説明

回転照射治療装置

【課題】複数のビーム照射コースを持つ回転照射治療装置を提供する。
【解決手段】粒子線照射ヘッドは、第一の照射ヘッド9aと第二の照射ヘッド9bを含み、第一の照射ヘッド9aから射出される第一の粒子線照射コースAに対して、第二の照射ヘッド9bから射出される第二の粒子線の照射コースBが、中心軸を中心として任意の角度で交叉する配置となるように、第一の照射ヘッド9aと第二の照射ヘッド9bが回転フレーム1に取り付けられた回転照射治療装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線治療に用いられる回転ガントリー等の回転照射治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転照射治療装置では、装置全体の重さがかかる回転リングが、継ぎ目の無い一円の一体構造物によって構成されていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−250917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転照射治療装置の回転リングは、従来、継ぎ目の無い一円の一体構造物として形成されていた。その理由は、回転リング外周に継ぎ目があった場合、照射装置の回転によって回転リングの継ぎ目と、回転リングの重量を支持するローラーとが接触し、継ぎ目の段差によって生じる騒音や振動の発生を避けるためであった。回転リングは、重量物の支持と回転構造物全体の位置精度を確保するために大型の鋳造リングなどの高強度かつ耐磨耗性の高い部材が用いられていた。そのため、継ぎ目の無い一円の一体構造物である回転リングを製造可能なメーカーがごく少数に限られており、購入費用が増大するという問題と長納期であるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、継ぎ目の無い一円一体構造物の回転リングを使用することなく、回転リングとして円弧状部材を使用し、騒音や振動を生じさせることなく、360°全方位からの患者への粒子線照射を可能とする回転照射治療装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる回転照射治療装置は、中心軸の周りに回転可能に配置された回転リング、上記回転リングに当接して上記回転リングを支持、駆動するローラー、上記回転リングにフレームを介して取り付けられ、上記中心軸に向かって粒子線を照射する粒子線照射ヘッドを備え、上記粒子線照射ヘッドは、第一の照射ヘッドと第二の照射ヘッドを含み、上記第一の照射ヘッドから射出される第一の粒子線照射コースに対して、上記第二の照射ヘッドから射出される第二の粒子線の照射コースが、上記中心軸を中心として任意の角度で交叉する配置となるように、上記第一の照射ヘッドと上記第二の照射ヘッドが上記フレームに取り付けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の回転照射治療装置によれば、複数の照射ヘッドを用い複数の方向から粒子線を照射できるため、照射ヘッドが単数の場合よりも照射範囲を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1による回転照射治療装置のyz面における要部断面側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1による回転照射治療装置の要部を示した鳥瞰図である。
【図3】この発明の実施の形態1による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図5】この発明の実施の形態3による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図6】この発明の実施の形態4による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図7】この発明の実施の形態5による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図8】この発明の実施の形態6による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【図9】この発明の実施の形態7による回転照射治療装置のxy面における要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による回転照射治療装置の基本的な構造と特徴について説明する。
陽子線等による粒子線治療は、放射線源が粒子加速器となる。粒子加速器は極めて大型な装置であり、患部を中心として放射線源を回転させることは困難である。そこで、回転照射治療装置は、粒子線を回転フレームの回転中心方向に入射し偏向電磁石によって一旦外方向に偏向した後、さらに回転中心軸上の患部方向に曲げて照射を行うように構成されている。
【0010】
図1は、この発明による回転照射治療装置の要部断面側面図、図2は回転照射治療装置の要部を示す鳥瞰図であり、図1中に一点鎖線で示す中心軸(z軸方向。z軸を水平方向とした場合、x軸が水平面内でz軸と直交し、y軸が鉛直方向となるように配置される。)の周りに回転可能に配置された回転リング3、回転リング3に当接して回転リング3を支持、駆動するローラー4、回転リング3に回転フレーム(フレーム)1を介して取り付けられ、中心軸に向って粒子線を照射する粒子線照射ヘッド9a、9bを備えた構造である。
この発明では、図3のxy面における要部側面図(照射室13入口側から装置を奥行き方向に観察した図)に示すように、回転リング3は、中心角度180°の円弧状部材(半円弧状部材)3a、3bを結合してリング状に形成した構造であることを特徴としており、円弧状部材3a、3bの継ぎ目となる隣接する2ヶ所の結合部18(太実線で示す。)間、すなわち円弧状部材3bの両端部を除く外周面にローラー4が当接して回転リング3を支持、駆動する。
【0011】
また、回転フレーム1には回転の重心不釣合を補正するため、中心軸を挟んで重量体である偏向電磁石8a(8b)に対向する位置にカウンタバランス2a(2b)が取り付けられ、回転照射治療装置の重心のバランスをとっている(図1においては、紙面手前に配置されるカウンタバランス2bを省略して記載している)。
回転リング3は、回転フレーム1の上流(ビームの来る方向。)および下流の2ヶ所に設けられている。上述したとおり、回転照射治療装置は、この回転リング3を支持駆動するローラー4に、粒子線照射ヘッド等の主な回転照射治療装置の重量が回転リング3を介してかかる構造となっている。
【0012】
なお、装置内の少なくとも1ヶ所のローラー4は、駆動ローラー4aを含んだ構成である。駆動ローラー4aは、駆動装置5に連結されており、回転照射治療装置の重量を支持するとともに支持面と回転リング3の外周面間の摩擦力によって回転リング3を介して回転照射治療装置全体に駆動力を与えるもので、配置される個数は回転照射治療装置の重量や駆動源の容量等に依存する(図1の例では、放射線源に近い側(上流)の回転リング3外周面に接するように配置されたローラー4の中に駆動ローラー4aが一つ含まれている。)。
【0013】
また、支持ローラー4bは、ローラー4以外の回転照射治療装置全体の重量を支持するために設けられた部材であり、回転リング3の回転に追従して自由回転する。ローラー4は、単一もしくは複数の駆動ローラー4a、複数の支持ローラー4bの組み合わせから構成され、各々の回転リング3の外周下面に配置されている(図2、図3では、ローラー4の形状を一つの円形、円柱状に簡略化して記載している。)。なお、図2、図3に示すように、一つの回転リング3は、2ヶ所に配置されたローラー4によって支持されている。
【0014】
ローラー4の支持面は回転リング3の外周面と接触しており、回転中心の精度の良し悪しならびに回転体全体の振動・騒音の程度は、ローラー4の支持面の回転対称性の精度と回転照射治療装置全体の位置の基準面となる回転リング3の外周面の回転対称性の精度によって大きく左右される。
【0015】
図1〜図3に示すように、この実施の形態1による回転照射治療装置では、中心軸に向かって粒子線を照射する粒子線照射ヘッドは2門(ビーム照射コースは二つ)設けられ、図示した基準位置において、水平方向に伸びる中心軸に対して鉛直方向下向きにビーム(第一の粒子線)を照射する第一の粒子線照射ヘッド(第一の照射ヘッド)9aと、この粒子線照射ヘッド9aの位置から中心軸(z軸)を中心として90°回転した位置に配置され、中心軸に対して水平方向にビーム(第二の粒子線)を照射する第二の粒子線照射ヘッド(第二の照射ヘッド)9bを備えている。回転リング3が回転した場合は、ビームの照射方向は回転角度に依存して変化するが、第一、第二の粒子線照射ヘッド9a、9bの回転フレーム1上での配置は変わらず固定されているため、90°の配置角度の相違は維持される。
【0016】
回転照射治療装置のその他の構成として、患者に照射する粒子線が通るための真空ダクト6、6a、6b、粒子線を所定の角度に偏向させる偏向電磁石7、8a、8b、粒子線の照射域を治療に適した形状に整えたり、エネルギーを変えたりして粒子線を患部に照射する粒子線照射ヘッド9a、9b(ビーム照射位置)が設けられている。偏向電磁石7及び真空ダクト6が、同装置放射線源側(図1中左側)に配置されたコーンフレーム10の内部に支持され、コーンフレーム10外部(外側)においてケーブル等を支持する構成となっている。真空ダクト6、偏向電磁石7、8a、8b、粒子線照射ヘッド9a、9b、コーンフレーム10は、回転フレーム1と一体で回転するように構成されている。なお、真空ダクト6は粒子加速器(図示せず)から射出された粒子線が通る回転照射治療装置外の真空ダクト(図示せず)と回転ジョイント等で接続されており、回転照射治療装置の中心軸回りに回転可能な構成となっている。
【0017】
また、治療時には、患者14は、装置外部の梁12に固定された治療台(治療用寝台)11上に仰臥し(あるいは患者14の体調によってはうつぶせ姿勢としても良い。)、回転照射治療装置内に確保された空間(照射室13内部。照射室13を単に回転フレーム1内部に生じる空間とする場合は、壁面等の構成が不要となる。)に、梁12の駆動によって導き入れられる。なお、梁12は、回転照射治療装置が備え付けられた治療室(建屋側)の床に支持され駆動される。また、治療台11は、水平方向に180°回転可能に構成されており、さらに、患者14の治療時の位置合わせにおいて、上面の水平を保った状態で移動させることが可能である。
【0018】
次に回転照射治療装置の動作について説明する。まず、駆動ローラー4aから駆動ローラー4aと回転リング3の接触面間の摩擦力によって駆動力が伝達され、回転照射治療装置全体が照射に最適な角度まで回転する。回転照射治療装置の回転角度を固定した後、粒子加速器(図示せず)から射出された粒子線が、ビーム輸送機器(図示せず)を通して真空ダクト6に入射される(図1紙面左側に入射方向を矢印で示す。)。真空ダクト6に入射された粒子線は、偏向電磁石7を通り、真空ダクト6aまたは6bを通過し、偏向電磁石8aまたは8bを経て、最終的に入射方向に対して直角の方向に偏向され、粒子線照射ヘッド9aまたは9bに入射し、成形されて中心軸上に位置する患部に照射される。
【0019】
制動時は、内蔵されたブレーキにより駆動装置5が減速・停止し、その制動力が駆動ローラー4aに伝えられる。上記の駆動ローラー4aから駆動ローラー4aと回転リング3の接触面間の摩擦力を介して回転リング3に制動力が伝達され、回転照射治療装置全体の回転が停止する。
【0020】
上述したように、この発明の実施の形態1の回転照射治療装置は、図3に示すように、回転リング3が複数個の円弧状部材3a及び3bから成り、円弧状部材3a、3bの端部間は溶接、ねじ締結などの一般的接合方法によって結合されている。
また、この実施の形態1では、偏向電磁石8aと粒子線照射ヘッド9aが一組となり一つのビーム照射コースAを構成している。同様に偏向電磁石8bと粒子線照射ヘッド9bが一組となりもう一つのビーム照射コースBを構成している。つまりこの実施の形態1の回転照射治療装置は2つのビーム照射コースを持ち、それぞれのビーム照射コースは互いに、中心軸を中心に90°傾いた角度となるよう回転フレーム1に固定されている。そのため、治療台11の上に仰臥した姿勢をとる患者14に対し、照射角度が90°異なる2方向から粒子線照射が可能となる。なお、ここで、偏向電磁石7は、ビーム照射コースA、Bのいずれかの方向にビームを振り分ける振り分け電磁石の役割を持っている。
【0021】
次に動作について説明する。ローラー4を構成する駆動ローラー4aと回転リング3の接触面間の摩擦力によって駆動装置5から駆動力が伝達され、回転照射治療装置全体が、中心軸を中心として照射に最適な角度まで回転する。回転範囲は、例えば図3に示す状態である基準位置(回転リング3の最高部、0°の位置)から紙面時計回りに90°であり、この回転範囲は、回転リング3を支持する二つのローラー4が、隣接する二つの結合部18間に位置する円弧状部材3bの外周面(結合部18上を含まない。)に接し、もう一方の円弧状部材3aの外周面や結合部18に接触しない範囲内で設定することができる。また、回転範囲に応じて、2門のビームの照射コースの交叉角度を変更することができ、回転範囲100°とした場合、照射コースの交叉角度を100°とすることも可能である。1門のビームの照射範囲を90°とする必要がある構成において、照射範囲を90°より大きく設定することで、照射範囲に裕度を持たせることができる。二つのビーム照射コースの交叉角度は90°〜270°の範囲に設定できる。
【0022】
回転照射治療装置全体が、図3において紙面時計回りに90°回転することにより、2つの照射コースA、Bの使い分けによって患者14の右半身(図3の紙面右半分、回転リング3の最上部を0°として時計回りに、0°〜180°(180°は回転リング3の最下部)。)の領域から粒子線ビームを患者14に照射することが可能となる。患者14の左半身(図3の紙面左半分、照射領域180°〜360°)から粒子線ビームを照射する必要がある場合は、治療台11を図2に示す3次元座標軸のy軸周りに180°回転させることにより、ビーム照射領域を右半身から左半身に変更することが可能となる。なお、照射室13内に治療台11を回転させるスペースが確保できない場合、一旦、梁12を照射室13の外部に導くことで治療台11を照射室13から出し、回転照射治療装置の外で治療台11を水平方向に180°回転させて照射室13内に戻す方法で、患者14の向きを変える(あお向けの状態のまま、頭部と足部を反転させる)ことも可能である。上記に示す動作により患者14に対してz軸(中心軸)周りの360°全方位から粒子線ビームを照射できる。
【0023】
この実施の形態1による回転照射治療装置は、回転リング3の隣接する結合部18間(すなわち円弧状部材3aまたは3bの外周面)に当接してローラー4が回転リング3を支持、駆動する構成であるため、結合部18とローラー4が接触することがないため、振動、騒音が発生することがなく、装置の稼動による騒音を小さく抑えることができ、精度の高い治療を行うことが可能である。従って長納期、高価格の一円一体構造の回転リングを使用する必要がなく、製品の制作期間短縮と原価低減を図ることが可能となる。
【0024】
なお、上述の説明では、図3において示した粒子線照射ヘッド9a、9bの基準位置を例として、紙面時計回りに90°照射装置が回転する場合について説明したが、結合部18の配置を、装置回転時のローラー4との接触を回避できる配置とした上で、反時計回りに回転させることも可能であることは言うまでもない。また、二つのビーム照射コースの方向が直交関係にあり、全ビーム照射領域が、装置の真上(最高部)から真下(最下部)にかけての180°を含む範囲とすることが可能である全ての配置で、治療台11を水平方向に180°回転させることで、患者14の治療台11上での姿勢を変えることなく、中心軸周りの360°全方位からの粒子線ビーム照射が可能であることは言うまでもない。
【0025】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、治療を受ける患者14が治療台11上に仰臥(あるいはうつぶせ姿勢)している場合に、治療台11をy軸周りに180°回転させることで、中心軸を中心とした360°全方向からの放射線治療を可能としたことについて述べた。治療台11をy軸周りに180°回転させる以外にも、同じ構造の回転照射治療装置を用いてz軸周りの360°全方向からの照射を可能とする例について説明する。
【0026】
実施の形態1では、治療台11上での患者14の姿勢は、一つの姿勢のみとされており、仰臥(または、うつぶせ姿勢)のみとして説明した。この実施の形態2では、患者14の姿勢を、患者14の左半身にビーム照射可能な仰臥から、図4のxy面における要部側面図に示すように、右半身にビーム照射可能なうつぶせ姿勢に変え(z軸方向では患者の向きを変更しない状態。)、二つの姿勢をとることで、z軸周り360°全方位からのビーム照射を可能とする。この実施の形態2の場合、実施の形態1で必要となる治療台11をy軸周り180°回転させるための機構が不要となり、治療台11の構造をより簡便なものとすることができる。
【0027】
実施の形態3.
上述の実施の形態1では、偏向電磁石8aと粒子線照射ヘッド9aが一組となったビーム照射コースAと、偏向電磁石8bと粒子線照射ヘッド9bが一組となったビーム照射コースBが、互いに90°の角度で交叉するように、粒子線照射ヘッド9a、9bが回転フレーム1に取り付けられている場合について述べた。この実施の形態1では、図5に示すように、偏向電磁石8aと粒子線照射ヘッド9a(図示せず)が一組となったビーム照射コースAと偏向電磁石8bと粒子線照射ヘッド9b(図示せず)が一組となったビーム照射コースBを、中心軸を挟んで対向する位置に配置した場合について説明する。このとき、基準位置では、粒子線照射ヘッド9a、9bは、回転リング3上の90°、270°の角度となるようにそれぞれ回転フレーム1上に配置されており、x軸上において対向配置されている。
【0028】
図5において示した回転照射治療装置は、紙面時計回りに90°回転し、患者14の左半身上部(紙面左上部。270°〜360°)及び右半身下部(紙面右下部。90°〜180°)が照射可能領域である。実施の形態1において示したように、治療台11上での患者14の姿勢を変えることなく、治療台11をy軸回りに180°回転させることにより、患者14の左半身下部(左下部。180°〜270°)及び右半身上部(右上部。0°〜90°)にも照射可能となり、結果として中心軸を中心とする360°全方位からの粒子線照射が可能となる。
【0029】
上述のように、ビーム照射コースA、Bが対向配置となる場合は、粒子線照射ヘッド9a、9b、ならびに重量体である偏向電磁石8a、8bが互いに対向した配置となるため、重量のバランスが取れており、カウンターバランスの設置が不要となる。従って回転照射治療装置全体の重量が軽減されるという効果もある。
【0030】
なお、図5の例では、紙面時計回りに90°装置を回転させる場合について述べたが、回転リング3の結合部18の位置を、紙面時計回り方向に+90°ずらせて、破線で示す結合部18aの位置に変更することにより、回転照射治療装置を紙面反時計回りに90°回転させてもローラー4と結合部18aとの接触状態を保ちつつ、患者14の左半身下部、右半身上部を粒子線照射範囲とすることができ、治療台11のy軸方向180°回転によって、残りの領域にも粒子線照射が可能となり、時計回りの場合と同様の効果を得ることができる。
【0031】
実施の形態4.
上述の記実施の形態1〜3では、偏向電磁石8a(8b)と粒子線照射ヘッド9a(9b)が一組となったビーム照射コースが2組の場合について述べたが、図6に示すように、偏向電磁石(図示せず)と粒子線照射ヘッド9a〜9dの組み合せからなる4組のビーム照射コースを設け、隣接するビーム照射コースが90°の角度で交叉するように回転フレーム1上に粒子線照射ヘッド9a〜9dをそれぞれ配置した例について説明する。回転リング3は、実施の形態1〜3の場合と同様に、中心角度が180°の円弧状部材3aと3bを結合部18で結合することにより形成されている。図6に示す配置において回転照射治療装置全体を紙面時計回りに90°回転させることにより、照射室13内での患者14の姿勢を変更することなく中心軸を中心に360°全方位から照射が可能となり、装置の利便性が高まる。
【0032】
なお、上記の例では装置全体を紙面において時計回りに回転させる場合について示したが、上述の実施の形態3において示した場合と同様に、回転リング3の結合部18を破線で示す結合部18aの位置に変更することで、反時計回りの回転も可能となる。回転リング3の回転で、結合部18とローラー4とが接触しないように結合部18を配置した上で、基準位置から±45°の回転範囲とすることでも同様の効果を得ることができる。
【0033】
実施の形態5.
上述の実施の形態4では、中心角度が180°である円弧状部材(半円弧部材)2個を結合して形成した回転リング3を用い、4組のビーム照射コースを持つ回転照射治療装置全体を紙面時計回りに90°回転させることにより、照射室13内での患者の姿勢を変更することなく、中心軸を中心とした360°全方位から照射が可能となる場合について述べた。この実施の形態5では、図7に示すように、回転リング3を構成する円弧状部材として、中心角度が90°である円弧状部材(1/4円弧状部材)3aa〜3ddを用い、これら4個の部材を結合して回転リング3を形成した場合について説明する。
【0034】
図7に示す回転照射治療装置の基準位置では、回転リング3の結合部18が、回転フレーム1上に、0°、90°、180°、270°の角度となるようにそれぞれ配置され、4門の粒子線照射ヘッド9a〜9dが、22.5°、112.5°、202.5°、292.5°の角度となるよう、隣接する照射ヘッド同士で、照射コースが90°の角度で交叉するように配置されている。回転範囲は、基準位置から±22.5°であり、0°〜45°、90°〜135°、180°〜225°、270°〜315°の範囲でのビーム照射が可能となる。図7中に、装置を−22.5°回転させた場合に、粒子線照射ヘッド9c(基準位置)が、符号9cc(破線)で示す位置まで移動することを示す。この回転によって、基準位置で回転リング3の最下部に位置していた結合部18は符号18a(破線)で示す位置まで移動する。なお、ローラー4は、回転リング3上の150°、210°の角度に当接するようにそれぞれ配置されている。このような構成においても、各々のローラー4は、隣接する結合部18間に位置する円弧状部材3bbまたは3ccの外周面に当接して、回転リング3を支持した状態となる。
【0035】
残りの照射範囲については、実施の形態1において示した、治療台11をy軸中心として180°回転させて、照射室13内での患者の頭部と足部の方向を入れ替えて粒子線照射を行うようにすることで、中心軸周りの360°全方位からの照射が可能となる。
このような、回転リング3の構成部品である円弧状部材3aa〜3ddは、一つの形状が、中心角度90°の1/4円弧であるため、1/2円弧の場合よりもさらに半分の大きさとなるため、実施の形態1〜4に比べて、部材の入手がより容易となる。
なお、1/2円弧状部材1つと1/4円弧状部材二つを結合することでも回転リング3を形成できることは言うまでもない。
【0036】
実施の形態6.
上述の実施の形態1〜5においては、複数のビーム照射コースを構成するように、複数門の粒子線照射ヘッドを用いて粒子線照射を行う例について述べたが、この実施の形態6では、ビーム照射コースが一つ(粒子線照射ヘッドが1門)である場合について説明する。
図8は、この発明による回転リング3と粒子線照射ヘッド9a、ローラー4、患者14を載せた治療台11の配置を示すxy面における要部側面図である。図示したように、基準位置となる配置において、回転リング3上の0°の角度となるように粒子線照射ヘッド
9aが回転フレーム1上に取り付けられており、回転リング3は、中心角度が90°である円弧状部材(1/4円弧状部材。中心角度が180°よりも小さな円弧状部材の一例。)3eと、中心角度が270°である円弧状部材(3/4円弧状部材。中心角度が180°よりも大きな円弧状部材の一例。)3fの二つの部材を結合することによって形成されている。基準位置では、回転リング3の結合部18は、225°と315°の角度にそれぞれ配置されている。
【0037】
粒子線照射ヘッド9aの回転範囲は、紙面時計回り(図中矢印方向)に180°以上であり、例えば基準位置(0°、最高部)から180°回転させることで、図8に示す回転リング3上の最下部に相当する位置まで粒子線照射ヘッド9aが移動し、患者14の右半身への粒子線照射が可能となる(180°回転後の粒子線照射ヘッド9aaと、結合部18aを破線で示す。)。残りの照射領域については、実施の形態1において示したように、治療台11をy軸周りに180°回転させることによってz軸方向における患者の向きを反転させ、粒子線照射ヘッド9aの移動範囲を変更することなく、中心軸を中心とした360°全方位からのビーム照射が可能となる。
【0038】
このような構成することで、実施の形態6による回転照射治療装置は、偏向電磁石(図示せず)および粒子線照射ヘッド9aの組み合わせによりなるビーム照射コースを一つのみとすることができ、複数門のビーム装置を備えた場合よりも低コスト化することが可能である。また、回転リング3を複数の円弧状部材(3e、3f)を結合して形成することが可能であり、低コスト化、納期短縮ができるという効果がある。
【0039】
なお、上述の例においては、中心角度が90°と270°の円弧状部材3e、3fを挙げたが、中心角度120°、240°の円弧状部材とするなど、結合部18とローラー4とが干渉せず、粒子線照射ヘッド9aの移動範囲(ビーム照射コースの照射領域であり、180°以上。回転リング3上の最上部と最下部を含む範囲。)を確保できる範囲内において円弧状部材の中心角度を設定することが可能であることは言うまでもない。なお、回転フレーム1には、重量体である偏向電磁石および粒子線照射ヘッド9aに対向する配置に、重量のバランスを取るためにカウンタバランス2を配置しているが、図8中においてはその記載を省略している。
【0040】
実施の形態7.
上述の実施の形態6では、中心角度90°、270°の円弧状部材3e、3fによって回転リング3を形成し、ビーム照射コースが一つであり、粒子線照射ヘッド9a(基準位置が回転リング3上の最上部、0°。)による照射領域が0°〜180°である場合を例示した。この実施の形態7の回転照射治療装置では、図9に示すように、実施の形態6の構成にビーム照射コースを一つ追加し、基準位置からの角度180°の位置(粒子線照射ヘッド9aと対向する位置)となる回転フレーム1上に粒子線照射ヘッド9bを取り付け、粒子線照射ヘッド9bによって180°〜360°の範囲の粒子線照射を行うよう構成した。このように、2門のビーム装置を備えることで、治療台11の移動や患者14の姿勢変更を必要とすることなく、中心軸を中心とした360°全方位からの粒子線照射を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 回転フレーム 2a、2b カウンタバランス、
3 回転リング、
3a、3b、3aa、3bb、3cc、3dd、3e、3f 円弧状部材、
4 ローラー 4a 駆動ローラー、
4b 支持ローラー 5 駆動装置、
6、6a、6b 真空ダクト 7、8a、8b 偏向電磁石、
9a、9b、9c、9d、9aa 粒子線照射ヘッド、
10 コーンフレーム 11 治療台、
12 梁 13 照射室、
14 患者 18、18a 結合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の周りに回転可能に配置された回転リング、上記回転リングに当接して上記回転リングを支持、駆動するローラー、上記回転リングにフレームを介して取り付けられ、上記中心軸に向かって粒子線を照射する粒子線照射ヘッドを備え、上記粒子線照射ヘッドは、第一の照射ヘッドと第二の照射ヘッドを含み、上記第一の照射ヘッドから射出される第一の粒子線照射コースに対して、上記第二の照射ヘッドから射出される第二の粒子線の照射コースが、上記中心軸を中心として任意の角度で交叉する配置となるように、上記第一の照射ヘッドと上記第二の照射ヘッドが上記フレームに取り付けられたことを特徴とする回転照射治療装置。
【請求項2】
上記粒子線照射ヘッドは、第三の照射ヘッドと第四の照射ヘッドを含み、上記第一、第二、第三、第四の照射ヘッドから射出される粒子線の照射コースが、上記中心軸を中心として任意の角度で交叉する配置となるように、上記第一、第二、第三、第四の照射ヘッドが上記フレームに取り付けられたことを特徴とする請求項1記載の回転照射治療装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−46864(P2013−46864A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266846(P2012−266846)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2007−298116(P2007−298116)の分割
【原出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】