説明

回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常の検出方法

本発明は、回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常を検出する方法に関する。上記方法は、上記回転部材の回転の間における異常の発生の固有周波数を特定する予備的な分析を包含している。上記方法は繰返しの複数のステップをさらに包含している。当該複数のステップは、上記回転部材の瞬間回転速度を測定するステップ;上記測定の結果を角度についてサンプリングして、上記回転部材の上記瞬間回転速度を表わすサンプリング信号を取得するステップ;上記サンプリング信号の調和空間分析を実施して、上記回転部材の上記瞬間回転速度のスペクトルを取得するステップ;上記固有周波数について上記スペクトルの振幅をモニタリングして、対応する異常の発生を当該振幅に基づいて導き出すステップである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常の検出方法、および自動車両のための回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリの損耗状態の車載診断に対する、そのような方法の使用に関する。
【0002】
特に、本発明は、機械的なアッセンブリの回転をガイドするためのベアリングの回転部材、特にローラベアリングの回転リングの構造的な異常の検出のために実施され得る。代替として、本発明は、回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリの他の部材(固定部材が挙げられる)の構造的な異常の検出のために実施される。
【0003】
例えば、機械的なアッセンブリは、ギアボックス、ギアモータ、調速器、自動始動機、タービン、リアクタ、変速機、クラッチ、ブローチ、またはブローチ加工のための支持体に属し得る。
【0004】
構造的な異常を検出する方法の実施によって、回転部材が情報を収集する機能をも果たすことが可能であり、特に以下:
自動車両の機械的な部品の、特に損耗の車載型診断またはモニタリング(例えば、クランクシャフトのモニタリング、ローラベアリングの診断または分配装置の診断);
回転に関する動的システム(例えば、オルタネータ−スタータ)のプロトタイプの開発;
一組の機械装置(例えば、工作機械のブローチ、減速ギア、風力タービンの変速機)のモニタリングをもたらし得る。
【0005】
構造的な異常を検出するために、機械的な上記アッセンブリの振動分析が、加速度計によって出力される信号を用いることによって、これまで実施されている。しかし、この実現には、そのコストに加えて、回転部材を含んでいる機械的な上記アッセンブリにおける組込みの大きな制約を、有している加速度計を搭載する必要がある。
【0006】
本発明は、搭載が困難な測定手段を必要としない、回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常を検出する方法を特に提案することによって、先行技術の欠点をなくすことを目的としている。当該方法は、特に回転部材の回転速度および上記アッセンブリによって許容される外部応力から独立していることによって、実施するために特に容易であり、信頼性が高い。
【0007】
この作用を目的として、第1の局面にしたがって、本発明は、回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常を検出する方法を提案する。当該方法は、上記回転部材の回転の間における異常の発生の固有周波数を特定する予備的な分析および繰返しの複数のステップを包含している。当該複数のステップは、以下のステップ:
上記回転部材の瞬間回転速度を測定するステップ;
上記測定の結果を角度についてサンプリングして、上記回転部材の上記瞬間回転速度を表わすサンプリング信号を取得するステップ;
上記サンプリング信号の調和空間分析を実施して、上記回転部材の上記瞬間回転速度のスペクトルを取得するステップ;
上記固有周波数について上記スペクトルの振幅をモニタリングして、対応する異常の発生を当該振幅に基づいて導き出すステップを包含している。
【0008】
第2の局面によれば、本発明は、自動車両のための回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリの損耗状態の車載診断に対する、そのような方法の使用を提案する。
【0009】
本発明の他の目的および利点は、回転部材の瞬間回転速度を表すサンプリング信号を取得するための原理を示している添付の図面を参照して与えられている、以下の記載において明らかになる。
【0010】
以下に説明されているのは、回転部材、固定部材、およびこれらの部材の間にこれらの相対回転を可能にするために配置されている一並びのローラ本体に形成されているローラベアリングを含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常を検出ための方法である。さらに、自動車両に搭載されている機械的なアッセンブリの回転をガイドするベアリング、特にギアボックスのシャフトの回転をガイドするローラベアリングに関して説明されている。
【0011】
しかし、本発明は、回転部材を含んでいる他の種類の機械的なアッセンブリ、および/または他の用途(例えば、回転部材を支持している工具に見られるような静止状態の用途)における構造的な異常の検出に使用され得る。
【0012】
特に、検出されるべき構造的な異常は、上記回転部材の回転によって引き起こされる機械的な応力に起因して発生し得る。したがって、上記方法は、予測的な整備をもたらすことによって、上記アッセンブリの故障を防止するための機械的な上記アッセンブリの損耗状態の診断を可能にする。
【0013】
例えばローラベアリングの場合に、構造的な上記異常は、固定部材、回転部材および/またはローラ本体の軌道の剥離であり得る。ギアボックスまたはエンジンの回転軸を含んでいる機械的なアッセンブリ、特に変速機の場合に、構造的な上記異常は上記軸のギアの歯に形成され得る。
【0014】
上記方法は、上記回転部材の回転運動の全体にわたって構造的な異常の発生の固有周波数を特定する予備的な分析を包含している。特に、上記分析は、発生し得る構造的な上記異常のそれぞれを特定する周波数を示すように、特に上記アッセンブリの種々の機械的な構成部材の間における運動力学的な関連性を用いた、上記アッセンブリの幾何学的な試験によって実施され得る。
【0015】
ローラベアリングの例において、異常の固有周波数の特定は、ローラ本体の上記異常に関する変位の周波数を算出することによって実施され得る。したがって、上記固有周波数は、ローラ本体が上記異常を越えて通過する回転運動ごとの回数の概算に対応し得る。
【0016】
発生し得る構造的な異常の固有周波数を特定した後に、上記方法は、これらの固有周波数に対応する上記異常を検出する繰返しの複数のステップを包含している。代替として、上記方法は、発生し得る上記異常のそれぞれを検出するために実施され得る。
【0017】
上記方法は、上記回転部材の上記瞬間回転速度の測定を包含している。当該測定は、モニタリングされるべき上記回転部材、または機械的な上記アッセンブリにおいて当該回転部材と関連している他の回転部材に対して実施され得る。
【0018】
特に、瞬間速度の測定はエンコーダセンサユニットによって実施され得る。上記エンコーダは、上記回転部材と一体になって回転し、幾何学的な配列が同一である磁北極および磁南極の交互の連続を有している多極トラックを備えていることによって磁性型であり得る。
【0019】
上記エンコーダは、上記回転部材、または当該回転部材の回転と連動している回転構成部材に固定され得る。ローラベアリングの例において、上記ベアリングにおける構造的な異常、または当該ベアリングによって回転についてガイドされている回転アッセンブリにおける構造的な異常を検出するために、上記エンコーダはローラ部材に固定され得る。
【0020】
上記センサは、固定されており、上記多極トラックからの読み込み距離の向かい側、および当該読み込み距離に配置されている少なくとも2つの感受要素を含んでいる。一例の実施形態において、上記感受要素は、ホール効果センサ、磁気抵抗、または巨大磁気抵抗である。特に、上記センサは、仏国特許第2 792 403号に記載されているような位置合わせされている複数の感受要素を含み得る。
【0021】
図1と関連付けて、一定の角ピッチによって分離されている前部Sを含んでいる信号を出力するセンサが説明されている。特に、上記センサによって出力される信号Sは、上記前部Sを分離している上記角ピッチが磁極の間における角度の隔たりより小さくなるように、補間され得る。
【0022】
上記方法は、上記瞬間回転速度の測定結果を角度についてサンプリングして、上記速度を表すサンプリング信号を取得することをさらに包含している。示されている実施形態において、2つの前部Sの間において経過した時間が、特に上記センサに連結されている計数ボードによって、測定される。
【0023】
上記時間の測定は、測定されたシグナルSから2つの立ち上がりの前部Sを分けている、高周波数のクロックfのパルスNの数を計測することによって実施され得る。上記時間の測定は、クロックの前部Nの数によって固定されている角ピッチに対応している。したがって、上記サンプリング信号は、測定された上記信号Sの前部Sのそれぞれの間における経過時間を供給して、以下の関係:
【0024】
【数1】

【0025】
を用いて実際の瞬間回転速度ωを知る。
【0026】
一例の実施形態において、測定された上記信号Sの前部Sの数は、1回転につき2400に等しく、当該前部は、60対の極および40の補間を有しているエンコーダを用いて取得される。さらに、高周波数クロックの周波数fは100MHzである。
【0027】
上記瞬間回転速度をサンプリングしながら、上記方法は、サンプリング信号の調和分析を実施して、上記部材の上記瞬間回転速度のスペクトルを取得することを包含している。一実施形態によれば、上記調和空間分析は、上記サンプリング信号の空間フーリエ変換(FFT)を介して実施される。
【0028】
図1に関して、上記空間フーリエ変換は、立ち上がり前部Sのそれぞれの間における経過時間の測定結果に対して実施され得る。さらに、上記回転部材の上記瞬間回転速度の測定または前部のそれぞれの間における経過時間の測定は、複数の回転(例えば、約30回転)にわたって実施され得、それから、上記調和分析が角度についてのこのサンプリング信号について実施されて、上記回転部材の上記回転速度の変動の影響を抑える。
【0029】
それから、上記方法は、上記固有周波数に関する上記スペクトルの上記振幅のモニタリングして、対応する異常の発生を当該周波数にしたがって導き出すことを包含している。代替的に、いくつかの固有周波数がモニタリングされて、これらの周波数のそれぞれによって特定される複数の異常の発生を導き出し得る。
【0030】
特に、上記スペクトルの射線の周波数位置は、外部からの誘導ではなく、上記回転部材と関連している事象をともなっているので、上記回転部材の上記回転速度から独立している。実際に、異なる速度条件に関する種々の周波数のレベルを正確な方法において比較し得るために信号の上記取得が本質的に速度の複数の変動にわたるように、上記信号は角度についてサンプリングされる。
【0031】
このモニタリングは、固有周波数および/またはこの周波数の少なくとも1つの調波を含んでいる範囲において実施され得る。いくつかの異常のそれぞれが固有周波数によって検出されるべきである場合、モニタリングされる上記周波数は、上記異常のそれぞれを区別し得るように、異なっているべきである。
【0032】
上記異常の発生は、閾値を超えているスペクトルの振幅の値について検出され得る。さらに、上記異常の定量化は、上記固有周波数に関する上記スペクトルの上記振幅および/または形状にしたがって、もたらされ得る。
【0033】
一実施形態によれば、上記方法は、上記エンコーダに固有の特徴の予備的な決定をさらに包含しており、当該特徴は、上記瞬間速度の上記信号から減算されて、得られた上記スペクトルの全体にわたって上記振幅の上記モニタリングを実施する。実際に、磁気エンコーダの技術は、すべての整数次についてのスペクトルノイズを含んでおり、この特徴はまた、上記回転部材に対する上記エンコーダの一体化にしたがっている。複数の整数次を有している周波数のフィルタリングは、モニタリングされる当該周波数が複数の上記回転速度である場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】回転部材の瞬間回転速度を表すサンプリング信号を取得するための原理を示している図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリにおける構造的な異常の検出方法であって、
上記回転部材の回転運動の間における異常の発生の固有周波数を特定する予備的な分析、および繰返しの複数のステップを包含しており、
上記繰返しの複数のステップが、以下のステップ:
上記回転部材の瞬間回転速度を測定するステップ;
上記測定の結果を角度についてサンプリングして、上記回転部材の上記瞬間回転速度を表わすサンプリング信号を取得するステップ;
上記サンプリング信号の調和空間分析を実施して、上記回転部材の上記瞬間回転速度のスペクトルを取得するステップ;
上記固有周波数について上記スペクトルの振幅をモニタリングして、対応する異常の発生を当該振幅に基づいて導き出すステップを包含している、検出方法。
【請求項2】
上記調和空間分析が、上記サンプリング信号の空間フーリエ変換を介して実施されることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
上記速度の上記測定がエンコーダおよび固定センサによって実行され、
上記エンコーダが上記回転部材と一体になって回転する多極トラックを含んでおり、
上記固定センサが、上記多極トラックからの読み込み距離の向かい側、および当該読み込み距離に配置されている少なくとも2つの感受要素を含んでおり、一定の角ピッチによって分離されている複数の前部(S)を含んでいる信号(S)を出力するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
上記多極トラックは、磁北極および磁南極の交互の連続を有していることを特徴とする、請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
上記前部(S)を分離している角ピッチが、上記極の間にある角度の隔たりより小さいことを特徴とする、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
2つの前部(S)の間の経過時間、および測定された上記信号(S)の前部(S)のそれぞれの間の経過時間を示す上記サンプリング信号の測定結果をさらに供給して、上記瞬間回転速度を知ることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項7】
上記エンコーダに固有の特徴の予備的な決定結果を供給し、当該特徴が上記瞬間速度の上記信号から減算されて、得られた上記スペクトルの全体にわたって上記振幅の上記モニタリングを実施する、請求項3〜6のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項8】
上記回転部材の上記瞬間回転速度が複数の回転運動にわたって測定され、上記調和分析が角度についてのこのサンプリング信号に対して実施されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項9】
上記固有周波数の上記特定が、機械的な上記アッセンブリの幾何学的試験を介して実施されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項10】
上記異常の上記発生が、閾値を超えている上記スペクトルの上記振幅の値について検出されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項11】
上記固有周波数に関する上記スペクトルの上記振幅および/または形状にしたがう、上記異常の定量化を包含していることを特徴とする、請求項10に記載の検出方法。
【請求項12】
上記モニタリングが、上記固有周波数および/または当該周波数の少なくとも1つの調波において実施されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の検出方法。
【請求項13】
自動車両のための回転部材を含んでいる機械的なアッセンブリの損耗状態の車載診断に対する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−524895(P2012−524895A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506543(P2012−506543)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000317
【国際公開番号】WO2010/122240
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(507018894)エヌテエヌ−エスエヌエール ルルモン (22)
【Fターム(参考)】