説明

回転機ギャップ計測装置

【課題】画像処理により直接的にギャップを計測し、また、異常を検出した場合の保守作業員の目視による確認作業の手間を省くことを可能とする。
【解決手段】カメラ1で、照明器具2により照らされた回転機のギャップ14を撮影し、撮影した画像データは画像伝送器4によって電気信号から光信号に変換され、光ケーブル8を通り情報装置盤6内の画像伝送器5に送信される。送信された光信号は、画像伝送器5において電気信号に再び変換され、画像伝送器5から画像解析装置7に送信される。画像解析装置7では画像伝送器5から送信されてきた画像データを基にギャップ14の計測を行い、計測した情報はネットワーク13a経由で遠隔地にある監視装置13bへ送信される。これによって、監視装置13bにより確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理により回転機の固定子と回転子の隙間であるギャップを計測する装置に関するものであり、特に風力発電機として使用する回転機のギャップを計測する、回転機ギャップ計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電機として使用する回転機は、風力を動力源として発電する装置である。回転機は固定子と回転子から成り、風車が風を受けることによって回転子が回転し、電気を起こす。
【0003】
固定子と回転子の隙間であるギャップは数ミリ程度の幅があり、何らかの異常により固定子と回転子が接触すると大きな事故となる。このため、風力発電機の安全運用には、安全性を確保できる最低限のギャップ幅を基準とし、常時ギャップをこの基準値以上に保たなければならない。
【0004】
しかしながら、風力発電機として使用する回転機は、高さ数十メートルの塔の上に設置するため、軽量に作られている反面、剛性に若干乏しく歪み易い。また、回転軸の風車側のみを軸受けで固定する片持ち梁の構造を持つものが多く、風車に当たる風の力により軸がぶれ易い。そのため、回転機のギャップを計測する装置を設けることが必要である。
【0005】
風力発電機に限らず、一般的な回転機のギャップを計測する装置として、ギャップ自体を直接的に計測するものではないが、回転子の軸位置を計測することでギャップを計測することに代える装置が提案されている。
【0006】
例えば、水力発電所の立軸回転機の軸系異常を検出するため、回転軸の位置をギャップセンサにより計測し、軸心位置の異常を検出する装置がある(特許文献1参照)。
【0007】
また、回転機の回転軸に磁気物質を設置し、磁気センサにて検知することで軸揺れ量を検出する装置もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−60544号公報
【特許文献2】特開平8−254402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述のような装置では、回転機の回転軸の位置を計測することでギャップの状態を推定することはできるが、直接的にギャップを計測することはできない。
【0010】
そのため、上述のような装置を風力発電機に用いると、ギャップの異常を検出した場合、保守作業員は現地まで行き、高さ数十メートルの塔の上に登り、ギャップの状態を目視で確認する必要があり、非常に手間がかかる。
【0011】
さらに、風力発電機は通常、遮蔽物の無い広い場所に設営されている。このため、風力発電機の回転機が収納されている機械室は、直射日光を常時受ける状況にあり、ナセル内部は高温多湿となる。
【0012】
本発明の目的は、上述の問題を解決するため、画像処理により直接的にギャップを計測し、また、異常を検出した場合は、異常箇所の画像及びデータを遠隔地に送信することで、保守作業員の目視による確認作業の手間を省くことを可能とし、さらに、風力発電機ナセル内の高温多湿に耐え得る構成にした、回転機ギャップ計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する第1の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
回転機の固定子と回転子のギャップ周辺を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像を入力画像として入力し、当該入力画像から、実際のギャップ幅である実寸ギャップ幅を計測し、異常の有無を判断する画像解析装置と、
前記実寸ギャップ幅、異常の有無及び前記入力画像をギャップ計測情報として送信するネットワークとを備えることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第2の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
上記第1の発明に係る回転機ギャップ計測装置において、
前記回転機を収納する機械室内に複数箇所設置され、前記カメラ及び前記カメラの撮影箇所を照らす照明手段を内部に設ける、密閉構造且つ冷却機能を備えた撮影装置ボックスと、
前記機械室の外に設置され、光ケーブルによって前記カメラと接続された前記画像解析装置を収納する、情報装置盤と、
前記ネットワークにより送信された前記ギャップ計測情報を遠隔地にて受信する監視装置とを備えることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第3の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
上記第1または2の発明に係る回転機ギャップ計測装置において、
前記カメラは、
光軸を通る画像の横軸方向が前記回転子の回転軸からの放射線上になるような角度に前記機械室内に複数箇所設置され、
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化して二値画像を作成し、当該二値画像を上下方向に走査して黒色部分の幅を画像上ギャップ幅として計測し、前記カメラのレンズ焦点距離とCCDサイズのカメラパラメータから、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算し、全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と予め設定した基準値とを比較して、異常の有無を判断する機能を備えることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第4の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
上記第3に係る回転機ギャップ計測装置において、
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化する際の明るさのしきい値である二値化しきい値、前記カメラパラメータ、前記カメラから前記回転機の前記ギャップ部分までの距離及び前記基準値を、各処理パラメータとして設定する処理設定部と、
前記カメラで撮影された画像を前記入力画像として入力する画像入力部と、
前記二値化しきい値を基に前記入力画像を二値化して、前記二値画像を作成する画像二値化部と、
前記画像上ギャップ幅を計測し、さらに、前記カメラパラメータを基に、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算したギャップ幅データを作成するギャップ幅計測部と、
全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と、前記基準値とを比較し、異常の有無を判断する異常判断部と、
前記ギャップ計測情報を作成するギャップ計測情報作成部と、
前記入力画像、前記各処理パラメータ、前記二値画像、前記ギャップ幅データ、異常の有無の記録及び前記ギャップ計測情報を保管する記憶部と、
前記ギャップ計測情報を外部へ出力するデータ出力部とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第5の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
上記第3の発明に係る回転機ギャップ計測装置において、
前記画像解析装置は、
前記二値画像を上下方向に走査する際、予めギャップ中に設定したギャップ中央線から、走査線の左右方向に、黒色から白色に変化するエッジ部分を検出し、検出した左右エッジの間隔を前記画像上ギャップ幅として計測することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第6の発明に係る回転機ギャップ計測装置は、
上記第5に係る回転機ギャップ計測装置において、
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化する際の明るさのしきい値である二値化しきい値、前記カメラパラメータ、前記カメラから前記回転機の前記ギャップ部分までの距離、前記基準値及び前記ギャップ中央線を、各処理パラメータとして設定する処理設定部と、
前記カメラで撮影された画像を前記入力画像として入力する画像入力部と、
前記二値化しきい値を基に前記入力画像を二値化して、前記二値画像を作成する画像二値化部と、
前記画像上ギャップ幅を計測し、さらに、前記カメラパラメータを基に、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算したギャップ幅データを作成するギャップ幅計測部と、
全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と、前記基準値とを比較し、異常の有無を判断する異常判断部と、
前記ギャップ計測情報を作成するギャップ計測情報作成部と、
前記入力画像、前記各処理パラメータ、前記二値画像、前記ギャップ幅データ、異常の有無の記録及び前記ギャップ計測情報を保管する記憶部と、
前記ギャップ計測情報を外部へ出力するデータ出力部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記第1乃至6の発明に係る回転機ギャップ計測装置によれば、風力発電機として使用する回転機のギャップ自体を、画像により直接的に計測することで、異常の有無を判断することができる。また異常を検出した場合は、ギャップ計測情報を遠隔地に送信することができるため、離れた場所から状況が把握できことから、保守作業員が現地まで行き、高さ数十メートルの塔の上に登り、直接目視で確認するという手間が省ける。
【0020】
上記第2の発明に係る回転機ギャップ計測装置によれば、さらに、カメラと画像伝送器を、密閉構造の撮影装置ボックス内に設置し、当該ボックス内に冷却機能を備えることで、風力発電機の機械室内の高温多湿による影響を防ぐことができる。
【0021】
上記第3乃至6の発明に係る回転機ギャップ計測装置によれば、さらに、二値画像を走査することによって、ギャップ幅の異常の有無を判断できる。
【0022】
上記第5,6の発明に係る回転機ギャップ計測装置によれば、さらに、入力画像にギャップ中央線を設定して当該画像を二値化し、当該二値画像を上下方向に走査する際、走査線中において、ギャップ中央線から左右方向に黒色から白色に変化するエッジ部分を検出し、検出した左右エッジの間隔を画像上ギャップ幅として計測することで、固定子、回転子の表面に凹凸、変色及び汚れがある場合でも正確な計測を行うことができる。
【0023】
上記第4,6の発明に係る回転機ギャップ計測装置によれば、さらに、異常発生時の画像を画像解析装置の記憶部に記録として残しておくこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】回転機ギャップ計測装置全体の模式図である。
【図2】(a)は図1における回転機のA−A矢視図である。(b)は(a)の一点鎖線で囲んだ撮影箇所Bをカメラによって撮影した画像の拡大図である。
【図3】二値画像の模式図である。
【図4】本発明の実施例1に係る、画像上ギャップ幅計測の模式図である。(a)は二値画像を上下方向に走査する様子を表したものであり、(b)は走査線中における画像上ギャップ幅計測の様子を表したものである。
【図5】画像解析装置によるギャップ計測のフローチャートである。
【図6】画像解析装置の構成図である。
【図7】固定子、回転子のギャップ周辺の表面に凹凸、変色及び汚れがある場合の画像の模式図である。
【図8】固定子、回転子のギャップ周辺の表面に凹凸、変色及び汚れがある場合の二値画像の模式図である。
【図9】本発明の実施例2に係る、ギャップ中央線を設定した画像の模式図である。
【図10】本発明の実施例2に係る、画像上ギャップ幅計測の模式図である。(a)は二値画像を上下方向に走査する様子を表したものであり、(b)は走査線中における画像上ギャップ幅計測の様子を表したものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る回転機ギャップ計測装置を、実施例により図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1に係る回転機ギャップ計測装置は、図1のように、カメラ1、照明器具2、撮影装置ボックス3、画像伝送器4,5、情報装置盤6、画像解析装置7、光ケーブル8及び監視装置13bを備える。
【0027】
上述のカメラ1は、風力発電機の回転機が収納されている機械室(以下、ナセル11と記載)内に設置されている撮影装置ボックス3に収納されており、風車12の固定子9と回転子10のギャップ14周辺を撮影するものである。
【0028】
図2(a)は図1におけるA−A矢視図である。図2(a)中の一点鎖線で囲まれたBは、カメラ1による撮影箇所であるが、これを見ればわかるように、カメラ1の光軸を通る画像の横軸方向が回転子10の回転軸からの放射線上になるような角度に設置されている。
【0029】
上述のようにカメラ1を設置すると、図2(b)のように、回転機の固定子9部分と回転子10部分とギャップ14とが撮影画像20a内で垂直に並ぶように撮影され、画像処理によるギャップ計測が簡単になる(ギャップ計測手段の詳細な説明は後述)。
【0030】
上述の照明器具2は、カメラ1のレンズの外側に設置され、回転機を照らすことで、固定子9と回転子10の部分は光が反射して明るくなり、ギャップ14の部分は光が反射せずに暗い状態が保たれるため、撮影画像20aの明暗がより強調される。
【0031】
上述の撮影装置ボックス3は、ナセル11内の回転機のギャップ14が見える位置に設置され、内部にはカメラ1、照明器具2及び画像伝送器4を収納している。また、ボックス容器は透明な材質により密閉できる形状とし、内部への湿気の侵入を遮断する。さらに、外部にヒートシンクと空冷ファンの設置または冷水を循環させる等の冷却機能を備えることで、カメラ1や画像伝送器4が高温になることを防ぐ。
【0032】
この撮影装置ボックス3は、図2(a)のように、カメラ1の光軸を通る画像の横軸方向が回転子10の回転軸からの放射線上になるような角度に、複数箇所設置されている。
【0033】
上述の画像伝送器4は撮影装置ボックス3内に設置され、カメラ1で撮影した画像データの電気信号を入力し、光信号に変換する。
【0034】
上述の画像伝送器5は情報装置盤6内に設置され、画像データの光信号を電気信号へ変換して、画像解析装置7へ出力する。
【0035】
上述の光ケーブル8は、撮影装置ボックス3内の画像伝送器4と、情報操作盤6内の画像伝送器5とに接続され、画像データの光信号を画像伝送器4から画像伝送器5へ送信する経路となる。
【0036】
上述の情報装置盤6は、風力発電機の塔の近傍に設置され、画像伝送器5と画像解析装置7を収納する。
【0037】
画像解析装置7は、画像伝送器5から送られてきた画像データを基にギャップを計測する。また、計測した情報はネットワーク13a経由により、遠隔地の監視装置13bへ送信される。
【0038】
本発明の実施例1に係る装置は、上述のような装置構成により、まず、カメラ1で、照明器具2により照らされた回転機のギャップ14を撮影し、撮影した画像データは画像伝送器4によって電気信号から光信号に変換され、光ケーブル8を通り情報装置盤6内の画像伝送器5に送信される。送信された光信号は、画像伝送器5において電気信号に再び変換され、画像伝送器5から画像解析装置7に送信される。画像解析装置7では画像伝送器5から送信されてきた画像データを基にギャップ14の計測を行い、計測した情報はネットワーク13a経由で遠隔地にある監視装置13bへ送信される。
【0039】
次に、上述のように回転機のギャップ計測を行う画像解析装置7について詳述する。
【0040】
画像解析装置7は、図6のように、処理設定部21、画像入力部22、画像二値化部23、ギャップ計測分24、異常判断部25、ギャップ計測情報作成部26、記憶部27及びデータ出力部28を備える。
【0041】
上述の画像入力部22では、カメラ1で撮影された撮影画像20aを入力画像として入力する。
【0042】
上述の処理設定部21では、入力画像を二値化する際の明るさのしきい値(以下、二値化しきい値と記載)、カメラ1のレンズ焦点距離とCCDサイズ(以下、カメラパラメータと記載)、カメラ1から回転機のギャップ14部分までの距離及び異常の有無を決定するギャップ幅の基準値の、各処理パラメータを設定する。
【0043】
上述の画像二値化部23では、二値化しきい値を基に入力画像を二値化して二値画像20bを作成する。
【0044】
上述のギャップ幅計測部24では、図4(a)に示すように走査線16を二値画像20bの上下方向に移動させ、図4(b)のように黒色部分の幅(以下、画像上ギャップ幅と記載)を計測する。さらに、カメラパラメータを基に、画像上ギャップ幅を実寸のギャップの幅(以下、実寸ギャップ幅と記載)に換算した、ギャップ幅データを作成する。
【0045】
上述の異常判断部25では、設置してある全てのカメラ1分のギャップ幅データとギャップ幅の基準値を比較し、異常の有無を判断する。
【0046】
上述のギャップ計測情報作成部26では、実寸ギャップ幅と異常の有無と前記入力画像を整理したギャップ計測情報を作成する。
【0047】
上述の記憶部27では、入力画像と各処理パラメータと二値画像20bとギャップ幅データと異常の有無の記録とギャップ計測情報とを保管する。
【0048】
上述のデータ出力部28では、ギャップ計測情報を外部へ出力する。
【0049】
以下、画像解析装置7によるギャップ計測の手順について、図5を用いて説明する。
【0050】
ステップS1では、画像入力部22により、カメラ1で撮影された撮影画像20aの画像データを画像伝送器5から入力画像として入力する。
【0051】
ステップS2では、画像二値化部23において、図3のように、入力画像を二値化して二値画像20bを作成する。二値化に用いる二値化しきい値については、処理設定部21にて予め設定しておく。
【0052】
ステップS3では、ギャップ幅計測部24において、上述のごとく画像上ギャップ幅を計測する。
【0053】
ステップS4では、同じくギャップ幅計測部24において、処理設定部21で設定したカメラパラメータを基に画像上ギャップ幅を実寸ギャップ幅に換算する。
【0054】
ステップS5では、異常判断部25において、異常の有無の判断を行う。全てのカメラ1で撮影した全ての実寸ギャップ幅と、ギャップ幅の基準値とを比較し、実寸ギャップ幅が基準値未満であった場合は、異常として判断する。
【0055】
尚、異常の有無の結果は、ギャップ計測情報作成部26において、入力画像とギャップ幅データと共に整理され、ギャップ計測情報としてデータ出力部28からネットワーク13aと通して遠隔地にある監視装置13bへ送信される。また、ネットワーク13aの負荷軽減のため、入力画像は異常がある場合にのみギャップ計測情報に含めるようにしても良い。
【0056】
ちなみに、上述のステップS1乃至S5において、各画像データと各処理パラメータは都度、記憶部27に保管される。
【0057】
本発明の実施例1に係る装置では、風力発電機に使用する回転機のギャップ自体を画像により直接的に計測することができ、また、異常発生時の画像を遠隔地の監視装置13bで確認することができるため、異常確認のために保守作業員が現地まで行き、さらに高さ数十メートルの塔の上に登って回転機のギャップの状態を確認するという手間が省ける。
【実施例2】
【0058】
図7に示すように、回転機の固定子9と回転子10は表面に凹凸17がある。また経年変化による変色18や汚れ19も発生する。このため、回転機のギャップ14周辺を撮影した場合、これら凹凸17、変色18及び汚れ19も撮影される。
【0059】
撮影画像中20aにおいてこれらの部分が暗く写った場合、この画像を二値化すると、図8の二値化画像20bのように、これらの部分もギャップ14と同じく黒色になる。
【0060】
この状態の二値画像20bから画像上ギャップ幅を計測した場合、二値画像20bを上下方向に走査し、黒色部分の幅を求めるだけでは正確に計測できない。
【0061】
そこで本発明の実施例2に係る回転機ギャップ計測装置は、基本的な装置構成は本発明の実施例1に係る装置と同一であるが、画像解析装置7の処理設定部21における設定とギャップ幅計測部24の機能を変更する。
【0062】
以下、画像解析装置7の処理設定部21とギャップ幅計測部24以外の説明は省略し、処理設定部21とギャップ幅計測部24についてのみ説明する。
【0063】
処理設定部21では、二値化しきい値、カメラパラメータ、カメラ1から回転機のギャップ部分までの距離、ギャップ幅の基準値及び各処理パラメータの設定に加えて、図9に示すように、ギャップ中にギャップ中央線15を設定する。図9では画像のほぼ中央にギャップ中央線が設定されているが、実際には必ずしもギャップ中央線が画像中央に設定されるとは限らない。
【0064】
ギャップ幅計測部24では、図10(a)に示すように二値画像20bの上下方向に走査するが、その際、図10(b)のように、走査線16中において、ギャップ中央線15から左右方向に二値画像20bの値が黒色から白色に変化するエッジ部分を検出し、検出した左右エッジの間隔を画像上ギャップ幅として計測する。
【0065】
以下、本発明の実施例2に係る回転機ギャップ計測装置の計測手順を図5に従って説明する。
【0066】
ステップS1では、画像入力部22により、カメラ1で撮影された撮影画像20aの画像データを画像伝送器5から入力画像として入力し、処理設定部21において図9のようにギャップ中央線15を設定する。
【0067】
ステップS2では、画像二値化部23において、ギャップ中央線15が設定された入力画像を二値化して二値画像20bを作成する。二値化しきい値については、処理設定部21にて予め設定しておく。
【0068】
ステップS3では、ギャップ幅計測部24において、上述のごとく画像上ギャップ幅を計測する。
【0069】
ステップS4では、同じくギャップ幅計測部24において、処理設定部21で設定したカメラパラメータを基に画像上ギャップ幅を実寸ギャップ幅に換算する。
【0070】
ステップS5では、異常判断部25において、異常の有無の判断を行う。全てのカメラ1で撮影した全ての実寸ギャップ幅と、ギャップ幅の基準値とを比較し、実寸ギャップ幅が基準値未満であった場合は、異常として判断する。
【0071】
尚、異常の有無の結果は、ギャップ計測情報作成部26において、入力画像とギャップ幅データと共に整理され、ギャップ計測情報としてデータ出力部28からネットワーク13aと通して遠隔地にある監視装置13bへ送信される。また、ネットワーク13aの負荷軽減のため、入力画像は異常がある場合にのみギャップ計測情報に含めるようにしても良い。
【0072】
ちなみに、上述のステップS1乃至S5において、各画像データと各処理パラメータは都度、記憶部27に保管される。
【0073】
本発明の実施例2に係る装置では、本発明の実施例1に係る装置の機能に加え、回転機の表面の凹凸、変色及び汚れがギャップ幅計測に与える影響を排除することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、風力発電機として使用する回転機のギャップを計測する、回転機ギャップ計測装置として好適である。
【符号の説明】
【0075】
1 カメラ
2 照明器具
3 撮影装置ボックス
4 画像伝送器
5 画像伝送器
6 情報装置盤
7 画像解析装置
8 光ケーブル
9 固定子
10 回転子
11 ナセル
12 風車
13a ネットワーク
13b 監視装置
14 ギャップ
15 ギャップ中央線
16 走査線
17 凹凸
18 変色
19 汚れ
20a 撮影画像
20b 二値画像
21 処理設定部
22 画像入力部
23 画像二値化部
24 ギャップ幅計測部
25 異常判断部
26 ギャップ計測情報作成部
27 記憶部
28 データ出力部
S1 画像入力
S2 画像二値化
S3 画像上のギャップ幅計測
S4 画像上ギャップ幅を実寸ギャップ幅へ換算
S5 異常の有無を判断

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機の固定子と回転子のギャップ周辺を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影した画像を入力画像として入力し、当該入力画像から、実際のギャップ幅である実寸ギャップ幅を計測し、異常の有無を判断する画像解析装置と、
前記実寸ギャップ幅、異常の有無及び前記入力画像をギャップ計測情報として送信するネットワークとを備えることを特徴とする回転機ギャップ計測装置。
【請求項2】
前記回転機を収納する機械室内に複数箇所設置され、前記カメラ及び前記カメラの撮影箇所を照らす照明手段を内部に設ける、密閉構造且つ冷却機能を備えた撮影装置ボックスと、
前記機械室の外に設置され、光ケーブルによって前記カメラと接続された前記画像解析装置を収納する、情報装置盤と、
前記ネットワークにより送信された前記ギャップ計測情報を遠隔地にて受信する監視装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載の回転機ギャップ計測装置。
【請求項3】
前記カメラは、
光軸を通る画像の横軸方向が前記回転機の回転子からの放射線上になるような角度に前記機械室内に複数箇所設置され、
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化して二値画像を作成し、当該二値画像を上下方向に走査して黒色部分の幅を画像上ギャップ幅として計測し、前記カメラのレンズ焦点距離とCCDサイズのカメラパラメータから、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算し、全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と予め設定した基準値とを比較して、異常の有無を判断する機能を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の回転機ギャップ計測装置。
【請求項4】
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化する際の明るさのしきい値である二値化しきい値、前記カメラパラメータ、前記カメラから前記回転機の前記ギャップ部分までの距離及び前記基準値を、各処理パラメータとして設定する処理設定部と、
前記カメラで撮影された画像を前記入力画像として入力する画像入力部と、
前記二値化しきい値を基に前記入力画像を二値化して、前記二値画像を作成する画像二値化部と、
前記画像上ギャップ幅を計測し、さらに、前記カメラパラメータを基に、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算したギャップ幅データを作成するギャップ幅計測部と、
全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と、前記基準値とを比較し、異常の有無を判断する異常判断部と、
前記ギャップ計測情報を作成するギャップ計測情報作成部と、
前記入力画像、前記各処理パラメータ、前記二値画像、前記ギャップ幅データ、異常の有無の記録及び前記ギャップ計測情報を保管する記憶部と、
前記ギャップ計測情報を外部へ出力するデータ出力部とを備えることを特徴とする請求項3に記載の回転機ギャップ計測装置。
【請求項5】
前記画像解析装置は、
前記二値画像を上下方向に走査する際、予めギャップ中に設定したギャップ中央線から、走査線の左右方向に、黒色から白色に変化するエッジ部分を検出し、検出した左右エッジの間隔を前記画像上ギャップ幅として計測することを特徴とする請求項3に記載の回転機ギャップ計測装置。
【請求項6】
前記画像解析装置は、
前記入力画像を二値化する際の明るさのしきい値である二値化しきい値、前記カメラパラメータ、前記カメラから前記回転機の前記ギャップ部分までの距離、前記基準値及び前記ギャップ中央線を、各処理パラメータとして設定する処理設定部と、
前記カメラで撮影された画像を前記入力画像として入力する画像入力部と、
前記二値化しきい値を基に前記入力画像を二値化して、前記二値画像を作成する画像二値化部と、
前記画像上ギャップ幅を計測し、さらに、前記カメラパラメータを基に、前記画像上ギャップ幅を前記実寸ギャップ幅に換算したギャップ幅データを作成するギャップ幅計測部と、
全ての前記カメラによる前記入力画像の前記実寸ギャップ幅と、前記基準値とを比較し、異常の有無を判断する異常判断部と、
前記ギャップ計測情報を作成するギャップ計測情報作成部と、
前記入力画像、前記各処理パラメータ、前記二値画像、前記ギャップ幅データ、異常の有無の記録及び前記ギャップ計測情報を保管する記憶部と、
前記ギャップ計測情報を外部へ出力するデータ出力部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の回転機ギャップ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96879(P2013−96879A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240805(P2011−240805)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】