説明

回転式電子部品

【課題】回転つまみ(回転体)の軸支をがたつきなく確実に行うことができ、また小型化を図ることもできる回転式電子部品を提供すること。
【解決手段】取付台150と、取付台150上に固定される軸部51と軸部51から半径方向外方に張り出す表示部31とを有する表示部材30と、取付台150と表示部31の間に回転自在に設置される回転つまみ80と、回転つまみ80の回転によって出力信号を変化する検出手段(摺動子120及び摺接パターン137)とを具備する。表示部31の下面に回転つまみ80を回転自在に軸支する回転係合部90(表示部側軸支部33と回転体側軸支部87からなる)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の軸支を確実に行うことができる回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用ナビゲーションシステム,コンピュータ,各種携帯機器,各種OA機器,ゲーム機等を操作するデバイスとして、例えば特許文献1の図1に示す多機能型電子部品(1)がある。この多機能型電子部品(1)は、回転式電子部品の回転つまみ(100)の中央に、押圧式電子部品の押釦つまみ(70)を設置し、さらに回転つまみ(100)の上面を押圧して揺動することで操作する揺動式電子部品を具備して構成されている。この多機能型電子部品(1)によれば、回転式電子部品の機能と押圧式電子部品の機能と揺動式電子部品の機能とを兼ね備えた多機能型電子部品をコンパクトに構成することができる。
【0003】
またこの多機能型電子部品(1)は回転つまみ(100)の内側の表示部材(10)上に指標(15)を形成しているので、この多機能型電子部品(1)を装着する外装ケース(200)に指標を形成する必要はなく、実質的に多機能型電子部品(1)の外径の小型化が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−140689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1に示す従来の多機能型の電子部品は、表示部材(10)の中央に設けた軸部(31)を、回転つまみ(100)の中央に設けた開口(103)に挿入して軸支しているので、軸部(31)の外径寸法(即ち開口(103)の内径寸法)に対して回転つまみ(100)の外周寸法が相対的に大きくなると、前記軸部(31)における回転つまみ(100)の傾き方向への僅かながたつき(傾き)に対して回転つまみ(100)の外周近傍部分における傾き方向(上下方向)へのがたつきが大きくなってしまう恐れがあった。また軸部(31)の外径寸法が小さいと、回転つまみ(100)の外周近傍部分を上下方向にがたつかせた際に開口(103)と軸部(31)間に強い力が働き、回転つまみ(100)の軸支に支障(回転トルクが大きくなる等)が生じる恐れもあった。
【0006】
また表示部材(10)の中央の軸部(31)の部分で回転つまみ(100)を軸支するので、この軸支部分を他の用途に使用することはできず、その分電子部品の小型化が阻害されていた。
【0007】
一方、特許文献1の図1に示すように、表示部材(10)の表示部(11)の下面に設置したクリック板(40)と、クリック板(40)の弾接部(49)が弾接する回転つまみ(100)のクリック係合部(107)とによって構成されるクリック機構を、表示部材(10)及び回転つまみ(100)の外周近傍に設けているので、その外径の小型化が図りにくく、この点からもさらなる外径の小型化の要望に答えることができなかった。
【0008】
また上記特許文献1に示す従来の多機能型の電子部品においては、表示部材(10)の表示部(11)と回転つまみ(100)の間にクリック機構を積層して設置する構成なので、さらなる厚みの薄型化の要望に答えることができなかった。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回転つまみ等の回転体の軸支をがたつきなく確実に行うことができ、また小型化を図ることもできる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、取付台と、前記取付台上に固定される軸部と、軸部から半径方向外方に張り出す表示部とを有する表示部材と、前記取付台と前記表示部材の表示部の間に回転自在に設置される回転体と、前記回転体の回転によって出力信号を変化する検出手段と、を具備する回転式電子部品において、前記表示部材の表示部の下面に、前記回転体を回転自在に軸支する回転係合部を設けたことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転式電子部品において、前記回転係合部は、前記表示部の下面に設けた表示部側軸支部と、前記回転体の上面に設けられ前記表示部側軸支部に回転自在に係合する回転体側軸支部とによって構成されていることを特徴とする回転式電子部品にある。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転式電子部品において、前記回転体は、その上面に前記表示部を収納する表示部収納部を形成するとともに、この表示部収納部を囲む部分につまみ操作部を設けて構成され、さらに前記回転体側軸支部は前記表示部収納部の底面の位置に設けられていることを特徴とする回転式電子部品にある。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転式電子部品において、前記取付台の前記表示部材の軸部を取り付ける周囲であって、前記検出手段を設置した内側の空間に、前記回転体を回転することでクリック感覚を生じさせるクリック機構を設置したことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0014】
本願請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転式電子部品において、前記クリック機構は、前記回転体に取り付けられるクリック板に設けたクリック弾接部を、前記取付台の前記表示部材の軸部を取り付けた周囲を囲む位置に設けたクリック係合部に弾接してクリック感覚を生じさせる構成であることを特徴とする回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、回転体の軸支を、表示部材の表示部の下面に設けた回転係合部において行うので、表示部材の中央に設ける軸部の径よりもその径を容易に大きく構成することができる。これによって回転体の傾き方向(上下方向)へのがたつきをより小さくすることができる。また回転体の外周近傍部分を上下方向にがたつかせようとする力が働いた場合でも回転係合部に印加される力は小さくて済み、回転体のスムーズな回転が維持できる。
また表示部材の軸部の周囲の部分を他の用途(例えばクリック機構を設置する用途等)に利用でき、その分回転式電子部品の小型化が図れる。また表示部材の軸部は回転体を軸支しないので、容易にその外径寸法を小さくでき、この点からも回転式電子部品の小型化が図れる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、表示部側軸支部と回転体側軸支部とによって回転係合部が構成できるので、その構造が簡単になる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、回転体の表示部収納部の底面の位置に回転体側軸支部を設けるので、回転体側軸支部の径を容易に大きく構成することができ、回転体のがたつきを効果的に防止できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、クリック機構を、取付台の表示部材の軸部を取り付ける周囲であって、検出手段を設置した半径方向内側の空間に設置したので、クリック機能付きの回転式電子部品の外径の小型化が図れる。
また請求項4に記載の発明によれば、クリック機構を、検出手段を設置した半径方向内側の空間、即ち検出手段を設置するために必要とされる回転体下側の隙間の半径方向内側の空き空間内に配置できるので、クリック機能付きの回転式電子部品の厚みの薄型化が図れる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、小型化に適した構造のクリック機構が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回転式電子部品1の概略側断面図(図2のA−A断面図)である。
【図2】回転式電子部品1の斜視図である。
【図3】回転式電子部品1の分解斜視図(その上側の部品)である。
【図4】回転式電子部品1の分解斜視図(その下側の部品)である。
【図5】回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(その上側の部品)である。
【図6】回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(その下側の部品)である。
【図7】表示部材30の裏面図である。
【図8】取付台150の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる回転式電子部品1の概略側断面図(図2のA−A断面図)、図2は回転式電子部品1の斜視図、図3は回転式電子部品1の分解斜視図(その上側の部品)、図4は回転式電子部品1の分解斜視図(その下側の部品)、図5は回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(その上側の部品)、図6は回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(その下側の部品)である。なお以下の説明において、「上」とは取付台150から見て表示部材30の方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0022】
これらの図に示すように回転式電子部品1は、支持部材200上に、第2回路基板部135と、取付台150と、第1回路基板部131と、摺動子120及びクリック板110を取り付けた回転体(以下この実施形態では「回転つまみ」という)80と、表示部材30と、押釦つまみ10と、を設置して構成されている。
【0023】
押釦つまみ10は合成樹脂の成形品であり、略円板状の本体部11と、本体部11の下面中央から下方向に向かって突出する柱状の押圧部13とを具備し、本体部11の上面を指などで押圧操作する操作部15とし、さらに押圧部13の先端近傍の外周面からガイド突起17を突設して構成されている。
【0024】
表示部材30は合成樹脂の成形品であり、下記する取付台150上に固定される軸部51と、軸部51の上部において半径方向外方に張り出す略円板状の表示部31とを有して構成されている。ここで図7は表示部材30の裏面図である。
【0025】
表示部31の下面には、2つのリング状の突起が下記する回転つまみ80の回転中心軸を中心とする同心円状に設けられており、内側のリング状の突起が表示部側軸支部33を構成している。表示部31の上面中央には円形に凹むつまみ収納部35が設けられている。つまみ収納部35の内径は、前記押釦つまみ10の本体部11をほぼぴったり収納する寸法に形成されている。表示部31の前記つまみ収納部35を設けたその底面側部分36は、その外周側の底面の部分よりも下方向に突出しており、これによってつまみ収納部35の形成位置が低く(深く)なるようにしている。この底面側部分36の外径寸法は、下記する回転つまみ80の開口部83の内径寸法よりも小さく構成されている。表示部31の表面(上面)には、所望の指標37が設けられている。この実施形態では各指標37は下記する4つの押圧スイッチ147の上部の位置にそれぞれ設けられており、各種操作(回転つまみ80を揺動した際の各種操作)の内容を示している。指標37は印刷(例えばタンポ印刷)によって形成しても良いし、表示部31表面に凹凸等を設けて形成しても良いし、その他の方法によって形成しても良い。
【0026】
軸部51は表示部31の下面中央から下方向に向かって柱状(略柱状)に突出しており、その下端面からは複数(3つ)の取付部53が突出している。各取付部53は横断面円弧状の略平板であり、軸部51中央を貫通する開口55の周囲を囲むように等間隔に設けられている。開口55は軸部51を上下に貫通しており、図7に示すように、円形部分55aの外周から略矩形状のガイド部55bを突出する形状、言い換えれば鍵穴形状に形成されている。
【0027】
回転つまみ80は合成樹脂の成形品であり、略円板状に成形され、その上面に円形凹状の表示部収納部81を設け、その中央に円形の貫通孔からなる開口部83を設け、その下面を取付面85として構成している。表示部収納部81の内径寸法は前記表示部材30の表示部31の外径寸法よりも若干大きく形成され、従って回転つまみ80の外径寸法は表示部31の外径寸法よりも大きくなっている。表示部収納部81の深さ寸法は、前記表示部材30の表示部31の厚み寸法よりも大きく形成されている。表示部収納部81の底面の前記開口部83を囲む位置には一部が切り欠かれたリング状の凸部からなる回転体側軸支部87が形成されている。回転体側軸支部87の内径寸法は、前記表示部材30の表示部側軸支部33の外径寸法とほぼ同一であり、回転体側軸支部87の内側に表示部側軸支部33を回動自在に挿入して回転つまみ80を回転自在に軸支するように形成している。これら表示部側軸支部33と回転体側軸支部87とによって回転係合部90が構成される。開口部83の内径寸法は前記表示部材30の軸部51及び底面側部分36の外径寸法よりも大きく形成され、その内部に前記表示部材30の軸部51及び底面側部分36を挿入できるようにしている。回転つまみ80の表示部収納部81の外側を囲むリング状の部分は、つまみ操作部89となっている。回転つまみ80の取付面85には複数(3つ)の小突起からなる取付部91が形成されており、また取付面85の周囲を囲む位置にはリング状に突出する当接部93が設けられている。また表示部収納部81の底面には、上下に貫通する小孔からなる位置決め孔95が形成されている。位置決め孔95はこの回転つまみ80にクリック板110や摺動子120を自動組み立てによって取り付ける際に組立治具に設けたピンに挿入してその位置決めを行うためのものである。
【0028】
クリック板110は、弾性金属板(例えばステンレス板)をリング状に形成した基部111と、基部111の内側にリング状に配置される一対の半円弧状のアーム部113とを一体に形成して構成されている。アーム部113の中央に形成されている円形の開口部115は、その内径が前記表示部材30の軸部51を挿入できる寸法に形成されている。基部111には前記回転つまみ80の各取付部91を挿入する小孔からなる取付部117が複数(3つ)設けられている。各アーム部113は、それらの根元部分が一対の連結部119によって基部111の内周に連結され、この根元部分においてアーム部113は下方向に傾くように折り曲げられている。両アーム部113のそれぞれ中央位置には下方向に突出するように湾曲するクリック弾接部114が設けられている。このクリック弾接部114はクリック機構を構成している。
【0029】
摺動子120は弾性金属板(例えばリン青銅板)製であり、回転つまみ80よりも小さな外径寸法を有する略円形の平板リング状に形成され、中央に開口部121を設けると共に、等間隔(120°間隔)の3か所の位置に、前記回転つまみ80の各取付部91を挿入する貫通孔からなる取付固定部123を設け、また各取付固定部123の側部から摺接ブラシ125を摺動子120の円形の外形に沿うように設置して構成されている。各組の摺接ブラシ125の先端近傍部分は、接点部127となっている。なお開口部121は前記クリック板110のクリック弾接部114を挿通するクリック弾接部挿通部でもある。摺動子120は検出手段を構成する部品である。
【0030】
取付台150は合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、その外周にはこれを囲むように取付台保持部153が取り付けられている。なお図8は取付台150の平面図である。取付台150の中央には押釦つまみ10の押圧部13を挿通して軸支する押圧部挿通孔155が設けられている。押圧部挿通孔155の形状は、円形部分の外周から矩形状部分を突出する形状、言い換えれば鍵穴形状に形成されており、矩形状部分が突出する方向を前記表示部材30の開口55の同一部分の突出方向と180°逆向きにしている。また押圧部挿通孔155の周囲上面の矩形状部分と180°対向する位置には、前記表示部材30の開口55のガイド部55bに挿入される突起からなるガイド部塞ぎ部157が形成されている。また取付台150上面の押圧部挿通孔155の周囲には、リング状の軸部当接面159が設けられ、さらに軸部当接面159の周囲を囲む位置にはリング状の凹凸からなるクリック係合部161が設けられている。軸部当接面159には、前記表示部材30に設けた各取付部53を挿入する貫通孔からなる被取付部163が形成されている。取付台150の上面の外周近傍部分には、複数(5つ)の小突起からなる基板係止部165が設けられている。また取付台150の下面には円周状に等間隔に複数(4つ)の下方向に向かって突出する柱状の押圧部167が設けられている。クリック係合部161はクリック機構を構成する。
【0031】
取付台保持部153は、取付台150の外周を囲む位置に設置されており、略平板リング状でその全体が上下方向に可撓性を有する厚みに形成されている。取付台保持部153はその1箇所が切り欠かれており、切り欠かれた部分が基板挿通部169となっている。取付台保持部153と取付台150間は、等間隔に配置した複数(4つ)の平板薄板状の連結部171によって連結されており、これら各部分は一体の成形品で構成されている。連結部171も上下方向に可撓性を有している。取付台保持部153の下面には複数(4つ)の固定部173が等間隔に下方向に向かって突設されている。各固定部173は基部173aから基部173aよりも径の小さい取付部173bを突出して構成されている。各固定部173は各連結部171の中間に位置するように設けられている。
【0032】
第1回路基板部131と第2回路基板部135は1枚のフレキシブル回路基板130に形成されている。即ちフレキシブル回路基板130は、可撓性を有する合成樹脂フイルム上に所望の回路パターンを設けて構成されており、この実施形態では合成樹脂フイルムとして熱可塑性のポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いているが、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルムを用いて構成しても良い。フレキシブル回路基板130は摺接パターン137が形成された第1回路基板部131と、中央スイッチ145と押圧スイッチ147とが形成された第2回路基板部135とを、帯状の連結部149によって連結して構成されている。摺接パターン137は検出手段を構成する。
【0033】
第1回路基板部131は略円形の外形を有し、中央に取付台150のクリック係合部161を挿通する円形の開口部133を設け、またその上面の開口部133の周囲に所望の摺接パターン137を設けて構成されている。摺接パターン137は銀などの導電ペーストを印刷するなどして形成されており、図では詳細な記載を省略しているが、この実施形態ではスイッチパターンが形成されている。また第1回路基板部131の外周近傍部分の前記取付台150の各基板係止部165に対向する複数(5か所)の位置には貫通孔又は凹部からなる挿通部139が設けられている。
【0034】
第2回路基板部135はその上面に中央スイッチ145を設置し、中央スイッチ145の周囲の複数の位置(この実施形態では同一円周上の等間隔(90°間隔)の4か所の位置)に押圧スイッチ147を設置して構成されている。中央スイッチ145と押圧スイッチ147は何れも同一構造であり、何れについても第2回路基板部135上に形成した図示しない一対のスイッチ接点上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板(可動接点板)145a,147aを取り付けて構成されており、反転板145a,147aを押圧してこれを反転することでスイッチがオンする構造になっている。また前記取付台150の各固定部173の取付部173bに対向する位置にはそれぞれ貫通孔からなる被取付部148が形成されている。なお摺接パターン137と中央,押圧スイッチ145,147はフレキシブル回路基板130の表裏異なる面に形成されており、連結部149の部分を折り返すことで摺接パターン137と中央,押圧スイッチ145,147がそれぞれ上向きとなるようにしている。
【0035】
支持部材200は硬質板(この実施形態では金属板(例えばステンレス板))によって構成されており、前記取付台150の各固定部173の取付部173bに対向する位置にそれぞれ貫通孔からなる被取付部201が形成されている。
【0036】
次に回転式電子部品1の組み立て方法を説明する。まず予め、回転つまみ80の取付面85にクリック板110と摺動子120とを重ねて載置する。このとき回転つまみ80の各取付部91をクリック板110の各取付部117と摺動子120の各取付固定部123に挿入し、各取付部91の先端を熱かしめすることで、クリック板110と摺動子120を回転つまみ80に取り付ける。一方第1回路基板部131を取付台150上に載置し、その際取付台150の各基板係止部165を第1回路基板部131の各挿通部139に挿入し、その先端を熱かしめすることで取付台本体151上に第1回路基板部131を取り付ける。なおこのときフレキシブル回路基板130の連結部149は取付台150に設けた基板挿通部169を挿通することで、取付台150と取付台保持部153の間の隙間に挿入しておく。
【0037】
次に表示部材30のつまみ収納部35内に押釦つまみ10を挿入し、その際押釦つまみ10の押圧部13を表示部材30の開口55に挿入する。このとき押釦つまみ10のガイド突起17を開口55のガイド部55bに挿入し、ガイド部55bの下面側に突出したガイド突起17を180°回転しておく。図3,図5には、押釦つまみ10を180°回転した後の状態を示しているので、ガイド突起17とガイド部55bの方向が180°異なっている。
【0038】
次に上記押釦つまみ10を装着した表示部材30を、上記クリック板110と摺動子120を取り付けた回転つまみ80の表示部収納部81内に挿入し、その際表示部材30の軸部51を回転つまみ80の開口部83及びクリック板110の開口部115及び摺動子120の開口部121に挿通する。
【0039】
次に上記各部品を搭載した回転つまみ80を、上記取付台150上に取り付けた第1回路基板部131上に載置し、その際表示部材30の軸部51を取付台150のクリック係合部161の内側に挿入し、その下面を軸部当接面159上に載置する。このとき軸部51下面の各取付部53を取付台150の各被取付部163に挿入し、その先端を取付台150の下面において熱かしめする。
【0040】
取付台150上に表示部材30を載置した際、図7に点線で示すように、取付台150のガイド部塞ぎ部157が表示部材30の開口55のガイド部55bに挿入されてこれを塞ぎ、開口55は円形部分55aのみとなって押釦つまみ10の押圧部13が確実にガイドされる。
【0041】
そしてこの取付台150を、支持部材200上に載置した第2回路基板部135上に載置し、その際取付台150の各固定部173の取付部173bを第2回路基板部135の被取付部148と支持部材200の被取付部201に挿入し、その先端を支持部材200の下面で熱かしめする。これによって回転式電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0042】
以上のように構成された回転式電子部品1において、回転つまみ80を回転すると、回転つまみ80に取り付けた摺動子120が回転つまみ80と一体に回転し、その接点部127が摺接パターン137上を摺動することで摺接パターン137からの検出出力が変化する。同時に回転つまみ80と一体にクリック板110が回転してそのクリック弾接部114が取付台150のクリック係合部161の凹凸を乗り越えてゆき、クリック感覚が生じる。ところでクリック弾接部114がクリック係合部161の凸の部分に乗り上げる際、回転つまみ80の開口部83にクリック板110のアーム部113が面しているので、乗り上げて上昇した弾接部114及びアーム部113は回転つまみ80の開口部83内に入り込む。つまり別途弾接部114とアーム部113が上下動するスペースを回転つまみ80と取付台150の間に設ける必要がなく、この点からも回転式電子部品1の薄型化が図れる。
【0043】
次に押釦つまみ10の操作部15を押圧すれば、押釦つまみ10が下降してその押圧部13が中央スイッチ145の反転板145aを押圧して反転し、中央スイッチ145がオンする。押釦つまみ10への押圧を解除すれば反転板145aの弾性復帰力によって押釦つまみ10は元の位置にもどり、中央スイッチ145はオフする。
【0044】
また回転つまみ80のつまみ操作部89の前記各指標37の何れかに対応する上面部分(その指標37の半径方向外側の上面部分)を下方向に向けて押圧すれば、回転つまみ80や表示部材30や押釦つまみ10など、取付台150上に設置されている各構成部品全体が取付台150と一体に押圧された方向に傾いて揺動し、下降した側の押圧部167が対向する押圧スイッチ147の反転板147aを押圧して反転し、押圧スイッチ147がオンする。取付台150は、連結部171及び取付台保持部153が撓むことで傾く。回転つまみ80への押圧を解除すれば、撓んだ連結部171及び取付台保持部153の元の形状への弾性復帰力と、反転している反転板147aの弾性復帰力とによって、回転つまみ80及び取付台150などの揺動していた全構成部品が一体に元の位置に自動復帰し、押圧スイッチ147はオフする。
【0045】
以上説明したように、回転式電子部品1は、取付台150と、取付台150上に固定される軸部51及びこの軸部51から半径方向外方に張り出す表示部31を有する表示部材30と、取付台150と表示部材30の表示部31の間に回転自在に設置される回転つまみ80と、回転つまみ80の回転によって出力信号を変化する摺動子120及び摺接パターン137からなる検出手段と、を具備し、表示部材30の表示部31の下面に回転つまみ80を回転自在に軸支する回転係合部90を設けることで構成されている。
【0046】
このようにこの回転式電子部品1によれば、回転つまみ80の軸支を、表示部材30の表示部31の下面に設けた回転係合部90において行うので、表示部材30の中央に設ける軸部51の径よりもその径を容易に大きく構成することができる。これによって回転つまみ80の傾き方向(上下方向、図1の矢印B方向)へのがたつきをより小さくすることができる。また回転つまみ80の外周近傍部分を上下方向(矢印B方向)にがたつかせようとする力が働いた場合でも回転係合部90に印加される力は小さくて済み、回転つまみ80のスムーズな回転が維持できる。また表示部材30の軸部51の周囲の部分を他の用途(この実施形態ではクリック機構を設置する用途)に利用でき、その分回転式電子部品1の小型化が図れる。また表示部材30の軸部51は回転つまみ80を軸支しないので、容易にその外径寸法を小さくでき、この点からも回転式電子部品1の小型化が図れる。
【0047】
この実施形態においては、回転係合部90を、表示部31の下面に設けた表示部側軸支部33と回転つまみ80の上面に設けられ表示部側軸支部33に回転自在に係合する回転体側軸支部87とによって構成しているので、その構造が簡単で回転係合部90を容易に構成することができる。
【0048】
またこの実施形態においては、回転つまみ80の表示部収納部81の底面の位置に回転体側軸支部87を設けたので、回転体側軸支部87の径を容易に大きく構成することができ、回転つまみ80のがたつきを効果的に防止することができる。
【0049】
また表示部材30の軸部51を挿通させるために設ける回転つまみ80の開口部83は、この開口部83において回転つまみ80を軸支する必要がないので容易に大きく構成でき、その内部に表示部材30のつまみ収納部35の底面側部分36を挿入でき、これによって回転式電子部品1の厚みの薄型化が図れる。
【0050】
またこの実施形態においては、取付台150の表示部材30の軸部51を取り付ける周囲であって、検出手段を設置した半径方向内側の空間(検出手段を設置するために必要とされる回転体下側の隙間の半径方向内側の空き空間)に、回転つまみ80を回転することでクリック感覚を生じさせるクリック板110のクリック弾接部114及びクリック係合部161からなるクリック機構を設置している。このようにクリック機構を前記検出手段よりも半径方向内側の空き空間に設置したので、表示部材30の表示部31の外周近傍部分などにクリック機構を設置する必要がなく、回転式電子部品1の外径の小型化が図れる。またクリック機構を、検出手段を設置するために必要とされる回転つまみ80下側の隙間の半径方向内側の空き空間内に配置できるので、回転式電子部品1の厚みの薄型化も図れる。
【0051】
クリック機構の構成をもう少し詳しく説明すると、回転つまみ80に取り付けられるクリック板110に設けたクリック弾接部114を、取付台150の表示部材30の軸部51を取り付けた周囲を囲む位置に設けたクリック係合部161に弾接させてクリック感覚を生じさせるように構成している。このようにクリック機構を構成することで、小型化に適した構造のクリック機構が構成できる。
【0052】
またこの実施形態の場合、取付台150の外周を囲む位置に可撓性を有する取付台保持部153を設け、この取付台保持部153と取付台150間を連結部171で連結し、取付台150の下側に設置した支持部材200に対して取付台保持部153に設けた固定部173を固定することで、取付台保持部153を可撓性を有する状態で支持部材200に取り付けので、回転式電子部品と揺動式電子部品の機能を一体化した多機能型の電子部品において、別途取付台150を揺動自在に保持する部品を増やすことなく、取付台150に設けた取付台保持部153によって取付台150をガタツキなく自動復帰力を有する状態で揺動自在に保持でき、部品点数の削減化が図れ、組立工程も減少してコストダウンが図れ、また外径寸法の小型化が図れる。
【0053】
またこの回転式電子部品1によれば、本体部11の下面から押圧部13を突出してなる押釦つまみ10を具備し、この押釦つまみ10の押圧部13を、表示部材30の軸部51の中央と、取付台150のクリック係合部161の中央とに上下動自在に貫通させ、さらにその下端を支持部材200上に設置した中央スイッチ145上に配置したので、回転式電子部品と揺動式電子部品と押圧式電子部品の機能を一体化した多機能型の電子部品を容易に構成することができる。
【0054】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば回転係合部90は必ずしもリング状の突起からなる表示部側軸支部33と回転体側軸支部87とによって構成する必要はなく、一方を凹部で構成したり、またリング形状以外の各種形状によって構成しても良い等、種々の変形が可能である。要は回転係合部90は表示部材30の表示部31の下面において回転つまみ80を回転自在に軸支する構成であればどのような構造であってもよい。
【0055】
またクリック機構の構造は上記実施形態の構造に限定されず種々の変形が可能であり、要は取付台150の表示部材30の軸部51を取り付ける周囲であって、検出手段を設置した内側の空間において、回転つまみ80を回転することでクリック感覚を生じさせる構成であれば、どのような構成であっても良い。
【0056】
また表示部材30の表示部31に設ける指標37の形状や位置や数、押圧スイッチ147の設置位置や数などは種々の変更が可能である。また指標37は表示部材30を透明にするなどして表示部31の下面または内部に設けても良い。また上記実施形態では指標37を設けた位置と回転つまみ80を押圧して揺動させる位置とを一致させているが、必ずしも一致させなくても良い。また上記実施形態では摺動子120と摺接パターン137とによって検出手段を構成したが、検出手段は回転つまみ80の回転によってその検出出力が変化する構成であれば他の構成であっても良い。検出手段による検出出力は電気的出力に限られず、磁気的出力や光学的出力などであっても良い。
【0057】
また場合によっては、中央の押釦つまみ10と押釦つまみ10によって押圧操作される中央スイッチ145、すなわち押圧式電子部品の部分を省略しても良い。同様に場合によっては、支持部材200と第2回路基板部135と取付台保持部153及び連結部171、すなわち揺動式電子部品の部分を省略しても良い。また上記実施形態では回転つまみ80のみによって回転体を構成したが、例えば摺動子120を取り付ける回転体と、つまみ操作部89を有するつまみ部分とを別部品で構成しても良いなど、その構造には種々の変更が可能である。また取付台保持部153は可撓性のない剛体で構成しても良い。その場合でも連結部171に可撓性があれば取付台150は揺動可能となる。さらに取付台150と取付台保持部153間を一体に連結する連結部171を省略し、その代わりに例えば別途可撓性を有するフイルム状部材(合成樹脂フイルム等)を用意し、このフイルム状部材によって取付台150と取付台保持部153間を連結するなどしても良い。
【0058】
また上記実施形態では、第1回路基板部131と第2回路基板部135を連結部149によって一体に連結しているが、第1回路基板部131と第2回路基板部135とを別個の回路基板として構成しても良い。その場合、第1回路基板部131と第2回路基板部135の少なくとも何れかを硬質の回路基板で構成することもできる。
【0059】
また上記実施形態では、中央スイッチ145や押圧スイッチ147を1枚の合成樹脂フイルム上に形成した接点パターン上に反転板を取り付けることで構成しているが、これらのスイッチは2枚の合成樹脂フイルム(一方は硬質の合成樹脂板でも良い)を重ね合わせて両合成樹脂フイルムにそれぞれ設けた一対の接点パターンを隙間を介して対向させ、一方の合成樹脂フイルムに設けた接点パターンの裏面側に反転板を設置すること(場合によっては反転板は不要)で構成されるいわゆるメンブレンスイッチで構成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1 回転式電子部品
10 押釦つまみ
13 押圧部
30 表示部材
31 表示部
33 表示部側軸支部(回転係合部)
51 軸部
55 開口
80 回転つまみ(回転体)
81 表示部収納部
87 回転体側軸支部(回転係合部)
89 つまみ操作部
90 回転係合部
110 クリック板
114 クリック弾接部(クリック機構)
120 摺動子(検出手段)
130 フレキシブル回路基板
131 第1回路基板部
135 第2回路基板部
137 摺接パターン(検出手段)
145 中央スイッチ
147 押圧スイッチ
150 取付台
153 取付台保持部
155 押圧部挿通孔
161 クリック係合部(クリック機構)
171 連結部
173 固定部
200 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付台と、
前記取付台上に固定される軸部と、軸部から半径方向外方に張り出す表示部とを有する表示部材と、
前記取付台と前記表示部材の表示部の間に回転自在に設置される回転体と、
前記回転体の回転によって出力信号を変化する検出手段と、を具備する回転式電子部品において、
前記表示部材の表示部の下面に、前記回転体を回転自在に軸支する回転係合部を設けたことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品において、
前記回転係合部は、前記表示部の下面に設けた表示部側軸支部と、前記回転体の上面に設けられ前記表示部側軸支部に回転自在に係合する回転体側軸支部とによって構成されていることを特徴とする回転式電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の回転式電子部品において、
前記回転体は、その上面に前記表示部を収納する表示部収納部を形成するとともに、この表示部収納部を囲む部分につまみ操作部を設けて構成され、さらに前記回転体側軸支部は前記表示部収納部の底面の位置に設けられていることを特徴とする回転式電子部品。
【請求項4】
請求項3に記載の回転式電子部品において、
前記取付台の前記表示部材の軸部を取り付ける周囲であって、前記検出手段を設置した内側の空間に、前記回転体を回転することでクリック感覚を生じさせるクリック機構を設置したことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の回転式電子部品において、
前記クリック機構は、前記回転体に取り付けられるクリック板に設けたクリック弾接部を、前記取付台の前記表示部材の軸部を取り付けた周囲を囲む位置に設けたクリック係合部に弾接してクリック感覚を生じさせる構成であることを特徴とする回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−204067(P2012−204067A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66016(P2011−66016)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】