説明

回転軸の接続構造

【課題】 ジョイント部材を用いることなく、一方の回転軸にかかった曲げ応力を他方の回転軸に非伝達とすることができる回転軸の接続構造を提供する。
【解決手段】主動側回転軸2にD形孔部21を設け、従動側回転軸3にDカット部31を設けて、このDカット部31を前記D形孔部21に挿入する回転軸の接続構造であって、Dカット部31の外部湾曲面33に湾曲面の周方向に延伸する山形隆起5を突設し、Dカット部31の外部平坦面32には、平坦面を横切る山形隆条4を山形隆起5につながる位置に突設して、D形孔部21とDカット部31とを、D形の環状突起を介して一線で接触させて、主動側回転軸2を従動側回転軸3に対して回動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の回転軸にかかる直角方向の曲げ応力を他方の回転軸に伝達することがない回転軸の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転軸の接続構造として、例えば特許文献1に開示されているように、ハンドルレバーに連結棒を設け、この連結棒をボリュームの回転軸に直結する構造のものがあった。しかしながらこのような構造のものにおいては、遊技者がハンドルレバーとハンドルベースとの隙間にコインを挟む等してハンドルレバーにラジアル方向(回転軸と直角の方向)の曲げ応力が加わったばあいには、ボリュームの回転軸にもラジアル方向の曲げ応力が直接かかるために、ボリュームが破損されてしまうことがある。その結果、発射装置による玉の発射強度の調整が不可能になるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決できる操作ハンドルとして、特許文献2には、ハンドルレバーの回転軸に主動ギアを設け、ボリュームの回転軸には従動ギアを設けてこれらのギアを噛合させることによって、ハンドルレバーの回転軸にかかる曲げ応力をボリュームの回転軸に伝達しないようにしたものが開示されている。しかし、この構造のものにおいては、ギアという複雑形状な部品を二つ別途準備する必要があるうえに、接続構造が複雑になってトラブルが発生しやすいという問題があった。また、特許文献3には、シリコンゴム等からなるジョイント部材を用いて二つの回転軸を接続した者が開示されているが、長時間使用した場合には劣化、疲労等によりジョイント部材が損傷されて、回転力を円滑に伝達できない、ジョイント部材を別途準備せねばならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−217973号公報 (図2)
【特許文献2】特開2004−89593号公報 (図1)
【特許文献3】特開2003−210704号公報 (図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、ギア等のジョイント部材を用いることなく、一方の回転軸にかかった曲げ応力を他方の回転軸に非伝達とすることができる回転軸の接続構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る回転軸の接続構造は、主動側回転軸にD形孔部を設け、従動側回転軸にDカット部を設けて、このDカット部を前記D形孔部に挿入する回転軸の接続構造であって、
D形孔部の内部湾曲面又はDカット部の外部湾曲面に、湾曲面の周方向に延伸する山形隆起を突設し、D形孔部の内部平坦面又はジョイント部材の外部平坦面には、平坦面を横切る山形隆条を前記山形隆起につながる位置に突設したことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の回転軸の接続構造は、主動側回転軸にDカット軸を設け、従動側回転軸にD形凹部を設けて、前記Dカット軸をD形凹部に挿入する回転軸の接続構造であって、
Dカット軸の外部湾曲面又はD形凹部の内部湾曲面に、湾曲面の周方向に延伸する山形隆起を突設し、Dカット軸の外部平坦面又はD形凹部の内部平坦面には、平坦面を横切る山形隆条を前記山形隆起につながる位置に突設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、主動側回転軸にD形孔部を設け、従動側回転軸にDカット部を設けて、D形孔部の内部湾曲面とDカット部の外部湾曲面に山形隆起を突設し、D形孔部の内部平坦面とDカット部の外部平坦面の間には、山形隆条を突設したので、D型孔部内側面とDカット部外側面とをD形の環状突起の頂部で一線でもって接触させることができる。よって、一方の回転軸に曲げ応力がかかったときにも、環状突起が相手部材との接触位置をずらすことができて、曲げ応力を他方に伝達することがない。
【0009】
また、請求項2の発明は、主動側回転軸にDカット軸を設け、従動側回転軸にD形凹部を設けて、Dカット軸の外部湾曲面とD形凹部の内部湾曲面に山形隆起を突設し、Dカット軸の外部平坦面とD形凹部の内部平坦面の間には、山形隆条を突設したので、Dカット軸外側面とD形凹部内側面とをD形の過剰突起の頂部で一線でもって接触させることができる。よって、一方の回転軸に曲げ応力がかかったときにも、環状突起が相手部材との接触位置をずらすことができて、曲げ応力を他方に伝達することがない。
【0010】
本発明は、回転軸同士の接続部にD形の環状突起を配設するので、歯車などのジョイント部材を用いる必要がなく、しかも歯車と異なり差し込むだけで簡単に正しい位置関係で組み付け作業を行うことができるという顕著な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の接続構造を示す概略構成図である。
【図2】図1の実施形態の接続構造を示す側面図である。
【図3】第1の実施形態の改良型を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態の改良型を示す正面図である。
【図5】第2の実施形態の接続構造を示す概略構成図である。
【図6】図5の実施形態の接続構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1、2は、第1の実施形態の接続構造を示す図であって、主動側回転軸2はD形孔部21を有し、従動側回転軸3はDカット部31を有する。Dカット部31はD形孔部21の内部に挿入されている。Dカット部31の外部平坦面32には山形隆条4が形成され、外部湾曲面33には山形隆起5が形成されている。山形隆起5は山形隆条4とつながる位置に形成されていて、これらによってD形に環状突起が形成されている。なお、本明細書においては山形隆条4と山形隆起5とを総称して環状突起という。
【0013】
山形隆条4はD形孔部21の内部平坦面22と一直線で接触し、山形隆起5はD形孔部21の内部湾曲面23と円弧状の湾曲線でもって接触している。Dカット部31の先端には湾曲面37が形成されており、これがD形孔部21の段差27に当接されて位置決めされている。よって、主動側回転軸2または従動側回転軸3は山形隆条4や山形隆起5を中心として回動することができるので、一方の回転軸にかかった曲げ応力を他方の回転軸に伝達することがない。また、主動側回転軸2と従動側回転軸3とは、D形の環状突起で接触しているので、主動側回転軸2の回転力を従動側回転軸3に確実に伝達することができる。
【0014】
上記実施形態において、山形隆条4はD形孔部21の内部平坦面22に設けることができ、山形隆起5をD形孔部21の内部湾曲面23に設けることもできる。また、山形隆条4をD形孔部21の内部平坦面22に設け、山形隆起5をDカット部31の外部湾曲面33に設けることもできる。
【0015】
図3、4に第1の実施形態の改良型を示す。図において、Dカット部31の外部平坦面32の端部に山形隆条4が設けられ、外部湾曲面33の端部に球面部39が設けられている。球面部39は、山形隆条4の横側部分が前記山形隆起5に対応し、先端部分が前記湾曲面37に対応する。山形隆条4がD形孔部21の内部平坦面22に摺接し、球面部39がD形孔部21の内部湾曲面23および段差27に摺接する。したがって、球状部39と山形隆条4とで、従動側回転軸3にかかる曲げ応力を逃がすことができ、山形隆条4が主動側回転軸2の回転力を従動側回転軸3に伝達することができる。
【0016】
図5、6は、第2の実施形態の接続構造を示す図であって、主動側回転軸2はDカット軸24を有し、従動側回転軸3はD形凹部34を有する。Dカット軸24はD形凹部34の内部に挿入されている。Dカット軸24の外部湾曲面26には山形隆起5が形成され、D形凹部34の内部平坦面35には山形隆条4が形成されている。山形隆起5は山形隆条4とつながる位置に形成されていて、これらによってD形に環状突起が形成されている。
【0017】
山形隆条4はDカット軸24の外部平坦面25と一直線で接触し、山形隆起5はD形凹部34の内部湾曲面36と円弧状の湾曲線でもって接触している。主動側回転軸2の先端には、湾曲面28が設けられていて、これがD形凹部34の底面38に当接されていて、主動側回転軸2と従動側回転軸3とが位置決めされている。よって、主動側回転軸2または従動側回転軸3は山形隆条4や山形隆起5を中心として回動することができるので、一方の回転軸にかかった曲げ応力を他方の回転軸に伝達することがない。また、主動側回転軸2と従動側回転軸3とは、D形の環状突起で接触しているので、主動側回転軸2の回転力を従動側回転軸3に確実に伝達することができる。
【0018】
第2の実施形態において、山形隆条4はDカット軸24の外部平坦面22に設けることができ、山形隆起5をD形凹部の内部湾曲面36に設けることもできる。
【0019】
本発明の回転軸の接続構造は、一方の回転軸に係る曲げ応力を他方の回転軸に非伝達とし、回転力のみを伝達する各種の用途に用いることができる。例えばモーターの回転軸に対して被回転部品の回転軸が斜めに傾いているような場合に、本発明の接続構造を用いれば、回転軸にかかる曲げ応力を非伝達とし、モーターの回転トルクのみを被回転部品の傾斜回転軸に伝達することができる。したがって、歯車等のジョイント部材を不要とし、且つバネやゴムなどの弾性体を用いた場合のようにジョイント部材が疲労破壊するおそれが全くないので、耐久性に優れるという顕著な効果を奏する。さらに、対応するD形状の平坦面同士を合わせるだけで正しい位置関係で組み付けることができる。
【符号の説明】
【0020】
2 主動側回転軸、3 従動側回転軸、4、山形隆条、5 山形隆起、21 D形孔部、22 内部平坦面、23 内部湾曲面、31 Dカット部、32 外部平坦面、33 外部湾曲面、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主動側回転軸にD形孔部を設け、従動側回転軸にDカット部を設けて、このDカット部を前記D形孔部に挿入する回転軸の接続構造であって、
D形孔部の内部湾曲面又はDカット部の外部湾曲面に、湾曲面の周方向に延伸する山形隆起を突設し、D形孔部の内部平坦面又はジョイント部材の外部平坦面には、平坦面を横切る山形隆条を前記山形隆起につながる位置に突設したことを特徴とする回転軸の接続構造。
【請求項2】
主動側回転軸にDカット軸を設け、従動側回転軸にD形凹部を設けて、前記Dカット軸をD形凹部に挿入する回転軸の接続構造であって、
Dカット軸の外部湾曲面又はD形凹部の内部湾曲面に、湾曲面の周方向に延伸する山形隆起を突設し、Dカット軸の外部平坦面又はD形凹部の内部平坦面には、平坦面を横切る山形隆条を前記山形隆起につながる位置に突設したことを特徴とする回転軸の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64238(P2011−64238A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214195(P2009−214195)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000148287)株式会社浅間製作所 (114)