説明

回転自在操舵輪を備えた自転車

【課題】回転自在の操舵輪に適したハンドル及び制動装置を備えた自転車の提供。
【解決手段】この自転車2は、主フレーム4と、操舵部10と、制動装置14とを備えている。操舵部10は、ハンドル20と、操舵軸22とを備えている。ハンドル20は、操舵軸22を回転軸に回転可能に主フレーム4に支持されている。ハンドル20は、操舵軸22の軸線を中心とする円形である。制動装置14は、ブレーキレバー50とブレーキステー48とを備えている。ブレーキレバー50のブレーキレバー本体は、ブレーキステー48に回動可能に支持されている。ブレーキレバー本体から延びるグリップ64は、ハンドル20の円形に沿った円弧状である。ブレーキステー48は、操舵軸22に固定されている。グリップ64は、ハンドル20から離れる向きに付勢されている。グリップ64は、ハンドル20に近づく向きに回動させられてブレーキがかけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自在操舵輪を備えた自転車に関する。詳細には、本発明は回転自在操舵輪に適したハンドル及び制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵輪である前輪を駆動輪とした自転車がある。その操舵輪の前輪は360°回転可能とされている。これにより、360°の任意の向きに駆動力を伝えることができる。この自転車では、後ろ向き及び斜め後方向きへの移動等、操舵の自由度が大きい。
【0003】
図8は、操舵輪である前輪を駆動輪とした従来の自転車102の正面図である。この自転車102が特開2002−337781号公報に記載されている。この自転車102は、主フレーム104の前方にヘッドラック106を備えている。ヘッドラック106は、ハンドルを備えた操舵軸108を360°回転可能に保持している。この操舵軸108の上方にはハンドル110が備えられている。ハンドル110は屈曲した棒状である。ハンドル110の中央部が、操舵軸108の上端に固定されている。ハンドル110の両端には、運転者よって握られるグリップ112が備えられている。
【0004】
このヘッドラック106は、第一伝動チェーン116の駆動力を第二伝動チェーン126に伝える駆動伝達機構118を備えている。操舵軸108の下方先端には、前輪120が回転可能に取り付けられている。
【0005】
運転者がクランク122を漕ぐと、第一チェーンギア124が回転する。第一チェーンギア124の回転は、第一伝動チェーン116を介して駆動伝達機構118に伝えられる。駆動伝達機構118は、この駆動力をヘッドラック106の下方に往復の直線運動で伝える。ヘッドラック106の下方でこの直線運動を回転運動に変換して、第二伝動チェーン126に伝える。駆動力は、第二伝動チェーン126を介してフリーホイール128に伝えられる。フリーホイール128に伝えられた駆動力で、前輪120が回転させられている。
【0006】
この自転車102では、運転者がグリップ112を握って、ハンドル110がきられる。ハンドル110がきられると、前輪120の進行方向が変えられる。これにより、自転車102の進行方向が変えられる。この自転車102では、ハンドル110が回転自在のまま駆動力を伝えることが可能である。
【特許文献1】特開2002−337781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図示されていないが、一般に自転車102はハンドル110にブレーキレバーを備えている。ブレーキレバーはグリップの下方に軸着されている。運転者がグリップ112とブレーキレバーを手で握ることで、ブレーキレバーがグリップ112に引き寄せられる。このグリップの引き寄せにより図示しないワイヤーが引かれる。このワイヤーが引かれることで、前輪又は後輪に取り付けられたブレーキが作動し車輪の回転が止められる。
【0008】
自転車102では、ハンドル110が大きくきられた状態でブレーキがかけられる場合がある。例えば、ハンドル110が直進向きから90°きられると、グリップ112の一方は運転者側に位置し、グリップ112の他方は運転者から遠く離れて位置する。この自転車102では、ハンドル110が大きくきられた状態での操縦が困難である。
【0009】
ハンドル110が大きくきられると、ブレーキレバーもグリップ112と同様に、操舵軸108を間にして、一方が運転者側に位置し、他方が運転者から遠く離れて位置する。この自転車102では、ハンドル110が大きくきられた状態でのブレーキ操作が困難である。
【0010】
本発明の目的は、回転自在の操舵輪に適したハンドル及び制動装置を備えた自転車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る自転車は、主フレームと、操舵部と、制動装置とを備えている。この操舵部は、ハンドルと、操舵軸とを備えている。このハンドルは、操舵軸に固定されている。このハンドルは、操舵軸を回転軸に回転可能に主フレームに支持されている。このハンドルは、操舵軸の軸線を中心とする円形である。この制動装置は、ブレーキレバーとブレーキステーとを備えている。このブレーキレバーは、ブレーキレバー本体とブレーキレバー本体から延びるグリップとを備えている。このブレーキレバー本体は、ブレーキステーに回動可能に支持されている。このグリップは、ハンドルの円形に沿った円弧状である。このブレーキステーは、操舵軸に固定されている。このグリップは、ハンドルから離れる向きに付勢されている。このグリップは、ハンドルに近づく向きに回動させられてブレーキがかけられる。
【0012】
好ましくは、本発明に係る自転車は、ピンステーと、ピンと、弾性体とを備えている。このピンは、ピンステーにピンの軸方向に摺動可能に支持されている。この弾性体は、ピンを上記ブレーキレバーから離れる方向に付勢している。上記グリップは、上記ハンドルに近づく向きに回動させられた状態で、ピンが弾性体の付勢力に抗してブレーキレバーに当接させられて、ブレーキレバーがハンドルから離れる向きに回動させられることが阻止される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自転車では、回転自在の操舵輪を備えた自転車で、操舵軸が大きくきられても操縦性に優れている。この自転車では、操舵軸が大きくきられてもブレーキの操作性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る自転車2の正面図である。図1の右向きが、この自転車2の前方向きである。図1の左向きが、自転車2の後方向きである。この自転車2は、主フレーム4と、前輪6と、一対の後輪8と、操舵部10と、駆動装置12と、制動装置14とを備えている。この自転車2では、前輪6が、駆動輪として駆動されている。前輪6が、操舵輪とされている。
【0016】
後輪8は、主フレーム4の後方に回転可能に取り付けられている。この自転車2では、主フレーム4を挟んでこの自転車2の左右側面に一対の後輪8が回転可能に取り付けられている。この一対の後輪8は、この自転車2の前後方向に回転可能にされている。この主フレーム4は、上方にサドル16を備えている。主フレーム4の前方には、ヘッドパイプ18が備えられている。ヘッドパイプ18は、その内部が空洞であり、円筒状である。
【0017】
図2は、図1の自転車2のハンドル20の側面図である。この図2は、図1に示された自転車2のA矢視図である。
【0018】
図3は、図1の自転車2のハンドル20の平面図である。この図3は、図1に示される自転車2のB矢視図である。図3の上方が前方であり、下方が後方である。図3に示されるように、ハンドル20は、ハンドル本体26、軸固定部28及びスポーク30からなっている。ハンドル本体26は、リング状である。軸固定部28は円板形状であり、その中心がハンドル本体26の中心に一致させられている。軸固定部28とハンドル本体26とは、スポーク30により連結され、一体とされている。
【0019】
操舵軸22は、丸棒状の形状をしている。図1に示されるように、ハンドル20の軸固定部28が、操舵軸22の上方端に固定されている。操舵軸22の軸線は、ハンドル本体26の回転軸の軸線に一致させられている。この操舵軸22は上端と下端の間で、ヘッドパイプ18に回転自在に保持されている。この自転車2では、操舵軸22はヘッドパイプ18に図示されないベアリングにより回転可能に支持されている。この操舵軸22は、その軸線を回転軸として回転可能に支持されている。
【0020】
図1に示されるように、操舵部10は、ハンドル20、操舵軸22及び一対のホーク24を備えている。図示されていないが図1のA矢視図向きにみて、一対のホーク24は、下方に向かって逆U字状に延びている。前輪6は、一対のホーク24に支持されている。前輪6は一対のホーク24の間に位置している。前輪6は、その中心を回転軸として回転可能に支持されている。
【0021】
図1に示されるように、駆動装置12は、クランク32、駆動ギア34、無端連条索としての第一チェーン36、第一かさ歯車38、両面かさ歯車40、第二かさ歯車42、無端連条索としての第二チェーン44及び従動ギア46を備えている。第一かさ歯車38は、ギアとフリーホイールを備えている。このギアと第一かさ歯車38とは、その回転中心を同軸上にして一体とされている。第二かさ歯車42は、ギアを備えている。このギアと第二かさ歯車42とは、その回転中心を同軸上にして一体とされている。
【0022】
一対のクランク32は、それぞれ主フレーム4の左右両側に回転可能に取り付けられている。駆動ギア34が、主フレーム4に対して回転可能に取り付けられている。クランク32の回転軸と駆動ギア34との回転軸は、水平方向であり、同軸である。駆動ギア34には、第一チェーン36が架け渡されている。第一かさ歯車38は、ヘッドパイプ18に支持されている。第一かさ歯車38は、回転軸を水平方向に回転可能に支持されている。第一チェーン36は、この第一かさ歯車38のギアと駆動ギア34とに架け渡されている。
【0023】
両面かさ歯車40は、上方のかさ歯と下方のかさ歯とを備えている。この両面かさ歯車40は、操舵軸22にその軸線を中心に回転可能に取り付けられている。この自転車2では、両面かさ歯車40は、ベアリングを介して操舵軸22に回転可能に支持されている。第一かさ歯車38のかさ歯は、両面かさ歯車40の上方のかさ歯と噛み合っている。
【0024】
第二かさ歯車42は、操舵軸22に回転可能に支持されている。第二かさ歯車42は、水平方向を回転軸として回転可能に支持されている。第二かさ歯車42のかさ歯は、両面かさ歯車40の下方のかさ歯と噛み合っている。従動ギア46は、前輪6に固定されている。従動ギア46は、前輪6と回転軸を同じにして固定されている。第二チェーン44は、第二かさ歯車42のギアと従動ギア46に架け渡されている。
【0025】
図1に示されるように、制動装置14は、ブレーキステー48、一対のブレーキレバー50、ワイヤー接続部52、第一ワイヤー54、第二ワイヤー56、一対のブレーキキャリパ58及び一対のブレーキディスク60を備えている。ブレーキステー48は、操舵軸22に固定されている。ブレーキステー48は、ハンドル20の下方に位置している。
【0026】
図3に示されるように、一対のブレーキレバー50は、それぞれブレーキレバー本体62及びグリップ64を備えている。一対のブレーキレバー50は、回転軸を通る前後方向に対し左右対称である。ブレーキレバー本体62は板状である。ブレーキレバー本体62の一端は、操舵軸22の近傍に位置している。ブレーキレバー本体62の他端からグリップ64が延びている。グリップ64は、ハンドル本体26のリング形状の外径に沿って円弧状に延びている。
【0027】
図2及び図3に示されるように、ブレーキステー48は、レバーステー66、ストッパー68及びワイヤー孔70を備えている。レバーステー66は、操舵軸22の近傍に位置している。ブレーキレバー50は、ブレーキレバー本体62の一端をレバーステー66に軸着されている。ブレーキレバー50は、グリップ64がハンドル本体26に近づく方向に回動可能に軸着されている。ストッパ−68は、ブレーキステー48に固定されている。ストッパー68は、ブレーキステー48とブレーキレバー本体62と間に位置している。ストッパー68はレバーステー66とグリップ64の間に位置している。
【0028】
図3に示されたワイヤー孔70は、ブレーキレバー本体62に形成されている。ワイヤー孔70は、一対のブレーキレバー本体62に、それぞれ2つずつ形成されている。4つのワイヤー孔70には、それぞれ第一ワイヤー54が通されている。この第一ワイヤー54の先端は、それぞれブレーキレバー本体62のワイヤー孔70に抜け止めされて連結されている。
【0029】
自転車2は、ピンステー74、ピン76および弾性体としてのコイルスプリング78を備えている。ピンステー74は、ブレーキステー48に固定されている。ピンステー74は、レバーステー66とグリップ64の間に位置している。ピン76は、ピンステー74に通されている。ピンステー74は、ピン76を摺動可能に保持している。ピン76の摺動方向は、ブレーキレバー本体62の回動の回転軸に平行である。コイルスプリング78は、ピン76を通されている。ピン76は、コイルスプリング78によりブレーキレバー本体62から離れる向きに付勢されている。ブレーキレバー本体62がストッパー68に当接した状態で、ピン76は、ブレーキレバー本体62に近づく向きに摺動させると、ブレーキレバー本体62と干渉する位置にある。
【0030】
図4は、図1の自転車2のワイヤー接続部52の側面の断面図である。このワイヤー接続部52は、円形の天板80、第一ワイヤー止め円板82、底板84、第二ワイヤー止め円板86、ケース88を備えている。
【0031】
天板80は、円形板状である。天板80の中心には孔が形成されている。この孔に、操舵軸22が通されている。天板80は、操舵軸22に固定されている。天板80の下方には第一ワイヤー止め円板82が位置している。第一ワイヤー止め円板82は、円形板状である。第一ワイヤー止め円板82は、中心に孔が形成されている。この孔に操舵軸22が通されている。第一ワイヤー止め円板82は、操舵軸22の軸方向に摺動可能にされている。
【0032】
この第一ワイヤー止め円板82の更に下方には底板84が位置している。この底板84は、円形板状である。底板84は、中心に孔が形成されている。この孔に操舵軸22が通されている。底板84は、ヘッドパイプ18に固定されている。第二ワイヤー止め円板86は、天板80と第一ワイヤー止め円板82との間に位置している。第二ワイヤー止め円板86は、円形板状である。第二ワイヤー止め円板86は、中心に孔が形成されている。第二ワイヤー止め円板86の孔に操舵軸22及び第一ワイヤー54が通されている。操舵軸22は、第二ワイヤー止め円板86に対して操舵軸22の軸線回りに回転可能に通されている。第二ワイヤー止め円板86は、操舵軸22の軸方向に摺動可能である。第一ワイヤー止め円板82と第二ワイヤー止め円板86の間にはベアリングが装着されている。第一ワイヤー止め円板82と第二ワイヤー止め円板86とは操舵軸22を回転軸として相対的に回転可能にされている。
【0033】
図5は、図4に示されたワイヤー接続部52の平面の断面図である。点Pは、回転軸22の中心を示している。第二ワイヤー止め円板86の外周縁近傍には、一対のワイヤー孔90が形成されている。一対のワイヤー孔90は、操舵軸22を間にしている。点Pは、一対のワイヤー孔90を通る直線上に位置して、一対のワイヤー孔90の中点である。2本の第二ワイヤー56が、このワイヤー孔90にそれぞれ1本ずつ通されて第二ワイヤー止め円板86に抜け止めされ連結されている。
【0034】
第一ワイヤー止め円板82の孔の内周縁近傍には、4つのワイヤー孔92が形成されている。点Pは、隣合わない2つのワイヤー孔92を通る直線状に位置している。点Pは、この2つのワイヤー孔92の中点である。この隣り合わない2つのワイヤー孔92に、一対のブレーキレバー本体62のうちの一方のブレーキレバー本体62に連結された第一ワイヤー54が連結されている。他の隣り合わない2つのワイヤー孔92に、他方のブレーキレバー本体62に連結された第一ワイヤー54が連結されている。4本の第一ワイヤー54は、この4つのワイヤー孔92にそれぞれ1本ずつ通されて第一ワイヤー止め円板82に抜け止めされ連結されている。この自転車2の第一ワイヤー止め円板82では、4つのワイヤー孔92が点Pを中心とする円上に位置して、90°の等間隔で配置されている。
【0035】
図1に示されるように、2本の第二ワイヤー56のうち、一方の第二ワイヤー56は、右側の後輪8のキャリパ58に連結されている。他方の第二ワイヤー56は左側の後輪8のキャリパ58に連結されている。この第二ワイヤー56は従動輪である一対の後輪8に連結されている。このキャリパ58の近傍には後輪8に一体に固定されたディスク60が位置している。
【0036】
図1の自転車2では、クランク32が運転者により漕がれ、クランク32が回転させられる。クランク32の回転により、駆動ギア34が回転させられる。駆動ギア34の回転は、第一チェーン36により、ギアを備えた第一かさ歯車38に伝えられる。第一かさ歯車38はフリーホイールを備えている。このフリーホイールのラチェット構造により、第一チェーン36の一方の回転向きのみが両面かさ歯車40に伝えられる。他方の回転向きはフリーホイールにより両面かさ歯車40に伝えられない。第一チェーン36により、第一かさ歯車38が一方の回転向きに回転させられる。第一かさ歯車38が水平方向を回転軸として回転させられる。
【0037】
この第一かさ歯車38の回転により、両面かさ歯車40が回転させられる。両面かさ歯車40は、操舵軸22の軸線を回転軸として回転させられる。第一かさ歯車38及び両面かさ歯車40により、水平方向を回転軸とする回転が操舵軸22を回転軸とする回転に変換される。両面かさ歯車40の回転により、第二かさ歯車42が回転させられる。両面かさ歯車40及び第二かさ歯車42により、操舵軸22を回転軸とする回転が水平方向を回転軸とする回転に変換される。第二かさ歯車42に備えたギアの回転は、第二チェーン44を介して従動ギア46に伝えられる。従動ギア46の回転により、前輪6が回転させられる。従動ギア46及び前輪6には、駆動力は水平方向の回転として伝えられている。この前輪6の駆動により、自転車2は走行させられる。
【0038】
図1のハンドル20が、運転者により回転させられる。ハンドル20の回転にともなって、操舵軸22が回転する。この操舵軸22は、360°回転自在である。ハンドル20は、リング状のハンドル本体26を備えている。このハンドル20により、360°回転いずれの向きでもハンドルの操舵が容易である。ハンドル本体26はリング状に限られない。ハンドル本体26はその回転中心を操舵軸22とする円形であればよい。例えば、ハンドル本体26は円板形状であってもよい。この自転車2のハンドル20は、車椅子にも適している。操舵軸22の回転により、前輪6の進行方向が変えられる。これにより、自転車2は走行向きが変えられる。本発明に係る自転車には車椅子も含まれる。この自転車2はハンドル本体26の上部に把手94を備えている。この把手94により、片手でのハンドル操作が容易にされている。
【0039】
この自転車2では、前輪6が駆動輪兼操舵輪である。ハンドル20をまわして、前輪6の進行向きが直進向きから斜め前方に変えられると、自転車2は前進しながら旋回させられる。前輪6の進行向きが直進向きから斜め後方に変えられると、自転車2は後退しながら旋回させられる。前輪6の進行向きが直進向きから180°変えられると、自転車2は後退させられる。この様にこの自転車2は小回りに適している。この自転車2の操舵及び駆動の構成は車椅子にも適している。
【0040】
図6(a)は図1の自転車2の走行状態のブレーキレバー50が示された部分側面図であり、図6(b)はブレーキがかけられたブレーキレバー50が示された部分側面図である。図6(a)の走行状態では、第一ワイヤー54は、図示しない弾性体により下方に付勢されている。これにより、ブレーキレバー本体62がストッパー68に当接している。運転者により、ハンドル本体26とブレーキレバー50のグリップ64とが握られる。グリップ64が、ハンドル本体26に引き寄せられる。ブレーキレバー本体62と共に第一ワイヤー54が、引き上げられる。
【0041】
一方のブレーキレバー本体62に連結された、2本の第一ワイヤー54は、一方の隣合わない2つのワイヤー孔92に連結されている。他方のブレーキレバー本体62に連結された、2本の第一ワイヤー54は、他方の隣り合わない2つのワイヤー孔92に連結されている。この構成により、いずれか一方のブレーキレバー50が引き上げられることにより、図4に示された第一ワイヤー止め円板82が円滑に引き上げられる。第一ワイヤー止め円板82が引き上げられると、第二ワイヤー止め円板86が引き上げられる。
【0042】
第二ワイヤー止め円板86が引き上げられることにより、第二ワイヤー56が引き上げられる。図1に示された一方の第二ワイヤー56が引かれることにより、右側のキャリパ58が作動させられる。このキャリパ58は、右側の後輪8のディスク60にパッドを押し付ける。他方の第二ワイヤー56が引かれることにより、左側のキャリパ58が作動させられる。このキャリパ58は、左側の後輪8のディスク60にパッドを押し付ける。この自転車2では、第二ワイヤー止め円板86が引き上げらることで左右の後輪8のブレーキが同時にかけられる。これにより、一対の車輪のブレーキの片効きが抑制されている。この制動装置14は、片手で一対の後輪8のブレーキをかけることができる。このブレーキは身障者や高齢者の車いす用の制動装置に適している。
【0043】
運転者がグリップ64を握る手を弛めると、図示しない弾性体の付勢力で、第一ワイヤー54及び第二ワイヤー56が引き戻される。これにより、後輪8のブレーキが解除される。これにより、ブレーキレバー50が引き戻される。ブレーキレバー本体62がストッパー68に当接する位置に戻される。
【0044】
グリップ64は、ハンドル本体26のリング形状の外径に沿って円弧状に延びている。これにより、ハンドルが大きくきられた状態でのブレーキの操作が容易である。
【0045】
図7(a)は、図1の自転車2の走行状態のピン76とブレーキレバー本体62との位置関係が示された部分側面図であり、図7(b)は駐車ブレーキがかけられた状態のピン76とブレーキレバー本体62との位置関係が示された部分側面図である。この自転車2が止められるとき、ブレーキレバー50が引き上げられる。ブレーキレバー本体62により、図示しない第一ワイヤー54が引き上げられる。図7(b)では、このブレーキレバー本体62が引き上げられた状態である。この状態で、この自転車2はブレーキがかけられている。
【0046】
図7(b)に示されるように、ブレーキレバー本体62が引き上げられた状態で、ピン76がコイルスプリング78の付勢力に抗してブレーキレバー本体62の下に押し込まれる。運転者がブレーキレバー50から手を離すと、図示しない弾性体の付勢力により第一ワイヤー54が引き戻される。この第一ワイヤー54により、ブレーキレバー本体62がピン76に押し付けられる。この押し付け力により、ピン76はコイルスプリング78の付勢力に抗してブレーキレバー本体62の下に押し込まれた状態が維持される。これにより、運転者がピン76から手を離してもブレーキレバー本体62の下に押し込まれた状態が維持される。これにより、左右の後輪8のブレーキがかけられた状態が維持される。
【0047】
運転者により、ピン76がブレーキレバー本体62の下から引き離される。ブレーキレバー本体62は、第一ワイヤー54に引き戻される。これにより、左右の後輪8のにかけられたブレーキが解除される。これにより、ピン76とブレーキレバー本体62との位置関係は、図7(a)に示されたもとの位置に戻る。
【0048】
図1の自転車2では、後輪8が制動輪とされている。前輪6が制動輪とされてもよい。操舵輪が制動輪とされてもよい。駆動輪が制動輪とされてもよい。これらの自転車でも、このハンドル20及びブレーキ装置14を用いることができる。
【0049】
自転車の主フレームの前方左右及び後方左右の4箇所にキャスターを備えて、駆動輪兼操舵輪を設けてた自転車でも、この駆動輪兼操舵輪にハンドル20及びブレーキ装置14を用いることができる。このキャスターは、進行方向が自由に変えられる車輪である。例えば、主フレームの前方左右のキャスターと後方左右のキャスターとの中間に駆動輪兼操舵輪を設けてもよい。この自転車は、主フレームの前後方向の向きに関わらず、どの方向へも移動できる。この自転車は更に小回りが効き、車椅子に好適である。前方左右のキャスター、後方左右のキャスター及び駆動輪兼操舵輪を設けることで、駆動輪兼操舵輪の進行方向に360°いずれの方向にも直線的な移動も可能である。
【0050】
図1の自転車2は、クランク32により駆動する。このクランク32は、足で回転させられる。このクランク32は、主フレーム4の上方に設置されて手動クランクとしてもよい。人力の駆動に代えて駆動ギア34がモータにより駆動されてもよい。
【0051】
この実施形態で示されるように、本発明に係る自転車では、自転車102に比べ、操縦性及びブレーキの操作性に優れている。この自転車は、車椅子の操舵及び制動装置にも適している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、回転自在の操舵輪を備えた、車椅子を含む自転車に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る自転車の正面図である。
【図2】図2は、図1の自転車のハンドルの側面図である。
【図3】図3は、図1の自転車のハンドルの平面図である。
【図4】図4は、図1の自転車のワイヤー接続部の側面の断面図である。
【図5】図5は、図4(b)に示されたワイヤー接続部の平面の断面図である。
【図6】図6(a)は図1の自転車の走行状態のブレーキレバーが示された部分側面図であり、図6(b)はブレーキがかけられたブレーキレバーが示された部分側面図である。
【図7】図7(a)は図1の自転車の走行状態のピンとブレーキレバー本体との位置関係が示された部分側面図であり、図7(b)は駐車ブレーキがかけられた状態のピンとブレーキレバー本体との位置関係が示された部分側面図である。
【図8】図8は、操舵輪である前輪を駆動輪とした従来の自転車の正面図である。
【符号の説明】
【0054】
2・・・自転車
4・・・主フレーム
6・・・前輪
8・・・後輪
10・・・操舵部
12・・・駆動装置
14・・・制動装置
16・・・サドル
18・・・ヘッドパイプ
20・・・ハンドル
22・・・操舵軸
24・・・ホーク
26・・・ハンドル本体
28・・・軸固定部
30・・・スポーク
32・・・クランク
34・・・駆動ギア
36・・・第一チェーン
38・・・第一かさ歯車
40・・・両面かさ歯車
42・・・第二かさ歯車
44・・・第二チェーン
46・・・従動ギア
48・・・ブレーキステー
50・・・ブレーキレバー
52・・・ワイヤー接続部
54・・・第一ワイヤー
56・・・第二ワイヤー
58・・・ブレーキキャリパ
60・・・ブレーキディスク
62・・・ブレーキレバー本体
64・・・グリップ
66・・・レバーステー
68・・・ストッパー
70・・・ワイヤー孔
74・・・ピンステー
76・・・ピン
78・・・コイルスプリング
80・・・天板
82・・・第一ワイヤー止め円板
84・・・底板
86・・・第二ワイヤー止め円板
88・・・ケース
90・・・ワイヤー孔
92・・・ワイヤー孔
94・・・把手
102・・・自転車
104・・・主フレーム
106・・・ヘッドラック
108・・・操舵軸
110・・・ハンドル
112・・・グリップ
116・・・第一伝動チェーン
118・・・駆動伝達機構
120・・・前輪
122・・・クランク
124・・・第一チェーンギア
126・・・第二伝動チェーン
128・・・フリーホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フレームと、操舵部と、制動装置とを備えており、
この操舵部が、ハンドルと、操舵軸とを備えており、
このハンドルが操舵軸に固定されており、
このハンドルが操舵軸を回転軸に回転可能に主フレームに支持されており、
このハンドルが操舵軸の軸線を中心とする円形であり、
この制動装置が、ブレーキレバーとブレーキステーとを備えており、
このブレーキレバーがブレーキレバー本体とブレーキレバー本体から延びるグリップとを備えており、
このブレーキレバー本体がブレーキステーに回動可能に支持されており、
このグリップがハンドルの円形に沿った円弧状であり、
このブレーキステーが操舵軸に固定されており、
このグリップがハンドルから離れる向きに付勢されており、
このグリップがハンドルに近づく向きに回動させられてブレーキがかけられる自転車。
【請求項2】
ピンステーと、ピンと、弾性体とを備えており、
このピンがピンステーにピンの軸方向に摺動可能に支持されており、
この弾性体がピンを上記ブレーキレバーから離れる方向に付勢しており、
上記グリップが上記ハンドルに近づく向きに回動させられた状態で、ピンが弾性体の付勢力に抗してブレーキレバーに当接させられて、ブレーキレバーがハンドルから離れる向きに回動させられることが阻止される請求項1に記載の自転車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−149147(P2009−149147A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327150(P2007−327150)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(598026851)株式会社カワムラサイクル (42)
【Fターム(参考)】