説明

回転炉床炉のシールトラフ装置

【課題】ダストの沈降を防止して長期間に亘り水封機能を維持することが可能な回転炉床炉のシールトラフ装置を提供する。
【解決手段】下方に開口した環状加熱室11と、環状加熱室11内に配置されて回転する環状の回転炉床台車12とを備えた回転炉床炉14に設けられ、環状加熱室11と回転炉床台車12との隙間をシールするシールトラフ装置10において、環状加熱室11の内周側炉壁15と回転炉床台車12の内周部との隙間の下方に配置される環状の内周側シールトラフ22及び環状加熱室11の外周側炉壁16と回転炉床台車12の外周部との隙間の下方に配置される環状の外周側シールトラフ23に、それぞれ複数の排水口26、27と、複数の給水口52とを設け、シール水を複数の排水口26、27から排水しながら、複数の給水口52から供給して、内、外周側シールトラフ22、23内にシール水の流れを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事前に乾燥し水分を適度に除去した鉄鉱石又は製鉄廃棄物を原料とし、主として還元鉄を製造する回転炉床炉(移動式炉床炉)に設けられるシールトラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールトラフ(水封トラフ)内の封止水(シール水)中にシールプレートの一部を浸漬して水封を行う場合、シールトラフ内にダストが侵入すると、シールトラフ内にダストが堆積してシールトラフに閉塞が生じ、所期の水封機能を長期間に亘り安定して維持することが困難となる。このため、例えば、シールトラフ内に空気配管を浸漬して空気を送給し、空気配管の側面に設けた噴出孔から空気を噴出させ、発生した気泡の流動でシールプレートへのダスト付着を防止するとともに、ダストの浮上及び搬送を行う水封シール安定化技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この水封シール安定化技術は、還元鉄を製造する回転炉床炉では、炉内で原料を還元させるために炉内雰囲気を高温の還元雰囲気に維持する必要があり、酸化雰囲気となる空気は使用できない。そこで、空気の代わりに窒素ガスを使用することが考えられるが、常時、窒素ガスを噴出させると、噴出させた窒素ガスの一部は回転炉床炉内に侵入し炉内温度低下を招くという問題が生じる。更に、回転炉床炉では、下方に開口した環状加熱室内に環状加熱室と同心に配置されて回転する円環状の回転炉床台車の内周部及び外周部に沿って内周側シールトラフ及び外周側シールトラフがそれぞれ設けられているため、周長が長くなってバブリングだけでは封止水中のダスト濃度を一定レベル以下に保つことができず、しかもダスト比重が大きいため沈降し易く、長期間に亘って水封機能を維持することができないという問題がある。
【0003】
このため、図7、図8に示すように、回転炉床炉100の内周側シールトラフ101及び外周側シールトラフ101aにそれぞれ封止水の補給水口102、102a及び排水口103、103aを設け、回転炉床台車104の内周部及び外周部に全周に亘ってそれぞれ設けた内、外シールプレート105、105aの下部側に掻き板106、106aを取付けている。そして、補給水口102、102aからの供給水量と排水口103、103aからの排水量を調整することで、内周側シールトラフ101内及び外周側シールトラフ101a内の封止水レベルを一定に保ちながら、回転炉床台車104の回転に伴って掻き板106、106aで沈降したダストを掻き揚げてダストの堆積が生じないようにして、水封機能の低下を防止すると共に、掻き板106、106aが掻き集めたダストを、内周側シールトラフ101内及び外周側シールトラフ101a内の1又は2箇所にそれぞれ設けた排出孔107、107aから排出し、ダスト排出用のスクリューコンベア108、108aを介して外部に排出し、内周側シールトラフ101内及び外周側シールトラフ101a内のシール水中のダスト濃度が上昇することを防止している。
なお、符号109は原料、符号110は環状加熱室、符号111は炉殻、符号112は封止水である。また、符号113は環状加熱室110の内周側炉壁、符号114は環状加熱室110の外周側炉壁、符号115は環状加熱室110の天井炉壁、符号116は内周側炉壁113の下部に取付けられたシールプレート、符号117は外周側炉壁114の下部に取付けられたシールプレートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平8−19414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転炉床台車104の回転速度は、例えば0.1m/秒と遅いため、掻き板106、106aの移動速度も遅くなって、掻き板106、106aで掻き揚げられたダストは排出孔107、107aに到達する前に重力沈降し、内周側シールトラフ101内及び外周側シールトラフ101a内で掻き板106、106aの通り道となる領域を除いた部分にはダストが堆積するという問題が生じる。更に、堆積したダストはスラリー状であるため、スクリューコンベア108、108aでは排出することができず、内、外周側シールトラフ101、101a内のダスト量が増加して内、外周側シールトラフ101、101aに閉塞が発生すると水封止が機能しなくなり、長期間に亘って水封機能を維持することが困難となっている。そのため、回転炉床炉100の操業を定期的に停止し、回転炉床炉100から内、外周側シールトラフ101、101aを取外して堆積したダストを除去しなければならず、回転炉床炉100の稼働率が低下するという問題が生じている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ダストの沈降を防止して長期間に亘り水封機能を維持することが可能な回転炉床炉のシールトラフ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置は、下方に開口した環状加熱室と、該環状加熱室内に該環状加熱室と同心に配置されて回転する環状の回転炉床台車とを備えた回転炉床炉に設けられ、前記環状加熱室と前記回転炉床台車との隙間をシールする回転炉床炉のシールトラフ装置において、
前記環状加熱室の内周側炉壁と前記回転炉床台車の内周部との隙間の下方に配置される環状の内周側シールトラフ及び前記環状加熱室の外周側炉壁と前記回転炉床台車の外周部との隙間の下方に配置される環状の外周側シールトラフに、それぞれ複数の排水口と複数の給水口とを設け、
前記内、外周側シールトラフ内のシール水を前記複数の排水口から排水しながら、前記複数の給水口から該内、外周側シールトラフ内にシール水を供給して、該内、外周側シールトラフ内にシール水の流れを形成し、該内、外周側シールトラフ内に落下したダストをシール水と共に前記複数の排水口から外部に排出している。
【0008】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記複数の給水口は、前記内、外周側シールトラフの底部及び側部のいずれか一方又は双方にそれぞれ設けられ、前記複数の排水口は、前記内、外周側シールトラフの底部にそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフには、該内、外周側シールトラフの設定水位を超えるシール水を外部に放水する放水口がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記排出口から排水されたシール水は水処理設備又は受水槽に送水され、送水されたシール水はシール水中のダストが除去されてから前記給水口に戻されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフに複数の撹拌ポンプをそれぞれ設けて、該内、外周側シールトラフ内のシール水をそれぞれ撹拌することが好ましい。
【0012】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、新たなシール水を供給する補給水供給手段が設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフ内にはシール水の流れを減衰させない形状を有する掻き板が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置においては、内、外周側シールトラフ内のシール水を複数の排水口から排水しながら、複数の給水口から内、外周側シールトラフ内にシール水を供給して、内、外周側シールトラフ内にシール水の流れを形成し、内、外周側シールトラフ内に落下して底部に沈降しようとするダストをシール水と共に内、外周側シールトラフの外部に排出することができるので、内、外周側シールトラフの底部にダストの堆積層が形成されることを防止できる。その結果、内、外周側シールトラフの底部にダストのヘドロが形成されることが防止され、環状加熱室と回転炉床台車との隙間のシールを長期間に亘り安定して維持することが可能になる。
そして、細かなダストの場合は、従来から使用していた掻き板が不要になるので、内、外周側シールトラフ内にシール水の流れを形成しても、シール水の流れが減衰することが防止できる。また、従来から使用していたスクリューコンベアが不要になるので、ダスト排出という付帯作業が不要になって、作業能率を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、複数の給水口が、内、外周側シールトラフの底部及び側部のいずれか一方又は双方にそれぞれ設けられ、複数の排水口が、内、外周側シールトラフの底部にそれぞれ設けられている場合、内、外周側シールトラフの底部側において、排水口に向かうシール水の流れが形成されて、底部に沈降したダストを排水口まで運んで排出させることができる。
【0016】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、内、外周側シールトラフに、内、外周側シールトラフの設定水位を超えるシール水を外部に放水する放水口がそれぞれ設けられている場合、排出口から排水されるシール水の総水量と、給水口から供給されるシール水の総水量のバランスが崩れても、内、外周側シールトラフ内のシール水が外部に溢れ出ることを防止すると共に、内、外周側シールトラフ内のシール水を一定の水位に保つことができる。
【0017】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、排出口から排水されたシール水を水処理設備又は受水槽に送水し、シール水がシール水中のダストが除去されてから給水口に戻される場合、内、外周側シールトラフ内にダストを含まないシール水を供給することができ、内、外周側シールトラフ内のシール水中のダスト濃度が上昇することを防止できる。
【0018】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、内、外周側シールトラフに複数の撹拌ポンプをそれぞれ設けて、内、外周側シールトラフ内のシール水をそれぞれ撹拌する場合、内、外周側シールトラフ内に形成されるシール水の流れを増強することができ、内、外周側シールトラフの底部に沈降したダストを効率的に巻き上げることができる。これにより、内、外周側シールトラフの底部にダストの堆積層が形成されることを更に効果的に防止することができる。
【0019】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、新たなシール水を供給する補給水供給手段が設けられている場合、シール水の蒸発、飛散に伴う減少分を補填して、内、外周側シールトラフ内のシール水の水位を一定範囲に保つことができる。
【0020】
本発明に係る回転炉床炉のシールトラフ装置において、内、外周側シールトラフ内にシール水の流れを減衰させない形状を有する掻き板が設けられている場合、大きな塊となって内、外周側シールトラフ内に落下してきたダストを、排出口の位置まで運ぶことができ、あらゆる性状のダストを排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る回転炉床炉のシールトラフ装置の平面図である。
【図2】図1のP−P矢視断面図である。
【図3】(A)は本発明の一実施の形態に係る回転炉床炉のシールトラフ装置の撹拌手段の平面図、(B)は図1のQ−Q矢視断面図である。
【図4】同回転炉床炉のシールトラフ装置の受水槽の説明図である。
【図5】図1のR−R矢視断面図である。
【図6】図1のS−S矢視断面図である。
【図7】回転炉床炉に設けた従来例に係る内周側シールトラフ及び外周側シールトラフの平面図である。
【図8】図7のT−T矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る回転炉床炉のシールトラフ装置10(以下、単にシールトラフ装置10という)は、下方に開口した環状加熱室11と、環状加熱室11内に環状加熱室11と同心に配置されて回転する環状の回転炉床台車12とを備え、事前に乾燥し水分を適度に除去した鉄鉱石又は製鉄廃棄物と炭素を含む原料13を回転炉床台車12に積載して主として還元鉄を製造する回転炉床炉14に設けられて、環状加熱室11と回転炉床台車12との隙間をシールして環状加熱室11内を高温の還元雰囲気に保つためのものである。ここで、下方に開口した環状加熱室11は、2つの同心円の半径方向内側の円周上に配置される環状の内周側炉壁15と、半径方向外側の円周上に配置される環状の外周側炉壁16と、内、外周側炉壁15、16間の隙間を上方から覆って、両側がそれぞれ内、外周側炉壁15、16の上端部に連接する環状の天井炉壁17とを有している。そして、内周側炉壁15の半径方向内側と、外周側炉壁16の半径方向外側に、それぞれ環状の炉殻部材18、19を配置して内周側炉壁15及び外周側炉壁16を支持し、炉殻部材18、19の下端部を設置ベース20に固定している。なお、符号21は、環状加熱室11内に設置された図示しないレール上を移動する回転炉床台車12の走行車輪である。以下、詳細に説明する。
【0023】
図1、図2に示すように、シールトラフ装置10は、環状加熱室11の内周側炉壁15及び回転炉床台車12の内周部の隙間の下方に配置される環状の内周側シールトラフ22と、環状加熱室11の外周側炉壁16及び回転炉床台車12の外周部の隙間の下方に配置される環状の外周側シールトラフ23とを有している。ここで、内周側シールトラフ22は、内周側炉壁15の半径方向内側に配置された炉殻部材18に取付けられた支持部材24を介して、内周側炉壁15と回転炉床台車12の内周部との隙間の下方に保持されており、外周側シールトラフ23は、外周側炉壁16の半径方向外側に配置された炉殻部材19に取付けられた支持部材25を介して、外周側炉壁16と回転炉床台車12の外周部との隙間の下方に保持されている。
【0024】
そして、図1、図2に示すように、内、外周側シールトラフ22、23の底部には、それぞれ複数の排水口26、27が設けられている。また、内、外周側シールトラフ22、23には、複数の排水口26、27とは異なる位置に、複数の給水口52(図6参照)がそれぞれ設けられている。ここで、内周側シールトラフ22の底部に形成された排水口26は、連結管31を介して排水配管32に接続され、外周側シールトラフ23の底部に形成された排水口27は、連結管33を介して排水配管34に接続されている。
【0025】
図1、図6に示すように、内、外周側シールトラフ22、23の底部には、給水口52を備えた複数の給水手段53、54がそれぞれ設けられている。外周側シールトラフ23に設けられている給水手段54(内周側シールトラフ22に設けられる給水手段53も同様の構成)は、外周側シールトラフ23の底部から下方に突出して設けられた深底の窪み部55と、窪み部55に一端側が連接し他端側がシール水の流れ方向に沿って深さが徐々に浅くなって外周側シールトラフ23の底部に連接する傾斜部56と、窪み部55のシール水の流れ方向に対して上流側となる側壁57の下部中央に給水口52が配置されるように取付けられたノズル部58とを有している。なお、ノズル部58には、給水配管36を介してシール水が供給される。
【0026】
ここで、ノズル部58は、給水口52が外周側シールトラフ23の周方向に沿った一定の方向(図1では反時計回り方向)に向くように取付けられている。これによって、内、外周側シールトラフ22、23内に、内、外周側シールトラフ22、23の周方向に沿った一定の方向にシール水を放出することができる。そして、排水口26、27は、給水手段53、54に対して、シール水の流れ方向の上流側(給水手段53、54のノズル部58の基部に対して後方)に近接して配置する。このような構成とすることで、各給水手段53、54から放出したシール水を、シール水の流れ方向の下流側にある排水口26、27から排出することができ、内、外周側シールトラフ22、23内の全周に亘ってシール水の流れ(回流)を形成することができる。これにより、内、外周側シールトラフ22、23の底部に沈降しようとするダストを回流により排水口26、27に向けて運ぶことができ、排水口26、27からシール水と共にダストを内、外周側シールトラフ22、23の外部に排出することができる。更に、内、外周側シールトラフ22、23の底部側では、排水口26、27に向かうシール水の流れが形成されるので、底部に沈降したダストを排水口26、27まで運んで排出させることができる。
【0027】
各排水口26、27からそれぞれ排出されたシール水は、図4に示すように、排水配管32、34を介して受水槽41に送水される。なお、各排水口26、27からそれぞれ排出されたシール水を排水配管を介して水処理設備(図示せず)に送水するようにしてもよい。排出されたシール水を水処理設備に送水する場合、水処理設備から供給される処理済水が、水処理設備と給水配管36を接続する図示しない配管を介して給水配管36内にシール水として供給される。
【0028】
受水槽41内は、受水槽41内に設けられた堰42により、ダスト沈降槽43と、上澄み水回収槽44に分割されており、排水配管32、34から流出するシール水はダスト沈降槽43に流入する。ダスト沈降槽43では、シール水に混入しているダストが沈降するため、ダスト沈降槽43の上部側には、ダスト含有量の少ないシール水が滞留することになり、ダスト沈降槽43の上部側のシール水の一部は、堰42を越えて上澄み水回収槽44に流入する。そして、上澄み水回収槽44内に貯留されているシール水の一部は送水ポンプ45で汲み上げられ、給水配管36を介して給水手段53、54のノズル部58に供給される。このため、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水中のダスト濃度が上昇することを防止できる。
【0029】
また、上澄み水回収槽44には、新たなシール水を供給する補給水供給手段48が設けられている。ここで、補給水供給手段48は、上澄み水回収槽44内のシール水の水位が下限水位に到達したこと、上限水位に到達したことをそれぞれ検知して下限信号、上限信号を出力する水位計(図示せず)と、水位計から下限信号が出力された際に開となり、水位計から上限信号が出力された際に閉となる開閉弁49が設けられた導水配管49aとを有している。これによって、シール水の蒸発、飛散に伴う減少分を補填すると共に、排水口26、27から排水されるシール水の総水量より、給水手段53、54(給水口52)より供給するシール水の総水量が多くなっても、上澄み水回収槽44内のシール水の水位を管理することができ、上澄み水回収槽44から常に一定量のシール水を給水手段53、54に供給することができる。
【0030】
なお、ダスト沈降槽43の下部側には、ダストが徐々に沈降してくるので、定期的にダストの排出が必要となる。ダストを排出する場合、ダスト撹拌ポンプ46を運転して、ダストをダスト沈降槽43内のシール水中に再分散させ、ダストが再分散したシール水は送水ポンプ47でダスト沈降槽43から排出し、水処理設備へ送水する。このダスト排出は、回転炉床炉14の休止時又はダスト沈降槽43の上澄み水が、上澄み水回収槽44に流入しない水位レベル状態にて行う。
【0031】
図5に示すように、外周側シールトラフ23(内周側シールトラフ22も同様)の上部側方には、外周側シールトラフ23内のシール水の水位が設定水位を超えた際に、シール水を外周側シールトラフ23の外部に放水する放水口50が設けられている。そして、放水口50は、連通管51を介して排水配管34に接続している。このような構成とすることにより、排出口26、27から排水されるシール水の総水量と、給水手段53、54の給水口52から供給するシール水の総水量のバランスが崩れても、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水が設置ベース20の上に溢れ出ることを防止すると共に、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水を一定の水位に保つことができる。
【0032】
図1に示すように、排水口26、27及び給水手段53、54のノズル部58がそれぞれ設けられた内、外周側シールトラフ22、23の底部の位置とは異なる底部の場所には、図3に示すような撹拌ポンプ38を備えた撹拌手段29、30がそれぞれ設けられている。外周側シールトラフ23に設けられる撹拌手段30(内周側シールトラフ22に設けられる撹拌手段29も同様の構成)は、設置ベース20に設けられて外周側シールトラフ23を下方から支持する支持台35と、支持台35に取付けられ、外周側シールトラフ23と連通してシ−ル水を貯留する水タンク部37と、水タンク部37内に設けられて、水タンク部37内のシール水を汲み出す撹拌ポンプ38と、外周側シールトラフ23の底部に固定され、基部が連絡管39を介して撹拌ポンプ38の出口と接続し、先部にシール水の流れ方向に向いた送水口28を備えた送水ノズル部40とを有している。
【0033】
このような構成とすることで、水タンク部37内のシール水を撹拌ポンプ38を介して送水ノズル部40から送水することにより形成するシール水の撹拌流を、給水手段53、54及び排水口26、27を設けて形成したシール水の流れに混合させることができ、内、外周側シールトラフ22、23内に形成されるシール水の流れを増強することができ、内、外周側シールトラフ22、23の底部に沈降したダストを効率的に巻き上げることができる。これにより、内、外周側シールトラフ22、23の底部にダストの堆積層が形成されることを更に効果的に防止することができる。
【0034】
なお、シ−ル水を貯留する水タンク部37の底には、水タンク部37の底部に沈降したダストを排出するドレン配管63が設けられている。そして、ドレン配管63には、第1、第2のドレン排出弁64、65が直列に設置され、回転炉床炉14が稼働中であっても、交互に第1、第2のドレン排出弁64、65の開閉を行うことで、少量のシール水と一緒に水タンク部37に沈降したダストを排出することができる。
【0035】
環状加熱室11の内周側炉壁15及び回転炉床台車12の内周部には、それぞれシールプレート59、60が取付けられ、シールプレート59、60の先側は内周側シールトラフ22内のシール水中に浸漬している。また、環状加熱室11の外周側炉壁16及び回転炉床台車12の外周部には、それぞれシールプレート61、62が取付けられ、シールプレート61、62の先側は外周側シールトラフ23内のシール水中に浸漬している。そして、シールプレート60、62の下部側には、シール水の流れを減衰させない形状(例えば、リング状もしくはV字状)を有する掻き板66、67がそれぞれ取付けられている。
【0036】
続いて、本発明の一実施の形態に係るシールトラフ装置10の作用について説明する。
内、外周側シールトラフ22、23にそれぞれ設けられた複数の給水手段53、54のノズル部58の給水口52から内、外周側シールトラフ22、23内にシール水を放出し、シール水の放出方向(シール水の流れ方向)の下流側の内、外周側シールトラフ22、23の底部にそれぞれ形成された排水口26、27から排出するので、内、外周側シールトラフ22、23内の全周に亘ってシール水の流れ(回流)を形成できる。そして、排水口26、27及び給水手段53、54のノズル部58がそれぞれ設けられた内、外周側シールトラフ22、23の底部の位置とは異なる底部の場所に撹拌ポンプ38を備えた撹拌手段29、30を設けてシール水の撹拌流を形成するので、内、外周側シールトラフ22、23内に形成した回流と混合させて、回流の流れを増強することができる。
【0037】
ここで、給水口52から放出するシール水量、排水口26、27の寸法は、内、外周側シールトラフ22、23内に形成される回流の流速が0.5m/秒以上となるように、内、外周側シールトラフ22、23の断面積に応じて決める。なお、回流の流速を速くするほど内、外周側シールトラフ22、23内にダストの堆積が発生しないようになるが、回流の流速を速くするほど設備コストも上昇するので、経済性を考慮すると、回流の流速上限は、1.5m/秒程度とするのがよい。
また、効果的な撹拌流を形成するためには、撹拌ポンプ38の吐出量は、給水口52から放出するシール水量に対して、例えば、30〜60%の範囲とする。
【0038】
そして、増強された回流によって、内、外周側シールトラフ22、23の底部に沈降しようとするダストは排出口26、27まで運ばれ、内、外周側シールトラフ22、23の底部に沈降したダストの一部は巻き上げられて排出口26、27まで運ばれ、内、外周側シールトラフ22、23の底部に沈降したダストの更に一部は内、外周側シールトラフ22、23の底部付近を流れる回流により排水口26、27まで運ばれ、シール水と共に排出口26、27から排出する。これにより、内、外周側シールトラフ22、23の底部にダストの堆積層が形成されることを防止でき、環状加熱室11の内周側炉壁15及び回転炉床台車12の内周部にそれぞれ取付けられたシールプレート59、60の先側を内周側シールトラフ22内のシール水中に浸漬し、環状加熱室11の外周側炉壁16及び回転炉床台車12の外周部にそれぞれ取付けられたシールプレート61、62の先側を外周側シールトラフ23内のシール水中に浸漬することで、環状加熱室11と回転炉床台車12との隙間のシールを長期間に亘り安定して維持することが可能になる。
また、シールプレート60、62の下部側にシール水の流れを減衰させない形状を有する掻き板66、67が取付けられているので、内、外周側シールトラフ22、23内の大きな塊のダストを、排出口26、27の位置あるいは撹拌手段29、30の水タンク部37の位置に掻き集めることができ、排水配管32、34あるいはドレン配管63を介してあらゆる性状のダストの排出が可能となる。
【0039】
ここで、内、外周側シールトラフ22、23の上部側方に放水口50をそれぞれ設けることにより、排出口26、27から排水されるシール水の総水量と、給水口52から供給されるシール水の総水量のバランスが崩れても、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水が外部に溢れ出ることを防止している。また、補給水供給手段48を設けて、シール水の蒸発、飛散に伴う減少分を補填している。これによって、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水の水位を一定範囲に保つことができる。
更に、内、外周側シールトラフ22、23の排出口26、27から排水されたシール水を受水槽41に貯留する場合は、シール水中のダストを除去してから給水口52を介して内、外周側シールトラフ22、23内に戻すので、内、外周側シールトラフ22、23内のシール水中のダスト濃度が上昇することを防止できる。
【0040】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、複数の給水手段にそれぞれ設けられているノズル部を内、外周側シールトラフの側部に取付けることにより、複数の給水口を内、外周側シールトラフの側部に設けることができる。更に、ノズル部を内、外周側シールトラフの底部及び側部に取付けることにより、複数の給水口を内、外周側シールトラフの底部及び側部に設けるようにしてもよい。
なお、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10:シールトラフ装置、11:環状加熱室、12:回転炉床台車、13:原料、14:回転炉床炉、15:内周側炉壁、16:外周側炉壁、17:天井炉壁、18、19:炉殻部材、20:設置ベース、21:走行車輪、22:内周側シールトラフ、23:外周側シールトラフ、24、25:支持部材、26、27:排水口、28:送水口、29、30:撹拌手段、31:連結管、32:排水配管、33:連結管、34:排水配管、35:支持台、36:給水配管、37:水タンク部、38:撹拌ポンプ、39:連絡管、40:送水ノズル部、41:受水槽、42:堰、43:ダスト沈降槽、44:上澄み水回収槽、45:送水ポンプ、46:ダスト撹拌ポンプ、47:送水ポンプ、48:補給水供給手段、49:開閉弁、49a:導水配管、50:放水口、51:連通管、52:給水口、53、54:給水手段、55:窪み部、56:傾斜部、57:側壁、58:ノズル部、59、60、61、62:シールプレート、63:ドレン配管、64:第1のドレン排出弁、65:第2のドレン排出弁、66、67:掻き板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口した環状加熱室と、該環状加熱室内に該環状加熱室と同心に配置されて回転する環状の回転炉床台車とを備えた回転炉床炉に設けられ、前記環状加熱室と前記回転炉床台車との隙間をシールする回転炉床炉のシールトラフ装置において、
前記環状加熱室の内周側炉壁と前記回転炉床台車の内周部との隙間の下方に配置される環状の内周側シールトラフ及び前記環状加熱室の外周側炉壁と前記回転炉床台車の外周部との隙間の下方に配置される環状の外周側シールトラフに、それぞれ複数の排水口と複数の給水口とを設け、
前記内、外周側シールトラフ内のシール水を前記複数の排水口から排水しながら、前記複数の給水口から該内、外周側シールトラフ内にシール水を供給して、該内、外周側シールトラフ内にシール水の流れを形成し、該内、外周側シールトラフ内に落下したダストをシール水と共に前記複数の排水口から外部に排出することを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記複数の給水口は、前記内、外周側シールトラフの底部及び側部のいずれか一方又は双方にそれぞれ設けられ、前記複数の排水口は、前記内、外周側シールトラフの底部にそれぞれ設けられていることを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフには、該内、外周側シールトラフの設定水位を超えるシール水を外部に放水する放水口がそれぞれ設けられていることを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記排出口から排水されたシール水は水処理設備又は受水槽に送水され、送水されたシール水はシール水中のダストが除去されてから前記給水口に戻されることを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフに複数の撹拌ポンプをそれぞれ設けて、該内、外周側シールトラフ内のシール水をそれぞれ撹拌することを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、新たなシール水を供給する補給水供給手段が設けられていることを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転炉床炉のシールトラフ装置において、前記内、外周側シールトラフ内にはシール水の流れを減衰させない形状を有する掻き板が設けられていることを特徴とする回転炉床炉のシールトラフ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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