説明

回転部材の取付方法および工具

【課題】シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを簡単に取り付ける方法を提供する。
【解決手段】シャフト10の軸方向と雄ねじ20の軸方向とが一致するようにシャフト10に対して雄ねじ20を固定する工程と、回転部材30の穴を雄ねじ20が貫通するように回転部材30を配置する工程と、押圧部材40の穴42を雄ねじ20が貫通するように押圧部材40を配置する工程と、スラストベアリング50の穴を雄ねじ20が貫通するようにスラストベアリング50を配置する工程と、雌ねじ62を有する操作部60の雌ねじ62を雄ねじ20に螺合させる工程と、操作部60が前記シャフト10に近づく方向に操作部60を回転させ、これにより操作部60によってスラストベアリング50および押圧部材40を介して回転部材30を押し進めてシャフト10に回転部材30を取り付ける工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトに回転部材を取り付ける取付方法およびそれを実施するための使用される工具に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを取り付けるためには、回転部材の穴にシャフトを挿入または圧入する必要があり、特に、大型機械のシャフトに回転部材を取り付ける作業では、非常に大きな力が要求されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−106484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを取り付ける作業を簡単化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面は、シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを取り付ける取付方法に係り、前記取付方法は、前記シャフトの軸方向と雄ねじの軸方向とが一致するように前記シャフトに対して前記雄ねじを固定する工程と、前記回転部材の穴を前記雄ねじが貫通するように前記回転部材を配置する工程と、押圧部材の穴を前記雄ねじが貫通するように前記押圧部材を配置する工程と、スラストベアリングの穴を前記雄ねじが貫通するように前記スラストベアリングを配置する工程と、雌ねじを有する操作部の前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させる工程と、前記操作部が前記シャフトに近づく方向に前記操作部を回転させ、これにより前記操作部によって前記スラストベアリングおよび前記押圧部材を介して前記回転部材を押し進めて前記シャフトに前記回転部材を取り付ける工程とを含む。
【0006】
本発明の第2の側面は、前記取付方法を実施するために使用される工具に係り、前記工具は、前記雄ねじ、前記押圧部材、前記スラストベアリングおよび前記操作部を備え、前記スラストベアリングは、2つの軌道板と、前記2つの軌道板の間に配置されるべき転動体とを含み、前記2つの軌道板および前記転動体が互いに分離しないように前記押圧部材または前記操作部によって保持されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを取り付ける作業が簡単化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】シャフトに回転部材(ギヤ又はプーリー)を取り付ける作業において使用される工具の構成を示す図である。
【図2】工具を使ってシャフトに回転部材を取り付ける作業の進行を示す
【図3】工具を使ってシャフトに回転部材を取り付ける作業の進行を示す
【図4】工具を使ってシャフトに回転部材を取り付ける作業の進行を示す
【図5】シャフトに回転部材が取り付けられた状態を示す図である。
【図6】工具の改良例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0010】
図1は、シャフト10に回転部材30であるギヤ又はプーリーを取り付ける作業において使用される工具Tの構成を示す図である。図2〜図4は、工具Tを使ってシャフト10に回転部材30を取り付ける作業の進行を示す図である。図5は、シャフト10に回転部材30が取り付けられた状態を示す図である。
【0011】
シャフト10は、回転部材30の穴32に嵌合する嵌合部14を有する。シャフト10はまた、締結部12を有する。工具Tは、雄ねじ20、押圧部材40、スラストベアリング50および操作部60を備えている。雄ねじ20は、シャフト10の締結部12に締結されてシャフト10に固定されるための締結部22を有する。締結部12、22は、例えば、ねじでありうる。雄ねじ20は、回転部材30をセンタリングするためのセンタリング部26を有することが好ましく、センタリング部26は、テーパー面27を有しうる。押圧部材40は、例えば、押圧プレート44と、押圧脚46とを有しうるが、押圧脚46はなくてもよい。スラストベアリング50は、例えば、2つの軌道板52、54と、2つの軌道板52、54の間に配置されるべき転動体56とを含む。転動体56は、不図示の転動体保持器によって保持されうる。操作部60は、雄ねじ20に螺合する雌ねじ62と、ハンドル64とを含む。ここで、スラストベアリング50は、一般に、2つの軌道板52、54および転動体56が互いに分離する構成を有するので、軌道板52、54および転動体56の紛失の防止および作業性の向上のために、図6に例示するように、軌道板52、54および転動体56は、互いに分離しないように押圧部材40に設けられた保持部48によって保持されることが好ましい。或いは、不図示であるが、軌道板52、54および転動体56は、互いに分離しないように押圧部材40に設けられた保持部によって保持されてもよい。
【0012】
以下、工具Tを使ってシャフト10に回転部材30を取り付ける取付方法を説明する。まず、図2に例示するように、シャフト10の軸方向と雄ねじ20の軸方向とが一致するようにシャフト10に対して雄ねじ10を固定する。これは、シャフト10側の締結部12に雄ねじ20側の締結部22を締結(例えば、ねじ込む)することによってなされうる。
【0013】
それに引き続いて、図3に例示するように、回転部材30の穴32を雄ねじ20が貫通するように回転部材30を配置し、次いで、押圧部材40の穴42を雄ねじ20が貫通するように押圧部材40を配置し、次いで、スラストベアリング50の穴を雄ねじ20が貫通するようにスラストベアリングを配置する。次いで、雌ねじ62を有する操作部60の雌ねじ62を雄ねじ20に螺合させる。次いで、図4に例示するように、操作部60が前記シャフトに近づく方向に操作部60を回転させる。これは、ハンドル64を操作することによってなされうる。この回転は、雌ねじ62および雄ねじ20によって、それらの軸方向における操作部60の移動に変換される。これにより、操作部60は、スラストベアリング50および押圧部材40を介して回転部材30を押し進めて、シャフト10に回転部材30が取り付けられる。シャフト10に回転部材30が取り付けられたら、操作部60を取り付け時とは逆方向に回転させて雄ねじ20から取り去るとともにスラストベアリング50および押圧部材40を取り去り、更に雄ねじ20をシャフト10から取り去ればよい。このようにして、図5に例示するように、シャフト10に回転部材30を取り付ける作業を完了することができる。この作業において、センタリング部26は、その表面が回転部材30の穴32をガイドしてセンタリングする。
【0014】
ここで、スラストベアリング50は、押圧部材40に対して操作部60が相対的に回転することを容易にする。スラストベアリング50を使用しない場合には、回転部材30の穴32とシャフト10の嵌合部14とを嵌合させる際に、押圧部材40の表面と操作部60の表面とが擦れ合うので、回転部材30の穴32とシャフト10の嵌合部14との摩擦力(挿入あるいは圧入に要する力)のほかに大きな力を要することになる。スラストベアリング50は、押圧部材40と操作部60との摩擦を大幅に低減するために効果的である。これにより、シャフト10に回転部材30を取り付ける作業が劇的に簡単化される。
【符号の説明】
【0015】
10 シャフト
12 締結部
14 嵌合部
20 雄ねじ
22 締結部
26 センタリング部
27 テーパー面
30 回転部材(ギヤ、プーリー)
32 穴
40 押圧部材
42 穴
44 押圧プレート
46 押圧脚
48 保持部
50 スラストベアリング
52、54 軌道板
56 転動体
60 操作部
62 雌ねじ
64 ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに回転部材であるギヤ又はプーリーを取り付ける取付方法であって、
前記シャフトの軸方向と雄ねじの軸方向とが一致するように前記シャフトに対して前記雄ねじを固定する工程と、
前記回転部材の穴を前記雄ねじが貫通するように前記回転部材を配置する工程と、
押圧部材の穴を前記雄ねじが貫通するように前記押圧部材を配置する工程と、
スラストベアリングの穴を前記雄ねじが貫通するように前記スラストベアリングを配置する工程と、
雌ねじを有する操作部の前記雌ねじを前記雄ねじに螺合させる工程と、
前記操作部が前記シャフトに近づく方向に前記操作部を回転させ、これにより前記操作部によって前記スラストベアリングおよび前記押圧部材を介して前記回転部材を押し進めて前記シャフトに前記回転部材を取り付ける工程と、
を含むことを特徴とする取付方法。
【請求項2】
前記スラストベアリングは、2つの軌道板と、前記2つの軌道板の間に配置されるべき転動体とを含み、
前記2つの軌道板および前記転動体が互いに分離しないように前記押圧部材または前記操作部によって保持されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の取付方法。
【請求項3】
請求項1に記載の取付方法を実施するために使用される工具であって、
前記雄ねじ、前記押圧部材、前記スラストベアリングおよび前記操作部を備え、
前記スラストベアリングは、2つの軌道板と、前記2つの軌道板の間に配置されるべき転動体とを含み、
前記2つの軌道板および前記転動体が互いに分離しないように前記押圧部材または前記操作部によって保持されている、
ことを特徴とする工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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