説明

回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置

【課題】中間値固着異常が生じていることを適切に判断することができる回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】回転角検出装置10の制御部50は、ハーフブリッジ14〜17から出力される出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2を、ハーフブリッジ14〜17毎に取得する。制御部50は、取得された出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に基づき、被検出部87の回転角度θを算出する。制御部50は、取得された出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に基づいて算出される演算値C1またはC4に基づき、演算値C1またはC4の算出に用いた出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に中間値固着異常が生じているか否かを判断する。これにより、中間値固着異常が生じているか否かを適切に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の回転角度を検出する回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどの回転軸の回転角度を検出する回転角検出装置において、センサ素子から出力される出力信号に基づいて回転角度を算出する技術が公知である。また、センサ素子から出力される信号に異常が発生した場合に、異常が発生したことを判定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−49097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ブリッジ回路からの出力信号である+sin信号、−sin信号、+cos信号、−cos信号は、差動増幅された後にAD変換部に入力されている。そのため、+sin信号、−sin信号、+cos信号、−cos信号のいずれか1つに異常が生じると、回転角度を算出することができないという問題点があった。
また、例えば出力信号を増幅するオペアンプの前後が短絡した場合等、正常な場合の出力信号の振幅の最大値と最小値との中間値が出力され続ける中間値固着異常が生じることがある。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力信号の振幅の最大値と最小値との中間値が出力され続ける中間値固着異常が生じていることを適切に判断することができる回転角検出装置、および、これを用いた電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の回転角検出装置は、回路部と、出力信号取得手段と、回転角度算出手段と、中間値固着判断手段と、を備える。回路部は、被検出部の回転に応じて変化する回転磁界を感知し被検出部の回転角度に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子により構成される複数のセンサ素子組を有する。出力信号取得手段は、複数のセンサ素子組から出力される出力信号をセンサ素子組毎に取得する。回転角度算出手段は、出力信号取得手段により取得された出力信号に基づき、被検出部の回転角度を算出する。中間値固着判断手段は、出力信号取得手段により取得された出力信号に基づいて算出される第1の値に基づき、第1の値の算出に用いた出力信号において出力信号に異常がない場合の振幅の最大値と最小値との中心値が出力され続ける中間値固着異常が生じているか否かを判断する。
本発明では、センサ素子組から出力される出力信号をセンサ素子組毎に取得しているので、例えば1つの出力信号に異常が生じたとしても他の出力信号を各種演算に用いることができる。また、センサ素子組毎に取得される出力信号に基づいて算出される第1の値に基づき、中間値固着異常が生じているか否かを適切に判断することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、出力信号取得手段により取得された出力信号に基づく値である第2の値に基づき、中間値固着異常が生じている出力信号を特定する異常信号特定手段をさらに備える。これにより、中間値固着異常が生じた出力信号を適切に特定することができるので、誤った角度演算をしないようにできる。
【0007】
請求項3に記載の発明では、回転角度算出手段は、異常信号特定手段により中間値固着異常が生じていると特定された出力信号以外の出力信号に基づき、被検出部の回転角度を算出する。これにより、誤った角度を算出することなく被検出部の回転角度の算出を継続することができる。
【0008】
請求項4に記載の発明では、出力信号取得手段により取得される出力信号は、4以上である。これにより、出力信号の一部に異常が生じた場合でも、被検出部の回転角度の算出を継続することができる。
請求項5に記載の発明では、出力信号取得手段により取得される出力信号は、+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号を含む。これにより、出力信号の一部に異常が生じた場合でも、+cos信号または−cos信号のいずれか一方、および、+sin信号または−sin信号のいずれか一方が正常であれば、被検出部の回転角度の算出を継続することができる。
【0009】
請求項6に記載の発明では、第1の値は、+cos信号および−cos信号に基づいて算出されるcos信号演算値である。中間値固着判断手段は、cos信号演算値が第1の所定範囲から外れた場合、+cos信号または−cos信号に中間値固着異常が生じていると判断する。これにより、+cos信号または−cos信号に中間値固着異常が生じていることを適切に判断することができる。
請求項7に記載の発明では、第1の値は、+sin信号および−sin信号に基づいて算出されるsin信号演算値である。中間値固着判断手段は、sin信号演算値が第2の所定範囲から外れた場合、+sin信号または−sin信号に中間値固着異常が生じていると判断する。これにより、+sin信号または−sin信号に中間値固着異常が生じていることを適切に判断することができる。なお、第1の所定範囲と第2の所定範囲は、同一の範囲としてもよいし、異なる範囲としてもよい。
【0010】
請求項8に記載の発明では、第2の値は、出力信号そのもの、または、出力信号に所定値を加算または減算した値である出力信号相当値である。すなわち、第2の値は、出力信号に中間値固着異常が生じていない場合、+cos信号、−cos信号、+sin信号、または−sin信号となり、中間値固着異常が生じている場合、定数となる。そこで、異常信号特定手段は、出力信号または出力信号相当値が第3の所定範囲内である場合、当該出力信号または出力信号相当値に対応する出力信号に中間値固着異常が生じていると特定する。これにより、中間値固着異常が生じている出力信号を簡易な方法で特定することができる。なお、第3の所定範囲は、第1の所定範囲および第2の所定範囲を同一の範囲としてもよいし、異なる範囲としてもよい。
【0011】
請求項9に記載の発明では、第1の値および第2の値は、合わせて6以上である。例えば、出力信号が+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号の4つである場合、請求項6〜8の構成を採用すれば、比較的少ない演算数で中間値固着異常が生じている出力信号を特定することができる。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転角検出装置を用いた電動パワーステアリング装置である。例えば請求項3に記載の構成を採用すれば、出力信号の一部に中間値固着異常が生じたとしても、異常が生じている出力信号以外の出力信号に基づき略正確に回転角度が算出されるので、電動パワーステアリング装置によるアシストを継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態によるステアリングシステムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態によるモータの構成を示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による回転角検出装置の回路構成を示す回路図である。
【図4】本発明の一実施形態による中間値固着異常が生じている出力信号の特定方法を説明する説明図である。
【図5】本発明の一実施形態による中間値固着異常の特定が可能な領域を説明する説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による中間値固着判定処理を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態による被検出部の回転角度の算出に係り、角度範囲の分割を説明する説明図であって、sin信号およびcos信号を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態による被検出部の回転角度の算出方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による回転角検出装置を図面に基づいて説明する。
(一実施形態)
図1に示すように、本発明の一実施形態による回転角検出装置10は、車両のステアリング操作をアシストするための電動パワーステアリング装置1(以下、適宜「EPS」という。)に適用される。
【0015】
図1は、電動パワーステアリング装置1を備えたステアリングシステム90の全体構成を示す図である。ステアリングホイール91に接続されたステアリングシャフト92には、ステアリングセンサ94およびトルクセンサ95が設けられている。ステアリングセンサ94は、ステアリングシャフト92の回転角を検出する。トルクセンサ95は、ステアリングホイール91に加えられた操舵トルクを検出する。ステアリングシャフト92の先端は、ギア96を介してラック軸97に連結されている。ラック軸97の両端には、タイロッド等を介して一対のタイヤ(ホイール)98がそれぞれ連結されている。ステアリングシャフト92の回転運動は、ギア96によってラック軸97の直線運動に変換され、ラック軸97の直線運動変位に応じた角度分、左右のタイヤ98が転舵される。
【0016】
電動パワーステアリング装置1は、補助操舵トルクを発生するモータ80、モータ80の回転角度を検出する回転角検出装置10、及び、モータ80の回転を減速してステアリングシャフト92に伝達するギア89等を備える。モータ80は、ギア89を正逆回転させる三相ブラシレスモータである。電動パワーステアリング装置1は、ステアリングホイール91の操舵方向および操舵トルクに応じた操舵補助トルクをステアリングシャフト92に伝達する。
【0017】
モータ80の概略構成を、図2に示す。モータ80は、ステータ81、ロータ82、および、シャフト83等を有している。ロータ82は、シャフト83とともに回転する筒状の部材であり、その表面に永久磁石が貼り付けられ、磁極を有している。ステータ81は、その内部にロータ82を相対回転可能に収容している。ステータ81は、径内方向へ所定角度毎に突出する突出部を有し、この突出部にコイル84が巻回されている。コイル84への通電によって生じる磁界を受けて、ロータ82はシャフト83とともに回転する。ステータ81、ロータ82、シャフト83、および、コイル84は、ハウジング85に収容される。シャフト83は、ハウジング85の両端から突出し、カバー86側の端部に被検出部87を有する。被検出部87は、円板状に形成される2極磁石であり、シャフト83と一体となって回転する。カバー86の被検出部87と対向する位置には、回転角検出装置10が設けられる。本実施形態では、回転角検出装置10は、カバー86の一箇所に設けられているが、複数箇所に設けるように構成してもよい。回転角検出装置10は、ロータ82およびシャフト83と一体となって回転する被検出部87の回転角度を検出する。
【0018】
回転角検出装置10の回路構成を、図3に示す。図3に示すように、回転角検出装置10は、第1ブリッジ回路11、第2ブリッジ回路12、増幅部40、制御部50等を有している。なお、第1ブリッジ回路11および第2ブリッジ回路12が「回路部」に対応している。
第1ブリッジ回路11は、第1ハーフブリッジ14および第2ハーフブリッジ15を有する。第1ハーフブリッジ14は、2つのセンサ素子21、22から構成される。センサ素子21、22の接続点である中点31は、増幅部40の第1オペアンプ41に接続する。第2ハーフブリッジ15は、2つのセンサ素子23、24から構成される。センサ素子23、24の接続点である中点32は、増幅部40の第2オペアンプ42に接続する。
第2ブリッジ回路12は、第3ハーフブリッジ16および第4ハーフブリッジ17を有する。第3ハーフブリッジ16は、2つのセンサ素子25、26から構成される。センサ素子25、26の接続点である中点33は、増幅部40の第3オペアンプ43に接続する。第4ハーフブリッジ17は、2つのセンサ素子27、28から構成される。センサ素子27、28の接続点である中点34は、増幅部40の第4オペアンプ44に接続する。
【0019】
本実施形態のセンサ素子21〜28は、いずれも被検出部87の回転に応じて変化する回転磁界によりインピーダンスが変化する磁気抵抗素子である。磁気抵抗素子としては、例えばGMR素子が好適に用いられる。
なお、ハーフブリッジ14〜17のそれぞれが「センサ素子組」に対応している。本実施形態では、1つの出力信号を出力するセンサ素子組を便宜上、「ハーフブリッジ」としているが、ブリッジ回路を構成するセンサ素子組は、2組に限定されることはなく、また、センサ素子組を構成するセンサ素子数も2つに限定されることはない。
【0020】
第1ハーフブリッジ14および第3ハーフブリッジ16と、第2ハーフブリッジ15および第4ハーフブリッジ17とは、その磁化方向が90度ずれるようにセンサ素子21〜28が実装されている。本実施形態では、第1ハーフブリッジ14の中点31および第3ハーフブリッジ16の中点33からはcos信号が出力され、第2ハーフブリッジ15の中点32および第4ハーフブリッジ17の中点34からはsin信号が出力される。
【0021】
cos信号を出力する第1ハーフブリッジ14およびsin信号を出力する第2ハーフブリッジ15からなる第1ブリッジ回路11と、cos信号を出力する第3ハーフブリッジ16およびsin信号を出力する第4ハーフブリッジ17からなる第2ブリッジ回路12とは、それぞれ別々の電源に接続されている。これにより、一方のブリッジ回路が故障したとしても、他方のブリッジ回路から出力されるcos信号およびsin信号を用いて被検出部87の回転角度θの算出を継続することができる。
【0022】
増幅部40は、第1オペアンプ41、第2オペアンプ42、第3オペアンプ43、および第4オペアンプ44を有する。
第1オペアンプ41は、第1ハーフブリッジ14の中点31から出力される信号を増幅し、+cos信号である出力信号Vx1を制御部50に出力する。第2オペアンプ42は、第2ハーフブリッジ15の中点32から出力される信号を増幅し、+sin信号である出力信号Vy1を制御部50に出力する。第3オペアンプ43は、第3ハーフブリッジ16の中点33から出力される信号を増幅し、−cos信号である出力信号Vx2を制御部50に出力する。第4オペアンプ44は、第4ハーフブリッジ17の中点34から出力される信号を増幅し、−sin信号である出力信号Vy2を制御部50に出力する。
【0023】
回転角検出装置10の電源電圧Vccが5Vである場合、増幅部40にて増幅され、制御部50に出力される4つの出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2は、以下の式(1)〜(4)で表される。
x1= Kcosθ+2.5 …(1)
x2=−Kcosθ+2.5 …(2)
y1= Ksinθ+2.5 …(3)
y2=−Ksinθ+2.5 …(4)
【0024】
以下、cos信号である出力信号Vx1、Vx2を、適宜「(+)cos信号Vx1」、「(−)cos信号Vx2」という。同様に、sin信号である出力信号Vy1、Vy2を、適宜「(+)sin信号Vy1」、「(−)sin信号Vy2」という。
【0025】
制御部50は、通常のマイクロコンピュータによって構成され、ハーフブリッジ14〜17のそれぞれの中点31〜34から出力される出力信号を、ハーフブリッジ14〜17毎に取得する。本実施形態では、ハーフブリッジ14〜17から出力される出力信号は、いずれも別個に増幅部40にて増幅されて制御部50に入力されている。すなわち、本実施形態では、制御部50が出力信号を取得する前の段階において、出力信号同士の加算処理或いは差動増幅処理等がなされていない。また、制御部50は、取得した出力信号に基づき、回転角度算出処理および中間値固着判定処理等の各種演算処理を実行する。
【0026】
ここで、出力信号に異常がない場合の振幅の最大値と最小値との中間値が出力され続ける中間値固着異常が生じている出力信号の判定に係る演算を説明する。中間値固着異常は、例えばオペアンプ41〜44の前後が短絡した場合に生じる。オペアンプ41の前後を例にすると、ハーフブリッジ14およびオペアンプ41の間のA点と、オペアンプ41および制御部50の間のB点とが短絡した場合に、中間値固着異常が生じる。また、センサ素子21〜28の異常により、中間値固着異常が生じることもある。なお、本実施形態では、電源電圧Vccが5Vであるので、中間値固着異常が生じた場合、2.5Vが出力され続ける。
【0027】
本実施形態では、中間値固着異常判定に係り、上記式(1)〜(4)で示す出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に基づき、以下の式(11)〜(16)に示す6つの演算を行い、演算値C1〜C6を算出する。
C1=(Vx1−2.5)+(Vx2−2.5) …(11)
C2=Vx1−2.5 …(12)
C3=Vx2−2.5 …(13)
C4=(Vy1−2.5)+(Vy2−2.5) …(14)
C5=Vy1−2.5 …(15)
C6=Vy2−2.5 …(16)
【0028】
演算値C1〜C6は、出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2のいずれにも中間値固着異常が生じていない場合、以下の値となる。
C1=0 …(21)
C2= Kcosθ …(22)
C3=−Kcosθ …(23)
C4=0 …(24)
C5= Ksinθ …(25)
C6=−Ksinθ …(26)
【0029】
そこで本実施形態では、演算値C1が0を含む第1の所定範囲内である場合、演算値C1は正常値であって、演算値C1の算出に用いた+cos信号Vx1および−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていないと判断する。演算値C1が0を含む第1の所定範囲から外れている場合、演算値C1は異常値であって、演算値C1の算出に用いた+cos信号Vx1または−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていると判断する。
演算値C4が0を含む第2の所定範囲内である場合、演算値C4は正常値であって、演算値C4の算出に用いた+sin信号Vy1および−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていないと判断する。演算値C4が0を含む第2の所定範囲から外れている場合、演算値C4は異常値であって、演算値C4の算出に用いた+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると判断する。
【0030】
中間値固着異常が生じている出力信号の特定方法を図4に示した。図4では、異常値である演算値を「○」で示した。
演算値C1が異常値であって、+cos信号Vx1に中間値固着異常が生じている場合、演算値C2は0となる。そこで、演算値C2が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C2は異常値であって、演算値C2の算出に用いた+cos信号Vx1に中間値固着異常が生じていると特定する。
演算値C1が異常値であって、−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じている場合、演算値C3は0となる。そこで、演算値C3が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C3は異常値であって、演算値C3の算出に用いた−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0031】
演算値C4が異常値であって、+sin信号Vy1に中間値固着異常が生じている場合、演算値C5は0となる。そこで、演算値C5が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C5は異常値であって、演算値C5の算出に用いた+sin信号Vy1に中間値固着異常が生じていると特定する。
演算値C4が異常値であって、−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じている場合、演算値C6は0となる。そこで、演算値C6が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C6は異常値であって、演算値C6の算出に用いた−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0032】
なお、本実施形態では、演算値C1が「第1の値」および「cos信号演算値」に対応し、演算値C4が「第1の値」および「sin信号演算値」に対応している。また、本実施形態では、第1の所定範囲および第2の所定範囲は、同一の範囲とするが、異なる範囲としてもよい。
また本実施形態では、演算値C2、C3、C4、C5が「第2の値」および「出力信号相当値」に対応する。また、演算値C2、C3、C4、C5の異常判定に係る第3の所定範囲の幅は、出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2の振幅Kよりも十分に小さい値である。また、演算値C2、C3、C4、C5の異常判定に係る第3の所定範囲は、演算値毎に異なる範囲としてもよい。また、第3の所定範囲は、第1の所定範囲および第2の所定範囲と同一の範囲であってもよいし、異なる範囲であってもよい。
なお、第1の所定範囲、第2の所定範囲、および第3の所定範囲は、センサ誤差等を考慮し、適宜設定可能である。
【0033】
ここで、中間値固着異常が生じている場合の具体例を図5に基づいて説明する。図5は、+sin信号Vy1に中間値固着異常が生じている場合を説明する図であって、(a)は演算値C4を説明する図であり、(b)は演算値C5を説明する図である。
+sin信号Vy1が2.5V固着となる中間値固着異常が生じている場合、図5(a)に示すように、演算値C4は、−Ksinθとなる。第2の所定範囲の下限値をS1、上限値をS2とすると、演算値C4が下限値S1未満、または、演算値C4が上限値S2より大きい角度範囲において、演算値C4が異常値であると判定され、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると判断することができる。
【0034】
なお、下限値S1および上限値S2の絶対値を出力信号の振幅Kに対して十分に小さい値とすれば、ほとんどの角度範囲において演算値C4が異常値であると判定でき、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると判断することができる。また、演算値C4が0近傍の値である場合、+sin信号Vy1および−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていないと判断されるが、このような角度範囲においては、中間値固着異常が生じていない場合に出力される出力信号と中間値固着異常が生じている場合に出力される出力信号とが略一致しているため、中間値固着異常が生じている出力信号に基づいて被検出部87の回転角度演算がなされたとしても、略正確な回転角度が算出され、電動パワーステアリング装置1の駆動制御上、問題ない。
【0035】
また、+sin信号Vy1が2.5V固着となる中間値固着異常が生じている場合、図5(b)に示すように、演算値C5は、0となる。第3の所定範囲の下限値をS3、上限値をS4とすると、演算値C5は第3の範囲内であるので、演算値C5が異常値であると判定され、演算値C5の算出に用いた+sin信号Vy1に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0036】
ここで、演算値C1〜C6に基づいて中間値固着異常を判定する中間値固着判定処理を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。この処理は、制御部50において、EPS1の動作時に所定の間隔、例えば200μsごと、に行われるものである。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」で示す。)では、4つの出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2を取得する。
S102では、上記式(11)〜(16)の演算を実施し、演算値C1〜C6を算出する。
【0037】
S103では、演算値C1が異常値か否かを判断する。演算値C1が0を含む第1の所定範囲から外れている場合、演算値C1が異常値であると判断する。演算値C1が異常値ではないと判断された場合(S103:NO)、演算値C1の算出に用いた+cos信号Vx1および−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていないと判断し、S108へ移行する。演算値C1が異常値であると判断された場合(S103:YES)、演算値C1の算出に用いた+cos信号Vx1または−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていると判断し、S104へ移行する。
【0038】
S104では、演算値C2が異常値か否かを判断する。演算値C2が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C2が異常値であると判断する。演算値C2が異常値ではないと判断された場合(S104:NO)、S106へ移行する。演算値C2が異常値であると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行する。
S105では、演算値C2の算出に用いた+cos信号Vx1に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0039】
演算値C2が異常値でないと判断された場合(S104:NO)に移行するS106では、演算値C3が異常値か否かを判断する。演算値C3が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C3が異常値であると判断する。演算値C3が異常値でないと判断された場合(S106:NO)、S108へ移行する。演算値C3が異常値であると判断された場合(S106:YES)、S107へ移行する。
S107では、演算値C3の算出に用いた−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0040】
S108では、演算値C4が異常値か否かを判断する。演算値C4が0を含む第2の所定範囲から外れた場合、演算値C4が異常値であると判断する。演算値C4が異常値でないと判断された場合(S108:NO)、演算値C4の算出に用いた+sin信号Vy1および−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていないと判断し、S113へ移行する。演算値C4が異常値であると判断された場合(S108:YES)、演算値C4の算出に用いた+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると判断し、S109へ移行する。
【0041】
S109では、演算値C5が異常値か否かを判断する。演算値C5が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C5が異常値であると判断する。演算値C5が異常値でないと判断された場合(S109:NO)、S111へ移行する。演算値C5が異常値であると判断された場合(S109:YES)、S110へ移行する。
S110では、演算値C5の算出に用いた+sin信号Vy1に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0042】
演算値C5が異常値でないと判断された場合(S109:NO)に移行するS111では、演算値C6が異常値か否かを判断する。演算値C6が0を含む第3の所定範囲内である場合、演算値C6が異常値であると判断する。演算値C6が異常値でないと判断された場合(S111:NO)、S113へ移行する。演算値C6が異常値であると判断された場合(S111:YES)、S112へ移行する。
S112では、演算値C6の算出に用いた−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると特定する。
【0043】
S113では、中間値固着異常が生じている出力信号があるか否かを判断する。中間値固着異常が生じている出力信号があると判断された場合(S113:YES)、S115へ移行する。中間値固着異常が生じている出力信号がないと判断された場合(S113:NO)、S114へ移行する。
S114では、4つの出力信号を用いて被検出部87の回転角度θの角度演算を行う。
S115では、中間値固着異常が生じていると特定された出力信号以外の出力信号を用いて被検出部87の回転角度θの角度演算を行う。
【0044】
ここで、被検出部87の回転角度θの角度演算方法について説明する。
全ての出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に中間値固着が生じていない場合(S113:NO)、4つの出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2を用いて検出部87の回転角度θの角度演算を行う(S114)。全ての出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に中間値固着が生じていない場合、以下の式に示すように、sin信号同士またはcos信号同士を減算することにより、オフセット値を消去する。なお、2つの信号を減算することにより、オフセット値だけでなく、温度特性等による誤差を消去することができる。
x1−Vx2=2Kcosθ …(21)
y1−Vy2=2Ksinθ …(22)
【0045】
被検出部87の回転角度θは、式(21)、(22)を用いて算出されるarctanである角度φに基づいて算出される。角度φから被検出部87の回転角度θを算出する方法については、図7および図8に基づいて後述する。
φ=arctan{(Vy1−Vy2)/(Vx1−Vx2)} …(23)
φ=arctan{(Vx1−Vx2)/(Vy1−Vy2)} …(24)
【0046】
続いて、中間値固着異常が生じている出力信号がある場合(S113:YES)、中間値固着異常が生じている出力信号以外の出力信号を用いて検出部87の回転角度θの角度演算を行う(S115)。ここでは、出力信号Vx1に中間値固着異常が生じている場合を例に説明する。なお、他の出力信号に中間値固着異常が生じている場合も同様にして算出することができる。全ての出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に中間値固着異常が生じていない場合、上述の通り、sin信号同士またはcos信号同士を減算することにより、オフセット値および温度特性等による誤差を消去することができたが、Vx1に中間値固着異常が生じている場合、cos信号同士を減算することによるオフセット値の消去ができない。そこで、中間値固着異常が生じていないcos信号である−cos信号Vx2のオフセット値を制御部50内で消去する。
x2a=Vx2−2.5=−Bcosθ
−2Vx2a=2Bcosθ …(25)
【0047】
被検出部87の回転角度θは、式(22)、(25)を用いて算出されるarctanである角度φに基づいて算出される。
φ=arctan{(Vy1−Vy2)/(−2Vx2a)} …(26)
φ=arctan{(−2Vx2a)/(Vy1−Vy2)} …(27)
【0048】
ここで、sin信号およびcos信号に基づいて算出されたarctanである角度φから被検出部87の回転角度θを算出する方法について、図7および図8に基づいて説明する。図7は、回転角度θの算出に係り、角度範囲が分割されたsin信号およびcos信号を説明する図である。図8は、角度φに基づいて被検出部87の回転角度θを算出する算出方法を説明する図である。なお、図7および図8では、0°〜360°を8つに分割しており、図中の1〜8の数字は、分割された角度範囲であるエリア1〜エリア8を示している。なお、図8中において、sin信号を「Vy」、cos信号を「Vx」と記載した。
【0049】
まず、角度演算に用いるsin信号の振幅とcos信号の振幅とが異なる場合、適宜振幅を合わせておく(例えば式(25)参照)。また、sin信号およびcos信号が−信号である場合、例えば−1等を乗じたりすることにより、+信号となるようにしておく(例えば式(25)参照)。
【0050】
式(23)、(24)、(26)、(27)に示したように、角度φは、sin信号をcos信号で除した値(以下、「tan値」という。)、または、cos信号をsin信号で除した値(以下、「cot値」という。)のarctanとして算出される。sin信号およびcos信号は0となる角度があるので、0で除することを避けるため、sin信号が0となる角度を含む角度範囲においては、cos信号で除するtan値に基づいて角度φを算出し、cos信号が0となる角度を含む角度範囲においては、sin信号で除するcot値に基づいて角度φを算出する。
【0051】
また、回転角度θを0°〜360°とすると、異なる回転角度θでtan値またはcot値が同じになる場合があるので、sin信号の絶対値とcos信号の絶対値との大小関係、sin信号の符号、およびcos信号の符号に基づき、回転角度θの範囲を特定したうえで、tan値またはcot値のarctanに基づき、回転角度θを算出する。
【0052】
具体的には、図7および図8に示すように、振幅を合わせたsin信号の絶対値とcos信号の絶対値の大小関係、sin信号の符号、およびcos信号の符号に基づき、回転角度θが0°〜360°を8つに分割した角度範囲であるエリア1〜エリア8のどこに該当するかを特定する。そして、sin信号の絶対値およびcos信号の絶対値を比較し、絶対値の大きい方が分母となるようにtan値またはcot値を用い、tan値またはcot値のarctanである角度φを算出する。回転角度θが該当するエリア1〜エリア8が特定されているので、図8に示すように、基準となる0°(=360°)、90°、180°、270°に算出された角度φを加算または減算することにより、回転角度θを算出する。
【0053】
以上詳述したように、本実施形態の回転角検出装置10の制御部50は、ハーフブリッジ14〜17から出力される出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2を、ハーフブリッジ14〜17毎に取得する(図6中のS101)。制御部50は、取得された出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2に基づき、被検出部87の回転角度θを算出する(S114、S115)。
制御部50は、取得された出力信号Vx1、Vx2に基づいて算出される演算値C1に基づき、演算値C1の算出に用いた出力信号である出力信号Vx1、Vx2に中間値固着異常が生じているか否かを判断する(S103)。また、制御部50は、取得された出力信号Vy1、Vy2に基づいて算出される演算値C4に基づき、演算値C4の算出に用いた出力信号である出力信号Vy1、Vy2に中間値固着異常が生じているか否かを判断する(S108)。
【0054】
本実施形態では、ハーフブリッジ14〜17から出力される出力信号を、差動増幅等の処理を行うことなくハーフブリッジ14〜17毎に取得しているので、1つの出力信号に異常が生じたとしても他の出力信号を各種演算に用いることができる。また、ハーフブリッジ14〜17毎に取得される出力信号Vx1、Vx2に基づく演算値C1、または、出力信号Vy1、Vy2に基づく演算値C4に基づき、中間値固着異常が生じているか否かを適切に判断することができる。
【0055】
また、制御部50は、取得された出力信号Vx1に基づく値である演算値C2、出力信号Vx2に基づく値である演算値C3、出力信号Vy1に基づく値である演算値C5、および出力信号Vy2に基づく値である演算値C6に基づき、中間値固着異常が生じている出力信号を特定する(S105、S107、S110、S112)。これにより、中間値固着異常が生じた出力信号を適切に特定することができるので、誤った角度演算をしないようにできる。
制御部50は、中間値固着異常が生じていると特定された出力信号以外の出力信号に基づき、被検出部87の回転角度θを算出する(S115)。これにより、誤った角度を算出することなく被検出部87の回転角度θの算出を継続することができる。
【0056】
本実施形態では、制御部50により4つの出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2が取得される。これにより、出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2の一部に異常が生じた場合でも、被検出部87の回転角度θの算出を継続することができる。
また、出力信号Vx1が+cos信号であり、出力信号Vx2が−cos信号であり、出力信号Vy1が+sin信号であり、出力信号Vy2が−sin信号である。これにより、出力信号の一部に異常が生じた場合でも、+cos信号Vx1または−cos信号Vx2のいずれか一方、および、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2のいずれか一方が正常であれば、被検出部87の角度の算出を継続することができる。
【0057】
演算値C1は、+cos信号Vx1および−cos信号Vx2に基づいて算出されるcos信号演算値である。本実施形態では、演算値C1は、+cos信号Vx1および−cos信号Vx2を加算して算出される値であって、+cos信号Vx1および−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていない場合、定数、本実施形態では0、となる。制御部50では、演算値C1が第1の所定範囲から外れた場合、+cos信号Vx1または−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていると判断する(S103:YES)。これにより、+cos信号Vx1または−cos信号Vx2に中間値固着異常が生じていることを簡易な計算で適切に判断することができる。
【0058】
また、演算値C4は、+sin信号Vy1および−sin信号Vy2に基づいて算出されるsin信号演算値である。本実施形態では、演算値C4は、+sin信号Vy1および−sin信号Vy2を加算して算出される値であって、+sin信号Vy1および−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていない場合、定数、本実施形態では0、となる。制御部50では、演算値C4が第2の所定範囲から外れた場合、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていると判断する(S108:YES)。これにより、+sin信号Vy1または−sin信号Vy2に中間値固着異常が生じていることを簡易な計算で適切に判断することができる。
【0059】
演算値C2、C3、C5、C6は、出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2から所定値、本実施形態ではオフセット値である2.5、を減算した値である出力信号相当値である。演算値C2は、出力信号Vx1に中間値固着異常が生じていない場合、+cos信号となり、中間値固着異常が生じている場合、定数、本実施形態では0、となるので、制御部50は、演算値C2が0を含む第3の所定範囲内である場合(S104:YES)、演算値C2に対応する出力信号Vx1に中間値固着異常が生じていると特定する(S105)。演算値C3は、出力信号Vx2に中間値固着異常が生じていない場合、−cos信号となり、中間値固着異常が生じている場合、定数、本実施形態では0、となるので、制御部50は、演算値C3が0を含む第3の所定範囲内である場合(S106:YES)、演算値C3に対応する対応する出力信号Vx2に中間値固着異常が生じていると特定する(S107)。演算値C5は、出力信号Vy1に中間値固着異常が生じていない場合、+sin信号となり、中間値固着異常が生じている場合、定数、本実施形態では0、となるので、制御部50は、演算値C5が0を含む第3の所定範囲内である場合(S109:YES)、演算値C5に対応する出力信号Vy1に中間値固着異常が生じていると特定する(S110)。演算値C6は、出力信号Vy2に中間値固着異常が生じていない場合、−sin信号となり、中間値固着異常が生じている場合、定数、本実施形態では0となるので、制御部50は、演算値C6が0を含む第3の所定範囲内である場合(S111:YES)、演算値C6に対応する出力信号Vy2に中間値固着異常が生じていると特定する(S112)。これにより、中間値固着異常が生じている出力信号を簡易な方法で特定することができる。
【0060】
本実施形態では、上述の通り、6つの演算値C1〜C6に基づいて中間値固着異常が生じているか否かを判断し、中間値固着異常が生じている出力信号を特定している。これにより、比較的少ない演算数で中間値固着異常が生じている出力信号を特定することができる。
【0061】
また、本実施形態では、回転角検出装置10は、電動パワーステアリング装置1に用いられている。本実施形態では、出力信号Vx1、Vx2、Vy1、Vy2のいずれかに中間値固着異常が生じている場合、中間値固着異常が生じていると特定された出力信号以外の出力信号に基づいて被検出部87の回転角度θを算出しているので、出力信号の一部に中間値固着異常が生じたとしても、略正確に被検出部87の回転角度を算出することができ、電動パワーステアリング装置1による操舵のアシストを継続することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、制御部50が「出力信号取得手段」、「回転角度算出手段」、「中間値固着判断手段」、「異常信号特定手段」を構成する。また、図6中のS101が「出力信号取得手段」の機能としての処理に相当し、S114、S115が「回転角度算出手段」の機能としての処理に相当し、S103、S108が「中間値固着判断手段」の機能としての処理に相当し、S105、S106、S110、S112が「異常信号特定手段」の機能としての処理に相当する。
【0063】
(他の実施形態)
(ア)上記実施形態では、第2の値は、出力信号から所定値を減算した値であったが、他の実施形態では出力信号に所定値を加算した値であってもよい。また、第2の値は、出力信号そのものであってもよい。
(イ)上記実施形態では、cos信号およびsin信号の振幅が1であり、増幅部40において加算されるオフセット値は2.5であった。他の実施形態では、制御部50にて出力信号を取得可能な範囲において、振幅およびオフセット値は適宜設定することができる。
また、上記実施形態では、取得される+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号の振幅は等しかったが、他の実施形態では、取得される信号の振幅は、出力信号毎に異なっていてもよい。この場合、それぞれの出力信号の振幅がわかっていれば、制御部において演算処理を行い、振幅を補正することにより、上記実施形態と同様にして中間値固着異常が生じている出力信号を特定することができる。
【0064】
(イ)上記実施形態では、回転角検出装置は増幅部を備えていたが、他の実施形態では、増幅部を省き、それぞれのハーフブリッジから出力される出力信号がそのまま制御部50によって取得されるように構成してもよい。
(ウ)上記実施形態では、2つのブリッジ回路が別々の電源に接続されていたが、他の実施形態では、2つのブリッジ回路が同一の電源に接続されていてもよい。また、一方のブリッジ回路から取得される出力信号が+cos信号および−cos信号であり、他方のブリッジ回路から取得される出力信号が+sin信号および−sin信号であってもよい。
【0065】
(エ)上記実施形態では、ブリッジ回路は2つであったが、他の実施形態では、ブリッジ回路は2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、ハーフブリッジから出力され、制御部にて取得される出力信号は、少なくとも2つの位相の異なる出力信号があれば、いくつであってもよい。さらにまた、1つのハーフブリッジから複数の出力信号を取得してもよい。
【0066】
(オ)上記実施形態では、回転角検出装置を電動パワーステアリング装置に用いたが、これに限らず、他の分野へ適用することはもちろん可能である。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・電動パワーステアリング装置
10・・・回転角検出装置
11・・・第1ブリッジ回路(回路部)
12・・・第2ブリッジ回路(回路部)
14〜17・・・ハーフブリッジ(センサ素子組)
21〜28・・・センサ素子
40・・・増幅部
50・・・制御部(出力信号取得手段、回転角度算出手段、中間値固着判断手段、異常信号特定手段)
80・・・モータ
87・・・被検出部
90・・・ステアリングシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部の回転に応じて変化する回転磁界を感知し前記被検出部の回転角度に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子により構成される複数のセンサ素子組を有する回路部と、
複数の前記センサ素子組から出力される出力信号を前記センサ素子組毎に取得する出力信号取得手段と、
前記出力信号取得手段により取得された前記出力信号に基づき、前記被検出部の回転角度を算出する回転角度算出手段と、
前記出力信号取得手段により取得された前記出力信号に基づいて算出される第1の値に基づき、前記第1の値の算出に用いた前記出力信号において前記出力信号に異常がない場合の振幅の最大値と最小値との中間値が出力され続ける中間値固着異常が生じているか否かを判断する中間値固着判断手段と、
を備えることを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記出力信号取得手段により取得された前記出力信号に基づく値である第2の値に基づき、前記中間値固着異常が生じている前記出力信号を特定する異常信号特定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記回転角度算出手段は、前記異常信号特定手段により前記中間値固着異常が生じていると特定された前記出力信号以外の前記出力信号に基づき、前記被検出部の回転角度を算出することを特徴とする請求項2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記出力信号取得手段に取得される前記出力信号は、4以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記出力信号取得手段により取得される前記出力信号は、+cos信号、−cos信号、+sin信号、および−sin信号を含むことを特徴とする請求項4に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
前記第1の値は、前記+cos信号および前記−cos信号に基づいて算出されるcos信号演算値であり、
前記中間値固着判断手段は、前記cos信号演算値が第1の所定範囲から外れた場合、前記+cos信号または前記−cos信号に前記中間値固着異常が生じていると判断することを特徴とする請求項5に記載の回転角検出装置。
【請求項7】
前記第1の値は、前記+sin信号および前記−sin信号に基づいて算出されるsin信号演算値であり、
前記中間値固着判断手段は、前記sin信号演算値が第2の所定範囲から外れた場合、前記+sin信号または前記−sin信号に前記中間値固着異常が生じていると判断することを特徴とする請求項5または6に記載の回転角検出装置。
【請求項8】
前記第2の値は、前記出力信号そのもの、または、前記出力信号に所定値を加算または減算した値である出力信号相当値であり、
前記異常信号特定手段は、前記出力信号または前記出力信号相当値が第3の所定範囲内である場合、当該出力信号または前記出力信号相当値に対応する前記出力信号に前記中間値固着異常が生じていると特定することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項9】
前記第1の値および前記第2の値は、合わせて6以上であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転角検出装置を用いた電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−98231(P2012−98231A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248123(P2010−248123)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】