポーネントの膝蓋骨溝内に受容されて膝蓋骨溝を辿るように非対称な形状を有する。このような非対称形状の人工膝蓋骨の一例が米国特許第6,074,425号に開示されている。このような非対称的な膝蓋骨インプラントでは、インプラントの回転方向の整列が、膝蓋骨インプラントによる大腿骨インプラントの滑車溝のトラッキングに影響する。このような非対称的な膝蓋骨インプラントは一般的に、膝蓋骨表面にドリルにより穿孔された相補的な穴に受容されるように後面から延出した複数のペグを有している。しかしながら、外科医は通常、トライアル膝蓋骨及び大腿骨コンポーネントを合わせてみるまでは膝蓋骨のトラッキングを完全に評価することはできず、トライアルを合わせるには、切除された膝蓋骨上にトライアルを置く前に相補的な穴をドリルにより穿孔することが一般的に求められる。膝蓋骨トライアルが適正にトラッキングしていないと外科医が判断した場合でも、切除された膝蓋骨表面には既に取り付け穴がドリル穿孔されているために調節を行う余地はほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、膝蓋骨の切除された表面に取り付け穴をドリル穿孔する前に外科医が膝蓋骨トラッキングを評価することを可能とする膝蓋骨ドリルガイドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態において、本発明は、人工膝蓋骨インプラントコンポーネントを受容するために切除された膝蓋骨表面を整えるうえで使用するためのこのような膝蓋骨ドリルガイドを提供する。膝蓋骨ドリルガイドは、骨グリップ要素、基部、及び膝蓋骨トライアル部分を備える。前記骨グリップ要素は、切除された膝蓋骨表面の一部を把持するためのものである。前記基部は平坦な膝蓋骨対向面を有し、骨グリップ要素の一部が前記基部の平坦な膝蓋骨対向面から外側に向けて延びる。前記膝蓋骨トライアル部分は、前記基部の平坦な膝蓋骨対向面の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面を有する。前記基部は、該基部を貫通して前記基部の平坦な膝蓋骨対向面にまで延びる複数のドリルガイド穴を有する。
【0009】
特定の実施形態では、前記基部は、前記骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられる。このような実施形態では、前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられるのにしたがって、前記切除された膝蓋骨表面に対する前記ドリルガイド穴の位置が変化する。
【0010】
膝蓋骨に穴をドリル穿孔するのに先立って、このような膝蓋骨ドリルガイドを膝蓋骨の切除された後面上に一時的に取り付けて、膝蓋骨トライアル部分のサイズを評価し、その向きを設定するために使用することができる。外科医は、膝蓋骨トライアル部分の向きに納得した時点で、膝蓋骨ドリルガイドを使用して、膝蓋骨インプラントコンポーネントを受容し、これを適切に方向付けるための適切に方向付け及び配置された穴をドリル穿孔することができる。
【0011】
より詳細な実施形態では、前記骨グリップ要素は、台座部、及び台座部から外側に向けて延びる複数のスパイクを有する。この実施形態では、前記基部は前記台座部上に回転可能に取り付けられる。
【0012】
別のより詳細な実施形態では、膝蓋骨トライアル部分は、前記基部の前記ドリルガイド穴と整列した複数の穴を有する。前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられる際に、前記ドリルガイド穴と前記膝蓋骨トライアル部分の穴との整列は変化しない。整列した穴を膝蓋骨トライアル部分に有するこのような装置では、それぞれの穴の前記膝蓋骨トライアル部分を貫通する部分が、こうした穴の、前記基部を貫通する整列した部分よりも大きな直径を有してもよい。
【0013】
別のより詳細な実施形態では、前記基部と前記膝蓋骨トライアル部分とは一体である。
【0014】
別のより詳細な実施形態では、前記基部及び前記膝蓋骨トライアル部分は、連結されてアセンブリを形成する独立した要素を含む。この実施形態では、前記基部は、前記平坦な膝蓋骨対向面から間隔をおき、平坦な膝蓋骨対向面と平行な上面、すなわち第2の表面を有してもよい。このような実施形態では、前記基部は、前記上面と前記膝蓋骨対向面との間に延びる縁部を有してもよい。縁部は複数の間隔をおいた凹部を有してよく、前記上面は前記間隔をおいた凹部の近傍に標示を有してもよい。このような実施形態では、前記膝蓋骨トライアル部分は、前記外形形成された関節面から間隔をおいた平坦な表面を有してもよく、膝蓋骨トライアル部分のこのような平坦な表面は前記基部の前記第2の平坦な表面に固定されてもよい。このような実施形態では、前記基部は一定の厚さを有してもよく、あるいは前記ドリルガイド穴の近傍のより厚い部分と、前記間隔をおいた凹部の近傍のより薄い部分とを有してもよい。
【0015】
別のより詳細な実施形態では、前記基部は、アームによって連結された第1の端部部分と、第2の端部部分と、を含む。この実施形態では、前記基部の前記第1の端部部分は前記骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、前記膝蓋骨トライアル部分は前記基部の前記第1の端部部分の一部であり、前記膝蓋骨ドリルガイドの第2の端部部分は、第2の骨グリップ要素、平坦な膝蓋骨対向面を有する第2の基部、及び、外形形成された関節面を有する第2の膝蓋骨トライアル部分を含む。この実施形態では、前記第2の基部が前記第2の骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、該第2の骨グリップ要素の一部が、前記平坦な膝蓋骨対向面から外側に向けて延び、前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、前記第2の基部の前記平坦な膝蓋骨対向面の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面を有し、前記第2の基部及び前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面から、前記第2の膝蓋骨トライアル部分を貫通し、更に前記第2の基部を貫通して、前記第2の基部の前記平坦な膝蓋骨対向面にまで延びる、複数の整列したドリルガイド穴を有する。前記第2の基部及び第2の膝蓋骨トライアル部分の前記ドリルガイド穴の整列は、前記第2の骨グリップ要素上で前記第2の基部が回転させられる際に変化せず、前記切除された膝蓋骨表面に対する前記第2の端部部分の前記整列したドリルガイド穴の位置は、前記第2の骨グリップ要素上で前記第2の基部が回転させられるのにしたがって変化する。
【0016】
この実施形態では、前記第2の骨グリップ要素は台座部及び該台座部から外側に向けて延びる複数のスパイクを備えてもよい。
【0017】
この実施形態では、それぞれの穴の前記第2の膝蓋骨トライアル部分を貫通する部分は、該穴の、第2の基部を貫通する整列した部分よりも大きな直径を有してもよい。
【0018】
この実施形態では、前記第2の基部と前記第2の膝蓋骨トライアル部分とは一体であってもよく、あるいは、第2の基部と第2の膝蓋骨トライアル部分とは、連結されてアセンブリを形成する独立した要素を含んでもよい。
【0019】
この実施形態では、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面は非対称であってもよい。
【0020】
この実施形態では、前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面から前記第2の基部の露出した表面にまで延びる厚さを有してもよく、前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、反対側の縁部を含む縁部を有してもよい。前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分の前記厚さは、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の一方の縁部から前記反対側の縁部にかけて変化してもよく、また、少なくとも1つの断面図において、前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分の最大の厚さは、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の両縁部の間で、一方の縁部から、両縁部間の距離の1/2よりも大きい距離となる位置にあってもよい。
【0021】
この実施形態では、前記第1及び第2の膝蓋骨トライアル部分が異なるサイズのものであってよく、また、前記第1の膝蓋骨トライアル部分の両縁部間の距離が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の両縁部間の距離と異なっていてもよい。
【0022】
別のより詳細な実施形態では、膝蓋骨ドリルガイドは更に、ハンドル及び該ハンドルに連結されたクランプ機構を更に有する。この実施形態では、前記ハンドルは前記膝蓋骨ドリルガイドの前記基部に連結される。この実施形態では、前記クランプ機構は、前記ハンドルから、前記基部から間隔をおき、前記基部と整列した端部にまで延びるカンチレバーバネ部材と、前記カンチレバーバネ部材の前記端部上の骨グリップ部材であって、前記基部上の骨グリップ要素と対向し、該骨グリップ要素から間隔をおいた骨グリップ部材と、を備えてもよい。この実施形態では、前記クランプ機構は、前記ハンドルに連結され、前記カンチレバーバネ部材上の前記骨グリップ部材を前記基部上の前記骨グリップ要素から遠ざかる方向に選択的に反らせるように動作することが可能な偏向要素を更に備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
発明を実施するための形態においては特に以下の図面を参照する。
【図1】本発明の原理を取り入れた膝蓋骨ドリルガイドの一実施形態の斜視図。
【図2】図1の膝蓋骨ドリルガイドの一方の端部部分の平面図。
【図3】図1及び2の膝蓋骨ドリルガイドの一方の端部部分の拡大側面図であり、切除された膝蓋骨に固定された端部部分を、適当な皿穴深さ調節ドリルビットの一例とともに示した図。
【図4】図3の膝蓋骨ドリルガイドの拡大側面図であり、ドリルガイドの基部及び膝蓋骨トライアルが図3に示される位置から90°回転させられ、切除された膝蓋骨に固定された状態であるが、皿穴深さ調節ドリルビットなしで示されている。
【図5】膝蓋骨ドリルガイドの代替的な一実施形態を示す側面図であり、切除された膝蓋骨をクランプ締めしている状態を示している。
【図6】図5の膝蓋骨ドリルガイドの実施形態を示す側面図であり、膝蓋骨ドリルガイドが膝蓋骨に対して90°旋回された状態で示されている。
【図7】膝蓋骨トライアルコンポーネントの一実施形態の側面図。
【図8】図7の膝蓋骨トライアルコンポーネントと使用するための膝蓋骨ドリルガイドの代替的な基部の側面図。
【図9】図7の膝蓋骨トライアルコンポーネントと使用することが可能な膝蓋骨ドリルガイドの代替的な基部の平面図。
【図10】図7の膝蓋骨トライアルコンポーネントと使用するための膝蓋骨ドリルガイドの別の代替的な基部の側面図。
【図11】図10の膝蓋骨ドリルガイドの基部の平面図。
【図12】図7の膝蓋骨トライアルコンポーネントと使用することが可能な膝蓋骨ドリルガイドの別の代替的な基部の側面図。
【図13】図12の基部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の概念には様々な改変及び代替的形態が考えられるが、その特定の代表的な実施形態を図面に例として示し、本明細書において詳細に述べる。ただし、本開示の概念を開示される特定の形態に限定することを何ら意図するものではなく、その逆に、本発明は、添付の「特許請求の範囲」において定義される発明の趣旨及び範囲に包含されるすべての改変物、均等物及び代替物を網羅することを意図するものである点は理解されるべきである。
【0025】
本明細書に述べる整形外科用インプラント及び外科用器具に関して、更に患者の天然の解剖学的構造に関して、前方、後方といった解剖学的基準を表わす用語を本明細書の全体を通じて用いうる。これらの用語は、解剖学的構造の研究及び整形外科学の分野のいずれにおいても広く理解された意味を有するものである。明細書及び特許請求の範囲におけるこれらの解剖学的基準を表す用語の使用は、特に断らないかぎりは、それらの広く理解されている意味と一貫性を有するものとする。
【0026】
図1を参照すると、膝蓋骨ドリルガイド10の第1の実施形態が示されている。図に示される膝蓋骨ドリルガイド10は、第1の骨グリップ要素12、第2の骨グリップ要素14、第1の基部16、第2の基部18、第1の膝蓋骨トライアル部分20、第2の膝蓋骨トライアル部分22、及び2つの基部16、18を連結するアーム24を備えている。第1の実施形態では、第1及び第2の骨グリップ要素14、16は、第1及び第2の基部16、18上に回転可能に保持されている。
【0027】
第1の骨グリップ要素12、第1の基部16、及び第1の膝蓋骨トライアル部分20は、共に図に示される膝蓋骨ドリルガイド10の第1の端部部分を構成し、第2の骨グリップ要素14、第2の基部18、及び第2の膝蓋骨トライアル部分22は、共に第2の端部部分を備える。図に示される実施形態の第1の端部部分と第2の端部部分とは大きさが異なるだけである点は理解されるはずである。以下では第1の端部部分の詳細のみを述べる。以下の第1の端部部分の詳細な説明は、はっきりと区別して述べられないかぎりは第2の端部部分にも当てはまる点は理解されるはずである。図中、第1の端部部分の部材に対応する第2の端部部分の部材は、第1の端部部分について用いられる参照符合と同じ参照符合の後にプライム記号「’」を付けて示す。
【0028】
図に示される第1の実施形態では、第1及び第2の骨グリップ要素12、14は、複数の尖った円錐状スパイク26を有している。各スパイクは、図3〜4の膝蓋骨30の表面28のような膝蓋骨の切除された後面内に押し込まれるようなサイズ及び形状となっている。添付図面には3本の円錐状スパイク26が示されているが、これよりも少ないか又は多い数のスパイクを使用することも可能である点は理解されるはずであり、例えば、図12及び13の実施形態に示されるような1本のスパイク26Dを使用することができる。
【0029】
図3に破線により示されるように、図に示される第1の骨グリップ要素12のスパイク26は台座部32に固定され、台座部32から外側に延びている。台座部32はほぼ円筒状の外面を有してよく、第1の基部16を第1の骨グリップ要素12の台座部32上に回転可能に取り付けることができるような取り付け機構を有している。第1の基部16は、台座部32を受容するための円筒状の凹部34(図3及び4を参照)を含んでもよい。台座部32と第1の基部16とは、台座部32と基部16とを互いに固定する一方で台座部32の長手方向中心軸33を中心とした相対回転を可能とするような相補的構造を有してもよく、このような相補的構造としては、例えば、台座部32が基部16の凹部34内にスナップ嵌めされる一方で軸線33を中心として360°回転することを可能とするような溝及び1組の可撓性突起が含まれうる。
【0030】
台座部32と基部16とを回転可能に連結するための他の選択肢も利用可能である。例えば、ネジ及びローラーベアリングを使用することもできる。また、台座部は、スパイク26を有する部分よりも大きな直径を有するような形状とし、更に、スパイク26を有する部分の直径よりも大きくかつ基部の凹部内に保持される台座部の部分の直径よりも小さい直径を有する穴を有するカバーを有してもよく、これにより、台座部32を基部16に固定することができる一方でこれらの要素の間で360°の相対回転が可能となる。
【0031】
台座部32及び基部16を複数の相対的な回転位置にロックできることが望ましい場合もある。例えば、台座部32の外表面がラチェット面を有してもよく、台座部と基部とが複数の位置に解除可能にロックされるように基部16内につめを設けることができる。他のロック機構を採用することも可能である。
【0032】
1本のスパイクが使用される場合には、基部上に基部が回転可能に取り付けられる必要は必ずしもない。代わりに、基部及びスパイクを膝蓋骨上のスパイクを中心として回転させることができる。このような実施形態が図12及び13に示されている。
【0033】
基部16は、平坦かつ平面状の膝蓋骨対向面36を有する。図3及び4に示されるように、この表面36は、膝蓋骨30の切除された後面28上に平らに押し付けられるような設計となっている。凹部34は表面36を貫通して開口しており、スパイク26は膝蓋骨対向面36を越えて外側に延びている。
【0034】
図に示される実施形態では、膝蓋骨トライアル部分20は、基部16の平坦かつ平面状の膝蓋骨対向面36の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面38を有している。外形形成された関節面38は、本明細書にその全容を援用するところの米国特許第6,074,425号に開示されるような解剖学的なものであってもよい。外形形成された関節面は、本明細書にその全容を援用するところの米国特許第7,972,383号又は米国特許出願公開第2009−0326661 A1号に開示されるような形状であってもよい。外形形成された関節面は、ソンブレロ形状又は半ソンブレロ形状の表面をなしてもよい。一般的に、関節面38は、膝蓋骨インプラントコンポーネントの対応するサイズの形状と同様の外形となるように形成される。
【0035】
図に示される実施形態では、外形形成された関節面38と平坦かつ平面状の膝蓋骨対向面36との間の距離は、膝蓋骨ドリルガイド10の端部部分40の全体の厚さを規定し、対応する膝蓋骨インプラントコンポーネントの厚さと概ね一致している。図3に示されるように、端部部分40の厚さは、冠状面で見た場合に端部部分40の一方の縁部42から端部部分40の反対側の縁部44にかけて変化している。端部部分40は、図3及び4に厚さ「t」として示される関節面38のピーク46において最大の厚さとなっている。ピーク46は図の実施形態では中心からずれており、互いに反対の縁部42、44の間において、互いに反対の縁部42、44間の距離の1/2よりも大きい距離となる位置に位置しているが、このオフセット量は、図3では台座部32の中心軸33からの距離「d」として示されており、ただし中心軸33は縁部42、44間の距離の1/2の位置にある。
【0036】
図の第1の実施形態の基部16及び膝蓋骨トライアル部分20は、膝蓋骨トライアル部分20の関節面38から、膝蓋骨トライアル部分20の本体を貫通し、更に基部16を貫通して基部16の平坦な膝蓋骨対向面36にまで延びる複数の整列されたドリルガイド穴50、52、54を有している。図4に示されるように、各ドリルガイド穴50、52、54は、膝蓋骨トライアル部分20を貫通する部分56、58、60、及び基部16を貫通する整列部分62、64、66の2つの部分からなっている。膝蓋骨トライアル部分20を貫通する部分56、58、60は、基部16を貫通する部分62、64、66よりも大きな直径を有し、図3及び4に61、63及び65で示されるような環状肩部を形成している。これらの部分56、58、60、62、64、66の各直径は、図3に示される皿穴ドリルビット72のカラー部分68及び溝付き部分70の各直径と一致しており、基部16を貫通する部分62、64、66の各直径は、膝蓋骨インプラントコンポーネント上の取り付けペグの各直径と一致している。使用時には、環状肩部61、63、65がドリルビット72のカラー部分68の係止要素として機能することにより膝蓋骨30内へのドリルビット72の運動を制限する。これにより基部16の厚さ及びドリルビット72の溝付き部分70の長さによって膝蓋骨内にドリル穿孔される穴の深さが制御される。この深さは一般的に膝蓋骨インプラントコンポーネント上の取り付けペグの長さに概ね一致している。
【0037】
図1及び2に見られるように、図の実施形態の整列された穴50、52、54は、端部部分40上に三角形のパターンで間隔をおいて配置されている。穴の数及び穴50、52、54の間の間隔は、膝蓋骨インプラントコンポーネント上の取り付けペグの数及び間隔と一致している。膝蓋骨インプラントコンポーネント上の取り付けペグの穴の数及び間隔に応じて穴の数及び間隔は図の実施形態から調節することが可能な点は理解されるはずである。
【0038】
図の第1の実施形態では、基部16と膝蓋骨トライアル部分20とは、連結されることによってアセンブリを形成する別個の独立した要素である。図には示されていないが、これらの要素16、20を組み立てるために、スナップ嵌め機構用の相補的な突起及び凹部のような任意の適当な連結機構を使用することができる点は理解されるはずである。同じ基部16上で異なるサイズ又は形状の関節面にトライアルを合わせることができるように外科医が手術中に膝蓋骨トライアル部分20を交換できることが望ましい場合がある。この代わりに、基部16及び膝蓋骨トライアル部分20が、1個の一体の要素を構成してもよい点もやはり理解されるはずである。
【0039】
図の実施形態によって異なるサイズの膝蓋骨インプラントコンポーネントのトライアル合わせを実現することができる。上記に述べたように、図の膝蓋骨ドリルガイド10は、アーム24の反対側の端部に第2の端部部分40’を有している。図の実施形態の第2の端部部分40’は、第1の端部部分40とサイズが異なるだけであり、ほぼ同じものである。したがって、第1の端部部分40の上記の説明は第2の端部部分40’にも同様に当てはまる。図の実施形態によれば、外科医は取り付けペグ用の穴をドリルにより穿孔するのに先立って2つの異なるサイズのコンポーネントをトライアル合わせする場合がある。図の実施形態は同様の端部部分40、40’を有しているが、本発明の原理を利用した膝蓋骨ドリルガイドは、1個のみの端部部分を有するものであってもよい点は理解されるはずである。更に、外科用キットに1個又は2個の端部部分を有する複数の膝蓋骨ドリルガイドを含めることによって、トライアルとして使用するための複数のサイズの膝蓋骨トライアル部分が外科医に与えられてもよい。
【0040】
図1に示される実施形態では、2個の端部部分40、40’を連結するアーム24は、窓を画定する切欠き部41、41’を必要に応じて有してもよく、これを通じてドリルガイド10が膝蓋骨上に取り付けられる際に外科医が膝蓋骨の縁部を見ることができる。
【0041】
本発明の膝蓋骨ドリルガイドは他の要素を含んでもよい。例えば、膝蓋骨の後面に対して膝蓋骨ドリルガイドをクランプ締めするためのクランプ機構を含んでもよい。このようなクランプ機構の一例が図5及び6の実施形態に示されている。この実施形態の要素の多くは、上記に述べた第1の実施形態の要素と同様であり、図5〜6ではそのような要素については同じ参照符合を用い、その後に文字「A」を付して示している。上記の説明文は、図5及び6において図1〜4と同じ参照符合を有する要素にも同様に当てはまるものと仮定することができる。
【0042】
図5及び6の膝蓋骨ドリルガイド10Aは、上記に述べたような要素を有する1個の端部部分40Aを有している。図5及び6の端部部分40Aは、第2の端部部分40に連結される代わりにハンドル80に連結されている。ハンドル80は更にカンチレバーバネ要素82の一端を収容しており、カンチレバーバネ要素82はハンドル80から基部16Aの下に整列させられた第2の端部へと延びている。カンチレバーバネ要素82の第2の端部は、台座部32の中心軸33に沿って整列された骨グリップ部材84を担持する。骨グリップ部材84は、カンチレバーバネ要素82の両端の間のバネ要素82の一部分に押し付けられるようにして動作する偏向要素86を押し込むことによって基部16Aから遠ざかる方向に反らされる。使用時には、骨グリップ部材84が膝蓋骨30の後面88に押し付けられるように作用することにより、膝蓋骨は骨グリップ部材84と基部16Aの膝蓋骨対向面36Aとの間に効果的に保持される。図5及び6に見られるように、骨グリップ部材84、バネ要素82、ハンドル80及び端部部分40Aによって構成されるクランプによって、切除された膝蓋骨表面内に端部部分40Aのスパイク26Aを定置し、基部16A、膝蓋骨トライアル部分20A、及び骨グリップ部材84が台座部32Aを中心として360°回転することが可能となるため、トライアル合わせ及びドリルによる穿孔プロセスが行われる際に外科医が膝蓋骨をよりしっかりと保持することが可能である。
【0043】
上記に述べ、図5及び6に示される特定のクランプ機構は、適当なクランプ機構の一例であることは理解されるはずである。他のクランプ機構を回転式ドリルガイドと使用することも可能であり、こうしたクランプ機構は特定のクランプ機構に明確に限定されないかぎりは本発明の範囲に含まれるものである。
【0044】
他の代替的な実施形態が図7〜9、図10及び11、及び図12及び13に示されている。これらの実施形態の要素の多くは上記に述べた実施形態の要素と同様であり、こうした同様の要素については、そのような要素については同じ参照符合を用い、図7〜9ではその後に文字「B」を、図10及び11では文字「C」を、図12及び13では文字「D」を付して示している。上記の説明文は、具体的な相違点が指摘されないかぎりは、図7〜13において図1〜6と同じ参照符合を有する要素にも同様に当てはまるものと仮定することができる。
【0045】
これらの実施形態では、基部16B、16C、16D及び膝蓋骨トライアル部分20Bは、使用に際して組み立てられる別個の独立した要素である。しかしながらこれらの実施形態では、膝蓋骨トライアル部分20Bはガイド穴を有していない。その代わりに、膝蓋骨トライアル部分20Bは、基部16B、16C、16Dの上面106、106C、106Dから膝蓋骨対向面36B、36C、36Dにまで延びるドリルガイド穴50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54D内に受容されるようなサイズ及び配置の複数のペグ100、102、104を有している。基部16B、16C、16Dは、上面106、106C、106Dと、膝蓋骨対向面38B、38C、38Dとの間、及び基部16B、16C、16Dの外周の一部の周囲に延びる縁部108、108C、108Dを有している。これらの実施形態では、膝蓋骨トライアル部分20Bは、膝蓋骨上でアセンブリのトライアル合わせを行う際に基部16B、16C、16Dの厚さを補償するために小さい厚さを有している。
【0046】
図9〜13は、図8〜13の基部16B、16C、16Dと使用することができる更なる任意の要素を示す。これらの実施形態では、縁部108、108C、108Dは、間隔をおいた複数の切欠き部又は凹部110、112、114、110C、112C、114C、110D、112D、114Dを有し、これを通じて膝蓋骨30B、30C、30Dの切除された後面28B、28C、28Dを見ることができる。基部16B、16C、16Dの上面106、106C、106Dは、サイズ標示116、116C、116Dを含んでおり、これにより、サイズ標示116、116C、116Dに合わせて配置された切除された膝蓋骨表面28B、28C、28Dを外科医が見ることによって移植される膝蓋骨インプラントコンポーネントの最適なサイズを決定することができる。これらの実施形態は、複数のサイズの膝蓋骨インプラントコンポーネントが共通のサイズ及び配置の取り付けペグを有しており、同じドリルガイド10B、10C、10Dを複数のサイズの膝蓋骨インプラントコンポーネントに対して使用することができる場合に特に有益である。
【0047】
図8及び9の実施形態では、基部16Bは、上面106と膝蓋骨対向面36Bとの間では一定の厚さを有し、その厚さは、トライアル部分20Bのペグ100、102、104の厚さと一致している。図10〜13の代替的な実施形態では、基部16C、16Dの厚さは変化している。切欠き部又は凹部110C、112C、114C、110D、112D、114Dの付近では、基部16C、16Dの厚さは、ドリルガイド穴50C、52C、54C、50D、52D、54Dの付近の厚さより小さく、例えば、切欠き部又は凹部110C、112C、114C、110D、112D、114Dの付近における基部16C、16Dの厚さが約2mmでありうるのに対して、ドリルガイド穴50C、52C、54C、50D、52D、54D付近の基部16C、16Dの厚さは約6mmであってもよい。変化する基部の厚さは、切欠き部又は凹部110C、112C、114C、110D、112D、114Dの周囲の比較的薄い領域によってサイズマーキング116C、116Dが膝蓋骨対向面28C、28Dとより近接し、したがってより読みやすくなるという点で有利となりうる。更に、ドリルガイド穴50C、52C、54C、50D、52D、54Dの周囲のより厚い中央部分は、器具セットに含まれるドリルビットの数を減らすうえで有用となりうる。通常、器具セットは、大腿骨インプラントコンポーネントなどの他のコンポーネントのペグを受容するうえで適当な深さに穴をドリル穿孔するための深さ止めを備えたドリルビットを含んでいる。このような基部16C、16Dのより厚い中央部分は、同じ深さ止めを有するこの同じドリルビットを使用して、膝蓋骨インプラントコンポーネント用の穴を、膝蓋骨インプラントコンポーネントに適当な深さでドリル穿孔することを可能とするものである。
【0048】
図12及び13の実施形態は、図12及び13の実施形態の骨グリップ要素12Dでは、基部16Dに1本のスパイク26Dが固定されているという点において図10及び11の実施形態と異なっている。この実施形態では、基部16D、トライアル部分20D及びスパイク26Dを含むアセンブリ全体が、膝蓋骨30Dの切除された表面28D内にスパイクが押し込まれる際にスパイク26Dを通る長手方向軸を中心として、一体として回転する。このような固定されたスパイク26Dは、図1〜11の実施形態におけるような台座部32、32A、32B、32Cに取り付けられた複数のスパイク26、26A、26B、26Cの代わりに使用することもできる。
【0049】
図7〜13に示されるトライアル合わせ及びガイドシステムを使用することには利点があるものの、改変を行うことも可能である点は理解されるはずである。例えば、個々の膝蓋骨トライアル部分20Bは、トライアル部分20Bと基部16B、16Cとが組み立てられる際にガイド穴50B、52B、54Bと整列するガイド穴を有してもよい。このような実施形態では、ペグ100、102、104以外の取り付け機構が用いられる。更に、基部16B、16Cは切欠き部/凹部110、112、114又はサイズ標示116を必ずしも有さずともよい。
【0050】
図に示される実施形態はいずれも、外科用器具の分野で使用される標準的なポリマー材料又は金属材料で形成することが可能であり、異なるこのような材料のアセンブリを含みうる。従来の製造プロセスを使用することもできる。本発明は、特許請求の範囲において明確に示されないかぎり、いずれの特定の材料又は製造プロセスにも限定されない。
【0051】
使用時には、外科医は、膝蓋骨の後面を切除して膝蓋骨30の表面28のような平坦かつ平面状の表面を形成することによって最初に膝蓋骨を整える。図1〜6の実施形態では、外科医は次に、特定の患者によって必要とされる膝蓋骨インプラントコンポーネントのサイズを推定し、ドリルガイド10のような適当なサイズの膝蓋骨ドリルガイドを選択してから、第1の端部部分40のような適当なサイズの端部部分を選択する。次いで、外科医は、基部16の膝蓋骨対向面36が切除された骨表面28に対して平らに押し付けられるまで、切除された骨表面28内に第1の骨グリップ要素12のスパイク26を押し込む。このようにして端部部分40が膝蓋骨30に固定された状態で、膝蓋骨トライアル部分20の関節面38が大腿骨トライアルコンポーネントの関節面(図に示されていない)と嵌合するように膝蓋骨を配置することができる。次に外科医は、患者の膝を一定の範囲で屈曲及び伸展させ、膝蓋骨トライアル関節面38と大腿骨トライアルコンポーネントの関節面との相互作用を評価することができる。患者の膝が所定の運動範囲で動かされる際に、外科医は、関節面38、38A、38Bの向きが最適であると納得するまで、台座部32、32A、32B、32C上で基部16、16A、16B、16C及び取り付けられた膝蓋骨トライアル部分20、20A、20Bを回転させることによって膝蓋骨トライアル部分20の向きを調節することができる。図12及び13の実施形態の場合では、関節面38Bの向きが最適であると外科医が納得するまで基部16D及び取り付けられた膝蓋骨トライアル部分20Dをスパイク26Dを通る軸線を中心として回転させる。膝蓋骨に対する整列された穴50、52、54、50A、52A、54A、50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Dの向きは、基部16、16A、16B、16C、16D及び取り付けられた膝蓋骨トライアル部分20、20A、20Bが回転されるのにしたがって変化することから、穴50、52、54、50A、52A、54A、50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Dは最適な向き及び位置とならなければならない。次いで外科医は、最適に配置された穴50、52、54、50A、52A、54A、50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Sを通じて膝蓋骨に取り付け穴を形成することができる。図3に示されるカラー68及び肩部63のようなカラーをドリルビットが有し、穴が肩部を有する場合には、各穴の深さを設定することができる。次いで膝蓋骨ドリルガイド10、10A、10B、10C、10Dを整えられた膝蓋骨から取り外し、膝蓋骨インプラントコンポーネントを、その取り付けペグがドリル穿孔された穴に受容され、大腿骨インプラントコンポーネントに対するトラッキングが適正となるようにその向きが最適化された状態で移植することができる。
【0052】
図7〜13の実施形態については、この実施形態の要素を使用した外科用キットにそれぞれのインプラントコンポーネントのサイズに対応した複数のサイズの膝蓋骨トライアル部分20Bを含めることができる。外科医は、複数のスパイク26B、26C、又は1本のスパイク26Dを膝蓋骨表面28B、28C、28D内に押し込み、凹部110、112、114、110C、112C、114C、110D、112D、114Dを通じて膝蓋骨縁部を観察し、膝蓋骨縁部をサイズ標示116、116C、116Dと比較することにより、膝蓋骨の切除された表面28B、28C、28D上に基部16B、16C、16Dを取り付ける。次いで外科医は、適当なサイズのトライアル部分20Bを選択し、ペグ100、102、104を基部16B、16C、16Dのドリルガイド穴50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Dに挿入することによって、選択されたトライアル部分20Bを基部16B、16C、16D上に組み付けることができる。次いで外科医は、患者の膝を屈曲及び伸展するように動かすことによってアセンブリをトライアル合わせする。トライアル合わせにおいて、外科医は、トライアル部分20Bの向きが最適化されるまで台座部32B、32C上で基部16B、16Cを(又はスパイク26Dの長手方向の中心軸を中心として基部16Dを)回転又は旋回させることができる。次いでトライアル部分20Bを基部16B、16C、16Dから取り外し、基部の穴50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Dを通じて穴をドリル穿孔することができる。これらの実施形態では、深さ設定カラーを有するドリルビットが使用される場合には、ドリルガイド穴50B、52B、54B、50C、52C、54C、50D、52D、54Dの周囲の基部16B、16C、16Dの上面106B、106C、106Dが、ドリル穿孔された穴の深さを限定する機能を果たす。次いで膝蓋骨ドリルガイド10B、10C、10Dを整えられた膝蓋骨から取り外し、膝蓋骨インプラントコンポーネントを、その取り付けペグがドリル穿孔された穴に受容され、大腿骨インプラントコンポーネントに対するトラッキングが適正となるようにその向きが最適化された状態で移植することができる。
【0053】
以上、図面及び上記の説明文において本開示内容を詳細に図示、説明したが、こうした図示、説明はその性質上、例示的なものとみなすべきであって、限定的なものとみなすべきではなく、あくまで例示的実施形態を示し、説明したものにすぎないのであって、本開示の趣旨の範囲に含まれる変更及び改変はすべて保護されることが望ましい点は理解されるであろう。本出願と同時に出願された以下の米国仮特許出願に開示される特徴のような他の特徴を膝蓋骨ドリル穿孔システムに取り入れることもできる。すなわち、リチャード・スペンサー・ジョーンズ(Richard Spencer Jones)、マーティン・W・ロシュ(Martin W. Roche)、及びアブラハム・P・ライト(Abraham P. Wright)により出願された、発明の名称が「Clamping Patella Drill Guide」(クランプ締め膝蓋骨ドリルガイド)である、米国仮特許出願第61/540049号(代理人整理番号DEP6428USPSP)、並びに、レイモンド・E・ランドル(Raymond E. Randle)、マーティン・W・ロシュ(Martin W. Roche)、及びアブラハム・P・ライト(Abraham P. Wright)により出願された、発明の名称が「Patella Drilling System」(膝蓋骨ドリル穿孔システム)である、米国仮特許出願第61/540053号(代理人整理番号DEP6429USPSP)。これらの特許出願の完全な開示内容を本明細書に援用するものである。
【0054】
本開示には、本明細書に述べられる方法、装置、及びシステムの様々な特徴に基づく多くの利点がある。本開示の方法、装置、及びシステムの代替的実施形態は、ここで述べた特徴のすべてを含むわけではないが、こうした特徴の利点の少なくとも一部から利するものである点に留意されたい。当業者であれば、本発明の1以上の特徴を取り入れた、「特許請求の範囲」において定義される本開示の趣旨及び範囲に包含される方法、装置、及びシステムを独自に実施することが容易に可能であろう。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 人工膝蓋骨インプラントを受容するための切除された膝蓋骨表面を整えるうえで使用される膝蓋骨ドリルガイドであって、
前記切除された膝蓋骨表面の一部を把持するための骨グリップ要素と、
平坦な膝蓋骨対向面を有する基部であって、前記骨グリップ要素の一部が、前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面から外側に向けて延びる、基部と、
前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面を有する膝蓋骨トライアル部分と、を備え、
前記基部が、前記基部を貫通して前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面にまで延びる複数のドリルガイド穴を有する、膝蓋骨ドリルガイド。
(2) 前記基部が前記骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、
前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられるのにしたがって前記切除された膝蓋骨表面に対する前記ドリルガイド穴の位置が変化する、実施態様1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(3) 前記骨グリップ要素が、台座部、及び前記台座部から外側に向けて延びる複数のスパイクを有し、
前記基部が前記台座部上に回転可能に取り付けられている、実施態様2に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(4) 前記膝蓋骨トライアル部分が、前記基部の前記ドリルガイド穴と整列された複数の穴を有し、前記ドリルガイド穴と前記膝蓋骨トライアル部分の穴との整列が、前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられる際に変化しない、実施態様2に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(5) 前記膝蓋骨トライアル部分が前記基部の前記ドリルガイド穴と整列された複数の穴を有し、それぞれの穴の、前記膝蓋骨トライアル部分を貫通する部分が、前記ドリルガイド穴の、前記基部を貫通する整列した部分よりも大きな直径を有する、実施態様1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(6) 前記基部と前記膝蓋骨トライアル部分とが一体である、実施態様1の膝蓋骨ドリルガイド。
(7) 前記基部及び前記膝蓋骨トライアル部分が、連結されてアセンブリを画定する独立した要素を含む、実施態様1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(8) 前記基部が、前記膝蓋骨対向面から間隔をおいた、前記膝蓋骨対向面と平行な上面を有し、前記上面と前記膝蓋骨対向面との間に延びる縁部を有し、
前記縁部が複数の間隔をおいた凹部を有し、
前記上面が、前記間隔をおいた凹部の近傍に標示を有する、実施態様7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(9) 前記基部が前記上面と前記膝蓋骨対向面との間の厚さを有し、
前記ドリルガイド穴の近傍の前記基部の厚さが、前記間隔をおいた凹部の近傍の前記基部の厚さよりも大きい、実施態様8に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(10) 前記膝蓋骨トライアル部分が、それぞれが前記基部の前記ドリルガイド穴の1つに受容される複数のペグを有する、実施態様7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【0056】
(11) 前記基部が、前記平坦な膝蓋骨対向面から間隔をおいた、前記平坦な膝蓋骨対向面と平行な第2の平坦な表面を有し、
前記膝蓋骨トライアル部分が、前記外形形成された関節面から間隔をおいた平坦な表面を有し、
前記膝蓋骨トライアル部分の前記平坦な表面が前記基部の前記第2の平坦な表面に固定される、実施態様7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(12) 前記基部が、アームによって連結された第1の端部部分と、第2の端部部分とを有し、
前記基部の前記第1の端部部分が前記骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、前記膝蓋骨トライアル部分が前記基部の前記第1の端部部分の一部であり、
前記膝蓋骨ドリルガイドの第2の端部部分が、第2の骨グリップ要素、平坦な膝蓋骨対向面を有する第2の基部、及び、外形形成された関節面を有する第2の膝蓋骨トライアル部分を含み、
前記第2の基部が前記第2の骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、該第2の骨グリップ要素の一部が前記平坦な膝蓋骨対向面から外側に向けて延び、
前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、前記第2の基部の前記平坦な膝蓋骨対向面の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面を有し、
前記第2の基部及び前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面から、前記第2の膝蓋骨トライアル部分を貫通し、更に前記第2の基部を貫通して、前記第2の基部の前記平坦な膝蓋骨対向面にまで延びる、複数の整列したドリルガイド穴を有し、
前記第2の基部及び第2の膝蓋骨トライアル部分の前記ドリルガイド穴の整列が、前記第2の骨グリップ要素上で前記第2の基部が回転させられる際に変化せず、
前記切除された膝蓋骨表面に対する前記第2の端部部分の前記整列したドリルガイド穴の位置が、前記第2の骨グリップ要素上で前記第2の基部が回転させられるのにしたがって変化する、実施態様5に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(13) 前記第2の骨グリップ要素が、台座部から外側に向けて延びる複数のスパイクを有する、実施態様12に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(14) それぞれの穴の、前記第2の膝蓋骨トライアル部分を貫通する部分が、前記穴の、前記第2の基部を貫通する整列した部分よりも大きな直径を有する、実施態様12に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(15) 前記第2の基部と前記第2の膝蓋骨トライアル部分とが一体である、実施態様12に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(16) 前記第2の基部及び前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、連結されてアセンブリを画定する独立した要素を含む、実施態様12に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(17) 前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面が非対称である、実施態様12に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(18) 前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の前記外形形成された関節面から前記第2の基部の露出した表面にまで延びる厚さを有し、
前記第2の膝蓋骨トライアル部分が、反対側の縁部を含む縁部を有し、
前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分の前記厚さが、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の一方の縁部から前記反対側の縁部にかけて変化し、
少なくとも1つの断面図において、前記膝蓋骨ドリルガイドの前記第2の端部部分の最大の厚さが、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の両縁部の間で、一方の縁部から、両縁部間の距離の1/2よりも大きい距離となる位置にある、実施態様17に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(19) 前記第1及び第2の膝蓋骨トライアル部分が異なるサイズのものである、実施態様17に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(20) 前記第1の膝蓋骨トライアル部分の両縁部間の距離が、前記第2の膝蓋骨トライアル部分の両縁部間の距離と異なる、実施態様19に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【0057】
(21) ハンドル、及び前記ハンドルに連結されたクランプ機構を更に有し、前記ハンドルが前記膝蓋骨ドリルガイドの前記基部に連結される、実施態様1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
(22) 前記クランプ機構が、
前記ハンドルから、前記基部から間隔をおき、前記基部と整列した端部にまで延びるカンチレバーバネ部材と、
前記カンチレバーバネ部材の前記端部上の骨グリップ部材であって、前記基部上の前記骨グリップ要素と対向し、前記骨グリップ要素から間隔をおいた骨グリップ部材と、を含む、実施態様21に記載の膝蓋骨ドリルガイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝蓋骨インプラントを受容するための切除された膝蓋骨表面を整えるうえで使用される膝蓋骨ドリルガイドであって、
前記切除された膝蓋骨表面の一部を把持するための骨グリップ要素と、
平坦な膝蓋骨対向面を有する基部であって、前記骨グリップ要素の一部が、前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面から外側に向けて延びる、基部と、
前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面の上方に間隔をおいた、外形形成された関節面を有する膝蓋骨トライアル部分と、を備え、
前記基部が、前記基部を貫通して前記基部の前記平坦な膝蓋骨対向面にまで延びる複数のドリルガイド穴を有する、膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項2】
前記基部が前記骨グリップ要素上に回転可能に取り付けられ、
前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられるのにしたがって前記切除された膝蓋骨表面に対する前記ドリルガイド穴の位置が変化する、請求項1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項3】
前記骨グリップ要素が、台座部、及び前記台座部から外側に向けて延びる複数のスパイクを有し、
前記基部が前記台座部上に回転可能に取り付けられている、請求項2に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項4】
前記膝蓋骨トライアル部分が、前記基部の前記ドリルガイド穴と整列された複数の穴を有し、前記ドリルガイド穴と前記膝蓋骨トライアル部分の穴との整列が、前記基部が前記骨グリップ要素上で回転させられる際に変化しない、請求項2に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項5】
前記膝蓋骨トライアル部分が前記基部の前記ドリルガイド穴と整列された複数の穴を有し、それぞれの穴の、前記膝蓋骨トライアル部分を貫通する部分が、前記ドリルガイド穴の、前記基部を貫通する整列した部分よりも大きな直径を有する、請求項1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項6】
前記基部と前記膝蓋骨トライアル部分とが一体である、請求項1の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項7】
前記基部及び前記膝蓋骨トライアル部分が、連結されてアセンブリを画定する独立した要素を含む、請求項1に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項8】
前記基部が、前記膝蓋骨対向面から間隔をおいた、前記膝蓋骨対向面と平行な上面を有し、前記上面と前記膝蓋骨対向面との間に延びる縁部を有し、
前記縁部が複数の間隔をおいた凹部を有し、
前記上面が、前記間隔をおいた凹部の近傍に標示を有する、請求項7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項9】
前記基部が前記上面と前記膝蓋骨対向面との間の厚さを有し、
前記ドリルガイド穴の近傍の前記基部の厚さが、前記間隔をおいた凹部の近傍の前記基部の厚さよりも大きい、請求項8に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項10】
前記膝蓋骨トライアル部分が、それぞれが前記基部の前記ドリルガイド穴の1つに受容される複数のペグを有する、請求項7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。
【請求項11】
前記基部が、前記平坦な膝蓋骨対向面から間隔をおいた、前記平坦な膝蓋骨対向面と平行な第2の平坦な表面を有し、
前記膝蓋骨トライアル部分が、前記外形形成された関節面から間隔をおいた平坦な表面を有し、
前記膝蓋骨トライアル部分の前記平坦な表面が前記基部の前記第2の平坦な表面に固定される、請求項7に記載の膝蓋骨ドリルガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−71008(P2013−71008A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−213771(P2012−213771)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】