説明

回転棚装置

【課題】棚の回転によって棚正面側の物品が入れ替わるようにし、物品の入れ替え作業や並べ替え作業の軽減を図る。
【解決手段】固定棚2と固定棚2の上面側に配置された可動棚3とを備え、可動棚3を、固定棚2の手前に引き出し可能に支持された支持板4とこの支持板4上で回転軸方向を上下にして回転可能に支持されて対向二辺を製品出し入れ部位14とする回転板5とから構成し、回転板固定手段17で、回転する回転板5の製品出し入れ部位14が正面に位置したときに回転板5を回転可能に仮固定する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は各種収納スペースで利用できる回転棚装置、例えば、一般家庭における家具や什器、そして、量販店やスーパーマーケットなどの店舗で用いられる商品棚、ショールーム、展示会などで用いられる収納・展示器具に利用できる回転棚装置に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】近年、商環境において店舗の在り方、運営などが多様化してきており、その一つとして店舗の営業時間を長くして昼夜途切れることなく営業することが行われている、そして、このような営業時間の長い店舗では、一日の朝、昼、夕方、夜などで来店する客層が変化していることから、商品陳列に対しても多様化が要求され、一日を時間帯で分けて陳列商品を時間帯ごとに変える店舗が多くなってきている。
【0003】ところで、上述の営業形態を行なう店舗では従業員が手作業にて商品の入れ替えを行なっているが、従業員として女性や高齢者が従業員として従事する機会が多くなってきている現状において、商品を頻繁に並べ替える作業は従業員に身体的負担を過大に負わせることになり易い。さらに、このような商品陳列を行なって対面販売する業界では各種作業の効率化が目指されているが、商品の並べ替えに要する時間、労働力、費用が多大であることが問題とされている。具体的には、時間帯別、来客層別に商品の入れ替えを行なうにも、陳列されていた商品を陳列棚から取り出して別の場所に移し、陳列棚の開いたスペースに別の商品を陳列棚に並べるようにしている。さらに、陳列されている商品を補充する場合にも棚の奥にある商品を手前に引き出し、空いた奥のスペースに補充商品を並べる作業をしており、商品の並べ替えにおいて手作業が多くなり、効率よく商品の並べ替えが行なえない。
【0004】また、棚の奥に置かれた物品を手前へと引き出す作業が煩雑なものとなっている点は上述した各種商業界の店舗に限られたものではない。すなわち、一般の家庭においても経験することであって、例えば、書籍を本棚に前後二重にして並べた場合、奥に並べたものは取り出し難い。このように各種家具に書籍、衣類、食器などを収納した場合、奥に入れた物品は取り出し難くなっており、季節物別や用途別で収納家具や什器を確保する必要がある。そこで、本発明は上記事情に鑑み、棚の回転によって取り出し側の物品が入れ替わるようにすることを課題とし、物品の入れ替え作業や並べ替え作業の軽減を図るようにすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を考慮してなされたもので、固定棚とこの固定棚の上面側に配置された可動棚とを備え、前記可動棚は、前記固定棚にスライド手段を介して固定棚の手前に引き出し可能に支持された支持板とこの支持板に回転手段を介して該支持板上で回転可能に支持され、対向二辺を製品出し入れ部位とする回転板とからなり、回転する回転板の前記製品出し入れ部位が正面に位置したときに回転板を回転可能に仮固定する回転板固定手段を有することを特徴とする回転棚装置を考慮して、上記課題を解消するものである。そして、本発明において、前記支持板の前部に、表裏に製品情報表示板の取付部を有するプレートが回転可能に設けられ、回転する前記プレートの取付部が正面に位置したときに該プレートを回転可能に仮固定するプレート固定手段を有することが良好である。さらに、前記支持板が固定棚上の待機場所に位置したときに該支持板を固定棚の手前へ移動可能に仮固定する支持板固定手段を有することが良好である。
【0006】
【発明の実施の形態】つぎに本発明を図1から図5に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は図1の陳列棚Aとして組み入れられた形態で利用される回転棚装置であり、該回転棚装置1は図2に示されているように、固定棚2と可動棚3とからなるものであり、固定棚2は壁や棚フレームなどに取り付けられて前縁(図面上、手前)を客に面する側とし、後縁を前記壁や棚フレームなどに対応位置させている。なお、本実施の例では前記固定棚2の壁や棚フレームに対する取り付け方法が特に限定されるものではなく、公知の取付手法を採用できる。
【0007】図3に示すように上記可動棚3は固定棚2の上面側に一対にして配置されていて、この二つの可動棚3が固定棚2の間口方向に沿って並べられている。なお、以下の説明において一方の可動棚3を示しながら説明をするが、この二つの可動棚3それぞれは同じ構造を有するものである。図4に本発明の回転棚装置1の分解図を示す。上記可動棚3は支持板4と回転板5とが上下に重ねられた構造を有していて、支持板4の上に回転板5が配置されている。そして、上記固定棚2の上面に平行な二条の取付ブラケット6の内側面それぞれに位置するスライドレール7に前記支持板4の両側に位置するスライダー8がスライド可能に挿入されており、このスライドレール7と前記スライダー8とからスライド手段9が構成され、このスライド手段9を介して、前記固定棚2に対してこの固定棚2の手前に支持板4が引き出し可能に支持されており、支持板4全体が固定棚2の上面から手前へと移動したときに図示しないストッパーによって最大引き出し長が設定され、支持板4が前方へ抜け出ないように設けられている。
【0008】また、上記支持板4の後端側には図示されているようにキャッチャー10が位置しているとともに、この支持板4が固定棚2の最奥部として設定されている待機位置にあるときに前記キャッチャー10に対応する位置にこのキャッチャー10に係脱可能に係止する突起体11が設けられていて、このキャッチャー10と突起体11とで支持板4を待機位置で前方への引き出しによる移動を可能にした状態で仮固定する支持板固定手段12が設けられている。このように支持板4と固定棚2との間では上記スライド手段9によって支持板4が前方へと引き出すことができ、また、前記支持板固定手段12により固定棚2の奥位置に設定された待機位置に支持板4が仮固定できる状態とされていることから、可動棚3全体は固定棚2の手前へと引き出すことができ、また、奥位置の待機位置で可動棚3を静置させておくことができるようにしている。
【0009】上記支持板4の上面には図示されているように環状ベアリングからなり回転軸方向を上下方向とした回転手段13が設けられていて、この回転手段13における上環体に上記回転板5がビス止めなどにより固定されている。これによって回転板5は平面方向に回転させることが可能であって、この回転板5の回転操作によって後述するように可動棚3に物品を載置した状態で回転させることができる。なお、回転板5の回転操作は上記支持板4を固定棚2の上面から手前に引き出した状態のときに行なう。
【0010】上記回転板5は図示されているように対向する一組の辺を長くして平面形状(上方から見た形状)を略長方形とした浅いトレイ形状のものであり、長辺である対向二辺それぞれを製品出し入れ部位14としているとともに、短辺であるもう一組の対向二辺それぞれに沿ってサイドステー15が取り付けられている。前記サイドステー15は待機位置にある可動棚3の上に載置された物品がこの回転棚装置1の間口方向にズレて隣りの可動棚3側に移動しないようにするものである。また、前記製品出し入れ部位14である長辺それぞれには前記サイドステー15は設けられていないが、必要に応じて商品止めとなる透明プレートなどを取り付けるようにしてもよい。
【0011】また、回転板5の上面は上記サイドステー15の間に亘る仕切り板16によって一方の製品出し入れ部位14側と他方の製品出し入れ部位14側とに分けられている。このように回転板5の上面が仕切り板16によって分けられるとともに、この可動板5が回転手段13にて回転可能に支持されていることから、回転板5の上面において前記仕切り板16で仕切られた一方の載置面5aに置く物品と他方の載置面5bに置く物品とを種別分けした状態とすれば、回転板5を回転させることで回転棚装置1の正面側に位置させる製品の入れ替えが簡単に行なえる。例えば、コンビニエンスストアなどにおいて、午前の来店者向けとしての商品と午後の来店者向けの商品とを入れ替えて陳列する営業形態を採用する場合、可動棚3の一方の載置面5aに午前用の商品を載置し、他方の載置面5bに午後用の商品を載置しておき、必要時に可動棚3を引き出してから回転板5を半回転(180°)させ、その状態で可動棚3を再び固定棚2の上面側に戻して支持板4を上記支持板固定手段12に仮固定させることで、可動棚3の引き出し前の商品とは異なる商品を回転棚装置1の前面側に簡単に配置させることができる。また、上記可動棚3の奥側に位置している製品を取り出すような場合にあっても、可動棚3を引き出してから回転板5を支持板4の上で半回転させれば、所望の製品が手前に位置することとなり、奥に位置していた製品の取り出しが簡単に行なえるようになる。なお、上記仕切り板16は回転板5の中央位置に固定されるものではなく、上記両サイドステー15と回転板5に設けた取付孔16aに着脱自在にして取り付けられる。そして、上記両サイドステー15と回転板5の取付孔16aは、仕切り板16を短辺に沿った方向に位置替えできるようにその短辺方向に沿った状態にして複数ずつ設けられている。
【0012】この回転棚装置1では可動棚3の回転板5における長辺が間口方向と平行となっているとき、即ち、手前側に位置している製品出し入れ部位14が間口方向と平行となっているときにこの回転板5の無用の回転が生じないように工夫が施されていて、回転板固定手段17によりこの回転板5の無用の回転を抑えている。前記回転板固定手段17は、支持板4の回転手段13の内側に取付けられた突起体18と、回転板5の製品出し入れ部位14が正面に位置したときに前記突起体18と対応する位置に設けられた二つの係止孔19とからなるものであり、前記二つの係止孔19にあっては回転中心を間にして対称位置に配置されている。この回転板固定手段17の構成によって、回転板5が回転して一方の製品出し入れ部位14が正面に位置したときに一つの係止孔19に突起体18が係脱可能に係止し、回転板5を回転可能にした状態で仮固定する。そして、可動棚3が固定棚2の前方へ引き出されているときに前記回転板5を持って回転操作すれば、係止孔19と突起体18との係合関係が切れて回転板5が自由に回転できるようになり、前述の状態から半回転させた時点でもう一方の係止孔19に前記突起体18が係止して、手前へ回転移動してきたもう一方の製品出し入れ部位14を間口方向と平行にした状態で回転板5の回転を止め、そのまま可動棚3を待機位置へと戻すことで、隣りに位置している可動棚3側に接触することなく、また、回転板5に無用な回転を起こさせることなく安定した状態で、かつ簡単に待機位置へと戻すことができるようにしている。ここで、この回転板固定手段17において突起体18を一つとしたが、二つの係止孔19に対応して二つの突起体を配置するようにしてもよい。
【0013】この回転棚装置1においては上述したように可動棚3における回転板5の回転によって手前に位置する製品が入れ替わるようになるが、その入れ替えられた製品の情報(品名、価格など)を簡単に切替え表示できるように、図5に示すように支持板4の前部に、製品情報表示板20を着脱可能に取り付けることのできる取付部21を表裏に有するプレート22が配置されていて、このプレート22は回転軸方向を支持板4の前部長手方向(回転棚装置の間口方向)にして回転可能に設けられており、プレート22を回転させることで表裏の取付部21に取り付けられた商品情報表示板20を正面に向けさせることができるようにしている。そして、プレート22を回転させて取付部21が正面に位置したときに該プレート22を回転可能に仮固定するプレート固定手段23が、前記プレート22の両端面、或いは片端面に突設されて回転中心を間にして対向配置された一対の凸部24と、この凸部24が位置するプレート22の端面に対応するプレート取付部位の内側面を凹陥させて凸部24が係脱可能に係合する凹部25とから構成されていて、製品情報表示板20を選択して正面に向けさせたプレート22が不用意に回転しないようにしている。尚、プレート22の回転を規制する凸部24と凹部25の構成は、回転板固定手段17における突起体18と係止孔19の構成と同じであっても構わない。
【0014】上記実施の形態は本発明の回転棚装置を陳列棚A中に組み入れるものとして構成した例を示しているが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、一般家庭での本棚や各種収納家具の棚部分、そして、冷蔵庫の庫内仕切り棚などに対しても採用することが可能であるとともに、一般事務フロアで利用される各種キャビネットなどの什器の棚部分に対しても構成することができる。さらに、展示会などでの商品展示棚にも構成することが可能である。さらに上記スライド手段9や回転手段13にあっては、作業員が手操作する際に抵抗を生じないものであることが良好であり、さらにこの作業員の手操作に対して低抵抗であって、かつ、地震時に加わる加速度に匹敵するような外力に対しては大きな抵抗を示す機構を組み入れるようにしてもよい。
【0015】
【発明の効果】以上説明したように本発明の回転棚装置によれば、固定棚とこの固定棚の上面側に配置された可動棚とを備え、前記可動棚は、前記固定棚にスライド手段を介して固定棚の手前に引き出し可能に支持された支持板とこの支持板に回転手段を介して該支持板上で回転可能に支持され、対向二辺を製品出し入れ部位とする回転板とからなり、回転する回転板の前記製品出し入れ部位が正面に位置したときに回転板を回転可能に仮固定する回転板固定手段を有することを特徴とするものであり、固定棚から可動棚を手前に引き出してからこの可動棚を半回転させるという操作で可動棚自体の向きが180度変わり、可動棚の奥側にあった物品を手前側へと簡単に位置替えできるようになる。これによって、従来のコンビニエンスストアなどで行なわれていた商品の並べ替えに際しても予め奥側となる部分にも次の並べ替えに応じた商品を配置しておけばよく、手間を掛けることなく商品の並べ替えを行なうことができ、商品棚とは別位置に保管用の収納スペースを確保しておく必要もなくなる。さらに、可動棚からの物品の取り出しに際しても可動棚を手前に引き出してから回転させることで、奥側に配列されていた物品を手前側から簡単に取り出すことができるようになり、奥側に物品を並べる場合でも一旦手前側で並べ置いてから可動棚の回転で奥側へと移動させることができ、物品の取り出しが容易で、かつ棚の奥行きスペースを有効に利用できるなど、実用性に優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転棚装置を陳列棚として組み入れた形態を示す説明図である。
【図2】可動棚を手前へ引き出した状態を示す説明図である。
【図3】本発明に係る回転棚装置の実施の形態を示す説明図である。
【図4】実施の形態を分解状態で示す説明図である。
【図5】プレートを示す説明図である。
【符号の説明】
1…回転棚装置
2…固定棚
3…可動棚
4…支持板
5…回転板
9…スライド手段
10…キャッチャー
11…突起体
12…支持板固定手段
13…回転手段
14…製品出し入れ部位
17…回転板固定手段
18…突起体
19…係止孔
22…プレート
23…プレート固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】固定棚とこの固定棚の上面側に配置された可動棚とを備え、前記可動棚は、前記固定棚にスライド手段を介して固定棚の手前に引き出し可能に支持された支持板とこの支持板に回転手段を介して該支持板上で回転可能に支持され、対向二辺を製品出し入れ部位とする回転板とからなり、回転する回転板の前記製品出し入れ部位が正面に位置したときに回転板を回転可能に仮固定する回転板固定手段を有することを特徴とする回転棚装置。
【請求項2】前記支持板の前部に、表裏に製品情報表示板の取付部を有するプレートが回転可能に設けられ、回転する前記プレートの取付部が正面に位置したときに該プレートを回転可能に仮固定するプレート固定手段を有する請求項1に記載の回転棚装置。
【請求項3】前記支持板が固定棚上の待機場所に位置したときに該支持板を固定棚の手前へ移動可能に仮固定する支持板固定手段を有する請求項1または2に記載の回転棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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