説明

回転角検出装置、及びトルクセンサ

【課題】回転体の多回転の絶対回転角を検出することが可能でありながらも、構造の簡素化を図ることのできるトルクセンサを提供する。
【解決手段】このトルクセンサ14では、第1のレゾルバ40を通じて検出されるインプットシャフト20の回転角度と、第2のレゾルバ50を通じて検出されるロアシャフト21の回転角度との差分値に基づいてステアリングホイールに付与された操舵トルクを演算する。ここでは、インプットシャフト20と一体となって回転する太陽歯車61、磁性体により形成されて太陽歯車61の周囲を公転する遊星歯車63、及び遊星歯車63が噛合される内歯車62により構成される遊星歯車機構60を設ける。そして、第1のレゾルバ40から出力される電圧信号に基づいてインプットシャフト20の回転角及び遊星歯車63の位置を検出し、それらに基づいてステアリングホイールの操舵角を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の絶対回転角を多回転においても検出することが可能な回転角検出装置、及びトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操舵系にアシストトルクを付与することにより運転者のステアリング操作を補助する、いわゆるパワーステアリング装置が周知である。そして従来、この種のパワーステアリング装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のパワーステアリング装置は、運転者によるステアリングホイールの操作に基づきステアリングシャフトに付与される操舵トルクを検出するトルクセンサと、ステアリングシャフトにアシストトルクを付与する電動モータとを備えている。このうち、ステアリングシャフトは、ステアリングホイールに連結されるインプットシャフトと、ラック軸などを介して車両の操舵輪に連結されるロアシャフトとがトーションバーを介して互いに連結された構造を有している。トルクセンサは、インプットシャフト及びロアシャフトのそれぞれの回転角を回転角センサを通じて検出し、検出された各シャフトの回転角の差分値に基づいてステアリングシャフトに付与された操舵トルクを検出する。そして、このパワーステアリング装置では、トルクセンサを通じて検出される操舵トルクに基づいて電動モータの駆動量を制御することによって、ステアリングシャフトにアシスト力が付与されるようになっている。
【0003】
また、この特許文献1に記載のパワーステアリング装置では、ロアシャフトの回転数を検出する回転数検出装置を設け、この回転数検出装置を通じて検出されるロアシャフトの回転数と、トルクセンサを通じて検出されるロアシャフトの回転角とに基づいてステアリングホイールの多回転の操舵角を絶対角で検出するようにしている。これにより、トルクセンサを通じて検出されるステアリングホイールの操舵角を利用して、例えばVSC(Vehicle Stability Control)や自動駐車制御などを実行することができるため、利便性が向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−245642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特許文献1に記載のトルクセンサでは、ステアリングホイールの操舵角を検出するために、ロアシャフトの回転数を検出する回転数検出部が必要となる。そしてこのことが、トルクセンサの構造の複雑化を招き、ひいてはコストの増大を招く一つの要因となっていた。
【0006】
なお、このような課題は、ステアリングホイールの操舵角を検出することの可能なトルクセンサに限らず、回転体の多回転の絶対回転角を検出する回転角検出装置に共通する課題である。
【0007】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転体の多回転の絶対回転角を検出することが可能でありながらも、構造の簡素化を図ることのできる回転角検出装置、及びトルクセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転体の回転方向に沿って配設される複数の磁界検出部と、同複数の磁界検出部に付与する磁界を生成する磁界生成部と、前記回転体と一体となって回転する太陽歯車と、前記磁界を変化させ得る部材により形成されて前記太陽歯車の回転に基づきその周囲を公転する遊星歯車と、を備え、前記磁界生成部は、前記回転体の回転に伴い前記複数の磁界検出部に対して相対回転し、前記遊星歯車は、前記複数の磁界検出部の配置に対応した軌道を公転することを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、回転体の回転に伴い太陽歯車が回転すると、太陽歯車の周囲を遊星歯車が公転するため、回転体の回転角に応じて遊星歯車の位置が変化する。よって、遊星歯車の位置から回転体の回転数を特定することが可能である。一方、公転する遊星歯車が複数の磁界検出部のうちのいずれかに接近すると、その磁界検出部に付与される磁界が遊星歯車の影響を受けて変化するため、磁界検出部の出力が変化する。したがって、磁界検出部の出力の変化に基づいて遊星歯車の位置を検出することは可能である。そして、検出された遊星歯車の位置から回転体の回転数を特定すれば、特定された回転体の回転数、並びに磁界検出部の出力に基づいて検出される回転体の回転角を用いて、回転体の多回転の絶対回転角を検出することができる。そしてこれにより、遊星歯車機構を設けるだけで回転体の絶対回転角を検出することができるため、従来の回転角検出装置のように、回転数検出装置を別途設ける場合と比較すると、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0010】
そしてこの場合、前記複数の磁界検出部に対応する遊星歯車の位置を検出する方法としては、請求項2に記載の発明によるように、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力のうちのいずれが異常値を示しているかを特定することで行う、といった構成を採用することが有効であり、これにより遊星歯車の位置を容易に検出することができるようになる。
【0011】
さらにこの場合、回転体の回転角を検出する方法としては、請求項3に記載の発明によるように、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力に基づいて前記回転体の回転角を複数演算し、それら複数の演算結果の多数決をとることに基づいて行う、といった方法を採用することが有効であり、これにより回転体の回転角を容易に検出することができるようになる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転角検出装置において、前記回転体の回転角の検出が、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力のうちのいずれか2つの組み合わせに基づいて行われるものであって、前記磁界検出部が、5つ以上設けられていることを要旨とする。
【0013】
このような回転角検出装置では、例えば2つの磁界検出部が近接して配置されているような場合、これら2つの磁界検出部に遊星歯車が近接すると、2つの磁界検出部の出力が変化してしまう。ここで、例えばレゾルバなどのように、複数の磁界検出部のそれぞれの出力のうちのいずれか2つの組み合わせから回転体の回転角を演算することが可能な回転角検出装置では、磁界検出部の数が4つ以下である場合、2つの磁界検出部の出力が異常値を示すと、磁界検出部の出力に基づき演算される回転体の回転角が正常値となるものが全くないか、あっても1つだけとなるため、多数決をとることができない。したがって、複数の演算結果の多数決に基づき回転体の回転角を検出するためには、上記構成によるように、磁界検出部を5つ以上設けることが有効となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転角検出装置において、前記遊星歯車を公転運動可能に支持するハウジングと、前記太陽歯車を囲繞するように設けられて前記遊星歯車が噛合される内歯車と、を更に備え、前記遊星歯車は、前記ハウジングと前記太陽歯車との間、並びに前記ハウジングと前記内歯車との間で挟持されていることを要旨とする。
【0015】
同構成によるように、ハウジングと太陽歯車との間、並びにハウジングと内歯車との間で遊星歯車を挟持することとすれば、遊星歯車を支持するための部材を別途設けることなく、遊星歯車を簡単且つ的確に支持することができるため、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、第1の回転体の回転角を検出する第1の回転角検出装置と、前記第1の回転体とトーションバーを介して同一軸線上に連結される第2の回転体の回転角を検出する第2の回転角検出装置と、を備え、前記第1の回転体の回転角及び前記第2の回転体の回転角の差分に基づいて前記第1の回転体に付与されるトルクを検出するトルクセンサにおいて、前記第1の回転角検出装置として請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転角検出装置を用いることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、トルクセンサを通じて、回転体に付与されるトルクと共に、回転体の絶対回転角を検出することが可能となるため、利便性が大幅に向上するようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる回転角検出装置、及びトルクセンサによれば、回転体の多回転の絶対回転角を検出することが可能でありながらも、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両の電動パワーステアリング装置の概要を示すブロック図。
【図2】本発明にかかるトルクセンサの一実施形態についてその断面構造を示す断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った部分断面構造を示す断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】図2のC−C線に沿った断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態のトルクセンサについてその組み立て方法を示す断面図。
【図7】同実施形態のトルクセンサに設けられた第1のレゾルバの出力例を示す図表。
【図8】同実施形態のトルクセンサに設けられた第1のレゾルバの出力例を示す図表。
【図9】同実施形態のトルクセンサによるステアリングホイールの操舵角を演算する処理の手順を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかるトルクセンサの他の例について第1のレゾルバの出力例を示す図表。
【図11】本発明にかかるトルクセンサの他の例についてその断面構造を示す断面図。
【図12】本発明にかかるトルクセンサの他の例についてその断面構造を示す断面図。
【図13】本発明にかかる回転角検出装置の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかるトルクセンサを車両の電動パワーステアリング装置のトルクセンサに適用した一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。はじめに、図1を参照して、本実施形態の車両の電動パワーステアリング装置の概要について説明する。
【0021】
図1に示すように、この車両では、ステアリングホイール1が運転者により操作されると、ステアリングホイール1に付与された操舵力に基づいてステアリングシャフト2が回転する。なお、ステアリングシャフト2は、コラムシャフト3、インターミディエイトシャフト4、及びピニオンシャフト5を連結してなる。そして、ステアリングシャフト2の回転はラックアンドピニオン機構6を介してラック軸7の往復直線運動に変換され、このラック軸7の往復直線運動がその両端に連結されたタイロッド8を介して転舵輪9に伝達されることにより、転舵輪9の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0022】
こうした車両において、本実施形態の電動パワーステアリング装置10は、電動モータ11が減速機構12を介してコラムシャフト3に連結された構造を有している。そして、この電動パワーステアリング装置10は、電動モータ11の回転を減速機構12により減速してコラムシャフト3に伝達することにより、モータトルクをアシスト力として操舵系に付与する。
【0023】
また、この車両には、車両の状態やステアリングホイール1の操作量を検出する各種センサが設けられている。例えば車両には、車速を検出する車速センサ13が設けられている。また、ステアリングシャフト2には、同シャフト2に働くトルク、すなわち運転者からステアリングホイール1に付与される操舵トルクを検出するトルクセンサ14が設けられている。このトルクセンサ14は、ステアリングシャフト2の多回転の絶対回転角、すなわちステアリングホイール1の操舵角を検出する部分でもある。そして、これら各センサ13,14の出力は、マイクロコンピュータを中心に構成されて電動モータ11の駆動を統括的に制御する制御装置15に入力される。この制御装置15は、各センサを通じて検出される車速、及び操舵トルクに基づいて運転者の操舵トルクの目標値である目標トルクを算出し、トルクセンサ14により検出される操舵トルクが目標トルクとなるように電動モータ11に流される電流をフィードバック制御する。
【0024】
次に、図2を参照して、トルクセンサ14の構造について詳述する。
図2に示すように、トルクセンサ14が取り付けられるコラムシャフト3は、第1の回転体としてのインプットシャフト20、及び第2の回転体としてのロアシャフト21がトーションバー22を介して互いに同一軸線上に連結された構造を有している。このうち、インプットシャフト20は、ハウジング30の上部に設けられた軸受け80によって回転可能に支持されており、その上端部がステアリングホイール1に連結されている。また、ロアシャフト21は、ハウジング30の下部に設けられた軸受け81によって回転可能に支持されており、その下端部がインターミディエイトシャフト4に連結されている。これにより、運転者によってステアリングホイール1に付与された操舵力がインプットシャフト20に伝達されると、その操舵トルクがトーションバー22を介してロアシャフト21に伝達される際にトーションバー22にねじれ変形が生じる。すなわち、インプットシャフト20とロアシャフト21との間に操舵トルクに応じた回転角度差が生じるようになっている。
【0025】
また、ハウジング30は、軸受け80が設けられて下方側が開口された箱状の第1のハウジング31と、軸受け81が設けられて第1のハウジング31の開口部分を閉塞する第2のハウジング32とから構成されている。このように、ハウジング30を2つの部分からなる分割体として構成することにより、その組み付けに際しての利便性が高められている。このハウジング30の内部にはトルクセンサ14が収容され、トルクセンサ14は、インプットシャフト20の回転角度を検出する第1の回転角検出装置としての第1のレゾルバ40、及びロアシャフト21の回転角度を検出する第2の回転角検出装置としての第2のレゾルバ50を備えている。
【0026】
このうち、第1のレゾルバ40は、インプットシャフト20の下端部に固定されて同インプットシャフト20と一体回転するロータ41と、ハウジング30に固定されてロータ41を囲繞する環状のステータ42とから構成されている。このうち、ロータ41は磁性体からなるものであって、図3に示すように、その外周面に5つの突出部が形成されている。すなわち、第1のレゾルバ40は、その軸倍角が「5X」に設定されている。なお、図3では、便宜上、ハウジング30の図示を割愛している。一方、ステータ42は、磁性体により形成されてロータ41に対向するようにして12個のティースT1〜T12が「30°」の角度間隔を隔てて設けられたステータコア44、及びこれらティースT1〜T12に巻回された以下の(a1)〜(a7)に示す励磁巻線We、並びに6本の出力巻線W1〜W6から構成されている。
【0027】
(a1)全てのティースT1〜T12に巻回される励磁巻線We。
(a2)ティースT1、及びこれに対向するT7に巻回される第1の出力巻線W1。
(a3)ティースT2、及びこれに対向するT8に巻回される第2の出力巻線W2。
【0028】
(a4)ティースT5、及びこれに対向するT11に巻回される第3の出力巻線W3。
(a5)ティースT6、及びこれに対向するT12に巻回される第4の出力巻線W4。
(a6)ティースT9、及びこれに対向するT3に巻回される第5の出力巻線W5。
【0029】
(a7)ティースT10、及びこれに対向するT4に巻回される第6の出力巻線W6。
そして、この第1のレゾルバ40では、励磁巻線Weに励磁電圧Ve(=E×sin(ωt))が印加されることにより、励磁巻線Weから出力巻線W1〜W6に交番磁界がそれぞれ付与される(但し、「E」は振幅、「ω」は角周波数、「t」は時刻を示す)。一方、ロータ41が回転すると、ロータ41の突出部の位置に応じてロータ41と各ティースT1〜T12の距離が変化するため、励磁巻線Weから各出力巻線W1〜W6に付与される磁界が変化する。これにより、出力巻線W1〜W6から、ロータ41の回転角(電気角)θeに応じた以下の(b1)〜(b6)に示す電圧信号V1〜V6がそれぞれ出力される。なお、「K」は変圧比を示す。
【0030】
(b1)第1の出力巻線W1から電圧信号V1(=Ve×K×sin(θe))が出力される。
(b2)第2の出力巻線W2から電圧信号V2(=Ve×K×sin(θe+30°))が出力される。
【0031】
(b3)第3の出力巻線W3から電圧信号V3(=Ve×K×sin(θe+120°))が出力される。
(b4)第4の出力巻線W4から電圧信号V4(=Ve×K×sin(θe+150°))が出力される。
【0032】
(b5)第5の出力巻線W5から電圧信号V5(=Ve×K×sin(θe+240°))が出力される。
(b6)第6の出力巻線W6から電圧信号V6(=Ve×K×sin(θe+270°))が出力される。
【0033】
このように、第1のレゾルバ40では、励磁巻線We及びロータ41が磁界生成部となるとともに、第1〜第6の出力巻線W1〜W6が磁界検出部となっている。そして、第1のレゾルバ40から出力される6相の電圧信号V1〜V6は、上記制御装置15に取り込まれている。
【0034】
一方、図2に示すように、ロアシャフト21の上端部には、その回転角度を検出する第2のレゾルバ50が設けられている。この第2のレゾルバ50は、ロアシャフト21の上端部に固定されて同ロアシャフト21と一体回転するロータ51と、ハウジング30に固定されてロータ51を囲繞する環状のステータ52とから構成されている。この第2のレゾルバ50は、基本的には上記第1のレゾルバ40と同様の構造を有しているため、その詳細な説明は割愛する。なお、第2のレゾルバ50の軸倍角は「4X」に設定されている。そして、この第2のレゾルバ50から出力される電圧信号も、上記制御装置15に取り込まれている。
【0035】
また一方、第1のレゾルバ40の上部には、遊星歯車機構60が設けられている。図4に示すように、遊星歯車機構60は、インプットシャフト20に固定されて同シャフト20と一体回転する太陽歯車61と、太陽歯車61を囲繞するように設けられてハウジング30(図示略)の内部に固定された内歯車62と、太陽歯車61及び内歯車62に噛合された遊星歯車63とから構成されている。なお、図4では、便宜上、ハウジング30の図示を割愛している。各歯車61〜63はかさ歯車からなるものであって、このうち、太陽歯車61は、図2に示すように、歯の形成された外周部分が第1のレゾルバ40側ほど拡径された形状を有している。また、内歯車62は、歯の形成された内周部分が第1のレゾルバ40側ほど縮径された形状を有している。これにより、太陽歯車61と内歯車62との間の隙間は、第1のレゾルバ40側ほど狭くなっている。そして、これら太陽歯車61及び内歯車62に対し、遊星歯車63が先端部を下方に向けた状態で噛合されることによって、遊星歯車63の第1のレゾルバ40側への移動が規制されている。なお、太陽歯車61及び内歯車62は、非磁性体により形成されている。一方、遊星歯車63は、基本的には磁性体により形成されており、その歯の形成されている部分のみが樹脂成形されている。そしてこのように、遊星歯車63の歯の形成されている部分を樹脂成形することにより、遊星歯車63と太陽歯車61との間、並びに遊星歯車63と内歯車62の間での異音の発生が抑制されている。一方、遊星歯車63の上面には、ハウジング30の内壁面に形成された溝部33に挿入される軸部63aが設けられている。図5に示すように、溝部33は遊星歯車63の公転軌道に沿って円形状に形成されている。これにより、遊星歯車63は、溝部33によって太陽歯車61の周囲を公転運動可能に支持されている。なお、この遊星歯車機構60では、太陽歯車61の歯数が「40」に、内歯車の歯数が「50」に設定されることにより、太陽歯車61が1回転する間に、すなわちインプットシャフト20が1回転する間に、遊星歯車63が太陽歯車61の周囲を4/9(=50/(50+40))回転するように設定されている。このような構造からなる遊星歯車機構60によれば、遊星歯車63をハウジング30と太陽歯車61との間、並びにハウジング30と内歯車62との間で挟持することができるため、別途の支持構造を設けることなく、遊星歯車63を簡単且つ的確に支持することができる。
【0036】
なお、図2に示すように、第1のレゾルバ40のステータ42と第2のレゾルバ50のステータ52との間、並びに第2のレゾルバ50のステータ52と第2のハウジング32との間には、ステータ42,52の軸方向への移動を規制するための円環状のストッパ70,71がそれぞれ設けられている。
【0037】
トルクセンサ14のこのような構造によれば、図6に示すように、その組み立ての際に、第1のハウジング31の開口部分を上方に向けた状態で、その開口部分から遊星歯車機構60や第1のレゾルバ40などを順次第1のハウジング31の内部に収容すれば、各構成要素を第1のハウジング31に容易に組み付けることができる。このため、トルクセンサ14の組み立てが容易となる。
【0038】
一方、制御装置15は、第1のレゾルバ40から出力される電圧信号V1〜V6のうちのいずれか2つの電圧信号の値に基づいて周知の逆正接値演算を行うことにより、ロータ41の回転角(電気角)、換言すればインプットシャフト20の回転角(電気角)θesを求める。また、制御装置15は、第2のレゾルバ50から出力される電圧信号に基づいて同様に逆正接値演算を行うことにより、ロアシャフト21の回転角(電気角)θepも求める。そして、制御装置15は、インプットシャフト20の回転角θes及びロアシャフト21の回転角θepの差分値を演算し、演算された差分値にトーションバー22のばね定数を積算することにより操舵トルクを求める。
【0039】
また、制御装置15は、第1のレゾルバ40から出力される電圧信号V1〜V6に基づいてインプットシャフト20の絶対回転角θeaを検出することにより、ステアリングホイール1の操舵角を求める。このように、本実施形態では、制御装置15が、ステアリングホイール1の操舵角を検出する回転角検出手段となっている。
【0040】
次に、インプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaの検出原理について、先の図3、図4、及び図7を参照して説明する。なおここでは、ステアリングホイール1が中立位置に位置しているときに遊星歯車63が図4の二点鎖線の位置に位置しているとする。そして、図4では、遊星歯車63が図中の二点鎖線の位置を基準位置として矢印aで示す方向へ公転したとき、公転軸と基準位置における遊星歯車63の中心とを結ぶ直線(図中の破線)に対して、公転軸と公転位置における遊星歯車63の中心とを結ぶ直線がなす角度(公転角)をθpで示している。また、ステアリングホイール1が中立位置であるときのインプットシャフト20の位置を基準位置として、この基準位置から矢印aで示す方向へのインプットシャフト20の絶対回転角(電気角)をθeaで示している。さらに、図3では、ステアリングホイール1が中立位置であるときのロータ41の位置を基準位置として、この基準位置から矢印aで示す方向へのロータ41の回転角をθeで示している。また、図3及び図4では、遊星歯車63の公転運動の軌跡(より詳細にはその中心軸mの軌跡)を一点鎖線で示している。
【0041】
例えば運転者によってステアリングホイール1が「202.5°」だけ回転操作されたとすると、インプットシャフト20も絶対角(機械角)で「202.5°」だけ回転する。この場合、図4に示すように、遊星歯車63の公転角θpは「90°(=202.5°×4/9)」となるため、図3に二点鎖線で示すように、遊星歯車63がティースT4に近接する。よって、第6の出力巻線W6に付与される磁界が遊星歯車63の影響を受けて変化する。具体的には、第6の出力巻線W6の周辺の磁路が増加するため、第6の出力巻線W6に付与される磁束が増加し、第6の出力巻線W6における磁気抵抗が減少する。したがって、第6の出力巻線W6から出力される電圧信号V6の大きさが先の(b6)に示した通常の電圧信号よりも大きくなり、電圧信号V6が異常値を示すようになる。
【0042】
そこで、制御装置15では、第1〜第6の出力巻線W1〜W6の電圧信号V1〜V6の大きさと予め定められた閾値とを比較することで、異常な電圧信号を出力している出力巻線を特定し、特定された出力巻線が巻回されているティースに対応する位置に遊星歯車63が位置していると判断するようにしている。このような判断方法により、制御装置15は、例えば第6の出力巻線W6から出力される電圧信号が閾値よりも大きい場合には、遊星歯車63の公転角θpがティースT4に対応する「90°」、あるいはティースT10に対応する「270°」であると判断する。
【0043】
一方、インプットシャフト20が絶対角(機械角)で「202.5°」だけ回転したとすると、第1のレゾルバ40では、図3に示すロータ41の回転角(電気角)θeが「1012.5(=202.5°×5)」となる。よって、第1のレゾルバ40の電圧信号V1〜V6のうちのいずれか2つの組み合わせから演算されるインプットシャフト20の回転角(電気角)θesは、通常であれば、「292.5°(=1012°−360×2°)」となるはずである。しかしながら、第6の出力巻線W6から出力される電圧信号V6が異常である場合、この電圧信号V6との組み合わせから演算される回転角θesだけが異常な角度となる。したがって、図7に示すように、電圧信号V1〜V6から演算可能な15個の回転角θesのうち、電圧信号V6との組み合わせから演算される5個の回転角θesだけが「292.5°」と異なる角度となる。そこで、制御装置15では、第1のレゾルバ40の電圧信号V1〜V6から演算される15個の回転角θesの多数決をとることで、インプットシャフト20の正しい回転角θesを検出することとしている。すなわち、図7に示すような15個の回転角θesが演算された場合には、「292.5°」を示すものが10個、それ以外の角度を示すものが5個となるため、インプットシャフト20の回転角θesは「292.5°」であると判断する。
【0044】
なお、例えば遊星歯車63の公転角(機械角)θpが「105°」である場合、すなわち遊星歯車63がティースT4とティースT5との間に位置している場合には、遊星歯車63が第6の出力巻線W6ばかりでなく、第3の出力巻線W3にも近接するため、電圧信号V3及びV6が異常値を示す。この場合、図8に示すように、制御装置15により演算される15個の回転角θesのうち、電圧信号V3及びV6の組み合わせから演算される9個の回転角がそれぞれ異なる異常値a〜iとなり、残りの6個の回転角が正常値となる。このため、多数決をとれば、同様にインプットシャフト20の回転角θesを検出することが可能である。
【0045】
以上のような判断方法により、制御装置15は、遊星歯車63の公転角θpが機械角で「90°」、あるいは「270°」であること、並びにインプットシャフト20の回転角(電気角)θesが「292.5°」であることを検出する。そして、制御装置15は、これらの検出結果から多回転を含むインプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaを次のように演算する。
【0046】
まず、インプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θea、多数決により検出されるインプットシャフト20の回転角(電気角)θes、及び遊星歯車63の公転角(機械角)θpとの間には、以下の式(1)のような関係式が成立する。なお、「Np」はインプットシャフト20が一回転する間に遊星歯車63が公転する回転数を示すとともに、「Ax」は第1のレゾルバ40の軸倍角を示す。
【0047】
θp=θea×Np/Ax
=(θes+360°×n)×4/45・・・(1)
但し、nは整数を示す。
【0048】
そして、制御装置15は、「n」の値を順次変更しながら、遊星歯車63の公転角(機械角)θpが「90°−Δθ≦θp≦90°+Δθ」あるいは「270°−Δθ≦θp≦270°+Δθ」となる「n」を求める。なお、「Δθ」は、出力巻線W1〜W6から出力される電圧信号V1〜V6が閾値を超えると想定される角度範囲として予め設定された定数であり、本実施形態では、「7.5°」が採用される。これにより、遊星歯車63の公転角(機械角)θpは、例えば以下の(c1)及び(c2)の演算を経て特定される。
【0049】
(c1)n=1であるとき。
θp=(292.5+360°×1)×4/45=58°
(c2)n=2であるとき。
【0050】
θp=(292.5+360°×2)×4/45=90°
そして、(c2)の演算を行った時点で、演算された公転角(機械角)θpが「90°−Δθ≦θp≦90°+Δθ」を満たすため、この式(c2)の演算結果から「n=2」であることがわかる。すなわち、インプットシャフト20が電気角の位相で2周期だけ回転していること、換言すればインプットシャフト20の回転数が「0.4(=2/5)」であることがわかる。これにより、制御装置15は、インプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaが「1012.5(=292.5+360°×2)」であることを検出する。
【0051】
図9は、こうしたインプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaの検出方法のもとに制御装置15を通じてステアリングホイール1の操舵角を演算する処理をフローチャートとして示したものであり、以下、この図9を参照して第1のレゾルバ40の動作例(作用)について説明する。なお、この図9に示す処理は、実際には所定の演算周期をもって繰り返し実行される。
【0052】
図9に示すように、この処理では、まず、第1のレゾルバ40から出力される電圧信号V1〜V6と所定の閾値とをそれぞれ比較することで電圧信号V1〜V6のいずれが異常値を示しているかが特定されて(ステップS1)、その結果から遊星歯車63の公転角(機械角)θpが検出される(ステップS2)。次いで、電圧信号V1〜V6のうちのいずれか2つの組み合わせから15個のロータ41の回転角(電気角)θesがそれぞれ演算され(ステップS3)、演算された15個のロータ41の回転角(電気角)θesの多数決をとることで、インプットシャフト20の回転角(電気角)θesが検出される(ステップS4)。次いで、検出された遊星歯車63の公転角(機械角)θp、及びインプットシャフト20の回転角(電気角)θesに基づいてその絶対回転角(電気角)θeaが演算される(ステップS5)。具体的には、先の式(1)を満たす「n」を検索することでインプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaが演算される。そして、演算されたインプットシャフト20の絶対回転角(電気角)θeaから第1のレゾルバ40の軸倍角に基づいてステアリングホイール1の操舵角(機械角)が演算される(ステップS6)。
【0053】
このようなトルクセンサ14によれば、第1のレゾルバ40に遊星歯車機構60を設けるだけでステアリングホイール1の操舵角を検出することができるため、インプットシャフト20の回転数を検出する回転数検出装置を別途設ける場合と比較すると、構造の簡素化を図ることができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかるトルクセンサによれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)第1のレゾルバ40には、インプットシャフト20と一体となって回転する太陽歯車61、同太陽歯車61の回転に基づきその周囲を公転する磁性体からなる遊星歯車63、及び遊星歯車63に噛合される内歯車62により構成される遊星歯車機構60を設けることとした。また、第1のレゾルバ40に設けられた第1〜第6の出力巻線W1〜W6から出力される電圧信号V1〜V6に基づいてインプットシャフト20の回転角θes及び遊星歯車63の公転角θpをそれぞれ検出するようにした。そして、インプットシャフト20の回転角θes及び遊星歯車63の公転角θpに基づいてインプットシャフト20の絶対回転角θeaを演算し、その演算結果からステアリングホイール1の操舵角を求めることとした。これにより、第1のレゾルバ40に遊星歯車機構60を設けるだけでステアリングホイール1の操舵角を検出することができるため、インプットシャフト20の回転数を検出するための回転数検出装置を別途設ける場合と比較すると、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0055】
(2)遊星歯車の公転角θpの検出を、第1のレゾルバ40の第1〜第6の出力巻線W1〜W6から出力される電圧信号V1〜V6のうちのいずれが異常値を示しているかを特定することで行うこととした。これにより、遊星歯車63の公転角θpを容易に検出することができるようになる。
【0056】
(3)インプットシャフト20の回転角θesの検出を、第1のレゾルバ40から出力される電圧信号V1〜V6のうちのいずれか2つの組み合わせからインプットシャフト20の回転角θesを複数演算し、その複数の演算結果の多数決をとることにより行うこととした。これにより、インプットシャフト20の回転角θesを容易に検出することができるようになる。
【0057】
(4)遊星歯車63を、ハウジング30と太陽歯車61の間、並びにハウジング30と内歯車62との間で挟持することとした。これにより、遊星歯車63を支持するための部材を別途設けることなく、遊星歯車63を簡単且つ的確に支持することができるため、構造の簡素化を図ることができるようになる。
【0058】
(5)トルクセンサ14に設けられた第1のレゾルバ40を通じてステアリングホイール1の操舵角を検出することとした。これにより、ステアリングホイール1の操舵角を検出するセンサを別途設ける必要がなくなるため、利便性が大幅に向上するようになる。
【0059】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、第1のレゾルバ40が6相の電圧信号を出力するものであったが、電圧信号の出力数については適宜変更可能である。但し、第1のレゾルバ40が4相以下の出力である場合には、次のことが懸念される。例えば第1のレゾルバ40が4相の電圧信号V10〜V13を出力する構造を有しているとするときに、2つのティース間に遊星歯車63が位置するなどして、それらうちの2つの電圧信号V12及びV13が異常値を示したとする。この場合、図10に示すように、4相の電圧信号V10〜V13のうちのいずれか2つの組み合わせから演算可能な6個の回転角θesのうち、演算結果が異常値b1〜b5を示すものが5つとなり、正常値となるものが1つだけとなってしまう。このため、演算結果の多数決をとるといった方法ではロータ41の回転角θesを特定することができないおそれがある。また、第1のレゾルバ40が3相出力の構造である場合には、それらのうちの2つの電圧信号が異常値を示すと、演算結果が正常値を示すものが無くなるため、同様にロータ41の回転角θesを特定することができないおそれがある。このため、第1のレゾルバ40の電圧信号の出力数については5相以上であることが望ましい。なお、第1のレゾルバ40が3相出力あるいは4相出力の構造を有している場合でも、例えば各出力巻線を離間して配置するなどすれば、遊星歯車63が2つの出力巻線に影響を及ぼすような状況を回避することが可能である。したがって、このような構造であれば、演算結果の多数決をとるといった方法でロータ41の回転角θesを特定することが可能である。
【0060】
・第1のレゾルバ40の軸倍角を適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、遊星歯車機構60の各歯車61〜63がかさ歯車からなるものであったが、図11に示すように、各歯車61〜63が平歯車であってもよい。この場合、図中に示すように、遊星歯車63の歯の形成されている部分と軸部63aとの間にフランジ部63bを設けることが有効である。これにより、フランジ部63bによって遊星歯車63の第1のレゾルバ40側への移動が規制されるため、遊星歯車63の位置を的確に保持することができる。
【0061】
・上記実施形態では、ハウジング30の内部に内歯車62を固定し、この内歯車62に遊星歯車63を噛合させることとしたが、内歯車62についてはこれを外歯車に代えることも可能である。また、遊星歯車を遊星キャリアにより自転及び公転可能に支持してもよい。具体的には、図12に示すように、遊星歯車63の軸部63aには、外歯を形成する。また、ハウジング30の内壁において太陽歯車61の上方にあたる部分には、遊星歯車63の軸部63aに形成された外歯に噛合される外歯車64を固定する。なお、この外歯車64の中央部には挿通孔64aを形成し、この挿通孔64aにインプットシャフト20を挿通させる。一方、太陽歯車61の下方には、軸受け82を介してインプットシャフト21に支持される遊星キャリア65を設け、この遊星キャリア65により遊星歯車63を自転及び公転運動可能に支持する。このような構成であっても、インプットシャフト20の回転に伴い遊星歯車63を公転させることができるため、上記実施形態に準じた効果を得ることが可能である。
【0062】
・上記実施形態では、遊星歯車63の公転位置を、対向する2つのティースのうちのいずれかの位置というかたちで検出、換言すれば遊星歯車63の公転位置として候補となる2つの位置を検出した上で、上記(c1)及び(c2)に例示した演算を通じてインプットシャフト20の絶対回転角θeaを検出することとした。これに代えて、遊星歯車63の公転位置が、対向する2つのティースのうちのいずれの位置であるかを更に特定してもよい。具体的には、先の図3に示すように、遊星歯車63が第1の出力巻線W1に近接している状況としては、遊星歯車63がティースT1に近接している状況と、ティースT7に近接している状況の2つの状況が想定されるが、これら2つの状況では、ロータ41の回転角θeが異なるため、第1の出力巻線W1から出力される電圧信号V1の大きさが異なる。これを利用すれば、例えば遊星歯車63が近接する出力巻線を特定したときに、その特定された出力巻線から出力される電圧信号の大きさに基づいて、対向する2つのティースのうちのいずれに遊星歯車63が位置しているかを特定することができる。このようにして遊星歯車63の位置を特定することとすれば、より正確にインプットシャフト20の絶対回転角θeaを検出することが可能となる。
【0063】
・上記実施形態では、遊星歯車機構60の各歯車61〜63をかさ歯車とするとともに、ハウジング30に形成された溝部33に遊星歯車63の軸部63aを挿入することで、遊星歯車63を保持することとした。このようなハウジング30の溝部33による遊星歯車63の保持に代えて、例えば遊星歯車63とは別に、非磁性体からなる新たな遊星歯車を太陽歯車61及び内歯車62に噛合させた上で、この新たな遊星歯車と遊星歯車63とを遊星キャリアにより連結することで、遊星歯車63を支持してもよい。
【0064】
・上記実施形態では、遊星歯車63を磁性体により形成することとしたが、これに代えて、磁気を遮蔽する部材、例えばアルミニウムなどにより形成してもよい。要は、遊星歯車63が、励磁巻線Weにより形成される磁界を変化させる部材により形成されていればよい。
【0065】
・上記実施形態では、インプットシャフト20が1回転する間に遊星歯車63が太陽歯車61の周囲を4/9回転する構造を採用することとしたが、遊星歯車63の回転数については適宜変更可能である。要は、インプットシャフト20が1回転する間に遊星歯車63が太陽歯車61の周囲を非整数回だけ回転する構造であれば、遊星歯車63の公転角に基づいてインプットシャフト20の絶対回転角を検出することが可能である。
【0066】
・上記実施形態では、本発明にかかるトルクセンサを、車両の電動パワーステアリング装置に適用することとしたが、本発明は、トルクセンサを具備する任意の装置に適用することが可能である。また、トルクセンサに限らず、回転体の回転角を検出するレゾルバであれば、本発明を適用することが可能である。
【0067】
・上記実施形態では、本発明にかかる回転角検出装置をレゾルバに適用することとしたが、例えばホール素子や磁気抵抗素子などを利用して回転体の回転角を検出する回転角検出装置など、適宜の回転角検出装置に適用することが可能である。図13に、ホール素子を利用した回転角検出装置の一例を示す。図13に示すように、この回転角検出装置は、その軸倍角が「5X」に設定された装置であって、インプットシャフト20と一体回転する10極磁石からなるロータ90と、ハウジング30に固定されてロータ90を囲繞するステータ91とを備えている。このうち、ステータ91の内壁には、ロータ90の周方向に沿って等間隔に6つのホール素子92a〜92fが取り付けられている。そして、この回転角検出装置は、ホール素子92a〜92fの出力に基づいてロータ90の回転角(電気角)、換言すればインプットシャフト20の回転角(電気角)を検出する。このような回転角検出装置についても、上述した遊星歯車機構60を設ければ、ロータ90が回転するときに、図中に一点鎖線で示すように、ロータ90及びホール素子92a〜92fの近傍にて遊星歯車63を公転させることができるため、ホール素子91a〜91fの出力に基づいてインプットシャフト20の多回転の絶対回転角を求めることが可能である。すなわち、上記実施形態に準じた効果を得ることが可能である。要は、回転体の回転方向に沿って配設される複数の磁界検出部と、これら複数の磁界検出部に付与する磁界を生成する磁界生成部とを有して、回転体の回転に伴い磁界に生じる変化を磁界検出部を通じて検出することにより回転体の回転角を検出する回転角検出装置であれば、本発明にかかる回転角検出装置を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
T1〜T9…ティース、W1〜W6…出力巻線、We…励磁巻線、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、3…コラムシャフト、4…インターミディエイトシャフト、5…ピニオンシャフト、6…ラックピニオン機構、7…ラック軸、8…タイロッド、9…転舵輪、10…電動パワーステアリング装置、11…電動モータ、12…減速機構、13…車速センサ、14…トルクセンサ、15…制御装置、20…インプットシャフト、21…ロアシャフト、22…トーションバー、30…ハウジング、31…第1のハウジング、32…第2のハウジング、33…溝部、40…第1のレゾルバ、41,51,90…ロータ、42,52,91…ステータ、44…ステータコア、50…第2のレゾルバ、60…遊星歯車機構、61…太陽歯車、62…内歯車、63…遊星歯車、63a…軸部、63b…フランジ部、64…外歯車、64a…挿通孔、65…遊星キャリア、70,71…ストッパ、80,81,82…軸受け、91a〜91f…ホール素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転方向に沿って配設される複数の磁界検出部と、
同複数の磁界検出部に付与する磁界を生成する磁界生成部と、
前記回転体と一体となって回転する太陽歯車と、
前記磁界を変化させ得る部材により形成されて前記太陽歯車の回転に基づきその周囲を公転する遊星歯車と、を備え、
前記磁界生成部は、前記回転体の回転に伴い前記複数の磁界検出部に対して相対回転し、
前記遊星歯車は、前記複数の磁界検出部の配置に対応した軌道を公転する
ことを特徴とする回転角検出装置。
【請求項2】
前記複数の磁界検出部に対する前記遊星歯車の位置の検出が、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力のうちのいずれが異常値を示しているかを特定することで行われる
請求項1に記載の回転角検出装置。
【請求項3】
前記回転体の回転角の検出が、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力に基づいて前記回転体の回転角を複数演算し、それら複数の演算結果の多数決をとることに基づいて行われる
請求項1又は2に記載の回転角検出装置。
【請求項4】
前記回転体の回転角の検出が、前記複数の磁界検出部のそれぞれの出力のうちのいずれか2つの組み合わせに基づいて行われるものであって、
前記磁界検出部が、5つ以上設けられている
請求項3に記載の回転角検出装置。
【請求項5】
前記遊星歯車を公転運動可能に支持するハウジングと、
前記太陽歯車を囲繞するように設けられて前記遊星歯車が噛合される内歯車と、を更に備え、
前記遊星歯車は、前記ハウジングと前記太陽歯車との間、並びに前記ハウジングと前記内歯車との間で挟持されている
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転角検出装置。
【請求項6】
第1の回転体の回転角を検出する第1の回転角検出装置と、
前記第1の回転体とトーションバーを介して同一軸線上に連結される第2の回転体の回転角を検出する第2の回転角検出装置と、を備え、
前記第1の回転体の回転角及び前記第2の回転体の回転角の差分に基づいて前記第1の回転体に付与されるトルクを検出するトルクセンサにおいて、
前記第1の回転角検出装置として請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転角検出装置を用いる
ことを特徴とするトルクセンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−96930(P2013−96930A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241988(P2011−241988)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】