説明

回転式試薬トレイアセンブリおよび固相試薬の混合方法

固相試薬を含有する液体の強化された選択的な撹拌を可能にするための装置およびその方法である。装置は、少なくとも1つの液体運搬容器、円形トレイ、およびモータを含む。液体運搬容器は、容器の一方の端部から反対側の端部へ流れるとき、液体に乱流撹拌を与える、少なくとも1つの内部バッフルを含む。円形トレイは、回転の垂直軸のまわりで選択的に回転するように適合される。回転式円形トレイアセンブリは、水平面に対して傾斜または勾配をつけた配向で、それぞれの液体運搬容器を選択的に保持する容器受容ステーションを含む。モータは遠心力を生み出し、それは、容器内の液体が、容器の第1の端部から容器の第2の端部へ、液体および試薬の固相部分を撹拌する内部バッフルを介して移動することを引き起こす。重力が遠心力を超えるとき、容器内の液体は、容器の第2の端部から容器の第1の端部へ、液体および試薬の固相部分を再び撹拌する内部バッフルを介して移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府の支援による研究または開発に関するステートメント
該当せず
【0002】
発明の背景
本発明は、自動免疫測定システム用の試薬トレイに関し、より詳細には、リングの回転運動および遠心力を用いて固相試薬の均質な混合を促進するように構築および配置された回転式試薬トレイアセンブリに関するものである。
【0003】
これまでの免疫測定システムは、試薬パック、たとえばニューヨーク州TarrytownのSiemens Healthcare Diagnostics, Inc.製ReadyPack試薬パックを保持するための線形試薬トレイを含んでいた。典型的には、線形試薬トレイは、回転点のまわりで揺動するように適合されるので、その揺動、前後運動が、試薬の固相部分のほとんどを懸濁状態で維持する。しかしながら、自動的な揺動運動でさえ、試薬の全固相部分を適切に懸濁することが常に可能であるわけではない。結果として、いくつかの試薬パックは、試薬トレイ内に設置する前に、手動で混合および撹拌しなければならない。揺動運動の付加についてのさらなる問題は、試薬の固相部分が沈降しないように、運動を試薬パックに継続的に付加しなければならないことである。この24時間無休(24/7)の手法は、システムに、より多くの消耗を作り出し、また、試薬の搭載安定性に悪影響も及ぼす。
【0004】
Raymoureらへの米国特許第5,451,528号(“’528特許”)は、寿命を延ばすために液体測定試薬を変更する方法を開示することを意図する。方法は、液体測定試薬に不活性材料を添加することを含む。加えて、’528特許によれば、液体測定試薬は、液体測定試薬を含有する試薬パックが装填された試薬カルーセルの前後運動によって自動的に撹拌される。加速度、速度、移動距離、および非対称休止は、“泡立ちまたは気泡の形成のない、迅速な測定試薬再懸濁”を提供するために変更することができる。要するに、’528特許は、試薬の固相部分を懸濁状態に維持するのに十分に液体測定試薬を“スロッシング”するために、カルーセルの求心力およびガタガタした運動に依存する。
【0005】
しかしながら、ガタガタした求心力による“スロッシング”は、試薬の固相部分が、液体移送容器の側面または壁面、および蓋にさえ接着するという結果になることがある。このような結果は、試薬の固相部分のパーセンテージまたは濃度を減少させる。
【0006】
したがって、液体測定試薬の固相部分を混合及び攪拌するために、トレイの回転と停止の動き及びエネルギーを用い、それにより、試薬トレイ内に試薬パックを設置する前に、試薬パックを手動で混合/撹拌する必要性をなくすように適合された、回転式試薬トレイアセンブリを提供することが望ましい。
また、液体測定試薬の固相部分を混合および撹拌するために、回転式試薬トレイの回転運動に起因する遠心力を用いるとともに、それにより、固相部分の一部が、制御されていない中心へ向かうスロッシングにより試薬パックの内部表面に付着し、それにより、固相部分が損失する可能性を排除するように適合された回転式試薬トレイを提供することが望ましい。
【0007】
固相部分を懸濁するために揺動、前後運動を用いる線形試薬トレイと比較すると、回転式試薬トレイは、トレイの設置面積を最小限にしながら、試薬トレイの容量を増やす。その上、有利なことに、吸引試薬プローブの側方への移動の要求を減少させ、3軸制御プローブを、より単純な2軸プローブ機構で置き換えるという結果になることができる。
【0008】
発明の概要
固相試薬を含有する液体の改善された攪拌及び選択的な撹拌を可能にするための装置およびその方法を開示する。装置は、少なくとも1つの液体運搬容器、円形トレイ、およびモータを含む。液体運搬容器は、第1の端部および反対側の第2の端部を有し、その間に少なくとも1つの内部バッフルが配置される。内部バッフルは、容器の一方の端部から反対側の端部へ流れるとき、液体に乱流撹拌を与える。
【0009】
円形トレイは、回転の垂直軸のまわりで選択的に回転するように適合される。回転式円形トレイは、トレイ上に、円になって半径方向に配置された複数の容器受容ステーションを有する。各ステーションはさらに、それぞれの液体運搬容器をある配向で受容および選択的に保持するように適合され、それによって容器は、水平面に対して傾斜または勾配をつけられる。その上、回転軸に近接した容器の第1の端部は、回転軸から離れた容器の第2の端部より低位に配置される。
【0010】
モータは、トレイに駆動係合し、さらに、トレイを選択的に回転するように適合される。
【0011】
関連部分では、モータによるトレイの回転または回転加速度に付随する遠心力は、容器内の液体が、容器の第1の端部から容器の第2の端部へ、液体およびその中の試薬の固相部分が撹拌されることを引き起こす内部バッフルを介して、固相部分の継続した懸濁または再懸濁状態を促進するように移動することを引き起こす。モータによるトレイの回転の休止または回転の減速に付随する重力が遠心力を超えるとき、容器内の液体は、容器の第2の端部から容器の第1の端部へ、液体およびその中の試薬の固相部分が、固相部分の継続した懸濁または再懸濁状態を促進するように撹拌されることを再び引き起こす内部バッフルを介して移動する。
【0012】
容器内の液体を選択的に撹拌する方法は、液体運搬容器を提供すること;回転可能な円形トレイを提供すること;トレイに付随するそれぞれの容器受容ステーション上に容器を配置すること;トレイを選択的に回転することで、生成された遠心力は、容器内の液体が、容器の第1の端部から第2の端部へ、液体およびその中の試薬の固相部分が、固相部分の継続した懸濁または再懸濁状態を促進するように撹拌されることを引き起こす内部バッフルを介して移動することを引き起こし、およびトレイを選択的に減速または停止することで、重力が遠心力を超え、容器内の液体が、容器の第2の端部から容器の第1の端部へ、液体およびその中の試薬の固相部分が、固相部分の継続した懸濁または再懸濁状態を促進するように撹拌されることを再び引き起こす内部バッフル介して移動することを引き起こすことを含む。
【0013】
本発明は、図面と併せて次の発明の詳細な説明を参照することによってより十分に理解されるだろう:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】測定検査システム用の回転式試薬トレイアセンブリおよび試薬コンパートメントの概略図である。
【図2】付属トレイのカバーを取り外した、図1の回転式試薬トレイアセンブリの概略図である。
【図3】図1の回転式試薬トレイアセンブリの断面図である。
【図4A】試薬パックの平面概略図である。
【図4B】試薬パックの立面概略図である。
【図5】例示的な三角形の運動プロファイルを示す。
【図6】例示的な台形の運動プロファイルを示す。
【図7】直接駆動モータを有する回転式試薬トレイアセンブリの代替実施形態の断面図である。
【0015】
詳細な説明
図1〜3を参照して、回転式試薬トレイまたはカルーセルアセンブリを説明する。回転式試薬トレイアセンブリ10は、複数の主要試薬パック35および/または付属試薬パック20を、それぞれ主要トレイ12および付属トレイ14内に保持するように構築および配置される。主要トレイ12および付属トレイ14は、垂直軸29のまわりで互いに同軸上および同心上に回転式試薬トレイアセンブリ10内に配置される。本発明は、主要トレイ12および付属トレイ14の両方を有することに関して説明するが、本発明は主要試薬トレイだけを用いて実践することもあり得る。
【0016】
主要試薬トレイ12は、駆動シャフト13、駆動プーリ44、およびプーリベルト15を介して主要モータ11に機械的に連結して示される。主要モータ11、駆動シャフト13、駆動プーリ44、およびプーリベルト15は、駆動シャフト13にトルクを付加することによって、主要試薬トレイ12に独立した双方向の運動を提供するように構築および配置される。
【0017】
プーリベルト15は、一組の遊動輪22の間に、モータ11に機械的に連結する駆動輪24の周囲に、および駆動シャフト13またはその延長線の周囲に配置される。駆動シャフト13は、主要試薬トレイ12の内部周辺部16に機械的におよび/または摩擦によって連結するヘッド部17を含む。結果として、駆動シャフト13が回転、加速、減速、または停止するとき、主要試薬トレイ12も同様に動く。代替として、主要試薬トレイ12用の実施形態の動力手段は、図7に示すように駆動シャフト73と共に設置される直接駆動主要モータ71によって置き換えることができる。軸受72は、駆動シャフト73を支持するように備えられる。
【0018】
付属試薬トレイ14は、外周表面25において、駆動輪23を介して付属モータ21に機械的に連結する。付属モータ21および駆動輪23は、付属試薬トレイ14の外周表面25に中心方向または接線方向への力を付加することによって、付属試薬トレイ14に独立した双方向の運動を提供するように構築および配置される。
【0019】
図面は、内部周辺部16から、および外周表面25からそれぞれ駆動される回転式試薬トレイアセンブリ10の主要試薬トレイ12および付属トレイ14を図示するが、それは説明目的のみのためになされる。当業者は、これまで説明してきたように構築および配置された回転式試薬トレイアセンブリ10が代わりに、外周表面から、および内周表面からそれぞれ駆動される主要試薬トレイ12および付属トレイ14を含むこともあり得ることを認識することができる。
【0020】
付属試薬トレイ14は、それぞれが、それぞれの付属試薬パック20を保存および保持するように構築および配置された複数の設置エリア27を有する、環状の、平坦または実質的に平坦な底部18を含む。隣接する、協働する、バネで付勢されたクリップ55は、離散した設置エリア27内に付属試薬パック20を確実に固定および保持するために用いることができる。
【0021】
図1および図3を参照すると、付属試薬トレイ14は、その温度を制御するように、および、少なくとも1つの冷却装置26、たとえば、少なくとも1つの熱電ペルティエ素子の構造的な支持を提供するように、付属試薬トレイ14およびその中に配置された付属試薬パック20を内包するように構築および配置された不動カバー部19によって、任意に保護することができる。図1および図3は冷却装置を支持するカバー部19付きの回転式試薬トレイアセンブリ10を示すが、トレイアセンブリ10は、図2に示すように、それなしでも稼動することができる。
【0022】
図7は、回転式試薬トレイアセンブリ10用の、代替の、内部および外部冷却装置を示す。図7に示される実施形態によれば、外部導通のために、トレイアセンブリ10は、少なくとも1つの冷却装置26、たとえば、多量の熱を発生する回転モータ71および回転シャフト73に近接したトレイアセンブリ10の底部上に配置される熱電ペルティエ素子を含む。内部冷却は、強制空気対流によって行われる。より詳細には、ファンアセンブリ74が、シャフト73の回転軸またはその近くの中央に配置される。ファンアセンブリ74は、矢印77によって示されるような強制的空気循環を生み出すように構築および配置される。複数の冷却フィン76は、トレイアセンブリ10の底部上に備えられる。冷却フィン76は底部に熱的に連結し、次に、少なくとも1つの冷却装置26に熱的に連結する。
【0023】
稼動時において、少なくとも1つの冷却装置26は、循環強制空気77から熱を取り除くフィン76から、熱を取り除くように構築および配置される。ファンアセンブリ74は、空気ダクト75を介して、冷却フィン76によって冷却された空気を引き込む。そして、冷却された空気は、付属試薬パック20の上方の空域内で;主要試薬パック18の周囲に;および冷却フィン76を通って戻り、循環する。
【0024】
カバー部19は、冷却装置26を着脱可能に取り付けることのできる、平らなまたは実質的に平らな環状の上部28、付属試薬パック20の導入および取り外し用の少なくとも1つの装填口39を有する外周表面25、および内部表面または内部スカート37を含む。
【0025】
装填口39は、外周表面25に設けられており、自動的におよび/または手動で、水平または実質的に水平に、新規または使用済みの付属試薬パック20の装填および取り外しを可能にする。付属口20の寸法は、単一の付属試薬パック20の挿入/取り外しまたは複数の付属試薬パック20の同時挿入/取り外しを可能にするように変更することができる。付属試薬パック20を装填するために、付属試薬トレイ14を、空の設置エリア27または現在空の付属試薬パック20を収容する設置エリア27が付属装填口39に登録される位置になるまで回転させる。設置エリア27が空であれば、未使用の付属試薬パック20を、装填口39を介して空の設置エリア27へ手動でまたは自動的に挿入することができる。他方、使用済みの付属試薬パック20が必要とされる設置エリア27を占めていれば、まず、使用済みの付属試薬パック20を手動でまたは自動的に取り外し、次に、新しい付属試薬パック20を、手動でまたは自動的に装填口39を介して現在は空になっている設置エリア27へ挿入する。
【0026】
試薬プローブアクセスエリア31は、試薬パックから試薬を吸引する少なくとも1つのピペッタ(図示せず)に近接した内部スカート37内(1つ存在する場合)に位置する。主要試薬パック35または付属試薬パック20へのプローブアクセスは、付属トレイ14(1つ存在する場合)のカバー部19の部分内の少なくとも1つの穴または開口部32を通して提供される。任意の1つの容器を少なくとも1つの穴または開口部32の下方に配置することができるので、X、Y、およびZ軸方向に移動させる能力を要する線状に配列された容器に用いられるプローブとは対照的に、XおよびZ方向に移動可能な吸引プローブのみを採用することができる。プローブアクセス穴または開口部32は、少なくとも1つのピペッタの先端が蓋を穿刺すること、および液体移送容器20または35から所望の量の試薬を吸引することを可能にするように構築および配置される。
【0027】
カバー部19の環状の上部28内に配置された単一のプローブアクセス穴または開口部32、ならびにスカート37内に配置された複数のアクセス穴32は、説明目的のみで図1に示される。当業者は、余剰のピペッタの数ならびに穴または開口部32の数について変更することができることを認識することができる。
【0028】
主要試薬トレイ12は、それぞれがそれぞれの試薬パック35を保持するために構築および配置された複数の容器受容エリアまたは設置エリア38を提供するように構築および配置された、環状の底部33を含む。設置エリア38および試薬パック35についての詳解は、下記に記載されている。
【0029】
主要試薬トレイ12は、カバー部19の内部スカート37(1つ存在する場合)、付属試薬トレイ14の環状の平坦または実質的に平坦な底部18、内部コアカバー34、および不動外周表面36によって保護される。少なくとも1つの装填口30が、外周表面36に設けられる。装填口30は、新規または使用済みの主要試薬パック35の自動および/または手動の、水平または実質的に水平な、装填および取り外しを可能にする。装填口30の寸法は、単一の試薬パック35の挿入/取り外し、または複数の試薬パック35の同時挿入/取り外しを可能にするように変更することができる。
【0030】
試薬パック35を装填するために、主要試薬トレイ12を、空の設置エリア38または取り外す必要がある空の試薬パック35が装填口30に登録される位置になるまで回転させる。設置エリア38が空であれば、未使用の試薬パック35を、装填口30を介して空の設置エリア38へ手動でまたは自動的に挿入することができる。隣接する、バネで付勢されたクリップ装置59が、設置された試薬パック35を設置エリア38内に確実に保持するように適合される。代替として、まず、使用済みの試薬パック35が手動または自動的に試薬トレイ12から取り外された後、未使用の試薬パック35が手動または自動的に装填口30を介して現在は空の設置エリア38へ挿入される。
【0031】
試薬パック
混合または懸濁した固相部分のある、またはそれのない流体を保持するための試薬パックは、ニューヨーク州TarrytownのSiemens Healthcare Diagnostics, Inc.に現在譲渡され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,788,928号(“’928特許”)に開示されている。
【0032】
’928試薬パックは、再分割されたチャンバを含み、そのサブチャンバは、バッフル、たとえばS字型チャンネル(またはSチャンネル)によって画定されるスロート領域によって分割される。’928特許において説明される試薬パックは線形試薬トレイの揺動動作のために設計されているが、同じ特性を有する試薬パックは本明細書で説明される回転式試薬トレイアセンブリに用いるのにも適している。
【0033】
図4を参照すると、本発明の一部分を構成する試薬パック35は、回転式試薬トレイアセンブリ10の双方向の回転運動、およびさらにまた、その周期的な停止の効果が、試薬の液体部分内に含有される懸濁した固相試薬部分を適切に混合および/または保つように設計される。より詳細には、隣接するサブチャンバ41および42の間の狭いスロート領域40を含む試薬パック35の設計は、回転する試薬トレイアセンブリ10によって生成される遠心力と協働して、試薬の全部または一部分を、制限的チャンネル40を通して外側へ押し出す。
【0034】
試薬パック35は、内側端部52および外側端部54を有する。図2に示すように、内側端部52は回転式試薬トレイアセンブリ10の垂直軸29に最も近く、外側端部54はそれに整列するとき、装填口30に最も近い。’928特許において説明される壁面および表面は、各試薬パック35を複数のチャンバ41〜44に分割する。各チャンバ41〜44は、免疫測定システムによって使用された試薬を保存するように構築および配置される。試薬は、均質な分散のために少ししかまたは全く撹拌を要しない可溶性であることができ、あるいは、継続的な分散のために撹拌を要する不溶性であることができる。
【0035】
各チャンバ41〜44内の底表面53は、その中に保存された材料の完全なまたは実質的な吸引を容易にするために、それぞれのチャンバ内で単一の場所に向かって傾斜または勾配をつけられる。好ましい実施形態において、この場所は、チャンバ43および44の底53内に配置されたくぼみ48(または液だめ)の形をとる。
【0036】
各試薬パック35の少なくとも1つのチャンバは、一組の対向するオフセットバッフル56、58を備えることができる。特に、より大きいチャンバは、実質的に等しい体積の2つのサブチャンバ41および42に分割することができ、各サブチャンバ41および42は、バッフル56および58を含むことができる狭いスロート領域40によって相互接続される。各バッフル56および58は、それぞれの側壁面から、より大きいチャンバの中へ反対側の側壁面に向かって延びる。バッフル56および58は、床表面53から側壁面の上縁へ垂直に配置することができ、好ましくは、対向する側壁面に向かって試薬パック35の幅の少なくとも半分に亘って延びる。
【0037】
このような構成の恩恵は、懸濁された固相試薬材料が再分割されたチャンバの中へ導入され、試薬パック35が主要試薬トレイ12の回転により遠心力を受けるときに、実現される。付加された遠心力は、流体が、内側端部52から外側端部54に向かって(矢印A)、つまり、第1のサブチャンバ42から狭いスロート領域40のバッフル56および58を通って第2のサブチャンバ41の中へ移動するのを引き起こす。試薬パック35に遠心力が付加されない、または不適切に付加されるとき、試薬パック35の上部圧力および勾配は、流体が、第2のサブチャンバ41から狭いスロート40のバッフル56および58を通って第1のサブチャンバ42の中へ移動するのを引き起こす。
【0038】
懸濁された固相試薬部分を移送する流動性の材料は、スロート40を通過するにつれて大幅に加速し、サブチャンバ41および42の外周のまわりで循環する流れによって、固相試薬部分および流体担体を著しく撹拌するという結果をもたらす。完全で均質な分散が、とりわけ、試薬パックの勾配、回転速度、互いに混合された試薬、流体担体の種類および粘度、温度などによる、正確な混合スピードで迅速に達成される。
【0039】
さらに、主要試薬トレイ12の環状の部分の容器受容ステーションまたは設置エリア38は勾配または傾斜しているので、その中に配置されるときに、試薬パック35は、ある角度で垂直軸29に向かって下方に勾配をつけられる。試薬パック35に勾配をつける恩恵は:トレイ12が停止するとき、圧力水頭および重力効果は、有利なことに、固相試薬部分を混合し、ならびに任意の沈殿した固相部分を再懸濁および再混合する制限的チャンネル40を通って、内側端部52に向かって内側へ、試薬の一部分を引き込むことを含む。
【0040】
試薬パック35−−たとえば、ニューヨーク州TarrytownのSiemens Healthcare Diagnostics, Inc.製のReadyPacks−−は、具体的には、試薬パックから試薬を吸引する間に、水平より下に五(5)度の角度で、設置エリア38内に設置および保持されるように設計され、またはされるべきである。しかしながら、水平より下に20度以上のより急なパック角度は、より大きい混合を提供する。パック角度が吸引のために事前に設定された5度を超えるとき、回転式試薬トレイアセンブリ10は、試薬パック35の下端部を、たとえば水平より下に20度から水平より下に5度に引き上げるように適合される持ち上げ手段を含んでもよい。好ましくは、試薬パック35は、単一の事前に指定された場所、たとえば、試薬吸引プローブおよび試薬プローブアクセスエリア31に近接した場所へ持ち上げられる。
【0041】
各チャンバ41〜44は、蓋、たとえばHDPEの蓋でカバーされる。各蓋は、チャンバの内容物を汚染から保護するが、試薬プローブによって容易に貫通可能な複数の開孔部45、46、および49を含むように構築および配置される。その上、重要な基準は、開孔部をカバーする材料が、内包した試薬に不活性なままであることである。たとえば、ポリエステルおよびエチレン酢酸ビニル(EVA)膜の組み合わせ、あるいは、ポリエステルおよびHDPE膜の組み合わせなどを用いることができる。代替としては、単一層の膜が採用される。
【0042】
開孔部45、46、および49は、それぞれ、下層にあるチャンバ43、44、および42に、より好ましくは、試薬パックチャンバ床くぼみ48に実質的に整列する。各開孔部45、46、および49は、別々にカバーされてもよく、または全部が開孔部をカバーする材料の連続的な部分によってカバーされることができる。
【0043】
回転式試薬トレイアセンブリの操作および運動プロファイル
当業者は、回転式試薬トレイアセンブリの適切な機能、すなわち、固相試薬部分の継続的および適切な混合、懸濁、および/または再懸濁に悪影響を及ぼすことができる無数の変数、たとえばほんの数例を挙げると、トレイの直径、試薬パックの垂直軸からの距離、試薬パックの勾配角度、試薬パック設計(Sチャンネルその他)、および運動プロファイルが存在することを認識することができる。この節では、運動プロファイル、および、それらがどのようにして、適切なサブチャンバ内で吸引の直前に固相試薬部分が懸濁され、および適切に混合されることを確実にするために最もよく有利にするように用いることができるのかについて取り上げる。
【0044】
従来の線形揺動ミキサの制限の1つは、運動プロファイルを、エネルギーを増やし著しく試薬を“スロッシング”させるために変更することができないことである。そのため、回転式混合は、とりわけ流体試薬溶液内の固相試薬部分を再懸濁する能力において、揺動式混合より優れている。実に、下記により詳細に説明するように、加速度/減速度、最大速度、停止、およびその他のパラメータは、瞬間エネルギーおよび試薬の“スロッシング”を増大させるために変更することができる。
【0045】
図5および図6は、それぞれ、三角形の運動プロファイルおよび台形の運動プロファイルを図示する。三角形の運動プロファイルは、徐々に増大する回転速度、および、あるピーク速度に達した後に徐々に減少する回転速度を含む。迅速にかつ徐々に増大する回転速度は、三角形の運動プロファイルを、初期起動およびより激しい混合を要する試薬のために、より理想的にする。
【0046】
対照的に、台形の運動プロファイル(図6)は、徐々に増大する回転速度が一定時間横ばいになり、その後に徐々に速度の減少が続くことを含む。台形の運動プロファイルは、既に懸濁された固相部分を懸濁状態で維持するためによりよい。
【0047】
免疫測定システムおよび/または回転式試薬トレイアセンブリ10は、さらに、モータの回転の速度、加速度、減速度、停止、および回転方向の少なくとも1つを制御するように構築および配置されたコントローラ、たとえばプロセッサ、マイクロプロセッサなどを含む。さらに、コントローラは、回転式試薬トレイを、周期的に、ランダムに、断続的に、事前に予定された時刻に、複数の事前に設定された運動プロファイルの1つにしたがって、およびコマンドで操作するように適合される。
【0048】
初期再懸濁検査結果
回転式試薬トレイアセンブリおよび固相試薬部分の混合の有効性を評価するために、回転式混合は、各事例において、Sチャンネルパックを用いる手動混合と比較された。比較のために、aHBS、CEA、およびH2n検査は、その3つの検査が再懸濁の問題を起こすことで悪名高いので、特に選ばれた。
【0049】
混合度は、視覚的および吸光測定技術を用いて、それぞれ主観的および客観的に評価された。前者のために、混合の“量”が、Sチャンネルの横断の回数を用いて特徴付けられた。後者の場合には、一定分量が試薬の上部、中間、および下部層からサンプリングされ、吸光度が600nmで測定された。
【0050】
aHBS、CEA、およびH2n検査に関する、手動および回転式設備による混合の吸光検査結果は、ニューヨーク州TarrytownのSiemens Healthcare Diagnostics, Inc.製のADVIA Centaur免疫測定システムからの線形設備および回転式試薬トレイアセンブリを用いて行われた。各測定用の手動および回転式設備による混合の内層吸光平均は、Readypacks付きの回転式試薬トレイアセンブリが、固相試薬部分を十分に懸濁可能であることを確認する。
【0051】
搭載安定性検査
これまで言及したように、回転式試薬トレイの停止運動は、多くの恩恵を有する。第1に、モータおよびコントローラを止めることを可能にし、それが、熱出力を減少させ、エネルギーを節約し、およびシステムの消耗を減少させる。第2に、回転運動を停止するとき、試薬内の固相粒子が静止するようになり、それが、とりわけ固相試薬の搭載安定性を改善する。
【0052】
搭載安定性(OBS)は、一旦試薬パックがまず開封され、使用できるようにされた、離散した試薬の使用可能および耐用寿命の測定量である。要するに、OBSは、一旦試薬がシステムに設置されたときの“保存可能期間”の量であり、それは、平均して、7〜45日間の範囲に及ぶことがある。
【0053】
OBSは、試薬、および本発明により関連のある、一定の機械的な混合が試薬の固相部分に有することがある効果、すなわち、分解、粒子の摩耗などに悪影響を及ぼすことがある酸化および/またはその他の化学反応によって悪影響を及ぼされる。これまで言及したように、前後の揺動タイプの運動は、24時間、週7日の適用を必要とする。
【0054】
一般的には、固相粒子がより多くの運動および撹拌を受けるほど、OBS寿命はより短くなる。ゆえに、有利なことに、回転式トレイの非稼動または休止時間は、固相試薬の延長された寿命と同一視できる。実に、本発明の回転式試薬トレイアセンブリでは、測定システムの機能は、8時間シフトの終わりに停止することができ、それはOBSの増大を引き起こしがちだが、運転停止および実質的な沈降時間の後に、固相部分は適切な運動プロファイル、たとえば三角形の運動プロファイルを用いて再懸濁することができる。実に、回転式試薬トレイアセンブリの多くの利点の1つは、線形タイプまたはその他の回転タイプの試薬トレイと比較して、起動時によりよい混合を提供することである。
【0055】
TUpおよびDIG試薬を用いて、線形(ADVIA Centaur)試薬トレイおよび回転式試薬トレイアセンブリ用のOBSデータを収集した。TUpおよびDIG試薬が、それらのOBSが比較的短い――それぞれ4日間及び3日間である、という理由から選択された。回転式試薬トレイおよび線形(ADVIA Centaur)試薬トレイは、五(5)秒間の揺動の後、十(10)秒間停止を伴って継続的に五(5)日間運転された。回転プロファイルは、八(8)秒間に三(3)回の180度の移動を含んで、想定される最悪の場合をモデル化する。その結果は、線形揺動式試薬トレイに対して回転式試薬トレイアセンブリを用いて混合された試薬について、OBSへの悪影響がないことを示す。
【0056】
本発明は上述の例示的な実施形態によって説明されるが、当業者には、本明細書に開示される発明の思想から逸脱しない範囲で、図示の実施形態の変形および改変がなされてもよいことが理解される。したがって、本発明は、添付の請求の範囲および精神以外によって限定されるとみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部および反対側の第2の端部を有する、少なくとも1つの液体運搬容器であって、容器の一方の端部からその反対側の端部へ流れるとき、それぞれの容器内で液体に乱流撹拌を与えるための少なくとも1つの内部バッフルを含む、少なくとも1つの容器と、
回転の垂直軸のまわりで選択的に回転するように適合され、ならびに、トレイ上に垂直軸から半径方向に配置された複数の容器受容ステーションであって、ある配向でそれぞれの液体運搬容器を受容および選択的に保持するように適合された各ステーションを有し、それによって容器が水平面に対して傾斜し、およびそれによって回転軸に近接した容器の第1の端部が回転軸から離れた容器の第2の端部より低位に配置される、円形トレイと、
トレイに駆動係合して、およびトレイを選択的に回転するように適合される、モータ
とを含み、
トレイの回転または回転加速度に見合った遠心力が、少なくとも1つの容器内の液体が、容器の第1の端部から容器の第2の端部へ移動することを引き起こし、それにより、少なくとも1つの内部バッフルを通って流れるとき、前記液体を撹拌し、および
トレイの回転休止または回転の減速に付随する重力が、少なくとも1つの容器内の液体が、容器の第2の端部から容器の第1の端部へ移動することを引き起こし、それにより、少なくとも1つの内部バッフルを通って流れるとき、前記液体を撹拌する、
強化された選択的な液体の撹拌を可能にするための装置。
【請求項2】
円形トレイと同軸上および同心上にあり、回転の垂直軸のまわりで独立して選択的に回転するように適合された、第2の円形トレイをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第2の円形トレイが、垂直軸から半径方向に配置された複数の容器受容ステーションであって、ある配向でそれぞれの液体運搬容器を受容および選択的に保持するように適合された各ステーションを含む、請求項2記載の装置。
【請求項4】
第2の円形トレイが、第2の円形トレイを選択的に回転するように適合された第2のモータに、作動的に連結する、請求項2記載の装置。
【請求項5】
円形トレイが、約5度および20度の間のある角度で傾斜する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
円形トレイ上の各ステーションが、協働する保持装置を含んで、回転の間、確実にそれぞれの液体運搬容器を保持する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
円形トレイ上の各ステーションの締結装置が、水平または実質的に水平な装填を可能にするように構築および配置される、請求項6記載の装置。
【請求項8】
第2のトレイ上の各ステーションが、協働する保持装置を含んで、回転の間、確実にそれぞれの液体運搬容器を保持する、請求項2記載の装置。
【請求項9】
円形トレイ上の各ステーションの締結装置が、水平または実質的に水平な装填を可能にするように構築および配置される、請求項8記載の装置。
【請求項10】
モータが、トレイに直接的にまたは間接的に係合して運動を提供するように適合されたロータを含む、請求項1記載の装置。
【請求項11】
モータの速度、加速度、減速度、停止、および回転方向の少なくとも1つを制御するためのコントローラをさらに含み、周期的に、ランダムに、断続的に、事前に予定された時刻に、複数の事前に設定された運動プロファイルの1つにしたがって、およびコマンドによって、の少なくとも1つで作動する、請求項1記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの内部バッフルが、その間にS字型チャンネルを提供するように構築および配置された一組のバッフルを含む、請求項1記載の装置。
【請求項13】
カバー部をさらに含み、少なくとも1つの液体運搬容器のそれぞれの中の液体のための温度制御可能な環境を提供する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
カバー部が、少なくとも1つの冷却アセンブリを支持するように構築および配置された、請求項13記載の装置。
【請求項15】
カバー部が、複数のプローブアクセス開口部を含んで、ピペッタの先端が、少なくとも1つの液体運搬容器の任意の1つにアクセスすること、および前記少なくとも1つの液体運搬容器から前記液体を吸引することを可能にする、請求項13記載の装置。
【請求項16】
カバー部が、少なくとも1つの液体運搬容器の少なくとも1つを、手動でまたは自動的に、装填するまたは取り外すための、少なくとも1つの装填アクセスポートを含む、請求項13記載の装置。
【請求項17】
強制空気対流によって、少なくとも1つの液体運搬容器を冷却するように適合された、複数の冷却フィンおよびファンアセンブリをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記冷却フィンが円形トレイの下方に配置され、前記ファンアセンブリが前記円形トレイの上方に配置される、請求項17記載の装置。
【請求項19】
第1の端部および反対側の第2の端部を有する、少なくとも1つの液体運搬容器であって、容器の一方の端部からその反対側の端部へ流れるとき、それぞれの容器内で液体に乱流撹拌を与えるための少なくとも1つの内部バッフルを含む、少なくとも1つの容器を提供すること、
回転の垂直軸のまわりで回転可能であって、ならびに、トレイ上に垂直軸のまわりに半径方向に配置された複数の容器受容ステーションであって、ある配向でそれぞれの液体運搬容器を受容および選択的に保持するように適合された各ステーションを有し、それによって容器が水平面に対して前記垂直軸に向かって傾斜し、およびそれによって回転軸に近接した容器の第1の端部が回転軸から離れた容器の第2の端部より低位に配置される、円形トレイを提供すること、
それぞれの容器受容ステーション上に前記少なくとも1つの容器を配置すること、および
それに機械的に係合しているモータを介して、前記トレイを選択的に回転することによって液体を撹拌することであって、それによって、トレイの回転または回転加速度に付随する遠心力は、少なくとも1つの容器内の前記液体が、少なくとも1つの内部バッフルを介して容器の第1の端部から容器の第2の端部へ移動することを引き起こし、および
少なくとも1つの容器内の前記液体が、少なくとも1つの内部バッフルを介して、容器の第2の端部から容器の第1の端部へ移動することを引き起こす重力であって、トレイの回転休止または回転の減速に付随する重力を用いて、液体をさらに撹拌すること
を含む、容器内の液体を選択的に撹拌する方法。
【請求項20】
モータの速度、加速度、減速度、停止、および回転方向の少なくとも1つを制御することをさらに含み、周期的に、ランダムに、断続的に、事前に予定された時刻に、複数の事前に設定された運動プロファイルの1つにしたがって、およびコマンドによって、の少なくとも1つで作動する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
事前に設定された運動プロファイルが、徐々に増大する回転速度、および所定のピーク速度に達した後に徐々に減少する速度を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
事前に設定された運動プロファイルが、徐々に増大する回転速度が一定時間横ばいになり、その後に速度が徐々に減少することを含んで、既に懸濁された固相部分を懸濁状態で維持する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
円形トレイを周期的に停止すること、および、プローブまたはピペッタを用いて液体運搬容器から液体サンプルを吸引すること、をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
プローブまたはピペッタの運動を、XおよびZ軸のみにおいて制御することをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの液体運搬容器を、ファンアセンブリおよび複数の冷却フィンを用いて強制空気対流によって冷却すること、をさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項26】
前記冷却フィンを円形トレイの下方に配置すること、および、前記ファンアセンブリを前記円形トレイの上方に配置すること、をさらに含む、請求項25記載の装置。
【請求項27】
円形トレイおよび第2の円形トレイのそれぞれにおいて、液体運搬容器を垂直軸に対して半径方向に自動的にまたは手動で装填するための周辺開口部をさらに含む、請求項2記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−510294(P2013−510294A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536779(P2012−536779)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063025
【国際公開番号】WO2011/056165
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】