回転部品用センサ信号取出装置
【目的】 高速回転による遠心力によって破損することなく、また表面に流れる気流を乱すことなく、回転部品及びその周囲の各種の状態の信頼性の高い検知を行うことのできる回転部品用センサ信号取出装置を提供する。
【構成】 タービンブレードなどの回転部品11の表面に設置したセンサ12とセンサからの信号を外部に取り出すリード線13を回転部品11に形成した金属薄膜15により電気接続する。具体的には、回転部品の支持部11aに表面側から裏面側に至るようにスルホール端子14を設ける。そして、スルホール端子14とセンサとを金属薄膜により電気接続すると共に、リード線を支持部の裏面側でスルホール端子と電気接続する。
【構成】 タービンブレードなどの回転部品11の表面に設置したセンサ12とセンサからの信号を外部に取り出すリード線13を回転部品11に形成した金属薄膜15により電気接続する。具体的には、回転部品の支持部11aに表面側から裏面側に至るようにスルホール端子14を設ける。そして、スルホール端子14とセンサとを金属薄膜により電気接続すると共に、リード線を支持部の裏面側でスルホール端子と電気接続する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速回転する例えばジェットエンジンのタービンブレードのような回転部品の表面に取り付けられたセンサからの信号を取り出してこの回転部品の各種状況を検知するのに適した回転部品用センサ信号取出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、航空機は旅客機を主体としてその輸送能力とスピードの向上を図るために各メーカはより高効率のジェットエンジンを開発中である。このためにはタービンブレードは最適形状に設計されなければならず、その検証手段としてタービンブレードの表面にひずみゲージを形成し、高速回転時のタービンブレードの挙動を計測することが重要な課題である。
【0003】そこで従来、高速回転するジェットエンジンのタービンブレードのひずみを計測することが行われ、図9に示すように、各タービンブレード11の表面にそのひずみを検知するセンサとしてのひずみゲージ12を設置すると共に、各ひずみケージ12からリード線13を引き出すことが行われている。
【0004】具体的には、図10に示すように、ひずみゲージ12はタービンブレード11の表面に浸漬或いは塗布によって絶縁材12aをコーティングし、その上にひずみゲージ材12bを貼り付けることによって形成される。ひずみゲージ材12bにはその端部にリード線13の一端が半田13aによって接続され、リード線13はタービンブレード11及びその支持部11aの表面に沿って這わされ、図11の部分拡大図に示すように、タービンブレード11の支持部11aにスポット溶接したリード線押え13bによってその途中が固定される。この固定されたリード線13は図示しない回転軸の中心部に形成される中空部を通じて外部に引き出される。なお、11bはタービンブレード11を図示しない回転軸に多数組み付け固定するため支持部11aの下面に形成されたダブテールである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ジェットエンジンのタービンブレードが高速回転するとその表面に3万G乃至5万G(1gのものに30kg乃至50kgの力が働く)以上の遠心力が発生する。このため、上述した従来の構成では、遠心力に対してひずみゲージ材12bの端部とリード線13との接合部などの強度に対して種々の問題が生じる。
【0006】すなわち、リード線13はタービンブレード11に完全に密着しておらず、またリード線13をタービンブレード11との間にリード線13を挟み込んで固定するリード線押え13bはその両側がスポット溶接により固定されている。このため、上記遠心力が作用したときリード線13及びリード線押え13bの質量が大きいことによる強度上の問題があり、リード線13が遠心力により断線して破損する恐れが極めて高い。
【0007】また、現有技術ではリード線13及びリード線押え13bはタービンブレード11の表面より約1mm程度の高さとなってしまい、これらや半田13aなどの突起物が精密に設計されたタービンブレード11の表面に形成されるようになるため、この突起物がタービンブレード表面の気体の流れを乱して乱気流を発生させ、タービンブレードに作用する空力的状態が実機使用状態と異なり適切な計測ができない。
【0008】よって本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、高速回転による遠心力によって破損することなく、また表面に流れる気流を乱すことなく、回転部品及びその周囲の各種の状態の信頼性の高い検知を行うことのできる回転部品用センサ信号取出装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明により成された回転部品用センサ信号取出装置は、回転部品の表面にセンサを設置すると共に、センサからの信号をリード線を介して外部に取り出すようにした回転部品用センサ信号取出装置において、前記回転部品に前記センサとリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成したことを特徴としている。
【0010】前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子と前記センサとを前記金属薄膜により電気接続すると共に、前記リード線を支持部の裏面側で前記スホール端子と電気接続したことを特徴としている。
【0011】前記スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられていることを特徴としている。
【0012】前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成するか、又は前記スルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成したことを特徴としている。
【0013】前記スルホール端子が前記回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなることを特徴としている。
【0014】
【作用】上記構成により、回転部品の表面に設置したセンサとセンサからの信号を外部に取り出すためのリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成しているので、リード線を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能になり、また金属薄膜自身は軽量であると共に回転部品などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。
【0015】回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子とセンサとを金属薄膜により電気接続すると共に、リード線を支持部の裏面側でスホール端子と電気接続しているので、リード線は回転部品の高速回転による遠心力によって支持部の裏面に押し付けられ、その断線を招くような力は受けない。
【0016】また、スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられるか、或いは、スルホール端子が回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成するか、又はスルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成しているので、スルホール端子に遠心力が働いても、スルホール端子が簡単に抜けることがない。
【0017】更に、スルホール端子が回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなるので、該スルホール端子とセンサとを電気接続する金属薄膜を単一の曲面に形成することができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は回転部品としてのジェットエンジンのタービンブレードのひずみを検出するひずみゲージからなるセンサからの信号を取り出すため構成された本発明による回転部品用センサ信号取出装置の一実施例を示す。同図において、図9乃至図11について上述した従来のものと同等の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0019】図1、同図中の一部分の拡大図である図2及びタービンブレード全体斜視図である図3において、タービンブレード11の表面には、少なくとも部分的に化学的或いは物理的蒸着方法によって絶縁層12aがコーティングされ、この絶縁層12aの表面にはひずみを受けると抵抗値が変化する抵抗体パターンからなるひずみゲージ材12bが付けられている。
【0020】上記絶縁層12aのコーティングは支持部11aの表面にまで延長され、この延長された絶縁材12aの部分にスルホール端子14が設けられている。そして、このスルホール端子14と上記ひずみゲージ材12bの抵抗体パターン端との間を電気接続するための手段として、絶縁層12aの上面に例えば蒸着やスパッタリングして形成した金属薄膜15が設けられている。
【0021】上記スルホール端子14は、支持部11aに絶縁層12aに開けた孔12cの位置にその表面から裏面に至るように形成したスルホール14aと、このスルホール14aに挿入されて封着ガラス14bによって固定された絶縁管14cと、絶縁管14c内に支持部11aの裏面側に絶縁管14cを抜けて突出するように嵌合装着された金属製の端子棒14dとからなる。
【0022】そして、端子棒14dの支持部11aの表面側の端面には上記絶縁層12aの上面に設けられた金属薄膜が付着されて電気接続される。端子棒14dの支持部11aの裏面側への突出端にはリード線13の一端が例えばスポット溶接或いはレーザ溶接などにより接続されている。よって、このスルホール端子14の使用により、リード線13は、図示しない回転軸の中心部に形成される中空部を通じて外部に引き出される。
【0023】上述したセンサを設けたタービンブレード11は回転軸に多数取り付けられるが、この取り付け状態において、支持部11aを境にタービンブレード11は回転軸の外側に位置するのに対し、支持部11aの裏面側は回転軸の内側に位置するようになる。回転軸の内外側の部材には回転軸の回転に伴って共に遠心力が働き、支持部11aの外側にある部材には矢印Aで示す支持部11aの表面から引き離されるような、支持部11aの内側にある部材には矢印Bで示す支持部11aの裏面に押しつけるような、遠心力による力がそれぞれ作用する。
【0024】上述した構成では、タービンブレード11及び支持部11aの表面に金属薄膜15を形成してひずみゲージ材12bの端部とリード線13とを接続しているので、リード線13を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能となる。また金属薄膜15自身は軽量であると共にタービンブレード11などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。
【0025】更に、金属薄膜15とリード線13との接続を行うため支持部11aにスルホール端子14を設け、支持部11aの表側で金属薄膜15と接続したスルホール端子14とリード線13との接続を支持部11aの裏面側で行っているので、リード線13に遠心力が働いてもこれを支持部11aの裏面に押しつけるように作用し、リード線13が断線するようなことが起こらなくなっている。
【0026】上述した実施例では、スルホール端子14のスルホール14aは支持部11aの面に垂直な遠心力の方向と同じ方向になるように形成されているが、図4に示すように遠心力方向Cに対して適当な角度θの傾きをもって形成するようにすることが更に好ましい。このようにスルホール14aを傾けて形成すると、スルホール14a内に装着した絶縁管14c及び端子棒14dに働く遠心力の全てがこれらをスルホール14aから抜こうとする力として作用しなくなり、それだけスルホール端子14の取り付け安定性が増大する。
【0027】なお、スルホール14aに絶縁管14cを介して装着した端子棒14dが遠心力によって抜けなくするには、図5に示すように端子棒14dの支持部11aの裏面側突出端に頭部14d−1を形成し、遠心力によって端子棒14dに作用する抜こうとする力を封着ガラス14bなどを介して支持部11aの裏面で受けるようにしてもよい。
【0028】また、絶縁管14c及び端子棒14dの両方を抜けないようにするには、図6に示すように、スルホール14a、絶縁管14c及び端子棒14dの径を支持部11aの表側で小さく、裏側で大きくして中間部に段差を形成するようにしたり、図7に示すように、径を連続的に変化させたテーパ状に形成するようにすればよい。
【0029】上述の実施例では、スルホール端子14のためのスルホール14aが支持部11aの表面から裏面に至るように設けられているので、金属薄膜15は互いに同一曲面とならないタービンブレード11の表面と支持部11aの表面とに跨いで形成されるようになっていて、金属薄膜15の形成が複雑である。しかし、図8に示すように、タービンブレード11の一側面の基部から他側面側の支持部11aの裏面に至るようにスルホール14aを形成することによって、金属薄膜15は同一曲面であるタービンブレード11の表面にのみ形成されるようになり、その形成が簡単になって安価で性能の安定した金属薄膜15を形成することができる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、リード線を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能となる。また金属薄膜自身は軽量であると共に回転部品などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。更にリード線は回転部品の高速回転による遠心力によって支持部の裏面に押し付けられ、その断線を招くような力は受けないので、高速回転による遠心力によって破損することなく、また表面に流れる気流を乱すことなく、回転部品及びその周囲の各種の状態の信頼性の高い検知を行うことができる。
【0031】また、スルホール端子に遠心力が働いても、スルホール端子が簡単に抜けることがなく、しかもスルホール端子とセンサとを電気接続する金属薄膜を単一の曲面に形成することができるので、製造コストの低減や電気接続の安定化も図れるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による回転部品用センサ信号取出装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1の一部分の拡大断面図である。
【図3】図1の装置の全体斜視図である。
【図4】図1の一部分の一変形例を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1の一部分の他の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1の一部分の更に他の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図7】図1の一部分の別の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明による装置の他の実施例を示す断面図である。
【図9】従来のセンサを組み込んだタービンの概略構成を示す図である。
【図10】図9の一部分の断面図である。
【図11】図10の一部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
11 回転部品(タービンブレード)
11a 支持部
12 センサ(ひずみゲージ)
13 リード線
14 スルホール端子
14a スルホール
14c 絶縁管
14d 端子棒
14d−1 頭部
15 金属薄膜
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高速回転する例えばジェットエンジンのタービンブレードのような回転部品の表面に取り付けられたセンサからの信号を取り出してこの回転部品の各種状況を検知するのに適した回転部品用センサ信号取出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、航空機は旅客機を主体としてその輸送能力とスピードの向上を図るために各メーカはより高効率のジェットエンジンを開発中である。このためにはタービンブレードは最適形状に設計されなければならず、その検証手段としてタービンブレードの表面にひずみゲージを形成し、高速回転時のタービンブレードの挙動を計測することが重要な課題である。
【0003】そこで従来、高速回転するジェットエンジンのタービンブレードのひずみを計測することが行われ、図9に示すように、各タービンブレード11の表面にそのひずみを検知するセンサとしてのひずみゲージ12を設置すると共に、各ひずみケージ12からリード線13を引き出すことが行われている。
【0004】具体的には、図10に示すように、ひずみゲージ12はタービンブレード11の表面に浸漬或いは塗布によって絶縁材12aをコーティングし、その上にひずみゲージ材12bを貼り付けることによって形成される。ひずみゲージ材12bにはその端部にリード線13の一端が半田13aによって接続され、リード線13はタービンブレード11及びその支持部11aの表面に沿って這わされ、図11の部分拡大図に示すように、タービンブレード11の支持部11aにスポット溶接したリード線押え13bによってその途中が固定される。この固定されたリード線13は図示しない回転軸の中心部に形成される中空部を通じて外部に引き出される。なお、11bはタービンブレード11を図示しない回転軸に多数組み付け固定するため支持部11aの下面に形成されたダブテールである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ジェットエンジンのタービンブレードが高速回転するとその表面に3万G乃至5万G(1gのものに30kg乃至50kgの力が働く)以上の遠心力が発生する。このため、上述した従来の構成では、遠心力に対してひずみゲージ材12bの端部とリード線13との接合部などの強度に対して種々の問題が生じる。
【0006】すなわち、リード線13はタービンブレード11に完全に密着しておらず、またリード線13をタービンブレード11との間にリード線13を挟み込んで固定するリード線押え13bはその両側がスポット溶接により固定されている。このため、上記遠心力が作用したときリード線13及びリード線押え13bの質量が大きいことによる強度上の問題があり、リード線13が遠心力により断線して破損する恐れが極めて高い。
【0007】また、現有技術ではリード線13及びリード線押え13bはタービンブレード11の表面より約1mm程度の高さとなってしまい、これらや半田13aなどの突起物が精密に設計されたタービンブレード11の表面に形成されるようになるため、この突起物がタービンブレード表面の気体の流れを乱して乱気流を発生させ、タービンブレードに作用する空力的状態が実機使用状態と異なり適切な計測ができない。
【0008】よって本発明は、上述した従来の問題点に鑑み、高速回転による遠心力によって破損することなく、また表面に流れる気流を乱すことなく、回転部品及びその周囲の各種の状態の信頼性の高い検知を行うことのできる回転部品用センサ信号取出装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明により成された回転部品用センサ信号取出装置は、回転部品の表面にセンサを設置すると共に、センサからの信号をリード線を介して外部に取り出すようにした回転部品用センサ信号取出装置において、前記回転部品に前記センサとリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成したことを特徴としている。
【0010】前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子と前記センサとを前記金属薄膜により電気接続すると共に、前記リード線を支持部の裏面側で前記スホール端子と電気接続したことを特徴としている。
【0011】前記スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられていることを特徴としている。
【0012】前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成するか、又は前記スルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成したことを特徴としている。
【0013】前記スルホール端子が前記回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなることを特徴としている。
【0014】
【作用】上記構成により、回転部品の表面に設置したセンサとセンサからの信号を外部に取り出すためのリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成しているので、リード線を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能になり、また金属薄膜自身は軽量であると共に回転部品などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。
【0015】回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子とセンサとを金属薄膜により電気接続すると共に、リード線を支持部の裏面側でスホール端子と電気接続しているので、リード線は回転部品の高速回転による遠心力によって支持部の裏面に押し付けられ、その断線を招くような力は受けない。
【0016】また、スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられるか、或いは、スルホール端子が回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成するか、又はスルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成しているので、スルホール端子に遠心力が働いても、スルホール端子が簡単に抜けることがない。
【0017】更に、スルホール端子が回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなるので、該スルホール端子とセンサとを電気接続する金属薄膜を単一の曲面に形成することができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は回転部品としてのジェットエンジンのタービンブレードのひずみを検出するひずみゲージからなるセンサからの信号を取り出すため構成された本発明による回転部品用センサ信号取出装置の一実施例を示す。同図において、図9乃至図11について上述した従来のものと同等の部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0019】図1、同図中の一部分の拡大図である図2及びタービンブレード全体斜視図である図3において、タービンブレード11の表面には、少なくとも部分的に化学的或いは物理的蒸着方法によって絶縁層12aがコーティングされ、この絶縁層12aの表面にはひずみを受けると抵抗値が変化する抵抗体パターンからなるひずみゲージ材12bが付けられている。
【0020】上記絶縁層12aのコーティングは支持部11aの表面にまで延長され、この延長された絶縁材12aの部分にスルホール端子14が設けられている。そして、このスルホール端子14と上記ひずみゲージ材12bの抵抗体パターン端との間を電気接続するための手段として、絶縁層12aの上面に例えば蒸着やスパッタリングして形成した金属薄膜15が設けられている。
【0021】上記スルホール端子14は、支持部11aに絶縁層12aに開けた孔12cの位置にその表面から裏面に至るように形成したスルホール14aと、このスルホール14aに挿入されて封着ガラス14bによって固定された絶縁管14cと、絶縁管14c内に支持部11aの裏面側に絶縁管14cを抜けて突出するように嵌合装着された金属製の端子棒14dとからなる。
【0022】そして、端子棒14dの支持部11aの表面側の端面には上記絶縁層12aの上面に設けられた金属薄膜が付着されて電気接続される。端子棒14dの支持部11aの裏面側への突出端にはリード線13の一端が例えばスポット溶接或いはレーザ溶接などにより接続されている。よって、このスルホール端子14の使用により、リード線13は、図示しない回転軸の中心部に形成される中空部を通じて外部に引き出される。
【0023】上述したセンサを設けたタービンブレード11は回転軸に多数取り付けられるが、この取り付け状態において、支持部11aを境にタービンブレード11は回転軸の外側に位置するのに対し、支持部11aの裏面側は回転軸の内側に位置するようになる。回転軸の内外側の部材には回転軸の回転に伴って共に遠心力が働き、支持部11aの外側にある部材には矢印Aで示す支持部11aの表面から引き離されるような、支持部11aの内側にある部材には矢印Bで示す支持部11aの裏面に押しつけるような、遠心力による力がそれぞれ作用する。
【0024】上述した構成では、タービンブレード11及び支持部11aの表面に金属薄膜15を形成してひずみゲージ材12bの端部とリード線13とを接続しているので、リード線13を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能となる。また金属薄膜15自身は軽量であると共にタービンブレード11などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。
【0025】更に、金属薄膜15とリード線13との接続を行うため支持部11aにスルホール端子14を設け、支持部11aの表側で金属薄膜15と接続したスルホール端子14とリード線13との接続を支持部11aの裏面側で行っているので、リード線13に遠心力が働いてもこれを支持部11aの裏面に押しつけるように作用し、リード線13が断線するようなことが起こらなくなっている。
【0026】上述した実施例では、スルホール端子14のスルホール14aは支持部11aの面に垂直な遠心力の方向と同じ方向になるように形成されているが、図4に示すように遠心力方向Cに対して適当な角度θの傾きをもって形成するようにすることが更に好ましい。このようにスルホール14aを傾けて形成すると、スルホール14a内に装着した絶縁管14c及び端子棒14dに働く遠心力の全てがこれらをスルホール14aから抜こうとする力として作用しなくなり、それだけスルホール端子14の取り付け安定性が増大する。
【0027】なお、スルホール14aに絶縁管14cを介して装着した端子棒14dが遠心力によって抜けなくするには、図5に示すように端子棒14dの支持部11aの裏面側突出端に頭部14d−1を形成し、遠心力によって端子棒14dに作用する抜こうとする力を封着ガラス14bなどを介して支持部11aの裏面で受けるようにしてもよい。
【0028】また、絶縁管14c及び端子棒14dの両方を抜けないようにするには、図6に示すように、スルホール14a、絶縁管14c及び端子棒14dの径を支持部11aの表側で小さく、裏側で大きくして中間部に段差を形成するようにしたり、図7に示すように、径を連続的に変化させたテーパ状に形成するようにすればよい。
【0029】上述の実施例では、スルホール端子14のためのスルホール14aが支持部11aの表面から裏面に至るように設けられているので、金属薄膜15は互いに同一曲面とならないタービンブレード11の表面と支持部11aの表面とに跨いで形成されるようになっていて、金属薄膜15の形成が複雑である。しかし、図8に示すように、タービンブレード11の一側面の基部から他側面側の支持部11aの裏面に至るようにスルホール14aを形成することによって、金属薄膜15は同一曲面であるタービンブレード11の表面にのみ形成されるようになり、その形成が簡単になって安価で性能の安定した金属薄膜15を形成することができる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、リード線を高速回転時の遠心力による悪影響を受けない場所に設けることが可能となる。また金属薄膜自身は軽量であると共に回転部品などへの密着性が良好であるため遠心力の悪影響を受けにくい。更にリード線は回転部品の高速回転による遠心力によって支持部の裏面に押し付けられ、その断線を招くような力は受けないので、高速回転による遠心力によって破損することなく、また表面に流れる気流を乱すことなく、回転部品及びその周囲の各種の状態の信頼性の高い検知を行うことができる。
【0031】また、スルホール端子に遠心力が働いても、スルホール端子が簡単に抜けることがなく、しかもスルホール端子とセンサとを電気接続する金属薄膜を単一の曲面に形成することができるので、製造コストの低減や電気接続の安定化も図れるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による回転部品用センサ信号取出装置の一実施例を示す断面図である。
【図2】図1の一部分の拡大断面図である。
【図3】図1の装置の全体斜視図である。
【図4】図1の一部分の一変形例を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1の一部分の他の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1の一部分の更に他の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図7】図1の一部分の別の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明による装置の他の実施例を示す断面図である。
【図9】従来のセンサを組み込んだタービンの概略構成を示す図である。
【図10】図9の一部分の断面図である。
【図11】図10の一部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
11 回転部品(タービンブレード)
11a 支持部
12 センサ(ひずみゲージ)
13 リード線
14 スルホール端子
14a スルホール
14c 絶縁管
14d 端子棒
14d−1 頭部
15 金属薄膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転部品の表面にセンサを設置すると共に、センサからの信号をリード線を介して外部に取り出すようにした回転部品用センサ信号取出装置において、前記回転部品に前記センサとリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成したことを特徴とする回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項2】 前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子と前記センサとを前記金属薄膜により電気接続すると共に、前記リード線を支持部の裏面側で前記スホール端子と電気接続したことを特徴とする請求項1記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項3】 前記スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられていることを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項4】 前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成したことを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項5】 前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記スルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成したことを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項6】 前記スルホール端子が前記回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなることを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項1】 回転部品の表面にセンサを設置すると共に、センサからの信号をリード線を介して外部に取り出すようにした回転部品用センサ信号取出装置において、前記回転部品に前記センサとリード線とを電気接続するための金属薄膜を形成したことを特徴とする回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項2】 前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホール端子を形成し、該スルホール端子と前記センサとを前記金属薄膜により電気接続すると共に、前記リード線を支持部の裏面側で前記スホール端子と電気接続したことを特徴とする請求項1記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項3】 前記スルホール端子が遠心力方向に対して傾きをもって設けられていることを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項4】 前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記端子棒の支持部裏面側の端部に頭部を形成したことを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項5】 前記スルホール端子が前記回転部品の支持部に表面側から裏面側に至るように設けたスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなり、前記スルホール、絶縁管及び端子棒の径を支持部の裏面側で大きく形成したことを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【請求項6】 前記スルホール端子が前記回転部品の一側面の基部から他側面側の支持部の裏面に至るように形成したスルホールと該スルホールに絶縁管を介して装着した端子棒とからなることを特徴とする請求項2記載の回転部品用センサ信号取出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平6−138002
【公開日】平成6年(1994)5月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−288438
【出願日】平成4年(1992)10月27日
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【公開日】平成6年(1994)5月20日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)10月27日
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
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