説明

回転治具

【課題】手回しねじのノブの締め付け、取り外しを高速で行う。
【解決手段】電動ドリル20に把持されるシャフト12が取り付けられた円板状のベース11と、ベース11に取り付けられ、シャフト12と反対方向に延び、手回しねじ30のノブ31を圧縮保持する円筒体13とを備え、電動ドリル20に取り付けて手回しねじ30のノブ31を回転させる回転治具10であって、円筒体13は、弾性体で、その内形は、ノブ31の外形よりも僅かに小さく、その先端に軸方向に伸びる複数の切り欠き14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手回しねじのノブを回転させる回転治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータや空調機の組立には多くのねじ類が使用されており、メンテナンスの際にはこれらのねじ類の取り付け取り外しを行うことが必要となってくる。ねじ類の頭は規格品の六角形のものや六角穴のものが多く、これらの取り付け取り外しは、規格寸法に合ったレンチ、スパナ等を電動のインパクトレンチ或いは電動ドリルに取り付けて行うことで作業効率を上げている。
【0003】
また、ねじ孔内面の清掃などのように、インパクトレンチや電動ドリルなどに規格品の工具を取り付けたのみでは適切に作業ができない場合には、インパクトレンチや電動ドリルの回転軸とタップ等の他の工具とをアダプタによって接続し、作業効率を上げることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−51701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空調機器等のビル設備機器では、点検の回数が多い部位には簡単に開閉できる蓋或いはカバーが取り付けられている場合が多い。このような場合には、スパナや六角レンチなどの工具を用いずに簡単にカバーの取り外しが行えるように、手回しねじによってカバーや蓋をケーシングに固定している。手回しねじのノブは、六角ボルトのような規格品ではなく、人間がつまんで回転させることができる様々な形状をしていることから、これらを規格品の工具によって回転させることができず、分解、開放に時間が掛かってしまう場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、手回しねじのノブの締め付け、取り外しを高速で行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回転治具は、回転工具に把持されるシャフトが取り付けられた板状のベースと、前記ベースに取り付けられ、前記シャフトと反対方向に延び、手回しねじのノブを圧縮保持する筒体とを備え、前記回転工具に取り付けて手回しねじの前記ノブを回転させる回転治具であって、前記筒体は、弾性体で、その内形は、前記ノブの外形よりも僅かに小さく、その先端に軸方向に伸びる複数の切り欠きを有すること、を特徴とする。
【0008】
本発明の回転治具において、前記弾性体の切り欠きは、先端に向かうほどその幅が広く、軸方向に前記ノブに押し当てた際に前記先端の内形が前記ノブの外形に沿って開き、前記ノブを周囲から圧縮保持すること、としても好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、手回しねじのノブの締め付け、取り外しを高速で行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における回転治具を電動ドリルのチャックに取り付けた状態示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における回転治具の正面図と側面図である。
【図3】本発明の実施形態における回転治具をねじのノブにはめ込んだ状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態における回転治具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す様に、本実施形態の回転治具10は、回転工具である電動ドリル20のチャック21に把持されるシャフト12が取り付けられた円板状のベース11と、ベース11に取り付けられ、シャフト12の反対方向に延び、手回しねじ30のノブ31を圧縮保持する円筒体13とを備えている。円筒体13は、ゴム等の弾性体で、その内形は、ノブ31の外形よりも僅かに小さく、その先端に軸方向に伸びる複数の切り欠14と、切り欠き14の間の保持ツメ15とを有している。
【0012】
図2(a)に示す様に、シャフト12は、中心線17に沿って伸びる金属製の丸棒であり、電動ドリル20やトルクレンチ等の回転工具のチャック21で把持することができる程度の直径となっている。ベース11は金属製或いは、樹脂製の円板であって、その外周面にはゴム等の弾性体の円筒体13がはめ込まれて固定されている。円筒体13の内形Dは、手回しねじ30のノブ31の外形よりも少し小さくなっている。円筒体13の先端、或いはシャフト12と反対側には端部からベース11の方に向かって軸方向に伸びる長方形の切り欠き14が設けられている。そして、切り欠き14の間には長方形の保持ツメ15が形成されている。図2(b)に示す様に、円筒体13の切り欠き14は4つであり、保持ツメ15は5枚となっている。
【0013】
図3に示すように、電動ドリル20のチャック21に取り付けられた回転治具10を空調装置のケーシング40にねじ込まれている手回しねじ30のノブ31に向かって押し付けると、図3の一点鎖線で示す様に、各保持ツメ15の先端はノブ31の角の丸みに沿ってノブ31の外周側に向かって広がり、各切り欠き14は保持ツメ15の内形が広がるので、その幅が先端に向かって広くなる台形形状に広がっていく。
【0014】
円筒体13はゴム等の弾性体であるので、各保持ツメ15はノブ31によって外周側に向かって変形した反力によってノブ31の外周を締め付け、ノブ31の外周を圧縮支持する。この状態で、電動ドリル20を回転させると円筒体13はノブ31を圧縮支持した状態で手回しねじ30を回転させ、手回しねじ30をケーシング40から取り外す。また、手回しねじ30をケーシング40に取り付ける際には、手回しねじ30のノブ31に円筒体13をはめ込んで円筒体13に手回しねじ30のノブ31を圧縮保持させた状態で、ねじ部33をケーシング40に入れて電動ドリルを回転させることによって手回しねじ30をケーシング40に取り付けることができる。
【0015】
以上説明したように、本実施形態の回転治具10を電動ドリル20やトルクレンチ等の電動回転工具の先端にセットすることによって、手回しねじ30のノブ31の締め付け、取り外しを高速で行うことができる。
【0016】
以上説明した実施形態では、長方形で保持ツメ15により手回しねじ30のノブ31の外周を圧縮保持することとして説明したが、保持ツメ15の一部が図1に示すノブ31の窪み32にはまり込むようことができるような幅としてもよい、この場合、保持ツメ15の半径方向の圧縮力のみでなく保持ツメ15の側面と窪み32の係合により手回しねじ30を回転させる回転トルクを発生させることができ、手回しねじ30をより強く締め付けたり、締め付けの強い手回しねじ30を取り外したりすることを容易に行うことができる。また、本実施形態では、筒体は円筒形状の円筒体13とし、ベース11は円板状であることとして説明したが、筒体は円筒形である必要はなく六角形、八角形などの多角形筒であり、ベース11は多角形の板であっても良い。
【0017】
本実施形態では、切り欠き14、保持ツメ15はそれぞれ長方形として説明したが、図4に示す様に、三角形の切り欠き14aとし、先端に行くに従って幅が狭くなるような台形形状の保持ツメ15aとして構成しても良い。本実施形態は先に説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0018】
10 回転治具、11 ベース、12 シャフト、13 円筒体、14,14a 切り欠き、15,15a 保持ツメ、20 電動ドリル、21 チャック、30 手回しねじ、31 ノブ、32 窪み、33 ねじ部、40 ケーシング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転工具に把持されるシャフトが取り付けられた板状のベースと、
前記ベースに取り付けられ、前記シャフトと反対方向に延び、手回しねじのノブを圧縮保持する筒体とを備え、
前記回転工具に取り付けて手回しねじの前記ノブを回転させる回転治具であって、
前記筒体は、弾性体で、その内形は、前記ノブの外形よりも僅かに小さく、その先端に軸方向に伸びる複数の切り欠きを有すること、
を特徴とする回転治具。
【請求項2】
請求項1に記載の回転治具であって、
前記弾性体の切り欠きは、先端に向かうほどその幅が広く、軸方向に前記ノブに押し当てた際に前記先端の内形が前記ノブの外形に沿って開き、前記ノブを周囲から圧縮保持すること、
を特徴とする回転治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91139(P2013−91139A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235529(P2011−235529)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)