説明

回転精度の評価方法および評価装置

【課題】工作機械の主軸等の転がり軸受を用いた回転機の回転精度を短時間の内に正確に評価することが可能な評価方法および評価装置を提供する。
【解決手段】回転精度評価装置31は、変位計15,15によって得られた変位データから転動体の公転周波数に対応した帯域の変位データを抽出するバンドパスフィルタ17と、抽出された変位データの周期と同期した任意のタイミングで、変位計15,15による測定を行う機会であるか否かを判断する測定機会判断部19と、抽出された変位データ、および、測定機会判断部19の判断に基づいて変位計15,15により測定された変位データを記録する変位データ記録部25と、記録された変位データを用いて主軸8の非繰り返し回転精度の経時変化を算出する回転精度算出部26と、算出された非繰り返し回転精度の経時変化を出力する回転精度出力部27とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受を用いた工作機械の主軸等の回転精度(特に、非繰り返し回転精度)を評価するための評価方法および評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主軸が転がり軸受(以下、「軸受」ともいう)によって回転可能に支持された工作機械において、主軸の回転精度を評価する場合には、主軸が定速回転しているときの振れ(回転中心に対する変位)を変位計で測定する方法が用いられる。また、当該測定において主軸の振れを繰り返し測定したときの非繰り返し成分は、NRRO(Non Repeatable Run Out)と呼ばれ、回転精度を評価する上で重要な指標となる。
【0003】
通常、NRROは、主軸の回転周期毎に切り出してそれらを重畳させたときの変動幅の最大値で評価される。また、相互に直交する位置に配置した2つの変位計を利用して描画したリサージュ図形の幅で評価されることもある。さらに、特許文献1の如く、リサージュ図形のラインが互いに交鎖して主軸の振れ状態が視覚的に捉え難くなることを避けるために、測定用棒部材の測定部を回転中心から偏心させて、リサージュ図形を所定の大きさの円に対する凹凸として描かせる方法も考案されている。
【0004】
また、多大な計算を行うことなく、生産ラインの中で回転体の径方向振動のNRRO振動成分をリアルタイムに評価することを可能とするために、特許文献2の如く、互いに異なる2方向から測定して得られた振動成分の各々をフーリエ変換して周波数スペクトルを求め、それらの周波数スペクトルを用いて回転方向の各方位毎に径方向振動の振幅を算出することによって回転体の径方向振動を評価する方法も考案されている。
【0005】
加えて、外輪に固定した変位計を用いて回転する内輪のNRROを測定する場合に、外輪の形状誤差の影響を受けずに、NRROを正しく評価するために、特許文献3の如く、相互に直交する位置に振動検出手段を配設し、回転に同期させて所定回転角度毎に振動測定値を取得し、振動波形の変動幅の最大値および最小値およびその方位を算出する方法も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2716249号公報
【特許文献2】特許第3788231号公報
【特許文献3】特開平7−103815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工作機械の主軸は、通常、低速回転時に転動体と転走面間に油膜形成が十分行われるように潤滑油の粘度を選定しているため、高速回転時には、転動体の相対的な位置決めをするための保持器と案内面間との摩擦抵抗が大きくなることに起因して、保持器が不安定な振動を生じ易い。また、高速回転時には、保持器のアンバランスに起因した振動も生じ易い。それらの保持器の不安定な振動によって、回転中の転動体の規則正しい配置が崩れて、転動体の公転周波数成分(以下、単に「fc成分」という)の主軸変位が増加し、NRROが悪化する事態が発生する。
【0008】
上記したような現象に起因して、回転精度には経時変化が生じてしまい、たとえば、XY方向に設置した2つの変位計を用いて工作機械の主軸を回転させて、所定回数の回転分のリサージュ図形を描画させた場合には、当該リサージュ図形の幅が刻々と変化してしまう。それゆえ、どのタイミングで変位を測定したかによって、回転精度の評価結果が大きく異なってしまう。
【0009】
たとえば、図4は、工作機械の主軸を所定の回転数(15,000rpm)で運転した場合における主軸のXY方向への変位のfc成分の変化を示したものであり、図5は、その際の主軸のリサージュ図形(所定回数の回転分のもの)を示したものであるが、XY方向の各変位計のfc成分が最小となったときにリサージュ図形を描画させると、当該図形の幅が細くなって(図5(a))、回転精度が良好であると判断されてしまい、XY方向の各変位計のfcが最大となったときにリサージュ図形を描画させると、当該図形の幅が太くなって(図5(b))、回転精度が不良であると判断されてしまう。
【0010】
しかしながら、特許文献2および特許文献3の回転精度の評価方法は、回転精度の時間変動については何ら考慮されていないため、回転精度の時間変動が大きい場合には、回転精度を正しく評価することができない。
【0011】
また、回転精度の経時変化の影響を払拭するために、測定時間を長くして最良値と最悪値を見つけ出すという方法が考えられるが、具体的にどのくらいの測定時間が必要なのか事前に知る手だてはなく、きわめて長い測定時間を要する事態も起こり得る。そのように長時間に亘って測定すると、測定データの容量が大きくなり、扱いにくいものとなってしまう。
【0012】
本発明の目的は、上記従来の評価方法が有する問題点を解消し、工作機械の主軸等の転がり軸受を用いた回転機の回転精度を短時間の内に正確に評価することが可能な評価方法、および当該評価方法を具現化するための評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、転がり軸受に支持された回転体の回転中における回転中心に対する特定部位の変位を変位計により測定することによって前記回転体の回転精度を評価する回転精度評価方法であって、前記変位計によって測定された特定部位の変位の公転周波数成分の経時変化割合に基づいて、回転体の非繰り返し回転精度の経時変化割合を求め、その非繰り返し回転精度の経時変化割合を用いて回転体の回転精度を評価することを特徴とするものである。
【0014】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、複数の変位計を用いて前記特定部位の変位を求めることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載された発明は、転がり軸受に支持された回転体の回転中における回転中心に対する特定部位の変位を変位計により測定することによって前記回転体の回転精度を評価する回転精度評価装置であって、変位計によって測定された変位データから前記特定部位の公転周波数に対応した帯域の変位データを抽出するバンドパスフィルタと、そのバンドパスフィルタによって抽出された変位データの周期と同期した任意のタイミングで、変位計による変位測定を行う機会であるか否かを判断する測定機会判断部と、前記バンドパスフィルタによって抽出された変位データ、および、前記測定機会判断部の判断に基づいて変位計により測定された変位データを記録する変位データ記録部と、その変位データ記録部で記録された変位データを用いて回転体の非繰り返し回転精度の経時変化を算出する回転精度算出部と、その回転精度算出部で算出された非繰り返し回転精度の経時変化を出力する回転精度出力部とからなることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、複数の変位計を用いて前記特定部位の変位を求めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の回転精度評価方法は、回転体の非繰り返し回転精度の経時変化を考慮して回転精度を評価するものであるため、転がり軸受を用いた回転機における回転体の回転精度を短時間の内に正確に評価することができる。
【0018】
請求項2に記載の回転精度評価方法は、複数の変位計を用いて特定部位の変位を測定するので、リサージュ図形を描くことが可能となり、また、複数の変位計を用いることで回転体の形状による誤差等を補正することが可能となるため、回転体の回転精度をきわめて正確に評価することができる。
【0019】
請求項3に記載の回転精度評価装置は、回転体の非繰り返し回転精度の経時変化を算出して出力するものであるため、転がり軸受を用いた回転機における回転体の回転精度を短時間の内に正確に評価することができる。
【0020】
請求項4に記載の回転精度評価装置は、複数の変位計を用いて特定部位の変位を測定するので、リサージュ図形を描くことが可能となり、また、複数の変位計を用いることで回転体の形状による誤差等を補正することが可能となるため、回転体の回転精度をきわめて正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】工作機械の主軸の軸方向に沿った鉛直断面(一部)を示す説明図である。
【図2】工作機械の主軸を正面から見た状態を示す説明図である。
【図3】測定機会判断部が測定機会を判断する際の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】主軸の変位のfc成分の変化を示したものである((a)はX方向のfc成分を示したものであり、(b)はY方向のfc成分を示したものである)。
【図5】主軸の変位のリサージュ図形である((a)はfc成分が最小値のときにおけるものであり、(b)はfc成分が最大値のときにおけるものである)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の回転精度の評価方法および評価装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0023】
<回転精度評価装置の構造>
図1は、本発明に係る回転精度評価装置を、立形マシニングセンタ等の工作機械の回転体(主軸)の転がり軸受(以下、単に「軸受」という)に装着した状態を示したものであり、モータ23によって回転駆動される主軸8の先端には、軸受1が設置されている。
【0024】
軸受1は、ハウジング9内で主軸8を軸支するために同心状に設けられた内輪2および外輪5と、内輪2と外輪5との間に狭持された転動体である複数のボール3,3・・と、ボール3,3・・を周方向に保持して相互の相対的な位置決めをするリング状の保持器4,4・・とを具備している。
【0025】
また、主軸8を回転駆動させるためのモータ23は、モータ制御部22を介してNC装置21と接続されており、当該NC装置21によるモータ23の作動制御によって、主軸8の回転駆動が制御されるようになっている。加えて、モータ制御部22には、回転検出部20を介して、主軸8の回転数を検出するための回転検出器18が接続されている。
【0026】
また、軸受1の外周際には、カラー10が設けられており、当該カラー10には、内輪2と外輪5との間に開口するように供給孔7が貫設されている。さらに、ハウジング9には、貫通孔9aが、半径方向に沿って貫設されておち、供給孔7と連通した状態になっている。加えて、貫通孔9aには、供給ポンプ12に繋がったビニールチューブ14が接続されており、供給ポンプ12の作動によって、供給タンク13内の潤滑油が、供給孔7を介して内輪2と外輪5との間に供給されるようになっている。なお、供給ポンプ12は、供給ポンプ制御部24を介してNC装置21に接続されており、当該NC装置21によって作動が制御されるようになっている。
【0027】
一方、回転精度評価装置31は、主軸8の回転中心に対する変位を測定するための非接触式の変位計15,15、変位計15,15によって測定された転動体の変位を電圧の変化に変換して増幅するための変位計アンプ28、変位計15,15の測定タイミングを判断するための測定機会判断部19、転動体の公転周波数を算出してフィルタ帯域を設定するためのバンドパスフィルタ17、変位計15,15からの変位データを記録するための変位データ記録部25、変位計15,15からの測定データに基づいて主軸8の回転精度を算出するための回転精度算出部26、算出された主軸8の回転精度を表示するための回転精度出力部27等によって構成されている。
【0028】
また、図2は、軸受1を装着した主軸8を図1におけるA方向から見た状態を示したものであり、各変位計15,15は、ホルダ16を介して、蓋体6に取り付けられており、それぞれ、主軸8の回転中心を通って互いに直交するX軸、Y軸に沿った状態になっている。
【0029】
一方、図1の如く、各変位計15,15は、変位計アンプ28と接続されており、当該変位計アンプ28には、測定機会判断部19が接続されている。また、それらの変位計アンプ28および測定機会判断部19には、バンドパスフィルタ17が接続されている。さらに、測定機会判断部19には、変位データ記録部25が接続されており、その変位データ記録部25には、回転精度算出部26が接続されており、当該回転精度算出部26には、回転精度出力部27が接続されている。一方、モータ23に接続されたモータ制御部22が、回転検出器18に接続された回転検出部20を介して、バンドパスフィルタ17に接続された状態になっている。
【0030】
<回転精度評価装置の作動内容>
上記の如く構成された回転精度評価装置31においては、主軸8の回転中には、変位計15,15によって、主軸8のX方向への変位およびY方向への変位が、電圧の変位に変換されて出力されるようになっている。変位計15,15によって変換された電圧信号は、変位計アンプ28で増幅され、バンドパスフィルタ17によって、転動体(すなわち、ボール3、3・・)の公転周波数の信号が抽出される。すなわち、バンドパスフィルタ17によって、回転検出部20で検出された回転速度および軸受1の緒元(大きさや重量等)を用いて、転動体の公転周波数が算出され、フィルタ帯域が設定される。なお、転動体の公転周波数fc[Hz]は、niを内輪2の回転速度[min−1]、Daを転動体の直径[mm]、dmを転動体のピッチ円直径[mm]、αを接触角[°]とすれば、下式1で表すことができる。
【0031】
fc=(1/60)・(ni/2)・{(dm−Da・cosα)/dm}・・・式1
【0032】
そして、上記の如く変位信号のfc成分Anが抽出されると、当該fc成分Aが、測定機会判断部19へ送信されるとともに、変位データ記録部25内のA保管メモリに保存される。測定機会判断部19においては、変位信号のfc成分Aが最大値Amaxである場合には、“NRROの最大値Rmaxを取得すべき機会”であると判断され、変位信号のfc成分Aが最小値Aminである場合には、“NRROの最小値Rminを取得すべき機会”であると判断される。すなわち、X方向における変位信号のfc成分Aが、図4(a)の如きものであり、X方向における変位信号に基づいて、回転精度の測定機会を判断する場合には、図4(a)におけるタイミングAにおいて、“NRROの最大値Rmaxを取得すべき機会”であると判断され、タイミングBにおいて、“NRROの最小値Rminを取得すべき機会”であると判断される。
【0033】
図3は、上記の如く測定機会判断部19が回転精度の測定機会を判断する場合の処理内容を示したものであり、回転精度の測定機会を判断する際には、変位計信号のfc成分Aの最大値Amaxと最小値Aminを検出するために、fc成分増加フラグFが用いられる。そして、fc成分が増加中である場合にはF=1に設定し、fc成分が減少中である場合にはF=0に設定し、それらのfc成分増加フラグFの切り替わりによって、fc成分の最大・最小を把握する。
【0034】
まず、ステップ(以下、単にSで示す)1では、fc成分増加フラグFの初期値を決定するために、変位計信号のfc成分Aを2回取得し、A>Aの場合にはF=0に設定し、A<Aの場合にはF=1に設定する。
【0035】
上記の如くfc成分増加フラグFの初期値を決定した後には、T0時間毎に、fc成分Aをサンプリングすることによって、fc成分の時間T0毎の増減を求める。すなわち、S2で、T0時間毎に、fc成分Aをサンプリングするとともに、S3で、T0時間前に取得したfc成分An−1が、変位データ記録部25のA保管メモリから読み込まれ、続くS4で、A>An−1であるか否か判断される。
【0036】
そして、S4で“YES”と判断された場合には、続くS5で、fc成分増加フラグF=0であるか否か(すなわち、fc成分が減少中であるか否か)判断される。S5で“YES”と判断された場合には、Aが最小であると判断できるから、S6で、回転精度の最良値を取得する機会と判断して、Amin=Aとし、S7で、変位計15,15によって所定回数分(たとえば、10回転分)の変位を取得し、そのデータを変位データ記録部25に送信するとともに、S8で、fc成分増加フラグをF=1に設定する。
【0037】
一方、S4で“NO”と判断された場合には、続くS9で、fc成分増加フラグF=1であるか否か(すなわち、fc成分が増加中であるか否か)判断される。S9で“YES”と判断された場合には、Aが最大であると判断できるから、S10で、回転精度の最悪値を取得する機会と判断して、Amax=Aとし、S11で、変位計15,15によって所定回数分(たとえば、10回転分)の変位を取得し、そのデータを変位データ記録部に送信するとともに、S12で、fc成分増加フラグをF=0に設定する。
【0038】
S8あるいはS13でfc成分増加フラグを“0”あるいは“1”に設定した後には、S13で、AmaxとAminの両方の取得を完了したか否か判断し、“YES”と判断された場合には、処理を終了する。一方、S5、S9またはS13で“NO”と判断された場合には、S14で、Aを変位データ記録部のA保管メモリに保管し、S15で、nに1を加算するとともに、S2で、時間T0後に再びAを取得する。
【0039】
上記した処理によって、NRROの最大値Rmax・最小値Rminの取得機会と判断された場合には、回転検出部20からの回転信号を用いて定めた回転分の変位計信号が、変位データ記録部25のR保管メモリに保存される。そして、NRROの最大値Rmaxと最小値Rmin両方の変位計信号が保存された場合には、変位計15,15による主軸の変位の測定を終了させる。
【0040】
しかる後、回転精度算出部26によって、記録した変位計信号からNRROの最大値Rmaxと最小値Rminが算出される。そして、下式2を用いて、変位信号のfc成分AがA’と正規化され、当該A’およびNRROの最大値Rmax,最小値Rminから、下式3を用いて、NRROの経時変化Rが算出される。
【0041】
’=(A−Amin)/(Amax−Amin)・・・式2
=A’・(Rmax−Rmin)+Rmin・・・式3
【0042】
上記の如く回転精度算出部26で算出されたNRROの経時変化Rは、変位計信号表示部27に表示される(X方向、Y方向の各方向毎に別々に表示される)。かかる変位計信号表示部27への経時変化Rnの表示によって、使用者は、主軸の回転精度を詳細に把握することが可能となる。なお、変位信号のfc成分の増減割合は、X方向とY方向でほぼ一致するため、X方向・Y方向どちらの信号をAとしても問題はない。
【0043】
<回転精度評価装置(評価方法)の効果>
回転精度評価装置31は、上記の如く、変位計15,15によって得られた変位データから転動体(ボール3)の公転周波数に対応した帯域の変位データを抽出するバンドパスフィルタ17と、そのバンドパスフィルタ17によって抽出された変位データの周期と同期した任意のタイミング(時間間隔)で、変位計15,15による変位測定を行う機会であるか否かを判断する測定機会判断部19と、バンドパスフィルタ17によって抽出された変位データ、および、測定機会判断部19の判断に基づいて変位計15,15により測定された変位データを記録する変位データ記録部25と、その変位データ記録部25で記録された変位データを用いて主軸8の非繰り返し回転精度(すなわち、NRRO)の経時変化を算出する回転精度算出部26と、その回転精度算出部26で算出されたNRROの経時変化を出力する回転精度出力部27とからなるものである。したがって、回転精度評価装置31によれば、主軸8の回転精度を短時間の内に正確に評価することができる。
【0044】
また、回転精度評価装置31は、2つの非接触式の変位計15,15を用いて主軸の変位を求めるものであるため、主軸8の回転精度をきわめて正確に評価することができる。
【0045】
<回転精度評価装置(評価方法)の変更例>
本発明に係る回転精度評価装置の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、変位計、バンドパスフィルタ、測定機会判断部、変位データ記録部、回転精度算出部、回転精度出力部等の形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。加えて、本発明に係る回転精度評価方法の構成も、上記実施形態において回転精度評価装置により具現化された方法に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0046】
たとえば、本発明に係る回転精度評価装置を搭載する装置あるいは機械は、上記実施形態の如く、転がり軸受を備えた工作機械に限定されず、電動機(携帯可能なものを含む)等に変更することも可能である。加えて、本発明に係る回転精度評価装置を上記実施形態の如く工作機械に搭載する場合であっても、その工作機械の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、主軸、軸受(転がり軸受)、変位計、回転検出器、供給ポンプ、供給ポンプ制御部、NC装置、モータ、モータ制御部、回転検出部等の形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0047】
また、本発明に係る回転精度評価装置は、上記実施形態の如く、NRROの最大値と最小値を直接測定することでより正確なNRROの最大値と最小値を得て、それらのNRROの最大値と最小値からNRROの径時変化を算出するものに限定されず、任意の時間に複数回測定したNRROから径時変化を算出するもの等に変更することも可能である。さらに、NRROの最大値と最小値のみを出力し径時変化を出力しないものでも良い。かかる構成を採用することによって、計算量や記録容量を減らして評価装置の構造を簡素化することが可能となる。
【0048】
加えて、本発明に係る回転精度評価装置および評価方法は、上記実施形態の如く、主軸の回転中心からの変位に基づいて回転精度を評価するものに限定されず、電動機用の軸等、他の特定部位の回転中心からの変位に基づいて回転精度を評価するものに変更したり、軸受外輪側に設けられ回転するものの特定部位の回転中心からの変位に基づいて回転精度を評価するものに変更することも可能である。また、変位を測定する特定部位は実施例のように円筒部ではなく球状部分を測定すると精度をより正確に測定することができる。さらに、単一の特定部位の回転中心からの変位に基づいて回転精度を評価するものに限定されず、回転体の長手方向(あるいは長手方向と直交する方向)に亘って複数の特定部位を設定し、それらの特定部位の回転中心からの変位に基づいて回転精度を評価するもの等に変更することも可能である。
【0049】
さらに、本発明に係る回転精度評価装置および評価方法は、上記実施形態の如く、互いに直交するように配置された2つの変位計によって測定された変位データより得たリサージュ図形に基づいて回転精度を評価するものに限定されず、2つの変位計の配置が同軸上でなければ直交していなくてもリサージュ図形に基づいて回転精度を正確に評価することも可能であるし、単一の変位計によって測定された変位データに基づいて回転精度を評価するものに変更することも可能である。加えて、場合によっては、回転体の形状による誤差や回転体の軸方向への変位等を補正するために複数の変位計を設置することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・軸受(転がり軸受)
3・・ボール
8・・主軸
17・・バンドパスフィルタ
19・・測定機会判断部
25・・変位データ記録部
26・・回転精度算出部
27・・回転精度出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受に支持された回転体の回転中における回転中心に対する特定部位の変位を変位計により測定することによって前記回転体の回転精度を評価する回転精度評価方法であって、
前記変位計によって測定された特定部位の変位の公転周波数成分の経時変化に基づいて、回転体の非繰り返し回転精度の経時変化を求め、
その非繰り返し回転精度の経時変化を用いて回転体の回転精度を評価することを特徴とする回転体の回転精度評価方法。
【請求項2】
複数の変位計を用いて前記特定部位の変位を求めることを特徴とする請求項1に記載の回転精度評価方法。
【請求項3】
転がり軸受に支持された回転体の回転中における回転中心に対する特定部位の変位を変位計により測定することによって前記回転体の回転精度を評価する回転精度評価装置であって、
変位計によって測定された変位データから前記特定部位の公転周波数に対応した帯域の変位データを抽出するバンドパスフィルタと、
そのバンドパスフィルタによって抽出された変位データの周期と同期した任意のタイミングで、変位計による変位測定を行う機会であるか否かを判断する測定機会判断部と、
前記バンドパスフィルタによって抽出された変位データ、および、前記測定機会判断部の判断に基づいて変位計により測定された変位データを記録する変位データ記録部と、
その変位データ記録部で記録された変位データを用いて回転体の非繰り返し回転精度の経時変化を算出する回転精度算出部と、
その回転精度算出部で算出された非繰り返し回転精度の経時変化を出力する回転精度出力部とからなることを特徴とする回転精度評価装置。
【請求項4】
複数の変位計を用いて前記特定部位の変位を求めることを特徴とする請求項3に記載の回転精度評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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