回転装置の応力測定方法
【課題】等速ジョイントや軸受などの回転装置の最適設計を図るために、当該回転装置の実用状態により近い状態で当該回転装置を駆動させながら、当該回転装置に実際に生じる応力を正確に測定することができる回転装置の応力測定方法を提供する。
【解決手段】等速ジョイントの応力測定方法において、外輪10と内側部材20との間で、相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程101と、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程102と、第1温度画像と第2温度画像の差分とり、着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程103と、温度変動画像取得工程で得られた温度変動画像に基づき、着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程104と、を備える。
【解決手段】等速ジョイントの応力測定方法において、外輪10と内側部材20との間で、相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程101と、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程102と、第1温度画像と第2温度画像の差分とり、着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程103と、温度変動画像取得工程で得られた温度変動画像に基づき、着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程104と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば等速ジョイントや軸受などの回転装置の応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転装置の一種である等速ジョイントは、ジョイント角が付加されたシャフト間において等速に回転駆動力を伝達できるジョイントとして、車両や産業機械などの駆動系に用いられている。この等速ジョイントを最適設計するためには、回転駆動力を伝達している実用状態において、等速ジョイントを構成するどの部材にどの程度の応力が発生しているかを把握することが求められる。そこで、有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)などの数値解析により応力分布を求める方法が知られている。また、特開2006−200953号公報(特許文献1)には、歪みゲージを使用することで、シャフトに加わる応力を測定するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−200953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、等速ジョイントは複雑な形状からなる複数の部材から構成され、実用状態では各部材の相互作用により回転駆動力を伝達している。そのため、FEM解析などの数値解析において、適切な負荷条件や境界条件を設定することが非常に困難である。よって、数値解析によって求められた応力分布を正しく評価できない場合が多い。また、等速ジョイントは、強い回転駆動力を伝達することがあるために高剛性の部材から構成されていることが多い。そのため、歪みゲージを使用する場合に、測定対象とする部材が高剛性であると歪み量が小さく、十分な結果を得られないことがある。これらの問題は、軸受においても同様に生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、等速ジョイントや軸受などの回転装置の最適設計を図るために、当該回転装置の実用状態により近い状態で当該回転装置を駆動させながら、当該回転装置に実際に生じる応力を正確に測定することができる回転装置の応力測定方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、
回転可能な外輪と、
前記外輪の内側に配置される回転可能な内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間に配置され、前記外輪および前記内側部材の回転時に前記外輪に負荷変動を生じさせる中間部材と、
を備える回転装置の応力測定方法において、
前記外輪と前記内側部材との間で、前記中間部材を介して相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程と、
前記荷重付加工程において前記外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、前記着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程と、
前記第1温度画像と前記第2温度画像の差分をとり、前記着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程と、
前記温度変動画像取得工程で得られた前記温度変動画像に基づき、前記着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程と、
を備えることである。
【0007】
請求項2に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項1において、
前記温度測定工程は、ミラーを介することによって前記第2温度画像を前記第1温度画像と同時に撮影することである。
【0008】
請求項3に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項1または2において、
応力測定対象となる前記回転装置は、
一端が開口する筒状部を有し、前記筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された前記外輪と、
シャフトに連結され前記外輪の内側に配置される前記内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材と、
を備える等速ジョイントであることである。
【0009】
請求項4に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項3において、
前記荷重付加工程は、前記等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、前記外輪の軸心および前記内側部材の軸心を位置決めし、前記外輪および前記内側部材の一方に回転力を付与することである。
【0010】
請求項5に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項3または4において、
前記温度測定工程は、前記着目箇所を前記溝の外輪開口側の端部としたときに、前記第2温度画像を、前記第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影することである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、応力測定方法は、例えば等速ジョイントや軸受などの回転装置の外輪を応力測定の対象とし、荷重付加工程と温度測定工程と温度変動画像取得工程と応力分布算出工程とを備える構成となっている。等速ジョイントは、外輪と内側部材との間において、伝達部材(中間部材)を介して回転駆動力を伝達可能であり、外輪および内側部材の回転時に外輪に負荷変動が生じる構成となっている。また、軸受は、外輪と内側部材が、それらの間に配置されたころやボール等の転動体(中間部材)を介して相対回転可能であり、外輪および内側部材の回転時に外輪にラジアル方向の負荷変動が生じる構成となっている。
【0012】
荷重付加工程では、回転装置に所定周期で荷重を加えている。これにより、回転装置の外輪に熱弾性効果による温度変動が生じることになる。この熱弾性効果は、物体に断熱的に変形を加えた際に、物体の体積変化によって微小な温度変動が発生する現象である。
【0013】
温度測定工程では、例えば赤外線カメラにより外輪の着目箇所の表面を撮影して第1温度画像と第2温度画像を得る。第1温度画像は、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して得られる。また、第2温度画像は、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して得られる。
【0014】
ここで、本明細書において「位相」とは、外輪の回転軸回りにおける外輪の回転位相を意味する。また、極大値および極小値は、いずれも、負荷の時間微分値がゼロとなる点である。極大値は、負荷の時間微分値が正から負に変化する点であり、極小値は、負荷の時間微分値が負から正に変化する点である。
【0015】
温度変動画像取得工程では、第1温度画像と第2温度画像の差分をとり、着目箇所の温度変動画像を得る。そして、次の応力分布算出工程では、温度変動画像取得工程で得られた温度変動画像に基づき、外輪の着目箇所の応力分布を算出している。
【0016】
ここで、従来、板材などの単一形状からなる試験片の応力分布を、赤外線応力測定によって測定することは公知であった(例えば、特開2006−267089号公報)。この測定方法は、試験片に対して直接繰り返し荷重を付加することで、試験片そのものの温度変動を測定するものである。
【0017】
これに対して、本発明の回転装置の応力測定方法では、荷重付加工程において、応力分布を測定したい対象物である外輪に対して、直接繰り返し荷重をかけるのではなく、回転装置の構成部材が相互に荷重をかけ合うことを利用している。具体的には、荷重付加工程において、外輪と中間部材との間、および、内側部材と中間部材との間で、相互の所定周期で荷重を加え合うようにしている。
【0018】
回転装置の部材間で相互に荷重をかけ合うことを利用することにより、回転装置に熱弾性効果を利用した応力測定を適用することができる。つまり、本発明は、これまで板材などの単一形状からなる試験片の応力分布を測定していた応力測定を初めて回転装置に適用できることを見出したという知見に基づくものである。これにより、複数の部材から構成される回転装置が回転している実用状態において、当該回転装置に実際に生じる応力分布を測定することができる。
【0019】
特に、本発明は、温度測定工程において、外輪の着目箇所における「負荷の時間変化が極大値となる位相」の第1温度画像と、外輪の着目箇所における「負荷の時間変化が極小値となる位相」の第2温度画像とを得るようにしている。これにより、回転装置の実用状態により近い状態である、回転に伴う負荷変動時の応力分布を正確に測定することができる。
【0020】
なお、温度変動画像取得工程において、第1温度画像と第2温度画像の差分をとることにより、応力変動値を測定することができる。ここで「負荷の時間変化が極小値となる位相」の最小負荷が無負荷であれば、「応力変動値」=「応力絶対値」となる。しかし、例えば、測定対象となる着目箇所の「負荷の時間変化が極大値となる位相」と「負荷の時間変化が極小値となる位相」が比較的接近している場合には、必ずしも最小負荷が無負荷とはならないことがある。
【0021】
よって、本発明の応力測定方法によれば、回転装置の実用状態における「応力変動値」を外輪の全範囲で測定することができ、回転装置の実用状態における「応力絶対値」を外輪の一部の範囲で測定することができる。即ち、本発明では、回転装置の実用状態における着目箇所の「応力変動値」分布を測定することができ、最小負荷が無負荷となる箇所については「応力絶対値」分布を測定することができる。
【0022】
従って、本発明の応力測定方法により得られた応力分布に基づいて、回転装置の外輪に必要な強度を適切に求めることができるので、外輪の最適な形状や肉厚を設計することができる。また、外輪の応力分布からFEM解析などの数値解析を検証することにより、数値解析における負荷条件や境界条件を適切に設定することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、温度測定工程は、ミラーを介することによって第2温度画像を第1温度画像と同時に撮影するようにしている。これにより、第1温度画像と第2温度画像の両方の画像を、1台の赤外線カメラで同時に撮影することができる。よって、使用する赤外線カメラの台数を低減することができるので、測定装置の簡素化や低コスト化が可能となる。なお、通常の場合には、本発明のようにミラーを用いることなく、温度測定工程を行うことは勿論可能である。この場合には、第1温度画像と第2温度画像をそれぞれ単独に撮影する赤外線カメラが必要になるので、本発明の上記効果は得られない。
【0024】
ミラーの設置方法としては、例えば、赤外線カメラにより第1温度画像を対象物の正面から撮影し、第2温度画像を位相が180°ずれた位置(背面)から撮影する場合には、背面側に2枚のミラーを開き角度が90°となる状態に設置して、対象物の背面の映像が2枚のミラーを反射して赤外線カメラに到達するようにすればよい。また、例えば、赤外線カメラにより第1温度画像を対象物の正面から撮影し、第2温度画像を位相が90°ずれた位置(側面)から撮影する場合には、側面側に1枚のミラーを45°傾けた状態に設置して、対象物の側面の映像が1枚のミラーを反射して赤外線カメラに到達するようにすればよい。
【0025】
請求項3に係る発明によると、応力測定対象は等速ジョイントとしている。等速ジョイントは、一端が開口する筒状部を有し、筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された外輪と、シャフトに連結され外輪の内側に配置される内側部材と、外輪と内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材とを備える。代表的な等速ジョイントとして、例えばボール型等速ジョイントやトリポード型等速ジョイント等が挙げられる。
【0026】
請求項4に係る発明によると、荷重付加工程は、等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、外輪の軸心および内側部材の軸心を位置決めし、外輪および内側部材の一方に回転力を付与するようにしている。この荷重付加工程では、先ず、等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、外輪の軸心および内側部材の軸心を位置決めして、両部材の位置関係を設定する。そして、外輪および内側部材の一方に回転力を付与する構成としている。
【0027】
例えば、ボール型等速ジョイントの場合には、ジョイント角を付加した等速ジョイントが回転駆動力を伝達している実用状態においては、ボールが外輪ボール溝または内輪ボール溝に対して溝延伸方向に往復運動する。この往復運動によって、ボールと外輪ボール溝、および、ボールと内輪ボール溝との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うこととみなすことができる。また、トリポード型等速ジョイントの場合には、ジョイント角を付加した等速ジョイントが回転駆動力を伝達している実用状態においては、ローラが外輪溝に対して溝延伸方向に往復運動する。さらに、ローラがトリポード軸部に対してトリポード軸部の径方向に往復運動する。これらの往復運動によって、ローラと外輪溝、および、ローラとトリポード軸部との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うこととみなすことができる。
【0028】
つまり、実際に車両のドライブシャフトなどに等速ジョイントが適用されている状態の荷重を想定した応力測定を行うことができる。よって、この測定結果に基づくことで、等速ジョイントの外輪を最適設計することができる。
【0029】
さらに、この荷重付加工程は、等速ジョイントを静止させた状態で行うため、省スペースでの応力測定を行うことができる。また、外輪および内側部材の軸心が位置決めされているため、外輪および内側部材の変位量が僅かである。よって、等速ジョイントにトルクをより高い周波数で付加することができる。熱弾性効果による温度変動は微小であるため、一般に繰り返し付加される荷重の周波数は高い方が各部位の温度変動の差を測定し易いとされる。従って、より簡易で高精度な等速ジョイントの応力分布を測定することができる。
【0030】
請求項5に係る発明によると、温度測定工程は、着目箇所を溝の外輪開口側の端部としたときに、第2温度画像を、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影するようにしている。等速ジョイントの外輪は、その内周面に外輪回転軸方向に延びるように形成された溝の外輪開口側の端部が、強度的に最も弱い最弱部となることが多い。そこで、溝の外輪開口側の端部を着目箇所とした場合、「負荷の時間変化が極大値となる位相」の第1温度画像は、正面(0°)から撮影し、「負荷の時間変化が極小値となる位相」の第2温度画像は、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置(背面)から撮影する。これにより、外輪の最弱部となることが多い、溝の外輪開口側の端部の応力分布を、等速ジョイントの実用状態により近い状態で測定することができる。よって、得られた応力分布に基づいて、外輪に必要な強度を適切に求めることができるので、外輪の最適な形状や肉厚を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】等速ジョイント1の軸方向断面図である。
【図2】等速ジョイント1の赤外線応力測定を示す模式図である。
【図3】第一実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。
【図4】第一実施形態における外輪の着目箇所を示す模式図である。
【図5】第一実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【図6】第一実施形態の応力測定方法の工程を示す説明図である。
【図7】第一実施形態における着目箇所(A領域)の荷重変動を示すグラフである。
【図8】第二実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。
【図9】第二実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【図10】第二実施形態における着目箇所(B領域)の荷重変動を示すグラフである。
【図11】変形態様における着目箇所(D領域)の荷重変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の回転装置の応力測定方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態の応力測定方法およびその応力測定に用いる応力測定装置について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、第一実施形態の応力測定対象である回転装置としての等速ジョイント1の軸方向断面図である。図2は、等速ジョイント1の赤外線応力測定を示す模式図である。図3は、第一実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。図4は、第一実施形態における外輪の着目箇所を示す模式図である。図5は、第一実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【0033】
本実施形態の等速ジョイント1は、図1に示すように、固定式ボール型等速ジョイント(一般に「ツェッパ型等速ジョイント」とも称する)であり、外輪10と、内輪20(本発明の「内側部材」に相当する)と、ボール30(本発明の「中間部材」に相当する)と、保持器40と、シャフト50とから構成される。
【0034】
外輪10は、カップ状(例えば、有底筒状)に形成されており、一端側が他の動力伝達軸(図示せず)に連結される。さらに、外輪10の筒状部分の内周面には、外輪回転軸方向(図1の左右方向)に延びる外輪ボール溝11が、外輪回転軸の周方向に等間隔に6本形成されている。各外輪ボール溝11における外輪回転軸に直交する断面形状が、ほぼ円弧凹状をなしている。
【0035】
内輪20は、環状に形成され、外輪10の内側に配置されている。この内輪20の外周面には、内輪回転軸方向(図1の左右方向)に延びる内輪ボール溝21が、内輪回転軸の周方向に等間隔に6本形成されている。各内輪ボール溝21における内輪回転軸に直交する断面形状が、ほぼ円弧凹状をなしている。そして、内輪ボール溝21は、外輪10に形成される外輪ボール溝11と同数形成されている。つまり、それぞれの内輪ボール溝21が、外輪10のそれぞれの外輪ボール溝11に対向するように位置する。また、内輪20の内周面には、内歯スプライン22が形成されている。この内歯スプライン22は、後述するシャフト50の端部に形成された外歯スプライン51に圧入嵌合される。
【0036】
6個のボール30は、それぞれ、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21に配置されている。そして、それぞれのボール30は、それぞれの外輪ボール溝11およびそれぞれの内輪ボール溝21に沿って転動自在であって、それぞれの外輪ボール溝11およびそれぞれの内輪ボール溝21に対して周方向(外輪回転軸回りまたは内輪回転軸回り)に係合している。従って、ボール30は、外輪10と内輪20との間で回転駆動力を伝達する。
【0037】
保持器40は、環状に形成され、外輪10の内周面と内輪20の外周面との間に配置されている。保持器40の内周面は、内輪20の最外周面にほぼ対応する部分球面凹状に形成されている。また、保持器40の外周面は、部分球面凸状に形成されている。そして、保持器40の内周面の球面中心と外周面の球面中心は、ジョイント回転中心に対して、軸方向に等距離だけそれぞれ反対側にオフセットさせている。そして、保持器40には、周方向に等間隔に6個の開口窓部41が形成されている。この開口窓部41は、外輪ボール溝11および内輪ボール溝21と同数形成されている。そして、それぞれの開口窓部41には、ボール30がそれぞれ挿通されている。つまり、保持器40は、6個のボール30を保持している。
【0038】
シャフト50は、軸状に形成され、一端部の外周面において軸方向に延びる外歯スプライン51が形成されている。本実施形態において、内輪20およびシャフト50は、シャフト50の軸方向に近接するように相対移動し、圧力を加えられて結合される。この時、外歯スプライン51は、内輪20に形成された内歯スプライン22と圧入嵌合される。また、シャフト50には、他端部において測定対象ではない補助等速ジョイント2が組み付けられている。この補助等速ジョイント2は、シャフト50と後述する荷重付加部62を連結し、荷重付加部62による回転駆動力をシャフト50へ伝達可能としている。
【0039】
等速ジョイント1は、上述したような構成となっているが、応力測定を行う試験体の表面には黒色塗料が塗布されている。本実施形態では、外輪10の表面に合成樹脂などからなる艶消し黒色の塗料が20〜25μm程度の厚さに塗布されている。これにより、試験体の表面の熱放射率は、約0.94(黒体を1.00とした場合)となっている。このように熱放射率を高くすることで、熱放射によって放出する熱量を多くすることができるので、試験体の温度変動をより確実に検出することが可能となる。
【0040】
次に、等速ジョイント1の外輪10を測定対象とした応力測定装置60について説明する。応力測定装置60は、図2および図3に示すように、軸支台61と、荷重付加部62と、赤外線カメラ63と、ロックインプロセッサ64と、応力分布算出部65と、表示部66と、2枚のミラー67、68とを備える。
【0041】
軸支台61は、等速ジョイント1の一端である外輪10を軸受を介して回転可能に支持している。荷重付加部62は、軸支台61の軸方向に対向して配置され、駆動モータ62aを介して等速ジョイント1の他端であるシャフト50を保持している。また、荷重付加部62は、等速ジョイント1に所定のジョイント角が付加された状態が維持されるように、外輪10および内輪20の軸心を位置決めしている。これにより、外輪10と内輪20の位置関係が設定されている。この荷重付加部62は、軸支台61に回転可能に支持された外輪10に対して、駆動モータ62aにより内側部材である内輪20から回転駆動力を付加可能となっている。
【0042】
赤外線カメラ63は、物体の表面から放出される赤外線を検出し、赤外線センサにより電気信号に変換し、画像信号として出力する。本実施形態では、図3に示すように、赤外線カメラ63は、応力分布の測定対象である外輪10の着目箇所に向けて設置されている。外輪10の着目箇所は、図4および図5に示すように、外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(以下、「A領域」という。)としている。このA領域は、等速ジョイント1がジョイント角を付加された状態で回転駆動力を伝達する際に、外輪ボール溝11を転動するボール30が到達乃至は最も接近する領域である。A領域にボール30が到達乃至は最も接近した時に、A領域における負荷の時間変化が極大値となる。よって、ボール30が到達乃至は最も接近した状態にある位相のA領域を、赤外線カメラ63で正面から撮影して第1温度画像を得るようにしている。
【0043】
また、外輪10の第1温度画像の撮影方向の位相を0°とした時、外輪10が半回転した180°の位相では、外輪ボール溝11を転動するボール30がA領域から最も遠ざかる状態となり、このとき、A領域における負荷の時間変化が極小値となる。よって、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置(背面)のA領域を、赤外線カメラ63で撮影して第2温度画像を得るようにしている。なお、180°の位相では、A領域における最小負荷が無負荷となるので、本実施形態では、A領域に発生する応力絶対値を測定することができる。
【0044】
本実施形態では、第1温度画像と第2温度画像は、2枚のミラー67、68を利用して1台の赤外線カメラ63で同時に撮影するようにしている。即ち、図3に示すように、外輪10の0°の位相と対向するように赤外線カメラ63が設置される。そして、外輪10の背面側(位相180°側)には、2枚のミラー67、68が開き角度90°となるようにして設置される。2枚のミラー67、68は、外輪10の位相180°の面の映像が、2枚のミラー67、68を反射して赤外線カメラ63に到達するように位置調整されている。これにより、1台の赤外線カメラ63で、第1温度画像と第2温度画像を同時に撮影することができる。この場合、赤外線カメラ63の画面には、第1温度画像が画面の半分に映し出され、第2温度画像が画面の残り半分に映し出されるように、赤外線カメラ63とミラー67、68の位置が調整されている。
【0045】
ロックインプロセッサ64は、赤外線カメラ63により出力された画像信号から、対象とする熱弾性効果による温度変動の波形をロックイン処理する。すなわち、赤外線カメラ63により出力された画像信号から所定の周波数成分のみを抽出する。具体的には、荷重(応力)変動に同期する画像信号、または、荷重(応力)変動に同期する周波数を含む所定範囲の周波数帯の画像信号のみを抽出する。これにより、S/N比を向上させている。
【0046】
また、本実施形態において、この荷重変動の周期については、荷重付加部62による等速ジョイント1への歳差運動周期に伴う荷重変動周期を使用している。歳差運動周期とは、荷重付加部62が等速ジョイント1に加える歳差運動の周期に相当する。また、荷重変動周期とは、等速ジョイント1の歳差運動に伴い、ボール30が外輪ボール溝11を溝延伸方向に往復運動することを周期的な荷重変動とし、この荷重変動の周期に相当するものである。この他に、等速ジョイント1へのトルク付加周期を使用しても良い。さらに、軸支台61がチャックに連結されたロードセルを有する構成としても良い。ロードセルは、外輪10を介して等速ジョイント1に加えられた荷重を検出し、検出結果を電気信号として出力する。そして、荷重変動の周期として、ロードセルにより出力される検出荷重の波形周期を使用しても良い。
【0047】
応力分布算出部65は、ロックインプロセッサ64により出力される画像信号を受信する。そして、この画像信号から得られる等速ジョイント1の温度変動の分布に基づき、等速ジョイント1の応力分布を算出する。表示部66は、この応力分布算出部65による算出結果をモニタ上に表示する。
【0048】
次に、本実施形態の応力測定方法について図6および図7を参照して説明する。図6は、本実施形態の応力測定方法の工程を示す説明図である。図7は、第一実施形態の着目箇所の荷重変動を示すグラフである。
【0049】
まず、荷重付加工程101では、応力測定装置60の荷重付加部62の駆動モータ62aにより、内輪20に回転力を付与する。そうすると、ボール30を介して内輪20から外輪10へ回転駆動力(トルク)が付加される。この時、位置決めされた外輪10の軸心および内輪20の軸心は、ジョイント角が付加された状態を維持している。よって、等速ジョイント1は、実用状態と同様に作動することになる。この時、伝達部材であるボール30は、等速ジョイントが1回転する間に、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21を一往復する。つまり、ボール30は、図1の左右方向に往復運動する。この往復運動の幅は、ジョイント角によって変化するものであり、ジョイント角が大きく付加されるほど大きくなる。
【0050】
このように、荷重付加部62によって等速ジョイント1に加えられた回転駆動力により、外輪10とボール30との間、および、内輪20とボール30との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うことになる。このとき、外輪10に生じる荷重変動は、図7に示すように、一定周期の波形となる。この場合、A領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の測定点が図7の波形の山部に表れ、A領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(180°)の測定点が図7の波形の谷部に表れる。つまり、外輪10の荷重変動は、外輪10に所定周期で繰り返し加えられる荷重となり、赤外線応力測定における熱弾性効果による温度変動を生じるようになる。
【0051】
次の温度測定工程102では、赤外線カメラ63が外輪10の温度変動により表面から放出される赤外線を検出する。この温度測定工程102では、赤外線カメラ63により、赤外線カメラ63の正面にある、A領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の表面を撮影した第1温度画像と、外輪10の背面側ある、A領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(180°)の表面をミラー67、68を介して撮影した第2温度画像を得る。第1温度画像と第2温度画像は、1台の赤外線カメラ63で同時に撮影されており、一つの画面に並んだ状態に表示される。
【0052】
次の温度変動画像取得工程103では、温度測定工程102で得られた第1温度画像と第2温度画像の同一箇所は、半回転ずれて表れるため、半回転分フレームをずらして組み合わせることにより、第1温度画像と第2温度画像の差分とり、A領域の温度変動画像を得る。この温度変動画像は、赤外線センサにより電気信号に変換され、画像信号として出力される。この画像信号は、室温変化による試験体の温度変化やノイズが含まれるが、図7に示すA領域の荷重変動とおよそ同期した波形を呈する。そこで、ロックインプロセッサ64により画像信号から熱弾性効果による温度変動の波形をロックイン処理する。ロックインプロセッサ64は、画像信号のうち荷重変動の周期に同期する周波数帯(荷重変動周期の周波数帯)のみを抽出し、応力分布算出部65に画像信号を出力する。
【0053】
最後の応力分布算出工程104では、応力分布算出部65が、ロックインプロセッサ64により出力される画像信号を受信する。応力分布算出部65は、この画像信号から得られるA領域の温度変動の分布に基づき、A領域の応力分布を算出する。そして、この応力分布の算出結果は、表示部66のモニタ上に表示される。即ち、表示部66のモニタ上には、A領域の応力分布測定結果が表示される。
【0054】
以上のように、第一実施形態の応力測定方法によれば、荷重付加工程101と、温度測定工程102と、温度変動画像取得工程103と、応力分布算出工程104とを順次行うことによって、等速ジョイント1の実用状態により近い状態で等速ジョイント1を駆動させながら、A領域の応力分布を測定するようにしているため、A領域において実際に生じる応力分布を正確に測定することができる。これにより、外輪10の最弱部位となり易い実用状態におけるA領域の応力分布を正確に把握し、外輪10の十分な強度を確保しつつ薄肉化を図るなど、外輪10の最適な形状や肉厚を設計することができる。
【0055】
また、温度測定工程102では、2枚のミラー67、68を介することによって第2温度画像を第1温度画像と同時に撮影するようにしているので、第1温度画像と第2温度画像の両方の画像を、1台の赤外線カメラ63で同時に撮影することができる。これにより、使用する赤外線カメラの台数を低減することができるので、測定装置の簡素化や低コスト化が可能となる。
【0056】
<第二実施形態>
第二実施形態の応力測定方法について図8〜10を参照しつつ説明する。第二実施形態は、応力分布の測定対象となる外輪10の着目箇所が、第一実施形態では外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(A領域)であったのに対し、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(以下、「B領域」という。)である点で相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0057】
第二実施形態では、図9に示すように、応力分布の測定対象となる外輪10の着目箇所は、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(B領域)としている。このB領域では、等速ジョイント1がジョイント角を付加された状態で回転駆動力を伝達する際に、外輪ボール溝11を転動するボール30がB領域を通過する時に負荷の時間変化が極大値となる。また、外輪ボール溝11を転動するボール30がB領域から最も遠ざかった位置、即ち、外輪ボール溝11の両端部付近にある時に負荷の時間変化が極小値となる。よって、B領域において、負荷の時間変化が極大値となる位相は0°と180°の2箇所となり、負荷が最小となる位相は90°と270°の2箇所となる。
【0058】
そのため、第二実施形態では、図8に示すように、0°の位相の第1温度画像と90°の位相の第2温度画像を、1枚のミラー67介して1台の赤外線カメラ63aで同時に撮影し、180°の位相の第1温度画像と270°の位相の第2温度画像を、1枚のミラー68介して1台の赤外線カメラ63bで同時に撮影するようにしている。
【0059】
一方のミラー67は、外輪10の90°の位相の面に対して45°傾いた状態に設置され、外輪10の90°の位相の映像が、ミラー67を反射して赤外線カメラ63aに到達するように位置調整されている。また、他方のミラー68は、外輪10の270°の位相の面に対して45°傾いた状態に設置され、外輪10の270°の位相の映像が、ミラー68を反射して赤外線カメラ63bに到達するように位置調整されている。この場合、それぞれの赤外線カメラ63a、63bの画面には、第1温度画像が画面の半分に映し出され、第2温度画像が画面の残り半分に映し出されるように、赤外線カメラ63a、63bとミラー67、68の位置が調整されている。そして、それぞれの赤外線カメラ63a、63bにより撮影された第1温度画像および第2温度画像は、第一実施形態の場合と同様に、ロックインプロセッサ64に画像信号として出力される。
【0060】
次に、第二実施形態の応力測定方法について説明する。最初に、第一実施形態と同様に荷重付加工程101が行われる。この荷重付加工程101では、応力測定装置60の荷重付加部62の駆動モータ62aを作動させることにより、等速ジョイント1が実用状態と同様に作動すると、ボール30は、等速ジョイントが1回転する間に、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21を一往復する。
【0061】
このとき、外輪10とボール30との間、および、内輪20とボール30との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うことで、外輪10には、図10に示すように、一定周期の波形となった荷重変動が生じる。この場合、B領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°および180°)の測定点が図10の波形の山部に表れ、B領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(90°および270°)の測定点が図10の波形の谷部に表れる。なお、この場合の周期は、図7に示す第一実施形態の場合の周期の1/2となっている。つまり、外輪10の荷重変動は、外輪10に所定周期で繰り返し加えられる荷重となり、赤外線応力測定における熱弾性効果による温度変動を生じるようになる。
【0062】
そして、次の温度測定工程102では、上記のように設置された赤外線カメラ63a、63bおよびミラー67、68により第1温度画像と第2温度画像の撮影が行われる。即ち、温度測定工程102では、一方の赤外線カメラ63aにより、B領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の表面を撮影した第1温度画像と、B領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(90°)の表面をミラー67を介して撮影した第2温度画像を得る。そして、他方の赤外線カメラ63bにより、B領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(180°)の表面を撮影した第1温度画像と、B領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(270°)の表面をミラー67を介して撮影した第2温度画像を得る。
【0063】
その後、第一実施形態の場合と同様に、温度変動画像取得工程103および応力分布算出工程104を経ることで、等速ジョイント1の実用状態により近い状態で外輪10のB領域において実際に生じる応力分布を正確に測定することができる。
【0064】
<第一、第二実施形態の変形態様>
応力測定対象となる外輪10の着目箇所は、第一実施形態では、外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(A領域)とし、第二実施形態では、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(B領域)としたが、これら以外の部位を着目箇所にしてもよい。例えば、外輪ボール溝11の反外輪開口側(奥側)の端部(C領域)や、外輪ボール溝11のA領域とB領域の間の中間部位、B領域とC領域の間の中間部位である。
【0065】
例えば、着目箇所をA領域とB領域の間の中間部位(以下、「D領域」という。)とした場合には、荷重付加工程101におけるD領域の荷重変動のグラフは図11に示すようになる。この場合には、D領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°および90°)の測定点が図10の波形の山部に表れ、B領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(45°および225°)の測定点が図10の波形の谷部に表れる。
【0066】
また、第一、第二実施形態において、等速ジョイント1は、ボール型等速ジョイントとした。これに対して、等速ジョイント1はトリポード型等速ジョイントとしてもよい。トリポード型等速ジョイントは、特許文献1の図1のインボード側の等速自在継手3で示されるように、外輪と、トリポードと、ローラと、シャフトとから構成される。各部材の詳細な説明は省略するが、トリポードがボール型等速ジョイントの内側部材である内輪20に相当し、ローラがボール型等速ジョイントの伝達部材であるボール30に相当する。このような構成からなるトリポード型等速ジョイントであっても本発明により赤外線応力測定を適用することができ、また同様の効果を得られる。
【0067】
また、本発明の応力測定方法は、上記の等速ジョイントの他に、回転装置の一種である軸受の外輪を応力測定の対象にしてもよい。軸受の場合には、外輪および内側部材の回転時に外輪にラジアル方向の負荷変動が生じる構成となっているので、本発明の応力測定方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:等速ジョイント、 10:外輪、 11:外輪ボール溝、 20:内輪(内側部材)、 21:内輪ボール溝、 30:ボール(中間部材)、 40:保持器、 41:開口窓部、 50:シャフト、 60:応力測定装置、 61:軸支台、 62:荷重付加部、 62a:駆動モータ、 63、63a、63b:赤外線カメラ、 64:ロックインプロセッサ、 65:応力分布算出部、 66:表示部、 67、68:ミラー、 101:荷重付加工程、 102:温度測定工程、 103:温度変動画像取得工程、 104:応力分布算出工程。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば等速ジョイントや軸受などの回転装置の応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転装置の一種である等速ジョイントは、ジョイント角が付加されたシャフト間において等速に回転駆動力を伝達できるジョイントとして、車両や産業機械などの駆動系に用いられている。この等速ジョイントを最適設計するためには、回転駆動力を伝達している実用状態において、等速ジョイントを構成するどの部材にどの程度の応力が発生しているかを把握することが求められる。そこで、有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)などの数値解析により応力分布を求める方法が知られている。また、特開2006−200953号公報(特許文献1)には、歪みゲージを使用することで、シャフトに加わる応力を測定するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−200953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、等速ジョイントは複雑な形状からなる複数の部材から構成され、実用状態では各部材の相互作用により回転駆動力を伝達している。そのため、FEM解析などの数値解析において、適切な負荷条件や境界条件を設定することが非常に困難である。よって、数値解析によって求められた応力分布を正しく評価できない場合が多い。また、等速ジョイントは、強い回転駆動力を伝達することがあるために高剛性の部材から構成されていることが多い。そのため、歪みゲージを使用する場合に、測定対象とする部材が高剛性であると歪み量が小さく、十分な結果を得られないことがある。これらの問題は、軸受においても同様に生じる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、等速ジョイントや軸受などの回転装置の最適設計を図るために、当該回転装置の実用状態により近い状態で当該回転装置を駆動させながら、当該回転装置に実際に生じる応力を正確に測定することができる回転装置の応力測定方法を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、
回転可能な外輪と、
前記外輪の内側に配置される回転可能な内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間に配置され、前記外輪および前記内側部材の回転時に前記外輪に負荷変動を生じさせる中間部材と、
を備える回転装置の応力測定方法において、
前記外輪と前記内側部材との間で、前記中間部材を介して相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程と、
前記荷重付加工程において前記外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、前記着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程と、
前記第1温度画像と前記第2温度画像の差分をとり、前記着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程と、
前記温度変動画像取得工程で得られた前記温度変動画像に基づき、前記着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程と、
を備えることである。
【0007】
請求項2に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項1において、
前記温度測定工程は、ミラーを介することによって前記第2温度画像を前記第1温度画像と同時に撮影することである。
【0008】
請求項3に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項1または2において、
応力測定対象となる前記回転装置は、
一端が開口する筒状部を有し、前記筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された前記外輪と、
シャフトに連結され前記外輪の内側に配置される前記内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材と、
を備える等速ジョイントであることである。
【0009】
請求項4に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項3において、
前記荷重付加工程は、前記等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、前記外輪の軸心および前記内側部材の軸心を位置決めし、前記外輪および前記内側部材の一方に回転力を付与することである。
【0010】
請求項5に係る回転装置の応力測定方法の特徴は、請求項3または4において、
前記温度測定工程は、前記着目箇所を前記溝の外輪開口側の端部としたときに、前記第2温度画像を、前記第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影することである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、応力測定方法は、例えば等速ジョイントや軸受などの回転装置の外輪を応力測定の対象とし、荷重付加工程と温度測定工程と温度変動画像取得工程と応力分布算出工程とを備える構成となっている。等速ジョイントは、外輪と内側部材との間において、伝達部材(中間部材)を介して回転駆動力を伝達可能であり、外輪および内側部材の回転時に外輪に負荷変動が生じる構成となっている。また、軸受は、外輪と内側部材が、それらの間に配置されたころやボール等の転動体(中間部材)を介して相対回転可能であり、外輪および内側部材の回転時に外輪にラジアル方向の負荷変動が生じる構成となっている。
【0012】
荷重付加工程では、回転装置に所定周期で荷重を加えている。これにより、回転装置の外輪に熱弾性効果による温度変動が生じることになる。この熱弾性効果は、物体に断熱的に変形を加えた際に、物体の体積変化によって微小な温度変動が発生する現象である。
【0013】
温度測定工程では、例えば赤外線カメラにより外輪の着目箇所の表面を撮影して第1温度画像と第2温度画像を得る。第1温度画像は、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して得られる。また、第2温度画像は、外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して得られる。
【0014】
ここで、本明細書において「位相」とは、外輪の回転軸回りにおける外輪の回転位相を意味する。また、極大値および極小値は、いずれも、負荷の時間微分値がゼロとなる点である。極大値は、負荷の時間微分値が正から負に変化する点であり、極小値は、負荷の時間微分値が負から正に変化する点である。
【0015】
温度変動画像取得工程では、第1温度画像と第2温度画像の差分をとり、着目箇所の温度変動画像を得る。そして、次の応力分布算出工程では、温度変動画像取得工程で得られた温度変動画像に基づき、外輪の着目箇所の応力分布を算出している。
【0016】
ここで、従来、板材などの単一形状からなる試験片の応力分布を、赤外線応力測定によって測定することは公知であった(例えば、特開2006−267089号公報)。この測定方法は、試験片に対して直接繰り返し荷重を付加することで、試験片そのものの温度変動を測定するものである。
【0017】
これに対して、本発明の回転装置の応力測定方法では、荷重付加工程において、応力分布を測定したい対象物である外輪に対して、直接繰り返し荷重をかけるのではなく、回転装置の構成部材が相互に荷重をかけ合うことを利用している。具体的には、荷重付加工程において、外輪と中間部材との間、および、内側部材と中間部材との間で、相互の所定周期で荷重を加え合うようにしている。
【0018】
回転装置の部材間で相互に荷重をかけ合うことを利用することにより、回転装置に熱弾性効果を利用した応力測定を適用することができる。つまり、本発明は、これまで板材などの単一形状からなる試験片の応力分布を測定していた応力測定を初めて回転装置に適用できることを見出したという知見に基づくものである。これにより、複数の部材から構成される回転装置が回転している実用状態において、当該回転装置に実際に生じる応力分布を測定することができる。
【0019】
特に、本発明は、温度測定工程において、外輪の着目箇所における「負荷の時間変化が極大値となる位相」の第1温度画像と、外輪の着目箇所における「負荷の時間変化が極小値となる位相」の第2温度画像とを得るようにしている。これにより、回転装置の実用状態により近い状態である、回転に伴う負荷変動時の応力分布を正確に測定することができる。
【0020】
なお、温度変動画像取得工程において、第1温度画像と第2温度画像の差分をとることにより、応力変動値を測定することができる。ここで「負荷の時間変化が極小値となる位相」の最小負荷が無負荷であれば、「応力変動値」=「応力絶対値」となる。しかし、例えば、測定対象となる着目箇所の「負荷の時間変化が極大値となる位相」と「負荷の時間変化が極小値となる位相」が比較的接近している場合には、必ずしも最小負荷が無負荷とはならないことがある。
【0021】
よって、本発明の応力測定方法によれば、回転装置の実用状態における「応力変動値」を外輪の全範囲で測定することができ、回転装置の実用状態における「応力絶対値」を外輪の一部の範囲で測定することができる。即ち、本発明では、回転装置の実用状態における着目箇所の「応力変動値」分布を測定することができ、最小負荷が無負荷となる箇所については「応力絶対値」分布を測定することができる。
【0022】
従って、本発明の応力測定方法により得られた応力分布に基づいて、回転装置の外輪に必要な強度を適切に求めることができるので、外輪の最適な形状や肉厚を設計することができる。また、外輪の応力分布からFEM解析などの数値解析を検証することにより、数値解析における負荷条件や境界条件を適切に設定することができる。
【0023】
請求項2に係る発明によると、温度測定工程は、ミラーを介することによって第2温度画像を第1温度画像と同時に撮影するようにしている。これにより、第1温度画像と第2温度画像の両方の画像を、1台の赤外線カメラで同時に撮影することができる。よって、使用する赤外線カメラの台数を低減することができるので、測定装置の簡素化や低コスト化が可能となる。なお、通常の場合には、本発明のようにミラーを用いることなく、温度測定工程を行うことは勿論可能である。この場合には、第1温度画像と第2温度画像をそれぞれ単独に撮影する赤外線カメラが必要になるので、本発明の上記効果は得られない。
【0024】
ミラーの設置方法としては、例えば、赤外線カメラにより第1温度画像を対象物の正面から撮影し、第2温度画像を位相が180°ずれた位置(背面)から撮影する場合には、背面側に2枚のミラーを開き角度が90°となる状態に設置して、対象物の背面の映像が2枚のミラーを反射して赤外線カメラに到達するようにすればよい。また、例えば、赤外線カメラにより第1温度画像を対象物の正面から撮影し、第2温度画像を位相が90°ずれた位置(側面)から撮影する場合には、側面側に1枚のミラーを45°傾けた状態に設置して、対象物の側面の映像が1枚のミラーを反射して赤外線カメラに到達するようにすればよい。
【0025】
請求項3に係る発明によると、応力測定対象は等速ジョイントとしている。等速ジョイントは、一端が開口する筒状部を有し、筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された外輪と、シャフトに連結され外輪の内側に配置される内側部材と、外輪と内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材とを備える。代表的な等速ジョイントとして、例えばボール型等速ジョイントやトリポード型等速ジョイント等が挙げられる。
【0026】
請求項4に係る発明によると、荷重付加工程は、等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、外輪の軸心および内側部材の軸心を位置決めし、外輪および内側部材の一方に回転力を付与するようにしている。この荷重付加工程では、先ず、等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、外輪の軸心および内側部材の軸心を位置決めして、両部材の位置関係を設定する。そして、外輪および内側部材の一方に回転力を付与する構成としている。
【0027】
例えば、ボール型等速ジョイントの場合には、ジョイント角を付加した等速ジョイントが回転駆動力を伝達している実用状態においては、ボールが外輪ボール溝または内輪ボール溝に対して溝延伸方向に往復運動する。この往復運動によって、ボールと外輪ボール溝、および、ボールと内輪ボール溝との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うこととみなすことができる。また、トリポード型等速ジョイントの場合には、ジョイント角を付加した等速ジョイントが回転駆動力を伝達している実用状態においては、ローラが外輪溝に対して溝延伸方向に往復運動する。さらに、ローラがトリポード軸部に対してトリポード軸部の径方向に往復運動する。これらの往復運動によって、ローラと外輪溝、および、ローラとトリポード軸部との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うこととみなすことができる。
【0028】
つまり、実際に車両のドライブシャフトなどに等速ジョイントが適用されている状態の荷重を想定した応力測定を行うことができる。よって、この測定結果に基づくことで、等速ジョイントの外輪を最適設計することができる。
【0029】
さらに、この荷重付加工程は、等速ジョイントを静止させた状態で行うため、省スペースでの応力測定を行うことができる。また、外輪および内側部材の軸心が位置決めされているため、外輪および内側部材の変位量が僅かである。よって、等速ジョイントにトルクをより高い周波数で付加することができる。熱弾性効果による温度変動は微小であるため、一般に繰り返し付加される荷重の周波数は高い方が各部位の温度変動の差を測定し易いとされる。従って、より簡易で高精度な等速ジョイントの応力分布を測定することができる。
【0030】
請求項5に係る発明によると、温度測定工程は、着目箇所を溝の外輪開口側の端部としたときに、第2温度画像を、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影するようにしている。等速ジョイントの外輪は、その内周面に外輪回転軸方向に延びるように形成された溝の外輪開口側の端部が、強度的に最も弱い最弱部となることが多い。そこで、溝の外輪開口側の端部を着目箇所とした場合、「負荷の時間変化が極大値となる位相」の第1温度画像は、正面(0°)から撮影し、「負荷の時間変化が極小値となる位相」の第2温度画像は、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置(背面)から撮影する。これにより、外輪の最弱部となることが多い、溝の外輪開口側の端部の応力分布を、等速ジョイントの実用状態により近い状態で測定することができる。よって、得られた応力分布に基づいて、外輪に必要な強度を適切に求めることができるので、外輪の最適な形状や肉厚を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】等速ジョイント1の軸方向断面図である。
【図2】等速ジョイント1の赤外線応力測定を示す模式図である。
【図3】第一実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。
【図4】第一実施形態における外輪の着目箇所を示す模式図である。
【図5】第一実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【図6】第一実施形態の応力測定方法の工程を示す説明図である。
【図7】第一実施形態における着目箇所(A領域)の荷重変動を示すグラフである。
【図8】第二実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。
【図9】第二実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【図10】第二実施形態における着目箇所(B領域)の荷重変動を示すグラフである。
【図11】変形態様における着目箇所(D領域)の荷重変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の回転装置の応力測定方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<第一実施形態>
第一実施形態の応力測定方法およびその応力測定に用いる応力測定装置について、図1〜図7を参照して説明する。図1は、第一実施形態の応力測定対象である回転装置としての等速ジョイント1の軸方向断面図である。図2は、等速ジョイント1の赤外線応力測定を示す模式図である。図3は、第一実施形態における赤外線カメラとミラーの配置を示す模式図である。図4は、第一実施形態における外輪の着目箇所を示す模式図である。図5は、第一実施形態における外輪の着目箇所を示す説明図である。
【0033】
本実施形態の等速ジョイント1は、図1に示すように、固定式ボール型等速ジョイント(一般に「ツェッパ型等速ジョイント」とも称する)であり、外輪10と、内輪20(本発明の「内側部材」に相当する)と、ボール30(本発明の「中間部材」に相当する)と、保持器40と、シャフト50とから構成される。
【0034】
外輪10は、カップ状(例えば、有底筒状)に形成されており、一端側が他の動力伝達軸(図示せず)に連結される。さらに、外輪10の筒状部分の内周面には、外輪回転軸方向(図1の左右方向)に延びる外輪ボール溝11が、外輪回転軸の周方向に等間隔に6本形成されている。各外輪ボール溝11における外輪回転軸に直交する断面形状が、ほぼ円弧凹状をなしている。
【0035】
内輪20は、環状に形成され、外輪10の内側に配置されている。この内輪20の外周面には、内輪回転軸方向(図1の左右方向)に延びる内輪ボール溝21が、内輪回転軸の周方向に等間隔に6本形成されている。各内輪ボール溝21における内輪回転軸に直交する断面形状が、ほぼ円弧凹状をなしている。そして、内輪ボール溝21は、外輪10に形成される外輪ボール溝11と同数形成されている。つまり、それぞれの内輪ボール溝21が、外輪10のそれぞれの外輪ボール溝11に対向するように位置する。また、内輪20の内周面には、内歯スプライン22が形成されている。この内歯スプライン22は、後述するシャフト50の端部に形成された外歯スプライン51に圧入嵌合される。
【0036】
6個のボール30は、それぞれ、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21に配置されている。そして、それぞれのボール30は、それぞれの外輪ボール溝11およびそれぞれの内輪ボール溝21に沿って転動自在であって、それぞれの外輪ボール溝11およびそれぞれの内輪ボール溝21に対して周方向(外輪回転軸回りまたは内輪回転軸回り)に係合している。従って、ボール30は、外輪10と内輪20との間で回転駆動力を伝達する。
【0037】
保持器40は、環状に形成され、外輪10の内周面と内輪20の外周面との間に配置されている。保持器40の内周面は、内輪20の最外周面にほぼ対応する部分球面凹状に形成されている。また、保持器40の外周面は、部分球面凸状に形成されている。そして、保持器40の内周面の球面中心と外周面の球面中心は、ジョイント回転中心に対して、軸方向に等距離だけそれぞれ反対側にオフセットさせている。そして、保持器40には、周方向に等間隔に6個の開口窓部41が形成されている。この開口窓部41は、外輪ボール溝11および内輪ボール溝21と同数形成されている。そして、それぞれの開口窓部41には、ボール30がそれぞれ挿通されている。つまり、保持器40は、6個のボール30を保持している。
【0038】
シャフト50は、軸状に形成され、一端部の外周面において軸方向に延びる外歯スプライン51が形成されている。本実施形態において、内輪20およびシャフト50は、シャフト50の軸方向に近接するように相対移動し、圧力を加えられて結合される。この時、外歯スプライン51は、内輪20に形成された内歯スプライン22と圧入嵌合される。また、シャフト50には、他端部において測定対象ではない補助等速ジョイント2が組み付けられている。この補助等速ジョイント2は、シャフト50と後述する荷重付加部62を連結し、荷重付加部62による回転駆動力をシャフト50へ伝達可能としている。
【0039】
等速ジョイント1は、上述したような構成となっているが、応力測定を行う試験体の表面には黒色塗料が塗布されている。本実施形態では、外輪10の表面に合成樹脂などからなる艶消し黒色の塗料が20〜25μm程度の厚さに塗布されている。これにより、試験体の表面の熱放射率は、約0.94(黒体を1.00とした場合)となっている。このように熱放射率を高くすることで、熱放射によって放出する熱量を多くすることができるので、試験体の温度変動をより確実に検出することが可能となる。
【0040】
次に、等速ジョイント1の外輪10を測定対象とした応力測定装置60について説明する。応力測定装置60は、図2および図3に示すように、軸支台61と、荷重付加部62と、赤外線カメラ63と、ロックインプロセッサ64と、応力分布算出部65と、表示部66と、2枚のミラー67、68とを備える。
【0041】
軸支台61は、等速ジョイント1の一端である外輪10を軸受を介して回転可能に支持している。荷重付加部62は、軸支台61の軸方向に対向して配置され、駆動モータ62aを介して等速ジョイント1の他端であるシャフト50を保持している。また、荷重付加部62は、等速ジョイント1に所定のジョイント角が付加された状態が維持されるように、外輪10および内輪20の軸心を位置決めしている。これにより、外輪10と内輪20の位置関係が設定されている。この荷重付加部62は、軸支台61に回転可能に支持された外輪10に対して、駆動モータ62aにより内側部材である内輪20から回転駆動力を付加可能となっている。
【0042】
赤外線カメラ63は、物体の表面から放出される赤外線を検出し、赤外線センサにより電気信号に変換し、画像信号として出力する。本実施形態では、図3に示すように、赤外線カメラ63は、応力分布の測定対象である外輪10の着目箇所に向けて設置されている。外輪10の着目箇所は、図4および図5に示すように、外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(以下、「A領域」という。)としている。このA領域は、等速ジョイント1がジョイント角を付加された状態で回転駆動力を伝達する際に、外輪ボール溝11を転動するボール30が到達乃至は最も接近する領域である。A領域にボール30が到達乃至は最も接近した時に、A領域における負荷の時間変化が極大値となる。よって、ボール30が到達乃至は最も接近した状態にある位相のA領域を、赤外線カメラ63で正面から撮影して第1温度画像を得るようにしている。
【0043】
また、外輪10の第1温度画像の撮影方向の位相を0°とした時、外輪10が半回転した180°の位相では、外輪ボール溝11を転動するボール30がA領域から最も遠ざかる状態となり、このとき、A領域における負荷の時間変化が極小値となる。よって、第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置(背面)のA領域を、赤外線カメラ63で撮影して第2温度画像を得るようにしている。なお、180°の位相では、A領域における最小負荷が無負荷となるので、本実施形態では、A領域に発生する応力絶対値を測定することができる。
【0044】
本実施形態では、第1温度画像と第2温度画像は、2枚のミラー67、68を利用して1台の赤外線カメラ63で同時に撮影するようにしている。即ち、図3に示すように、外輪10の0°の位相と対向するように赤外線カメラ63が設置される。そして、外輪10の背面側(位相180°側)には、2枚のミラー67、68が開き角度90°となるようにして設置される。2枚のミラー67、68は、外輪10の位相180°の面の映像が、2枚のミラー67、68を反射して赤外線カメラ63に到達するように位置調整されている。これにより、1台の赤外線カメラ63で、第1温度画像と第2温度画像を同時に撮影することができる。この場合、赤外線カメラ63の画面には、第1温度画像が画面の半分に映し出され、第2温度画像が画面の残り半分に映し出されるように、赤外線カメラ63とミラー67、68の位置が調整されている。
【0045】
ロックインプロセッサ64は、赤外線カメラ63により出力された画像信号から、対象とする熱弾性効果による温度変動の波形をロックイン処理する。すなわち、赤外線カメラ63により出力された画像信号から所定の周波数成分のみを抽出する。具体的には、荷重(応力)変動に同期する画像信号、または、荷重(応力)変動に同期する周波数を含む所定範囲の周波数帯の画像信号のみを抽出する。これにより、S/N比を向上させている。
【0046】
また、本実施形態において、この荷重変動の周期については、荷重付加部62による等速ジョイント1への歳差運動周期に伴う荷重変動周期を使用している。歳差運動周期とは、荷重付加部62が等速ジョイント1に加える歳差運動の周期に相当する。また、荷重変動周期とは、等速ジョイント1の歳差運動に伴い、ボール30が外輪ボール溝11を溝延伸方向に往復運動することを周期的な荷重変動とし、この荷重変動の周期に相当するものである。この他に、等速ジョイント1へのトルク付加周期を使用しても良い。さらに、軸支台61がチャックに連結されたロードセルを有する構成としても良い。ロードセルは、外輪10を介して等速ジョイント1に加えられた荷重を検出し、検出結果を電気信号として出力する。そして、荷重変動の周期として、ロードセルにより出力される検出荷重の波形周期を使用しても良い。
【0047】
応力分布算出部65は、ロックインプロセッサ64により出力される画像信号を受信する。そして、この画像信号から得られる等速ジョイント1の温度変動の分布に基づき、等速ジョイント1の応力分布を算出する。表示部66は、この応力分布算出部65による算出結果をモニタ上に表示する。
【0048】
次に、本実施形態の応力測定方法について図6および図7を参照して説明する。図6は、本実施形態の応力測定方法の工程を示す説明図である。図7は、第一実施形態の着目箇所の荷重変動を示すグラフである。
【0049】
まず、荷重付加工程101では、応力測定装置60の荷重付加部62の駆動モータ62aにより、内輪20に回転力を付与する。そうすると、ボール30を介して内輪20から外輪10へ回転駆動力(トルク)が付加される。この時、位置決めされた外輪10の軸心および内輪20の軸心は、ジョイント角が付加された状態を維持している。よって、等速ジョイント1は、実用状態と同様に作動することになる。この時、伝達部材であるボール30は、等速ジョイントが1回転する間に、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21を一往復する。つまり、ボール30は、図1の左右方向に往復運動する。この往復運動の幅は、ジョイント角によって変化するものであり、ジョイント角が大きく付加されるほど大きくなる。
【0050】
このように、荷重付加部62によって等速ジョイント1に加えられた回転駆動力により、外輪10とボール30との間、および、内輪20とボール30との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うことになる。このとき、外輪10に生じる荷重変動は、図7に示すように、一定周期の波形となる。この場合、A領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の測定点が図7の波形の山部に表れ、A領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(180°)の測定点が図7の波形の谷部に表れる。つまり、外輪10の荷重変動は、外輪10に所定周期で繰り返し加えられる荷重となり、赤外線応力測定における熱弾性効果による温度変動を生じるようになる。
【0051】
次の温度測定工程102では、赤外線カメラ63が外輪10の温度変動により表面から放出される赤外線を検出する。この温度測定工程102では、赤外線カメラ63により、赤外線カメラ63の正面にある、A領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の表面を撮影した第1温度画像と、外輪10の背面側ある、A領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(180°)の表面をミラー67、68を介して撮影した第2温度画像を得る。第1温度画像と第2温度画像は、1台の赤外線カメラ63で同時に撮影されており、一つの画面に並んだ状態に表示される。
【0052】
次の温度変動画像取得工程103では、温度測定工程102で得られた第1温度画像と第2温度画像の同一箇所は、半回転ずれて表れるため、半回転分フレームをずらして組み合わせることにより、第1温度画像と第2温度画像の差分とり、A領域の温度変動画像を得る。この温度変動画像は、赤外線センサにより電気信号に変換され、画像信号として出力される。この画像信号は、室温変化による試験体の温度変化やノイズが含まれるが、図7に示すA領域の荷重変動とおよそ同期した波形を呈する。そこで、ロックインプロセッサ64により画像信号から熱弾性効果による温度変動の波形をロックイン処理する。ロックインプロセッサ64は、画像信号のうち荷重変動の周期に同期する周波数帯(荷重変動周期の周波数帯)のみを抽出し、応力分布算出部65に画像信号を出力する。
【0053】
最後の応力分布算出工程104では、応力分布算出部65が、ロックインプロセッサ64により出力される画像信号を受信する。応力分布算出部65は、この画像信号から得られるA領域の温度変動の分布に基づき、A領域の応力分布を算出する。そして、この応力分布の算出結果は、表示部66のモニタ上に表示される。即ち、表示部66のモニタ上には、A領域の応力分布測定結果が表示される。
【0054】
以上のように、第一実施形態の応力測定方法によれば、荷重付加工程101と、温度測定工程102と、温度変動画像取得工程103と、応力分布算出工程104とを順次行うことによって、等速ジョイント1の実用状態により近い状態で等速ジョイント1を駆動させながら、A領域の応力分布を測定するようにしているため、A領域において実際に生じる応力分布を正確に測定することができる。これにより、外輪10の最弱部位となり易い実用状態におけるA領域の応力分布を正確に把握し、外輪10の十分な強度を確保しつつ薄肉化を図るなど、外輪10の最適な形状や肉厚を設計することができる。
【0055】
また、温度測定工程102では、2枚のミラー67、68を介することによって第2温度画像を第1温度画像と同時に撮影するようにしているので、第1温度画像と第2温度画像の両方の画像を、1台の赤外線カメラ63で同時に撮影することができる。これにより、使用する赤外線カメラの台数を低減することができるので、測定装置の簡素化や低コスト化が可能となる。
【0056】
<第二実施形態>
第二実施形態の応力測定方法について図8〜10を参照しつつ説明する。第二実施形態は、応力分布の測定対象となる外輪10の着目箇所が、第一実施形態では外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(A領域)であったのに対し、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(以下、「B領域」という。)である点で相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0057】
第二実施形態では、図9に示すように、応力分布の測定対象となる外輪10の着目箇所は、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(B領域)としている。このB領域では、等速ジョイント1がジョイント角を付加された状態で回転駆動力を伝達する際に、外輪ボール溝11を転動するボール30がB領域を通過する時に負荷の時間変化が極大値となる。また、外輪ボール溝11を転動するボール30がB領域から最も遠ざかった位置、即ち、外輪ボール溝11の両端部付近にある時に負荷の時間変化が極小値となる。よって、B領域において、負荷の時間変化が極大値となる位相は0°と180°の2箇所となり、負荷が最小となる位相は90°と270°の2箇所となる。
【0058】
そのため、第二実施形態では、図8に示すように、0°の位相の第1温度画像と90°の位相の第2温度画像を、1枚のミラー67介して1台の赤外線カメラ63aで同時に撮影し、180°の位相の第1温度画像と270°の位相の第2温度画像を、1枚のミラー68介して1台の赤外線カメラ63bで同時に撮影するようにしている。
【0059】
一方のミラー67は、外輪10の90°の位相の面に対して45°傾いた状態に設置され、外輪10の90°の位相の映像が、ミラー67を反射して赤外線カメラ63aに到達するように位置調整されている。また、他方のミラー68は、外輪10の270°の位相の面に対して45°傾いた状態に設置され、外輪10の270°の位相の映像が、ミラー68を反射して赤外線カメラ63bに到達するように位置調整されている。この場合、それぞれの赤外線カメラ63a、63bの画面には、第1温度画像が画面の半分に映し出され、第2温度画像が画面の残り半分に映し出されるように、赤外線カメラ63a、63bとミラー67、68の位置が調整されている。そして、それぞれの赤外線カメラ63a、63bにより撮影された第1温度画像および第2温度画像は、第一実施形態の場合と同様に、ロックインプロセッサ64に画像信号として出力される。
【0060】
次に、第二実施形態の応力測定方法について説明する。最初に、第一実施形態と同様に荷重付加工程101が行われる。この荷重付加工程101では、応力測定装置60の荷重付加部62の駆動モータ62aを作動させることにより、等速ジョイント1が実用状態と同様に作動すると、ボール30は、等速ジョイントが1回転する間に、外輪10の外輪ボール溝11および内輪20の内輪ボール溝21を一往復する。
【0061】
このとき、外輪10とボール30との間、および、内輪20とボール30との間で、相互に所定周期で荷重を加え合うことで、外輪10には、図10に示すように、一定周期の波形となった荷重変動が生じる。この場合、B領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°および180°)の測定点が図10の波形の山部に表れ、B領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(90°および270°)の測定点が図10の波形の谷部に表れる。なお、この場合の周期は、図7に示す第一実施形態の場合の周期の1/2となっている。つまり、外輪10の荷重変動は、外輪10に所定周期で繰り返し加えられる荷重となり、赤外線応力測定における熱弾性効果による温度変動を生じるようになる。
【0062】
そして、次の温度測定工程102では、上記のように設置された赤外線カメラ63a、63bおよびミラー67、68により第1温度画像と第2温度画像の撮影が行われる。即ち、温度測定工程102では、一方の赤外線カメラ63aにより、B領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(0°)の表面を撮影した第1温度画像と、B領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(90°)の表面をミラー67を介して撮影した第2温度画像を得る。そして、他方の赤外線カメラ63bにより、B領域において負荷の時間変化が極大値となる位相(180°)の表面を撮影した第1温度画像と、B領域において負荷の時間変化が極小値となる位相(270°)の表面をミラー67を介して撮影した第2温度画像を得る。
【0063】
その後、第一実施形態の場合と同様に、温度変動画像取得工程103および応力分布算出工程104を経ることで、等速ジョイント1の実用状態により近い状態で外輪10のB領域において実際に生じる応力分布を正確に測定することができる。
【0064】
<第一、第二実施形態の変形態様>
応力測定対象となる外輪10の着目箇所は、第一実施形態では、外輪ボール溝11の外輪開口側の端部(A領域)とし、第二実施形態では、外輪ボール溝11の延伸方向の中央部(B領域)としたが、これら以外の部位を着目箇所にしてもよい。例えば、外輪ボール溝11の反外輪開口側(奥側)の端部(C領域)や、外輪ボール溝11のA領域とB領域の間の中間部位、B領域とC領域の間の中間部位である。
【0065】
例えば、着目箇所をA領域とB領域の間の中間部位(以下、「D領域」という。)とした場合には、荷重付加工程101におけるD領域の荷重変動のグラフは図11に示すようになる。この場合には、D領域における負荷の時間変化が極大値となる位相(0°および90°)の測定点が図10の波形の山部に表れ、B領域における負荷の時間変化が極小値となる位相(45°および225°)の測定点が図10の波形の谷部に表れる。
【0066】
また、第一、第二実施形態において、等速ジョイント1は、ボール型等速ジョイントとした。これに対して、等速ジョイント1はトリポード型等速ジョイントとしてもよい。トリポード型等速ジョイントは、特許文献1の図1のインボード側の等速自在継手3で示されるように、外輪と、トリポードと、ローラと、シャフトとから構成される。各部材の詳細な説明は省略するが、トリポードがボール型等速ジョイントの内側部材である内輪20に相当し、ローラがボール型等速ジョイントの伝達部材であるボール30に相当する。このような構成からなるトリポード型等速ジョイントであっても本発明により赤外線応力測定を適用することができ、また同様の効果を得られる。
【0067】
また、本発明の応力測定方法は、上記の等速ジョイントの他に、回転装置の一種である軸受の外輪を応力測定の対象にしてもよい。軸受の場合には、外輪および内側部材の回転時に外輪にラジアル方向の負荷変動が生じる構成となっているので、本発明の応力測定方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:等速ジョイント、 10:外輪、 11:外輪ボール溝、 20:内輪(内側部材)、 21:内輪ボール溝、 30:ボール(中間部材)、 40:保持器、 41:開口窓部、 50:シャフト、 60:応力測定装置、 61:軸支台、 62:荷重付加部、 62a:駆動モータ、 63、63a、63b:赤外線カメラ、 64:ロックインプロセッサ、 65:応力分布算出部、 66:表示部、 67、68:ミラー、 101:荷重付加工程、 102:温度測定工程、 103:温度変動画像取得工程、 104:応力分布算出工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な外輪と、
前記外輪の内側に配置される回転可能な内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間に配置され、前記外輪および前記内側部材の回転時に前記外輪に負荷変動を生じさせる中間部材と、
を備える回転装置の応力測定方法において、
前記外輪と前記内側部材との間で、前記中間部材を介して相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程と、
前記荷重付加工程において前記外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、前記着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程と、
前記第1温度画像と前記第2温度画像の差分をとり、前記着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程と、
前記温度変動画像取得工程で得られた前記温度変動画像に基づき、前記着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程と、
を備えることを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記温度測定工程は、ミラーを介することによって前記第2温度画像を前記第1温度画像と同時に撮影することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
応力測定対象となる前記回転装置は、
一端が開口する筒状部を有し、前記筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された前記外輪と、
シャフトに連結され前記外輪の内側に配置される前記内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材と、
を備える等速ジョイントであることを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記荷重付加工程は、前記等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、前記外輪の軸心および前記内側部材の軸心を位置決めし、前記外輪および前記内側部材の一方に回転力を付与することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記温度測定工程は、前記着目箇所を前記溝の外輪開口側の端部としたときに、前記第2温度画像を、前記第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項1】
回転可能な外輪と、
前記外輪の内側に配置される回転可能な内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間に配置され、前記外輪および前記内側部材の回転時に前記外輪に負荷変動を生じさせる中間部材と、
を備える回転装置の応力測定方法において、
前記外輪と前記内側部材との間で、前記中間部材を介して相互に所定周期で荷重を加え合う荷重付加工程と、
前記荷重付加工程において前記外輪の着目箇所における負荷の時間変化が極大値となる位相の表面を撮影して第1温度画像を得ると共に、前記着目箇所における負荷の時間変化が極小値となる位相の表面を撮影して第2温度画像を得る温度測定工程と、
前記第1温度画像と前記第2温度画像の差分をとり、前記着目箇所の温度変動画像を得る温度変動画像取得工程と、
前記温度変動画像取得工程で得られた前記温度変動画像に基づき、前記着目箇所の応力分布を算出する応力分布算出工程と、
を備えることを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記温度測定工程は、ミラーを介することによって前記第2温度画像を前記第1温度画像と同時に撮影することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
応力測定対象となる前記回転装置は、
一端が開口する筒状部を有し、前記筒状部の内周面に外輪回転軸方向に延びる複数の溝が形成された前記外輪と、
シャフトに連結され前記外輪の内側に配置される前記内側部材と、
前記外輪と前記内側部材との間で回転駆動力を伝達可能な伝達部材と、
を備える等速ジョイントであることを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記荷重付加工程は、前記等速ジョイントにジョイント角を付加した状態で、前記外輪の軸心および前記内側部材の軸心を位置決めし、前記外輪および前記内側部材の一方に回転力を付与することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記温度測定工程は、前記着目箇所を前記溝の外輪開口側の端部としたときに、前記第2温度画像を、前記第1温度画像の撮影方向と位相が180°ずれた位置から撮影することを特徴とする回転装置の応力測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−2352(P2011−2352A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146103(P2009−146103)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
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