説明

回転式試験システム

被験体のための回転式試験システムが、回転式試験スタンドを有する。回転式試験スタンドは、被験体に機械的に結合し得る駆動端を有する回転要素を有する。また、回転式試験システムは、回転要素に取り付けられた非独立型のねじりダンパを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動力計は、内燃機関、シャーシ及び駆動系を含む回転機械の性能を測定するために使用し得る。例えば、自動車産業は動力計を使用してトランスミッションを試験する:ここでは、入力動力計が、エンジンによって通常発生するトルクを出力し、出力動力計が、車両によって通常形成される負荷を出力する。典型的なトランスミッション動力計の試験構成では、入力動力計の出力シャフトが、トランスミッションの入力シャフトに結合される。トランスミッションの出力は、シャフトを介して出力動力計に結合される。
【0002】
様々な負荷条件の下で、アイドリングから最大定格スピードまでの範囲の様々な動作スピード及びトルクに対して、動力計試験を実施し得る。
【0003】
低いスピードで動作する大きな動力計は、一般に、より低い固有周波数を有する。大きな動力計は、多くの場合、大きなスピードで動作する場合に、小さな動力計と比較して、より大きなねじり振動及び応力を与える。
【0004】
ねじり振動は、例えば、動力計、トランスミッションのトルクコンバータの付随的な慣性、及び動力計と(例えば)トルクコンバータとを結合するシャフトのバネのうちの1つの慣性によって形成されるバネ質量系の励動による可能性がある。入力動力計と試験片との間の結合はねじり剛性を高め、固有周波数の感受性を高める。このため、トルクの小さな励動が(振動及び周波数成分によって雑音の範囲外と通常考えられるレベルでさえ)、動力計の測定を誤らせるレベルまで、共振によって増幅される可能性がある。
【0005】
柔軟性のある結合を、上述のような入力/出力動力計とトランスミッションとの間で相互結合して、固有周波数振動、及び特に、例えば試験構成の慣性及び軸系を励動する可変周波数駆動から導入される雑音を原因とするねじり振動を減らし得る。しかしながら、柔軟性のある結合は、現状のところいくつかの問題がある。例えば、そのような結合は、動力計とトランスミッションとの間の結合の剛性を減らすため、その系の応答を減らす可能性がある。また、そのような結合は摩耗すると擦り減り、粉塵及び煙を発生させる可能性があり、定期的に交換する必要がある。
【0006】
図1は、トランスミッション試験の入力動力計についての、(140ラジアン/秒のスピードでの)トルク対時間の一例としてのプロットを示す。このような系のピーク間のねじり振動は、約700nmである。このようなねじり振動は、その大きな振幅のため、望ましくない。このようなねじり振動を励動させる範囲外のスピード及びトルクの範囲で動力計を動作させることによって、防止し得る。しかしながら、ある試験の適用では、ねじり振動を発生させそうな範囲での動力計の動作を要する。
【発明の概要】
【0007】
試験対象物のための回転式試験システムが、(i)試験対象物を回転駆動させる、(ii)試験対象物に回転負荷を与えることの少なくとも一方のための回転式試験スタンドを有する。この回転式試験スタンドは、駆動端を有し試験対象物に機械的に結合し得る回転要素を有する。また、この回転式試験システムは、回転要素に取り付けられた非独立型のねじりダンパを有する。
【0008】
本発明の実施例を図示且つ説明したが、これらの実施例は、本発明の全ての可能な形態を図示且つ説明することを意図するものではない。むしろ、明細書中で使用される用語は、限定としてではなく説明のための用語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに様々な変更が可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ツインの動力計システムについての、トルク対時間のプロットの一例である。
【図2】図2は、本発明の実施例に係る回転試験システムの一部の側面図であり、部分的に断面図である。
【図3】図3は、図2の回転試験システムについての、スピード対トルクのプロットの一例である。
【図4】図4は、図2の回転試験システムについての、スピード対トルクのプロットの別の例である。
【図5】図5は、本発明の実施例に係る回転試験システムのシミュレーションされた実施例のトルク出力のプロットの一例である。
【図6】図6は、本発明の別の実施例に係る回転試験システムの一部の側面図であり、部分的に断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、例えば、変速機、シャーシといった試験片12のためのテストスタンド10の実施例を示す。テストスタンド10は、支持脚16に取り付けられた、例えば動力計14を有する。当然ながら、他の回転試験機を使用し得る。動力計14は、ハウジング22の中に配置された電気機械18及びシャフト20を有する。支持脚16は、ベアリング(図示せず)を介してシャフト20を支持する。他の実施例では、動力計14が、機械的に互いに結合されたいくつかのシャフト(図示せず)を有する。
【0011】
電気機械18は、固定子コイル24及び回転子26を有する。固定子コイル24は、ハウジング22に固定して取り付けられる。回転子26は、シャフト20に固定して取り付けられる。このため、シャフト20及び回転子26は一体回転する。他の構成もまた可能である。
【0012】
動力計14は、駆動端28及び非駆動端30を有する。シャフト20は、駆動端28のトルク変換器32を介して試験片に機械的に結合されている。しかしながら、適切な方法を使用して、試験片12及び動力計14を機械的に結合し得る。
【0013】
非独立型ねじりダンパ34、すなわち、試験片12及び動力計14でトルクを伝達することを意図しないねじりダンパ、試験片12及び動力計14間のトルク経路にないねじりダンパが、非駆動端30でシャフト20に機械的に結合/接続されている(さらにいえばシャフト20を囲んでいる)。他の実施例では、非独立型ねじりダンパ34が、シャフト20に沿った任意の位置でシャフト20に機械的に結合/接続されている。
【0014】
非独立型ねじりダンパ34は、ゴム、流体、磁気等の適切なダンピング方法を採用し得る。非独立型ねじりダンパ34は、同調ダンパ又は広域ダンパとし得る。また、非独立型ねじりダンパ34は、アクティブ型ダンパ又はパッシブ型ダンパとし得る。
【0015】
図1の非独立型ねじりダンパ34は、慣性要素35及びコンプライアント部材36を有する。電気機械18の回転慣性である5%乃至10%の慣性を有するよう慣性要素35を選択し得る。このようなダンパの慣性を、ゴム又は粘性流体といったコンプライアント部材36を介してシャフト20に結合し得る。ゴムを使用する場合、共振を減らすようバネ常数が選択されるバネを形成する(一般に、軟らかいゴムは低い周波数の共振を減らし、硬いゴムは高い周波数の共振を減らす)。慣性とバネとは、多くの場合、バネ−質量ダンパと称されるものを形成する。当業者に明らかなように、慣性及びバネの選択を通して非独立型のねじりダンパ34を同調し、共振を減少及び/又は除去し得る。(粘性ダンパは、広域ダンパの1つのタイプである。全ての周波数で共振を減らすのに効果的である。)当然ながら、非独立型ねじりダンパ34を適切な方法で構成及び/又は同調して、所望の性能を実現し得る。
【0016】
非独立型ねじりダンパ34は、動力計14を共振させる励振を吸収することができ、発生する共振を弱めることができる。特定の実施例では、非独立型ねじりダンパ34は、共振の原因となるテストスタンド10へのエネルギ入力を消費するのに十分な大きさのみを必要とする。図1の実施例では、このようなエネルギが電気機械18から発生する。また、このようなエネルギは試験片12から発生する。
【0017】
例えば、可変周波数駆動の電気機械18は、回転の固有周波数に対する強制関数として作用するエネルギを含む高周波歪みを形成する。(回転の固有周波数は、回転機械の特性である。)しかしながら、一般の動力計の構成は、固有周波数以外の周波数での動作を可能とする。例えば、0乃至9000rpmの動力計スピードを達成するために、電気機械18は、0乃至300Hzの周波数を有する出力の正弦波信号を生成する。しかしながら、これらの出力の正弦波信号は、多数のこれらの周波数で低レベルの振幅歪みを有する。これらの歪み周波数の1つが電気機械18の固有周波数と同じ場合、シャフト20及び試験片12が振動し始める。例えば、動力計14及び試験片12は、450Hzの回転の固有周波数を有する。6,750rpmのスピードで動作させるために、225Hzの周波数を有する出力の正弦波を要する。しかしながら、450Hz、900Hz、1800Hz等での微小歪みが発生する可能性がある。これらの歪みに関連するエネルギは、比較的小さいが、電気機械18を共振させるのに十分である。当業者に明らかなように、非独立型のねじりダンパ34が、これらの小さな乱れに抗することで、共振状態を最小化/除去する。
【0018】
図3は、非独立型ねじりダンパ34でない場合の動力計14のスピード及びトルクの例としてのプロットを示す。
【0019】
図4は、非独立型ねじりダンパ34の場合の動力計14のスピード及びトルクの例としてのプロットを示す。図4は、図3と比較して共振によるトルクノイズの顕著な減少(約300%)を示す。
【0020】
図5は、非独立型ねじりダンパ34を取り付けた前後の、シミュレートされた回転試験システム10のトルク出力の例としてのプロットを示す。非独立型ねじりダンパ34を取り付ける前は、ピーク間の振幅は約700nmである。非独立型ねじりダンパ34を取り付けた後は、ピーク間の振幅は約3nmに落ち着く。
【0021】
図6は、テストスタンド110の別の実施例を示す。図1に対して100だけ異なる番号を付けた構成要素は、類似する又は必ずしもではないが同一の、番号付けをした図1の構成要素を示す。
【0022】
テストスタンド110は、動力計114を有する。動力計114は、ハウジング122に設けられた電気機械118及び中空のシャフト120を有する。電気機械118は、固定子コイル124及び回転子126を有する。固定子コイル124は、ハウジング122に固定的に取り付けられている。回転子126は、シャフト120に固定的に取り付けられている。これにより、シャフト120及び回転子126は一体回転する。
【0023】
ねじりダンパ134はシャフト120の中に配置されている。図6のねじりダンパ134は、慣性要素135及び例えば、Oリング、バネ、流体等といったコンプライアント部材136を有する。コンプライアント部材136は慣性要素135を囲んでおり、シャフト120の中でそれを浮かせている。
【0024】
当業者に明らかなように、ねじりダンパ134に対して所望の慣性を与えるよう、慣性要素135を選択し得る。同様に、ねじりダンパ134に対して所望の剛性を与えるように、コンプライアント部材136を選択し得る。一例として、電気機械118の回転慣性の5%乃至10%を有する慣性要素135を選択でき、所望のバネ常数等を有するようコンプライアント部材136を選択し得る。
【0025】
本発明の実施例を図示且つ説明したが、これらの実施例は、本発明の全ての可能な形態を図示且つ説明することを意図するものではない。むしろ、明細書中で使用される用語は、限定としてではなく説明のための用語であり、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに様々な変更が可能であることが理解されよう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験物のための回転式試験システムであって、前記システムが:
(i)前記被験物を回転駆動させること;及び
(ii)前記被験物に回転負荷を与えること;の少なくとも一方のための回転式試験スタンドであって、前記被験物に機械的に結合し得る駆動端を有する回転要素を有する回転式試験スタンドと;
前記回転要素に取り付けられた非独立型ねじりダンパと;
を具えることを特徴とする回転式試験システム。
【請求項2】
前記回転要素が、前記駆動端とは反対側の非駆動端を有しており、
前記ダンパが、前記非駆動端に機械的に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記回転式試験スタンドが、動力計を具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記回転要素が、シャフトを具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記回転要素が、機械的に一体に結合された複数のシャフトを具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記回転要素が、空洞を規定する面を有しており、
前記ダンパが、前記空洞の中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ダンパが、同調ダンパを具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ダンパが、広域スペクトルダンパを具えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ダンパが、前記回転要素の少なくとも一部を囲むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記ダンパが、慣性要素及びコンプライアント部材を有しており、
前記慣性要素が、前記コンプライアント部材に結合されており、
前記コンプライアント部材が、前記回転要素に結合されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
被験物のための回転式試験システムであって、前記システムが:
駆動端及び前記駆動端とは反対側の非駆動端を有する動力計であって、前記駆動端が前記被験物に機械的に結合し得る動力計と;
前記非駆動端に機械的結合された非独立型ねじりダンパと;
を具えることを特徴とする回転式試験システム。
【請求項12】
前記ダンパが、同調ダンパを具えることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ダンパが、広域スペクトルダンパを具えることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記ダンパが、慣性要素及びコンプライアント部材を有することを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
被験物のための回転式試験システムであって、前記システムが:
前記被験物に機械的に結合し得る中空のシャフトを有する動力計と;
前記中空のシャフトの中に配置された非独立型ねじりダンパと;
を具えることを特徴とする回転式試験システム。
【請求項16】
前記ダンパが、広域スペクトルダンパを具えることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記ダンパが、同調ダンパを具えることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記ダンパが、慣性要素及びコンプライアント部材のうちの少なくとも一方を有することを特徴とする請求項15に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−530065(P2011−530065A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521193(P2011−521193)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/051232
【国際公開番号】WO2010/014460
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027758)ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA INSTRUMENTS INCORPORATED
【Fターム(参考)】