説明

回転機械およびポンプ駆動装置

【課題】より短軸化が可能な構造の回転機械を提供する。
【解決手段】回転式ポンプ39の駆動を行う回転駆動部54dについては両側にベアリング51、52が配置された両持ち構造とし、回転式ポンプ19の駆動を行う回転駆動部54cについては片側にベアリング51、52が配置された片持ち構造とする。そして、回転軸54のうち回転式ポンプ19よりも先端側を自由端とする。これにより、回転式ポンプ19の回転駆動部54cよりも先端側にベアリングが設けられていない分だけ回転軸54を短くすることが可能となり、ひいては装置全体の軸方向長さを短くすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転位相の異なる2つの駆動反力承継部を有する回転軸を軸受にて支持している回転機械に関するものであり、例えば、2つのポンプを同じ回転軸にて駆動するポンプ駆動装置に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転位相の異なる2つの駆動反力承継部を有する回転軸を軸受にて支持している回転機械として、例えば、2つのポンプを同じ回転軸にて駆動するポンプ駆動装置がある。その一例として、特許文献1に開示されているポンプ駆動装置がある。このポンプ駆動装置では、回転軸を中心として2つの回転式ポンプの吸入口と吐出口とを180°位相をずらすと共に、2つの回転式ポンプの軸方向厚さを異ならせるとことで、前後配管車両のようにフロント系統とリア系統とで消費液量(キャリパサイズ)に差がある場合に対応できるようにしている。
【0003】
同じ吐出量の2つの回転式ポンプを同じ回転軸で駆動するポンプ駆動装置をフロント系統とリア系統とで消費液量に差がある車両に適用した場合、フロント系統に必要な流量を確保できるようにポンプ駆動用のモータを回転させると、リア系統へは過剰な流量でブレーキ液が供給される。この場合、モータ消費電流に無駄が生じてしまう。このため、特許文献1のポンプ駆動装置では、2つの回転式ポンプの軸方向厚さを異ならせることで、同一回転数ながらフロント系統とリア系統それぞれに必要な流量のブレーキ液が供給されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のポンプ駆動装置のように、2つの回転式ポンプの軸方向厚さを異ならせる場合、軸方向厚さを厚くした方の回転式ポンプの吐出荷重が増え、回転軸を支持している軸受に加わる荷重が増大し、軸受の寿命を低下させることになる。これに対して、上記のように、回転軸を中心として2つの回転式ポンプの吸入口と吐出口とを180°位相をずらすことで、各系統の吐出による軸受の支持荷重が互いに打ち消しあう方向に作用するため、軸受の長寿命化を図ることが可能となる。ところが、2つの回転式ポンプを挟んだ両側に軸受を配置する形態の場合、2つの回転式ポンプよりも先端側に軸受による回転軸の支持部分が必要であるため、短軸化を十分に行えないという問題がある。
【0006】
このような問題は、特許文献1のポンプ駆動装置に限るものではなく、他の回転機械、例えば複数のピストンポンプの駆動用カムを同じ回転軸で駆動するポンプ駆動装置や、エンジンの各気筒を動作させるカムを駆動するエンジン駆動装置についても、同様のことが言える。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、より短軸化が可能な構造の回転機械およびポンプ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、軸方向にずらして配置され、駆動対象(19、39)から回転位相の異なる径方向反力を定常負荷として受ける2つの駆動反力承継部(54c、54d)を有する回転軸(54)に対して、この回転軸(54)を回転可能に支持する軸受(51、52)を、2つの駆動反力承継部(54c、54d)のうち定常負荷が大きい方の駆動反力承継部(54d)の軸方向両側それぞれに設け、2つの駆動反力承継部(54c、54d)のうち定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)側における回転軸(54)の端部については、定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)よりも先端側(定常負荷が大きい方の駆動反力承継部(54d)と反対側)を自由端とすることを特徴としている。
【0009】
このような構成の回転機械では、定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)については片側に軸受(51、52)が配置された片持ち構造となるようにし、回転軸(54)のうち定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)よりも先端側を自由端としている。このため、定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)よりも先端側に軸受が設けられていない分だけ回転軸(54)を短くすることが可能となり、ひいては回転機械全体の軸方向長さを短くすることが可能となる。
【0010】
また、駆動対象(19、39)の回転位相を異ならせてあるため、各駆動対象(19、39)から回転軸(54)の駆動反力承継部(54c、54d)に加えられる荷重(径方向反力)の方向を異ならせることができる。このため、各駆動対象(19、39)の回転位相を同じにした場合と比較して、回転軸(54)の振動のピークを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、吐出量および回転位相の異なる2つのポンプ(19、39)のポンプ駆動部を有する回転軸(54)に対して、この回転軸(54)を回転可能に支持する軸受(51、52)を、2つのポンプ駆動部のうち吐出量が大きい方のポンプ(39)のポンプ駆動部の軸方向両側それぞれに設け、2つのポンプ駆動部のうち吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部側における回転軸(54)の端部については、吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部よりも先端側(吐出量が大きい方のポンプ(39)のポンプ駆動部と反対側)を自由端としていることを特徴としている。
【0012】
このような構成のポンプ駆動装置では、吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部については片側に軸受(51、52)が配置された片持ち構造となるようにし、回転軸(54)のうち吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部よりも先端側を自由端としている。このため、吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部よりも先端側に軸受が設けられていない分だけ回転軸(54)を短くすることが可能となり、ひいてはポンプ駆動装置の軸方向長さを短くすることが可能となる。
【0013】
また、2つのポンプ(19、39)の回転位相を異ならせてあるため、各ポンプ(19、39)から回転軸(54)のポンプ駆動部に加えられる径方向荷重の方向を異ならせることができる。このため、各ポンプ(19、39)の回転位相を同じにした場合と比較して、回転軸(54)の振動のピークを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、2つのポンプは回転式ポンプ(19、39)であり、2つのポンプ駆動部の間には、軸受(51、52)のうちの1つと共に2つの回転式ポンプ(19、39)の間のシールを行うシール部材(120)が配置されており、軸受(51、52)のうちの1つの方がシール部材(120)よりも2つのポンプ駆動部のうち吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部側に配置されていることを特徴としている。
【0015】
このように、軸受(51、52)のうちの1つをシール部材(120)よりも回転軸(54)の先端側に配置すると、2つの軸受(51、52)との間の距離を稼ぐことができ、より回転軸(54)の傾斜を小さくすることが可能となる。このため、回転軸(54)と回転軸(54)を駆動するための他の回転軸、例えばモータ(60)の回転軸との軸ズレを抑制できるし、回転軸(54)の周りに配置されるシール部材(120、121)などの中心軸からのズレ(偏心)を抑制してシール性が向上し得るなどの効果が得られる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる回転式ポンプ装置を適用した車両用ブレーキ装置のブレーキ配管概略図である。
【図2−a】回転式ポンプ19、39を含むポンプ本体100およびモータ60を備えた回転式ポンプ装置の断面図である。
【図2−b】図2−aとは別断面におけるポンプ本体100の先端部分の断面図である。
【図3】図2−aのA−A断面図である。
【図4】従来と本実施形態の回転式ポンプ装置の回転軸54に対する荷重の加わり方と支持位置との関係を示した模式図である。
【図5】回転式ポンプ39の駆動を行うポンプ駆動部の位置変化に対する両ベアリング51、52に加わる荷重の絶対値の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態にかかる回転式ポンプ装置を適用した車両用ブレーキ装置のブレーキ配管概略図を示す。以下、車両用ブレーキ装置の基本構成を、図1に基づいて説明する。ここでは前後配管の油圧回路を構成する車両に本発明による車両用ブレーキ装置を適用した例について説明する。
【0020】
図1において、ドライバがブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、マスタシリンダ(以下、M/Cという)13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生する。M/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50を通じて各ホイールシリンダ(以下、W/Cという)14、15、34、35に伝えられる。このM/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられている。
【0021】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ50は、第1配管系統50aと第2配管系統50bとを有している。第1配管系統50aは、右後輪RRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御するリア系統、第2配管系統50bは、左前輪FLと右前輪FRに加えられるブレーキ液圧を制御するフロント系統とされる。
【0022】
第1配管系統50aと第2配管系統50bとを比較すると、第1配管系統50aの方が消費液量(キャリパ容量)が多くなっているが、各系統50a、50bの構成は同様であるため、以下では第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては説明を省略する。
【0023】
第1配管系統50aは、上述したM/C圧を左後輪RLに備えられたW/C14および右後輪RRに備えられたW/C15に伝達し、W/C圧を発生させる主管路となる管路Aを備える。
【0024】
また、管路Aは、連通状態と差圧状態に制御できる第1差圧制御弁16を備えている。この第1差圧制御弁16は、ドライバがブレーキペダル11の操作を行う通常ブレーキ時(車両運動制御が実行されていない時)には連通状態となるように弁位置が調整されており、第1差圧制御弁16に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
【0025】
この第1差圧制御弁16が差圧状態のときには、W/C14、15側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C14、15側からM/C13側へのみブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C14、15側がM/C13側よりも所定圧力以上高くならないように維持される。
【0026】
そして、管路Aは、この第1差圧制御弁16よりも下流になるW/C14、15側において、2つの管路A1、A2に分岐する。管路A1にはW/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁17が備えられ、管路A2にはW/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁18が備えられている。
【0027】
第1、第2増圧制御弁17、18は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。具体的には、第1、第2増圧制御弁17、18は、第1、第2増圧制御弁17、18に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
【0028】
管路Aにおける第1、第2増圧制御弁17、18および各W/C14、15の間と調圧リザーバ20とを結ぶ減圧管路としての管路Bには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁21、22はノーマルクローズ型となっている。
【0029】
調圧リザーバ20と主管路である管路Aとの間には還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cには調圧リザーバ20からM/C13側あるいはW/C14、15側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ60によって駆動される自吸式の回転式ポンプ19が設けられている。モータ60は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
【0030】
そして、調圧リザーバ20とM/C13の間には補助管路となる管路Dが設けられている。この管路Dを通じ、ポンプ19にてM/C13からブレーキ液を吸入し、管路Aに吐出することで、車両運動制御時において、W/C14、15側にブレーキ液を供給し、対象となる車輪のW/C圧を加圧する。なお、ここでは第1配管系統50aについて説明したが、第2配管系統50bも同様の構成であり、第1配管系統50aに備えられた各構成と同様の構成を第2配管系統50bも備えている。具体的には、第1差圧制御弁16と対応する第2差圧制御弁36、第1、第2増圧制御弁17、18と対応する第3、第4増圧制御弁37、38、第1、第2減圧制御弁21、22と対応する第3、第4減圧制御弁41、42、ポンプ19と対応するポンプ39、リザーバ20と対応するリザーバ40、管路A〜Dと対応する管路E〜Hがある。ただし、各系統50a、50bがブレーキ液を供給するW/C14、15、34、35については、リア系統となる第1配管系統50aよりもフロント系統となる第2配管系統50bの方の容量が大きくされている。これにより、フロント側においてより大きな制動力を発生させることができる。
【0031】
また、ブレーキECU70は、ブレーキ制御システム1の制御系を司る本発明の車両運動制御装置に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行し、横滑り防止制御等の車両運動制御を実行する。すなわち、ブレーキECU70は、図示しないセンサ類の検出に基づいて各種物理量を演算し、その演算結果に基づいて車両運動制御を実行すか否かを判定し、実行する際には、制御対象輪に対する制御量、すなわち制御対象輪のW/Cに発生させるW/C圧を求める。その結果に基づいて、ブレーキECU70が各制御弁16〜18、21、22、36〜38、41、42への電流供給制御およびポンプ19、39を駆動するためのモータ60の電流量制御を実行することで、制御対象輪のW/C圧が制御され、車両運動制御が行われる。
【0032】
例えば、トラクション制御や横滑り防止制御のようにM/C13に圧力が発生させられていないときには、ポンプ19、39を駆動すると共に、第1、第2差圧制御弁16、36を差圧状態にすることで、管路D、Hを通じてブレーキ液を第1、第2差圧制御弁16、36の下流側、つまりW/C14、15、34、35側に供給する。そして、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38や第1〜第4減圧制御弁21、22、41、42を適宜制御することで制御対象輪のW/C圧の増減圧を制御し、W/C圧が所望の制御量となるように制御する。
【0033】
また、アンチスキッド(ABS)制御時には、第1〜第4増圧制御弁17、18、37、38や第1〜第4減圧制御弁21、22、41、42を適宜制御すると共に、ポンプ19、39を駆動することでW/C圧の増減圧を制御し、W/C圧が所望の制御量となるように制御する。
【0034】
次に、上記のように構成される車両用ブレーキ装置における回転式ポンプ装置の詳細構造について説明する。図2−aは、回転式ポンプ19、39を含むポンプ本体100およびモータ60を備えた回転式ポンプ装置の断面図である。この図は、ポンプ本体100をブレーキ液圧制御用アクチュエータ50のハウジング101に組付けたときの様子を示しており、例えば、紙面上下方向が車両天地方向となるように組付けられる。また、図2−bは、図2−aとは別断面におけるポンプ本体100の先端部分の断面図であり、ポンプ本体100の中心軸に沿って図2−aと垂直な断面でポンプ本体100を切断したときの図に相当している。
【0035】
上述したように、車両用ブレーキ装置は、第1配管系統50aと第2配管系統50bの2系統から構成されている。このため、ポンプ本体100には第1配管系統50a用の回転式ポンプ19と、第2配管系統50b用の回転式ポンプ39の2つが備えられている。
【0036】
ポンプ本体100に内蔵される回転式ポンプ19、39は、モータ60が第1ベアリング51および第2ベアリング52で支持された回転軸54を回転させることによって駆動される。ポンプ本体100の外形を構成するケーシングは、アルミニウム製のシリンダ71およびプラグ72によって構成されており、第1ベアリング51はシリンダ71に配置され、第2ベアリング52はプラグ72に配置されている。
【0037】
シリンダ71とプラグ72が同軸的に配置された状態でシリンダ71の一端側がプラグ72に対して圧入されることで一体化され、ポンプ本体100のケースが構成されている。そして、シリンダ71やプラグ72と共に回転式ポンプ19、39や各種シール部材等が備えられることによりポンプ本体100が構成されている。
【0038】
このようにして一体構造のポンプ本体100が構成されている。この一体構造とされたポンプ本体100が、アルミニウム製のハウジング101に形成された略円筒形状の凹部101a内に紙面右方向から挿入されている。そして、凹部101aの入口に掘られた雌ネジ溝101bにリング状の雄ネジ部材(スクリュー)102がネジ締めされて、ポンプ本体100がハウジング101に固定されている。この雄ネジ部材102のネジ締めによってポンプ本体100がハウジング101から抜けない構造とされている。
【0039】
以下、このポンプ本体100のハウジング101の凹部101aへの挿入方向のことを単に挿入方向という。また、ポンプ本体100の軸方向や周方向(回転軸54の軸方向や周方向)を単に軸方向や周方向という。
【0040】
また、挿入方向前方の先端位置のうち回転軸54の先端(図2−a、図2−bにおける左端)と対応する位置において、ハウジング101の凹部101aに円形状の第2の凹部101cが形成されている。この第2の凹部101cの径は、回転軸54の径よりも大きくされ、この第2の凹部101c内に回転軸54の先端が位置し、回転軸54がハウジング101と接触しないようにされている。
【0041】
シリンダ71およびプラグ72には、それぞれ、中心孔71a、72aが備えられている。これら中心孔71a、72a内に回転軸54が挿入され、シリンダ71に形成された中心孔71aの内周に固定された第1ベアリング51とプラグ72に形成された中心孔72aの内周に固定された第2ベアリング52にて支持されている。第1、第2ベアリング51、52にはどのような構造のベアリングを適用しても良いが、本実施形態では、転がり軸受を用いている。
【0042】
具体的には、第1ベアリング51は、内輪無しの針状ころ軸受にて構成されており、外輪51aと針状ころ51bを備えた構成とされ、この第1ベアリング51の穴内に嵌め込まれることで回転軸54が軸支されている。第1ベアリング51は、シリンダ71の中心孔71aが挿入方向前方において第1ベアリング51の外径と対応する寸法に拡径されていることから、この拡径された部分に圧入されることでシリンダ71に固定されている。
【0043】
第2ベアリング52は、内輪52a、外輪52bおよび転動体52cを備えた構成とされ、外輪52bがプラグ72の中心孔72a内に圧入されることによって固定されている。この第2ベアリング52の内輪52aの穴内に回転軸54が嵌め込まれることで、回転軸54が軸支されている。
【0044】
第1ベアリング51の両側、つまり第1ベアリング51よりも挿入方向前方の領域と第1、第2ベアリング51、52に挟まれた領域それぞれに、回転式ポンプ19、39が備えられている。図3に図2−aのA−A断面図を示し、回転式ポンプ19、39の詳細構造について説明する。
【0045】
回転式ポンプ19は、シリンダ71の一端面を円形状に凹ませたザグリにて構成されるロータ室100a内に配置されており、ロータ室100a内に挿通された回転軸54によって駆動される内接型ギアポンプ(トロコイドポンプ)で構成されている。
【0046】
具体的には、回転式ポンプ19は、内周に内歯部が形成されたアウターロータ19aと外周に外歯部が形成されたインナーロータ19bとからなる回転部を備えており、インナーロータ19bの中心にある孔内に回転軸54が挿入された構成となっている。そして、回転軸54に形成された穴54a内にキー54bが嵌入されており、このキー54bによってインナーロータ19bへのトルク伝達がなされる。
【0047】
アウターロータ19aとインナーロータ19bは、それぞれに形成された内歯部と外歯部とが噛み合わさって複数の空隙部19cを形成している。そして、回転軸54の回転によって空隙部19cが大小変化することで、ブレーキ液の吸入吐出が行われる。
【0048】
一方、回転式ポンプ39は、シリンダ71のもう一方の端面を円形状に凹ませたザグリにて構成されるロータ室100b内に配置されており、ロータ室100b内に挿通される回転軸54にて駆動される。回転式ポンプ39も、回転式ポンプ19と同様にアウターロータ39aおよびインナーロータ39bを備え、これらの両歯部が噛み合わさって形成される複数の空隙部39aにてブレーキ液の吸入吐出を行う内接型ギアポンプで構成されている。この回転式ポンプ39は、回転軸54を中心として回転式ポンプ19をほぼ180°回転させた配置となっている。このように配置することで、回転式ポンプ19、39のそれぞれの吸入側の空隙部19c、39cと吐出側の空隙部19c、39cとが回転軸54を中心として対称位置となるようにし、吐出側における高圧なブレーキ液圧が回転軸54に与える力を相殺できるようにしている。
【0049】
これら回転式ポンプ19、39は、基本的には同じ構造となっているが、軸方向厚さを異ならせてあり、リア系統となる第1配管系統50aに備えられる回転式ポンプ19と比較して、フロント系統となる第2配管系統50bに備えられる回転式ポンプ39の方が、軸方向長さが長くされている。具体的には、回転式ポンプ39の各ロータ39a、39bの方が回転式ポンプ19の各ロータ19a、19bよりも軸方向長さが長くされている。このため、回転式ポンプ39の方が回転式ポンプ19よりもブレーキ液の吸入吐出量が多くなり、フロント系統に対してリア系統より多くのブレーキ液を供給できる。
【0050】
シリンダ71の一端面側において、回転式ポンプ19を挟んでシリンダ71と反対側、つまりシリンダ71および回転式ポンプ19とハウジング101との間には、回転式ポンプ19をシリンダ71側に押圧するシール機構111が備えられている。また、シリンダ71のもう一方の端面側において、回転式ポンプ39を挟んでシリンダ71と反対側、つまりシリンダ71および回転式ポンプ39とプラグ72との間には、回転式ポンプ39をシリンダ71側に押圧するシール機構112が備えられている。
【0051】
シール機構111は、回転軸54が挿入される中心孔を有するリング状部材で構成され、アウターロータ19aおよびインナーロータ19bをシリンダ側71側に押圧することにより、回転式ポンプ19のうちの一端面側での比較的低圧な部位と比較的高圧な部位とをシールしている。具体的には、シール機構111は、回転部側に配置された中空板状の樹脂部材111aと、樹脂部材111aを回転部側に押圧するゴム部材111bとを有して構成されている。
【0052】
樹脂部材111aは、部分的に回転式ポンプ19側に突出させられた環状のシール面111cを備えている。この環状のシール面111cの内周側には、吸入側の空隙部19cおよび吸入側の空隙部19cに対向するアウターロータ19aの外周とシリンダ71との隙間が含まれ、シール面111cの外周側には、吐出側の空隙部19cおよび吐出側の空隙部19cに対向するアウターロータ19aの外周とシリンダ71との隙間が含まれるようにされている。すなわち、シール面111cによって、シール機構111の内外周の比較的低圧な部位と比較的高圧な部位とのシールが行われている。
【0053】
この樹脂部材111aは、図2−aから分かるように、円形状ではなく、回転軸54からの径方向寸法がほぼ紙面上方から下方に向かうに連れて徐々に大きくなる形状とされている。また、樹脂部材111aには、突起状の回転防止部111dが備えられている。図2−bに示すように、シリンダ71のうち回転防止部111dと対応する位置には凹部71bが形成されており、この凹部71b内に回転防止部111dが嵌め込まれることで回転軸54の回転に伴って樹脂部材111aが回転しないようにできる。
【0054】
また、樹脂部材111aのうち挿入方向前方の面の内周側は、軸方向において回転式ポンプ19と反対側に突出させられた凸部111eとされ、この凸部111eの外周を囲むように環状ゴム部材111bが配置されている。
【0055】
環状ゴム部材111bは、例えばOリングにて構成されている。環状ゴム部材111bを径方向において切断したときの断面の径は凸部111eの突出量よりも大きく設定されている。このため、環状ゴム部材111bが樹脂部材111aとハウジング101の凹部101aの底部との間において押し潰され、環状ゴム部材111bの復元力によって樹脂部材111aのシール面111cを回転式ポンプ19に当接させている。このような構成により、シール面111cによる上記シールを実現している。また、環状ゴム部材111bがハウジング101の凹部101aの底部に接することで、環状ゴム部材111bの外周側と内周側、つまり高圧な吐出口80側と低圧な回転軸54側との間のシールも実現している。
【0056】
樹脂部材111aおよび環状ゴム部材111bの外径は、少なくとも図2−aの紙面上方においてハウジング101の凹部101aの内径よりも小さくされている。このため、紙面上方における樹脂部材111aおよび環状ゴム部材111bとハウジング101の凹部101aとの間の隙間を通じてブレーキ液が流動できる構成とされている。この隙間が吐出口80を構成しており、ハウジング101の凹部101aの底部に形成された吐出用管路90に接続されている。このような構造により、回転式ポンプ19は、吐出口80および吐出用管路90を吐出経路としてブレーキ液を排出することができる。
【0057】
シール機構111の内周側、つまり回転軸54と接する中心孔を構成する部位は、金属製リング111fにて構成されている。この金属製リング111fは、樹脂部材111aと一体成形もしくは樹脂部材111aの中空部への圧入により、樹脂部材111aと一体構造とされている。この樹脂部材111aが回転軸54に対して最小隙間で配置されることで回転軸54に摺接させられている。この金属製リング111fを備えることにより、樹脂部材111aが回転軸54に直接接することが防止されている。このため、回転式ポンプ19が発生させるブレーキ液圧によって樹脂部材111aが変形したとしても、その変形によって樹脂部材111aが回転軸54を締め付けること、つまり樹脂部材111aによる抱き付きが生じることを防止できる。
【0058】
シリンダ71には、回転式ポンプ19の吸入側の空隙部19cと連通する吸入口81が形成されている。この吸入口81は、シリンダ71のうち回転式ポンプ19側の端面から外周面に至るように延設されており、ハウジング101の凹部101aの側面に設けられた吸入用管路91に接続されている。このような構造により、回転式ポンプ19は、吸入用管路91および吸入口81を吸入経路としてブレーキ液を導入することができる。
【0059】
一方、シール機構112も、回転軸54が挿入される中心孔を有するリング状部材で構成され、アウターロータ39aおよびインナーロータ39bをシリンダ側71側に押圧することにより、回転式ポンプ39のうちの一端面側での比較的低圧な部位と比較的高圧な部位とをシールしている。具体的には、シール機構112は、回転部側に配置された中空板状の樹脂部材112aと、樹脂部材112aを回転部側に押圧するゴム部材112bと、樹脂部材112aの内周側に配置した金属製リング112cを備えた構造とされている。このシール機構112は、上記したシール機構111とシールを構成する面が反対側となっている点が異なっているため、シール機構111に対する対称形状で構成されているが、基本構造は同じとされ、回転軸54を中心としてシール機構111に対して180°位相をずらして配置されている。
【0060】
樹脂部材112aは、部分的に回転式ポンプ39側に突出させられた環状のシール面112cを備えている。この環状のシール面112cの内周側には、吸入側の空隙部39cおよび吸入側の空隙部39cに対向するアウターロータ39aの外周とシリンダ71との隙間が含まれ、シール面112cの外周側には、吐出側の空隙部39cおよび吐出側の空隙部39cに対向するアウターロータ39aの外周とシリンダ71との隙間が含まれるようにされている。すなわち、シール面112cによって、シール機構112の内外周の比較的低圧な部位と比較的高圧な部位とのシールが行われている。
【0061】
この樹脂部材112aは、図2−aから判るように、円形状ではなく、回転軸54からの径方向寸法が紙面上方から下方に向かうに連れて徐々に小さくなる形状とされている。また、樹脂部材112aには、図2−bに示すように、突起状の回転防止部112dが備えられている。シリンダ71のうち回転防止部112dと対応する位置には凹部71cが形成されており、この凹部71c内に回転防止部112dが嵌め込まれることで回転軸54の回転に伴って樹脂部材112aが回転しないようにできる。
【0062】
また、樹脂部材112aのうち挿入方向後方の面の内周側は、軸方向において回転式ポンプ39と反対側に突出させられた凸部112eとされ、この凸部112eの外周を囲むように環状ゴム部材112bが配置されている。
【0063】
環状ゴム部材112bは、例えばOリングにて構成されている。環状ゴム部材112bを径方向において切断したときの断面の径は凸部112eの突出量よりも大きく設定されている。このため、環状ゴム部材112bが樹脂部材112aとプラグ72との間において押し潰され、環状ゴム部材112bの復元力によって樹脂部材112aのシール面112cを回転式ポンプ39に当接させている。このような構成により、シール面112cによる上記シールを実現している。また、環状ゴム部材112bがプラグ72の凹部に接することで、環状ゴム部材112bの外周側と内周側、つまり高圧な吐出口82側と低圧な回転軸54側との間のシールも実現している。
【0064】
樹脂部材112aおよび環状ゴム部材112bの外径は、少なくとも紙面下方においてプラグ72の内径よりも小さくなっている。このため、紙面下方における樹脂部材112aおよび環状ゴム部材112bとプラグ72との間の隙間を通じてブレーキ液が流動できる構成とされている。この隙間が吐出口82を構成しており、プラグ72に形成された連通路72bおよびハウジング101の凹部101aの側面に形成された吐出用管路92に接続されている。このような構造により、回転式ポンプ39は、吐出口82や連通路72bおよび吐出用管路92を吐出経路としてブレーキ液を排出することができる。
【0065】
シール機構112の内周側、つまり回転軸54と接する中心孔を構成する部位は、金属製リング112fにて構成されている。この金属製リング112fは、樹脂部材112aと一体成形もしくは樹脂部材112aの中空部への圧入により、樹脂部材112aと一体構造とされている。この金属製リング112fを備えることにより、樹脂部材112aが回転軸54に接することが防止されている。このため、回転式ポンプ19が発生させるブレーキ液圧によって樹脂部材112aが変形したとしても、その変形によって樹脂部材112aが回転軸54を締め付けること、つまり樹脂部材112aによる抱き付きが生じることを防止できる。
【0066】
一方、シリンダ71のうち回転式ポンプ19、39側の端面もシール面とされ、このシール面に回転式ポンプ19、39が密着することでメカニカルシールが為され、回転式ポンプ19、39のうちの他端面側での比較的低圧な部位と比較的高圧な部位とをシールしている。
【0067】
また、シリンダ71には、回転式ポンプ39の吸入側の空隙部39cと連通する吸入口83が形成されている。この吸入口83は、シリンダ71のうち回転式ポンプ39側の端面から外周面に至るように延設されており、ハウジング101の凹部101aの側面に設けられた吸入用管路93に接続されている。このような構造により、回転式ポンプ39は、吸入用管路93および吸入口83を吸入経路としてブレーキ液を導入することができる。
【0068】
なお、図2−aにおいて、吸入用管路91および吐出用管路90が図1における管路Cに相当し、吸入用管路93および吐出用管路92が図1における管路Gに相当する。
【0069】
また、シリンダ71の中心孔71aのうち第1ベアリング51よりも挿入方向後方には、径方向断面がU字状とされた環状樹脂部材120aと、この環状樹脂部材120a内に嵌め込まれた環状ゴム部材120bとによって構成されたシール部材120が収容されている。このシール部材120は、環状樹脂部材120aがシリンダ71と回転軸54とによって押し縮められることで環状ゴム部材120bが押し潰され、この環状ゴム部材120bの弾性反力によって環状樹脂部材120aがシリンダ71と回転軸54に接して、これらの間をシールしている。これにより、シリンダ71の中心孔71a内での2系統の間のシールがなされている。
【0070】
また、プラグ72の中心孔72aは、挿入方向前方から後方に向かって内径が三段階に変化させられて段付き形状とされており、その最も挿入方向後方側となる一段目の段付部にシール部材121が収容されている。このシール部材121は、ゴムなどの弾性部材からなるリング状の弾性リング121aを、径方向を深さ方向とする溝部が形成されたリング状の樹脂部材121bに嵌め込んだものであり、弾性リング121aの弾性力によって樹脂部材121bが押圧されて回転軸54と接するようになっている。
【0071】
なお、中心孔72aのうちシール部材121が配置された段の隣の段となる二段目の段付部には、上述したシール機構112が収容されている。上述した連通路72bは、この段付部からプラグ72の外周面に至るように形成されている。また、中心孔72aのうち最も挿入方向前方側となる三段目の段付部には、シリンダ71の挿入方向後方側の端部が圧入されている。シリンダ71のうちプラグ72の中心孔72a内に嵌め込まれる部分は、シリンダ71の他の部分よりも外径が縮小されている。このシリンダ71のうち外径が縮小されている部分の軸方向寸法が中心孔72aの三段目の段付部の軸方向寸法よりも大きくされているため、シリンダ71がプラグ72の中心孔72a内に圧入されたときに、プラグ72の先端位置にシリンダ71とプラグ72とによる溝部74cが形成されるようになっている。
【0072】
さらに、プラグ72の中心孔72aは、挿入方向後方でも部分的に径が拡大されており、この部分にオイルシール(シール部材)122が備えられている。このように、シール部材121よりもモータ60側にオイルシール122を配置することで、基本的には、シール部材121によって中心孔72aを通じた外部へのブレーキ液洩れを防止し、オイルシール122により、より確実にその効果が得られるようにしている。
【0073】
このように構成されたポンプ本体100の外周において、各部のシールを行うように環状シール部材としてのOリング73a〜73dが備えられている。これらOリング73a〜73dは、ハウジング101に形成された2系統の系統同士の間や各系統の吐出経路と吸入経路との間などにおけるブレーキ液をシールするものである。Oリング73aは吐出口80および吐出用管路90と吸入口81および吸入用管路91との間、Oリング73bは吸入口81および吸入用管路91と吸入口83および吸入用管路93の間、Oリング73cは吸入口83および吸入用管路93と吐出口82および吐出用管路92の間、Oリング73dは吐出口82および吐出用管路92とハウジング101の外部の間に配置されている。Oリング73a、73c、73dは、回転軸54を中心として周方向を一周囲むように単に円形状に配置されているが、Oリング73bは、回転軸54を中心として周方向を囲んでいるものの軸方向にずらして配置されることで、回転軸54の軸方向において寸法縮小を可能にしている。
【0074】
なお、Oリング73a〜73dが配置できるように、ポンプ本体100の外周には溝部74a〜74dが備えられている。溝部74a、74bは、シリンダ71の外周を部分的に凹ませることで形成されている。凹部74cは、シリンダ71の外周の凹ませた部分とプラグ72の先端部分によって形成されている。凹部74dは、プラグ72の外周を部分的に凹ませることで形成されている。このような各溝部74a〜74d内にOリング73a〜73dが嵌め込まれた状態でポンプ本体100をハウジング101の凹部101a内に挿入することで、各Oリング73a〜73dが凹部101aの内壁面に押し潰され、シールとして機能させられる。
【0075】
さらに、プラグ72の外周面は、挿入方向後方において縮径され、段付き部を構成している。上記したリング状の雄ネジ部材102はこの縮径された部分に嵌装され、ポンプ本体100が固定されるようになっている。
【0076】
以上のような構造によって回転式ポンプ装置が構成されている。このように構成された回転式ポンプ装置では、内蔵された回転式ポンプ19、39の回転軸54がモータ60の回転軸によって回転させられることにより、ブレーキ液の吸入・吐出というポンプ動作を行う。これにより、車両用ブレーキ装置によるアンチスキッド制御などの車両運動制御が為される。
【0077】
また、回転式ポンプ装置では、ポンプ動作を行うに際し、両シール機構111、112に備えられた樹脂部材111a、112aのうちの回転式ポンプ19、39とは反対側に回転式ポンプ19、39の吐出圧が導入される。このため、高圧な吐出圧が両シール機構111、112をシリンダ71の外側から押圧する方向に加えられ、両シール機構111、112のシール面111c、112cを回転式ポンプ19、39に押し付けると共に、シリンダ71に回転式ポンプ19、39の軸方向他端面を押し付ける。これにより、両シール機構111、112によって回転式ポンプ19、39の軸方向一端面をシールしつつ、シリンダ71によって回転式ポンプ19、39の軸方向他端面をメカニカルシールすることができる。
【0078】
このような構成の回転式ポンプ装置では、回転軸54において回転式ポンプ39の駆動を行う回転駆動部54dについては両側にベアリング51、52が配置された両持ち構造となり、回転式ポンプ19の駆動を行う回転駆動部54cについては片側にベアリング51、52が配置された片持ち構造となる。そして、回転軸54のうち回転式ポンプ19よりも先端側(図2−a、図2−bにおける左側)が自由端となる。このため、回転式ポンプ19の回転駆動部54cよりも先端側にベアリングが設けられていない分だけ回転軸54を短くすることが可能となり、ひいては回転式ポンプ装置全体の軸方向長さを短くすることが可能となる。
【0079】
また、このような構成の回転式ポンプ装置では、ブレーキ液の吐出量の大きな回転式ポンプ39の回転駆動部54dの方が吐出量の小さな回転式ポンプ19の回転駆動部54cよりも、回転軸54に加える径方向荷重が大きくなるため、回転式ポンプ39の回転駆動部54dの方が定常負荷が大きくなり、回転式ポンプ19の回転駆動部54cの方が定常負荷が小さくなる。このため、本実施形態の回転式ポンプ装置では、定常負荷が大きくなる回転式ポンプ39の回転駆動部54dの両側をベアリング51、52で支持している。
【0080】
例えば、定常負荷の小さい回転式ポンプの両側にベアリングを配置した場合には、両回転式ポンプの間に配置したベアリングが回転軸から受けるラジアル荷重が大きくなる。それと比較して、本実施形態のように、定常負荷の大きい回転式ポンプ39の両側にベアリング51、52を配置するようにすると、ラジアル荷重を小さくすることができる。このため、両回転式ポンプ19、39の間に配置したベアリング51の長寿命化を図ることが可能になる。
【0081】
特に、両回転式ポンプ19、39の間に配置されるベアリング51については、軸方向の両側に駆動対象となる回転式ポンプ19、39が配置されることから、例えば回転式ポンプ39よりも回転軸54の後端側に位置するベアリング52と比較してメンテナンス性に難が有るなどの理由により、長寿命化が望まれる。このため、ベアリング51の長寿命化を図ることは、メンテナンスの観点からも有効である。
【0082】
また、本実施形態の回転式ポンプ装置では、各回転式ポンプ19、39の回転位相を異ならせてあるため、各回転式ポンプ19、39から回転軸54の回転駆動部54c、54dに加えられる径方向荷重の方向を異ならせることができる。このため、各回転式ポンップ19、39の回転位相を同じにした場合と比較して、回転軸54の振動のピークを抑制することができる。特に、本実施形態のように、各回転式ポンプ19、39の回転位相を180°ずらすと、これらポンプ19、39から回転駆動部54c、54dに加えられる径方向荷重の方向を真逆にできるため、回転軸54に加えられる荷重を相殺して最も低減することが可能になる。これにより、より回転軸54の振動のピークを抑制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態の回転式ポンプ装置のように、定常負荷が大きくなる回転式ポンプ39については両側をベアリング51、52で支持した両持ち構造とし、回転式ポンプ19については片側をベアリング51、52で支持した片持ち構造とする場合、よりベアリング51に加えられる荷重を軽減できると共に、より短軸化が可能になるという実験結果も得られた。これについて、図4および図5を参照して説明する。
【0084】
図4(a)、(b)は、従来と本実施形態の回転式ポンプ装置の回転軸54に対する荷重の加わり方と支持位置との関係の一例を示した模式図である。図5は、回転軸54において回転式ポンプ39の駆動を行う回転駆動部54dの位置変化に対する両ベアリング51、52に加わる荷重の絶対値の変化の一例を示したグラフである。なお、図5は、座標の左下交点(原点)をL2、荷重共に0(ゼロ)とし、各座標において各目盛りは等間隔かつ同じ数値幅である(正比例関係が直線で示されるグラフ)。
【0085】
図4では、回転軸54の先端側のベアリング51での支持点をR1、回転軸54の後端側(モータ側)のベアリング52での支持点をR2、回転軸54の先端側と後端側の各回転式ポンプ19、39の回転駆動部54c、54dの位置G1、G2に加えられる荷重をF1、F2として表してある。そして、図4(a)に示す従来の回転式ポンプ装置では、支持点R1から位置G1までの距離をL1、支持点R1から位置G2までの距離をL2、支持点R1から支持点R2までの距離をL3としている。また、図4(b)に示す本実施形態の回転式ポンプ装置では、位置G1から支持点R1までの距離をL1、位置G1から位置G2までの距離をL2、位置G1から支持点R2までの距離をL3としている。
【0086】
距離L1、L3を固定した状態で回転軸54の後端側の回転式ポンプ39の位置を変えて距離L2を変化させたところ、各ベアリング51、52に加わる荷重の変化は図5に示す結果となった。
【0087】
回転軸54の後端側のベアリング52については、距離L2が長くなるほど加えられる荷重が大きくなる。これは、回転軸54の後端側の回転式ポンプ39が回転軸54の後端側のベアリング52に近づくために、当該ベアリング52によって回転軸54の後端側の回転式ポンプ39から加えられる荷重を支持しなければならない割合が大きくなるためである。この荷重は、距離L2の変化に対して連続的に増加する関係となり、従来と本実施形態いずれの回転式ポンプ装置であっても変らない。
【0088】
一方、回転軸54の先端側のベアリング51については、距離L2が長くなるに従って加えられる荷重が小さくなり、ある点(従来構造では距離L2がx2の位置、本実施形態の構造では距離L2がx1の位置)で荷重が最小(ゼロ)になり、その点を境界として荷重の方向が変化して再び増加する。これは、回転位相が180°ずらしてある2つの回転式ポンプ19、39や回転軸54から加わる荷重が互いに打ち消しあうことから、その荷重の釣り合い位置において荷重が最小となり、その点を境界として荷重が加わるためである。
【0089】
この荷重が最小になる点を見てみると、従来構造では距離L2がx2の位置、本実施形態の構造では距離L2がx1の位置となっており、本実施形態の方がより距離L2が短くなったときに荷重が最小になっていることが判る。このことからも、本実施形態の構造とすることにより、より回転軸54を短軸化してベアリング51に加えられる荷重を低減することが可能となり、更なる回転式ポンプ装置の軸方向長さの縮小が図れ、かつ、ベアリング51の長寿命化を図ることが可能になることが判る。
【0090】
なお、本実施形態の回転式ポンプ装置では、回転軸54の軸方向においてベアリング51とシール部材120を並べて配置してあり、ベアリング51の方がシール部材120よりも回転軸54の先端側に配置してある。これらの配置については任意であり、シール部材120の方がベアリング51よりも回転軸54の先端側に配置されるようにしても良い。
【0091】
ただし、ベアリング51の方がシール部材120よりも回転軸54の先端側に配置すると、ベアリング51とベアリング52との間の距離を稼ぐことができ、より回転軸54の傾斜を小さくすることが可能となる。このため、回転軸54とモータ60側の回転軸との軸ズレを抑制できるし、シール部材120、121やオイルシール122の中心軸からのズレ(偏心)を抑制してシール性が向上できるなどの効果が得られる。
【0092】
(他の実施形態)
上記実施形態では、回転機械としてポンプ駆動装置の一例である回転式ポンプ装置を例に挙げて説明したが、他のポンプ駆動装置もしくは他の回転機械に対しても本発明を適用できる。他のポンプ駆動装置としては、例えば、複数のピストンポンプの駆動用カムを同じ回転軸で駆動するポンプ駆動装置が挙げられる。上記実施形態の場合には、回転式ポンプ装置を例に挙げたため、回転式ポンプ19、39に係る回転軸54の回転駆動部54c、54dがポンプ駆動部となるが、複数のピストンポンプの駆動用カムを同じ回転軸で駆動するポンプ駆動装置の場合には、駆動用カムがポンプ駆動部となる。また、他の回転機械としては、例えばエンジンの各気筒を動作させるカムを駆動するエンジン駆動装置が挙げられる。上記したようにポンプ駆動装置に対して本発明を適用する場合、ポンプ駆動部が駆動反力承継部となるが、エンジン駆動装置に対して本発明を適用する場合には、エンジンの各気筒を動作させるカムが駆動反力承継部となる。
【0093】
また、上記実施形態では、2つの回転式ポンプ19、39の回転駆動部54c、54d、つまり2つの駆動反力承継部を備えたポンプ駆動装置を例に挙げたが、少なくとも2つの駆動反力承継部が備えられた回転機械に対して本発明を適用することができ、2つよりも多くの駆動反力承継部が備えられる回転機械であっても良い。
【0094】
また、上記実施形態では、各回転式ポンプ19、39の回転位相を180°ずらしているが、回転式ポンプ19、39を2つにする場合に最も回転軸54に加えられる荷重を低減できる角度が180°なのであり、回転位相のずれを180°以外の角度にしても良い。特に、駆動反力承継部の数が2つよりも多くされる場合、その駆動反力承継部の数に応じて各駆動反力承継部から回転軸に加えられる荷重が相殺されるように、各駆動反力承継部の回転位相をずらすようにすると好ましい。
【符号の説明】
【0095】
100…ポンプ本体、101…ハウジング、101a…凹部、19、39…回転式ポンプ、51、52…ベアリング、54…回転軸、54c、54d…回転駆動部、60…モータ、71…シリンダ、72…プラグ、80、82…吐出口、81、83…吸入口、120…シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向にずらして配置され、駆動対象(19、39)から回転位相の異なる径方向反力を定常負荷として受ける2つの駆動反力承継部(54c、54d)を有する回転軸(54)と、
前記回転軸(54)を回転可能に支持する軸受(51、52)とを有し、
前記軸受(51、52)によって支持した状態で前記回転軸(54)を回転させることによって、前記駆動反力承継部(54c、54d)を介して前記駆動対象(19、39)を駆動する回転機械において、
前記2つの駆動反力承継部(54c、54d)のうち定常負荷が大きい方の駆動反力承継部(54d)の軸方向両側それぞれに前記軸受(51、52)が設けられ、
前記2つの駆動反力承継部(54c、54d)のうち定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)側における前記回転軸(54)の端部については、前記定常負荷が小さい方の駆動反力承継部(54c)よりも先端側を自由端としていることを特徴とする回転機械。
【請求項2】
軸方向にずらして配置され、吐出量および回転位相の異なる2つのポンプ(19、39)のポンプ駆動部を有する回転軸(54)と、
前記回転軸(54)を回転可能に支持する軸受(51、52)とを有し、
前記軸受(51、52)によって支持した状態で前記回転軸(54)を回転させることによって、前記ポンプ駆動部を介して前記駆動対象(19、39)を駆動するポンプ駆動装置において、
前記2つのポンプ駆動部のうち吐出量が大きい方のポンプ(39)のポンプ駆動部の軸方向両側それぞれに前記軸受(51、52)が設けられ、
前記2つのポンプ駆動部のうち吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部側における前記回転軸(54)の端部については、前記吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部よりも先端側を自由端としていることを特徴とするポンプ駆動装置。
【請求項3】
前記2つのポンプは回転式ポンプ(19、39)であり、前記2つのポンプ駆動部の間には、前記軸受(51、52)のうちの1つと共に前記2つの回転式ポンプ(19、39)の間のシールを行うシール部材(120)が配置されており、前記軸受(51、52)のうちの1つの方が前記シール部材(120)よりも前記2つのポンプ駆動部のうち前記吐出量が小さい方のポンプ(19)のポンプ駆動部側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のポンプ駆動装置。

【図1】
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【図2−a】
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【図2−b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92067(P2013−92067A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233088(P2011−233088)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】