説明

回転角度検出装置

【課題】主に自動車のブレーキペダル等の回転角度検出に用いられる回転角度検出装置に関し、簡易な構成で、確実な回転角度の検出とストップランプの消点灯等が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】磁石16の回転中心に対して所定角度間隔で、複数の磁気検出素子18Aと18Bを対向配置すると共に、磁気検出素子18Aと18Bからの検出信号L1とL2を加算または減算して回転角度を検出する第一の制御回路19と、検出信号L1とL2を除算した後、逆関数に変換して回転体12の回転角度を検出する第二の制御回路21と、印加された電圧に応じて、第一の制御回路19と第二の制御回路21のいずれを動作させるか切換えるスイッチング回路24を備えることによって、簡易な構成で、確実な回転角度の検出とストップランプの消点灯等が可能な回転角度検出装置27を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダル等の回転角度の検出に用いられる回転角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化が進むなか、様々な回転角度検出装置や各種スイッチ等を用いてブレーキペダル等の踏み込み量や回転角度を検出し、車両の多様な制御を行うものが増えている。
【0003】
このような、従来の回転角度検出装置やストップランプ制御用のプッシュスイッチについて、図12及び図13を用いて説明する。
【0004】
図12(a)は従来の回転角度検出装置の斜視図であり、同図において、略箱型で絶縁樹脂製のケース1内には回転体2が回転可能に収納されると共に、回転体2の一端にはケース1の側面開口部から外方へ突出するレバー2Aが設けられている。
【0005】
そして、ケース1内側壁と回転体2の間には、コイル状のばね(図示せず)がやや撓んだ状態で装着され、このばねによって回転体2が所定角度に付勢されて、レバー2Aが所定の位置に保持されている。
【0006】
さらに、回転体2には磁石(図示せず)が装着されると共に、この磁石と所定の間隙を空けて、ホール素子等の磁気検出素子(図示せず)がケース1内に対向配置されて、回転角度検出装置5が構成されている。
【0007】
また、図12(b)は従来のプッシュスイッチの斜視図であり、同図において、略箱型で絶縁樹脂製のケース6内には作動体7が上下動可能に収納されると共に、作動体7上端の操作軸7Aがケース6上面から上方へ突出している。
【0008】
そして、ケース6内底面と作動体7下端の間には、コイル状のばね(図示せず)がやや撓んだ状態で装着され、このばねによって作動体7が上方へ付勢されている。
【0009】
さらに、ケース6内には作動体7に装着された導電金属製の可動接点(図示せず)や、ケース6に植設された固定接点(図示せず)によって、スイッチ接点が形成されてプッシュスイッチ10が構成されている。
【0010】
そして、このように構成された回転角度検出装置5が、図13の側面図に示すように、自動車のブレーキペダル31の回動軸近傍の、アーム31Aにレバー2Aが装着されると共に、磁気検出素子がリード線やコネクタ(図示せず)等によって、車両の例えば電圧5Vの電子回路(図示せず)等に接続される。
【0011】
また、プッシュスイッチ10がブレーキペダル31の手前に、アーム31Aによって操作軸7Aが押圧された状態で装着されると共に、スイッチ接点がリード線やコネクタ等によって、車両の例えば電圧12Vのバッテリーやストップランプ(図示せず)等に接続される。
【0012】
つまり、図13に示すようにブレーキペダル31が踏み込まれず、シリンダボディ32内から突出したプッシュロッド33が伸びた状態では、プッシュスイッチ10の作動体7がばねを撓めながら押圧操作されて、可動接点が固定接点から離れ、スイッチ接点が電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯した状態となっている。
【0013】
以上の構成において、ブレーキペダル31が踏み込まれると、アーム31Aが回動してプッシュスイッチ10の操作軸7A先端から離れ、押圧力が除かれるため、ばねの弾性復帰力によって作動体7が元の位置へ移動すると共に、可動接点が固定接点に接触して、スイッチ接点が電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯する。
【0014】
また、ブレーキペダル31の回動に伴って、回転角度検出装置5のレバー2Aが揺動して、ばねを撓めながら回転体2が回転し、回転体2に装着された磁石も回転するため、磁石から対向した磁気検出素子へ流れる磁界の方向が変化する。
【0015】
そして、この磁気の強弱を磁気検出素子が検出し、磁気検出素子から出力された角度信号によって、車両の電子回路が回転体2の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を算出して、この踏み込み量に応じた車両の様々な制御が行われる。
【0016】
つまり、ブレーキペダル31の操作によって、プッシュスイッチ10の作動体7を上下動させ、スイッチ接点の電気的接離を行うことで、ストップランプの消点灯を行うと共に、回転角度検出装置5の回転体2と磁石を回転させ、磁気検出素子が検出した磁気の変化から、電子回路が回転体2の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を検出して、車両の様々な制御が行われるようになっている。
【0017】
なお、この時、例えばイグニションスイッチ(図示せず)等が入れられエンジンが起動した状態では、車両の電子回路から例えば電圧5Vが回転角度検出装置5に印加され、これによって上記のような回転体2の回転角度の検出が行われるが、エンジンが停止した状態では、電子回路から回転角度検出装置5に電圧が供給されないため、ブレーキペダル31を操作しても踏み込み量の検出は行われない。
【0018】
これに対し、プッシュスイッチ10は車両のバッテリーに接続され、エンジンが停止した状態でもバッテリーから電圧12Vが供給されているため、エンジン停止時でもブレーキペダル31を操作すると、ストップランプが点灯するように構成されているものであった。
【0019】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2001−317909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、上記従来の回転角度検出装置5やプッシュスイッチ10においては、これらを車両のブレーキペダル31に装着する際、回転体2をやや回転させた状態で、回転角度検出装置5をブレーキペダル31の回動軸近傍に装着すると共に、ブレーキペダル31が踏み込まれた状態では、スイッチ接点が電気的に確実に接続され、踏み込まれていない状態ではスイッチ接点が電気的に確実に切断されるように、取付け位置を調整しながら、プッシュスイッチ10をブレーキペダル31に装着する必要があるため、構成部品数も多く、取付けにも手間がかかってしまうという課題があった。
【0022】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、ブレーキペダル等への装着が容易に行え、簡易な構成で、確実な回転角度の検出とストップランプの消点灯等が可能な回転角度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために本発明は、特に、回転体に装着された磁石の回転中心に対して所定角度間隔で対向配置された複数の磁気検出素子からの検出信号を加算または減算して回転体の回転角度を検出する第一の制御回路と、複数の磁気検出素子からの検出信号を除算した後、逆関数に変換して回転体の回転角度を検出する第二の制御回路と、印加された電圧に応じて第一の制御回路と第二の制御回路のいずれを動作させるか切換えるスイッチング回路を備えて回転角度検出装置を構成したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回転体に装着された磁石の回転中心に対して所定角度間隔で対向配置された複数の磁気検出素子からの検出信号を加算または減算して回転体の回転角度を検出する第一の制御回路と、複数の磁気検出素子からの検出信号を除算した後、逆関数に変換して回転体の回転角度を検出する第二の制御回路と、印加された電圧に応じて第一の制御回路と第二の制御回路のいずれを動作させるか切換えるスイッチング回路を備える。
【0025】
これによって、スイッチング回路が、エンジン起動時には比較的電流の大きな第二の制御回路に切換え、車両の電子回路からの電圧を用いて高精度な回転角度の検出を行うことができる。また、エンジン停止時のバッテリーからの電圧を用いる場合には、スイッチング回路が第一の制御回路に切換え、電流の小さな第一の制御回路によって回転角度の検出を行うことができる。つまり、バッテリーの消耗を防ぎ確実な回転角度の検出が行えると共に、ストップランプの消点灯を行うための接離信号も、第一の制御回路や第二の制御回路から出力できるため、プッシュスイッチ等の他の部品が不要となり、簡易な構成で、ブレーキペダル等への装着も容易に行うことができ、確実な回転角度の検出と、ストップランプの消点灯等が可能な回転角度検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】同ブロック回路図
【図5】同側面図
【図6】同波形図
【図7】同波形図
【図8】本発明の他の実施の形態による回転角度検出装置の断面図
【図9】同分解斜視図
【図10】同ブロック回路図
【図11】同ブロック回路図
【図12】従来の回転角度検出装置とプッシュスイッチの斜視図
【図13】同側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図11を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による回転角度検出装置の断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11は上面開口で略箱型のポリブチレンテレフタレート等の絶縁樹脂製のケース、12は略円柱状で同じく絶縁樹脂製の回転体で、回転体12下面に突出した回転軸12Aが、略円筒状で含油金属製のスペーサ13を介してケース11内底面に挿入されて、回転体12がケース11内に回転可能に収納されている。
【0029】
また、14は鋼板等の金属製のレバーで、レバー14の一端がケース11下面から突出した回転軸12A下端に、かしめ等によって固着されると共に、レバー14の他端はケース11外方へ延出している。
【0030】
そして、15はコイル状に巻回された鋼線または銅合金製のばねで、やや捩られた状態のばね15の上端が回転体12に、下端がケース11内底面に各々係止され、このばね15によって回転体12が所定角度に付勢されて、レバー14が所定の位置に保持されている。
【0031】
さらに、16は略直方体状でフェライトやNd−Fe−B合金等の磁石で、この磁石16が左右すなわち水平方向にN極とS極を向けて、中心が回転体12の回転中心に一致するように、接着やインサート成形等によって回転体12上面に装着固定されている。
【0032】
そして、17は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、回転体12上面に水平になるようにして、ケース11上方に収納されている。
【0033】
また、18は角度センサで、図3の部分斜視図に示すように、検出面に対して垂直方向の磁気を検出するホール素子やGMR素子等の磁気検出素子18Aと18Bが、磁石16の回転中心に対して、所定角度間隔、例えば90度の間隔で配置されて形成されると共に、この角度センサ18が磁石16真上の配線基板17下面の配線パターンに半田付け等によって実装され、磁石16と所定の間隙を空けて対向配置されている。
【0034】
また、19は同じく配線基板17に実装された第一の制御回路で、オペアンプやコンパレータ等の制御部19Aと、同じく演算部19B、設定部20から形成されると共に、演算部19Bが磁気検出素子18Aと18Bに、演算部19Bと設定部20が制御部19Aに各々接続されている。
【0035】
さらに、21は配線基板17に実装された第二の制御回路で、図4のブロック回路図に示すように、マイコン等の制御部21Aと、A/Dコンバータ等の変換部21B、固定または可変抵抗器や所定の基準値を記憶するメモリ等の設定部20から形成されると共に、変換部21Bが磁気検出素子18Aと18Bに、変換部21Bと設定部20が制御部21Aに各々接続されている。
【0036】
そして、22は接点式のリレーや、GaNやSiC等を用いた半導体リレー等の開閉回路、23はバリスタやツェナーダイオード等の保護回路、24はリレーやFET等のスイッチング回路で、開閉回路22が制御部21Aと19Aに接続されると共に、保護回路23がスイッチング回路24を介して角度センサ18に接続されている。
【0037】
また、25は略L字状で銅合金等の端子で、ケース11側面にインサート成形等によって植設されると共に、複数の端子25の一端が配線パターンを介して、例えば端子25Aと25Bが保護回路23に、端子25Cと25Dが制御部21Aと19Aに、端子25Eが開閉回路22に各々接続されると共に、端子25の他端が略角筒状のコネクタ部11A内に延出している。
【0038】
さらに、26は鉄板等のカバーで、このカバー26がケース11の上面開口部を覆うと共に、ケース11上面にかしめ等によって固着されて、回転角度検出装置27が構成されている。
【0039】
そして、このように構成された回転角度検出装置27が、図5の側面図に示すように、自動車のブレーキペダル31の回動軸近傍の、アーム31Aにレバー14が装着されると共に、複数の端子25がコネクタやリード線(図示せず)等によって、例えば端子25Aが車両の電圧5Vの電子回路(図示せず)に、端子25Bが電圧12Vのバッテリーに、端子25Fがグランド電位に、端子25Cと25Dが電子回路に、端子25Eがストップランプ(図示せず)等に各々接続されて、自動車に装着される。
【0040】
なお、図5に示すようにブレーキペダル31が踏み込まれず、シリンダボディ32内から突出したプッシュロッド33が伸びた、端子25Eを介してストップランプに接続された開閉回路22が、電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯した状態となっている。
【0041】
また、この時、例えばイグニションスイッチ(図示せず)等が入れられ、車両のエンジンが起動した状態では、端子25Aに電子回路から5Vの電圧が印加されているため、スイッチング回路24は第二の制御回路21側に切換わり、第二の制御回路21に電圧5Vが供給された状態となっている。
【0042】
以上の構成において、ブレーキペダル31が踏み込まれると、このブレーキペダル31の回動に伴って、レバー14が揺動して、ばね15を捩りながら回転体12が所定角度、例えば50度前後まで回転し、この回転中心に装着された磁石16も回転するため、磁石16の磁界の方向が変化し、これを磁石16真上に対向配置された磁気検出素子18Aと18Bが検出する。
【0043】
そして、例えば、磁石16と対向した磁気検出素子18Aからは、図6(a)の波形図に示すような正弦波の検出信号L1が、磁気検出素子18Aと90度の間隔で配置された磁気検出素子18Bからは、余弦波の検出信号L2が各々第二の制御回路21の変換部21Bに出力され、変換部21Bでアナログ信号の検出信号L1とL2がデジタル信号に変換される。
【0044】
そして、制御部21Aは、変換部21Bから入力されたデジタル信号を、まず、図6(b)に示すような、例えば検出信号L1を検出信号L2で除算して正接波の演算信号M1や、検出信号L2を検出信号L1で除算して演算信号M1と逆数の演算信号M2を各々算出する。
【0045】
さらに、この後、制御部21Aは、演算信号M1やM2を逆関数に変換して、図6(c)に示すような、直線状の変換信号N1やN2と、検出信号L1やL2の正負や大小関係から回転体12の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を算出する。そして、制御部21Aは、回転体12の回転角度に対応し、この角度信号が端子25Cから自動車本体の電子回路へ出力され、この角度信号により踏み込み量に応じた車両の様々な制御が行われる。
【0046】
そして、この時、磁気検出素子18Aと18Bからの検出信号L1とL2がデジタル信号に変換され、制御部21Aによって除算された後、逆関数に変換された変換信号N1やN2は直線状に変化するものとなるため、高精度な回転角度の検出が行えるようになっている。
【0047】
また、この時、ブレーキペダル31がやや踏み込まれ、回転体12が所定角度、例えば3〜10度前後回転した状態になると、第二の制御回路21がこの回転角度を検出し、制御部21Aから開閉回路22へ所定の接離信号が出力され、この接離信号によって開閉回路22が電気的に接続された状態となって、ストップランプが点灯する。
【0048】
なお、ブレーキペダル31から足を離すと、ブレーキペダル31が元の位置に戻ると共に、回転体12とケース11の間に装着されたばね15によって、回転体12が所定角度に付勢されて、レバー14が元の位置に復帰し、制御部21Aから接離信号が出力されて、開閉回路22が切断された状態となり、ストップランプが消灯する。
【0049】
つまり、エンジンが起動し、スイッチング回路24が第二の制御回路21側に切換わった状態では、第二の制御回路21が磁気検出素子18Aと18Bが検出した磁石16の磁気の変化から、回転体12の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を検出し、これを角度信号として電子回路へ出力すると共に、ブレーキペダル31の踏み込み量に応じて、接離信号を出力して開閉回路22の電気的接離を行い、これによってストップランプの消点灯が行われるように構成されている。
【0050】
なお、この時、電圧5Vが供給された第二の制御回路21において、変換部21Bが磁気検出素子18Aと18Bの検出信号L1とL2をデジタル信号に変換する際には、10mA前後の電流が流れる。さらに、制御部21Aでデジタル信号と共に、これらを除算し演算信号M1やM2を算出した後、逆関数の変換信号N1やN2に変換する際には、15mA前後の比較的大きな電流が流れる。このように、第二の制御回路21は比較的大きな電流が流れるが、直線状の変換信号N1やN2による高精度な回転角度の検出が可能なものとなっている。
【0051】
これに対し、例えばイグニションスイッチ等が切られ、車両のエンジンが停止した状態になると、端子25Aには電子回路からの電圧が供給されず、端子25Bにバッテリーから12Vの電圧が供給された状態となるため、スイッチング回路24がこれを検出して第一の制御回路19側に切換わり、第一の制御回路19に電圧12Vが供給される。
【0052】
また、このようにエンジンが停止した状態で、ブレーキペダル31が踏み込まれた場合にも、回転体12の回転に伴う磁石16の磁界の方向の変化を、磁気検出素子18Aと18Bが検出するが、磁石16と対向した磁気検出素子18Aからの、図7(a)の波形図に示すような正弦波の検出信号L1と、磁気検出素子18Aと90度の間隔で配置された、磁気検出素子18Bからの余弦波の検出信号L2は、各々第一の制御回路19の演算部19Bに出力される。
【0053】
そして、この検出信号L1と検出信号L2を演算部19Bが加算あるいは減算して、例えば図7(b)に示すような、検出信号L2から検出信号L1を減算して演算信号P1を、加算して演算信号P2を各々算出し、この演算信号P1やP2から制御部19Aが回転体12の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を算出して、この角度信号が端子25Dから電子回路へ出力され、踏み込み量に応じた車両の様々な制御が行われる。
【0054】
なお、この時、検出信号L1とL2を加算または減算して算出された演算信号P1やP2は、例えば演算信号P1は、実際にブレーキペダル31が踏み込まれ、回転体12が回転する角度である0〜60度前後の間は、ほぼ直線状に変化するものとなるため、この角度の間は高精度な回転角度の検出が行えるようになっている。
【0055】
また、ブレーキペダル31がやや踏み込まれ、回転体12が所定角度、例えば3〜10度前後回転した状態になると、第一の制御回路19がこの回転角度を検出し、制御部19Aから開閉回路22へ所定の接離信号が出力され、この接離信号によって開閉回路22が電気的に接続された状態となって、ストップランプが点灯する。
【0056】
さらに、ブレーキペダル31から足を離すと、ブレーキペダル31が元の位置に戻ると共に、ばね15によって回転体12が所定角度に付勢されて、レバー14が元の位置に復帰し、制御部19Aから接離信号が出力されて、開閉回路22が切断された状態となり、ストップランプが消灯する。
【0057】
つまり、エンジンが停止し、スイッチング回路24が第一の制御回路19側に切換わった状態では、第一の制御回路19が磁気検出素子18Aと18Bが検出した磁石16の磁気の変化から、回転体12の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を検出し、これを角度信号として電子回路へ出力すると共に、ブレーキペダル31の踏み込み量に応じて、接離信号を出力して開閉回路22の電気的接離を行い、これによってストップランプの消点灯が行われるように構成されている。
【0058】
そして、この時、磁気検出素子18Aと18Bからの検出信号L1とL2を、加算または減算する第一の制御回路19の演算部19Bと、算出された演算信号P1やP2から回転角度を検出する制御部19Aには、各々20μA前後の小さな電流しか流れないため、エンジン停止時のバッテリーの消耗を少なくできると共に、ほぼ直線状の演算信号P1やP2から回転角度を検出することによって、実際にブレーキペダル31が踏み込まれる間は、比較的高精度な回転角度の検出が行えるようになっている。
【0059】
すなわち、エンジンが起動している場合には、スイッチング回路24が第二の制御回路21側に切換わり、比較的電流の大きな第二の制御回路21によって、高精度な回転角度の検出を行うことができると共に、エンジン停止時には、スイッチング回路24が第一の制御回路19側に切換わり、電流の小さな第一の制御回路19によって回転角度の検出を行うことで、バッテリーの消耗を防ぎ確実な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0060】
また、磁気検出素子18Aと18Bが検出した磁石16の磁気の変化から、第二の制御回路21や第一の制御回路19が回転体12の回転角度、すなわちブレーキペダル31の踏み込み量を検出し、これを角度信号として電子回路へ出力すると共に、ブレーキペダル31の踏み込み量に応じて、所定の接離信号を出力して開閉回路22の電気的接離を行い、これによってストップランプを消点灯するようになっている。
【0061】
したがって、ストップランプを消点灯するためのプッシュスイッチ等の他の部品を設ける必要はなく、ブレーキペダル31の回動軸近傍に装着した一つの回転角度検出装置27のみで、ブレーキペダル31の踏み込み量の検出も、ストップランプの消点灯も行うことが可能となるため、使用する部品数も少なく、簡易で安価な構成にできると共に、ブレーキペダル31への装着も、短時間で容易に行うことができる。
【0062】
さらに、回転体12に装着された磁石16の回転中心に対して、所定角度間隔で複数の磁気検出素子18Aと18Bを対向配置すると共に、第二の制御回路21や第一の制御回路19が、複数の磁気検出素子18Aと18Bからの検出信号L1とL2を演算あるいは変換し、直線状の変換信号N1やN2、あるいは、ほぼ直線状の演算信号P1やP2を用いて回転体12の回転角度を検出することによって、誤差が少なく、高精度な回転角度の検出が行えるように構成されている。
【0063】
さらに、本発明による他の実施の形態の回転角度検出装置65について、説明する。
【0064】
図8は回転角度検出装置65の断面図で、図9は回転角度検出装置65の分解斜視図である。
【0065】
ここで、回転角度検出装置65は、回転角度検出装置27と比較し、以下の点が主として異なる。
【0066】
まず、回転体12に代えて、主回転体51と、主回転体51に連動して回転する副回転体52を備えている。また、磁石16に代えて、主磁石53と副磁石54を備えている。さらに、角度センサ18に代えて、主角度センサ55と副角度センサ56を備えている。そして、端子25に代えて端子58を備えている。
【0067】
この回転角度検出装置65は、主角度センサ55と副角度センサ56で主回転体51の回転角度を検出できるので、主角度センサ55と副角度センサ56のいずれかが故障したとしても、角度信号の出力あるいはストップランプの点灯制御の片方を正しく行うことができるという利点がある。
【0068】
次に、各構成部品について説明する。
【0069】
ここで、主回転体51は歯車で外縁に所定のピッチの歯を備え、副回転体52も歯車で、外縁に主回転体51とほぼ同等のピッチで歯を備えている。この主回転体51と副回転体52は互いの歯が噛み合い連動して回転するもので、副回転体52の直径は主回転体51の直径より小さい。そのため、主回転体51と副回転体52が連動して回転する際に、副回転体52の回転数は主回転体51の回転数より多くなる。
【0070】
また、主磁石53と副磁石54は、略直方体状でフェライトあるいはNd−Fe−B合金等を材料とする。ここで、主磁石53が主回転体51の回転中心に配置され、副磁石54が副回転体52の回転中心に配置され、これらの主磁石53と副磁石54は水平面方向にS極、N極を備える。例えば右端がS極、左端がN極である。そして、主磁石53と副磁石54は、主回転体51、副回転体52の回転に伴い、それぞれ回転する。
【0071】
そして、主角度センサ55が主磁石53に所定の間隙を空けて対向配置され、副角度センサ56が副磁石54に所定の間隙を空けて対向配置される。ここで、主角度センサ55には、検出面に対して垂直方向の磁気を検出するホール素子あるいはGMR素子等の主磁気検出素子55Aと55Bが、主磁石53の回転中心に対して、所定角度間隔、例えば90度の間隔で配置される。同様に副角度センサ56には、副磁気検出素子56Aと56Bが、所定角度間隔、例えば90度の間隔で配置される。
【0072】
次に図10を用いて、内蔵回路66の構成を説明する。
【0073】
同図において、内蔵回路66は、主角度センサ55と、副角度センサ56と、第一の制御回路191と、設定部20と、第二の制御回路211と、開閉回路22と、保護回路23と、スイッチング回路24と、端子58の一端となる端子58A〜58Gとを備えている。
【0074】
ここで、主角度センサ55はスイッチング回路24を介して、保護回路23に接続される。保護回路23は、端子58A、58B、58Fが接続され、端子58Aが車両の電圧5Vの電子回路に、端子58Bが電圧12Vのバッテリーに、端子58Fはグランド電位に、さらに接続される。そして、主角度センサ55に供給される電圧は、エンジンオンの際は電圧5Vに、エンジンオフの際は電圧12Vに、スイッチング回路24で切換えられる。
【0075】
ここで、エンジンオフの際は第一の制御回路191が動作する。
【0076】
主角度センサ55の主磁気検出素子55A、55Bから出力された検出信号は演算部19Bに入力される。演算部19Bは検出信号を加算あるいは減算して、演算信号を生成し、制御部19Aに出力する。制御部19Aは演算信号を基に、端子58Cに角度信号を出力する。
【0077】
そして、エンジンオンの際は第二の制御回路211が動作する。
【0078】
主角度センサ55の主磁気検出素子55A、55Bから出力された検出信号は変換部21Bに入力される。そして、変換部21Bで、検出信号がデジタル信号に変換され、デジタル信号が制御部21Aに入力される。制御部21Aでは、デジタル信号を基に除算した後、逆変換して主回転体51の回転角度を算定し端子58Gに角度信号を出力する。
【0079】
また、保護回路23は、主角度センサ55と共に副角度センサ56に接続されている。ここで副角度センサ56には電圧12Vの電源が供給される。
【0080】
ここで、副角度センサ56は副磁気検出素子56A、56Bを備えており、副磁気検出素子56A、56Bは開閉回路22に接続され、副磁気検出素子56A、56Bから出力された検出信号は開閉回路22に入力される。開閉回路22は、検出信号によって電気的に接続された状態か否かが切換わり、ストップランプを点灯あるいは消灯する。
【0081】
なお、第一の制御回路191、第二の制御回路211は、回転角度検出装置27の第一の制御回路19、第二の制御回路21と異なり、スイッチング信号を出力しないものである。それ以外の第一の制御回路191、第二の制御回路211の処理は回転角度検出装置27の第一の制御回路19、第二の制御回路21と同様である。
【0082】
また、内蔵回路66に代えて、図11の内蔵回路67のように構成しても良い。
【0083】
ここで、内蔵回路67の構成は内蔵回路66の構成に比べ、比較回路57が加えられており、比較回路57により、主角度センサ55と、副角度センサ56のいずれかが故障していることを判定することができる。そして、内蔵回路67の第一の制御回路192、第二の制御回路212は、内蔵回路66の第一の制御回路191、第二の制御回路211と異なり、スイッチング信号を出力するものである。
【0084】
ここで、比較回路57は副角度センサ56と第一の制御回路192、第二の制御回路212と端子58Eに接続される。そして、比較回路57には第一の制御回路192あるいは第二の制御回路212からスイッチング信号が入力されると共に、副角度センサ56から出力された検出信号が入力される。
【0085】
この比較回路57は、第一の制御回路192あるいは第二の制御回路212から出力されたスイッチング信号と副角度センサ56から出力された検出信号を比較し、所定の対応関係にある場合は、主角度センサ55、副角度センサ56は共に正常であると判定する。
【0086】
一方、所定の対応関係から外れている場合は、比較回路57は、主角度センサ55と副角度センサ56のいずれかが故障していると判定し、報知信号を端子58Eから出力する。所定の対応関係にあるか否かは設定部20に記憶された所定の基準値を用いて判定する。あるいは、比較回路57の内部に論理回路などで構成し、判定しても良い。なお、比較回路57は、第一の制御回路192あるいは第二の制御回路212に内蔵して構成しても良く、車両の電子回路側に設けた構成としても良い。
【0087】
なお、以上の説明では、磁気検出素子18A、18Bを一体に形成した角度センサ18あるいは、主磁気検出素子55A、55Bを一体に形成した主角度センサ55、副磁気検出素子56A、56Bを一体に形成した副角度センサ56を用いるものとして説明したが、磁気検出素子18A、18B、主磁気検出素子55A、55B、副磁気検出素子56A、56Bは配線基板17に直接実装しても良い。
【0088】
そして、配線基板17には角度センサ18、主角度センサ55、副角度センサ56のみを設け、その他の第一の制御回路19、191、192や開閉回路22等は車両の電子回路側に設けた構成としても良い。
【0089】
さらに、第一の制御回路19、191、192や第二の制御回路21、211、212、開閉回路22、保護回路23、スイッチング回路24を一体のパッケージに形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0090】
なお、スイッチング回路24が第一の制御回路19側に切換わり、バッテリーを用いて回転角度の検出を行う場合には、例えばスイッチング回路24が所定の間隔で12Vと0Vに切換わる等の、いわゆる間欠動作をすることによって、さらにバッテリーの消耗を少なくすることが可能となる。
【0091】
また、演算部19Bに代えて制御部19Aが除算を行う構成としても良い。
【0092】
また、回転角度検出装置27、65を用いて、主にブレーキペダル31の踏み込み量の検出と、ストップランプの消点灯を行う構成について説明したが、この他にもクラッチペダルやアクセルペダル等、様々な車両のペダルの動作を検出する構成としても、本発明の実施は可能である。
【0093】
また、略円柱状の磁石を用いた構成や、あるいはN極とS極を垂直方向に形成した磁石を用いた構成としても、本発明の実施は可能である。
【0094】
また、垂直方向の磁気を検出するホール素子やGMR素子等の磁気検出素子18Aと18Bを、90度の間隔で磁石16に対向配置した構成について説明したが、45度の間隔で配置された水平方向の磁気を検出するAMR(異方性磁気抵抗)素子等の磁気検出素子を用いて、これによって回転体12の回転角度を検出する構成としてもよい。
【0095】
このように本実施の形態によれば、磁石16の回転中心に対して所定角度間隔で、複数の磁気検出素子18Aと18Bを対向配置すると共に、磁気検出素子18Aと18Bからの検出信号L1とL2を加算または減算して回転角度を検出する第一の制御回路19と、検出信号L1とL2を除算した後、逆関数に変換して回転体12の回転角度を検出する第二の制御回路21と、印加された電圧に応じて第一の制御回路19と第二の制御回路21のいずれを動作させるか切換えるスイッチング回路24を設けることによって、バッテリーの消耗を防ぎ確実な回転角度の検出が行えると共に、簡易な構成で、ブレーキペダル31等への装着も容易に行うことができ、確実な回転角度の検出と、ストップランプの消点灯等が可能な回転角度検出装置27を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明による回転角度検出装置は、簡易な構成で、確実な回転角度の検出と、ストップランプの消点灯等が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に自動車のブレーキペダル等の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0097】
11 ケース
11A コネクタ部
12 回転体
12A 回転軸
13 スペーサ
14 レバー
15 ばね
16 磁石
17 配線基板
18 角度センサ
18A、18B 磁気検出素子
19、191、192 第一の制御回路
19A 制御部
19B 演算部
20 設定部
21、211、212 第二の制御回路
21A 制御部
21B 変換部
22 開閉回路
23 保護回路
24 スイッチング回路
25、25A、25B、25C、25D、25E、25F、58、58A、58B、58C、58D、58E、58F、58G 端子
26 カバー
27、65 回転角度検出装置
31 ブレーキペダル
31A アーム
32 シリンダボディ
33 プッシュロッド
51 主回転体
52 副回転体
53 主磁石
54 副磁石
55 主角度センサ
55A、55B 主磁気検出素子
56 副角度センサ
56A、56B 副磁気検出素子
66、67 内蔵回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルの回動に伴って回転する回転体と、前記回転体の回転中心に装着された磁石と、前記磁石の回転中心に対して所定角度間隔で所定の間隙を空けて対向配置され検出信号を出力する複数の磁気検出素子と、複数の前記磁気検出素子からの検出信号を加算または減算して前記回転体の回転角度を検出する第一の制御回路と、複数の前記磁気検出素子からの検出信号を除算した後、逆関数に変換して前記回転体の回転角度を検出する第二の制御回路と、印加された電圧に応じて上記第一の制御回路を第二の制御回路のいずれを動作させるか切換えるスイッチング回路を備えた回転角度検出装置。
【請求項2】
前記回転体は主回転体と前記主回転体に連動して回転する副回転体から構成され、前記磁石は、前記主回転体の回転中心に配置された主磁石と前記副回転体の回転中心に配置された副磁石とから構成され、前記磁気検出素子は前記主磁石に所定の間隙を空けて対向配置された主磁気検出素子と前記副磁石に所定の間隙を空けて対向配置された副磁気検出素子とから構成され、前記副磁気検出素子に接続され前記副磁気検出素子から入力された検出信号に応じて電気的接離を行う開閉回路をさらに備えた請求項1記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記回転体は主回転体と前記主回転体に連動して回転する副回転体から構成され、前記磁石は前記主回転体の回転中心に配置された主磁石と前記副回転体の回転中心に配置された副磁石とから構成され、前記磁気検出素子は前記主磁石に所定の間隙を空けて対向配置された主磁気検出素子と前記副磁石に所定の間隙を空けて対向配置された副磁気検出素子とから構成され、前記制御回路と前記副磁気検出素子に接続され前記制御回路から入力されたスイッチング信号と前記副磁気検出素子から入力された検出信号を比較し所定の対応関係から外れている場合は報知信号を出力する比較回路をさらに備えた請求項1記載の回転角度検出装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−118048(P2012−118048A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170681(P2011−170681)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】