説明

回転照射治療装置

【課題】軽量かつ位置精度の高い荷電粒子ビームの照射が可能な、粒子線治療に使われる回転照射装置を提供すること。
【解決手段】荷電粒子ビームの照射装置8、及び照射装置8に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置9,10が取り付けられた回転可能な回転ガントリー1と、回転ガントリー1に含まれた環状部材と接触して回転ガントリー1を支持する回転自在なローラ12を有する回転体支持装置16を備えた回転照射治療装置において、回転ガントリー1の軸方向の一端部で回転体支持装置16のローラ12と接触するフロントリング3と、回転ガントリー1の軸方向の他端部で回転体支持装置16のローラ12と接触するリアリング4と、フロントリング3とリアリング4の間で、回転ガントリー1の軸方向の異なる位置に少なくとも1個、回転体支持装置16のローラ12と接触する中間リング5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンビームを患部に照射する回転照射治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転照射治療装置であるイオンビーム照射システムとは、陽子及び炭素イオンなどのイオンビームを患者の患部に照射して癌を治療する装置である。
イオンビーム照射システムは回転照射治療装置である回転ガントリーを備えている。回転ガントリーは、例えば特許文献1に示されているように、フロントリング,リアリング及びこれらを接続するガントリー胴部を有する。イオンビームを導くビーム輸送装置(ビーム経路)及び照射装置(照射ノズル)がガントリー胴部に取り付けられる。
【0003】
これらビーム輸送装置や照射装置を含むビーム輸送系の質量は、回転ガントリーに回転軸回りのモーメントを発生させるものであり、静止状態においては回転ガントリーの回転軸回りのモーメントをできるだけ小さくすることが望ましい。したがって、ビーム輸送系が発生するモーメントとは反対回りのモーメントを発生させて、静止状態で回転軸回りのモーメントが釣り合うようにするためにガントリー胴部にはバランスウェイトが取り付けられている。
【0004】
回転ガントリーはフロントリング及びリアリングの位置で、複数の回転自在なローラを含むラジアル支持装置によってそれぞれ支持されている。各ラジアル支持装置に設けられた複数の回転自在なローラはフロントリング又はリアリングと接触しており、ローラの一部がモータによって回転されることによって、回転ガントリーが回転する。この回転ガントリーの回転は、患部に対するイオンビームの照射方向に照射装置を向かせるのに貢献する。
【0005】
特許文献2は、粒子線治療装置の回転ガントリーにおいて、ローラを有する支持装置でリアリングを支持すること、ベース部に設置されるフロント支持フレームに旋回環を介してフロントリングを支持することが開示されている。旋回環は、リアリングを旋回可能にフロント支持フレームに設置する。フロント支持フレームは、ベース部にピンにより回動自在に接続される脚部に設置されている。脚部は、ピンによって回転ガントリーの回転軸方向に傾き可能になっている。このため、リアリングも回転ガントリーの回転軸方向に傾き可能である。これは、ベッドと回転ガントリーとの相対位置のずれを防止するものである。
【0006】
特許文献3も粒子線治療装置の回転ガントリーに言及している。この回転ガントリーは、それぞれローラによって支持された2つの回転リングを備え、長期間安定した回転中心位置精度を保つために少なくとも一方の回転リングを挟むようにその回転リングの両側面に接触した一対の駆動ローラがその回転リングを回転させる。
【0007】
特許文献4も粒子線治療装置の回転ガントリーに言及しているが、特に炭素イオンなどの重粒子線を照射するために好適な回転ガントリーの部材を開示している。この回転ガントリーは、回転対称な一次部材物と一次部材物に支持され、偏向電磁石を保持する二次部材物とを備えている。二次部材物として、偏向電磁石の自重による鉛直方向の変位量が、全回転位置角度において本質的に等しくなるような柔軟な剛性を有する部材を採用し、回転ガントリーの軽量化を達成しようとするものである。また、この回転ガントリーもフロントリングとリアリングを備えており、回転ガントリーの自重は両リングの位置で、ラジアル支持装置によって支えられている。フロント側とリア側に備えられたラジアル支持装置のうちどちらか一方を回転軸方向に移動可能に設計されている。
【0008】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開2000−140134号公報
【特許文献3】特許第3599995号公報
【特許文献4】特開2004−148103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記粒子線治療装置では治療を行う際に、患者の患部に荷電粒子ビームの照射位置が定められる。治療の精度を向上させるためには、この照射位置が回転ガントリーの回転に伴って変動しないことが望ましい。
【0010】
しかし、実際には回転ガントリーの自重によるたわみ変形やガントリーの回転軸と回転体支持装置に含まれるローラの回転軸のずれが原因で、照射位置は回転ガントリーの回転によって3次元的な振れ回りを生じる。この照射位置の3次元的な振れ回りの中心はアイソセンタ(照射目標中心)と呼ばれており、粒子線治療装置の基本性能として照射位置の3次元的な振れ回りがこのアイソセンタを中心とする直径数mmの球の内部に収まることが要求される。
【0011】
この要求を満足するための一つの手段は、ガントリー胴部に高剛性の部材を採用して回転ガントリー自身の変形量を小さくすることである。ただし、回転ガントリーの高剛性化はガントリー胴部の質量の増加を伴う。回転ガントリーの質量が増加すれば、粒子線治療システムの導入費用(粒子線治療施設の建設費用,施設までの装置の輸送費用および装置の据付費用など)が増加し、結果的に粒子線によるがん治療の発展と普及を妨げることになる。
【0012】
以上の理由で、粒子線照射システムでは軽量かつ照射精度の高い(照射位置の3次元的な触れ回りが小さい)ガントリーの開発が要求されている。また、炭素イオンなどの重粒子線は陽子線よりもがん細胞に与えるダメージが大きく、酸素濃度の低いがん細胞にも有効なため、重粒子線を使ったがん治療は発展が期待されている。
【0013】
このような重粒子線を照射するシステムを構築する上で、重粒子線照射用の回転ガントリーの開発が必要である。何故ならば、炭素イオンなどの重粒子は陽子よりも質量が重いため、重粒子線を所定の位置に照射しようとすると、陽子線照射用のものに比べて大規模なビーム輸送装置や照射装置が必要になる。大規模なビーム輸送装置や照射装置を備え付けるためには、回転ガントリーを大きくしなければならない。
【0014】
その結果、重粒子線照射用の回転ガントリーは陽子線照射用のものに比べて大きく、かつ重くなる。回転ガントリーの質量が増加すると粒子線治療システムの導入費用が増加することは前述したが、これと同様に回転ガントリーが大きくなった場合も治療施設の建設費用や装置の据付費用が増加するため、システムの導入費用が増加する。このような理由で、重粒子線照射システムでは、陽子線照射システムよりもさらに小型かつ軽量の回転ガントリーの開発が重要になる。
【0015】
本発明の目的は、小型かつ軽量の回転照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、荷電粒子ビームの照射装置と、この照射装置に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置と、このビーム輸送装置と前記照射装置とが取り付けられた回転体と、この回転体に含まれた環状部材と接触して前記回転体を支持する回転自在なローラを有する回転体支持装置を備えた回転照射治療装置において、前記回転体の軸方向の一端部で前記回転体支持装置のローラと接触する第1の環状部材と、前記回転体の軸方向の他端部で前記回転体支持装置のローラと接触する第2の環状部材と、前記第1と第2の環状部材の間で前記回転体の軸方向の異なる位置に少なくとも1個の前記回転体支持装置のローラと接触する中間環状部材を備えたことにより達成される。
【0017】
また上記目的は、前記中間環状部材は前記回転体に含まれた中間環状部材接続部材によって前記回転体に固定され、この回転体を回転軸周りに回転させるモーメントの少なくとも一部を打ち消すように前記中間環状部材あるいは前記中間環状部材接続部材の質量を前記回転体の周方向に変化させたことにより達成される。
【0018】
また上記目的は、前記中間環状部材は前記回転体に含まれた中間環状部材接続部材によって前記回転体に固定され、前記中間環状部材あるいは前記環状部材接続部材が荷電粒子ビームの輸送装置の少なくとも1部を前記回転体に固定する役割を担うことにより達成される。
【0019】
また上記目的は、前記回転体を回転軸周りに回転させるモーメントの少なくとも一部を打ち消すように前記中間環状部材あるいは前記中間環状部材接続部材の質量を前記回転体の周方向に変化させたことにより達成される。
【0020】
また上記目的は、前記ローラと接触する前記中間環状部材の外周面から成る円筒の中を前記荷電粒子ビームが通過することにより達成される。
【0021】
また上記目的は、第1の環状部材と第2端部環状部材とに接触する回転自在なローラを含む回転体端部支持装置のうち、少なくとも一方が前記回転体の回転軸方向に移動可能であり、かつ中間環状部材と接触する回転自在なローラを含む回転体中間支持装置も前記回転体の回転軸方向に移動可能であることにより達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、軽量かつ照射精度の高い回転照射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図13を用いて本発明の一実施例を説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、図1から図5を用いて、本実施例による回転照射装置の第1の部材例について説明する。
【0025】
図1は回転照射装置の全体部材を表す側面図である。
図2は図1のA−A線断面である。
図3は回転照射装置内のビーム輸送系とビーム照射装置の構成図である。
図4は回転照射装置の回転部が図1の位置から回転軸を中心として180°回転したときの側面図である。
図5は図4のA−A線断面図である。
なお、図4および図5には回転体支持装置16に含まれるローラ12のみを図示している。
【0026】
図1および図2において、回転ガントリー1は略円筒形状のガントリー胴部2のフロント側(図1の右側)端部に設けたフロントリング3,リア側(図1の左側)端部に設けたリアリング4およびフロントリング3とリアリング4との間に中間リング5を有している。この中間リング5は中間リング接続部材6a,6bおよび6cによってガントリー胴部2に固定されている。ガントリー胴部2は円筒状になったシリンダ部材であり、その内部にはビーム輸送系7(詳細は図3で説明する)を経て輸送された荷電粒子ビームを患者に照射する照射装置8が設置されている。
【0027】
回転ガントリー1の自重は、フロントリング3,リアリング4および中間リング5の位置で回転体支持装置16a,16bおよび16cの回転可能な複数のローラ12で支持されている。回転ガントリー1の回転に伴って回転体支持装置16a,16bおよび16cに含まれたローラ12はフロントリング3,リアリング4および中間リング5の外周面と接しながら回転運動する。したがって、上述のフロント,リア、中間それぞれのリング3,4および5の外周面がローラ12の軌道面となる。
【0028】
図1と図2では、リング1個あたり4個のローラ12が配置されているが、リング1個に接するローラ12の数はリングとローラの接触面圧が許容値以内となるようにに決定すれば良い。したがって、リング1個あたりのローラ12の数は4個に限られるものではない。
【0029】
図3において、回転照射装置内のビーム輸送系7は荷電粒子ビームの向きを変えるための偏向マグネット9,ビーム輸送装置10(四極電磁石,ステアリング電磁石およびプロファイルモニターを含む)および真空ダクト11から構成されている。本実施例では図1および図2に示すように、ビーム輸送装置10と真空ダクト11の一部が中間リング5と中間リング接続部材6aによってガントリー胴部2に固定されている。8は荷電粒子ビームを患者に照射する照射装置である。すなわち、図1,図2に示した中間リング接続部材6aは中間リング5をガントリー胴部2に固定する役割を担うとともに、ビーム輸送装置10と真空ダクト11をガントリー胴部に固定する役割も担っている。
【0030】
図2に示すように、中間リング接続部材6cは中間リング接続部材6aからガントリーの回転軸を中心に180°回転した位置に配置されている。この中間リング接続部材6cは他の接続部材6a,6bと同様に中間リング5をガントリー胴部2に固定する役割を担う。加えて、中間リング接続部材6cは偏向マグネット9,ビーム輸送装置10および照射装置8の質量が主な原因で発生するガントリーの回転軸周りのモーメントを打ち消すのに必要な質量を備えている。すなわち、中間リング接続部材6cは回転モーメントをキャンセルするためのカウンタバランスウェイトの役割も担っている。
【0031】
本実施例において、中間リング5の外径Rr(図1に示す)は、回転ガントリー1の最大回転半径Rg(図1に示す)よりも大きい。このような外径の中間リング5を採用することにより、図1と図2の状態から回転軸を中心に180°回転した状態(図4,図5)でも粒子線を患者に照射することができる。また、部材上は180°を超えてさらに回転することも可能である。すなわち、本実施例の回転ガントリー1は、患者を動かすことなく広範囲にわたる回転角(0°〜±180°以上)から粒子線を照射できるため、様々な患部の位置に対応可能な回転照射装置となっている。
【0032】
図1に示すように回転体支持装置16a,16bおよび16cは、リニアガイド17を備えている。リニアガイド17は、各リング(フロントリング3,リアリング4および中間リング5)とローラ12との接触面に作用する摩擦係数に比べて小さい摩擦係数を有し、回転ガントリー1の回転軸方向にのみ自由に動き得る部材で、回転軸方向と直交する方向のねじり剛性も高い。回転ガントリー1はスラスト支持装置(図示せず)によって軸方向の動きが拘束されているため、回転ガントリー1の回転軸とローラ12の回転軸のずれに起因して発生する回転ガントリー1と回転体支持装置16a,16bおよび16cの軸方向の相対位置変化は、リニアガイド17が軸方向に動くことによって吸収される。
【0033】
図6は、本発明の第1の実施例による回転照射装置の第2の部材例を示す側面図である。
図7は図6のA−A断面からリア側(図6の左側)を見た図である。
【0034】
図6,図7において、本図ではローラ12のみを図示しているが、本部材例でも図1および図2と同様に、ローラ12は回転体支持装置16に含まれており、回転ガントリー1の質量はローラ12の位置で回転体支持装置16によって支えられている。以降、ローラ12が図示された全ての部材例でローラ12は回転体支持装置16に含まれているので、回転ガントリー1の質量はローラ12の位置で回転体支持装置16によって支えられていると解釈する。
【0035】
本部材例では、中間リング5が付加質量15を含むので、中間リング5の質量は周方向に変化している。この中間リング5の質量は、偏向マグネット9,ビーム輸送装置10および照射装置8などの質量が原因で発生する回転軸周りのモーメントを打ち消す役割、すなわちカウンタバランスウェイトの役割を担っている。中間リング5に加えて、中間リング接続部材6cもカウンタバランスウェイトの役割を担うようにしても良いし、中間リング接続部材6cは中間リング5をガントリー胴部に固定する役割のみを担う部材(質量)としても良い。このような部材では、中間リング5および中間リング接続部材6がカウンタバランスウェイトを兼ねることにより、中間リング5および中間リング接続部材6の設置による質量の増加を最小限に抑えることができる。
【0036】
図8は、本発明の第1の実施例による回転照射装置の第3の部材例を示す側面図である。
図9は図8のA−A断面からリア側(図8の左側)を見た図である。
図8と図9に示す回転照射装置は、図1と図2に示した構成と同様に、中間リング5と中間リング接続部材6aによってビーム輸送装置10と真空ダクト11の一部がガントリー胴部2に固定されている。ただし、図1と図2に示した構成とは異なり、偏向マグネット9,ビーム輸送装置10および照射装置8の質量が発生するガントリー回転軸周りのモーメントを打ち消すためのカウンタバランスウェイト13を備えている。この部材では、中間リング接続部材6cの質量を調節して、中間リング接続部材6cがカウンタバランスウェイト13の役割を一部担うようにしても良いし、中間リング接続部材6cは中間リング5をガントリー胴部に固定する役割のみを担う部材(質量)としても良い。中間リング接続部材6cがカウンタバランスウェイト13の役割を一部担うことによって、カウンタバランスウェイト13の質量を軽くできるので、カウンタバランスウェイト13の取り付け,調整などが容易になる。
【0037】
図10は、本発明の第1の実施例による回転照射装置の第4の部材例を示す側面図である。
図10に示す回転照射装置は、図1〜図3に示した第1の部材例の中間リング5を2個に増やした部材例である。この部材例では、回転ガントリー1の自重を軸方向の4点で支えるので、回転ガントリー1のたわみ変形が第1の部材例よりも小さくなる。また、回転ガントリー1の自重を軸方向の異なる4箇所(図中のローラ12の設置箇所)で支えるので、1個の回転体支持装置が支える荷重が第1の部材例に比べて小さくなり、結果として回転体支持装置を小型化,簡素化できる。この部材例では中間リング接続部材6cが回転軸周りのモーメントを打ち消すためのカウンタバランスウェイトの役割を担っているが、第2の部材例のように中間リング5にカウンタバランスウェイトの役割の一部を持たせても良いし、第3の部材例のように中間リング接続部材6cとは別に図8と図9に示したようなカウンタバランスウェイト13を配置しても良い。
【0038】
図11は、本発明の第1の実施例による回転照射装置の第5の部材例を示す側面図である。
図11に示す回転照射装置は、第1から第4の部材例とは異なり、ガントリー胴部が略円筒形状でないものである。すなわち、本部材例ではフロントリング3とリアリング4を連結鋼管14で接続してガントリー胴部を構成している。このようなガントリー胴部は図1に示した略円筒形状のガントリー胴部2に比べて剛性は低いが、回転ガントリーの全質量を軽くできる。また、中間リング5は中間リング接続部材6a,6bおよび6cによってガントリー胴部(フロントリング3,リアリング4および連結鋼管14)と固定されている。第1から第3の部材例と同様に、中間リング5と中間リング接続部材6aはビーム輸送装置10と真空ダクト11の一部をガントリー胴部に固定する役割を中間リング接続部材6cはカウンタバランスウェイトの役割を担っている。
【0039】
中間リング5を設けて回転ガントリーの自重を3点で支えることにより、本部材例のように連結ビームで構成されるガントリー胴部でも、略円筒形状のガントリー胴部を採用した回転ガントリー並みにたわみが小さく、照射精度の高い回転照射装置が実現できる。
【0040】
図11では中間リング接続部材6cがカウンタバランスウェイトの役割を担っているが、図6と図7に示した第2の部材例のように中間リング5にカウンタバランスウェイトの役割を持たせても良いし、図8と図9に示した第3の部材例のように中間リング接続部材6cとは別にカウンタバランスウェイトを設置しても良い。また、図11では中間リング5が1個であるが、図10に示した第4の部材例のように中間リング5を軸方向の異なる位置に2個設置すると、中間リング5が1個の場合に比べて回転ガントリーの自重によるたわみ変形が小さくなる。
【0041】
図12は、本発明の第1の実施例による回転照射装置の第6の部材例を示す側面図である。
図13は回転照射装置内のビーム輸送系とビーム照射装置の構成図である。
図13のビーム輸送系では、荷電粒子の軌道である真空ダクト11が回転軸と平行に配置されていない。このようなビーム輸送系の構成は、陽子線照射装置でよく採用されている。図13のようなビーム輸送系に、第1の部材例を適用した回転照射装置が図12である。このような部材を陽子線治療装置に適用した場合、他の部材例と同様に回転ガントリー1のたわみ変形が小さくできるので、照射精度の高い陽子線治療装置の回転ガントリーを実現できる。
【実施例2】
【0042】
次に、図14と図15を用いて、本発明の第2の実施例による回転照射装置の第1の部材例について説明する。
図14は、本発明の第2の実施例による回転照射装置の第1の部材例を示す側面図である。
図15は、図14のA−A断面からリア側(図14の左側)を見た図である。
【0043】
図14および図15の回転照射装置は、第1の実施例の部材例と同様に、中間リング接続部材6cは中間リング5をガントリー胴部2に固定する役割を担うとともに、中間リング接続部材6cはカウンタバランスウェイトとしても機能する。また、中間リング接続部材6aは中間リング5をガントリー胴部2に固定するともに、ビーム輸送装置10と真空ダクト11をガントリー胴部に固定する役割も担っている。
【0044】
ただし、第1の実施例の部材例とは異なり、第2の実施例の部材例では中間リングの外径Rrを回転ガントリー1の最大回転半径Rgよりも小さくしている。したがって、第2の実施例の部材例では、図14および図15の状態から回転軸を中心として180°回転した状態(第1の実施例の部材例における図4および図5の状態)まで回転ガントリー1を回転させることはできない。一方で、このような回転照射装置ではフロントリング3,リアリング4および中間リング5の外径を等しくすることができるため、異なる径のリングを採用した場合に比べて、製作に要する工数を減らすことができるほか、最大回転半径Rgの通過する空間が限られるため、回転照射装置を備え付ける建屋を小さくすることができる。
【0045】
本部材例では中間リング接続部材6cがカウンタバランスウェイトの役割を担っているが、本実施例でも第1の実施例の第2および第3の部材例のように、中間リング5にカウンタバランスウェイトの機能を持たせても良いし、カウンタバランスウェイト13を別に設けても良い。また、第1の実施例で説明した第4の部材例のように、本実施例でも中間リング5を2個以上設置しても良い。また、本部材例ではガントリー胴部2は略円筒形状となっているが、第1の実施例で説明した第5の部材例のように、本実施例でもガントリー胴部2を連結鋼管で構成しても良い。さらに、陽子線治療装置によく採用されている第1の実施例で説明した第6の部材例のようなビーム輸送系に対しても、本実施例の部材が適用でき、軽量かつ照射精度の高い回転照射装置が実現できる。
【0046】
本実施例によれば、回転ガントリーのフロントリングとリアリングの間に中間リングを設置し、フロントリングとリアリングに加えて中間リングの位置でもラジアル支持装置によって回転ガントリーの自重を支えること、中間リングあるいは中間リングとガントリー胴部を接続する部材がバランスウェイトの役割を兼ねること、中間リングあるいは中間リングとガントリー胴部を接続する部材で荷電粒子ビームの輸送装置をガントリー胴部に固定することにより、回転照射装置の導入コストが安価になるので、年間当たりの粒子線治療を受ける人数を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第1の部材例を示す側面図である。
【図2】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第1の部材例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第1の部材例に含まれるビーム輸送系を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第1の部材例で、回転照射装置が図1の状態から180°回転した状態の側面図である。
【図5】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第1の部材例で、回転照射装置が図1の状態から180°回転した状態の断面図である。
【図6】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第2の部材例を示す側面図である。
【図7】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第2の部材例を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第3の部材例を示す側面図である。
【図9】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第3の部材例を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第4の部材例を示す側面図である。
【図11】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第5の部材例を示す側面図である。
【図12】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第6の部材例を示す側面図である。
【図13】本発明の第1の実施例による回転照射装置の第6の部材例に含まれるビーム輸送系を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施例による回転照射装置の第1の部材例を示す側面図である。
【図15】本発明の第2の実施例による回転照射装置の第1の部材例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…回転ガントリー、2…ガントリー胴部、3…フロントリング、4…リアリング、5…中間リング、6…中間リング接続部材、7…ビーム輸送系、8…照射装置、9…偏向マグネット、10…ビーム輸送装置、11…真空ダクト、12…ローラ、13…カウンタバランスウェイト、14…連結鋼管、15…付加質量、16…回転体支持装置、17…リニアガイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの照射装置と、この照射装置に荷電粒子ビームを導くビーム輸送装置と、このビーム輸送装置と前記照射装置とが取り付けられた回転体と、この回転体に含まれた環状部材と接触して前記回転体を支持する回転自在なローラを有する回転体支持装置を備えた回転照射治療装置において、
前記回転体の軸方向の一端部で前記回転体支持装置のローラと接触する第1の環状部材と、前記回転体の軸方向の他端部で前記回転体支持装置のローラと接触する第2の環状部材と、前記第1と第2の環状部材の間で前記回転体の軸方向の異なる位置に少なくとも1個の前記回転体支持装置のローラと接触する中間環状部材を備えたことを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転照射治療装置において、
前記中間環状部材は前記回転体に含まれた中間環状部材接続部材によって前記回転体に固定され、この回転体を回転軸周りに回転させるモーメントの少なくとも一部を打ち消すように前記中間環状部材あるいは前記中間環状部材接続部材の質量を前記回転体の周方向に変化させたことを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項3】
請求項1記載の回転照射治療装置において、
前記中間環状部材は前記回転体に含まれた中間環状部材接続部材によって前記回転体に固定され、前記中間環状部材あるいは前記環状部材接続部材が荷電粒子ビームの輸送装置の少なくとも1部を前記回転体に固定する役割を担うことを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項4】
請求項3記載の回転照射治療装置において、
前記回転体を回転軸周りに回転させるモーメントの少なくとも一部を打ち消すように前記中間環状部材あるいは前記中間環状部材接続部材の質量を前記回転体の周方向に変化させたことを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項5】
請求項1記載の回転照射装置において、
前記ローラと接触する前記中間環状部材の外周面から成る円筒の中を前記荷電粒子ビームが通過することを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項6】
請求項1記載の回転照射治療装置において、
第1の環状部材と第2端部環状部材とに接触する回転自在なローラを含む回転体端部支持装置のうち、少なくとも一方が前記回転体の回転軸方向に移動可能であり、かつ中間環状部材と接触する回転自在なローラを含む回転体中間支持装置も前記回転体の回転軸方向に移動可能であることを特徴とする回転照射治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−54892(P2008−54892A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234860(P2006−234860)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】